特許第6967599号(P6967599)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6967599新規なD−プシコース3−エピマー化酵素及びこれを用いたD−プシコースの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6967599
(24)【登録日】2021年10月27日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】新規なD−プシコース3−エピマー化酵素及びこれを用いたD−プシコースの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 19/02 20060101AFI20211108BHJP
   C12N 9/90 20060101ALN20211108BHJP
   C12N 15/61 20060101ALN20211108BHJP
   C12N 15/63 20060101ALN20211108BHJP
【FI】
   C12P19/02ZNA
   !C12N9/90
   !C12N15/61
   !C12N15/63 Z
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-547057(P2019-547057)
(86)(22)【出願日】2017年11月15日
(65)【公表番号】特表2019-535320(P2019-535320A)
(43)【公表日】2019年12月12日
(86)【国際出願番号】KR2017012970
(87)【国際公開番号】WO2018093153
(87)【国際公開日】20180524
【審査請求日】2019年6月3日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0152947
(32)【優先日】2016年11月16日
(33)【優先権主張国】KR
【微生物の受託番号】KCCM  KCCM11918P
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507406611
【氏名又は名称】シージェイ チェルジェダン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】キム,スジン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ヨンミ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヤンヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソンボ
(72)【発明者】
【氏名】パク,スンウォン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ソンジュン
【審査官】 北村 悠美子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/111563(WO,A1)
【文献】 特表2019−537448(JP,A)
【文献】 WP_018181373, hypothetical protein [Kaistia granuli].,2013年,2020年5月26日検索、インターネット<https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/516951683?sat=46&satkey=92634041>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C12N 9/00−9/99
C12P 19/00−19/64
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
D−フルクトースからD−プシコースを製造するための、配列番号1のアミノ酸配列からなるD−プシコース3−エピマー化酵素(D-psicose 3-epimerase)の使用。
【請求項2】
前記D−プシコース3−エピマー化酵素が、配列番号2のポリヌクレオチド配列によりコードされる、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
D−フルクトースからD−プシコースを製造するための、請求項1に記載のD−プシコース3−エピマー化酵素をコードする、ポリヌクレオチドの使用。
【請求項4】
D−フルクトースからD−プシコースを製造するための、請求項3に記載のポリヌクレオチドを含む、組換えベクターの使用。
【請求項5】
