特許第6967533号(P6967533)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6967533ポリエチレンテレフタレートバルキー連続フィラメントを含む自動車用タフテッドカーペット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6967533
(24)【登録日】2021年10月27日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】ポリエチレンテレフタレートバルキー連続フィラメントを含む自動車用タフテッドカーペット
(51)【国際特許分類】
   D05C 17/02 20060101AFI20211108BHJP
   A47G 27/02 20060101ALI20211108BHJP
   D02G 3/24 20060101ALI20211108BHJP
   D02G 3/44 20060101ALI20211108BHJP
【FI】
   D05C17/02
   A47G27/02 D
   D02G3/24
   D02G3/44
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-563032(P2018-563032)
(86)(22)【出願日】2018年9月28日
(65)【公表番号】特表2020-534445(P2020-534445A)
(43)【公表日】2020年11月26日
(86)【国際出願番号】KR2018011592
(87)【国際公開番号】WO2020050450
(87)【国際公開日】20200312
【審査請求日】2018年11月30日
(31)【優先権主張番号】10-2018-0105076
(32)【優先日】2018年9月4日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】318016191
【氏名又は名称】ヒョスン アドヴァンスト マテリアルズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100147935
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100080230
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 詔二
(72)【発明者】
【氏名】クウォン、ヨン チュル
(72)【発明者】
【氏名】オー、スンテク
【審査官】 ▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−284855(JP,A)
【文献】 特開2007−303012(JP,A)
【文献】 特開2005−054310(JP,A)
【文献】 特開2014−240271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05C 17/02
A47G 27/02
D02G 3/24
D02G 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレート(PET)重合体を溶融紡糸して製造されるポリエチレンテレフタレートバルキー加工連続フィラメント(BCF)を含むパイル層;及び少なくとも一つ以上のバッキング(Backing)層を含み、
前記BCFのモノフィラメントは、1.0g/dの初期応力で5%以上伸び、3.0g/dの中期応力で25〜35%伸びており、破断引張強度が4.0〜6.0g/d、伸び率が40〜60%であり、
前記ポリエチレンテレフタレート(PET)重合体内の高分子を形成しなかったオリゴマーの数が(n)3〜7個である低分子物質の含量が1.0重量%以下であり、前記BCFのモノフィラメント内の前記低分子物質の含量が1.3重量%以下である、自動車用タフテッドカーペット。
【請求項2】
前記ポリエチレンテレフタレート(PET)重合体の重量平均分子量は、50,000〜70,000である、請求項1記載の自動車用タフテッドカーペット。
【請求項3】
前記ポリエチレンテレフタレートバルキー加工連続フィラメントは、モノフィラメントが50〜300個の集合体からなるマルチフィラメントである、請求項1記載の自動車用タフテッドカーペット。
【請求項4】
前記ポリエチレンテレフタレートバルキー加工連続フィラメントの全体繊度が700〜1500デニールである、請求項1記載の自動車用タフテッドカーペット。
【請求項5】
MS343-15規格に沿った耐摩耗が3級以上である、請求項1記載の自動車用タフテッドカーペット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一般的に、タフテッドカーペット(tufted carpet)の素材としては、バルキー連続フィラメント(bulked continuous filament、BCF)の合繊素材には、代表的に、ナイロン6、ナイロン66をはじめ、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等が使用されている。これらの中、ナイロンがカーペット用の素材として最適の素材であるが、価格が高いという短所があり、低価格のポリプロピレンが代替材として多く使われている。
