特許第6967586号(P6967586)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6967586弓形工作物の摩擦撹拌接合のための弓形ブーム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6967586
(24)【登録日】2021年10月27日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】弓形工作物の摩擦撹拌接合のための弓形ブーム
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/12 20060101AFI20211108BHJP
【FI】
   B23K20/12 340
   B23K20/12 360
【請求項の数】18
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-521399(P2019-521399)
(86)(22)【出願日】2017年10月17日
(65)【公表番号】特表2019-531197(P2019-531197A)
(43)【公表日】2019年10月31日
(86)【国際出願番号】IB2017056448
(87)【国際公開番号】WO2018073747
(87)【国際公開日】20180426
【審査請求日】2019年6月19日
(31)【優先権主張番号】62/410,928
(32)【優先日】2016年10月21日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/628,242
(32)【優先日】2017年6月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513076682
【氏名又は名称】エサブ・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100071010
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 行造
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 千裕
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】ラーソン、ハカン
(72)【発明者】
【氏名】ペルッソン、ハカン
(72)【発明者】
【氏名】スヴァリン、トミ
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0213244(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0102699(US,A1)
【文献】 特開2002−160077(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0255884(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0092809(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の弓形工作物を接合する摩擦撹拌接合装置であって、
片持ち梁の弓形ブームと、
摩擦撹拌接合ヘッドと、
前記摩擦撹拌接合ヘッドを前記片持ち梁の弓形ブームに動作可能に連結して、前記片持ち梁の弓形ブームに対して前記摩擦撹拌接合ヘッドを動かす、サドルとを備える、
摩擦撹拌接合装置。
【請求項2】
前記摩擦撹拌接合ヘッドは、前記サドルに対して旋回可能であり、前記サドルは、前記摩擦撹拌接合ヘッドが前記片持ち梁の弓形ブームに対して回転するようになされた、
請求項1に記載の摩擦撹拌接合装置。
【請求項3】
前記サドルは、駆動機構を介して前記片持ち梁の弓形ブームに動作可能に連結され、前記サドルと該サドルに連結された前記摩擦撹拌接合ヘッドを前記片持ち梁の弓形ブームに対して動かす、
