(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1つの支持体上に、もしくは前後に配置された2つの支持体上に、照射放射線経路および検出光軸のうちの少なくとも1つに沿った振幅マスクおよび位相マスクの組み合わせを備える、請求項1に記載の走査顕微鏡。
少なくとも2つの検出放射線経路を有する分割を提供するために、検出方向において検出光の軸に沿って検出面の上流に二色性のビームスプリッタを備える、請求項1に記載の走査顕微鏡。
位相および振幅のうちの少なくとも一方に影響を与える空間光変調器(SLM)をさらに備え、前記SLMは、検出方向の検出面の上流に位置する検出放射線経路にある、請求項1に記載の走査顕微鏡。
光軸に沿って少なくとも部分的な空間分割を有する異なる検出光波長で作用を及ぼすために、検出放射線経路内に位相マスクとして含まれる色的に作用する位相マスクをさらに備える、請求項1に記載の走査顕微鏡。
前記色的に作用する位相マスクは、検出放射線経路に挿入された色的に作用する光学位相素子であり、かつ1つまたは複数のファイバー入力面と1つまたは複数の波長との間の特定の機能的な割り当てを行う、請求項18に記載の走査顕微鏡。
照射光の分布が、試料平面および空間分解検出器の検出放射線経路のうちの少なくとも一方において少なくとも部分的に空間的に重複しない、請求項19に記載の走査顕微鏡。
顕微鏡の回折限界を超える解像度を有する高解像度画像を生成するために、前記検出器からのデータを使用して回折限界の単一画像を評価する評価装置をさらに備える、請求項1に記載の走査顕微鏡。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の枠内では、試料上でサンプリングされるスポットが検出平面内に静止して撮像される。その後、検出平面からの放射線は非撮像的に再分配されて検出器アレイに導かれる。その際、「非撮像的」という概念は、検出平面内に存在する単一画像に関するものである。当然ながら、それにもかかわらず、この単一画像の個々の面領域を撮像原理に従って撮像することができる。その限りでは、検出器アレイと再分配素子との間には、完全に撮像する光学系が位置していてもよい。しかし、検出平面内に存在する単一画像は、再分配の際にそのようなものとして得られない。
【0010】
「回折限界」という概念は、アッベの理論による回折限界に限定されるものではなく、実際の不十分さまたは制限によって理論上の最大値を20%下回る場合も含まれる。その場合も、単一画像はここでは回折構造と呼ばれる構造を有している。この構造がオーバーサンプリングされる。
【0011】
この原理によって、単一画像にサイズが適合しない検出アレイを使用することが可能になる。検出器アレイの少なくとも1つの面積は、捕捉対象の単一画像より大きい、もしくは、小さいことが有利である。様々な幾何学的構成という概念には、検出器アレイの様々な面積だけでなく、検出平面内の単一画像の寸法の高さおよび幅に関して様々なアスペクト比を有する配置も含まれる。追加的に、検出器アレイのピクセルは、要求される分解能に対して大き過ぎてもよい。検出器アレイのピクセル配置の輪郭が、検出平面内で単一画像が有する輪郭と基本的に異なっていることも許容される。最後に、本発明によれば、検出器アレイは検出平面内の単一画像とサイズが異なっている。この方法における再分配あるいは顕微鏡における再分配素子によって、単一画像とそのサイズによってもたらされる寸法の制限およびピクセル・サイズの制限を考慮する必要なく、検出器アレイを選定することが可能になる。特に、検出器アレイとして、検出器行を使用することができる。
【0012】
LSMは通常、それぞれが異なるサンプリング空間、つまり異なる走査位置に割り当てられた多数の単一画像からのスポットを用いて試料をサンプリングすることによって画像を生成する。
【0013】
本発明による構想は、レーザ走査顕微鏡検査に関して知られているように、並列形式においても、複数のスポットについて同時に実施することができる。そうすれば、試料上の複数のスポットが走査によってサンプリングされ、複数のスポットの単一画像が検出平面上に隣接して静止する。次にこれらのスポットは、面積が相応のサイズである共通の再分配素子によって、あるいは複数の個々の再分配素子によって再分配され、相応のサイズの個々のまたは複数の個々の検出器アレイ上に導かれる。
【0014】
以下の説明は、例示的に単一の点スポットを用いたサンプリングを中心としている。ただし、これは制限として解釈すべきではなく、説明される特徴および原理は、複数の点スポットの並列なサンプリングならびに線スポットの使用についても類似的に有効である。後者はもちろん線の延在方向に交差する方向のみの回折限界であるので、本明細書のこれに関する特徴は一方向(線の延在方向に交差する方向)のみに有効である。
【0015】
本発明による手法によって、ISM法を満足のいく速度かつ妥当な装置コストで実施することができる。本発明によって、高分解能顕微鏡原理に関して、これまでになかった幅広い応用分野が開拓される。
【0016】
再分配あるいは再分配素子を実現するための1つの可能性は、光ファイバー束を使用することである。これを好適には、多モード光ファイバーとして形成してもよい。この束は、その輪郭が検出平面内の回折限界の単一画像の面積に足りる、検出平面内に配置された入口を有している。これに対して、光ファイバーの出口は、上流に検出器アレイが配置された、入口の幾何学的配置とは異なる幾何学的配置で設けられている。その際、光ファイバーの出口側端部を、検出器アレイのピクセル上に直接導いてもよい。検出器行、例えばAPD行またはPMT行に楽に差し込めるように、束の出口がプラグ内に束ねられていれば特に有利である。
【0017】
