特許第6967579号(P6967579)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6967579眼の虹彩角膜領域のカラー像を作成および処理する方法、ならびにそのための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6967579
(24)【登録日】2021年10月27日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】眼の虹彩角膜領域のカラー像を作成および処理する方法、ならびにそのための装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20211108BHJP
【FI】
   A61B3/10 100
   A61B3/10ZDM
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-508292(P2019-508292)
(86)(22)【出願日】2017年4月27日
(65)【公表番号】特表2019-515773(P2019-515773A)
(43)【公表日】2019年6月13日
(86)【国際出願番号】EP2017060093
(87)【国際公開番号】WO2017186863
(87)【国際公開日】20171102
【審査請求日】2020年4月9日
(31)【優先権主張番号】102016000043929
(32)【優先日】2016年4月29日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】518381709
【氏名又は名称】ニデック テクノロジーズ エッセ・エルレ・エッレ
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デ ジュースティ アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】パジャーロ シモーネ
(72)【発明者】
【氏名】谷戸 正樹
【審査官】 冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0226008(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0181746(US,A1)
【文献】 特開2008−188201(JP,A)
【文献】 特開平03−222937(JP,A)
【文献】 特開2005−131066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 − 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼(100)の虹彩角膜環状領域(101)のカラー像を生成および処理する方法であって、
予備ステップと検査ステップとを含んでおり、
前記予備ステップは、
少なくとも一つのカラー像検出装置(202)と少なくとも一つのカラー照明装置(201)のペアを較正するステップを含んでおり、
前記検査ステップは、
複数のピクセルの二次元アレイからなる前記カラー像検出装置(202)を通じて、眼(100)の虹彩角膜環状領域(101)の少なくとも一つのカラー像を、三つの色次元により定義される色空間内において当該二次元アレイの各画素の色が三つの色成分に関連付けられるように検出するステップAと、
注目領域に対応する検出された前記カラー像内において少なくとも一つのサブ像を選択するステップBと、
選択された前記サブ像について、色成分の平均値、色成分の分散値、色成分の最小値、色成分の最大値、色成分の歪度値、色成分の尖度値、色成分の分布、色成分の分布勾配を含むグループから選ばれた少なくとも一つの統計パラメータを演算するステップCと、
前記少なくとも一つの統計パラメータに基づいて指標を決定するステップDと、
前記指標を検査結果として提供するステップEと、
を含んでおり
前記ステップAにおいては、装置に依拠する色空間内で前記カラー像が提供され、
前記装置に依拠する色空間において選択された前記サブ像を、装置に依拠しない色空間におけるサブ像へ変換するステップFが、前記ステップCに先立って行なわれる、
方法。
【請求項2】
前記ステップCは、前記サブ像の少なくとも一つの演算色を演算することに対応しており、