請求項1に記載の摩擦撹拌接合装置。
【請求項4】
前記サドルは、本体部と先端部とを備え、前記本体部は前記片持ち梁の弓形ブームに動作可能に係合し、前記先端部は前記摩擦撹拌接合ヘッドに動作可能に係合し、前記先端部は前記本体部に回転可能に連結される、
請求項1に記載の摩擦撹拌接合装置。
【請求項5】
前記先端部は前記摩擦撹拌接合ヘッドに旋回可能に連結される、
請求項4に記載の摩擦撹拌接合装置。
【請求項6】
前記サドルの本体部は前記片持ち梁の弓形ブーム上に配置される弓形の搬送レールに係合するモータを含み、前記サドルを前記片持ち梁の弓形ブームに対して移動させる、
請求項4に記載の摩擦撹拌接合装置。
【請求項7】
前記サドルの本体部は、
前記片持ち梁の弓形ブーム上に配置される第1弓形軌道に係合する第1レールシステムと;
前記片持ち梁の弓形ブーム上に配置される第2弓形軌道に係合する第2レールシステムとをさらに含み、
前記第1弓形軌道と前記第2弓形軌道はそれぞれ前記片持ち梁の弓形ブームの曲がりに沿う曲がりを有し、前記モータを動作することにより前記サドル、よって前記摩擦撹拌接合ヘッドを前記片持ち梁の弓形ブームの曲がりに沿って移動させる、
請求項6に記載の摩擦撹拌接合装置。
【請求項8】
前記先端部は、前記摩擦撹拌接合ヘッドをその中に受け入れる概してU字型部材を有し、前記摩擦撹拌接合ヘッドは前記先端部に旋回可能に連結される、
請求項4に記載の摩擦撹拌接合装置。
【請求項9】
前記サドルの先端部は、そこから延在する第1および第2アームを有する頭頂部材を含み、前記第1および第2アームは、前記摩擦撹拌接合ヘッドに形成された孔に位置合わせされる、前記第1および第2アームに形成された第1および第2孔を含み、前記第1および第2孔は前記摩擦撹拌接合ヘッドを前記サドルの先端部に旋回可能に固定する1つまたは複数のピンを受け入れる、
請求項4に記載の摩擦撹拌接合装置。
【請求項10】
前記サドルの先端部は、前記頭頂部材から延在するステムを含み、前記ステムは、前記サドルの本体部に形成された1つまたは複数の孔に配置され、前記先端部を前記本体部に回転可能に係合する、
請求項9に記載の摩擦撹拌接合装置。
【請求項11】
前記サドルの本体部は、前記片持ち梁の弓形ブームに動作可能に連結されたモータを含み、前記サドルは前記モータにより前記片持ち梁の弓形ブームに対して移動可能である、
請求項4に記載の摩擦撹拌接合装置。
【請求項12】
前記片持ち梁の弓形ブームは、上面、下面、前記上面と下面の間に延在する第1側面および第2側面を備え、
前記第1側面は;
第1および第2案内軌道を含んで前記サドル上に配置された第1および第2レールと係合し、
搬送軌道を含んで前記サドル上に配置されたモータと係合し、前記モータを動作することは前記サドル、よって前記摩擦撹拌接合ヘッドを前記第1および第2案内軌道に沿って移動させる、
請求項1に記載の摩擦撹拌接合装置。
【請求項13】
前記片持ち梁の弓形ブームに連結されるプラットフォームをさらに備え、前記プラットフォームは、レールシステム上を走行するための複数の車輪を含んで前記摩擦撹拌接合装置を動かして位置決めする、
請求項1に記載の摩擦撹拌接合装置。
【請求項14】
前記摩擦撹拌接合ヘッドは前記サドルに連結され、前記摩擦撹拌接合ヘッドが前記片持ち梁の弓形ブームに対して3自由度で動け、前記摩擦撹拌接合ヘッドが前記片持ち梁の弓形ブームに対して回転し、傾斜し、直線的に移動することを可能にする、
請求項1に記載の摩擦撹拌接合装置。
【請求項15】
前記片持ち梁の弓形ブームは少なくとも90度の角度まで広がる、
請求項1に記載の摩擦撹拌接合装置。
【請求項16】
前記第1レールシステムは、互いに離間し、前記サドルの本体部の第1弓形経路に沿って整列する複数の第1レールを備え;
前記第2レールシステムは、互いに離間し、前記サドルの本体部の第2弓形経路に沿って整列する複数の第2レールを備え;
前記第1レールシステムと前記第2レールシステムは、前記サドルを前記第1弓形経路と前記第2弓形経路に動作可能に連結して前記摩擦撹拌接合ヘッドを前記片持ち梁の弓形ブーム上で安定させて支持するように構成される、
