(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の波長帯の光が前記検出対象から前記第1の検出器まで到達する経路の長さが前記第2の波長帯の光が前記検出対象から前記第2の検出器まで到達する経路の長さよりも短いことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の光検出センサ。
前記制御部は、前記光源から前記検出対象へ光を照射した後、前記光源の消灯中に、少なくとも前記第1の波長帯の光の強度と前記第2の波長帯の光の強度とを複数回検出することを特徴とする請求項5に記載の光検出装置。
請求項5または6に記載された光検出装置を備え、前記光源の消灯中に検出した、少なくとも前記第1の波長帯の光の強度と前記第2の波長帯の光の強度とに基づき、紙葉類の識別処理を行う紙葉類処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同じ構成要素には同じ符号を付している。また、図面は、理解しやすくするためにそれぞれの構成要素を模式的に示している。
【0016】
(光検出装置の構成)
図1は、本発明の光検出装置100の各部の機能および構成の一例を示す図である。光検出装置100は、搬送装置30が搬送する被搬送物Xに付された検出対象Tの真偽を判別するために用いられる装置である。
【0017】
例えば、被搬送物Xは、紙幣(銀行券)や有価証券などのシート媒体であり、検出対象Tは、分子中の電子が励起されると燐光を放射する燐光放射物質を含むインクを用いて紙幣等に印刷されたセキュリティマークである。被搬送物Xに塗布される燐光放射物質は、被搬送物Xの種類に応じて予め定められている。光検出装置100は、搬送装置30と、光検出センサ10と、制御部40とを有する。
【0018】
ここで、燐光とは、燐光体に励起光を照射したときに燐光体が発する光またはそのような光を発光する現象をいう。燐光は、励起光の照射中および照射後に燐光体が発する光であり、特に、照射後に燐光体が発する光を残光という。
【0019】
搬送装置30は、所定の位置に検出対象Tが付された被搬送物Xを、矢印で示される方向に連続的に搬送する装置である。搬送装置30は、被搬送物Xの形状等の特性に応じ、ベルトコンベヤやローラコンベヤ、浮上搬送装置等により構成される。
【0020】
本発明の実施の形態では、搬送装置30がベルトコンベヤにより構成される場合について説明する。当該ベルトコンベヤは、ベルトおよび当該ベルトを駆動するプーリーを有している。当該プーリーの回転軸には、当該プーリーの回転数(回転角度)を検出するロータリーエンコーダが接続されている。
【0021】
また、搬送装置30は、被搬送物Xの搬送方向において光検出センサ10よりも上流側に、被搬送物Xの通過を検知する通過検知センサ(図示略)を有している。
【0022】
制御部40は、光検出センサ10および搬送装置30などを制御する制御装置である。制御部40は、電源、CPU及びメモリ等から構成されており、光検出センサ制御部41、および、搬送装置制御部46を有している。
【0023】
搬送装置制御部46は、搬送装置30の動作を制御する制御部である。また、搬送装置制御部46は、通過検知センサによって被搬送物Xの通過が検知された後のロータリーエンコーダのパルス数に基づいて、ベルトの移動距離、すなわち、検出対象Tの移動距離などの検出対象Tの存在位置に関する情報を算出する。
【0024】
光検出センサ制御部41は、光検出センサ10を制御する制御部であり、検出部42、判別部43、記憶部44、および、光源制御部45を有する。
【0025】
検出部42は、光検出センサ10から出力される光検出信号を受信する。検出部42は、当該光検出信号に基づいて、検出対象Tが放射する放射光の強度を算出する。
【0026】
記憶部44は、真の検出対象Tから放射される放射光の波長帯ごとの強度や、後述する残光の減衰時定数τ等の情報を基準値として記憶している。これらの情報は、検出対象Tの真偽を判別するための基礎となる。