D−フルクトースからD−プシコースを製造するための、請求項4に記載のベクターが導入された、微生物の使用。
【請求項6】
配列番号1のアミノ酸配列からなるD−プシコース3−エピマー化酵素、前記酵素を発現する微生物または前記微生物の培養物を含む、D−プシコース製造用組成物。
【請求項7】
前記組成物が、D−フルクトースをさらに含む、請求項6に記載のD−プシコース製造用組成物。
【請求項8】
配列番号1のアミノ酸配列からなるD−プシコース3−エピマー化酵素、前記酵素を発現する微生物または前記微生物の培養物とD−フルクトースを接触させる段階を含む、D−プシコースの製造方法。
【請求項9】
前記接触が、pH7〜8の条件で、40℃〜75℃の温度条件で、または2時間以上48時間以下行うことである、請求項8に記載のD−プシコースの製造方法。
【請求項10】
前記製造方法が、配列番号1のアミノ酸配列からなるD−プシコース3−エピマー化酵素、前記酵素を発現する微生物または前記微生物の培養物と金属を接触させる段階をさらに含む、請求項8に記載のD−プシコースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、D−プシコース3−エピマー化酵素及びこれを用いたD−プシコースの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
D−プシコース(D-psicose、以下「プシコース」と記載する)は、自然界に極少量存在する希少糖(rare sugar)として知られている単糖類である。砂糖の約70%の甘みを有しながらも、ほぼゼロカロリーに近く、血糖値の抑制及び脂肪合成の抑制などの機能性により新たな食品原料として多くの関心を受けている。
【0003】
このような特徴により、プシコースは、砂糖を代替しうる甘味料として様々な食品への使用が考慮されているが、自然界に極少量存在するため、プシコースを効率的に生産しうる方法の必要性が高まっている。
【0004】
従来知られているプシコースの生産方法は、モリブデン酸イオンの触媒作用を用いたり(非特許文献1)、エタノールとトリエチルアミン(triethylamine)とを一緒に加熱してD−フルクトースからプシコースを生産する化学的方法(非特許文献2)とD−プシコース3−エピマー化酵素を生産する微生物を用いて、D−フルクトースからプシコースを生産する生物学的方法(特許文献1)がある。化学的方法によるプシコースの生産は副産物が多く生成されて、複雑な精製過程が必要となり、生物学的な方法も収率が非常に低く、生産コストが高いという問題がある。
【0005】
このような背景下で、本発明者らはプシコースの生産収率を改善しうる方法を開発するために鋭意研究努力した結果、本出願の新規なD−プシコース3−エピマー化酵素(以下、これを「プシコースエピマー化酵素」とする)を用いる場合、D−フルクトースからプシコースへの転換速度を高めてプシコースの生産収率を著しく向上させうることを確認することにより、本出願を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】大韓民国特許公開第10−2011−0035805号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Bilik V, Tihlarik K, 1973, Reaction of saccharides catalyzed by molybdate ions. IX. Epimerization of ketohexoses. Chem Zvesti 28:106-109
【非特許文献2】Doner LW, 1979, Isomerization of d-fructose by base: liqui d-chromatographic evaluation and the isolation of d-psicose. Carbohydr Res. 70:209-216
【非特許文献3】Diabetes (1990) 39: 1033
【非特許文献4】Scheit, Nucleotide Analogs, John Wiley, New York, 1980; Uhlman
【非特許文献5】Peyman, Chemical Reviews, 90: 543-584, 1990
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願の目的は、新規なプシコースエピマー化酵素、前記酵素をコードするポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含む組換えベクター及び前記ベクターが導入された微生物を提供することにある。
【0009】
