(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6967550
(24)【登録日】2021年10月27日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】ワークストッカ
(51)【国際特許分類】
B23Q 7/10 20060101AFI20211108BHJP
B23Q 3/06 20060101ALI20211108BHJP
【FI】
B23Q7/10
B23Q3/06 303E
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-88559(P2019-88559)
(22)【出願日】2019年5月8日
(65)【公開番号】特開2020-183013(P2020-183013A)
(43)【公開日】2020年11月12日
【審査請求日】2021年8月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】特許業務法人河崎・橋本特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長末 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】樋口 貴之
【審査官】
亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−044613(JP,A)
【文献】
特開平10−118854(JP,A)
【文献】
特開2008−284640(JP,A)
【文献】
特開2006−150479(JP,A)
【文献】
特開2005−096788(JP,A)
【文献】
特開2003−303741(JP,A)
【文献】
特開2002−086325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 7/00 − 7/18
B23Q 3/06
B25B 1/00 − 1/24
B25B 11/00
B23P 19/00
B65D 6/02
B65D 19/00
B65D 67/00 − 67/02
B65D 81/00
B65D 85/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの第1の開口部を有する第1のプレートと、
少なくとも1つの第2の開口部を有し、前記第1のプレートに対して変位可能な第2のプレートと、を備え、
前記第1および第2のプレートは、前記第1および第2の開口部でワークを保持し、
前記第1および第2のプレートは、前記第1および第2の開口部の開口方向に垂直な平面内で、互いに対して逆の方向に同じ変位量で変位する、工作機械のためのワークストッカ。
【請求項2】
前記第1および第2のプレートを、前記第1および第2の開口部の開口方向に垂直な平面内で滑動可能に支持するトレイをさらに備え、
前記第1および第2のプレートは、前記トレイに載置されて前記第1および第2の開口部を貫通して延びる前記ワークを保持する、
請求項1に記載のワークストッカ。
【請求項3】
前記第1および第2のプレートの互いに対する相対的位置は、前記ワークの大きさに応じて段階的または連続的に調整される、
請求項1または2に記載のワークストッカ。
【請求項4】
前記第1のプレートは、第1のラックを有し、
前記第2のプレートは、第2のラックを有し、
前記第1および第2のラックに係合するピニオンをさらに備えた、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のワークストッカ。
【請求項5】
前記ピニオンを回転させるアクチュエータをさらに備えた、
請求項4に記載のワークストッカ。
【請求項6】
前記第1のプレートは、少なくとも1つの第1の位置決め貫通孔を有し、
前記第2のプレートは、少なくとも1つの第2の位置決め貫通孔を有し、
前記第1および第2の位置決め貫通孔に選択的に挿通される位置決めピンをさらに備えた、
請求項1〜5のいずれか1項に記載のワークストッカ。
【請求項7】
前記第1および第2のプレートの互いに対する相対的位置を示す識別マークが設けられた、
請求項1〜5のいずれか1項に記載のワークストッカ。
【請求項8】
前記ピニオンは、その回転位置を示す識別マークを含むピニオンヘッドを有する、請求項4または5に記載のワークストッカ。
【請求項9】
前記第1および第2のプレートはそれぞれ、前記ワークの側面における互いに離間した2以上の位置で前記ワークを保持する、
請求項1〜8のいずれか1項に記載のワークストッカ。
【請求項10】