【0027】
判別部43は、検出部42で得られた放射光の強度と、記憶部44に基準値として記憶されている強度とを比較することによって、検出対象Tに含まれる物質を判別し、検出対象Tの真偽を判定する。また、判別部43は、残光の減衰時定数τを算出し、この燐光の減衰時定数τに基づいて検出対象Tに含まれる物質を判別することによって、検出対象Tの真偽を判別することもできる。
【0028】
光源制御部45は、光検出センサ10の光源の点灯および消灯制御を行う制御部である。光源制御部45は、搬送装置制御部46が算出した検出対象Tの存在位置に関する情報に基づいて光源の点灯および消灯制御を行う。
【0029】
(光検出センサの構成)
図2Aは、本発明の実施の形態に係る光検出センサ10の構成の一例を示す下面図、
図2Bは、本発明の実施の形態に係る光検出センサ10の構成の一例を示す正面図、
図2Cは、本発明の実施の形態に係る光検出センサ10の構成の一例を示す左側面図である。
【0030】
光検出センサ10は、被搬送物Xに付された検出対象Tからの光を検出するセンサである。光検出センサ10は、受光部11、光源12、導光体13、筐体(不図示)などを備えている。
【0031】
筐体は、受光部11、光源12、導光体13を内部に収容する箱体である。筐体は、例えば、遮光性を有する有色の合成樹脂により形成されている。なお、筐体は、このような合成樹脂に限らず、遮光性を有する材料で形成されていれば良く、例えば、アルミなどの金属で形成されていてもよい。
【0032】
光源12は、検出対象Tに対して光を照射する投光器である。光源12は、例えば、白色光などの可視光を照射する可視光源、赤外線を照射するIR光源、および、紫外線を照射するUV光源を有する。光源12は、これらの複数の波長帯の光を同時に、または、個別に放射することができる。
【0033】
光源12が放射するこれらの光のうち、例えば、紫外線は、検出対象Tを励起する励起光である。検出対象Tは、検出対象Tに固有の波長帯の光によって励起される。
【0034】
以下では、光源12が励起光を放射し、受光部11が、励起光によって励起された検出対象Tからの残光を検出する例について説明するが、受光部11は、励起光を照射中に検出対象Tから放射される燐光又は蛍光を検出してもよい。さらに、受光部11は、白色光などの可視光を照射中に検出対象Tで反射する反射光を検出してもよい。
【0035】
導光体13は、光源12から放射された励起光を搬送装置30上の検出領域へと導き、検出領域からの光を受光部11へ導く光学素子である。導光体13は、アクリルやポリカーボネート等の透明な樹脂でできたブロック体である。
【0036】
導光体13は、光源12に対向する位置に光入射面13aを有し、受光部11に対向する位置に光放射面13bを有し、搬送装置30上の検出領域に対向する位置に光入放射面13cを有する。なお、導光体13の材料は、励起光を透過する材料であればよく、透明な材料に限られない。
【0037】
受光部11は、検出対象Tからの光を受光して電気信号を出力する光検出器である。受光部11は、第1の検出器11a、第2の検出器11b、および、第3の検出器11cを有する。第1の検出器11a、第2の検出器11b、および、第3の検出器11cは、例えば、Siフォトダイオードである。
【0038】
なお、第1の検出器11a、第2の検出器11b、および、第3の検出器11cの材料や構造は、特に限定されるものではない。また、受光部11が有する検出器は、3つに限定されるものではなく、2つでもよく、また4つ以上でもよい。
【0039】
受光部11は、長方形状に形成されており、第1の検出器11a、第2の検出器11b、および、第3の検出器11cは、長方形状に形成された受光部11の長辺に沿って並んで配置されている。ただし、後述するように、第1の検出器11a、第2の検出器11b、および、第3の検出器11cの配置には、様々なバリエーションがある。なお、光検出センサ10は、受光部11の長辺が被搬送物Xの搬送方向と直交するように、光検出装置100に設置される。