前記ステップDは、前記装置に依拠しない色空間における前記少なくとも一つの演算色に対応する点と少なくとも一つの比較色に対応する点の間の少なくとも一つの距離を演算することに対応しており、
前記ステップEは、前記少なくとも一つの距離を検査結果として提供することに対応している、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも一つの比較色は、予め定められている、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも一つの比較色は、複数人を対象とした検査キャンペーンを通じて取得されたものである、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記サブ像の前記少なくとも一つの演算色は、平均色に対応しており、
前記平均色は、前記サブ像の全ての画素の三つの色成分の少なくとも一つに基づいている、
請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記検査ステップは、
前記装置に依拠する色空間において眼(100)の虹彩角膜領域(101)の第二カラー像を検出し、注目領域に対応する当該第二カラー像内の第二サブ像を選択し、前記装置に依拠しない色空間における当該第二サブ像の第二演算色を演算するステップと、
前記装置に依拠する色空間において前記眼(100)の虹彩角膜領域(101)の第三カラー像を検出し、前記注目領域に対応する当該第三カラー像内の第三サブ像を選択し、前記装置に依拠しない色空間における当該第三サブ像の第三演算色を演算するステップと、
前記装置に依拠しない色空間における前記第二演算色に対応する点と前記第三演算色に対応する点の間の距離と、前記第二カラー像検出されてから前記第三カラー像が検出されるまでの時間の長さの比を算出するステップと、
前記比を検査結果として提供するステップと、
を含んでいる、
請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第二カラー像と前記第三カラー像の検出に先立ち、前記眼の虹彩角膜領域の第一カラー像を検出し、前記注目領域に対応する当該第一カラー像内の第一サブ像を選択し、当該第一サブ像の第一演算色(平均色など)を演算するステップを含むことにより、前記第一カラー像の検出から前記第二カラー像の検出までに時間間隔をあける、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ステップDにおいて、前記指標は、所定の格付けスケールに基づいて決定される、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
特に請求項1から8のいずれか一項に記載の方法を遂行するように構成された手段を備えている、装置(200、300、400、500)。
【請求項10】
通信ネットワークからダウンロード可能、コンピュータが読み取り可能な媒体に記憶済み、および処理ユニット(391、491、591)のプロセッサが読み取り可能な媒体に記憶済みの少なくともいずれかであるコンピュータプログラム製品であって、
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法における少なくとも前記ステップB、前記ステップC、および前記ステップDを実行するためのプログラムコード命令を備えている、
コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼の虹彩角膜領域のカラー像を作成および処理する方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
眼科医は、眼とその一部を観察することによりその健康状態をチェックし、疾患の診断を行ない、必要に応じて治療法を選択する。
【0003】
眼科医は、眼とその一部のカラー像を見て、眼部の色に基づいて診断を行なうことが多い。
【0004】
眼科医による色の知覚は、客観的要因と主観的要因の影響を受ける。眼の診断の質は、眼とその一部の観察に使用された装置と診断を行なった眼科医の技量に強く依存する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、眼部(特に観察が難しいとされる眼の虹彩角膜領域)の色の客観的評価を支援する方法および装置を眼科医に提供することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の背後にある基本的な思想によれば、注目領域に対応する検出画像から少なくとも一つのサブ画像が選択され、選択されたサブ画像について少なくとも一つの統計パラメータが演算され、演算された統計パラメータに基づいて指標が決定される。
