特許第6967645号(P6967645)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6967645
(24)【登録日】2021年10月27日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】緊急時における男子用小便具
(51)【国際特許分類】
   A47K 11/12 20060101AFI20211108BHJP
【FI】
   A47K11/12
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-185744(P2020-185744)
(22)【出願日】2020年11月6日
【審査請求日】2020年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】596000291
【氏名又は名称】株式会社総合サービス
(74)【代理人】
【識別番号】100096596
【弁理士】
【氏名又は名称】村下 憲司
(72)【発明者】
【氏名】新妻 普宣
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−148203(JP,A)
【文献】 特開2010−284272(JP,A)
【文献】 特開2013−111265(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0000027(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳み可能なシート片であって、該シート片の両端に設けられた接着部の内面には接着面が設けられており、該接着部と接する前記シート片の上縁部には切欠部が形成されると共に、前記シート片にはその折り畳み部と交差するスリットが形成されており、該スリットにより分割された前記シート片の下片を引き出すことで支持体が形成されることを特徴とする緊急時における男子用小便具。

































【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急時とくに地震や水害などの災害時に利用される男子用小便具に関する。
【背景技術】
【0002】
内閣府(防災担当)が2018年4月に策定した「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」に拠れば、災害時でも既設の水洗トイレを利用できることが望ましいが、下水処理場などの被害状況が明らかになるまでは水洗トイレの利用を禁止し、災害用トイレを使用することを求めている。災害用トイレとしては携帯トイレ、簡易トイレ、仮設トイレ、マンホールトイレなどがあるが、電気や水といったライフラインを必要とせず、被災後ただちに利用できる点で携帯トイレと簡易トイレは最も利便性が高いと言われている。
【0003】
前述のガイドラインに拠れば、携帯トイレとは便袋をトイレとして用いるタイプを謂い、既設の水洗トイレが洋式である場合、便座にビニール袋を被せて固定し、その上に便袋からなる携帯トイレを付けて利用するものであり、既設の個室や洋式便座で利用できる点で優れていると記されている。また、簡易トイレとは組立式又は非組立式の便座を備えたタイプを謂い、やはり既設の個室があれば利用できるタイプである。しかしながら、既設の個室や洋式便座で携帯トイレや簡易トイレを利用できない場合は、仮設トイレが到着し、その組立てや設置が完了するまで待つしかないのが現状であった。
【0004】
また、HNKが提供する「災害列島/命を守る情報サイト」の2018年5月1日付け記事に拠れば、避難所における女性トイレの数は男性の3倍が必要と言われている。これはつまり、女性の利用時間は男性の3倍を要することを意味しており、仮設トイレが設置されても利用を待つ人で長蛇の列ができる原因となっていた。加えて、設置された仮設トイレの多くが男女共用タイプであるため、男性と同じトイレを利用することに対する女性の嫌悪感は非常に強いものがあった。
【0005】
そのため、利用を待つ人の長蛇の列を緩和し、女性が抱く嫌悪感を解消してトイレを利用し易くし、且つ、男性が小便であるにも拘わらず順番待ちで長いこと列に並ばねばならない不便を解消するためには、男性が小便で利用できる環境を整え、男性による男女共用トイレの利用頻度を減じることが重要なポイントであった。
【0006】
他方、NPO法人日本トイレ研究所が2016年に92の自治体を対象に実施したアンケートによれば、イベントや運動会で災害用トイレを使用したことのある自治体は16%で、今後も災害用トイレを使用する予定のない自治体が66%、職員向けに災害用トイレを備蓄している自治体は24%との結果が出ており、避難者数に照らした災害用トイレの備蓄が「不足」または「非常に不足」と回答した自治体は53%に及んでいる。そうして、その最大の理由として挙げられたのが「予算の確保が難しい」及び「備蓄場所がない」ということであった。
【0007】
因みに、現行の組立型及びボックス型の仮設トイレの価格は一基25〜50万円と高額であることに加え、備蓄に大きなスペースを要するため、それが備蓄を阻む最大の原因となっている。簡易トイレは一基0.5〜16万円と価格に大きなばらつきがあり、非組立式タイプはかなりの備蓄スペースを要するが、組立式や折畳式のタイプは比較的省スペースで備蓄することができる。とはいえ、組立式タイプでもボード板などがセットとなった収納状態では15〜17cmほどの厚みがあるため、数十〜数百基の備蓄となると相当なスペースが必要になる。この点、携帯トイレは便袋と凝固剤などがセットで販売されているケースが殆どであり、便袋1枚当たりの価格が150円ほどと安価であることに加え、備蓄スペースも最小で済むため、各自治体が各避難所に大量に備蓄しておくには最も適している。