【0040】
光源12は、受光部11の短辺が延びる方向に受光部11と所定間隔をあけて配置されている。ただし、受光部11および光源12の配置は、これに限定されるものではなく、例えば、光源12は、受光部11の長辺が延びる方向に受光部11と所定間隔をあけて配置されてもよい。
【0041】
第1の検出器11a、第2の検出器11b、および、第3の検出器11cは、それぞれ、所定の波長帯の光を透過させるカラーフィルタを備えている。カラーフィルタは、例えば、光の三原色であるR(赤色)、G(緑色)、および、B(青色)、並びに、UV(紫外線)およびIR(赤外線)等の帯域の光を透過させる光学フィルタである。
【0042】
図2Bに示すように、光源12からの励起光は、導光体13の光入射面13aに入射する。光入射面13aに入射した励起光は、導光体13内を伝搬し、光入放射面13cから放射される。
【0043】
光入放射面13cからの励起光は、検出領域に存在する検出対象Tに照射される。励起光が照射された検出対象Tは励起され、燐光を放射する。また、検出対象Tは、励起光の照射が停止された後、残光を放射する。
【0044】
検出対象Tからの燐光は、光入放射面13cから導光体13内に入射する。導光体13に入射した燐光は、導光体13内を伝搬し、光放射面13bから放射される。
【0045】
光放射面13bからの燐光は、受光部11で検出される。なお、
図2Cに示すように、導光体13内を伝搬した光放射面13bからの燐光は、第1の検出器11a、第2の検出器11b、および、第3の検出器11cの受光面に到達する。
【0046】
上述したように、第1の検出器11a、第2の検出器11b、および、第3の検出器11cは、それぞれ、異なる波長帯の光を透過させるカラーフィルタ有している。第1の検出器11aは、カラーフィルタを透過した第1の波長帯の燐光、第2の検出器11bはカラーフィルタを透過した第2の波長帯の燐光、第3の検出器11cはカラーフィルタを透過した第3の波長帯の燐光を検出する。
【0047】
(残光の減衰特性の算出方法)
燐光体である検出対象Tは燐光放射物質を含み、燐光放射物質は、励起光が照射されると励起し、燐光を放射する。燐光放射物質から放射される燐光の強度は、励起光の照射が開始されると、時間の経過とともに大きくなり、励起光の照射が停止された後、時間の経過とともに徐々に小さくなる。
【0048】
検出対象Tに含まれる燐光放射物質は、それぞれ固有の残光の減衰時定数τ(燐光強度がe分の1になるまでに要する時間)を有している。すなわち、横軸を光源12の消灯後の経過時間、縦軸を残光の強度とした座標系に描かれる残光の減衰曲線は、各燐光放射物質によって異なる。
【0049】
本発明では、検出対象Tに対する励起光の照射を停止した後、時間の経過とともに小さくなる残光の減衰時定数τを算出し、算出した残光の減衰時定数τと記憶部44に記憶した基準となる残光の減衰時定数τとを比較することにより、検出対象Tの真偽判定を行う。以下、残光の減衰時定数τの算出方法について説明する。
【0050】
まず、光源12が励起光を放射する。放射された励起光は導光体13を透過する。導光体13を透過した励起光は検出対象Tに達し、検出対象Tを励起する。その後、光源12が消灯すると、励起された検出対象Tは残光を放射する。検出対象Tから放射された残光は、導光体13を透過し、受光部11で検出される。
【0051】
受光部11は、第1のタイミングにおいて検出領域に存在する検出対象Tからの残光と、第1のタイミングから所定時間経過後の第2のタイミングにおいて検出領域に存在する検出対象Tからの残光とを検出する。
【0052】
残光を検出した受光部11は、残光の強度に応じた光検出信号を光検出センサ制御部41に出力する。受光部11から光検出信号を受信した光検出センサ制御部41は、第1のタイミングおよび第2のタイミングにおける残光の強度の算出等を行う。残光の減衰時定数τは、次の数式1に基づいて算出することができる。