本出願の別の目的は、本出願のプシコースエピマー化酵素、前記酵素を発現する微生物または前記微生物の培養物を含むD−プシコース製造用組成物及び前記酵素を用いたD−プシコースの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本出願は一様態として、配列番号1のアミノ酸配列からなるプシコースエピマー化酵素を提供する。
【0011】
一具現例として、本出願のプシコースエピマー化酵素は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも80%、90%、95%、97%または99%の相同性を有するポリペプチドを含んでもよい。D−フルクトースをプシコースに転換する活性を有し、前記相同性を有するアミノ酸配列であれば、前記配列番号1のアミノ酸配列の一部が置換、挿入、変形及び/または欠失された場合が含まれるのは自明である。また、公知の遺伝子配列から調製されうるプローブ、例えば、本出願のプシコースエピマー化酵素をコードする塩基配列の全体または一部に対する相補配列と厳格な条件下でハイブリッド化されるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドとして、プシコースエピマー化酵素の活性を有するポリペプチドも制限なく含まれてもよい。
【0012】
本出願において、用語、「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチド単位体(monomer)が共有結合によって長く鎖状につながったヌクレオチドのポリマー(polymer)であって、非改質されたまたは改質されたポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドを言う。
【0013】
本出願において、用語、「厳しい条件(stringent condition)」とは、ポリヌクレオチド間の特異的混成化を可能にする条件を意味する。これらの条件は、ポリヌクレオチドの長さ及び相補性の程度に依存し、変数は当該技術分野によく知られており、文献(例えば、J. Sambrook et al., 同上)に具体的に記載されている。例えば、相同性が高い遺伝子同士、80%、90%、95%、97%または99%以上の相同性を有する遺伝子同士でハイブリッド化し、それより相同性が低い遺伝子同士はハイブリッド化しない条件、または通常のサザンハイブリッド化の洗浄条件である60℃、1×SSC 、0.1%SDS、具体的には、60℃、0.1×SSC、0.1%SDS、より具体的には、68℃、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度及び温度で1回、具体的には、2回〜3回洗浄する条件を挙げられる。前記ハイブリッド化に使用されたプローブは、塩基配列の相補配列の一部であってもよい。これらのプローブは、公知配列に基づいて作成されたオリゴヌクレオチドをプライマーにして、これらの塩基配列を含む遺伝子断片を鋳型とするPCRによって作製されてもよい。また、当業者は、温度及び洗浄溶液の塩濃度をプローブの長さなどの要素に応じて、必要に応じて調節してもよい。
【0014】
本出願において、用語、「相同性」は、二つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド一部(moiety)間の同一性のパーセントをいう。一つの一部から他の一つの一部までの配列間の相同性は、知られている当該技術によって決定してもよい。例えば、相同性は配列情報を整列して容易に入手可能なコンピュータプログラムを用いて二つのポリヌクレオチド分子または二つのポリペプチド分子間の配列情報、例えば、スコア(score)、同一性(identity)及び類似度(similarity)などのパラメータ(parameter)を直接整列して決定してもよい(例えば、BLAST 2.0)。また、ポリヌクレオチド間の相同性は、相同領域間の安定した二本鎖をなす条件下でポリヌクレオチドを混成化した後、一本鎖特異的ヌクレアーゼで分解して、分解された断片の大きさを決定することにより決定してもよい。
【0015】
また、本出願の配列番号1のアミノ酸配列からなるプシコースエピマー化酵素と相応する活性を有するタンパク質であれば、配列番号1のアミノ酸配列前後の無意味な配列を追加または自然に発生することができる突然変異、あるいはそのサイレント突然変異(silent mutation)を除くものではなく、配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質も本出願の範囲内に属する。
【0016】