【0008】
本発明はその名が示すとおり、男子の小便用という目的に特化したものであり、従来からこの目的を同じくする様々の災害用トイレが開発されている。しかしながら、その殆どが壁板や衝立など大き目のボード板を用いて組み立てる構造であるため、組み立てるまでに時間が掛かるほか、何より、収納状態でも幅や厚みが結構なサイズとなるため、やはり備蓄にはかなりのスペースが必要となっていた。
【0009】
男子小便用という目的を共通にする先行技術としては、特許文献1に記載の組立式簡易小便器や特許文献2に記載のセルフ式の簡易トイレが挙げられるが、これらは既設の個室が利用できない場合でも、壁板や衝立を有することで人目を気にせずに利用できる点で、既設の男子用小便器に近い環境を提供し得るものであるから、「簡易」とはいうものの、その性格は上に挙げた災害用トイレの中の仮設トイレのカテゴリーに近いものである。
【0010】
しかしながら、被災者の数が数百人を超えるような現実の場面では、特に男子の小便の場合は一目を憚っている余裕などないのが現状であり、簡便に利用できることが何よりも重要である。このように、来るべき災害に対処する自治体にとって、「簡便な利用」と「安価且つ省スペースでの備蓄」が最も重要なポイントである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−202755号公報
【特許文献2】特快2009−233336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このように、被災した地域の避難所とりわけ大災害の避難所では、数百人もの被災者が安心かつ簡便にトイレを利用できる環境を作ることが非常に重要であり、利用者による長蛇の列を減じると共に、男女共用による女性の嫌悪感を解消でき、更に、各自治体で災害用トイレの不足の原因となっている「予算の確保が難しい」及び「備蓄場所がない」の点をも解消し得る災害用トイレであることが望ましい。
【0013】
本発明は、まさにこれらの課題を解決し、各自治体が来るべき災害に対して十分な備えを行え、また、現実に災害が発生した場面でも、簡便に男子が小便を行える環境を提供し得ることを目指して創案された小便具である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は如上の課題を解決するため、折り畳み可能なシート片であって、該シート片の両端内面には接着部が設けられており、該接着部と前記シート片が接する上縁部には切欠部が形成されると共に、前記シート片にはその折り畳み部と交差するスリットが形成されており、該スリットにより分割された前記シート片の下片を引き出すことで支持体が形成される構成の緊急時における男子用小便具を採用する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る緊急時における男子用小便具は、様々の災害時において簡易・迅速に利用状態に置くことが可能であり、水洗機能がなく又は失われていても、既設の男子用小便器があれば利用することが可能である。また、若し既設の男子用小便器がない場合でも、建物内外の平板な壁面さえあれば利用することが可能である。
【0016】
また、本発明に係る緊急時における男子用小便具は、極めて小型・軽量であり、且つ、安価なコストで提供できるため、各自治体が限られた予算やスペースの範囲内で大量に購入し、便袋と共に備蓄しておくことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】シート片を折り畳んだ状態を示す図面である。
図2】シート片の両端を広げた状態を示図面である。
図3】シート片の両端を広げ、下片を引き出した状態を示す図面である。
図4】シート片の両端を男子用小便器の側部に貼り付けた状態を示す図面である。
図5図4のシート片に便袋を装着した状態を示す図面である。
図6】壁面にシート片を取り付けた状態を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、緊急時における男子用小便具であり、男子の小便用に特化したものである。以下、図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、シート片を折り畳んだ状態を示す図面であり、1はシート片、2は接着部、3はシート片の上縁部、4は切欠部、5は折り畳み部、6はスリット、7は下片である。
【0020】
本発明に係る緊急時における男子用小便具は、利用に供されない平時には図示するように、シート片1はその中央の折り畳み部5で二つ折りにされており、嵩張らないサイズであるため、自治体の避難所等の僅かなスペースに便袋と共に保管・備蓄しておくことが出来る。
【0021】
シート片1は可撓性を有するものであれば素材は問わないが、尿の飛散による影響を防ぐため、防水性又は撥水性を有するプラスチック製シートなどの採用が望ましい。シート片1の両端には折曲可能な接着部2が設けられており、その内面が既設の男子用小便器の側部または壁面と接着する接着面2aとなっている。
【0022】
また、接着部2と接するシート片1の上縁部3には切欠部4が形成されており、便袋をセットする際に、便袋の一部を切欠部4に掛け止めすることで、利用時における便袋の落下を防止することが出来るようになっている。なお、接着部2はシート片1と別体として取り付けても良いが、コストを抑えるためには両者を一体成型し、シート片1上に折曲部9を設け、折曲部9で折曲することで接着部2が形成される構成とすることが望ましい。
【0023】
また、シート片1には、折り畳み部5と交差するスリット6が形成されており、便袋をセットする際に、スリット6により分割されたシート片1の下片7を既設の男子用小便器10または壁面の方向に引き出すことで、便袋を載置して支持するための支持体8が形成される。