請求項7に記載の摩擦撹拌接合装置。
【請求項17】
前記第1案内軌道は前記下面に隣接して配置され、前記第2案内軌道は前記上面に隣接して配置され、前記搬送軌道は前記第1案内軌道と前記第2案内軌道の間に配置される、
請求項12に記載の摩擦撹拌接合装置。
【請求項18】
前記上面と前記下面は、前記片持ち梁の弓形ブームの全体的曲がりを画定する弓形の面であり、前記第1案内軌道、第2案内軌道および搬送軌道のそれぞれは、前記片持ち梁の弓形ブームの全体的曲がりに沿う、
請求項12に記載の摩擦撹拌接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の参照]
この出願は、「弓形工作物の摩擦撹拌接合のための弓形ブーム」と題する2016年10月21日出願の米国特許仮出願第62/410,928号および「弓形工作物の摩擦撹拌接合のための弓形ブーム」と題する2017年6月20日出願の米国特許出願第15/628,242号の正規の出願であり、両出願のすべてを参照して組み込む。
【0002】
本開示は、該して摩擦撹拌接合に関する。より詳細には、本開示は、弓形工作物の摩擦撹拌接合のために弓形ブームを使用する装置と方法に関する。
【背景技術】
【0003】
摩擦撹拌接合は、よく知られた確立された溶接方法であり、とりわけ、工作物を組み合わせるのに、および、工作物中のクラックを修繕するのに用いられる。工作物を摩擦撹拌接合により互いにつなぐとき、工作物の縁は、工作物の間のシームを通過する回転溶接ツールからの摩擦熱により接合線に沿って可塑化し、溶接ツールは溶接作業中には同時に工作物に対し押し付けられ、工作物は互いに固定される。
【0004】
摩擦接合装置は通常、溶接作業中は工作物に対して押し付けられる回転部本体と、回転部本体から突出し、工作物との加圧動作において工作物間のシームで回転しつつ前方へ案内されるピンとを含む。国際公開第WO 93/10935号パンフレットおよび国際公開第WO 95/26254号パンフレットに記載されるように、撹拌ツールは、工作物よりも硬度の高い材料で製造される。撹拌ツールは、静置された工作物に沿って本ツールを動かすことにより、あるいは、静的に置かれた撹拌ツールに対して工作物を動かすことにより、工作物間のシームを通過するようになされる。
【0005】
摩擦撹拌接合では、撹拌ツールは大きな力で工作物に押し付けられ、工作物間のシームで工作物の所望の可塑化を生じるのに十分なまで撹拌により加熱することができるようになされる。
【0006】
しかし、この方法の1つの欠点は、摩擦撹拌接合が繊細な接合プロセスであり、高価な撹拌ツールを使用する必要があることにある。さらに、非常に大きな工作物を接合するのに必要な押し下げ力を得るために、接合装置は、非常に大きく、かつ、しばしば非常に重い(例えば、100トンまで)必要がある。もう一つの欠点は、大きなドーム、放射状または曲がったシームの摩擦撹拌接合を行うために、大きなガントリーまたは柱とブームのキャリアを用いて、摩擦撹拌接合ヘッドの必要な横および縦(すなわち、XとY方向)の動きを与えなければならない。このことは、摩擦撹拌接合ヘッドの横および縦の動きは、接続される工作物の形状に追従ことができるように大きいということである。
【0007】
上記の観点より、先行技術の装置の欠陥と制限を解消する改良した装置と方法を提供することが望まれている。
【発明の開示】
【0008】
本開示は、1つまたは複数の弓形工作物を接合する摩擦撹拌接合(FSW)装置を対象とする。FSW装置は、弓形ブーム、摩擦撹拌接合ヘッド、および、弓形ブームに対して摩擦撹拌接合ヘッドを動かすために摩擦撹拌接合ヘッドを弓形ブームに動作可能なように連結するサドルとを含む。
【0009】
摩擦撹拌接合ヘッドは、摩擦撹拌接合ヘッドが弓形ブームに対して回転し、傾斜し、直線的に移動するように、弓形ブームに対して3自由度で動くように構成されてもよい。
【0010】
サドルは、弓形ブームと係合する駆動機構を含み、モータを動作させると、サドルおよびそこに連結された摩擦撹拌接合ヘッドが弓形ブームに対して移動する。