さらに、これに制限されるものではないが、本出願のD−プシコース3−エピマー化酵素は、配列番号2のポリヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも80%、90%、95%、97%または99%の相同性を有するポリヌクレオチド配列によってコードされるものであってもよい。また、本出願のD−プシコース3−エピマー化酵素をコードするポリヌクレオチドは、コドン縮退性(codon degeneracy)によって、前記配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質またはそれと相同性を有するタンパク質に翻訳されうるポリヌクレオチドも本出願のポリヌクレオチド配列の範囲に含まれるのは自明である。当業者は、公知の遺伝子組換え技術を用いて、配列番号2の塩基配列の少なくとも一つを置換、付加及び/または欠失して実質的に同等の活性を有する範囲の酵素をエンコードするポリヌクレオチドを製造しうることを理解できる。
【0017】
他の具現例として、本出願のプシコースエピマー化酵素は、カイスティア属(the genus of Kaistia)微生物から由来したものであってもよい。具体的には、本出願のプシコースエピマー化酵素は、カイスティア・グラニュリ(Kaistia granuli)から由来されたものであってもよく、より具体的には、カイスティア・グラニュリKCTC12575から由来したものであってもよい。
【0018】
他の具現例として、本出願のプシコースエピマー化酵素は ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を介して測定された分子量が25kDa〜37kDa、27kDa〜35kDaまたは30kDa〜35kDaであってもよい。
【0019】
本出願は別の様態として、配列番号1のアミノ酸配列からなるプシコースエピマー化酵素をエンコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0020】
一具現例として、本出願で提供するポリヌクレオチドは、配列番号2の塩基配列または配列番号2の塩基配列と80%、90%、95%、97%または99%以上の相同性を有する配列からなるポリヌクレオチドであってもよい。また、本出願で提供するポリヌクレオチドは、コドン縮退性(codon degeneracy)によって、前記配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質またはそれと相同性を有するタンパク質に翻訳できるポリヌクレオチドも、本出願の範囲に含まれるのは自明である。
【0021】
本出願は別の様態として、本出願のD−プシコース3−エピマー化酵素をコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクターを提供する。
【0022】
本出願の組換えベクターは、プシコースエピマー化酵素をエンコードするポリヌクレオチドを公知の標準方法を用いてクローニングベクターや発現ベクター内に挿入した形態であってもよい。本願で「クローニングベクター」は、宿主細胞内にDNA断片を運び、これを再生産できるベクターをいう。クローニングベクターは、ポリアデニル化シグナル、転写終結配列、及び/またはマルチクローニングサイトをさらに含んでもよい。このとき、マルチクローニングサイトは、エンドヌクレアーゼ、制限酵素部位のうちの少なくとも一つを含んでもよい。一例として、プシコースエピマー化酵素をエンコードするポリヌクレオチドは、ポリアデニル化シグナルと転写終結配列の上流に位置してもよい。本願で「発現ベクター」は、適切な宿主内でクローニングされたDNAの転写と翻訳のために必要なDNA配列をいう。また、本願で「発現ベクター」は、個体の細胞内に存在する場合、挿入物が発現されるように挿入物に作動可能に連結された必須の調節要素を含む遺伝子作製物をいう。前記「作動可能に連結された」は、ポリヌクレオチド上のポリヌクレオチド配列の関連性により一つの機能が他のものによって調節されることをいう。発現ベクターは、標準的な組換えDNA技術を用いて製造及び精製されてもよい。発現ベクターは、プロモーター、開始コドン、プシコースエピマー化酵素をエンコードする遺伝子及び終止コドンのいずれか一つ以上を含んでもよい。
【0023】
本出願は別の様態として、本出願の組換えベクターが導入された微生物を提供する。
【0024】
一具現例として、本出願の組換えベクターが導入された微生物は、配列番号1のアミノ酸配列を含むプシコースエピマー化酵素をエンコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクターによって形質転換されるか、配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含む組換えベクターによって形質転換されたものであってもよい。