【0007】
そのような少なくとも一つの指標は、少なくとも一つの検査結果として眼科医に提供されうる。
【0008】
少なくとも一つのカラー像検出装置と少なくとも一つのカラー照明装置のペアの較正が、カラー像の検出に先立って行なわれることが重要である。較正は、一度だけ行なわれてもよいし(例えば像検出に使用される医療装置の製造時)、繰り返し行なわれてもよい(例えば一年に一度)。
【0009】
カラー像は、RGB色空間などの装置に依拠しない色空間において検出された後で、CIE LAB色空間などの装置に依拠する色空間(好ましくは知覚的に均一な色空間)におけるカラー像に変換されうる。
【0010】
本発明の背後にある第一の重要な思想によれば、前記サブ像の演算色(平均色など)を演算するために、演算色と比較色(例えば「基準赤」色)の間の距離が演算され、当該距離が検査結果として提供される。
【0011】
本発明の背後にある第二の重要な思想によれば、眼の虹彩角膜領域の複数のカラー像が異なるタイミングで(例えば5ミリ秒〜5000ミリ秒ごとに)検出され、それらが比較される。検出に先立ち、フルオレセインが被検者に投与される。
【0012】
本発明の背後にある第三の重要な思想によれば、所定の格付けスケール(例えばシャイエのアングルピグメンテーションスケール)が使用される。
【0013】
本発明は、本開示の一部と見なされるべき添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0014】
本発明の第一の態様は、眼の虹彩角膜領域のカラー像を生成および処理する方法に対応している。
【0015】
本発明の第二の態様は、眼の虹彩角膜領域のカラー像を生成および処理する装置に対応している。
【0016】
眼の虹彩角膜領域のカラー像の処理は、例えば当該カラー像を検出する医療装置や、当該医療装置に接続されたコンピュータにおいて遂行されうる。
【0017】
本発明の第三の態様は、眼の虹彩角膜領域のカラー像を処理するコンピュータプログラム製品に対応している。当該コンピュータプログラム製品は、通信ネットワークからダウンロードされてもよいし、コンピュータが読み取り可能な媒体に記憶されてもよいし、処理ユニットのプロセッサが読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本願に添付された図面は、明細書の一部を構成し、以下の詳細な説明とともに本発明の実施形態例を示し、説明する。
【0019】
図1A】眼の簡略断面図である。
図1B】眼の簡略正面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る装置を示す簡略ブロック図である。
図3】本発明に係る処理システムの第一実施形態を示す簡略ブロック図である。
図4】本発明に係る処理システムの第二実施形態を示す簡略ブロック図である。
図5】本発明に係る処理システムの第三実施形態を示す簡略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
添付の図面を参照しつつ、実施形態の例を以下詳細に説明する。
【0021】
以降の詳細な説明は、本発明を限定するものではない。本発明の範囲は、添付の請求の範囲によって定められる。
【0022】
明細書を通じて用いられる「一実施形態」という語は、開示対象の実施形態の少なくとも一つに含まれる特定の特徴、構造、あるいは特性を意味する。よって、明細書を通じて様々な箇所に現れる「一実施形態における」という表現は、必ずしも同じ実施形態を参照することを要しない。また、特定の特徴、構造、あるいは特性は、少なくとも一つの実施形態において適当な手法により組み合わせられうる。
【0023】
図1において、符号100は眼を、符号101はその虹彩角膜環状領域を示している。図1Aにおいては、虹彩角膜環状領域101の左側部は虹彩によって定められ、右側部は角膜によって定められ、中間側部は小柱網と隣接組織102によって定められる。
【0024】