【0024】
図2はシート片1の両端を広げた状態を示す図面、図3はシート片1の両端を広げ、下片7を引き出した状態を示す図面であり、前述した便袋をセットする前の状態は図2に示すとおりであり、便袋をセットする際の状態は図3に示すとおり、スリット6によって分割されたシート片1の下片7が引き出され、それによって便袋を載置して支持するための支持体8が形成されている。
【0025】
図4はシート片1の両端を男子用小便器10の側部に貼り付けた状態を示す図面であり、かくして、下片7を引き出すことで支持体8が形成されたシート片1は図4に示すとおり、その両端に位置する接着部2の内面に設けられた接着面2aを既設の男子用小便器10の側部に接着することで取り付けられ、便袋がセット可能な状態となる。
【0026】
なお、下片7を引き出す手順については、上では予め下片7を引き出したシート片1を、その両端の接着部2の内面の接着面2aで既設の男子用小便器10の側部に接着すると述べたが、図2に示す状態で接着部2の内面の接着面2aを既設の男子用小便器10の側部に接着することでシート片1を取り付け、その後に、下片7を引き出しても良い。
【0027】
また、シート片1をその両端に位置する接着部2の内面の接着面2aで既設の男子用小便器10の側部に接着して取り付ける際、図4に示すとおり、シート片1の上縁部3に形成された切欠部4が既設の男子用小便器10の側部の外側に位置するよう、接着面2aを既設の男子用便器10の側部に接着する必要がある。
【0028】
このようにして、シート片1の男子用小便器10への取り付けが完了したら、図5に示すとおり、便袋11をシート片1上にセットすることになる。図5はシート片1に便袋11をセットした状態を示す図面であり、便袋11はシート片1の上縁部3に被せて載置されるとともに、便袋11の一部が切欠部4に掛け止めされ、また、便袋11の底部は、シート片1の下片7を引き出すことで形成された支持体8の上部に載置して支持されることになり、これで便袋11のシート片1へのセットが完了し、利用が可能になる。
【0029】
本発明に係る緊急時における男子用小便具はまた、既設の男子用小便器がない場合は、接着部2の接着面2aを既存の建物内外の壁面に接着することで、シート片1を壁面に取り付けて便袋をセットし、すぐに利用することが可能であるため、一刻を争う場面でも速やかに利用に供することが出来る。冬場の被災や寒冷地の場合は自ずと用を足す頻度が増すため、トイレ設備を利用できない場合は、避難所周辺で立小便をせざるを得ないケースもあり、それが避難所周辺の環境を著しく損ねる原因になっていた。
【0030】
因みに、既設の男子用小便器や建物内外の壁面があれば、シート片1の両端を広げて接着部2の接着面2aを既設の男子用小便器10の側部または壁面に接着し、シート片1の下片7を引き出して支持体8を形成し、その上部に便袋を被せて切欠部4に掛け止めし、支持体8に底部を載せて利用可能となるまでに、30〜40秒ほどしか掛からない。そのため、行列に並んで利用を待ち、我慢し過ぎて体調を崩すような事態を大幅に減じることが出来る。
【0031】
かくして、便袋11のシート片1へのセットが完了したら、いよいよ利用が可能になるが、出願人が試験を行ったところ、通常の成人男子が2〜3回用を足しても、シート片1やセットした便袋11が破綻を来すことはないとの良好な結果を得た。本発明に係る緊急時における男子用小便具は、一回の利用毎に各人が小水の入った便袋を取り外して処理するのが原則であるため、十分な結果といえる。
【0032】
このように、本発明に係る緊急時における男子用小便具は簡便に男子が用を足すことが出来るため、避難所のみならず、自宅や企業、更には、娯楽でも利用することが可能である。例えば、多人数が車でキャンプやバーベキューに出掛ける際に車にシート片と便袋を積んでおき、現地に既設のトイレ施設がない場合や、利用者で行列している場合は、車のドアにシート片を取り付けて、男子の各人が便袋を用いて利用することで、環境を損ねずに用を足すことが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明に係る緊急時における男子用小便具は、緊急時とくに地震や水害などの災害時に簡易・迅速に利用に供することが可能であり、低コスト且つ省スペースであるため、各自治体で災害用トイレの不足の原因となっている「予算の確保が難しい」及び「備蓄場所がない」といた問題を解消することが出来る。また、その簡便性と低コスト及び省スペースのため、自治体の避難所だけでなく自宅や会社、更には自動車でも備蓄しておき、キャンプなどの娯楽の場面でも利用することが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 シート片
2 接着部
2a 接着面
3 シート片の上縁部
4 切欠部
5 折り畳み部
6 スリット
7 下片
8 支持体
9 折曲部
10 既設の男子用小便器
11 便袋

























【要約】
【課題】男子の小便用に特化することで、男女共用のトイレで発生する行列や嫌悪感を緩和すると共に、極めて簡便に利用することができ、しかも、低コスト且つ省スペースであるため、自治体の避難所など多くの被災者を収容する施設だけでなく、自宅や会社においても、最小限の予算とスペースで備蓄することが可能な緊急時における男子小便具を提供する。
【解決手段】シート片1の両端に設けられた接着部2の接着面2aを既設の男子用小便器10の側部又は建物内外の壁面に貼り付け、スリット6により分割されたシート片1の下片7を引き出して支持体8を形成した後、便袋11の上部を切欠部4に掛け止めし、便袋11の底部を支持体8に載置する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6