本発明を理解する上で重要なことは、検出平面内の単一画像を分解するのに用いられる検出器アレイのピクセルと画像ピクセルとを区別することである。概して、各画像ピクセルは検出器アレイのピクセルに正確に割り当てられているが、これらの配置の点で両者は異なっている。中でも本発明の特徴は、検出平面において放射線が画像ピクセルに吸収され、この画像ピクセルがそのサイズおよび配置の点で単一画像のオーバーサンプリングを行うことである。このようにして、単一画像が回折限界で生成されることから回折構造となる、単一画像の構造が分解される。再分配素子は、画像ピクセルが設けられた入口側を有している。入口側は検出平面内に位置している。再分配素子は、各画像ピクセルの放射線を検出器アレイのピクセルへ導く。画像ピクセルから検出器アレイのピクセルへの割り当ては、画像構造を保持しないので、単一画像に関する再分配は非撮像的である。つまり、本発明はまた、汎用的な顕微鏡において、検出装置が、画像ピクセルによって放射線が吸収される、検出平面に位置する入口側を有する非撮像的な再分配素子を備えていることを特徴とする。再分配素子は、画像ピクセルにて吸収された放射線が検出器アレイのピクセルに導かれる出口側をさらに備えており、その際、単一画像に関して、放射線が入口側から出口側へ非撮像的に再分配される。同様に、本発明による方法は、汎用的な方法において、放射線が検出平面内で画像ピクセルによって吸収され、この放射線が単一画像に関して非撮像的に検出器アレイのピクセルに再分配されることを特徴とする。検出器アレイは、そのピクセルの配置およびサイズの点で、検出平面内の画像ピクセルの配置および/もしくはサイズと異なっている。さらに、再分配素子の検出平面内の画像ピクセルは、回折限界に関して単一画像の回折構造がオーバーサンプリングされるように設けられる。
【0018】
高感度の検出器アレイにおいて、放射強度の差が大きい場合に、隣接するピクセルがクロストークによる干渉を示すことが知られている。これを回避するために、好ましい発展構成では、光ファイバーが、出口に隣接する光ファイバーが入口にも隣接するように、入口から出口に導かれる。回折限界の単一画像は急激な放射強度の変化を示さないので、再分配素子のこのような構成によって、隣接して位置する検出器アレイのピクセルが受ける放射強度の差が可能な限り小さくなることが自動的に保証され、その結果、クロストークが最小化される。
【0019】
光ファイバーに基づく再分配の代わりに、再分配素子に様々に傾けられたミラー素子を有するミラーを備えてもよい。このようなミラーは、例えばファセット・ミラー、DMD、または適応ミラーとして構成することができる。その際、最後の2つの変形例では、相応の設定もしくは制御によってミラー素子の傾きが確保される。ミラー素子は、検出平面からの放射線を、幾何学的構成がミラー素子の幾何学的構成とは異なる検出器アレイのピクセル上に導く。
【0020】
ミラー素子は、光ファイバー束の入口における光ファイバーのように、単一画像の回折構造の分解の点で画像ピクセルとなる。(もはや)検出器アレイのピクセル・サイズではなく、ミラー素子のサイズがオーバーサンプリングにとって決定的である。その限りでは、複数の単一検出器の配置は常に検出平面内の画像ピクセルとは異なっている(つまり、より大きい)ので、ここではこれらの単一検出器からなるグループもまた検出器アレイとして理解される。
【0021】
LSMでは、所望の分解能に応じて様々な対物レンズが使用される。対物レンズの交換によって、検出平面内の単一画像の面積が変化する。そのため、撮像方向において検出平面の上流に、単一画像のサイズを検出装置のサイズに適合させるズーム光学系を配置することが好ましい。このようなズーム光学系は、大幅に100%に満たないパーセント範囲内で単一画像のサイズを変化させる。つまり、冒頭で不利であると説明した単一画像のサイズの増倍よりも、非常に容易に実行可能である。
【0022】
好ましくは、試料の照射は、通常のLSMと同様に走査によって行われる。これは必須ではないが、そうすれば最大の分解能向上が得られる。試料を走査によって照射する場合は、照射装置と撮像装置とが共通の走査装置を有していることが目的に適っている。この走査装置は、試料上に照射スポットを導き、試料が撮像される、照射スポットと一致するスポットを、同時に検出器に関して再び走査するので、単一画像が検出平面に静止する。このような構成では、ズーム光学系を、照射装置および撮像装置の共通部分に置くことができる。そうすれば、ズーム光学系によって、単一画像を検出平面内の検出器のサイズに適合させることが可能になるだけでなく、追加的に、利用可能な照射放射線を、対物レンズの選択に伴い変化し得る対物レンズ瞳に、エッジ損失なく完全に結合させることができる。
【0023】
冒頭で既に言及したように、隣接して位置する検出器アレイのピクセル間の、放射強度に応じたクロストークを、光ファイバー束を用いた再分配の際に、束内の光ファイバーの適切な配置によって低減することができる。追加的または代替的に、較正を行うことも可能である。このために、各光ファイバーに次々に放射線を当て、隣接するピクセルにおける干渉信号を捕捉する。このようにして、後の試料の顕微鏡検査の際に隣接して位置するピクセルの放射強度に応じたクロストークを補正するのに用いられる、較正マトリクスが作成される。
【0024】
追加的に、単一画像の回折構造の分解によって、試料のサンプリング時にそれに沿ってスポットが移動される、スポットの移動方向が特定される。この移動方向は、基本的にスキャナの機構(例えば、走査ミラーもしくは可動試料テーブルの機構)から知られているが、ここでは、機械的原因による残留不確実性が生じる。この不確実性は、検出器アレイの個々のピクセルの信号を、相互相関関数を用いて評価することによって排除することができる。その際、試料内の隣接して位置する画像ピクセルに関して、スポットの回折限界の撮像をある程度重複させ、ただしその中心は隣接していることが役に立つ。このような画像ピクセルの信号を相互相関関数で評価すれば、スキャン機構の不可避の公差に起因して不可避的に残る残留不確実性を、低減あるいは完全に排除できる。
【0025】
向上した分解能の他に、個々の検出素子(検出平面内の画像ピクセルに割り当てられている)の測定列からの信号の空間的および時間的な相関関数を介して、スポットによって捕捉される検出体積内の蛍光体の時間的変化を捕捉することができる。例えば、蛍光相関分光法の場合のように、時間的な相関関数から拡散係数を決定することができ、また、画像ピクセル間の空間的相関関係を含めることによって、方向付けられた拡散および拡散障壁が視覚化される。さらに、蛍光分子の移動経過は、トラッキング用途にとっても重要である。というのも、トラッキング用途では照射スポットが蛍光分子の移動に追従するはずであるからである。ここで説明される配置によって、既にピクセル露光時間内に、移動方向を高精度で特定することが可能になる。そのため、発展構成として、試料内に点スポットもしくは線スポットが静止している際に回折限界の単一画像の時間的変化を特定および評価することによって、試料内の時間的変化を捕捉することが好ましい。
【0026】