【0011】
サドルは、弓形ブームと係合する本体部と、摩擦撹拌接合ヘッドと係合する先端部とを含んでもよい。先端部は、回転可能に本体部に連結されてもよい。あるいは、またはさらに加えて、サドルの先端部は、摩擦撹拌接合ヘッドに旋回可能に連結されてもよい。サドルの本体部は、弓形ブームに配置される搬送レールに係合するモータを含む。あるいは、またはさらに加えて、サドルの本体部は、弓形ブーム上に配置される第1および第2軌道と係合する第1および第2レールシステムを含み、モータを動作させると、サドルおよび摩擦撹拌接合ヘッドが弓形ブームの曲がりに沿って移動する。
【0012】
サドルの先端部は、摩擦撹拌接合ヘッドが先端部に旋回可能に連結されるように、摩擦撹拌接合ヘッドをその中に受ける概してU字型部材を有していてもよい。すなわち、サドルの先端部は、そこから延在する第1および第2アームを有する頭頂部材を含み、第1および第2アームは、摩擦撹拌接合ヘッドに形成された貫通孔と位置合わせされるように形成された第1および第2孔を含む。貫通孔と第1および第2孔は、ピンを旋回可能に受け入れ、摩擦撹拌接合ヘッドをサドルの先端部に固定する。サドルの先端部は、その頭頂部材から延在するステムを含んでもよく、ステムはサドルの本体部に形成された1つまたは複数の孔内に配置されて先端部を本体部に回転可能に係合する。
【0013】
弓形ブームは、上面、下面、第1側面および第2側面を含み、第1側面はサドル上に配置された対応する第1および第2レールに係合する第1および第2軌道を含む。第1側面はまた、サドル上に配置されたモータと係合する搬送軌道を含んでもよく、モータを動作させると、サドルおよび摩擦撹拌接合ヘッドは第1および第2案内軌道に沿って移動する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
ここで例示として、添付図面を参照して、開示された装置の特定の実施形態を説明する。
【0015】
図1】本開示による摩擦撹拌接合装置の斜視図であり、最下位置のドームを示す。
【0016】
図2図1に示す摩擦撹拌接合装置の側面図であるが、ドームは最上位置である。
【0017】
図3図1に示す摩擦撹拌接合装置との関連で用いられる弓形ブームの斜視図を示す。
【0018】
図4A図4Aは、図3に示す弓形ブームの側面図を示す。
【0019】
図4B図4Bは、図3に示す弓形ブームの正面図を示す。
【0020】
図5図5は、図1に示す摩擦撹拌接合装置との関連で用いられるサドルと摩擦撹拌接合ヘッドの詳細斜視図を示す。
【0021】
図6A図6Aは、図5に示すサドルに連結された摩擦撹拌接合ヘッドの別の角度からの詳細斜視図を示す。
【0022】
図6B図6Bは、図5に示すサドルに連結された摩擦撹拌接合ヘッドの詳細側面図を示す。
【0023】
図7図7は、図5に示すサドルの先端部の詳細斜視図を示す。
【0024】
図8図8は、図7に示すサドルの先端部の正面図を示す。
【0025】
図9図9は、図7に示すサドルの先端部の側面図を示す。
【0026】
図10図10は、図1に示す摩擦撹拌接合装置と関連して弓形ブームに連結されたサドルの詳細斜視図を示す。
【0027】
図11図11は、図1に示す摩擦撹拌接合装置と関連して弓形ブームに連結されたサドルの詳細側面図を示す。
【0028】
図12図12は、図1に示す摩擦撹拌接合装置と関連してサドルの背面図を示す。
【0029】
図13図13は、図1に示す摩擦撹拌接合装置との関連で用いられる摩擦撹拌接合ヘッドの斜視図を示す。
【0030】
図14図14は、工作物に接続する支持部材を含む、本開示による摩擦撹拌接合装置の斜視図を示す。
【0031】
図15図15は、180度広がる弓形ブームを含む、本開示による摩擦撹拌接合装置の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、装置と方法が示されるところの添付図面を参照して、本開示による装置と方法をより充分に説明する。しかし、開示された装置と方法は、多くの異なった形式で実現されてもよく、ここで説明する実施形態に限定していると解釈されるものではない。むしろ、これらの形式は、本開示が充分に、かつ完全に、そして本装置と方法の範囲を当業者に充分に伝えるように、提供されるものである。図面を通じて、類似の符号は類似の要素を示す。