【0054】
数式1において、τは残光の減衰時定数である。t
1およびt
2は、それぞれ、光源12の消灯後、第1のタイミングおよび第2のタイミングにおける残光の検出までの経過時間である。P
1およびP
2は、それぞれ、第1のタイミングおよび第2のタイミングに検出された残光の強度である。
【0055】
判別部43は、算出した残光の減衰時定数τと、記憶部44に記憶されている検出対象Tの残光の減衰時定数τの基準値とを比較することによって、検出対象Tに含まれる物質を判別し、検出対象Tの真偽を判定する。
【0056】
なお、上述した例では、残光の減衰特性として、残光の減衰時定数τを算出したが、算出する残光の減衰特性は、これに限定されるものではない。残光の減衰特性は、例えば、受光部11が検出した残光の強度をプロットして描いたグラフから算出されるものであってもよい。また、残光の強度の検出は、2回に限らず、3回以上行ってもよい。
【0057】
また、受光部11は、搬送中の検出対象Tからの残光を検出しても、移動を停止しているときの検出対象Tからの残光を検出してもよい。
【0058】
(受光部の感度と受光部が出力する光検出信号の大きさとの関係)
次に、光検出センサ10の受光部11が出力する光検出信号の大きさと受光部11の感度との関係について説明する。
図3は、受光部11の感度と受光部11が出力する光検出信号の大きさとの関係を説明する図である。
【0059】
図3中、P(λ)は、検出対象Tからのλを代表値とする波長帯の光の発光強度、TF(λ)は、λを代表値とする波長帯の光に対するカラーフィルタの透過率、SPD(λ)は、λを代表値とする波長帯の光に対する各検出器の受光素子の感度を示す。代表値としては、例えば、光のスペクトルの中心波長が挙げられる。
【0060】
ここで、受光部11の各検出器が出力する光検出信号の大きさV(λ)(受光面の単位面積当たりの値)は、次の数式2に基づいて算出することができる。
【0062】
また、各検出器は、受光素子とカラーフィルタを有するから、カラーフィルタを有する各検出器の感度は、積{TF(λ)×SPD(λ)}に基づいて算出することができる。
【0063】
本実施の形態では、受光部11の各検出器の感度に応じて、各検出器の受光面の受光面積を変えることで、各検出器が出力する光検出信号の大きさを調整し、各検出器の感度の違いを補正している。
【0064】
特に、各検出器のフィルタの透過率TF(λ)が全ての波長で一定の場合、各検出器の受光素子の感度SPD(λ)に応じて受光面の受光面積の大きさを設定する。具体的には、感度SPD(λ)が低い受光素子における受光面の受光面積を、感度SPD(λ)が高い受光素子における受光面の受光面積よりも大きくする。
【0065】
各受光素子に設けられたフィルタの透過率TF(λ)が波長帯λごとに異なる場合、各検出器の感度{TF(λ)×SPD(λ)}に応じて受光面の受光面積の大きさを設定する。具体的には、感度{TF(λ)×SPD(λ)}が低い検出器における受光面の受光面積を、感度{TF(λ)×SPD(λ)}が高い検出器における受光面の受光面積よりも大きくする。これにより、受光部11の各検出器が出力する光検出信号の大きさのばらつきを抑え、各検出器の感度の違いを補正することができる。
【0066】
なお、受光素子の感度SPD(λ)が、全ての波長帯λに対して一定の場合、カラーフィルタの透過率TF(λ)に応じて各受光素子の受光面の受光面積の大きさを設定してもよい。また、検出対象Tが放射する光の発光強度P(λ)が波長λごとに異なる場合、該発光強度P(λ)に応じて各受光素子の受光面の受光面積の大きさを設定してもよい。
【0067】
ここで、検出対象Tから放射される光の発光強度P(λ)、受光素子の感度SPD(λ)、および、検出器から出力される光検出信号の大きさV(λ)の関係についてグラフを用いて説明する。
図4は、検出対象Tの発光強度、受光素子の感度、および、光検出信号の大きさの関係の一例を示す図である。なお、ここでは説明を簡略化するため、カラーフィルタの透過率TF(λ)は、全ての波長λに対して一定とする。