例えば図2に示されるような本発明に係る装置は、眼における虹彩角膜環状領域の少なくとも一部を観察し、当該領域の少なくとも一つのカラー像を検出し、当該画像の処理と少なくともひとつの検査結果の提供を行なうように構成されている。当該装置の好ましい実施形態は、環状領域の全体(すなわち図1Bにおいて偏角360°を有する環状部分)を観察できる。当該装置の別実施形態は、例えば偏角180°、120°、または90°を有する一部分、あるいは各々が45°、30°、または15°の偏角を有する複数の部分のセットを観察できる。
【0025】
眼の虹彩角膜領域における組織の状態は、原発開放隅角緑内障、閉塞隅角緑内障、正常眼圧緑内障、低眼圧緑内障、続発性緑内障、原発先天性緑内障、炎症性緑内障、水晶体性緑内障、外傷性緑内障、虹彩角膜内皮(ICE)症候群、母斑症を伴う緑内障、虹彩角膜発育不全、泡沫細胞緑内障、頚動脈海綿静脈洞瘻を伴う緑内障、眼内腫瘍を伴う緑内障、毛様体脈絡膜剥離を伴う緑内障、前房内上皮増殖を伴う緑内障、虹彩分離を伴う緑内障、高眼圧症、小柱網損傷、虹彩角膜組織の血管新生、毛様体の変態、水晶体損傷、病原株などの診断に関連するが、これらに限られるものではない。
【0026】
図1Bに示される360°にわたる虹彩角膜領域は、多数の隣接するサブ領域103に分割される。具体例として、虹彩角膜領域は、同じ偏角45°を有する8個のサブ領域103に分割される。なお、別実施形態においては、サブ領域の数が異なりうる(4個から36個など)。
【0027】
図2の装置における観察・検出部の詳細は、国際公開2015/180923号明細書に記載されている(その図6を参照)。
【0028】
本発明の実施のために使用されうる観察・検出部の別構成は、国際公開2015/180923号明細書に記載されている。
【0029】
なお、本発明は、国際公開2015/180923号明細書に記載されたものとは異なる構成の観察・検出部によっても実施されうる。
【0030】
ある程度拡散された(すなわち異なる複数の方向から到来する)弱い自然光では、眼の虹彩角膜環状領域について所望の観察を行なうことができない。したがって、本発明においては、人工光が好適に使用される。
【0031】
図2の装置(国際公開2015/180923号明細書の図6に対応)は、目の虹彩角膜領域全体の観察に適している。当該装置は、単一の電気(電子)照明装置201からなる固定照明アセンブリ、単一の電気(電子)撮像装置202からなる固定撮像アセンブリ、および固定フロント光学アセンブリ203を備えている。照明装置201は、発光器211を備えている。撮像装置202は、複数の光検出器のマトリクスからなる光センサ212を備えている。
【0032】
本発明の別実施形態においては、当該装置は、複数の照明装置と複数の独立した撮像装置の少なくとも一方を備えうる(例えば国際公開2015/180923号明細書の図2を参照)。当該複数の撮像装置に係る複数の光センサは、独立したセンサであってもよいし、単一の大きな光センサにおける複数の部分であってもよい。
【0033】
図2の撮像アセンブリは、眼の虹彩角膜領域のカラー像を検出するために使用される。当該アセンブリの撮像装置202は、複数のピクセルの二次元アレイからなる。カラー像は、三つの色次元によって定義される色空間にあるので、当該アレイの各ピクセルの色は、三つの色成分に対応付けられる。
【0034】
図2の実施形態において、照明装置201は、次々に異なる照明光路に対応付けられる。各照明光路は、眼の虹彩角膜領域の対応するサブ領域(例えば図1における要素103)に至る。
【0035】
図2の実施形態において、撮像装置202は、次々に異なる撮像光路に対応付けられる。各撮像光路は、眼の虹彩角膜領域の対応するサブ領域(例えば図1における要素103)に端を発する。
【0036】
図2の実施形態において、フロント光学アセンブリ203は、前面204を備えている。前面204は、眼100の前面の近くに(眼100の前面から短い距離に)配置されるように構成されている。フロント光学アセンブリ203は、後面205を備えている。後面205は、眼100の前面から離れて(眼100の前面から長い距離に)配置されるように構成されている。光学アセンブリが眼に装着される前に、粘性光学結合剤(眼科用ゲルなど)が光学アセンブリの前面と角膜の外面の少なくとも一方に添加される。好適な実施例としては、上述したアセンブリの前面と眼の前面の間の「短い距離」は、0.5mm〜2.5mmの範囲であり、好ましくは1.0mm〜2.0mmの範囲である。より短い距離やより長い距離は避けられることが好ましく、特に当該アセンブリと眼の接触は避けられることが好ましい。上述した「長い距離」は、フロント光学アセンブリの長さに依存し、好ましくは1cm〜4cmの範囲であり、より好ましくは1.5cm〜2.5cmの範囲である。
