(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6967554
(24)【登録日】2021年10月27日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】レンズモジュール
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20211108BHJP
G03B 30/00 20210101ALI20211108BHJP
【FI】
G02B7/02 B
G03B30/00
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-133331(P2019-133331)
(22)【出願日】2019年7月19日
(65)【公開番号】特開2020-27295(P2020-27295A)
(43)【公開日】2020年2月20日
【審査請求日】2019年7月19日
(31)【優先権主張番号】201821318267.5
(32)【優先日】2018年8月15日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519312957
【氏名又は名称】エーエーシー オプティックス ソリューションズ ピーティーイー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100128347
【弁理士】
【氏名又は名称】西内 盛二
(72)【発明者】
【氏名】王 海龍
【審査官】
登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−176146(JP,A)
【文献】
特開平10−246847(JP,A)
【文献】
特開2013−218116(JP,A)
【文献】
特開2014−026253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02
G03B 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鏡筒と、鏡筒内に収容されるレンズ群とを備えるレンズモジュールにおいて、前記鏡筒が、水平方向に延在する第1筒壁と、第1筒壁から折り曲げられて延在する第2筒壁とを備え、前記第1筒壁が物体側に近接する第1表面と、像側に近接する第2表面とを有し、前記レンズ群が、物体側から像側へ配列される第1レンズと第2レンズとを少なくとも含み、前記第1レンズがガラスレンズであり、前記第1レンズが、第1光学部と前記第1光学部を取り囲む第1周辺部とを備えるレンズモジュールであって、
前記第1筒壁の第2表面は、第1筒壁と第2筒壁との接続箇所から光軸方向へ水平延在する第1平面と、第1平面に繋がりつつ第1レンズへ突起する突起部と、突起部から光軸へ水平延在する第2平面とを含み、前記第1周辺部は、第1周辺部の外縁から光軸方向へ水平延在する第3平面と、第3平面に繋がる凹溝部と、凹溝部に繋がる第4平面とを含み、前記突起部は、前記凹溝部に貼り合わせられ、
前記突起部は、第1平面から光軸および像側へ傾斜延在する第1斜面と、第1斜面に繋がる第1円弧渡り面と、第1円弧渡り面から光軸へ水平延在する第5平面と、第5平面に繋がる第2円弧渡り面と、第2円弧渡り面から光軸および物体側へ傾斜延在する第2斜面とを備え、第2斜面は、第2平面に繋がり、
前記凹溝部は、第3平面から光軸および像側へ傾斜延在する第3斜面と、第3斜面に繋がる第3円弧渡り面と、第3円弧渡り面から光軸へ水平延在する第6平面と、第6平面に繋がる第4円弧渡り面と、第4円弧渡り面から光軸および物体側へ傾斜延在する第4斜面とを備え、
前記第1円弧渡り面は、前記第3円弧渡り面と間隔をおいて設けられ、前記第2円弧渡り面は、前記第4円弧渡り面と間隔をおいて設けられ、前記第6平面は、前記第5平面に貼り合わせられ、前記第3斜面は、前記第1斜面に貼り合わせられ、前記第4斜面は、前記第2斜面に貼り合わせられることを特徴とするレンズモジュール。
【請求項2】
前記凹溝部の水平方向における長さは、溝深方向に向かって次第に減少することを特徴とする請求項1に記載のレンズモジュール。