また、本発明による手法によって、走査による照射において、例えば位相フィルタを用いて照射分布を変更することが可能になる。これにより非常に容易に、ゴングら(Gong et al.),Opt.Let.,34,3508(2009)に記載されているような方法を実現することができる。
【0027】
本明細書において方法が説明される限り、顕微鏡の運用におけるこれらの工程が制御装置によって実行される。
なお、上述の特徴および以下にこれから説明される特徴は提示された組み合わせにおいてのみでなく、本発明の枠から逸脱することなく、他の組み合わせにおいて、もしくは単独でも使用可能である。
【0028】
以下では本発明を、同様に本発明に本質的な特徴を開示するものである添付図面を参照しながら、例示的により詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、試料2の顕微鏡検査のために形成されたレーザ走査顕微鏡1の概略図である。レーザ走査顕微鏡(以下LSMと略する)1は、制御装置Cによって制御され、照射放射線経路3および撮像放射線経路4を含んでいる。照射放射線経路は、試料2内のスポットを照射し、撮像照射経路4は、検出のためにこのスポットを回折限界で撮像する。照射放射線経路3および撮像放射線経路4は多数の素子を共有している。しかしこのことは、試料2の走査によるスポット照射と同様に、それほど必須ではない。試料を広範囲照射してもよい。
【0031】
LSM1では、試料2の照射が、それ以上には機能的に必要ではない偏向ミラー6およびレンズ7を介してミラー8上に結合されるレーザ光5を用いて行われる。ミラー8は、レーザ光5が、反射角度のもとで発光フィルタ9に落ちるようにする。図示を明確にするために、レーザ光5についてはその主軸のみが描かれている。
【0032】
発光フィルタ9での反射後、レーザ光5はスキャナ10によって2軸に偏向されて、レンズ11および12によって対物レンズ13を通って試料2のスポット14に集束される。その際、スポットは
図1の図示では点状であるが、線状のスポットも可能である。スポット14において励起された蛍光放射線が対物レンズ13、レンズ11および12を介して再びスキャナ10に到達し、その後撮像方向において再び静止した光線が存在する。この光線は、スポット14の蛍光放射線をその波長に関して選択する機能、特に、例えば励起放射線として使用可能なレーザ光5の照射放射線から蛍光放射線を分離する機能を有する発光フィルタ9および15を通って落ちる。レンズ16は、スポット14が全体として、検出平面18に位置する回折限界の画像17に撮像されるようにする。検出平面18は、試料2のスポット14が位置する平面と共役な平面である。スポット14の画像17は、検出平面18において、以下に
図2から
図4に基づいてより詳細に説明される検出装置19によって撮影される。ここで重要なことは、検出装置19が、検出平面18内のスポット14の回折限界の画像17を空間的に分解することである。
【0033】
検出平面18における検出断面上のスポットの強度分布(ガウス分布)が、その下に18aとして
図1に示されている。
制御装置Cは、LSM1の全ての構成要素、特にスキャナ10および検出装置19を制御する。制御装置は様々な走査位置について、各個々の画像17のデータを記録し、その回折構造を分析して試料2の高分解能の全体画像を生成する。
【0034】
図1のLSMは、例示的に、試料上でサンプリングされる唯一のスポットを示している。しかし、例えば
図1の紙面に対して垂直に延在する、線スポットによるサンプリングも可能である。また、
図1のLSMを、試料内の隣接して位置する複数の点スポットがサンプリングされるように構成することも可能である。その場合、これらの点スポットに対応する単一画像17が、検出平面18内に同様に隣接することになる。その場合、検出装置19は、隣接して位置する単一画像17を検出平面18内で捕捉するために相応に構成されている。
【0035】
図2では検出装置19が拡大されて図示されている。この検出装置は、検出器アレイ24に供給する光ファイバー束20から構成されている。光ファイバー束20は単一光ファイバー21から形成されている。光ファイバー21の両端は、検出平面18内に位置する光ファイバー束入口22を形成している。したがって、光ファイバー21の個々の端部は、スポット14の回折限界の画像17を撮影するのに用いられるピクセルである。
図1の実施形態ではスポット14が例示的に点スポットであるので、画像17は、
図1および
図2において検出平面18によって示されている円の内部にその面積が位置するエアリー・ディスクである。つまり、光ファイバー束入口22の面積は、エアリー・ディスクの面積が覆われる程の大きさである。光ファイバー束20内の個々の光ファイバー21の出口は、光ファイバー束入口22とは異なる幾何学的配置で、つまり、光ファイバー21の出口側の端部が内部に隣接して位置する、長さ方向に延在するプラグ23の形で配置されている。プラグ23は、検出器セル24の幾何学的配置に適合するように構成されている。すなわち、光ファイバー21の各出口側の端部が、検出器行のピクセル25のちょうど前に位置している。
【0036】
再分配素子の幾何学的面積は非常に基本的である。すなわち、
図4ではファイバー束によって行われているが、その実施方法に関わらず、再分配素子の幾何学的面積は、入口側で単一画像(あるいは、複数の点スポットの場合には隣接して位置する単一画像)の面積に適合している。再分配素子は、サンプリング原理の尺度で、単一画像17の強度分布が回折限界に関してオーバーサンプリングされるように、検出平面18から放射線を吸収する機能を有している。つまり再分配素子は、検出平面18内に位置するピクセル(
図3の構成では光ファイバーの入口端部によって形成されている)を有しており、このピクセルが、検出平面18における撮像倍率を考慮して回折限界から得られる分解可能な最小構造の少なくとも2分の1倍の大きさである。
【0037】
もちろん、プラグ23の使用は、ピクセル25の前に光ファイバー21の出口側の端部を配置するための多くの可能性のうちの1つに過ぎない。他の接続を用いることも同様に可能である。また、個々のピクセル25を光ファイバー21と直接融合させてもよい。検出器行24を用いることさえ必須ではない。この代わりに、各ピクセル25に対して個々の検出器を使用してもよい。
【0038】
図3および