【0068】
図4には、検出対象Tが、代表値λ1、λ2およびλ3で表される波長帯の光を放射し、かつ、各検出器の受光素子の感度SPD(λ)が、波長λ1から波長λ3に大きくなるにつれ高くなる場合が示されている。
【0069】
この場合、カラーフィルタの透過率TF(λ)が一定であるため、光検出信号の大きさV(λ)のグラフにおいて、波長λ1、λ2、λ3にピークが生じる。また、代表値λ1により表される波長帯の光に対する光検出信号の大きさV(λ)は、代表値λ2、および、λ3により表される波長帯の光に対する光検出信号の大きさV(λ)よりも小さくなる。
【0070】
結果として、受光部11から出力される光検出信号の大きさにばらつきが生じてしまう。また、光検出信号の大きさが小さいとノイズの影響が大きくなり、代表値λ1で表される波長帯の光の発光強度を精度よく検出することが困難となる。
【0071】
そこで、本発明では、受光する光の波長帯に応じて受光素子の受光面積の大きさを設定することによって、各受光素子の感度の違いを補正する。具体的には、上述のとおり、受光素子の感度SPD(λ)が低い波長を受光する検出器の、受光面の受光面積を大きくする。また、別の方法として、受光する光の波長帯に応じて受光素子の配置を決定することで、各受光素子の感度の違いを補正してもよい。さらに、これらの両方を行うことによって、各受光素子の感度の違いを補正してもよい。受光素子の配置の決定については、後に詳しく説明する。
【0072】
なお、本実施の形態では、受光部11の各検出器が、例えば、
図4に示すように、同じ感度特性を示す受光素子で形成されるようにしたが、各受光素子は、異なる材料で形成された異なる感度特性を示すものであってもよい。
【0073】
例えば、第2の検出器11bおよび第3の検出器11cを構成する受光素子において、λ1を代表値とする波長帯の光に対する感度が低い場合を考える。その場合、当該波長帯λ1の光に対する感度が第2の検出器11bおよび第3の検出器11cの受光素子よりも高い材料で形成された受光素子で第1の検出器11aを構成してもよい。このようにすれば、受光部11の各検出器の間の感度のばらつきを抑制することができる。
【0074】
次に、光源12を含む光検出センサ10と検出対象Tとの間の距離Dと、検出対象に照射される光の強度分布との関係について説明する。
図5Aおよび
図5Bは、検出対象に照射される光の強度分布を説明する図である。
【0075】
図5Aに示すように、光源12が検出対象Tから離れて配置される場合、光源12からの光は導光体13内で反射を繰り返す。そのため、検出対象Tに照射される光の強度分布は均一になりやすく、検出対象Tから放射される燐光(残光)の強度も均一になりやすい。その結果、受光部11の受光面における燐光(残光)の強度分布も均一になりやすい。
【0076】
この場合、
図2に示した第1の検出器11a、第2の検出器11bおよび第3の検出器11cのうち、感度の低い検出器における受光面の受光面積を大きくすることにより、検出器の感度のばらつきを補正することができる。
【0077】
一方、
図5Bに示すように、光源12が検出対象Tの近くに配置される場合、光が検出対象Tに直接到達するようになり、光の強度分布は、光源12に近い位置にピークが現れるものとなる。その結果、検出対象Tから放射される燐光(残光)の強度にもピークが現れ、さらには受光部11で検出する燐光(残光)の強度分布にもピークが現れる。
【0078】
この場合、第1の検出器11a、第2の検出器11b、および、第3の検出器11cのうち、感度の低い検出器の受光面積を大きくしてもよいし、光の強度分布のピークが現れる位置に感度の低い検出器を配置してもよい。あるいは、これらの両者を行ってもよい。これにより、各検出器の感度のばらつきを補正することができる。
【0079】
図6〜11に、実施の形態に係る光検出センサ10の受光部11の構成の例を示す。なお、以下に示す例では、第1の検出器11aの感度が、第2の検出器11b、および、第3の検出器11cの感度よりも低いものとする。