【0025】
本出願において、用語、「形質転換」は、遺伝子またはこれを含む組換えベクターを宿主細胞に導入して宿主細胞内で発現できるようにすることを意味し、形質転換された遺伝子は宿主細胞内で発現できれば、宿主細胞の染色体内に挿入または染色体外に位置しているものであれ制限せず含まれる。本出願の形質転換方法としては、一時的形質転換、微細注射、形質導入、細胞融合、リン酸カルシウム沈殿法、リポソーム媒介形質感染、DEAEデキストラン媒介形質感染、電気穿孔、電気注入、化学処理などがあるが、これに限定されるものではない。組換えベクターで形質転換されうる宿主細胞としては、原核細胞、植物細胞、動物細胞などが挙げられるが、DNAの導入効率が良く、導入されたDNAの発現率が高い宿主細胞が用いられる。例えば、宿主細胞は、大腸菌、バチルス属菌株、コリネバクテリア属菌株、サルモネラ属菌株等であってもよく、例えば、W3110、BL21、JM109、K−12、LE392、RR1及びDH5aなどの大腸菌であってもよい。より具体的には、本出願の微生物は、KCCM11918Pとして寄託されたE. coliBL21(DE3)/KGDPEであってもよい。
【0026】
本出願は別の様態として、配列番号1のアミノ酸配列を含むプシコースエピマー化酵素、前記プシコースエピマー化酵素を発現する微生物、前記微生物の培養物を含むD−プシコース製造用組成物を提供する。
【0027】
一具現例として、本出願の微生物は、菌株自体、その培養物または前記微生物の破砕物であってもよい。本出願の培養物または破砕物は、本出願のD−プシコース3−エピマー化酵素を含んでもよい。また、本出願の微生物の培養物は、前記微生物を含んでも、含まなくてもよい。加えて、本出願の微生物の破砕物は、微生物またはその培養物を破砕した破砕物、または前記破砕物を遠心分離して得られた上澄み液であってもよい。
【0028】
他の具現例として、本出願のD−プシコース生産用組成物は、プシコースエピマー化酵素の基質となるD−フルクトースをさらに含んでもよい。
【0029】
他の具現例として、本出願の微生物は、担体に固定化させて用いてもよい。本出願で用いられる担体の例としては、アガー(agar)、アガロース(agarose)、k−カラギーナン、アルギン酸またはキトサンがあり、これに限定されるものではない。
【0030】
また、本出願のD−プシコース生産用組成物は、プシコースの生産を補助しうる任意の成分をさらに含んでもよい。具体的には、本出願のD−プシコース生産用組成物は金属をさらに含んでもよい。より具体的には、本出願の金属は、マンガン、カルシウム、マグネシウム、鉄、リチウム及びナトリウムからなる群から選択される1つ以上の金属であってもよい。また、本出願の金属は、金属イオンまたは金属塩であってもよい。本出願の金属は、0.1mM〜10mM、0.1mM〜7mM、0.1mM〜4mM、0.5mM〜10mM、0.5mM〜7mM、0.5mM〜4mM、1mM〜10mM、1mM〜7mM、1mM〜4mM、2mM〜10mM、2mM〜7mMまたは2mM〜4mMで含んでもよい。より具体的には、本出願の金属塩は、LiCl、NaSO、MgCl、NaCl、FeSO、MgSO、MnCl、MnSO及びCaClからなる群から選択される1種以上の金属塩であってもよい。
【0031】
本出願は別の様態として、配列番号1のアミノ酸配列からなるプシコースエピマー化酵素、本出願のプシコースエピマー化酵素を発現する微生物または前記微生物の培養物とD−フルクトースを接触させる段階を含む、D−プシコースの製造方法を提供する。
【0032】
一具現例として、本出願の製造方法は、本出願のD−フルクトースを接触させる段階の以前、以後または同時に金属を添加する段階をさらに含んでもよい。
【0033】
他の具現例として、本出願の製造方法は、本出願のD−フルクトースを接触させる段階、または本出願の金属を添加する段階の後に、プシコースを含む接触結果物を分離及び/または精製する段階をさらに含んでもよい。前記分離及び/または精製は、透析、沈殿、吸着、電気泳動、イオン交換クロマトグラフィー及び分別結晶などの公知の方法のいずれか一つ以上の方法を選択して利用してもよいが、これに制限されない。
【0034】
また、本出願の製造方法は、それぞれ、本出願の分離及び/または精製する段階の以前または以後に脱色及び/または脱塩を行う段階をさらに含んでもよい。前記脱色及び/または脱塩を行うことにより、不純物を含まない、より精製されたプシコースを得ることができる。
【0035】