【0002】
しかし、ポリプロピレンは、耐熱性が弱く、高温で成形をする自動車用カーペットに使用するのに適していていないため、ナイロン素材が広く使われているが、価格が高く、品質の落ちる不織布タイプのニードルパンチ(needle punch)が多く使われている。一方、ニードルパンチ不織布は、タフテッドカーペットに比べて外観の高級感が落ちるし、耐摩耗が不良という短所がある。
【0003】
最近、前述のような問題点を改善するために、経済性等で他の素材に比べて優れた特性を有しており、耐熱性が強いポリエチレンテレフタレート素材でBCFを作って自動車用カーペットとして使用するために試みをしているが、ポリエチレンテレフタレートは、ナイロン素材に比べ比重が高く、同一の外観を発現するためには、原糸の重量を高めるべきであるため、価格的な面での短所がある。また、原糸のバルク復元性がナイロンに比べ落ちるため、成形後に原糸が押されてボリューム感が落ちる問題がある。
【0004】
また、ポリエチレンテレフタレートBCFを利用してカーペットを製造する際、カーペットの耐摩耗性を向上させるためには、前記のBCF原糸自体が外力に抵抗する引張強伸度の物性を有するべきである。フィラメントの引張強伸度を高めるためには、BCFの製造工程中の延伸段階で高い比率で繊維を延伸させるべきであるが、引張比率が高くなると、フィラメント糸切が生じて作業が困難になり、酷い場合には、延伸と張力によって引張強伸度がむしろ低下される原因になったりもする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、強度及び伸び率が向上されたモノフィラメントを含むことにより、自動車用カーペットで使用するのに適したポリエチレンテレフタレートバルキー連続フィラメントを提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、前記ポリエチレンテレフタレートバルキー連続フィラメントを含む外観の体積感と耐摩耗品質が向上されたカーペットを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の実施例に係る自動車用タフテッドカーペットは、ポリエチレンテレフタレート(PET)重合体を溶融紡糸して製造されるポリエチレンテレフタレート(PET)バルキー加工連続フィラメント(BCF)を含むパイル層;及び少なくとも一つ以上のバッキング(Backing)層を含み、前記BCFのモノフィラメントは、1.0g/dの初期応力から5%以上伸びて、3.0g/dの中期応力で25〜35%伸びており、破断引張強度が4.0〜6.0g/d、伸び率が40〜60%であり得る。
【0008】
この時、前記ポリエチレンテレフタレート重合体内の高分子を形成しなかったオリゴマーの数が(n)3〜7個である低分子物質の含量が1重量%以下であり、前記フィラメント内、前記低分子物質の含量が1.3重量%以下であり得る。
【0009】
また、前記ポリエチレンテレフタレート重合体の重量平均分子量は、50,000〜70,000であり得る。
【0010】
また、前記連続フィラメントは、モノフィラメントが50〜300個の集合体からなるマルチフィラメントであり得る。
【0011】
また、前記バルキー加工連続フィラメントの全体繊度が700〜1500デニールであり得る。
【0012】
併せて、前記自動車用タフテッドカーペットはMS343-15規格による耐摩耗が3級以上であり得る。
【0013】
本発明の実施例に係るポリエチレンテレフタレートバルキー連続フィラメントは、強度及び伸び率が向上されたモノフィラメントを含むことにより、これを含むカーペットも外観のボリューム感と耐摩耗品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一の実施例に係るポリエチレンテレフタレートバルキー連続フィラメントを製造するための装置を概略的に示した図面である。
図2】本発明の一の実施例に係るポリエチレンテレフタレートモノフィラメントに関する力-変形曲線を図示したものである。
図3】本発明の一の実施例に係るタフテッドカーペットを概略的に示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、様々な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるところ、特定の実施例を本文に詳細に説明しようとする。しかし、これは本発明を特定な開示形態について限定するものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むものと理解されるべきである。
【0016】