図4は、光ファイバー束入口22の可能な実施形態を示している。光ファイバー21を、光ファイバー束入口22において互いに融合させてもよい。これにより、より高い充填率が得られる。すなわち、光ファイバー束入口22における個々の光ファイバー21間の空隙が最小化される。他方では、融合によって、隣接する光ファイバー間にある程度のクロストークがもたらされる。これを回避したければ、光ファイバーを接着すればよい。
図4に示されているように、光ファイバー21の端部を四角形に配置することも可能である。
【0039】
好ましくは、個々の光ファイバー21は、光ファイバー束入口22に隣接して位置する光ファイバー21が、検出器アレイ24においても隣接して位置するように、検出器アレイ24の個々のピクセル25に割り当てられる。この手法によって、例えば放射線によって、または個々のピクセル25の信号処理において生じ得る、隣接するピクセル25間のクロストークが最小化される。検出器アレイ24が1つの行であれば、検出平面18の上面視で単一光ファイバーを互いに接続する螺旋体によって、一連の単一光ファイバーを検出器行上に固定することにより、相応な配置が得られる。
【0040】
図3はさらに、光ファイバー束入口22において光ファイバー21の配置の隅部に位置するブラインド・ファイバー26を示している。このブラインド・ファイバーは検出器アレイのピクセル25上には導かれていない。ブラインド・ファイバーの位置には信号の評価に必要な信号強度が存在しない。これにより、光ファイバー21の数および検出器行24もしくは検出器アレイ内のピクセル25の数を、例えば32ピクセルで処理できるように、低減することができる。このような検出器行24は、レーザ走査顕微鏡において他に既に使用されており、その利点は、このようなレーザ走査顕微鏡において信号評価電子機器を1度のみ保持すればよく、既に存在している検出器行24と、検出装置19によって追加される別の検出器行24とを切り替えることができる。
【0041】
図4によれば、基本形状が四角形である光ファイバーが束に使用される。これらの光ファイバーは同様に検出平面において高い被覆率を有しており、つまり、効率的に放射線を集める。
【0042】
図5は
図1のLSM1の発展構成を示しており、このLSMでは検出平面18の上流にズーム光学系27が配置されている。
図1の構成では検出平面18が配置されていた共役な平面が、今では中間像平面28を形成しており、この平面からズーム光学系27が放射線を吸収して検出平面18に導く。ズーム光学系27によって、画像17を最適に検出装置19の入口の面積に適合させることができる。
【0043】
図6は
図1のレーザ走査顕微鏡のさらなる変形を示している。まずここでは、ズーム光学系がズーム光学系29として、照射放射線経路3および撮像放射線経路4によって通過される放射線経路の部分に位置するように配置されている。これにより、画像17のサイズを検出装置19の入口側に適合させることができるだけでなく、撮像放射線経路4に関して対物レンズ13の瞳の充填およびレーザ光5の利用を適合させることができるという利点が得られる。
【0044】
追加的に
図6では、放射線を2つの別々の色チャンネルに分離するビーム・スプリッタを発光フィルタ9の下流に配置することによって、LSM1が2つのチャンネルを持つように形成されている。色チャンネルの対応する素子はそれぞれ、
図1のLSM1で撮像方向において発光フィルタ9の下流に配置されていた素子にそれぞれ対応している。
図6の図示では、2つの色チャンネルが、符号の末尾「a」あるいは「b」によって区別されている。
【0045】
もちろん、2つの色チャンネルを有する実施方法は、ズーム光学系29の使用とは無関係である。しかし、この組み合わせには、両方の色チャンネルにおいてそれぞれ独立して設けなければならず、それにより二重に利用可能となるズーム光学系27が、1度しか必要にならないという利点がある。しかし、当然ながら、ズーム光学系27を
図1による構成においても使用して、ズーム光学系29を用いずに
図6のLSM1を実現してもよい。
【0046】
図7は、検出装置19に関して
図1のLSM1の変形を示している。
今では検出装置19が、個々のファセット31を支持するファセット・ミラー30を備えている。ファセット31は、画像17の分解能の点で、光ファイバー束入口22における光ファイバー21の端部に対応している。個々のファセット31は、その放射線入射の光軸に対する傾きの点で互いに異なっている。レンズ32およびミニレンズ・アレイ33、ならびにビーム重畳にのみ使用される偏向ミラー34とともに、各ファセット31は単一画像17の面部分を検出器アレイ24のピクセル25上に撮像する。その際、ファセット31の配向に応じて、検出器アレイ24を好ましくは2Dアレイとしてもよいが、検出器行も可能である。
【0047】
図8は、
図7の検出装置19の発展構成を示しており、この構成では、放射線を特に良好に検出器行上に分配する屈折素子35がレンズ32の上流に配置されている。
既に言及したように、検出器アレイ24は、その幾何学的形状に関して、さらなる制限なく選定することができる。その場合、当然ながら、検出装置19内の再分配素子を対応する検出器アレイに適合させなければならない。画像17を分解するのに用いられる個々のピクセルは、究極的にはそのサイズに関して、検出器アレイ24によって規定されるのではなく、検出平面18からの放射線の再分配を行う素子によって規定される。エアリー・ディスクの場合、回折限界の撮像ではディスクの直径が、公式によれば1.22λ/NAであり、ここで、λは撮像される放射線の平均の波長、NAは対物レンズ13の開口数である。その場合、半値幅は0.15λ/NAである。高分解能を達成するには、検出の際の空間分解能をこの半値幅の2倍の大きさにする、すなわち半値幅を2度サンプリングすることで足りる。したがって、ファセット素子31あるいは光ファイバー束入口22における光ファイバー21の端部は、回折限界の単一画像の半値幅の、最大で半分の大きさであってもよい。もちろんこれは、光学系が対物レンズ13に応じて作用する撮像倍率の考慮した場合に有効である。つまり、もっとも単純な場合には、半値幅当たり検出平面18内の4×4アレイのピクセルで十分過ぎる程であろう。
【0048】
図5および