前記第1のプレートは、少なくとも部分的に前記第1の開口部を画定する第1の保持部を有し、
前記第2のプレートは、少なくとも部分的に前記第2の開口部を画定する第2の保持部を有し、
前記第1および第2の保持部が協働して前記ワークを保持する、
請求項1〜9のいずれか1項に記載のワークストッカ。
【請求項11】
前記第1および第2の開口部は、前記ワークの中心に対して対称的な形状を有する、
請求項10に記載のワークストッカ。
【請求項12】
前記第1の保持部および前記第2の保持部は、矩形、多角形、またはガウス曲線、正弦曲線もしくは放物曲線で表される平面形状を含む保持面を有する、
請求項10または11に記載のワークストッカ。
【請求項13】
前記第1の保持部および前記第2の保持部は、前記ワークの硬度より低い硬度を有する材料で形成され、および/または前記ワークの硬度より低い硬度を有する材料で形成された緩衝部を有する、
請求項10〜12のいずれか1項に記載のワークストッカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械で加工されるワークを保持するワークストッカに関し、とりわけ任意の径を有するワークを保持するワークストッカに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工作機械の周辺機器をモジュール化したガントリローダシステムが広く利用されている。ガントリローダシステムには、例えば工作機械と周辺装置(例えばトレイチェンジャ)との間でワークを搬送する搬送装置、ワークを反転させる反転装置および機内計測装置等が含まれる。搬送装置は、トレイチェンジャ内に格納されたワークストッカからワークを把持し、1つまたは複数の工作機械の上方を走行してワークを搬送するように構成されている。工作機械で加工される前のワークは、搬送装置による把持を容易にするために、ワークストッカ上の予め定められた位置に配置されており、工作機械で加工された後のワークは、搬送装置によって別のワークストッカなどの所定位置に格納される。
【0003】
例えば特許文献1には、径の異なる円盤状のワークを貯蔵するためのワークストッカが提案されている。特許文献1に記載のワークストッカは、テーブル状のベースの上に複数のトレイを配置し、各トレイ上に4本の案内棒を立設し、リフタを案内棒により案内しつつ昇降機構で昇降させるように構成されている。リフタは円盤状のもので、案内棒が挿通されるガイド孔を有し、案内棒の径方向に立設位置を調整することにより、径の異なるワークを案内しつつ昇降させる。
【0004】
特許文献2には、ワークの種類の変更に容易に対応することが可能なワーク情報認識システムが開示されている。このワーク情報認識システムは、ワークを載置可能なワーク載置具と、ワーク載置具に着脱可能に設けられる基準ブロックと、基準ブロックの情報を検出する情報検出部と、情報検出部から基準ブロックの情報を受ける制御装置とを備える。制御装置は、基準ブロックとワークの大きさの対応関係を示すデータを記憶する記憶部と、情報検出部により検出された基準ブロックの大きさを、記憶部に記憶されたデータに照らし合わせることにより、ワーク載置具に載置されたワークの大きさを認識する制御部とを有する。
【0005】
また特許文献2に記載のワーク載置具は、トレイと、トレイに収容されたプレート材とを有し、プレート材には、ワークの形状に対応する開口面(例えば円形)を有する複数の開口部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−117556号公報
【特許文献2】特開2019−038043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のワークストッカにおいて、4本の案内棒は、リフタの上下移動をガイドするとともにワークの上下移動時の位置ずれを防止するために(請求項1)、リフタの中心位置からの距離が一定になるように調整しなければならない。またワークは、ワーク搬送機構により旋盤等のチャックに搬送装着されることからも(段落[0019])、ワークの中心をリフタの中心に位置合わせするように配置する必要がある。
【0008】
しかしながら(特許文献1には案内棒の配置位置を調整する機構については何ら言及されていないが)、各リフタの複数の案内棒をそれぞれのリフタの中心位置から一定の距離に配置することは容易ではなく、特に手作業で案内棒の配置位置を調整することは生産コストを実質的に増大させ、案内棒の配置位置を自動的に調整する機構は極めて複雑で高価なものとなり得る。
【0009】