【0037】
図2の実施形態において、アセンブリ203は、中央部206を備えている。中央部206は、前面204と後面205の間に位置している。アセンブリ203は、側部207を備えている。側部207は、中央部206の周囲に位置し、中央部206を完全に(すなわち360°にわたって)囲んでいる。本実施形態においては、中央部206は、八角錐形状を有する透明なプリズム体である。前面204は、凹面である(凸面である角膜の外面に対応している)。本実施形態においては、側部207は、単一の反射エレメント208からなる。反射エレメント208は、プリズムの側面に隣接しており、中央部206に対向する8個の反射面を有する。
【0038】
図2の装置は、リア光学アセンブリ210と単一の固定ビームスプリッタ209も備えている。
【0039】
リア光学アセンブリ210は、二つの異なる機能を有している。一つは、照明装置201から到来して眼100へ向かう照明光ビームを回転させる機能である。もう一つは、眼100から到来して撮像装置202へ向かう撮像光ビームを回転させる機能である。両方の回転ともフロント光学アセンブリ203の対称軸Xを中心になされる。
【0040】
リア光学アセンブリは、回転構造を有している。すなわち、その構成要素の幾つかが回転するように(具体的には、図2に符号Rで示されるフロント光学アセンブリの対称軸Xを中心とする回転運動を実現するように)構成されている。本実施形態においては、中央ミラー221と側方ミラー222が設けられている。両ミラー221、222は、フロント光学アセンブリ203の対称軸Xを中心として段階的に(例えば45°ごとに)回転することにより、複数の(例えば8つの)像が次々とセンサ212上に結ばれる。照明光ビームと撮像光ビームは、それぞれ眼100と中央ミラー221の間、および反射エレメント208と側方ミラー202の間において、フロント光学アセンブリ203の対称軸Xを中心に適宜並行して回転される。
【0041】
図2の実施形態において、アセンブリ203とその全ての構成要素(特に中央部206と側部207)は、不動である。すなわち、眼の虹彩角膜環状領域全体のパノラマ画像は、アセンブリ203を動かすことなく取得されうる。
【0042】
装置200の撮像アセンブリを通じて検出されたカラー像は、続いて処理に供される。
【0043】
図2の実施形態において、光センサ212によって検出された像は、像処理システム290へ送られる(破線参照)。送信には様々な手法が考えられる。なお、予備処理(アナログとデジタルの少なくとも一方)が撮像装置202内で遂行されうる。
【0044】
本発明の別実施形態においては、複数の光センサによって検出された像が画像処理システムへ同時に(例えば並列接続を通じて)あるいは順次に(例えばバス接続を通じて)送られる。
【0045】
図3の実施形態においては、画像処理システム390は、装置300の内側にある。システム390は、例えば相互接続された処理ユニット391(メモリに接続されたマイクロプロセッサなど)、入力装置392(キーボードとマウスの少なくとも一方など)、および出力装置393(スクリーン、プリンタ、およびCD/DVDバーナの少なくとも一つなど)を備えている。撮像装置202と装置300内の画像処理システム390は、接続されている。
【0046】
図4の実施形態においては、画像処理システム490は、装置400の外側にある。システム490は、例えばPCでありうる。システム490は、例えば相互接続された処理ユニット491(メモリに接続されたマイクロプロセッサなど)、入力装置492(キーボード、マウス、および受付装置の少なくとも一つなど)、および出力装置493(スクリーン、プリンタ、およびCD/DVDバーナの少なくとも一つなど)を備えている。撮像装置202と画像処理システム490は、接続されている。当該接続は、電気ケーブルなどにより実現される簡易な接続でもよいし、インターネット接続などによって実現される複雑な接続でもよい(図4の要素496を参照)。カラー像を外部へ送るために、装置400は、送信装置を備えている(図4の要素494を参照)。送信装置は、内部において撮像装置202と直接に接続されている。他方、システム490は、受付装置を備えている(図4の要素492を参照)。
【0047】