【0080】
図6は、本実施の形態に係る光検出センサ10の受光部11の構成の一例を示す図である。
図6に示す例では、第1の検出器11aの受光面積が第2の検出器11b、および、第3の検出器11cよりも大きくなっている。これにより、各検出器の感度のばらつきを補正することができる。
【0081】
第1の検出器11aの受光面積をどの程度大きくするかは、第2の検出器11bと第3の検出器11cの受光素子の感度、カラーフィルタの透過率、検出対象Tが放射する光の発光強度などに応じて決定される。
【0082】
また、この例では、第2の検出器11bの受光面積と第3の検出器11cの受光面積とを同じ大きさとした。第2の検出器11bと第3の検出器11cとの間に感度の差などがある場合は、第2の検出器11bの受光面積と第3の検出器11cの受光面積との間に差を設けてもよい。
【0083】
具体的には、代表値λ2で表される波長帯の光に対する第2の検出器11bの感度が、代表値λ3で表される波長帯の光に対する第3の検出器11cの感度よりも低い場合、第2の検出器11bの受光面積を第3の検出器11cの受光面積よりも大きくする。これにより、各検出器に感度のばらつきを補正することができる。
【0084】
また、上述したように、光源12を有する光検出センサ10を検出対象Tに近い位置に配置すると、検出対象Tにおける発光強度のピークは光源12に近い位置に現れる。したがって、
図6に示す例では、第1の検出器11aが検出する単位面積当たりの光の強度は、第2の検出器11bおよび第3の検出器11cが検出する単位面積あたりの光の強度よりも大きくなる。そのため、第1の検出器11aの受光面積の大きさは、光検出センサ10と検出対象Tとの距離を考慮して決定する必要がある。
【0085】
図7は、本実施の形態に係る光検出センサ10の受光部11の構成の他の例を示す図である。
図7に示す例では、受光部11の長辺の一方側から他方側に向かって、同じ受光面積の長方形状の各検出器を、第1の検出器11a、第3の検出器11c、第1の検出器11a、第2の検出器11bの順に繰り返して並べて配置している。そのため、第1の検出器11aの個数が、第2の検出器11bの個数および第3の検出器11cの個数より多い。
【0086】
このように各検出器を配置することにより、第1の検出器11aの受光面積を第2の検出器11b、第3の検出器11cよりも大きくし、各検出器の感度のばらつきを補正することができる。
【0087】
また、各検出器をこのように配置することにより、受光部11が受光する光の強度分布に偏りがあり、受光部11の受光面全体にわたり均一に光を受光できない場合あっても、感度のばらつきを抑えて各波長帯の光の強度を精度よく検出することができる。
【0088】
さらに、各検出器を同じ大きさに形成することにより、検出器の製造が容易になり、製造コストの低減を図ることができる。
【0089】
なお、受光部11が受光する光の強度分布に偏りがある場合とは、被搬送物Xに検出対象Tとして塗布されている燐光放射物質にムラがあったり、検出対象Tが文字である場合である。つまり、受光部11が受光する光の強度分布に偏りがある場合とは、検出対象Tに照射される光の照射範囲において燐光照射物質が一様に塗布されていない場合である。
【0090】
図8は、本実施の形態に係る光検出センサ10の受光部11の構成のさらに他の例を示す図である。
【0091】
図8に示す例では、第1列目に、受光部11の長辺の一方側から他方側に向かって、正方形状に形成された第1の検出器11aおよび第3の検出器11cをこの順に繰り返して並べて配置している。
【0092】
また、第1列目の検出器の光源12側に隣接する第2列目には、受光部11の長辺の一方側から他方側に向かって、第2の検出器11bおよび第1の検出器11aをこの順に繰り返し並べて配置している。
【0093】
さらに、第3列目、第4列目には、それぞれ、第1列目、第2列目と同じ順序で各検出器を並べて配置している。