また特許文献2に記載のワーク載置具のプレート材は、その開口部がワークの水平断面に対応する所定(円形)の形状および寸法(径)を有するため、ワークの径が異なれば、プレート材を交換するか、またはワークの径に対応する複数のワーク載置具を準備する必要があり、生産効率の向上を阻害するものであった。
【0010】
したがって、簡便な構成で、任意の径を有するワークを保持できる汎用性の高いワークストッカの実現が強く望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る態様は、ワークストッカに関し、このワークストッカは、少なくとも1つの第1の開口部を有する第1のプレートと、少なくとも1つの第2の開口部を有し、前記第1のプレートに対して変位可能な第2のプレートと、を備え、前記第1および第2のプレートは、前記第1および第2の開口部でワークを保持するように構成されている。
【0012】
またワークストッカは、前記第1および第2のプレートを滑動可能に支持するトレイをさらに備え、前記第1および第2のプレートは、前記トレイに載置されて前記第1および第2の開口部を貫通して延びる前記ワークを保持するものであってもよい。
【0013】
このとき、前記第1および第2のプレートの互いに対する相対的位置は、前記ワークの大きさに応じて段階的または連続的に調整されることが好ましく、前記第1および第2のプレートは、互いに対して逆の方向に同じ変位量で変位することがさらに好ましい。
【0014】
具体的には、前記第1のプレートは、第1のラックを有し、前記第2のプレートは、第2のラックを有し、ワークストッカは、前記第1および第2のラックに係合するピニオンをさらに備えるものであってもよい。好適には、ワークストッカは、前記ピニオンを回転させるアクチュエータをさらに備える。
【0015】
択一的には、前記第1のプレートは、少なくとも1つの第1の位置決め貫通孔を有し、前記第2のプレートは、少なくとも1つの第2の位置決め貫通孔を有し、ワークストッカは、前記第1および第2の位置決め貫通孔に選択的に挿通される位置決めピンをさらに備えるものであってもよい。
【0016】
好適には、前記第1および第2のプレートの互いに対する相対的位置を示す識別マークが設けられ、または前記ピニオンは、その回転位置を示す基準線を含むピニオンヘッドを有する。
【0017】
また前記第1および第2のプレートはそれぞれ、前記ワークの側面における互いに離間した2以上の位置で前記ワークを保持してもよい。
【0018】
また、前記第1のプレートは、少なくとも部分的に前記第1の開口部を画定する第1の保持部を有し、前記第2のプレートは、少なくとも部分的に前記第2の開口部を画定する第2の保持部を有し、前記第1および第2の保持部が協働して前記ワークを保持するように構成されてもよい。
【0019】
前記第1および第2の開口部は、前記ワークの中心に対して対称的な形状を有し、前記第1および第2の保持部は、矩形、多角形、またはガウス曲線、正弦曲線もしくは放物曲線で表される平面形状を含む保持面を有するものであってもよい。
【0020】
また前記第1および第2の保持部は、前記ワークの硬度より低い硬度を有する材料で形成され、および/または前記ワークの硬度より低い硬度を有する材料で形成された緩衝部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る態様によれば、簡便な構成で、任意の径を有するワークを保持できる汎用性の高いワークストッカを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】一般的な工作機械およびガントリシステムを上から見たときの全体構成を示す概念図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るワークストッカの斜視図である。
【
図3】(a)および(b)はそれぞれ、第1のプレートおよび第2のプレートの一部を示す平面図である。
【
図4】(a)および(b)はそれぞれ、ワークストッカが非保持状態にあるときの第1および第2のプレートを示す平面図および断面図であり、(c)および(d)はそれぞれ、ワークストッカが保持状態にあるときの第1および第2のプレートを示す平面図および断面図である。
【
図5】(a)は、本実施形態に係るワークストッカの平面図であり、(b)は、
図5(a)のVB−VB線から見たワークストッカの断面図である。
【
図6】(a)〜(c)は、第1のプレートの第1のラックと、第2のプレートの2のラックと、これらに係合するピニオンを示す拡大平面図である。
【
図7】(a)および(b)は、
図5(a)および
図5(b)と同様の平面図および断面図である。
【
図8】(a)および(b)は、
図5(a)および
