【課題を解決するための手段】
【0010】
本出願は一様態として、配列番号1のアミノ酸配列からなるプシコースエピマー化酵素を提供する。
【0011】
一具現例として、本出願のプシコースエピマー化酵素は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも80%、90%、95%、97%または99%の相同性を有するポリペプチドを含んでもよい。D−フルクトースをプシコースに転換する活性を有し、前記相同性を有するアミノ酸配列であれば、前記配列番号1のアミノ酸配列の一部が置換、挿入、変形及び/または欠失された場合が含まれるのは自明である。また、公知の遺伝子配列から調製されうるプローブ、例えば、本出願のプシコースエピマー化酵素をコードする塩基配列の全体または一部に対する相補配列と厳格な条件下でハイブリッド化されるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドとして、プシコースエピマー化酵素の活性を有するポリペプチドも制限なく含まれてもよい。
【0012】
本出願において、用語、「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチド単位体(monomer)が共有結合によって長く鎖状につながったヌクレオチドのポリマー(polymer)であって、非改質されたまたは改質されたポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドを言う。
【0013】
本出願において、用語、「厳しい条件(stringent condition)」とは、ポリヌクレオチド間の特異的混成化を可能にする条件を意味する。これらの条件は、ポリヌクレオチドの長さ及び相補性の程度に依存し、変数は当該技術分野によく知られており、文献(例えば、J. Sambrook et al., 同上)に具体的に記載されている。例えば、相同性が高い遺伝子同士、80%、90%、95%、97%または99%以上の相同性を有する遺伝子同士でハイブリッド化し、それより相同性が低い遺伝子同士はハイブリッド化しない条件、または通常のサザンハイブリッド化の洗浄条件である60℃、1×SSC 、0.1%SDS、具体的には、60℃、0.1×SSC、0.1%SDS、より具体的には、68℃、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度及び温度で1回、具体的には、2回〜3回洗浄する条件を挙げられる。前記ハイブリッド化に使用されたプローブは、塩基配列の相補配列の一部であってもよい。これらのプローブは、公知配列に基づいて作成されたオリゴヌクレオチドをプライマーにして、これらの塩基配列を含む遺伝子断片を鋳型とするPCRによって作製されてもよい。また、当業者は、温度及び洗浄溶液の塩濃度をプローブの長さなどの要素に応じて、必要に応じて調節してもよい。
【0014】
本出願において、用語、「相同性」は、二つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド一部(moiety)間の同一性のパーセントをいう。一つの一部から他の一つの一部までの配列間の相同性は、知られている当該技術によって決定してもよい。例えば、相同性は配列情報を整列して容易に入手可能なコンピュータプログラムを用いて二つのポリヌクレオチド分子または二つのポリペプチド分子間の配列情報、例えば、スコア(score)、同一性(identity)及び類似度(similarity)などのパラメータ(parameter)を直接整列して決定してもよい(例えば、BLAST 2.0)。また、ポリヌクレオチド間の相同性は、相同領域間の安定した二本鎖をなす条件下でポリヌクレオチドを混成化した後、一本鎖特異的ヌクレアーゼで分解して、分解された断片の大きさを決定することにより決定してもよい。
【0015】
また、本出願の配列番号1のアミノ酸配列からなるプシコースエピマー化酵素と相応する活性を有するタンパク質であれば、配列番号1のアミノ酸配列前後の無意味な配列を追加または自然に発生することができる突然変異、あるいはそのサイレント突然変異(silent mutation)を除くものではなく、配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質も本出願の範囲内に属する。
【0016】
さらに、これに制限されるものではないが、本出願のD−プシコース3−エピマー化酵素は、配列番号2のポリヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも80%、90%、95%、97%または99%の相同性を有するポリヌクレオチド配列によってコードされるものであってもよい。また、本出願のD−プシコース3−エピマー化酵素をコードするポリヌクレオチドは、コドン縮退性(codon degeneracy)によって、前記配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質またはそれと相同性を有するタンパク質に翻訳されうるポリヌクレオチドも本出願のポリヌクレオチド配列の範囲に含まれるのは自明である。当業者は、公知の遺伝子組換え技術を用いて、配列番号2の塩基配列の少なくとも一つを置換、付加及び/または欠失して実質的に同等の活性を有する範囲の酵素をエンコードするポリヌクレオチドを製造しうることを理解できる。