本出願で、"含む"または"有する"等の用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするのであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部分品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されるべきである。また、層、膜、領域、板等の部分が他の部分の"上に"あるとする場合、これは他の部分の"真上に"ある場合だけでなく、その中間に、また、他の部分にある場合も含む。逆に層、膜、領域、板等の部分が他の部分の"下に"あるとする場合、これは他の部分の"すぐ下に"ある場合だけでなく、その中間に、また、他の部分にある場合も含む。また、本出願で"上に"配置されるとすることは、上部だけでなく、下部に配置される場合も含むことであり得る。
【0017】
以下、本発明の実施例を、より詳細に説明しようとする。
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の一の実施例に係るポリエチレンテレフタレートバルキー連続フィラメントの製造方法について説明する。図1は、本発明の一の実施例に係るポリエチレンテレフタレートバルキー連続フィラメントを製造するための装置を概略的に示した図面である。
一の実施例に係るポリエチレンテレフタレートバルキー連続フィラメントの製造方法は、ポリエチレンテレフタレートチップを溶融紡糸する工程を含むことができる。
【0019】
前記ポリエチレンテレフタレートチップは液状重合または固状重合を介して製造されたことが好ましい。この時、前記固状重合は、バッチ(batch)または連続重合の方法を用いることが好ましいが、これに限定されるものではない。より具体的に、前記固状重合は、真空条件下で110〜170℃、4〜6時間に水分を除去するための乾燥を行い、235〜255℃まで4〜6時間にかけて昇温を施し、235〜255℃の範囲で実施することが好ましく、高状重合時間は20〜30時間であることが好ましい。
【0020】
前述したように、液状重合または高状重合されたポリエチレンテレフタレートチップを245〜335℃で溶融紡糸して紡糸口金(1)を通過させる。
【0021】
本発明で基本となるポリエチレンテレフタレート樹脂は、エチレンテレフタレートの反復単位を90モル%以上含有することが好ましい。
【0022】
選択的に前記ポリエチレンテレフタレートは、エチレングリコール及びテレフタレートジカルボン酸またはこれらの誘導体、そして一つまたはそれ以上のエステル-形成成分から誘導された少量の単位を共重合体単位で含むことができる。ポリエチレンテレフタレート単位と共重合可能な他のエステル形成成分の例は、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等のようなグリコールと、テレフタル酸、イソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、スチルベンジカルボン酸、ヒベンゾ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸のようなジカルボン酸を含む。
【0023】
この時、原糸の製造時に適切な延伸比で高いレベルの引張強伸度を有するためには、重合物の分子量が非常に重要である。本発明では、ポリエチレンテレフタレートの重量平均分子量が50,000以上であることが好ましく、より好ましくは50,000〜70,000であり得る。重量平均分子量が前記範囲の未満である場合、特に一般的なポリエチレンテレフタレート繊維の重量平均分子量である35,000〜45,000である場合には、前記の範囲の分子量としては、延伸比を非常に高いレベルへと高めるべきであるため、安定した工程の作業性を確保することができない。
【0024】
一方、ポリエチレンテレフタレート重合体内の高分子を形成しなかったオリゴマーの数が(n)3〜7個であるオリゴマーのような低分子物質の含量が非常に重要である。この時、前記低分子物質は、重量平均分子量が550〜1,500である物質であり得る。このような低分子物質の含量がポリエチレンテレフタレート重合体内1.0重量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.8重量%以下であり得る。前記含量が1.0重量%を超過する場合には、紡糸ノズル付近で発生する溶融破断(Melt fracture)現象により異物が発生してワイピング(wiping)サイクルが短縮され、紡糸時に糸切の原因となり、結果的にフィラメントの引張強度、伸度等の物性が低下する原因になり得る。
【0025】
また、重合体を溶融紡糸する過程で高温の押出機(extruder)内で熱と摩擦により熱酸化分解が起こり、低分子物質がさらに生成されるが、この時、巻取後のフィラメント内低分子物質は1.3重量%以下であることが好ましく、より好ましくは1.0重量%以下であり得る。一方、フィラメント内の低分子物質が1.3重量%を超過する場合には、最終的にカーペットの生地を熱と圧力で成形する際に炭化または異物へと切り替えされ、BCFパイルが正しく形成されにくいという問題が発生することになり、結果的に目的とするパイル層のボリューム感を発現しにくくなる。