他の具現例として、本出願の製造方法は、本出願のD−フルクトースを接触させる段階、金属を添加する段階、分離及び/または精製する段階、または脱色及び/または脱塩段階の後に、D−プシコースを結晶化する段階をさらに含んでもよい。前記結晶化は、通常使用する結晶化方法を用いて行ってもよい。例えば、冷却結晶化方法を用いて結晶化を行ってもよい。
【0036】
他の具現例として、本出願の製造方法は、本出願の結晶化する段階の以前にプシコースを濃縮させる段階をさらに含んでもよい。前記濃縮は結晶化の効率を高めることができる。
【0037】
他の具現例として、本出願の製造方法は、本出願の分離及び/または精製する段階の後に、未反応とされたD−フルクトースをプシコースエピマー化酵素と接触させる段階、本出願の結晶化する段階の後に結晶が分離された母液を前記分離及び/または精製段階で再使用する段階、またはその組み合わせをさらに含んでもよい。前記追加の段階を介してプシコースをさらに高収率で収得することができ、捨てられるD−フルクトースの量を削減することができて経済的利点がある。
【0038】
一具現例として、本出願の接触は、pH5.0〜9.0の条件で、40℃〜90℃の条件で、及び/または0.5時間〜48時間行ってもよい。
【0039】
具体的には、本出願の接触は、pH6.0〜8.5、pH6.0〜8.0またはpH7.0〜8.0で行ってもよい。
【0040】
また、本出願の接触は、40℃〜80℃、40℃〜75℃、40℃〜65℃、50℃〜90℃、50℃〜80℃、50℃〜75℃、50℃〜65℃、55℃〜90℃、55℃〜80℃、55℃〜75℃、55℃〜65℃、60℃〜90℃、60℃〜80℃、60℃〜75℃、60℃〜65℃、 65℃〜90℃、65℃〜80℃または65℃〜75℃の温度で行ってもよい。
【0041】
また、本出願の接触は、0.5時間以上、1時間以上、3時間以上、5時間以上、または6時間以上、及び/または48時間以下、36時間以下、24時間以下、12時間以下、9時間以下行ってもよい。
【0042】
本出願のD−プシコースの製造方法に記載されたプシコースエピマー化酵素、金属及び担体などは、前述した様態で記載した通りである。
【0043】
本出願はまた別の様態として、プシコース製造におけるD−フルクトースの転換のための、本願に記述されたプシコースエピマー化酵素、前記酵素を発現する微生物または前記微生物の培養物の用途を提供する。
【発明の効果】
【0044】
本出願のプシコースエピマー化酵素は、D−フルクトースからプシコースに転換する活性が優れていて、産業的に利用可能な程度の高温安定性を有し、転換反応速度が速い効果がある。したがって、本出願の酵素を用いてプシコースを製造する場合、高効率及び高収得率でプシコースの生産が可能な利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本出願の配列番号1のアミノ酸配列からなるプシコースエピマー化酵素(KGDPE)を発現するための組換えベクターの開裂図である。
図2】本出願のKGDPEを用いてD−フルクトースを基質とし、プシコースを生産した結果のHPLC分析データである。
図3】プシコースエピマー化酵素の温度による相対的な酵素活性を示したグラフである。図3aは、従来のアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)由来のD−プシコース3−エピマー化酵素(ATPE)の活性であり、図3bは、本出願のKGDPEの活性を示す。
図4】pH変化に伴う本出願のKGDPEの相対的な酵素活性を示すグラフである。
図5】様々な金属添加による本出願のKGDPEの相対的な酵素活性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本出願の具体的な実施例によって、より詳細に説明する。しかし、本出願が下記の実施例に限定されるものではなく、本出願の趣旨及び内容の範囲内で当業者によって多様な変形または修正が可能であることが認識されるべきである。
【0047】
本出願の明細書全体にわたり、特定物質の濃度を示すために使用する「%」は、別の記載がない場合、固体/固体は(重量/重量)%、固体/液体は(重量/体積)%、そして液体/液体は(体積/体積)%である。
【実施例】
【0048】
実施例1.カイスティア属微生物由来のプシコースエピマー化酵素を生産する形質転換菌株の製造
カイスティア属微生物からD−フルクトースをプシコースに転換するプシコースエピマー化酵素の活性を有すると予想される遺伝子を選抜し、前記遺伝子を含む組換え発現ベクター及び形質転換微生物を製造した。
【0049】