【請求項3】
前記第1斜面の傾きと前記第2斜面の傾きとは、等しいことを特徴とする請求項1に記載のレンズモジュール。
【請求項4】
前記第3平面は、円弧渡りで前記第3斜面に接続され、前記第4斜面は、円弧渡りで前記第4平面に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のレンズモジュール。
【請求項5】
前記第1レンズの外縁端面は、前記鏡筒の内壁面と間隔をおいて設けられていることを特徴とする請求項1に記載のレンズモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像レンズ分野に関し、具体的にレンズモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
科学技術の継続的な発展に伴い、電子機器は、知能化へ発展しつつあり、デジタルカメラに加えて、タブレットPC、携帯電話などの携帯型電子機器にもレンズモジュールが配備されている。人々の使用需要に応じるように、レンズモジュールで撮影された物体の映像品質は、より高く要求される。
【0003】
しかし、従来のレンズ構造では、ガラスレンズに外径精度の問題があるため、レンズを鏡筒または他の部品に嵌合する必要があるが、ガラスレンズの組み合わせ方式がずっと難関となっている。ガラスレンズの嵌合真円度が良くないと、レンズの全体性能に影響を与えてしまう。従来の嵌合方式には、依然として大きな改良余地が存在する。ガラスレンズと各ユニットとの嵌合をより安定にさせ、レンズの全体性能を向上させるために、新型のレンズモジュールを提供する必要が生じる。
【発明の概要】
【0004】
上記問題を解決すべく、本発明は、レンズモジュールを提供する。前記レンズモジュールは、鏡筒と、鏡筒内に収容されるレンズ群とを備え、前記鏡筒が、水平方向に延在する第1筒壁と、第1筒壁から折り曲げられて延在する第2筒壁とを備え、前記第1筒壁が、物体側に近接する第1表面と像側に近接する第2表面とを有し、前記レンズ群が、物体側から像側へ配列される第1レンズと第2レンズとを少なくとも含み、前記第1レンズがガラスレンズであり、前記第1レンズが、第1光学部と前記第1光学部を取り囲む第1周辺部とを備え、前記第1筒壁の第2表面は、第1筒壁と第2筒壁との接続箇所から光軸方向へ水平延在する第1平面と、第1平面に繋がりつつ第1レンズへ突起する突起部と、突起部から光軸へ水平延在する第2平面とを含み、前記第1周辺部は、第1周辺部の外縁から光軸方向へ水平延在する第3平面と、第3平面に繋がる凹溝部と、凹溝部に繋がる第4平面とを含み、前記突起部は、前記凹溝部に貼り合わせられる。
【0005】
1つの改良として、前記凹溝部の水平方向における長さは、溝深方向に向かって次第に減少する。
【0006】
1つの改良として、前記突起部は、第1平面から光軸および像側へ傾斜延在する第1斜面と、第1斜面に繋がる第1円弧渡り面と、第1円弧渡り面から光軸へ水平延在する第5平面と、第5平面に繋がる第2円弧渡り面と、第2円弧渡り面から光軸および物体側へ傾斜延在する第2斜面とを備え、第2斜面は、第2平面に繋がる。
【0007】
1つの改良として、前記第1斜面の傾きと前記第2斜面の傾きとは、等しい。
【0008】
1つの改良として、前記凹溝部は、第3平面から光軸および像側へ傾斜延在する第3斜面と、第3斜面に繋がる第3円弧渡り面と、第3円弧渡り面から光軸へ水平延在する第6平面と、第6平面に繋がる第4円弧渡り面と、第4円弧渡り面から光軸および物体側へ傾斜延在する第4斜面とを備える。
【0009】
1つの改良として、前記第1円弧渡り面は、前記第3円弧渡り面と間隔をおいて設けられ、前記第6平面は、前記第5平面に貼り合わせられる。
【0010】
1つの改良として、前記第2円弧渡り面は、前記第4円弧渡り面と間隔をおいて設けられ、前記第6平面は、前記第5平面に貼り合わせられる。
【0011】
1つの改良として、前記第3斜面は、前記第1斜面に貼り合わせられ、前記第4斜面は、前記第2斜面に貼り合わせられる。
【0012】