図5(b)と同様の平面図および断面図である。
【
図9】
図5(a)と同様の平面図であり、変形例に係る第1および第2のプレートを示す。
【
図10】(a)および(b)は、
図3(a)および
図3(b)と同様の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
添付図面を参照して、本発明に係るワークストッカの実施形態を以下説明する。各実施形態の説明において、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば「左右」および「X方向、Y方向、Z方向」など)を適宜用いるが、これは説明のためのものであって、これらの用語は本発明を限定するものでない。なお各図面において、ワークストッカの各構成部品の形状または特徴を明確にするため、これらの寸法を相対的なものとして図示し、必ずしも同一の縮尺比で表したものではない。また、各図面において同一の構成部品には同一の符号を用いて示す。
【0024】
[工作機械およびガントリシステムの全体構成]
図1は、工作機械100およびガントリシステム200を上から見たときの全体構成を示す概念図である。工作機械100は、例えば円筒状のワークWを切削するものであり、
図1(a)のガントリシステム200は、第1および第2のトレイチェンジャ110a,110bと、これらの間でワークWを搬送する搬送装置120とを備える。第1のトレイチェンジャ110aには、加工前の複数のワークWを収容する複数のワークストッカ1が配置され、第2のトレイチェンジャ110bには、加工後の複数のワークWを収容する複数のワークストッカ1が配置される。搬送装置120は、多関節ロボットアーム(図示せず)を有し、第1のトレイチェンジャ110aに格納されたワークストッカ1の所与の位置に配置されたワークWを把持して、工作機械100内に搬入し、加工されたワークWを再び把持して、第2のトレイチェンジャ110bに格納されたワークストッカ1の所定位置に搬出するように構成されている。
【0025】
なお、工作機械100は2つ以上あってもよく、ガントリシステム200は、工作機械100の上記周辺装置の他、ワークWの向きを変える反転装置130(
図1(b))、ワークWの寸法を測定する計測装置140、および/または加工されたワークWを洗浄する洗浄装置150(
図1(c))を備えるものであってもよい。また第2のトレイチェンジャ110bの代わりに、単なる収容箱を設けてよい。このようにガントリシステム200は、さまざまな周辺装置を任意に組み合わせて構成することができる。
【0026】
[ワークストッカの具体的構成]
図2は、本発明の実施形態に係るワークストッカ1の斜視図であって、トレイチェンジャ110に格納されるものである。ワークストッカ1は、概略、トレイ2と、第1のプレート10と、第2のプレート20とを備える。またトレイ2は、図示のように、Z方向に開口した直方体形状を有し、YZ平面に平行な一対の側面3(一方のみ図示)、XZ平面に平行な一対の端面4(一方のみ図示)、およびXY平面に平行な底面5を有する。トレイ2は、一対の側面3には、第1および第2のレール6,7を有する。トレイ2、第1ならびに第2のレール6,7、および第1ならびに第2のプレート10,20は、任意の材料を用いて形成することができるが、加工後のワークWにはクーラント液が付着する場合があるので、耐薬品性を有する材料で形成されることが好ましく、鉄鋼材料(SS400)、熱間圧延軟鋼板(SPHC)、またはアルミ板などで形成されてもよい。
【0027】
図3(a)および
図3(b)はそれぞれ、第1のプレート10および第2のプレート20の一部を示す平面図である。第1のプレート10は、少なくとも1つの第1の開口部12を有し、第2のプレート20は、少なくとも1つの(
図2では、ともに9つの)第2の開口部22を有する。すなわち第1のプレート10は、少なくとも部分的に第1の開口部12を画定する第1の保持部14を有し、第2のプレート20は、少なくとも部分的に第2の開口部22を画定する第2の保持部24を有する。
図3(a)および
図3(b)に示す第1および第2の開口部12,22は、野球のホームベースプレートのような平面形状を有し、第1および第2の保持部14,24が二等辺三角形の斜辺となるような平面形状を有するが、これに限定されるものではない。なお本願において、平面形状とはZ方向から見た形状を意味する。
【0028】
また第1のプレート10は、第1のレール6上をY方向に沿って滑動できるように支持され、第2のプレート20は、第2のレール7上をY方向とは逆方向(便宜上、「−Y方向」ともいう。)に滑動できるように支持されている。
【0029】
図4(a)および