図5の実施形態においては、画像処理システム590は、装置500の外側にある。システム590は、例えばPCでありうる。システム590は、例えば相互接続された処理ユニット591(メモリに接続されたマイクロプロセッサなど)、入力装置592(キーボード、マウス、およびCD/DVDリーダの少なくとも一つなど)、および出力装置593(スクリーン、プリンタ、およびCD/DVDバーナの少なくとも一つなど)を備えている。本実施形態においては、カラー像はCDやDVDなどのメモリ装置(図5の要素598を参照)を通じて送られる。カラー像を外部へ送るために、装置500は、CD/DVDバーナを備えている(図5の要素595を参照)。CD/DVDバーナは、内部において撮像装置202と直接に接続されている。他方、システム590は、CD/DVDリーダを備えている(図5の要素592を参照)。
【0048】
一般的に言うと、本発明に係る方法は、
少なくとも一つの撮像装置(例えば図2の装置202を参照)と少なくとも一つのカラー照明装置(例えば図2の装置201を参照)のペアを較正する予備ステップと、
以下のステップを含む検査ステップと、
を含んでいる。
A)虹彩角膜領域(例えば図1の要素101を参照)の少なくとも一つのカラー像を、複数のピクセルの二次元アレイからなる検出装置(例えば図2の装置202を参照)を通じて検出する。当該少なくとも一つのカラー像は、三つの色次元によって定義される色空間内にあり、当該二次元アレイにおける各ピクセルの色は、三つの色成分に対応付けられる。
B)注目領域に対応する前記カラー像内の少なくとも一つのサブ像を選択する。
C)選択された前記サブ像の少なくとも一つの統計パラメータを演算する。当該統計パラメータは、色成分の平均値、色成分の分散値、色成分の最小値、色成分の最大値、色成分の歪度値、色成分の尖度値、色成分の分布、色成分の分布勾配を含むグループから選択される。
D)前記少なくとも一つの統計パラメータに基づいて、指標を決定する。
E)前記指標を検査結果として提供する。
【0049】
撮像に係る一連の流れ(すなわち照明、像取得、および像表示)は、以下の四つの連続する工程を通じて較正されることが一般的かつ好ましい。
1)必要に応じて、適当なハードウェア(業務用ディスプレイ較正ツールなど)と適当なソフトウェアを使用してディスプレイが較正される。USBケーブルを通じて接続された当該ツールは、較正プロファイルを生成する。当該較正プロファイルは保存され、後にディスプレイ色設定として使用される。
2)少なくとも一つの発光器(LEDが一般的)が、像取得に最適な光度を提供する所定の動作電力値に設定される。
3)少なくとも一つの光センサ(CCDが一般的)を照明するためのホワイトバランス補正処理が前記少なくとも一つの発光器になされる。ソフトウェア(検出装置に備えられることが一般的)が、当該光センサのニュートラルな色ヒストグラムを得るための色チャネルゲインの調節を許容する。
4)色チェッカ(業務用ホワイトバランス補正ツールなど)のカラー像が取得され、真の白色との対応が確認される。
【0050】
較正は、一度だけ(例えば画像検出に使用される装置の製造時に)行なわれてもよいし、繰り返し(例えば一年に一度)行なわれてもよい。
【0051】
多くの色空間が存在する。最も普及しているのはRGB色空間とCMY色空間である。他の色空間は、CIE(国際照明委員会)により定められたものとして、CIE XYZ色空間、CIE RAB色空間、CIE LUV色空間などがある。
【0052】
普通の(市販の)色検出装置を通じて、装置に依拠した色空間(例えばRGB)における像を検出し、当該装置に依拠した色空間内でサブ像を選択することが簡易かつ有効である。
【0053】
そして、当該装置に依拠した色空間におけるサブ像を、装置に依拠しない色空間(好ましくは、CIE LAB色空間のような知覚的に均一な色空間)におけるサブ像へ変換することが好ましい。
【0054】
場合によっては、注目領域あるいは「ROI」は、像全体に対応しうる。別の場合においては、単一像が複数の注目領域を含みうる。
【0055】
注目領域の選択は、完全に手作業で行なわれてもよいし、完全に自動的に行なわれてもよいし、自動的手続きによってガイドされた手作業で行なわれてもよい。
【0056】
同じ注目領域から少なくとも一つの標識を含む第一セットと少なくとも一つの検査結果を含む第二セットが提供されうる。検査結果の数は、標識の数と異なってもよい。実際、一つの検査結果は、複数の標識に基づきうる。
【0057】
