特許第6968009号(P6968009)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6968009
(24)【登録日】2021年10月28日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】ガスセンサの被水試験装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/416 20060101AFI20211108BHJP
   G01N 27/409 20060101ALI20211108BHJP
   G01N 27/26 20060101ALI20211108BHJP
   G01M 9/04 20060101ALN20211108BHJP
【FI】
   G01N27/416 331
   G01N27/416 376
   G01N27/416 371G
   G01N27/409 100
   G01N27/26 391B
   G01N27/26 391Z
   !G01M9/04
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-45922(P2018-45922)
(22)【出願日】2018年3月13日
(65)【公開番号】特開2019-158615(P2019-158615A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2020年10月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 純平
(72)【発明者】
【氏名】生盛 智也
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/047511(WO,A1)
【文献】 特開2011−117743(JP,A)
【文献】 特開2008−46102(JP,A)
【文献】 特開平5−288636(JP,A)
【文献】 特開2017−190968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26−27/49
G01M 15/00−15/14
G01M 9/00−10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流路を有する管と、
前記流路にガスを流すための送風機と、
前記流路に水分を供給するための水供給機と、
前記流路を流れる前記ガスの少なくとも一成分を検知するためのガスセンサと、
前記流路の実効断面積を変化させることで前記流路を流れるガスの圧力に変動を生じさせるための圧力変動発生器と
を備えるガスセンサの被水試験装置。
【請求項2】
前記圧力変動発生器は前記流路の実効断面積を周期的に変化させることが可能である、
請求項1記載のガスセンサの被水試験装置。
【請求項3】
前記圧力変動発生器は、モータと、前記モータにより回転駆動される弁体とを有するバタフライ弁である、
請求項2記載のガスセンサの被水試験装置。
【請求項4】
前記送風機からの前記ガスの流量及び/又は流速と、前記圧力変動発生器による前記実効断面積の変化周波数との少なくとも一方が可変とされている、
請求項2又は請求項3に記載のガスセンサの被水試験装置。
【請求項5】
前記圧力変動発生器は、前記ガスの流れ方向に関する前記ガスセンサの下流側に配置されている、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のガスセンサの被水試験装置。
【請求項6】
前記管は、前記ガスセンサが取り付けられたチャンバを有しており、
前記チャンバに振動を加えることができる加振機をさらに備えている、
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のガスセンサの被水試験装置。
【請求項7】
前記管は、前記チャンバの両端に取り付けられたフレキシブルチューブをさらに有している、
請求項6記載のガスセンサの被水試験装置。
【請求項8】
前記ガスの流れ方向に関する前記ガスセンサの上流側であって、前記水供給機による前記水分の供給位置の下流側において前記流路に配置されたハニカム構造体をさらに備えている、
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載のガスセンサの被水試験装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載のガスセンサの被水試験装置を用いたガスセンサの被水試験方法であって、
前記管に前記ガスセンサを取り付ける工程と、
前記水供給機により前記流路に水分を供給する工程と、
前記送風機により前記流路にガスを流すとともに、前記圧力変動発生器によりガスの圧力に変動を生じさせ、圧力変動を有するガスにより前記流路の水分を前記ガスセンサに向けて飛散させる工程と
を含む、
ガスセンサの被水試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサの被水による影響を調べるためのガスセンサの被水試験装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来用いられていたこの種のガスセンサの被水試験装置としては、例えば下記の特許文献1等に示されている構成を挙げることができる。すなわち、従来の試験装置は、エンジンと、エンジンの排気ガスを流通させる排気管と、排気管に取り付けられたガスセンサとを有している。排気管に霧状の水又は水蒸気が注入されることにより排気管の内壁面に水分が付着された後にエンジンが始動され、排気管の内壁面に付着されている水分がエンジンからの排気ガスにより飛散される。そして、この飛散された水分のガスセンサへの付着に基づいて、ガスセンサの被水による影響が調べられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−190968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来のガスセンサの被水試験装置では、エンジンが使用されているので、外乱影響が大きく、試験結果を定量化することが困難である。外乱としては、例えば気圧による排気量の変化、及び外気温による排気ガスの温度変化等が挙げられる。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的の一つは、外乱影響を抑えることができ、より定量的な試験結果を得ることができるガスセンサの被水試験装置を提供することである。また、別の目的の一つは、外乱影響を抑えることができ、より定量的な試験結果を得ることができるガスセンサの被水試験方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るガスセンサの被水試験装置は、一実施形態において、内部に流路を有する管と、流路にガスを流すための送風機と、流路に水分を供給するための水供給機と、流路を流れるガスの少なくとも一成分を検知するためのガスセンサと、流路の実効断面積を変化させることで流路を流れるガスの圧力に変動を生じさせるための圧力変動発生器とを備える。