図6に基づいて説明したズーム光学系によって、スポット14の回折限界の画像17の回折分布が検出装置19の入口面を最適に満たすような適合が可能になる他、さらに別の運用形式、つまり、検出平面18内に2つ以上のエアリー・ディスクが撮像される運用形式もまた可能になる。検出装置19上に2つ以上のエアリー・ディスクが撮像される測定では、試料2のさらなる深さ平面からの光を、検出装置19の外側のピクセルにおいて検出する。その際、画像を処理する過程で、LSM1の深さ分解能に影響を与えることなく、追加的な信号強度が得られる。したがって、ズーム光学系27あるいは29によって、画像のSN比と深さ分解能との間の妥協点を設定することが可能になる。
【0049】
文献
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DE102006026204A1,DE102008059328A1
レーザ走査顕微鏡(LSM)では、検出器の上流のいわゆるピンホールを回折限界(≦エアリー/4)よりも著しく小さいサイズに縮小することによって、分解能の向上が達成される。その場合、この顕微鏡は共焦点レーザ走査顕微鏡と呼ばれる。「エアリー」は、回折限界の照射スポットの第1の零点によって定義され、光学の文献では定着した概念である。
【0050】
汎用的な蛍光LSMの場合、高い分解能を得るための現行の方法には決定的な欠点がある。それは、試料に由来する検出される光子の数が少ないことに起因してSN比が非常に悪いことであり、このため、実際には分解能の改善を全く達成することができなくなる。
【0051】
汎用的な蛍光LSMの別の欠点は、広視野顕微鏡検査方法と比較しても低い画像撮影速度である。
しかし、今では、同時により良好なSN比でレーザ走査顕微鏡の分解能を高めることも可能である。このためには、より多数の光子を検出可能であるより大きいピンホール直径(約1エアリー)と、サブ・エアリー空間分解検出とを用いて作業しなければならない。画像撮影後には、特別なアルゴリズムを用いてデータの再分類および相殺が行われる。その結果、試料画像において分解能が高められる。このコリン・シェパード(Colin Sheppard)の方法は、文献では「変位したサブ・エアリー検出値の蓄積(Akkumulation verschobener Sub−Airy−Detektorwerte)」とも呼ばれている[3〜7]。
【0052】
上述の方法は、蛍光性の試料に対して機能するだけでなく、コヒーレントに相互作用する材料試料を画像化するためにも使用することができる。ここで、この方法には、検出光子量に関してはほとんど利点がない。むしろ、本質的に全体の伝達関数が2倍の帯域幅を有する瞳関数によって与えられることに利点がある。つまり、より高い物体周波数が、より低い物体周波数と同等に重視される。
【0053】
コヒーレントに相互作用する材料試料へのこの方法の適用性に関して、振幅および位相をも、サブ・エアリー空間分解を用いて高いサンプリング率で測定しなければならないという前提がある。
【0054】
以下では、特に蛍光顕微鏡検査について考察する。
図1〜
図8には、ファイバー束およびPMTアレイに基づいた、高速高感度低ノイズ多素子検出装置が記載されており、LSMについて同時に良好なSN比で分解能を改善することが可能である。
【0055】
画像撮影速度、およびLSMにおける用途への照射光分布の適合可能性を改善し、それによりこれらを従来のLSMに対する利点として確立することを、本発明の課題とみなすことができる。
9.解決法
サブ・エアリー空間分解検出装置を備えたLSMと同様に、原理上の制限により、軸外検出素子について照射点像関数(照射(強度)PSF)と検出点像関数(検出(強度)PSF)との間に相対的なずれが生じる。
【0056】
軸外検出素子(束の外側のファイバー)は、試料平面において照射点像関数に対して若干ずれた点像関数を有している。
全ての検出光53をPMTアレイ61上に再分配する、ファイバー束アレイ64から構成されたサブ・エアリー空間分解検出装置60の技術的に好ましい1実施形態が、特に有利であることが証明されている。
【0057】
従来の場合、照射および検出についての点対称な点像関数が用いられる。それにより、例えば試料の回転もしくは走査方向の回転を可能にする、他の必要とされる光学的構成要素を含む技術コストが回避される。点像関数は数学的により容易に記述することができるので、相殺もより容易になる。
【0058】
従来技術に対する改良として、および、これにより本質的な違いとして、ここに記載される本発明による解決法では、照射PSFおよび検出PSFのうちの少なくとも一方の形状が能動的かつ適切に構造化される。これにより、多数の使途が可能になり、さらには点像関数を特定の用途および特定の試料特性に適合させることも可能になる。
【0059】
本発明による実施形態には、ある用途に最適な技術的パラメータ間の妥協点の選定が要求される境界条件が課せられている。例えば、検出素子の数が限られているため、光学的分解能と、照射光を用いた試料のサンプリング速度との間の妥協点を見出すことが必要であると証明されている。
【0060】
したがって、本発明による方法の核心は、照射点像関数および検出点像関数のうちの少なくとも一方の有利な構成にある。
本発明は、独立請求項の特徴によって特徴付けられる。
【0061】
好ましい発展構成は、従属請求項の対象である。
a)横方向に速度が最適化された照射PSF
照射PSF形状を、瞳あるいは瞳付近において、もしくは対物レンズ瞳と光学的に共役な平面において、空間的位相変調によって変化させることにより(
図9〜
図15)、PSFの周波数成分によって、相殺後にも引き続き検出平面63内の約1エアリーのピンホール直径で少なくとも典型的な共焦点分解が達成可能になる。同時に、PSFは可能な限り広い面積を覆わなければならない。このようにして、本発明によれば、比較的広い試料領域からの試料光の平行化された検出によって、大幅により高い画像撮影速度を達成することができる。したがって、疑似の超高速ミニ・カメラである超高速高感度検出装置60の長所が有効に利用される。
【0062】
本発明によれば、走査の際の速度の利点が、「より粗い」ピクセルの調節(走査ステップ)によって得られる。これはつまり、撮影速度の絶対的な向上が、低速の走査軸の平行化によってのみもたらされることを意味する。しかし、高速の走査軸を平行化すれば、平行化によって照射時間を短縮できるので、撮影速度を相対的な向上が可能になる。しかしこのことは、最大速度にまだ達していない場合にのみ有効である。最大速度に達すれば、同じピクセル数でSN比を高める、もしくは逆に同じSN比でピクセル数を高速軸において減少させる、のいずれかが可能である。