【0017】
他の具現例として、本出願のプシコースエピマー化酵素は、カイスティア属(the genus of Kaistia)微生物から由来したものであってもよい。具体的には、本出願のプシコースエピマー化酵素は、カイスティア・グラニュリ(Kaistia granuli)から由来されたものであってもよく、より具体的には、カイスティア・グラニュリKCTC12575から由来したものであってもよい。
【0018】
他の具現例として、本出願のプシコースエピマー化酵素は ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を介して測定された分子量が25kDa〜37kDa、27kDa〜35kDaまたは30kDa〜35kDaであってもよい。
【0019】
本出願は別の様態として、配列番号1のアミノ酸配列からなるプシコースエピマー化酵素をエンコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0020】
一具現例として、本出願で提供するポリヌクレオチドは、配列番号2の塩基配列または配列番号2の塩基配列と80%、90%、95%、97%または99%以上の相同性を有する配列からなるポリヌクレオチドであってもよい。また、本出願で提供するポリヌクレオチドは、コドン縮退性(codon degeneracy)によって、前記配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質またはそれと相同性を有するタンパク質に翻訳できるポリヌクレオチドも、本出願の範囲に含まれるのは自明である。
【0021】
本出願は別の様態として、本出願のD−プシコース3−エピマー化酵素をコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクターを提供する。
【0022】
本出願の組換えベクターは、プシコースエピマー化酵素をエンコードするポリヌクレオチドを公知の標準方法を用いてクローニングベクターや発現ベクター内に挿入した形態であってもよい。本願で「クローニングベクター」は、宿主細胞内にDNA断片を運び、これを再生産できるベクターをいう。クローニングベクターは、ポリアデニル化シグナル、転写終結配列、及び/またはマルチクローニングサイトをさらに含んでもよい。このとき、マルチクローニングサイトは、エンドヌクレアーゼ、制限酵素部位のうちの少なくとも一つを含んでもよい。一例として、プシコースエピマー化酵素をエンコードするポリヌクレオチドは、ポリアデニル化シグナルと転写終結配列の上流に位置してもよい。本願で「発現ベクター」は、適切な宿主内でクローニングされたDNAの転写と翻訳のために必要なDNA配列をいう。また、本願で「発現ベクター」は、個体の細胞内に存在する場合、挿入物が発現されるように挿入物に作動可能に連結された必須の調節要素を含む遺伝子作製物をいう。前記「作動可能に連結された」は、ポリヌクレオチド上のポリヌクレオチド配列の関連性により一つの機能が他のものによって調節されることをいう。発現ベクターは、標準的な組換えDNA技術を用いて製造及び精製されてもよい。発現ベクターは、プロモーター、開始コドン、プシコースエピマー化酵素をエンコードする遺伝子及び終止コドンのいずれか一つ以上を含んでもよい。
【0023】
本出願は別の様態として、本出願の組換えベクターが導入された微生物を提供する。
【0024】
一具現例として、本出願の組換えベクターが導入された微生物は、配列番号1のアミノ酸配列を含むプシコースエピマー化酵素をエンコードするポリヌクレオチドを含む組換えベクターによって形質転換されるか、配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含む組換えベクターによって形質転換されたものであってもよい。
【0025】
本出願において、用語、「形質転換」は、遺伝子またはこれを含む組換えベクターを宿主細胞に導入して宿主細胞内で発現できるようにすることを意味し、形質転換された遺伝子は宿主細胞内で発現できれば、宿主細胞の染色体内に挿入または染色体外に位置しているものであれ制限せず含まれる。本出願の形質転換方法としては、一時的形質転換、微細注射、形質導入、細胞融合、リン酸カルシウム沈殿法、リポソーム媒介形質感染、DEAEデキストラン媒介形質感染、電気穿孔、電気注入、化学処理などがあるが、これに限定されるものではない。組換えベクターで形質転換されうる宿主細胞としては、原核細胞、植物細胞、動物細胞などが挙げられるが、DNAの導入効率が良く、導入されたDNAの発現率が高い宿主細胞が用いられる。例えば、宿主細胞は、大腸菌、バチルス属菌株、コリネバクテリア属菌株、サルモネラ属菌株等であってもよく、例えば、W3110、BL21、JM109、K−12、LE392、RR1及びDH5aなどの大腸菌であってもよい。より具体的には、本出願の微生物は、KCCM11918Pとして寄託されたE. coliBL21(DE3)/KGDPEであってもよい。
【0026】
本出願は別の様態として、配列番号1のアミノ酸配列を含むプシコースエピマー化酵素、前記プシコースエピマー化酵素を発現する微生物、前記微生物の培養物を含むD−プシコース製造用組成物を提供する。
【0027】