具体的には、Genbankに登録されたカイスティア属微生物の遺伝子配列を対象に、プシコースエピマー化酵素と予想されるカイスティア・グラニュリ(Kaistia granuli)KCTC12575の遺伝子kgdpeを選抜して、前記遺伝子のアミノ酸配列(配列番号1)及びヌクレオチド配列(配列番号2)の情報をもとに、前方プライマー(配列番号3)及び逆方プライマー(配列番号4)を考案して合成した。前記合成されたプライマーを用いて、カイスティア・グラニュリKCTC12575のゲノミックDNAを鋳型としてPCR反応(94℃で1分、58℃で30秒、72℃で1分間反応させる条件を一つのサイクルとして33サイクル)を行って遺伝子を増幅した。増幅された遺伝子は、PCR精製キット(PCR purification kit、Quiagen)を用いて精製し、制限酵素NdeIとnotIを使用してpET24a(+)(novagen、USA)に挿入して、組換えベクターpET24a(+)−KGDPEを製造した(図1)。
【0050】
前記組換えベクターを熱ショック(heat shock transformation、Sambrook and Russell:Molecular cloning、2001)によって大腸菌BL21(DE3)に形質転換した後、50%グリセロールで冷凍保管して使用した。前記形質転換菌株をE. coliBL21(DE3)/KGDPEと命名し、ブダペスト条約下の国際寄託機関である韓国微生物保存センター(Korean Culture of Microorganisms、KCCM)に2016年10月20日付で寄託し、受託番号及びKCCM11918Pを付与された。
【0051】
実施例2.プシコースエピマー化酵素の生産及び精製
前記実施例1で製造したE. coli BL21(DE3)/KGDPEからプシコースエピマー化酵素を生産するために、E. coli BL21(DE3)/KGDPEを5mlLBカナマイシン(kanamuycin)培地に接種した後、600nmで測定した吸光度が1.5に達するまで37℃、200rpmで振とう培養した。その後、前記振とう培養した培養液を500ml LBカナマイシン培地に接種し、600nmでの吸光度が0.7になったとき、0.5mM IPTG(Isopropylβ-D-1-thiogalactopyranoside)を添加した後、16℃、150rpmの条件で16時間本培養した。
【0052】
前記本培養した培養液を8000rpmで20分間遠心分離して菌体のみを回収し、0.85%(w/v)NaClで2回洗浄した後、溶解緩衝液(lysis buffer、50mM Tris−HCl、pH7.0 300mM NaCl)に混濁させた後、音波振動器を用いて4℃で20分間破砕した。前記破砕液を13,000rpmで4℃で20分間遠心分離して上澄み液を回収した後、予め前記溶解緩衝液で平衡させたNi−NTAカラム(Ni-NTA Superflow、Qiagen)に適用し、250mMイミダゾール(imidazole)が含有された緩衝溶液(50mM Tris−HCl、300mM NaCl、pH7.0)を順次流して精製されたプシコースエピマー化酵素(以下、KGDPEと記載)を獲得した。前記KGDPEはSDS−PAGEの結果、単量体の大きさが約32kDaであることを確認した。
【0053】
実施例3.KGDPEの活性確認
3−1.D−フルクトースからプシコースへの転換活性の確認
KGDPEがD−フルクトースを基質としてプシコースを生産するかどうかを確認するために、50wt%D−フルクトース及び3mM MnSOが含まれた50mM Tris−HCl緩衝溶液(pH8.0)に実施例2で生産したKGDPE(50mM Tris−HCl、pH7.0)を添加し、55℃で6時間反応させた。その後、100℃で5分間加熱して反応を停止させた後、HPLC分析を介してプシコースの生成を確認した。前記HPLC分析は、Aminex HPX−87Cカラム(BIO-RAD)が装着されたHPLC(Agilent、USA)のRefractive Index Detector(Agilent 1260 RID)を利用し、移動相溶媒は水を使用し、温度は80℃、流速は0.6ml/分で行った。
【0054】
その結果、KGDPEを用いてD−フルクトースからプシコースが生産できることを確認した(図2)。
3−2.D−フルクトースからプシコースへの転換速度の確認
KGDPEのプシコース生産能が従来プシコースの生産に用いられているプシコースエピマー化酵素(ATPE、配列番号5、特許文献1)より優れているかどうかを確認するために、D−フルクトースからプシコースへの転換速度を確認した。
【0055】