検査結果は、数と「クラスまたはグレード」の少なくとも一方でありうる。
【0058】
検査結果は、複数の標識を示す処理された画像(白黒またはカラー)などの画像、または線グラフや円グラフなどのグラフでありうる。
【0059】
本発明に係る方法は、複数の検査結果を提供しうる。
【0060】
上記の本発明に係る方法の広い定義の範疇において、様々な実施形態が存在しうる。
【0061】
第一カテゴリの方法において、
ステップCは、サブ像の少なくとも一つの演算色を演算することに対応している。
ステップDは、上記少なくとも一つの演算色と少なくとも一つの比較色の間の少なくとも一つの距離を演算することに対応している。
ステップEは、前記少なくとも一つの距離を検査結果として提供することに対応している。
【0062】
比較色は、予め定められうる。例えば、比較色は、複数人を対象とした検査試験を通じて取得されうる。
【0063】
この第一カテゴリに係る特定の実施形態においては、比較色は「基準赤」色である。距離は、組織中の血液量の指標として考慮されうる。
【0064】
例えば画像処理がRGB色空間内で行なわれ、例えば比較色が「基準赤」色である場合、平均色の演算、および当該比較色と当該平均色の間の距離の演算は、サブ像の全画素における一つの色成分(すなわち「赤」)のみを考慮すればよい。
【0065】
例えば画像処理がCIE LABまたはCIE LUV色空間内で行なわれ、例えば比較色が「基準赤」色である場合、平均色の演算、および当該比較色と当該平均色の間の距離の演算は、サブ像の全画素における二つの色成分(AとB、またはUとV)あるいは三つの色成分を考慮すればよい。
【0066】
第一カテゴリのサブカテゴリに係る方法においては、眼の虹彩角膜領域の複数(少なくとも二つ)のカラー像が、異なるタイミングで検出され、複数(少なくとも二つ)のサブ像(同一あるいは略同一のサブ領域に対応)が選択され、複数(少なくとも二つ)の平均色の演算と相互比較が行なわれる。
【0067】
連続する検出同士の時間間隔は、例えば5ミリ秒から5秒の範囲内でありうる。
【0068】
当該方法は、小柱網を通じた房水の流れを確認するために使用されうる。この場合、検出に先立って被検者にフルオレセインが投与される。隅角検査の場合、フルオレセインは緑色を呈する。したがって、小柱網の緑色レベルが当該小柱網を流れる房水の量に対応する。さらに、小柱網の緑色レベルの変化が、当該小柱網における防水の流れの指標として考慮されうる。
【0069】
例えば画像処理がRGB色空間内で行なわれ、例えば比較色が「基準緑」色である場合、平均色の演算、および当該比較色と当該平均色の間の距離の演算は、サブ像の全画素における一つの色成分(すなわち「緑」)のみを考慮すればよい。
【0070】
例えば画像処理がCIE LABまたはCIE LUV色空間内で行なわれ、例えば比較色が「基準緑」色である場合、平均色の演算、および当該比較色と当該平均色の間の距離の演算は、サブ像の全画素における二つの色成分(AとB、またはUとV)あるいは三つの色成分を考慮すればよい。
【0071】
一般的に言うと、第一カテゴリにおける本サブカテゴリに係る方法は、少なくとも以下のステップを含む検査ステップを含んでいる。
・眼の虹彩角膜領域の第二カラー像を検出し、注目領域に対応している当該第二カラー像内の第二サブ像を選択し、当該第二サブ像の第二演算色(平均色など)を演算する。
・前記眼の虹彩角膜領域の第三カラー像を検出し、前記注目領域に対応している当該第三カラー像内の第三サブ像を選択し、当該第三サブ像の第三演算色(平均色など)を演算する。
・前記第二演算色と前記第三演算色の間の距離と、前記第二カラー像の検出から前記第三カラー像の検出までの時間の長さの比を算出する。
・前記比を検査結果として提供する。
【0072】
この方法は、以下のステップを含む検査ステップも含みうる。
・前記第二カラー像と前記第三カラー像が検出される前に、前記眼の虹彩角膜領域の第一カラー像を検出し、前記注目領域に対応している当該第一カラー像内の第一サブ像を選択し、当該第一サブ像の第一演算色(平均色など)を演算する。
すなわち、第一カラー像の検出から第二カラー像の検出までに時間間隔をあける。
【0073】
第一カラー像の検出と同時または直前に、フルオレセインが被検者に投与されうる。
【0074】
第一演算色(平均色など)は、被検者の基準色として使用されうる。
【0075】
複数回のカラー像検出と色距離算出が行なわれうる。
【0076】