【0063】
本発明による位相板の簡単な好ましい実施形態は、πステップ位相マスク(
図9a)によって与えられる。この位相マスクは、板の中心にπ位相跳躍を有しており、2つの互いに近接して位置する、ほぼフーリエ限界の照射スポットを生成する。つまり、このようなマスクを用いれば、サンプリング速度を2倍に速めることができる。高NA対物レンズを使用する場合、偏極ベクトルを位相跳躍エッジに対して平行に向けなければならない。そうでなければ、中心に位置する最小値が零に達しない。
【0064】
本発明による位相板の別の好ましい実施形態は、n・2πスパイラル位相マスクによって与えられる(
図9bおよび
図9c)。このような位相マスクは、ドーナツ型の形状で試料平面内に照射光分布を生じさせる。ドーナツ照射リングは、従来のLSMの通常の照射PSFと同様に急な側面を有しているが、その広がりによってフーリエ限界の照射スポットの4倍の大きさの面積を覆う。ドーナツ型の外径および内径を変化させることによって、平行化の程度、およびこれによって速度増加分を調節することができる。ドーナツ照射リングによって生成される検出光は、検出装置60上に撮像される。
【0065】
スパイラル位相マスクと組み合わせた高NA対物レンズには、ドーナツ型を生成するための円偏光が必要である。
3つ以上のスポット(≧3)を生成するために、照射放射線経路に適切な位相板を組み込むことも考えられる。
【0066】
b)軸方向に速度が最適化されたPSF
本発明によれば、位相マスクを介して検出PSF形状を構成することにより、検出PSFの周波数成分によって、相殺後にも引き続き少なくとも典型的な共焦点分解が達成可能となり、同時に、z情報を異なる平面にわたって横方向に符号化および最大化することにより、所与の横方向の分解能について可能な限り多くのZ平面が画像に寄与するようになる(
図10)。検出PSFはz位置に応じた横方向の楕円形になるので、これは例えば、円柱レンズを用いることによって達成される。
【0067】
検出放射線経路内の適切な位相マスクによって生じさせることが可能なPSFの傾斜、または螺旋状のPSF形状(ピストゥン、メルナー(Pistun,Moerner)[8]、ゾラーおよびバデリー(Soeller&Baddeley))(
図13)によっても、この方法を実施することができる。
【0068】
z方向に可能な限り点像関数全体の急なエッジを生じさせるために照射PSF形状を追加的に変調すれば、結果として異なるz平面への測定信号の割り当ての負担が軽減される。
【0069】
c)改善されたz分解能/コントラストがより良好なz分解能
さらに、本発明によれば、位相マスクを介して検出PSF形状を変更することにより、PSFの周波数成分によって、相殺後にも引き続き少なくとも典型的な共焦点分解が維持可能となり、ただし、z情報が異なる平面にわたって横方向に符号化および最大化されることにより、所与の横方向の分解能について、可能な限り少ないZ平面が画像に寄与し、z方向のzPSFの導出が可能な限り量的に大きくなる。これに関する解決法の例は、螺旋形状である[8]。
【0070】
上述の効果を、検出光分布に対して可能な限り分離した照射光分布を生じさせることによって強めることができる。つまり、これに関して、2つの異なるマスクが、一方は照射放射線経路において、他方は検出放射線経路において使用される。
【0071】
d)(ほぼ共焦点分解を用いた)空間分解検出装置上の二色の照射色画像化
位相マスクを構成することによって、照射波長に応じて位相関数が異なることにより、照射光学系の焦点において、同時に異なる波長で適用された照射光分布が、試料平面において、および最後には空間分解検出器(ファイバー束)上においても、その空間的な重複が可能な限り少なくなる。その際、本発明によれば、位相関数を生成する光学素子用の最適化可能な適合装置が、色素粒子に応じて適切に調節可能な照射波長の組み合わせのために形成されていることが有利である。
【0072】
その際、位相マスクを使用した照射点像関数および検出点像関数の帯域幅は、回折限界の照射点像関数および検出点像関数と本質的には異ならないので、典型的な共焦点分解を達成することができる。
【0073】
画像データの空間的およびスペクトル的分離のための、画像データの記録に続く相殺は、色分解アルゴリズムを使用して行うことができる。
e)空間分解検出装置(ファイバー束/アレイ検出器)上での多色画像化
ファイバー束内のファイバーと蛍光色スペクトルの波長との間の特定の割り当てを可能にする、色的に作用する光学位相素子を検出放射線経路に挿入することも考えられる(スペクトル検出器の概念)。その際、位相マスクを使用した検出点像関数の帯域幅はやはり回折限界の検出点像関数と本質的には異ならないので、典型的な共焦点分解を達成することができる。
【0074】
照射光分布および検出光分布のうちの少なくとも一方の生成の他に、本発明にとって本質的な1態様は、用途に適合した光分布の構成における柔軟性である。光分布の形状の他に、実用においては中でも照射および検出の波長が変化する。
【0075】
上述の両方の特徴(形状および波長)の点での高度の柔軟性は、空間光変調器によってもたらされる。これに関して、ピクセル化された液晶およびマイクロ・ミラーに基づいた変調器が挙げられる。
【0076】
柔軟性に関する単純な要件は、位相マスクを用いた平行化された運用モードから通常の共焦点モードに切り替え可能でなければならないことである。スライドもしくはレボルバーのような単純な機械的解決手段が、この場合の実施形態である。
【0077】
以下では本発明のさらなる特徴および利点を、添付の概略図を参照して説明する。
本発明は基本的に、対物レンズ瞳平面もしくはその付近に配置された、その横方向の断面に沿った位相において波面に様々な影響を与える素子に基づいており、これにより、物体平面(試料)には変化させることが可能な空間的構造が生じる。このような素子は、大抵の場合、「位相板」もしくは「位相マスク」と呼ばれ、伝達格子の場合のようにエッチングされた凹部を備えた石英ガラスのコーティングおよびエッチングのうちの少なくとも一方によって、または伝達素子の異なる厚さによる位相ずれによって、位相の様々な影響を生じさせることができる(例えば、段付きのガラス板)。この種の位相マスクは、振幅マスクと組み合わせることができる。
【0078】
個々の図面は次の通りである。
図9 照射の2D強度分布による、瞳およびそれに属する断面における位相関数/振幅関数の例の図。