図4(b)はそれぞれ、ワークストッカ1が非保持状態にあるときの第1および第2のプレート10,20を示す平面図および断面図である。また
図4(c)および
図4(d)はそれぞれ、ワークストッカ1が保持状態にあるときの第1および第2のプレート10,20を示す平面図および断面図である。
【0030】
第1および第2のプレート10,20は、
図4(a)および
図4(c)に示すように、第1および第2の開口部12,22が互いに対して少なくとも部分的に重なり合うようにトレイ2に配置される。
【0031】
第1のプレート10を第1のレール6に沿って−Y方向に変位させ、第2のプレート20を第2のレール7に沿ってY方向に変位させることにより、第1および第2の開口部12,22が重なり合う領域を大きくして、ワークストッカ1を非保持状態にすることができる。ワークストッカ1が非保持状態にあるとき、例えば円筒状のワークWが互いに重なり合う第1および第2の開口部12,22を貫通するように、ワークWをトレイ2の底面5に載置することにより、ワークWをワークストッカ1へ収容することができる。ただし、このときワークWは、第1および第2のプレート10,20によって保持または確実に格納されていない。
【0032】
逆に、第1のプレート10を第1のレール6に沿ってY方向に変位させ、第2のプレート20を第2のレール7に沿って−Y方向に変位させて、第1および第2の開口部12,22が重なり合う領域を小さくして、ワークストッカ1を保持状態にすることができる。ワークストッカ1が保持状態にあるとき、ワークWは、トレイ2の底面5に載置されたまま、第1のプレート10の第1の保持部14および第2のプレート20の第2の保持部24が協働して、これらの間に狭持または保持される。このとき、第1および第2のプレート10,20はそれぞれ、ワークWの側面における互いに離間した2つの位置(矢印Cで示す)でワークWを確実に保持することができる。
【0033】
図5(a)は、本実施形態に係るワークストッカ1の平面図であって(トレイ2を省略)、
図5(b)は、
図5(a)のVB−VB線から見たワークストッカ1の断面図である。
図5(a)に示す第1および第2のプレート10,20は、
図3(a)に示す複数の第1および第2の開口部12,22を有する。また第1のプレート10は、第1の窓部15と第1のラック16とを有し、第2のプレート20は、第2の窓部25と第2のラック26とを有する。なお
図5(a)では、第1の窓部15および第2の窓部25が重なって配置されているため、単一の窓部が示されている。
【0034】
ワークストッカ1は、ベース部30と、ベース部30から第1の窓部15および第2の窓部25を貫通するようにZ方向に延びるピニオン32を有する。ピニオン32は、第1のプレート10の第1のラック16および第2のプレート20の第2のラック26に係合している。したがって、ピニオン32を
図5(a)で時計回りに回転させると、第1のプレート10はY方向に変位するとともに、第2のプレート20は−Y方向に変位する。逆に、第1のプレート10をY方向に変位させると、ピニオン32が時計回りに回転して、第2のプレート20は−Y方向に変位する。すなわち第1および第2のプレート10,20は、互いに対して逆の方向に同じ変位量で(連動して)変位するように構成されている。
【0035】
第1および第2のプレート10,20が互いに逆方向に同じ変位量で変位するため、ワークストッカ1が保持状態にあるとき、トレイ2の底面5に載置されたワークWの中心が所定位置に配置されるようにワークWを保持することができる。換言すると、ワークストッカ1が非保持状態にあるときに、作業者がワークWをトレイ2に手作業で(ランダムな位置に)配置しても、ワークストッカ1によってワークWを保持させる(第1および第2のプレート10,20を変位させる)ことにより、ワークWの中心位置が所定の目標位置と一致するようにワークWを移動させることができる。この場合、ワークストッカ1は、保持状態とした後、第1および第2のプレート10,20が互いに対して変位しないように固定する係止部材(図示せず)を備えることが好ましい。したがって、上記説明したように、搬送装置120は、ワークストッカ1上のワークWを的確に把持して、工作機械100内に搬入することができる。
【0036】
ベース部30は、コントローラで位置制御可能なサーボモータ等のモータ(ともに図示せず)を内蔵し、モータの角度位置を制御することにより、第1および第2のプレート10,20を互いに逆方向に同じ変位量で変位させてもよい。また、作業者が第1のプレート10を手作業で変位させることにより、ピニオン32を介して、第2のプレート20を逆方向に同じ変位量で変位させてもよい。