【0033】
本開示は、ドームの、放射状の、または、曲がったシーム(本書ではまとめて「弓形表面」という)の摩擦撹拌接合用の改良した装置および方法に関する。図1および2を参照して、本開示による摩擦撹拌接合(FSW)装置10は、弓形接合キャリアビームあるいはブーム20と、摩擦撹拌接合ヘッド50と、摩擦撹拌接合ヘッド50を弓形ブーム20に動作可能に連結し、摩擦撹拌接合ヘッド50を弓形ブームに沿って工作物5に対して位置決めし、動かし、支持するサドル70とを含んでもよい。弓形ブームは、少なくとも90度を僅かにでも超えて延在する。図示の実施形態では、工作物5は弓形ドーム状の形状を有し、詳細には後述するように、弓形表面を有する複数の独立した板要素から構成される。図示されるように、弓形ブーム20は工作物の90度に関して同心の90度部分を有し、接合される工作物5の弓形の輪郭に沿う。このようにして、摩擦撹拌接合ヘッド50を接合経路に沿って動かすのに必要な水平方向および鉛直方向(すなわち、XおよびY)の動きは、最少とされる。工作物5と実質的に同心の弓形ブーム20を用いることにより、摩擦撹拌接合ヘッド50を適切に位置させるのに必要な水平方向Xおよび鉛直方向Yの動きは減じられ、よって、FSW装置10全体のサイズと重量を小さくできる。
【0034】
図2に示されるように、サドル70は、本体部72と先端部74を含んでもよい。先端部74は、摩擦撹拌接合ヘッド50を受け入れるU字型部材であってもよい。使用するときは、先端部74は、サドル70の本体部72に回転可能に連結される。さらに、摩擦撹拌接合ヘッド50は、サドル70の先端部74に旋回可能に連結される。サドル70の本体部72は、サドル70を弓形ブーム20に沿って移動するように、モータ110と第1および第2レールシステム112、114(図10に示す)をも含んでよい。このようにして、摩擦撹拌接合ヘッド50は、弓形ブーム20に関して、沿って移動し、回転し、傾斜することができ、ユーザが、必要に応じていかなる方向における工作物5についても、摩擦撹拌接合ヘッド50を位置決め可能にする。
【0035】
当業者には明らかなように、摩擦撹拌接合ヘッド50は、いかなる摩擦撹拌接合可能な接合ヘッドでもよく、限定する訳ではないがLarssonへの米国特許第6,264,088号に開示された例があり、その開示の全てを本書に組み込む。したがって、簡便化のため、摩擦撹拌接合ヘッドについての記載は省略する。FSW接合ヘッドの例を図5、6A、6Bおよび13に示す。
【0036】
図1〜4Bを参照すると、キャリアビームあるいはブーム20は、接合される工作物5の弓形形状に類似する弓形形状を有していてもよい。接合される工作物5の形状に類似する半径の弓形ブーム20を有することで、摩擦撹拌接合ヘッド50を適切に位置するのに必要な水平X方向および鉛直Y方向の動きが最小化される。すなわち、上記のように、摩擦撹拌接合ヘッド50が弓形ブーム20の弓形形状に沿って移動できるので、摩擦撹拌接合ヘッド50の鉛直Y方向での動きが減じられる。
【0037】
前記のように、一般的に摩擦撹拌接合方法では、摩擦撹拌接合ヘッドを介してかなりの力が工作物に加えられる必要がある。そのため、摩擦撹拌接合ヘッド50の支持構造には高度の安定性と剛性とが望まれる。曲がった経路に沿う種々の位置で摩擦撹拌接合ヘッド50を位置させるのに必要な鉛直Y方向のストロークを減じることにより、FSW装置10の力とトルクは、大きく減じられる。このことは、FSW装置10の寸法と重量を低減することを可能にする。さらに、摩擦撹拌接合ヘッド50を曲がった経路に沿って位置させることで、必要とされる摩擦撹拌接合ヘッド50の傾斜範囲も減じることができる。
【0038】