【0079】
図10a) 照射の2D強度分布による、ランプが対向して配置された瞳およびそれに属する断面における半瞳位相ランプの例の図。
図10b) 焦点における2D強度分布の図。
【0080】
図10c) 焦点から200nm外側の2D強度分布の図。
図11a) 照射および検出に対して異なる作用を有する位相マスクの図であって、1つの経路および2つの経路のうちの少なくとも一方における補償されていない位相関数の図。
【0081】
図11b) 照射および検出に対して異なる作用を有する位相マスクの図であって、位相マスクを通って両方向に伝播する光についての補償された位相関数の図。
図11c) 照射および検出に対して異なる作用を有する位相マスクの図であって、位相マスクを通って両方向に伝播する光についての補償された位相関数の図。
【0082】
図12 図11a)による位相マスクの上面図。
図13 超高速高感度空間分解検出装置60と対物レンズ瞳内の振幅マスク/位相マスク48.1とを備えたレーザ走査顕微鏡の図。
【0083】
図14 超高速高感度空間分解検出装置60と対物レンズ瞳内の検出放射線経路に振幅マスク/位相マスク56.1とを備えたレーザ走査顕微鏡の図。
図15 超高速高感度空間分解検出装置60と、フィルタ/ビーム・スプリッタ・ホイール49内の1つまたは複数の振幅マスク/位相マスク49.1とを備えたレーザ走査顕微鏡の図。
【0084】
図16 超高速高感度空間分解検出装置60と、フィルタ/ビーム・スプリッタ・ホイール49および調節可能な検出光学系50内の1つまたは複数の振幅マスク/位相マスク49.1とを備えたレーザ走査顕微鏡の図。
【0085】
図17 超高速高感度空間分解検出装置60と、フィルタ/ビーム・スプリッタ・ホイール49内の1つまたは複数の振幅マスク/位相マスク49.1と、スペクトル空間分解2チャンネル検出とを備えたレーザ走査顕微鏡の図。
【0086】
図18 超高速高感度空間分解検出装置60と、対物レンズ瞳内の1つまたは複数の振幅マスク/位相マスク48.1と、フィルタ/ビーム・スプリッタ・ホイール49内の1つまたは複数の振幅マスク/位相マスク49.1とを備えたレーザ走査顕微鏡の図。
【0087】
図9は、対物レンズの焦点での照射の2D強度分布による、瞳およびそれに属する断面における位相関数/振幅関数の例を示している。
左側には様々な位相マスクが、右側には照射時に対物レンズ瞳においてマスクを使用した際の光軸に対する横方向の位置に応じた物体平面内に生じる強度分布が図示されている。
【0088】
図9a)の左側には、右側および左側の間に生成されるパイの位相跳躍を有する位相マスクが図示されている(半瞳位相マスク)。
右側には、位相マスクを使用しない場合のエアリー輪郭を有する中央に位置するスポットSの代わりに、空間的に分離した互いに近接して位置する2つのスポットS1およびS2が図示されている。
【0089】
図9b)には、最大で2パイの位相遅れを有する、円形の方位角に位相変化が増加するスパイラル位相マスクと、右側には、それによって生じる強度分布が図示されている。
図9c)は、4パイまでの位相跳躍を有するスパイラル位相マスクの図である。
【0090】
これにより、右側に図示されたスポットは、
図9b)の図示よりもさらに互いから離れている。
図9d)には、
図9a)と同様に、例えば振幅マスクAおよび位相マスクPの組み合わせによる、追加の伝達変化のある半空間マスクの重畳が図示されている。
【0091】
これは、相応なコーティングおよびマスクによっても実現することができる。
図示の照射光分布が、前述の検出装置60(検出カメラとして機能する)を使用した画像撮影において平行化を可能にすることが明らかである。というのも、マスクを使用すれば複数の照射スポットが生じるが、これらが互いに非常に近接して位置するので、厚い試料の場合にクロストークの問題が起こり得る。上述の平行化によって、画像撮影速度が高められる。なお、試料内への侵入深さの増加に伴って生じ得る収差が発生した場合、照射の変調が変化する。場合によっては、ここでは専門家らしく適合光学系によって撮像誤差を補正することができる。
【0092】
図10a)は、半瞳位相ランプHPRを使用した焦点での照射の強度プロファイルを示している。
それぞれの半瞳における両方の位相ランプは、上から下へ互いに逆向きに位相変化が推移している。
【0093】
各半瞳における位相ランプは、ここでは典型的には1分間であるくさび角度を有するガラスくさびに対応している。
ここでも、2つの互いに近接して位置する照射スポットが生じている。しかし、焦点の外側の照射の対称性が、
図10b)および
図10c)の撮影と比較すれば、変化している(
図10c)では焦点から200nm外側)。このことは、少ない断面画像で3D構造を撮影することが重要である場合に有利である。これが可能であるのは、異なるz平面からの光が空間的にやや違ったふうにカメラ(
図1〜
図8によるファイバー束の入口面)上で分布されるからである。
【0094】
この軸方向に構造化された照射を用いてデータがより高速かつより良好に分解され、相殺され、展開され得る前に、既知の方法で、ただし状況によってはより少ない画像を用いて、LSMによって画像のzスタックが撮影される。
【0095】
3D試料体積(zスタック)の撮影の際の画像撮影速度を向上するために適した別の照射光分布が、パヴァーニら(Pavani et al.)[8]による回転する二重PSFによって与えられる。
【0096】
図11より、位相マスク/振幅マスクの位置に応じて、マスクが照射もしくは検出または照射および検出の両方に作用することが分かる。検出光が通過しない照射放射線経路内の位置にマスクが位置していれば、
図11a)のようにマスクが構成される。跳躍エッジSもしくは跳躍点の上方および下方において断面の厚さd1およびd2が異なる光透過性の板48.1が例示的に図示されている。
【0097】
図12には、
図11a)のA方向から見たπステップ位相マスクが概略的に図示されている。この位相マスクにより、照射光BLが瞳において
図9a)と同様の位相跳躍を受けている。
【0098】
照射および検出の共通の放射線経路に同一の板が位置していれば、位相マスク/振幅マスクによって検出にも影響が与えられるであろう。
これはしかし、検出される画像を歪めないためには望ましくない。
【0099】
検出に対する作用の除外する
図11b)および