1つの改良として、前記第3平面は、円弧渡りで前記第3斜面に接続され、前記第4斜面は、円弧渡りで前記第4平面に接続されている。
【0013】
1つの改良として、前記第1レンズの外縁端面は、前記鏡筒の内壁面と間隔をおいて設けられている。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、下記の有利な作用効果を有する。
本発明のレンズモジュールでは、鏡筒の突起部と第1レンズの凹溝部とで形成される凹凸嵌合構造により、嵌合真円度がより良好であり、嵌合がより安定であり、レンズの全体性能がある程度に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係るレンズモジュールの構造断面模式図である。
【
図3】本発明に係る第1レンズの構造断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の解決手段及びその各態様のメリットがより良く理解されるように、以下では、具体的な実施形態を用いて図面を組み合わせて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例では、紙面の左右方向は、水平方向と呼ばれ、紙面の水平方向に垂直な方向、即ち紙面の上下方向は、鉛直方向と呼ばれる。本発明では、中心軸線の方向は、鉛直方向に平行となる。
【0017】
実施例1
図1に示すように、本発明は、新型のレンズモジュールを提供する。当該レンズモジュールは、鏡筒1と、鏡筒1内に収容されるレンズ群2とを備える。ここで、レンズ群2は、鏡筒1の物体側から像側への方向に沿って順次配列される第1レンズ21および第2レンズ22を含む。
【0018】
本実施形態では、
図2に示すように、鏡筒1は、光通過孔13が形成され、且つ水平方向に延在する第1筒壁11と、第1筒壁11から折り曲げられて延在する第2筒壁12と、第1筒壁11と第2筒壁12とで囲まれた収容空間とを有する。ここで、第1筒壁11は、物体側に近接する第1表面と、像側に近接する第2表面とを有する。鏡筒1は、一体構造であってもよく、別体構造であってもよい。
【0019】
図3に示すように、レンズ群2は、鏡筒1の物体側から像側への方向に沿って互いに嵌合する第1レンズ21、第2レンズ22、第3レンズ23および第4レンズ24を備え、第1レンズ21は、第1光学部25と、第1光学部25を取り囲む第1周辺部26とを備え、他のレンズは、何れも光学部と、光学部を取り囲む周辺部とが設けられている。第1レンズ21は、ガラスレンズであり、第2レンズ22、第3レンズ23と第4レンズ24は、ガラスレンズであってもよく、プラスチックレンズまたは他の材質のレンズであってもよい。また、レンズ群2におけるレンズの数は、これに限定されない。なお、レンズ間に遮光片が設けられてもよいが、当該遮光片は、設けられなくてもよい。
【0020】
第1レンズ21と鏡筒1との嵌合真円度および全体組み立て性能が更に向上するように、第1レンズ21と鏡筒1との嵌合構造について改良を行い、具体的な手段は、下記のようになる。
【0021】
図1と
図2に示すように、第1筒壁11の第2表面は、第1レンズ21に嵌合する第1嵌合部14を有し、第1嵌合部14は、第1筒壁11と第2筒壁12との接続箇所から光軸方向へ水平延在する第1平面141と、第1平面141に繋がりつつ第1レンズ21へ突起する突起部29と、突起部29から光軸へ水平延在する第2平面142とを備える。具体的に、突起部29は、第1平面141から光軸および像側へ傾斜延在する第1斜面291と、第1斜面291に繋がる第1円弧渡り面294と、第1円弧渡り面294から光軸Xへ水平延在する第5平面292と、第5平面292に繋がる第2円弧渡り面295と、第2円弧渡り面295から光軸Xおよび物体側へ傾斜延在する第2斜面293とを有し、第2斜面293は、第2平面142に繋がる。
【0022】
さらに、第1斜面291の傾きと第2斜面293の傾きとが等しいが、両者は、等しくなくてもよい。第1斜面291と光軸Xとは、第1夾角αをなし、第1夾角αが鋭角であることは好ましく、第2斜面293と光軸Xとは、第2夾角βをなし、第2夾角βが鋭角であることは好ましい。