弓形ブーム20は、上面22、下面24、第1側面26および第2側面28を含み、弓形ブーム20の断面は概して正方形の断面を有するが、長方形や台形などを含むがそれらには限定されない他の断面も可能である。第1側面26は、サドル70(以下でより詳細に説明する)上に配置された対応するレール112、114と係合する第1および第2案内軌道30、32を含む。案内軌道30、32は弓形であり、一般的に弓形ブーム20の形状に対応する。さらに、弓形ブーム20の第1側面26は、サドル70(以下でより詳細に説明する)上に配置されたモータ110と係合する搬送レール34をも含んでもよい。搬送レール34も弓形で、一般的に弓形ブーム20の形状に対応していてもよい。モータ110と搬送レール34は、現在公知の、あるいは、今後開発される手段で、例えば、回転可能にモータ110に連結された歯車(不図示)と係合する搬送レール34に形成された多数の歯を介して連結されてもよく、モータ110を動作することにより、サドル70、したがって摩擦撹拌接合ヘッド50を案内軌道30、32に沿って動かす。
【0039】
弓形ブーム20は、下端において、プラットフォーム40にしっかりと連結されてもよい。プラットフォーム40は、ユーザまたはオペレータに、そこからFSW装置10の操作をモニターしコントロールする場所を提供する。プラットフォーム40は、FSW装置10を移動可能に位置させるためのレールシステム(不図示)上を走るための複数の車輪42を含んでもよい。このようにして、FSW装置10はレールシステムに沿って移動可能に位置して、例えば、工作物5へのアクセスや工作物5の載置と取り外し作業を楽にする。
【0040】
限定する訳ではない実施形態の例である図4A図4Bを参照すると、弓形ブーム20は、約9800cm(約26.75フィート)の全高H、約2830cm(約7.74フィート)の幅W、約8000cm(約21.87フィート)の上面22の曲率半径Rおよび、約6000cm(約16.40フィート)の下面24の曲率半径Rを有していてもよい。図示されるように、プラットフォーム40は、おおよそ6000cm(約16.40フィート)の幅Wと4100cm(約11.21フィート)の長さLを有してもよいが、弓形ブーム20は、本開示の範囲から逸脱しない範囲で別の接合用途に適合するために大きくあるいは小さくなされてもよい。
【0041】
図5図10〜12を参照すると、サドル70は、サドル70を弓形ブーム20に沿って動くようにする公知のあるいは今後開発される手段によって、弓形ブーム20に連結されてもよい。例えば、サドル70は、駆動機構によって弓形ブーム20に連結され、サドル70を、よって摩擦撹拌接合ヘッド50を弓形ブーム20に対して移動してもよい。
【0042】
サドル70は、弓形ブーム20に移動可能に係合する本体部72と、摩擦撹拌接合ヘッド50に係合する先端部74を含んでもよい。摩擦撹拌接合ヘッド50は、公知のまたは今後開発される手段によって、サドル70の先端部74に連結されてもよい。サドル70の先端部74は、摩擦撹拌接合ヘッド50がサドル70の先端部74に対して動けるように、摩擦撹拌接合ヘッド50に連結されてもよい。摩擦撹拌接合ヘッド50は、摩擦撹拌接合ヘッド50がサドル70に対して旋回できるように、サドル70に連結されてもよい。
【0043】
図5〜9を参照すると、先端部74は、摩擦撹拌接合ヘッド50を受け入れるU字型部材でよい。すなわち、先端部74は、そこから延在する第1および第2アーム78、80を有する頭頂部材76を含んでもよい。第1および第2アーム78、80はそれぞれ、そこに形成された第1および第2孔82、84を含んでもよい。使用する際には、先端部74の第1および第2アーム78、80に形成された第1および第2孔82、84は、摩擦撹拌接合ヘッド50の本体部52に形成された対応する孔54(図13)と位置合わせされ、それぞれピンを貫通して受け入れる。このようにして、摩擦撹拌接合ヘッド50は、ピンと対応する孔の軸方向についてサドル70に対して旋回または傾斜できるようにされながら、サドル70の先端部74に固定される。サドル70の先端部74は、概してU字型部材の形状であるとして説明してきたが、先端部74は、摩擦撹拌接合ヘッド50をしっかりと保持し、摩擦撹拌接合ヘッド50がサドル70に対して旋回可能な異なる形状を取ってもよい。さらに、摩擦撹拌接合ヘッド50は、ピン接合を介してサドル70の先端部74に連結されるものとして説明してきたが、他の旋回可能な接続手段を用いることもできる。