図11c)によるマスクは、検出光が逆の位相構造を、およびこれによってほぼ全体として平行平面板を通過することを支援することができる。
【0100】
図11b)のガラス・プレートは、光軸にほぼ直交するように向けられたある平面内に光軸に対して鏡面対称に位置する2つの位置について、伝達の光学的位相が同一となるように構造化されている。
【0101】
図11b)の構造化されたガラス・プレートは、主カラー・スプリッタとして機能し、追加的に二色性の層49.2を備えており、照射(励起)光BLと試料光DEとの分離を行う。照射光BLは二色性の層49.2に当たって反射し、試料の方向に到達する(
図1〜
図8参照)。試料の検出光DEは、ストーク・シフトを有しているので、対応するように形成された二色性の層に当たって検出方向に伝達される。
【0102】
照射光に対して49.1によって形成される位相分布は、49.1の通過の際に試料光DEに対して同様に、ただし半分の大きさで形成し、試料光DEが構造化されたガラス板から逆の表面構造を通って出射する際に再び持ち上げられることにより、位相差が形成されずにDEが検出方向に到達する。
【0103】
図9b)〜
図9d)および
図10による位相マスクを使用する際も、検出光DE上の空間的に変化する位相分布を回避するために
図9b)あるいは
図9c)と同一の機構を使用することができる。
【0104】
図13には、
図1〜
図8に基づいた、および照射放射線経路45のみに振幅マスク/位相マスク48.1を使用した超高速高感度空間分解検出装置60を使用したレーザ走査顕微鏡の技術的に好ましい実施形態が示されている。照射光によって試料内に生成される試料光53は、対物レンズによって集光され、検出素子62を備えた本来の検出装置61であるファイバー束64から構成された検出装置60に向かって、振幅マスク/位相マスク48.1を通過せずに伝播する。照射および検出の統一あるいは分離は、カラー・スプリッタ・ホイール49上のカラー・スプリッタ49.1にて行われる。
【0105】
照射パターンの構造、例えば2つもしくは3つの照射スポットが、ファイバー束64上にも再び現れている。つまり、例えば、ほぼ2つもしくは3つの検出スポットがここでは生じているが、これらのスポットは照射の試料との相互作用によって、および検出点像関数を用いた畳み込みによって、拡張あるいは変更されている。
【0106】
ファイバー束内のファイバー数が固定されている場合、状況によっては分解能が低下するものの、走査速度が例えば2倍に速まる。
図13に示された技術的に好ましい実施形態とは異なり、
図14では、振幅マスク/位相マスク56.1が検出放射線経路のみに位置している。本発明によれば、3Dスタックの撮影速度の向上もしくは軸方向の分解/コントラストの改善のために、この実施形態を用いることができる。その際、マスク56.1は、光ファイバー入口面64の分布上の平行な検出スポットを生成することによって、
図10による構造を有していてもよい。
【0107】
図15は、本発明による技術的に好ましいLSMの実施形態を示しており、この実施形態では、振幅マスク/位相マスク49.1が、照射光45と検出光53との共通の放射線経路に位置している。これに関して、フィルタ・ホイール49上の振幅マスク/位相マスク49.1は、色分割の機能も担わなければならない。つまり、振幅マスク/位相マスク49.1は、照射光用の二色性の層構造をも有している。
図11b)および
図11c)に従って、この層構造の基本形状は、その作用が照射光45のみに限られるように構成されている(検出方向における位相差の取り消し)。
【0108】
基本的に、フィルタ・ホイール49は、選択的に位相マスクもしくは簡素な二色性のビーム・スプリッタを放射線経路内に挿入するために役立つ。
同様に、照射放射線経路および検出放射線経路のうちの少なくとも一方内に挿入される位相マスクは、矢印で概略的に図示されているように、放射線経路から押出可能に形成されていてもよく、それにより、調節可能な照射モードおよび検出モードのうちの少なくとも一方に関する最大の柔軟性が確保される。
【0109】
図16は、調節可能な焦点光学系20が検出装置60の上流に位置しているという点で
図15と異なっている。この焦点光学系は、適切なサンプリングのために、検出装置60に対して検出光分布53のサイズを適合させる役割を担っている。サイズの適合は、検出光53の波長領域および使用される瞳適合のための対物レンズのうちの少なくとも一方と、およびマスク49.1または
図13によるマスクによって照射放射線経路のみに生成される照射光分布45(例えば、2つのスポットもしくは4つのスポット)とのうちの少なくとも一方に応じて、必要となることがある。
【0110】
図17には、検出光53を検出するための少なくとも2つの検出装置60および60.1を備えた技術的に好ましい実施形態が示されており、検出光53はカラー・スプリッタ55を用いた分離の後にスペクトルが異なっている。少なくとも2つの検出装置60および60.1によって検出される検出光53の波長領域が重複することもあり得る。
【0111】
位相マスクを、例えば49に配置することができる。
図18に提示されている実施形態では、振幅マスク/位相マスク48.1が、瞳あるいは瞳付近において対物レンズの直近に位置している。しかし、サンプリング方向が走査光学系の瞳(焦点)内をちょうど通っていなければ、光分布あるいは48.1の振幅マスク領域/位相マスク領域に関して全く非対称性が生じ得ないことが、本実施形態の小さいサンプリング角度についての利点である。しかし、サンプリング角度を変更した際に、振幅マスク/位相マスク48.1の作用が変化しないことを確認しなければならない。この配置の欠点は、検出光53が同様にマスク48.1を通過することによって変更されてしまう点である。これを防ぐには、特に48.1が位相マスクである場合は、検出光53にのみ作用する位相マスク49.1として、逆の位相マスク構造をカラー・スプリッタ・ホイール49に挿入すればよい。
【0112】
これは例えば、検出方向においてビーム・スプリッタの二色性の層に対して向けられた面に、(
図11に図示されたように)伝達される検出光のみに作用し、48.1の作用を取り消す逆向きの位相マスクを形成またはコーティングすることによって行うことができる。
【0113】
代替的に、49.1の検出光53に対して向けられた平らな面に二色性の層構造を配置し、照射光44がマスク49.1の影響を受けないようにすることによってもこれを実現することができる(
図11b)、
図11c)参照)。