【0026】
また、ポリエチレンテレフタレートチップの水分含量は、40ppm以下であることが好ましい。ポリエチレンテレフタレートは、水分に非常に脆弱であるため、チップの水分含量を前記範囲に調整することにより、加水分解による分子量低下(drop)を防ぐことができる。一方、水分含量が40ppmを超過する場合には、加水分解による粘度低下(drop)が発生し、モノフィラメントの引張強伸度が低くなる問題が生じることになる。
【0027】
このように製造されるポリエチレンテレフタレート原糸の繊度は、好ましくは700〜1500デニール(denier)であり、850〜1,350デニールであることがより好ましい。また、ポリエチレンテレフタレート原糸の直径は6〜20dpfであることが好ましく、さらに好ましくは10〜15dpfであり得る。
【0028】
原糸の繊度が700デニール未満であり、直径が6dpf未満であれば、カーペット成形時、生地パイルの直立度が低くなり、耐摩耗性、成形復元力及び外観が不良になり、繊度が1500デニールを超過したり、直径が20dpfを超過する場合には、カーペット生地の密度が低くなり、耐摩耗性及び復元力が不良になる。
【0029】
以降、紡糸されたポリエチレンテレフタレート原糸を冷却する工程を含むことができる。この時、前記冷却させる工程は、冷却区域(3)で速度0.2〜1.0m/secの空気で冷却させる工程であり得る。冷却温度は、10〜30℃に調節することが好ましく、冷却温度が10℃未満であれば、経済的な側面で不利で、30℃を超過すると、冷却効果が落ちることになる。また、冷却空気の速度が0.2m/sec未満であれば、冷却効果が不十分であり、1.0m/secを超過すると、糸が揺れすぎて紡糸の作業性に問題となるため、冷却空気の速度は、0.2〜1.0m/secであることが好ましい。
【0030】
前記冷却した後、オイリングをするスピンフィニッシュ(spin finish)の工程を経るが、フィニッシュアプリケーター(4)で1次、2次の二工程でニット(neat)タイプの油剤もしくは水溶性油剤を使用してオイリングすることにより、糸の集束力、潤滑性及び平滑性を高めてくれる。
【0031】
以降、供給ローラ(5)から300〜1,200m/minの速度で、好ましくは500〜800m/minの速度でフィラメントを延伸ローラ(6)に供給し、この時、延伸ローラ(6)は、140〜240℃の温度であり、供給ローラ(5)速度の2.0〜5.0倍の速度で、好ましくは2.5〜4.5倍に延伸する。前記延伸速度が2.0倍未満の場合は、十分に延伸されず、5.0倍を超過する場合には、ポリエチレンテレフタレート素材の特性上、延伸に耐えられず糸切される問題が生じる。
【0032】
延伸ローラ(6)を通過したフィラメントはバルキー性を付与するためにテクスチャノズル(texturing nozzle)があるテクスチャユニット(7)を通過し、この時、テクスチャユニット(7)の内部で150〜270℃の加熱流体を3〜10kg/cm2の圧力で噴射してフィラメントが不規則な3次元へと捲縮されるようにする。
【0033】
この時、加熱流体の温度は、150〜250℃が好ましく、150℃未満では、テクスチャ効果が落ち、250℃を超過すると、フィラメントに損傷を招く。また、加熱流体の圧力は3〜10kg/cm2が好ましく、これは3kg/cm2未満ではテクスチャ効果が落ち、10kg/cm2を超過すると、フィラメントに損傷を招く。
【0034】
テクスチャユニット(7)を通過したフィラメントはテクスチャノズルの下端部に配置された冷却ドラム(8)を経て冷却される。冷却された原糸は弛緩ローラ(9)で延伸ローラ速度の0.65〜0.95倍の速度で通過させ、オーバーフィード(Over feed)率を5〜35%で与えて通過させる。この時、弛緩ローラの速度が延伸ローラの速度の0.65倍未満にすると巻取されず、0.95倍を超過すると、バルキー性が減少され、原糸の収縮が大きく起きて高い張力を誘発し、作業にも支障をもたらす。
【0035】
弛緩ローラ(9)を通過した原糸は交絡機(10)を通過することになる。この部分では、糸の集束力を良くするために2.0〜8.0kg/m2の圧力で若干の撚りと結び目を与えるが、0〜40回/mの範囲で、好ましくは10〜25回に付与する。40回を超過して交絡を与える時は染色、後加工を経ても交絡が解けない状態がそのまま維持され、カーペットの外観を損傷させる。交絡機(10)を通過した原糸は、最終巻取機(11)で巻取することになる。
【0036】
巻取機の速度は、通常の糸の張力が50〜350gの範囲になるように速度を調節することが好ましい。この時、巻取機にて張力が50g未満であれば巻取が不可能であり、350gを超過すると、バルキー性が減少され、原糸の収縮が大きく起き、高い張力を誘発して作業にも支障をもたらすことになる。
【0037】
前記の方法は、ポリエチレンテレフタレート樹脂のみで製造したBCFに関するものであり、カーペット用途に応じて原着糸の製造時には、段階別の工程は、前記と同一である。ただし、原料供給において、ベースチップ投入量に一定量の着色剤を投入して紡糸することにより、原着糸を製造することも可能である。