【0044】
サドル70の先端部74はまた、頭頂部材76から延在するステム86を含んでもよい。図示されるように、ステム86は、第1および第2アーム78、80の方向から反対方向に延在する。使用する際には、ステム86は、サドル70の本体部72に形成された1つまたは複数の孔100、102内に延在し、先端部74を本体部72にしっかりと連結する(以下に詳細に説明する)。
【0045】
図5および図10〜12を参照すると、サドル70の本体部72は、そこから直交方向に延在する第1および第2部材92、94を有する背面部材90と、第1および第2部材92、94の間に延在する底部材96とを含む。本体部72はまた、追加の支持のための中間部材98を底部材96に平行に含んでもよい。底部材96と中間部材98はそれぞれ、先端部74から延在するステム86を受け入れる孔100、102を含む。このようにして、先端部74の、よって摩擦撹拌接合ヘッド50の本体部72に対する回転を可能にしつつ、先端部74は本体部72にしっかりと固定される。理解されるように、開示された構成は、弓形ブーム20に対する摩擦撹拌接合ヘッド50の第2の回転を提供する。よって、図示の実施形態では、本体部72に対する先端部74の回転軸は、先端部74に対する摩擦撹拌接合ヘッド50の回転軸に直交する。回転軸受、駆動ギア等を含むがこれらには限定されない公知の、または、今後開発される手段により、先端部74は、回転可能に本体部72に連結されてもよい。ある例示の実施形態では、本体部72は、先端部74の円形ラックとピニオンと係合する電動モータとギアボックス(不図示)を含み、モータの起動により、先端部74、よって摩擦撹拌接合ヘッド50が、本体部72、よって弓形ブーム20に対して回転する。
【0046】
サドル70の本体部72は、そこから延在する第1および第2部材92、94を有する背面部材90を含むように説明したが、本体部72は先端部74、よって摩擦撹拌接合ヘッド50をしっかりと保持することが可能な別の形式を取ることもできる。さらに、本体部72と先端部74は別々の部品として説明したが、1つの統合された部品とすることもできる。
【0047】
図10〜12に最もはっきりと示されるように、背面部材90は、そこに搭載されたモータ110を有する。モータ110は、そこから延在するギアボックス111を有し、弓形ブーム20上に配置された搬送レール34と係合してもよい。さらに、背面部材90は、第1および第2レールシステム112、114を含み、弓形ブーム20上に配置された第1および第2案内軌道30、32と係合してもよい。理解されるように、第1および第2レールシステム112、114は、結合する案内軌道30、32の寸法と弓形形状に対応する寸法と形状でよい。このようにして、サドル70は、よって摩擦撹拌接合ヘッド50は、第1および第2案内軌道30、32に沿って移動可能な第1および第2レールシステム112、114を介して弓形ブーム20の曲率に沿って駆動される。したがって、摩擦撹拌接合ヘッド50は、弓形ブーム20に沿った移動、および、弓形ブーム20に対する回転および旋回が可能であり、ユーザは、所望により工作物5に対する種々のいかなる位置にも摩擦撹拌接合ヘッド50を向かわせることができる。
【0048】
使用に際して、FSW装置10は、摩擦撹拌接合ヘッド50に所望の調整可能な力を掛ける構成を含む、コンピュータ数値制御(CNC)システムによりコントロールされる。
【0049】
摩擦撹拌接合ヘッド50は、Larssonへの米国特許第7,156,275号に開示されるようなボビンピン/肩部構成を含んでもよい。ボビンタイプの摩擦撹拌接合ヘッドを用いることにより、工作物5の隣接する板部分に掛ける必要がある下向きの力が減じられることにより、弓形ブーム20の寸法と重量をさらに低減することができる。