第二カテゴリに係る方法では、ステップDにおいて、所定の格付けスケールに基づいて指標が決定される。この場合、検査結果は、当該格付けスケールにおける「グレード」または「クラス」である。
【0077】
当該格付けスケールは「質的な」格付けスケールでありうる一方で、指標を決定するために使用される少なくとも一つのパラメータは、「量的な」パラメータである。
【0078】
当該格付けスケールは、例えばシャイエのアングルピグメンテーションスケールのような周知の格付けスケールでありうる。例えば、下記のような格付けスケールを用いることも有利である。
新グレード1:シャイエのグレード0と1の組合せに対応
新グレード2:シャイエのグレード2に対応
新グレード3:シャイエのグレード3と4の組合せに対応
【0079】
シャイエのアングルピグメンテーションスケールまたは修正されたシャイエのアングルピグメンテーションスケールに基づく分類は、統計分類器(ディシジョンツリー、ランダムフォレスト、ニューラルネットワーク、サポートベクターマシンなど)を通じてなされることが好ましい。例えば、統計分類器は、統計パラメータ(具体的には平均値と尖度指標値)のセットに基づきうる。
【0080】
より一般的に言うと、分類は、統計パラメータと決定性(すなわち測定された)パラメータの少なくとも一方のセットに基づいて、決定性あるいは統計的な分類器によってなされうる。
【0081】
第二カテゴリに係る方法の第一実施形態では、
ステップCにおいて、サブ像の複数の統計パラメータが演算される。
ステップDにおいて、当該複数の統計パラメータに基づいて指標が決定される。
ステップDは、ディシジョンツリー分類器を通じて遂行される。
【0082】
第一の実施形態では、CIE LAB色空間が使用される。A成分の平均値が検査される。当該平均値が1.825以下であれば、検査結果は新グレード1である。そうでなければ、L成分の尖度指標値が検査される。当該尖度指標値が3.162以下であれば、検査結果は新グレード2である。そうでなければ、検査結果は新グレード3である。
【0083】
第二カテゴリに係る方法の第二実施形態では、
ステップCにおいて、サブ像の複数の統計パラメータが演算される。
ステップDにおいて、当該複数の統計パラメータに基づいて指標が決定される。
ステップDは、ニューラルネットワーク分類器を通じて遂行される。
【0084】
この場合、当該方法は、ニューラルネットワークをトレーニングする予備ステップをさらに備えうる。トレーニングは一度だけ行なわれてもよいし、繰り返し行なわれてもよいし、連続的に行なわれてもよい。
【0085】
特に第二カテゴリに係る方法においては、以下のような構成が有利でありうる。
ステップAにおいて、同じ眼の虹彩角膜領域について異なる角度で(例えば0°、90°、180°、270°)複数のカラー像が検出される。
ステップBにおいて、前記複数のカラー像内における対応する複数のサブ領域が選択される。
ステップCにおいて、前記複数のサブ像の対応する複数の統計パラメータの少なくとも一つのセットが演算される。
ステップDにおいて、対応する複数の指標が、前記少なくとも一つの複数の統計パラメータのセットと所定の格付けスケールに基づいて決定される。
【0086】
この場合、ステップEにおいて、複数の指標と当該複数の指標を示す線形グラフまたは円形グラフの少なくとも一方が、検査結果として提供されうる。指標とグラフの少なくとも一方に加えて、複数の画像が提供されてもよい。
【0087】
本発明に係る装置は、特に上記の方法を遂行するように構成された手段を備えうる。
【0088】
本発明に係る装置は、特に少なくとも上記の方法におけるステップB、C、Dの検査を遂行するように構成された手段を備えうる。当該手段は、例えばそれぞれ図2図3図4図5に示されるシステム290、390、490、590(特にユニット391、491、591)に対応する。
【0089】
当該方法を遂行する手段の幾つかは、ソフトウェア手段であることが一般的である。すなわち、本発明の一態様は、「コンピュータプログラム製品」である。
【0090】
当該製品は、インターネットなどの通信ネットワークからダウンロード可能である。
【0091】
当該製品は、CDやDVDなどのコンピュータが読み取り可能な媒体に記憶されうる。
【0092】
当該製品は、処理ユニットにおけるプロセッサが読み取り可能な媒体(ユニット391、491、591におけるメモリなど)に記憶されうる。
図1A-1B】
図2
図3
図4
図5