具体的には、組換え発現ベクターpET24a−ATPEで形質転換されたE. coliBL21(DE3)を、10μg/ml濃度のカナマイシンを含むLB培地に接種した後、前記実施例2と同様の方法で酵素を発現して精製した。獲得した酵素を50重量%D−フルクトース及び3mM MnSOが含まれた50mM Tris−HCl緩衝溶液(pH8.0)に添加し、55℃で6時間反応させた。その後、100℃で5分間加熱して反応を停止させた後、HPLC分析を介してプシコース生成を確認した。HPLC分析は、前記実施例3−1と同じ条件で行った。プシコースへの転換速度は、酵素が分あたりに生成するプシコース量(mg/分)で計算しており、ATPEの反応速度値を100%としてKGDPEの反応速度を相対的な数値で示した。
【0056】
その結果、KGDPEを用いた場合の分あたりに生成されるプシコースの量は、ATPEを用いた場合に比べて117.6%であり、KGDPEを用いる場合、D−フルクトースからプシコースへの転換速度が著しく増加することを確認した(表1)。
【表1】
【0057】
実施例4.KGDPEの特性分析
4−1.温度による酵素の活性の分析
様々な温度条件下(40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃及び75℃)でKGDPEとD−フルクトースの基質を2時間反応させて、温度による酵素活性を比較した。前記反応は、温度及び反応時間を除いて、実施例3−1と同様の方法で行い、酵素活性はD−フルクトースからプシコースへの転換率で測定した。転換率は反応前の基質(D−フルクトース)の重量対比反応後に生成されたプシコースの重量の割合で計算した。
【0058】
その結果、KGDPEはすべての測定温度範囲で25%以上の高い転換活性を示しており、温度が増加するほど活性も増加し、測定最高温度である75℃で最大の転換率を示すことが確認された(表2)。
【表2】
【0059】
4−2.酵素の熱安定性の分析
KGDPEの熱安定性を従来酵素であるATPEと比較するために、前記各酵素の様々な温度(55℃、60℃及び65℃)の熱処理をした後、熱処理時間別(0.5時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間及び6時間)で酵素処理溶液をサンプリングし、それぞれの酵素の残留活性を測定した。前記実施例3−1と同様の方法で反応時間だけを変更して、30分間反応を行い、D−フルクトースからプシコースへの転換率で酵素の残留活性を測定した。
【0060】
その結果、温度上昇に伴うKGDPEの半減期の低下がATPEに比べて著しく少ないところ、KGDPEは高い熱安定性を有することを確認した(図3a及び3b)。
【0061】
4−3.pHによる酵素活性の分析
pHによる酵素活性を測定するために、D−フルクトースの基質をKGDPEと様々なpHでそれぞれ反応させた。この時、反応は反応時間及びpHを除いて、前記実施例3−1と同様の方法で行った。
【0062】
具体的には、50mMリン酸カリウム(potassium phosphate)を用いてpH5.0、pH6.0、pH6.5、pH7.0、pH7.5及びpH8.0の条件下、そして50mM Tris−HCl緩衝溶液を用いてpH8.0 、pH8.5及びpH9.0の条件下、55℃で30分間酵素反応を行った後、D−フルクトースからプシコースへの転換率で酵素活性を測定した。
【0063】
その結果、KGDPEはpH6〜pH8.5で最大活性対比70%以上の活性を示し、pH8.0で最も高い活性を示すことを確認した(表3、図4)。
【表3】
【0064】
4−4.金属添加による酵素活性の分析
KGDPEの金属添加による活性を確認するために、実施例3−1の反応条件でMnSOを様々な金属塩(LiCl、NaSO、MgCl、NaCl、FeSO及びCaCl)に代替して、それぞれ最終濃度が3mMになるように添加し、酵素活性を測定した。対照群は金属塩を処理していなかった。
【0065】
その結果、Mnと同様にLi、Na、Mg、Fe及びCa添加時、対照群に比べてKGDPEの活性が増加することを確認し、このうちMnが酵素活性を最も増加させることが確認できた(表4及び図5)。
【表4】
【0066】
以上の説明から、本出願が属する技術分野の当業者は、本出願がその技術的思想や必須の特徴を変更せず、他の具体的な形態で実施されうることを理解できるだろう。これに関連し、以上で記述した実施例はすべての面で例示的なものであり、限定的なものではないものとして理解しなければならない。本出願の範囲は前記の詳細な説明ではなく、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲そしてその等価概念から導出されるすべての変更または変形された形態が本出願の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。

図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]