【0038】
一方、前述したように製造されたポリエチレンテレフタレートBCFを用いてカーペットを製造する際、カーペットの耐摩耗性を向上させるためには、前記のBCF原糸自体が外力に抵抗する物性を有するべきである。外力に抵抗するためには、原糸の引張強伸度が高くて、一般的には、引張強伸度が高い原糸が耐摩耗性も高い。しかし、タフテッドカーペットの耐摩耗性に貢献する引張強伸度の物性は、BCF原糸バンドル(bundle)の引張強伸度ではなく、それぞれのフィラメントの引張強伸度、即ち、モノフィラメントの引張強伸度である。一般的に、耐摩耗分析は、ASTM D3384にtaber耐摩耗試験機で行うことになるが、分析時の摩耗輪にそれぞれのフィラメントが接触されるため、全体のバンドル、即ち、マルチフィラメントの物性よりはそれぞれのモノフィラメントの引張強伸度が、より重要である。
【0039】
本発明に係る製造されたポリエチレンテレフタレートバルキー連続モノフィラメントは、強度が4.0〜6.0g/dであり、伸び率が40〜60%であり得る。また、図2に図示されたように、モノフィラメントは1.0g/dの初期応力から5%以上伸び、3.0g/dの中期応力で25〜35%伸び、4.0g/dの引張強度から糸が切れるまで5%以上伸びる力-変形曲線を有することが好ましい。強伸度が前記範囲である場合、同一重量のナイロンレベルの耐摩耗品質を確保することができる。
【0040】
ポリエチレンテレフタレートバルキー連続マルチフィラメントは、前記モノフィラメントが50〜300個、より好ましくは60〜200個の集合体からなり得る。
【0041】
前記のように、本発明に従って製造されたポリエチレンテレフタレートマルチフィラメントは、後工程を経て、自動車用カーペットに製造される。本発明のBCF糸で製造されたカーペットは、当業者に公知の任意の方式で製造することができる。図3には、本発明に従った自動車用タフテッドカーペットの具体例が示されている。カーペットは、第1基布(13)によって支持されている表糸(Face Yarn)(12)を有する。この時、前記第1基布(13)をバッキング(backing)層としており、前記表糸(12)からなる層を、パイル層とする。消費者が目で見て感触を感じる最も最外層である表糸(12)はBCF原糸で形成され、第1基布(13)はポリエステルまたはポリオレフィンの素材としてスパンボンドや織物形態の90〜150gsmの重量が好ましい。また、前記表糸(12)を含むパイル層は、重量が180〜700gsmであることが好ましい。第1基布(13)に隣接したのは、表糸(12)を固定してくれるコーティング層(14)であり、これはラテックス又はアクリルのように当該分野で通常的に使用される適当な素材である。 最後に、カーペットは、自動車内の静粛性を確保するために遮音または吸音性能を付与するための2次コーティング(15)をすることになる。このような2次コーティング(15)は、PEまたはEVAを300〜5000gsm塗布したり、追加で吸音性の不織布を付着することも可能である。本発明によってポリエチレンテレフタレートBCFを用いてカーペットを製造する場合、ナイロンタフテッドカーペットと同一なFace Yarnの原糸重量的でもナイロンと同じ外観が発現されてMS343-15規格に沿った耐摩耗が3級以上へと耐摩耗性が向上することができる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例を通じて詳細に説明すると、次の通りである。但し、下記の実施例は、本発明を例示するものであり、本発明が下記の実施例により限定されるものではない。
【0043】
[実施例1]
テレフタル酸100重量部に対して、エチレングリコール50重量部を混合して製造したスラリーをエステル化反応器に投入し、250℃にて4時間、0.5torrの圧力で加圧して水を反応器の外に流出させながら、エステル化反応を進行させ、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート[bis(2-hydroxyethyl)terephthalate]を製造した。この時、リン系の耐熱安定剤をエステル化反応末期に300ppm投入した。また、エステル化反応後、重合触媒としてアンチモン触媒を重縮合反応の初期に300ppmを投入し、250℃〜285℃まで60℃/hrで昇温するとともに、圧力を0.5torrまで減圧して重縮合反応を進行した。前記重合物を高状重合を実施し、液状重合物の粘度を上げる。一般的な高状重合の過程の中で、バッチ高状重合機を利用して、真空条件下で140℃で4時間、水分を除去するための乾燥を進め、235℃まで4時間から6時間にかけて昇温を行い、235〜245℃の温度範囲で最終的な目標の粘度まで高状重合を実施する。
【0044】