【0094】
このように各検出器を配置することにより、第1の検出器11aの受光面積を第2の検出器11bおよび第3の検出器11cの受光面積よりも大きくし、各検出器の感度のばらつきを補正することができる。
【0095】
また、受光部11が受光する光の強度分布に偏りがあり、受光部11の受光面全体にわたり均一に光を受光できない場合あっても、感度のばらつきを抑えて各波長帯の光の強度を精度よく検出することができる。
【0096】
さらに、各検出器を同じ大きさに形成することにより、検出器の製造が容易になり、製造コストの低減を図ることができる。
【0097】
図9は、本実施の形態に係る光検出センサ10の受光部11の構成のさらに別の例を示す図である。
図9に示す例では、受光部11の長辺が延びる方向の一方側から他方側に向かって順に第2の検出器11b、第1の検出器11a、第1の検出器11a、第3の検出器11cを並べて配置している。ここで、各検出器の受光面積は、同じ大きさとされている。
【0098】
このように各検出器を配置することにより、第1の検出器11aの受光面積を第2の検出器11bおよび第3の検出器11cの受光面積よりも大きくし、各検出器の感度のばらつきを補正することができる。さらに、各検出器の大きさを同じ大きさに形成することにより、検出器の製造が容易になり、製造コストの低減を図ることができる。
【0099】
図10は、本実施の形態に係る光検出センサ10の受光部11の構成のさらに別の例を示す図である。
図10に示す例では、受光部11の長辺が延びる方向における中央付近に正方形状の第1の検出器11aを配置し、これらの検出器の両端に正方形状の第2の検出器11bと第3の検出器11cと交互に並べて配置している。
【0100】
このように各検出器を配置することにより、第1の検出器11aの受光面積を第2の検出器11bおよび第3の検出器11cの受光面積よりも大きくし、各検出器の感度のばらつきを補正することができる。さらに、各検出器の大きさを同じ大きさに形成することにより、検出器の製造が容易になり、製造コストの低減を図ることができる。
【0101】
図11は、本実施の形態に係る光検出センサ10の受光部11の構成のさらに別の例を示す図である。
図11に示す例では、光源12を含む光検出センサ10が検出対象Tの近くに配置されている。また、第1の検出器11aの受光面積、第2の検出器11bの受光面積および第3の検出器11cの受光面積が同じ大きさとされ、さらに第1の検出器11aが光源12に近い位置に配置されている。
【0102】
上述したように、光検出センサ10が検出対象Tの近くに配置されている場合、受光部11の受光面における燐光(残光)の強度分布にピークが表れる。この場合、第1の検出器11a、第2の検出器11b、および、第3の検出器11cのうち、感度の低い検出器をピークが表れる位置に配置する。
【0103】
このように各検出器を配置することにより、光源12から第1の検出器11aまでの燐光(残光)の伝達経路を短くし、各検出器の感度のばらつきを補正することができる。
【0104】
図12は、本実施の形態に係る光検出センサ10の受光部11の構成のさらに別の例を示す図である。
図12に示す例では、燐光(残光)が検出対象Tから第1の検出器11aまで到達する経路の長さを、燐光(残光)が検出対象Tから第2の検出器11bまたは第3の検出器11cまで到達する経路の長さよりも短くしている。
【0105】
このように各検出器を配置することにより、光源12から第1の検出器11aまでの燐光(残光)の伝達経路を短くし、第1の検出器11aが検出する光の強度を第2の検出器11b、および、第3の検出器11cよりも大きくすることができる。これにより、各検出器の感度のばらつきを補正することができる。
【0106】
図13は、上述した本実施の形態に係る光検出装置100が奏する効果を説明する図である。光検出センサ10が検出対象Tの近くに配置され、検出対象Tに照射される光の強度分布にピークが現れる場合、光の強度分布がピークとなる検出対象Tの位置の近くに感度の低い第1の検出器11aを配置することにより、各検出器の感度のばらつきを補正することができる。