一具現例として、本出願の微生物は、菌株自体、その培養物または前記微生物の破砕物であってもよい。本出願の培養物または破砕物は、本出願のD−プシコース3−エピマー化酵素を含んでもよい。また、本出願の微生物の培養物は、前記微生物を含んでも、含まなくてもよい。加えて、本出願の微生物の破砕物は、微生物またはその培養物を破砕した破砕物、または前記破砕物を遠心分離して得られた上澄み液であってもよい。
【0028】
他の具現例として、本出願のD−プシコース生産用組成物は、プシコースエピマー化酵素の基質となるD−フルクトースをさらに含んでもよい。
【0029】
他の具現例として、本出願の微生物は、担体に固定化させて用いてもよい。本出願で用いられる担体の例としては、アガー(agar)、アガロース(agarose)、k−カラギーナン、アルギン酸またはキトサンがあり、これに限定されるものではない。
【0030】
また、本出願のD−プシコース生産用組成物は、プシコースの生産を補助しうる任意の成分をさらに含んでもよい。具体的には、本出願のD−プシコース生産用組成物は金属をさらに含んでもよい。より具体的には、本出願の金属は、マンガン、カルシウム、マグネシウム、鉄、リチウム及びナトリウムからなる群から選択される1つ以上の金属であってもよい。また、本出願の金属は、金属イオンまたは金属塩であってもよい。本出願の金属は、0.1mM〜10mM、0.1mM〜7mM、0.1mM〜4mM、0.5mM〜10mM、0.5mM〜7mM、0.5mM〜4mM、1mM〜10mM、1mM〜7mM、1mM〜4mM、2mM〜10mM、2mM〜7mMまたは2mM〜4mMで含んでもよい。より具体的には、本出願の金属塩は、LiCl、Na
2SO
4、MgCl
2、NaCl、FeSO
4、MgSO
4、MnCl
2、MnSO
4及びCaCl
2からなる群から選択される1種以上の金属塩であってもよい。
【0031】
本出願は別の様態として、配列番号1のアミノ酸配列からなるプシコースエピマー化酵素、本出願のプシコースエピマー化酵素を発現する微生物または前記微生物の培養物とD−フルクトースを接触させる段階を含む、D−プシコースの製造方法を提供する。
【0032】
一具現例として、本出願の製造方法は、本出願のD−フルクトースを接触させる段階の以前、以後または同時に金属を添加する段階をさらに含んでもよい。
【0033】
他の具現例として、本出願の製造方法は、本出願のD−フルクトースを接触させる段階、または本出願の金属を添加する段階の後に、プシコースを含む接触結果物を分離及び/または精製する段階をさらに含んでもよい。前記分離及び/または精製は、透析、沈殿、吸着、電気泳動、イオン交換クロマトグラフィー及び分別結晶などの公知の方法のいずれか一つ以上の方法を選択して利用してもよいが、これに制限されない。
【0034】
また、本出願の製造方法は、それぞれ、本出願の分離及び/または精製する段階の以前または以後に脱色及び/または脱塩を行う段階をさらに含んでもよい。前記脱色及び/または脱塩を行うことにより、不純物を含まない、より精製されたプシコースを得ることができる。
【0035】
他の具現例として、本出願の製造方法は、本出願のD−フルクトースを接触させる段階、金属を添加する段階、分離及び/または精製する段階、または脱色及び/または脱塩段階の後に、D−プシコースを結晶化する段階をさらに含んでもよい。前記結晶化は、通常使用する結晶化方法を用いて行ってもよい。例えば、冷却結晶化方法を用いて結晶化を行ってもよい。
【0036】
他の具現例として、本出願の製造方法は、本出願の結晶化する段階の以前にプシコースを濃縮させる段階をさらに含んでもよい。前記濃縮は結晶化の効率を高めることができる。
【0037】
他の具現例として、本出願の製造方法は、本出願の分離及び/または精製する段階の後に、未反応とされたD−フルクトースをプシコースエピマー化酵素と接触させる段階、本出願の結晶化する段階の後に結晶が分離された母液を前記分離及び/または精製段階で再使用する段階、またはその組み合わせをさらに含んでもよい。前記追加の段階を介してプシコースをさらに高収率で収得することができ、捨てられるD−フルクトースの量を削減することができて経済的利点がある。
【0038】
一具現例として、本出願の接触は、pH5.0〜9.0の条件で、40℃〜90℃の条件で、及び/または0.5時間〜48時間行ってもよい。
【0039】
具体的には、本出願の接触は、pH6.0〜8.5、pH6.0〜8.0またはpH7.0〜8.0で行ってもよい。
【0040】
また、本出願の接触は、40℃〜80℃、40℃〜75℃、40℃〜65℃、50℃〜90℃、50℃〜80℃、50℃〜75℃、50℃〜65℃、55℃〜90℃、55℃〜80℃、55℃〜75℃、55℃〜65℃、60℃〜90℃、60℃〜80℃、60℃〜75℃、60℃〜65℃、 65℃〜90℃、65℃〜80℃または65℃〜75℃の温度で行ってもよい。
【0041】
また、本出願の接触は、0.5時間以上、1時間以上、3時間以上、5時間以上、または6時間以上、及び/または48時間以下、36時間以下、24時間以下、12時間以下、9時間以下行ってもよい。
【0042】
本出願のD−プシコースの製造方法に記載されたプシコースエピマー化酵素、金属及び担体などは、前述した様態で記載した通りである。
【0043】
本出願はまた別の様態として、プシコース製造におけるD−フルクトースの転換のための、本願に記述されたプシコースエピマー化酵素、前記酵素を発現する微生物または前記微生物の培養物の用途を提供する。