【0050】
FSW装置10はまた、ミリングヘッド60を組み込んでもよい。図2および図6A、6Bを参照すると、FSW装置10は、サドル70の先端部74に取り付けられたミリングヘッド60を含んでもよい。使用する際に、ミリングヘッド60を組み込むことにより、FSW装置10は接合の準備を行うこともできる。ミリングヘッド60をサドル70に連結することにより、ミリングヘッド60もまた弓形ブーム20に対して3自由度を有することができる(例えば、線形移動、傾斜および回転)。ミリングヘッド60は、摩擦撹拌接合ヘッド50に対して独立して位置してもよい。
【0051】
このように構成することにより、FSW装置10は、工作物5の隣接する板部分により画定される曲がった経路に沿って摩擦撹拌接合ヘッド50をコントロールしながら移動させて、単一のドーム形状の工作物を得るのに用いることができる。FSW装置10はまた、底部円形形状部材(図1参照)により画定される円形経路に沿って摩擦撹拌接合ヘッド50を動かし、底部円形形状部材を他の板状部材に接合するのに用いることができる。説明したように、FSW装置10は、少ない鉛直方向(Y方向)のストロークによりコントロールできる位置決めを容易にすることができ、したがって、従来のX−Yガントリーシステムや柱とブームのシステムに比較して、よりコンパクトな弓形ブーム20の構成を可能にする。
【0052】
図14を再度参照すると、FSW装置10はまた、摩擦撹拌接合プロセス中に工作物5の剛性を高めるための工作物5を保持する治具に動作可能に接続される支持部材190を含んでもよい。あるいは、図2を参照すると、支持部材190は、弓形ブーム20から離されて、工作物5の剛性を高めるため工作物5の外表面に沿って摩擦撹拌接合プロセス中に延在してもよい。
【0053】
FSW装置10はまた、FSW装置10の部分がFSW装置10の他の部分に対して折り畳むことあるいは動くことを可能にする1つまたは複数のヒンジ(不図示)を含み、工作物5のアクセスをより容易にしてもよい。例えば、弓形ブーム20はプラットフォーム40への接続位置又はその近くにヒンジを含み、弓形ブーム20がプラットフォーム40に対して傾斜し、例えば、上方からの工作物5へのアクセス、または工作物の載置および取り除きを容易にしてもよい。
【0054】
図15を参照すると、FSW装置200は、ここで説明する以外は、上記のFSW装置10と基本的に類似している。図示されるように、弓形ブーム220は工作物5の周囲で180度に広がる。FSW装置200は、工作物5のそれぞれの側部に第1および第2プラットフォーム240を含んでもよい。当業者には理解されるように、180度広がり2箇所で地面に接触する弓形ブーム220を提供することにより、FSW装置200は、安定性が高まり、弓形ブーム220の応力と荷重が低減される。さらに、摩擦撹拌接合ヘッド250とサドル270はほぼ90度に広がるように図示されるが、摩擦撹拌接合ヘッド250とサドル270は、180度(あるいは弓形ブーム220の全長)を含むがこれには限定されずに、より大きくあるいは小さく、広がってもよい。
【0055】
本書で用いられるように、単数形で記載され「一つの」の語で開始された要素や工程は、特に除外することが記載されていない限り、複数の要素や工程を除外するものではないことを理解されたい。さらに、本発明の「一実施形態」の参照は、言及された特徴をも組み込んだ別の実施形態の在り方を除外するものと解してはならない。
【0056】
開示された特定の実施形態が本書で説明されたが、開示がそれらに限定されることは意図されておらず、開示は技術的に許される範囲で広く、明細書は同様にして読まれることを意図している。したがって、上記の説明は、限定するものと解してはならず、特定の実施形態の例示に過ぎない。当業者は、本書に添付の特許請求の範囲の範囲と技術思想内で他の修正を思い描くであろう。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15