【0037】
図6(a)〜
図6(c)は、第1のプレート10の第1のラック16と、第2のプレート20の第2のラック26と、これらに係合するピニオン32を示す拡大平面図である。
図6(a)は、第1のプレート10が最も左側(−Y方向側)に配置され、第2のプレート20が最も右側(+Y方向側)に配置され、非保持状態にあるワークストッカ1を示す。また
図6(b)は、中程度の径を有するワークW(
図5(a))を保持するときのワークストッカ1を示す。さらに
図6(c)は、第1のプレート10が最も右側(+Y方向側)に配置され、第2のプレート20が最も左側(−Y方向側)に配置され、最も小さい径を有するワークWを保持するときのワークストッカ1を示す。
【0038】
例えば、
図6に示すピニオン32の歯数は18であり、30度単位(歯数2つ単位)で回転制御できるサーボモータを用いると、ワークストッカ1は、ピニオン32の1回転に対して、12段階の径(=2πr/12、r:ピニオン32の半径)を有するワークWを保持することができる。ピニオン32は、
図6(a)〜
図6(c)に示すように、上から見て角度位置を視認できる識別マーカ34(識別ライン)を含むピニオンヘッド35を有していてもよい。
図6(a)の識別マーカ34は、ワークストッカ1が非保持状態にあることを示し、
図6(b)は、中程度の径を有するワークWが保持されていることを示し、
図6(c)は最小の径を有するワークWが保持されていることを示す。
【0039】
搬送装置120は、ワークWを画像認識するための撮像部品(図示せず)を備え、撮像部品を用いて、ピニオンヘッド35上の識別マーカ34の角度から、ワークストッカ1が保持しているワークWの径を導出するように構成してもよい。択一的には、搬送装置120は、第1のプレート10の第1のラック16の始点36および/または終点37を画像認識して、ワークストッカ1が保持しているワークWの径を判定してもよい。
【0040】
図7(a)および
図7(b)は、
図5(a)および
図5(b)と同様の平面図および断面図であり、別の識別マーカ34を示す。
図7(b)に示すように、第1のプレート10が複数(図中では9個の)の第1の貫通孔18を有し、第2のプレート20が単一の第2の貫通孔28を有する。ワークストッカ1は、第1および第2の貫通孔18,28に挿通される挿通ピン40を有し、挿通ピン40は、9段階中5番目の中程度のワークWの径に対応する第1の貫通孔18および単一の第2の貫通孔28に挿通されている。これにより、第1および第2のプレート10,20の互いに対する相対的位置、すなわち第1および第2の開口部12,22を貫通するワークWの径を固定することができる。
【0041】
第2のプレート20は、1〜9までの数字(識別マーカ)が付され、第1および第2のプレート10,20の互いに対する相対的位置、すなわち挿通ピン40が挿通される第1の貫通孔18の位置に依存して、露出される数字が変化するように構成されている。
図7(a)に示すワークストッカ1は、第1のプレート10に最も近い位置に、9段階中5番目の中程度のワークWの径を示す数字「5」を表示し、ワークWの径を段階的に大きくするとき、露出される数字も大きくなるように構成されている。
【0042】
図8(a)および
図8(b)は、
図5(a)および
図5(b)と同様の平面図および断面図であり、さらに別の識別マーカ34を示す。
図8(b)に示すように、第1のプレート10が単一の第1の貫通孔18を有し、第2のプレート20が複数(図中では9個の)の第2の貫通孔28を有する。同様に、ワークストッカ1は、第1および第2の貫通孔18,28に挿通される挿通ピン40を有し、挿通ピン40は、単一の第1の貫通孔18および9段階中5番目の中程度のワークWの径に対応する第2の貫通孔28に挿通されている。これにより、第1および第2のプレート10,20の互いに対する相対的位置、すなわち第1および第2の開口部12,22を貫通するワークWの径を固定することができる。
【0043】
第2のプレート20は、1〜9までの数字(識別マーカ)が付され、第1および第2のプレート10,20の互いに対する相対的位置、すなわち挿通ピン40が挿通される第2の貫通孔28の位置に依存して、露出される数字が変化するように構成されている。
図8(a)に示すワークストッカ1は、第1のプレート10に最も近い位置に(露出した最も右側に)、9段階中5番目の中程度のワークWの径を示す数字「5」を表示し、ワークWの径を段階的に大きくするとき、表示される数字も大きくなるように構成されている。
【0044】
なお、第2のプレート20に付される識別マーカは、数字に限定されず、アルファベットや色彩など、搬送装置120が画像認識できるものであれば、任意の形態を有していてもよい。