【0107】
また、この場合、感度の低い第1の検出器11aの受光面積を大きくすることにより、各検出器の感度のばらつきを補正することもできる。さらに、感度の低い第1の検出器11aの配置および受光面積の両者を調整することにより、さらに容易に、各検出器の感度のばらつきを補正することができる。
【0108】
図5Aに示したように光源12が検出対象Tから離れて配置され、検出対象Tに照射される光の強度分布にピークが現れない場合について考える。この場合、感度の低い検出器の配置を調整しても、各検出器から出力される光検出信号の大きさにあまり変化はなく、各検出器の感度のばらつきを効果的に補正することができない場合がある。
【0109】
この場合、感度の低い第1の検出器11aの受光面積を大きくすることにより、第1の検出器11aから出力される光検出信号の大きさを大きくして、各検出器の感度のばらつきを補正することができる。
【0110】
また、上述したように、検出対象Tに照射される光の強度分布にピークが現れない場合、感度の低い第1の検出器11aの配置を調整しても、各検出器から出力される光検出信号の大きさにあまり変化はない。そのため、感度の低い第1の検出器11aの配置および受光面積の両者を調整した場合、受光面積の大きさを調整した場合と同等の効果となる。
【0111】
なお、本実施の形態の光検出装置100は、被搬送物Xに付された検出対象Tからの光を検出するセンサとしてラインセンサを有していてもよい。このラインセンサについて、以下、
図14及び
図15を用いて説明する。
【0112】
図14は、実施の形態に係る導光部品50を示す斜視図である。
図15は、
図14に示す導光部品50を有するラインセンサ60を備える本発明の光検出装置100を上側から見た図である。導光部品50は、複数の導光体13とカバーガラス51とを有しており、複数の導光体13は、カバーガラス51の一方側の面に一列に並べて配置されている。ラインセンサ60は、導光部品50の導光体13それぞれの上側に、
図2Aから
図2Cに示されている受光部11及び光源12が配置されることで形成されている。ラインセンサ60は、ラインセンサ60の長辺が被搬送物Xの搬送方向(
図15矢印)と直交するように光検出装置100に設置されている。
【0113】
光検出装置100はラインセンサ60を備えることで、検出対象Tが付されている位置がそれぞれ異なる多種の被搬送物Xが搬送装置30によって搬送されたとしても、それらの被搬送物Xの検出対象Tの真偽を確実に判定することができる。例えば、被搬送物Xとして、被搬送物の搬送方向に垂直な方向における一方側領域に検出対象物Tが付された被搬送物A、中央領域に検出対象物Tが付された被搬送物B、及び他方側領域に検出対象物Tが付された被搬送物Cを想定する。ラインセンサ60を備える光検出通装置100は、被搬送物A、被搬送物B、及び被搬送物Cのいずれが搬送装置30によって搬送されてきたとしても、それぞれに付された検出対象Tの真偽を判定することができる。
【0114】
なお、本実施の形態の光検出装置100は、例えば、紙葉類処理装置に設けることができる。この場合、紙葉類処理装置は、処理対象の紙幣、有価証券など紙葉類に付された検出対象Tの真偽を判定することで、紙葉類の真偽を識別することができる。
【0115】
以上説明したように、本発明では、受光部11の各検出器のうち、感度の低い検出器の受光面積と配置のうち少なくとも何れかを調整する。これにより、検出する光の波長ごとに異なる感度を示す検出器の出力の大きさを補正し、かつ、ノイズの影響を抑制して光の強度の検出を行うことができる。
【0116】
2018年3月30日出願の特願2018−068259の日本出願に含まれる明細書、特許請求の範囲、図面および要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。