【0023】
更に、
図3に示すように、第1レンズ21が対称構造を呈するので、第1レンズ21の左側部分を例示として説明する。第1レンズ21の上面は、物体側面21Aであり、第1レンズ21の下面は、像側面21Bであり、第1レンズ21の第1周辺部26は、第1周辺部26のエッジから光軸方向へ水平延在する第3平面261と、第3平面261に繋がる凹溝部27と、凹溝部27に繋がる第4平面263とを有する。
【0024】
さらに、凹溝部27は、第1レンズ21の物体側面21Aから像側面21Bへ窪んだ凹円弧面によって形成されるものであり、凹溝部27の水平方向における長さは、溝深方向(即ち、鉛直方向または光軸X方向)に向かって次第に減少する。具体的に、凹溝部27は、第3平面261から光軸Xおよび像側へ傾斜延在する第3斜面271と、第3斜面271に繋がる第3円弧渡り面272と、第3円弧渡り面272から光軸Xへ水平延在する第6平面273と、第6平面273に繋がる第4円弧渡り面274と、第4円弧渡り面274から光軸Xおよび物体側へ傾斜延在する第4斜面275とを有し、第4斜面275は、第4平面263に繋がる。前記第3平面261は、円弧渡りで前記第3斜面271に接続され、前記第4斜面275は、円弧渡りで前記第4平面263に接続されている。
【0025】
図1から分かるように、突起部29は、凹溝部27に貼り合わせられ、具体的に、第1円弧渡り面294は、第3円弧渡り面272と間隔をおいて設けられ、第2円弧渡り面295は、第4円弧渡り面274と間隔をおいて設けられ、第6平面273は、第5平面292に貼り合わせられ、第3斜面271は、第1斜面291に貼り合わせられ、第4斜面275は、第2斜面293に貼り合わせられる。
【0026】
さらに、第1レンズ21の外縁端面211は、第1筒壁11の内壁面と一定の距離をあけ、第1平面141は、第3平面261と間隔をおいて設けられ、および/または、第2平面142は、第4平面263と間隔をおいて設けられている。しかし、他の実施形態では、第1平面141は、第3平面261に部分的に貼り合わせられ、および/または、第2平面142は、第4平面263に部分的に貼り合わせられる。また、第1平面141と第2平面143とは、同一の水平面に位置してもよく、同一の水平面に位置しなくてもよい。第3平面261と第4平面263とは、同一の水平面に位置してもよく、同一の水平面に位置しなくてもよい。
【0027】
本発明では、第1レンズ21と鏡筒1との位置決めおよび組付けは、突起部29と凹溝部27とを当接させて凹凸嵌合構造を形成するだけで実施可能であり、嵌合真円度がより良好であり、嵌合がより安定であり、組み立てがより安定である。また、上記嵌合構造が嵌合部のサイズの調節に一層有利であり、嵌合がより安定であり、レンズの全体性能がある程度に向上する。
【0028】
また、第1レンズ21と第2レンズ22の間、第2レンズ22と第3レンズ23の間、および、第3レンズ23と第4レンズ24の間には、何れも遮光部材3が設けられ、遮光部材3は、鏡筒1の内径によって位置決め・組付けられ、遮光部材3は、遮光片または遮光板であってもよく、遮光片は、迷光を吸収し、必要に応じて、遮光片と遮光板とは、同時に設けられてもよいが、略されてもよい。第2レンズ22と第3レンズ23とは、押圧によって固定され、第4レンズ24の像側面の外縁部分は、接着剤注入または押えリングによって固定される。これにより、全てのレンズは、鏡筒1内に固定される。説明すべきことは、レンズ群におけるレンズの数がこれに限定されず、且つ何れか2つのレンズ同士が他の位置決め方式で位置決め・組付けられる。
【0029】
従来技術よりも、本発明のレンズモジュールでは、鏡筒の突起部と第1レンズの凹溝部とで形成される凹凸嵌合構造により、嵌合真円度がより良好であり、嵌合がより安定であり、レンズの全体性能がある程度に向上する。
【0030】
上述したのは、単に本発明の実施形態に過ぎない。なお、当業者であれば、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、改良を行うこともできるが、これらは、何れも本発明の保護範囲に含まれる。