【0045】
このように本実施形態によれば、第1および第2のプレート10,20の互いに対する相対的位置は、ワークWの径(大きさ)に応じて段階的または連続的に調整することができるので、簡便な構成で、任意の径を有するワークWを保持できる汎用性の高いワークストッカ1を提供することができる。
【0046】
図9は、
図5(a)と同様の平面図であり、変形例に係る第1および第2のプレート10,20を示す。この第1および第2のプレート10,20の第1および第2の開口部12,22は、複数のホームベースプレートを連結したような形状、または鋸歯のような形状を有する。変形例に係るワークストッカ1は、トレイ2のX方向に並置されるワークWの数を増やすことができるので、トレイチェンジャ110によるトレイ2の交換頻度を低減し、生産効率を改善することができる。
【0047】
図10(a)および
図10(b)は、
図3(a)および
図3(b)と同様の平面図であって、別の変形例に係る第1および第2のプレート10,20の第1および第2の開口部12,22を示す。
図3(a)および
図3(b)に示す第1および第2の保持部14,24は、二等辺三角形の斜辺となるような平面形状を有するが、
図10(a)および
図10(b)に示す第1および第2の保持部14,24は、直線ではなく、ガウス曲線、正弦曲線、または放物線の一部を軌跡とする平面形状を有する。第1および第2のプレート10,20はそれぞれ、ワークWの側面における互いに離間した2つの位置(矢印Cで示す)でワークWを確実に保持することができる。
【0048】
また、このワークストッカ1は、ワークWを把持する際に、第1および第2の保持部14,24のY方向の変位量を小さくすることができるので、トレイ2のY方向に並置されるワークWの数を増やすことができるので、トレイチェンジャ110によるワークストッカ1の交換頻度を低減し、生産効率を改善する(効率的な機器配置を実現する)ことができる。
【0049】
さらに、
図3と
図10を比較すると理解されるように、変形例に係るワークストッカ1は、小さい径を有するワークWから比較的に大きい径を有するワークWを保持することができ、ワークWの径の適用可能な範囲を広げることができる。
【0050】
上記説明した実施形態および変形例において、第1および第2の保持部14,24は、ワークWの硬度より低い硬度を有する材料で形成されてもよいし、および/またはワークWの硬度より低い硬度を有する材料で形成された緩衝部(図示せず)を有してもよい。このように構成することにより、第1および第2の保持部14,24がワークWを保持する際に、保持されるワークWの表面に傷や凹みが形成されないようにすることができる。
【0051】
上述のワークWの硬度より低い硬度を有する材料は、任意のものを採用することができるが、同様に耐薬品性を有する材料であることが好ましく、第1および第2の保持部14,24をMCナイロン(6ナイロンまたはポリアミド樹脂)で形成してもよいし、MCナイロンで形成されたカバー部材(クッション部材)を緩衝部として第1および第2の保持部14,24に固着させてもよい。また第1および第2のプレート10,20全体をMCナイロンプレートで形成してもよい。MCナイロンの他、ワークWの硬度より低い硬度を有するゴム材料、樹脂材料、および/または繊維材料を用いて、第1および第2の保持部14,24またはカバー部材を形成してもよい。
【0052】
本発明の実施の形態、実施の態様を説明したが、開示内容は構成の細部において変化してもよく、実施の形態、実施の態様における要素の組合せや順序の変化等は請求された本発明の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、工作機械で加工されるワークを保持するワークストッカに利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1…ワークストッカ、2…トレイ、3…側面、4…端面、5…底面、6…第1のレール、7…第2のレール、10…第1のプレート、12…第1の開口部、14…第1の保持部、15…第1の窓部、16…第1のラック、18…第1の貫通孔、20…第2のプレート、22…第2の開口部、24…第2の保持部、25…第2の窓部、26…第2のラック、28…第2の貫通孔、30…ベース部、32…ピニオン、34…識別マーカ、35…ピニオンヘッド、36…第1のラックの始点、37…第1のラックの終点、40…挿通ピン、100…工作機械、200…ガントリシステム、110…トレイチェンジャ、120…搬送装置、130…反転装置、140…計測装置、150…洗浄装置、W…ワーク