128ホール(Hole)であり、Y型断面を有する紡糸口金を介して製造されたポリエチレンテレフタレート重合体を290℃で溶融紡糸する。紡糸口金を抜け出した重合体は、ノズル下部で0.5m/s、20℃の冷却空気によって冷却された後、油剤供給装置を通過する。油剤を付与された原糸は、90℃の温度に維持される供給ローラを598m/minの速度で経た後、延伸ローラから190℃、2,840m/minの速度で延伸される。延伸ローラを通過した原糸はテクスチャノズルを通過し、クリンプを与えられる。この時、ホットエア(Hot air)温度は200℃、圧力は7kg/cm2であり、背圧は5kg/cm2である。以後、テクスチャノズルの出口から原糸を冷却した後、弛緩ローラを2,250m/minに通過し、21%程度弛緩される。後集束装置で4.0kg/m2の圧力で交絡を20回/m付与した後、ワインディングマシーン(Winding Machine)で巻取する。
【0045】
このように製造されたポリエチレンテレフタレートバルキー連続フィラメントを用いてカーペットを製造した。
【0046】
[実施例2〜3及び比較例1]
重合物の分子量及び低分子物質の含量を下記の表1に記載されたように調整したことを除いては、実施例1と同一な過程を経てポリエチレンテレフタレートBCF原糸及びカーペットをそれぞれ製造した。
【0047】
[実験例]
1)モノフィラメントの強度及び伸度
温度25℃、相対湿度65RH%にて24時間放置した原糸(マルチフィラメント)から10個のモノフィラメントを抽出した後、Lenzing社のモノフィラメント引張試験機Vibrojet2000を用いて、初荷重をVibroietにてデニール別に規定する荷重(約、モノデニールx60(mg))を加えた後、試料長20mm、引張速度20mm/minで測定する。測定された10個の値のうちに最大値及び最小値をそれぞれ1つずつ除いた残り8つの平均値でモノフィラメント物性を測定した。初期モジュラスは降伏点以前のグラフの傾きを示す。
【0048】
2)カーペットの耐摩耗
カーペットの耐摩耗性を下記のように評価し、その結果を下記の表1に示した。
関連試験方法の規格:ASTM D3884
試験方法:現代自動車MS300-35
試験装置:Taber耐摩耗試験機
試料のサイズ:直径130mmの円形試料
試験条件
- 摩耗輪:H-18
- 回転速度:70回/分
- 荷重:1000g
- 回転数1000回
- 評価方法:外観評価1〜5級(現代自動車MS343-15規格3級以上(3,4,5級))合格
- 評価基準:5級 摩耗が全く見えない、4級 摩耗が若干見えたり、ほとんど目立たないもの、3級 摩耗が若干あるが見えるもの、2級 摩耗が若干激しいもの、1級 摩耗が相当に激しいもの
【0049】
3)低分子物質の含量
HPLC(High-performance liquid chromatography)法を用いて、PET重合物及びフィラメント内の低分子物質の含量を分析した。この時、前処理は0.1g内外の試料をHFIP(Hexafluoro-2-propanol)/CH2Cl2=1/3(v/v)5mlに溶解した後、アセトニトリル10mlで再沈殿した後、UPLCでインジェクション(Injection)した。また、HPLCの詳細な分析条件は下記の通りである。
- 使用機器:Waters UPLC
- Column: X-bridge C18 5μm (4.6*250mm)
- Eluent: A/B=90/10→A/B=0/100→A/B=90/10, A: 0.3%H3PO4, B: CH3CN
- Flow rate: 1.0ml/min (5.0μL Inj, Runtime: 40min)
- Detection: UV Detector at 242nm
【0050】
【表1】
【0051】
表1を参照すると、実施例の場合、重合物及びフィラメント内の低分子物質の含量がそれぞれ1.0重量%以下、1.3重量%以下であることによって、製造したポリエチレンテレフタレートBCFを成すモノフィラメントは、強度が4.0〜6.0g/dであり、伸び率が40〜60%であり、前述したような力-変形曲線を有することで、引張強伸度が向上されることがわかる。モノフィラメントの引張強伸度が向上されることによって、外力に抵抗する物性が向上され、カーペットの耐摩耗性も向上されることがわかる。
【0052】
以上では、本発明の好適な実施例を参照して説明したが、当該技術分野の熟練された当業者または当該技術分野で通常の知識を有する者であれば、後述される特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び技術領域から逸脱しない範囲内で、本発明を多様に修正及び変更させることができることが理解できるだろう。
【0053】
したがって、本発明の技術的範囲は、明細書の詳細な説明に記載された内容に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって定められるべきである。
【符号の説明】
【0054】
1:紡糸口金 2:フィラメント
3:冷却区域 4:フィニッシュ
5:供給ローラ 6:延伸ローラ
7:テクスチャユニット 8:冷却ドラム
9:弛緩ローラ 10:交絡機
11:最終巻取機 12:表糸(BCF)
13:1次基布 14:コーティング層
15:2次コーティング層
図1
図2
図3