【0007】
また、本発明に係るガスセンサの被水試験方法は、一実施形態において、管にガスセンサを取り付ける工程と、水供給機により流路に水分を供給する工程と、送風機により流路にガスを流すとともに、圧力変動発生器によりガスの圧力に変動を生じさせ、圧力変動を有するガスにより流路の水分をガスセンサに向けて飛散させる工程とを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明のガスセンサの被水試験装置及び方法の一実施形態によれば、流路を流れるガスの圧力に圧力変動発生器が変動を生じさせるので、エンジンの使用を回避しながら、エンジンからの排気ガスを模したガス流により水分をガスセンサに向けて飛散させることができる。これにより、外乱影響を抑えることができ、より定量的な試験結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態によるガスセンサの被水試験装置を示す構成図である。
図2図1の加振機を示す正面図である。
図3図1の圧力変動発生器を示す正面図である。
図4図1の送風機からのガスの流量を変更した際の弁体による流路の開閉周波数とガスの圧力脈動幅との関係を示すグラフである。
図5図1の送風機からのガスの流量を変更した際の弁体による流路の開閉周波数とガスの静圧との関係を示すグラフである。
図6図4のガスの圧力脈動幅及び図5のガスの静圧を示す説明図である。
図7図1の流路の最大閉塞率を変更した際の弁体による流路の開閉周波数とガスの圧力脈動幅との関係を示すグラフである。
図8図1の被水試験装置を用いたガスセンサの被水試験方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。なお、本発明は実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、実施の形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【0011】
図1は本発明の実施の形態によるガスセンサ1の被水試験装置2を示す構成図であり、図2図1の加振機8を示す正面図であり、図3図1の圧力変動発生器9を示す正面図である。図1の略中央に示すガスセンサ1は、エンジンを有する車両に搭載されて、車両の排気ガスの少なくとも一成分を検知することができるセンサである。ガスセンサ1が検知する成分としては、例えばNOx、HC、アンモニア及び酸素等を挙げることができる。
【0012】
図示はしないが、ガスセンサ1は、セラミックスで構成されるガス検知素子を含む。ガスセンサ1が車両に搭載されるとき、ガスセンサ1のガス検知素子は、ガスセンサ1に内蔵されるヒータ及び排気ガスによって600℃程度の高温まで加熱される。高温のガス検知素子に水分が付着すると、熱衝撃によりガス検知素子が割れる虞がある。特に冬場等の気温が低いとき、車両の排気系に溜まった結露水が排気ガスにより飛散してガスセンサ1に付着することがある。
【0013】
図1に示す被水試験装置2は、ガスセンサ1が車両に搭載されている状態を模擬しつつ、ガスセンサ1の被水による影響を調べる被水試験を実施するための装置である。図1に示すように、被水試験装置2は、管3、送風機4、風量計5、水供給機6、ハニカム構造体7、加振機8及び圧力変動発生器9を含んでいる。
【0014】
本実施の形態の管3は、図1の右側に示す導入端3aから図1の左側に示す排出端3bまで連通された流路を内部に有している。管3の内径は、例えば50〜350mm等とすることができる。本実施の形態の管3は、導入端3aから排出端3bまで複数の管状体が連ねられることにより構成されている。すなわち、本実施の形態の管3は、導入端3aから順に並べて配置された、導入管30、風量計用ハウジング31、第1接続管32、ハニカム構造体用ハウジング33、第1フレキシブルチューブ34、チャンバ35、第2フレキシブルチューブ36、第2接続管37、圧力変動発生器用ハウジング38及び排出管39を含んでいる。これら管3に含まれる管状体は、他の内径を有する管状体にそれぞれ取り換え可能とされている。
【0015】
本実施の形態の導入管30は、導入端3aが設けられた管状体である。導入管30の導入端3aには、送風機4が接続されている。本実施の形態の送風機4は、例えば外気4aを吸入するとともに、羽根車の回転運動により外気4aにエネルギーを与えてガス4bの流れを発生する機器等とすることができる。送風機4としては、例えば管3内の流路に標準状態(1気圧25℃)に換算したときに1〜20m/sの風速のガス4bを流すことができるブロアー等を使用できる。送風機としては、例えば圧縮ガスが貯められたボンベ等のエンジンを除く他の送風手段を用いてもよい。送風機4からのガス4bは、導入管30から排出端3bに向けて管3内の流路を流される。すなわち、本実施の形態の送風機4は、ガス4bの流れ方向に関する最上流に配置されている。送風機4には、送風制御機40が接続されている。送風制御機40が送風機4の送風動作を制御することにより、送風機4からのガス4bの流量及び/又は流速が可変とされている。送風制御機40は、プログラムに基づき演算処理を行う演算装置及びインバータ等を含むことができる。
【0016】
本実施の形態の風量計用ハウジング31は、風量計5を内蔵する管状体である。風量計5は、流路を流れるガス4bの流量及び/又は流速を計測するセンサである。風量計5の計測値は、送風制御機40による送風機4の動作制御に使用できる。また、風量計5の計測値は、図示しない記憶装置に記憶できるとともに、風量計5又は風量計5とは別に設けられた表示器に表示できる。
【0017】
本実施の形態の第1接続管32は、風量計用ハウジング31とハニカム構造体用ハウジング33とを接続している。第1接続管32の内部には、水供給機6のシャワーノズル65が挿入されている。本実施の形態の水供給機6は、シャワーノズル65を通して流路に液滴状の水分を供給する。水供給機6が流路に水分を供給することで、車両の排気系内に水分が付着している状況が模擬される。水供給機6としては、例えば0.7〜1.5L/minの水分を供給できる能力を有する機器等を使用できる。
【0018】
本実施の形態の水供給機6には、タンク60、加圧機61、圧力計62、開閉弁63、流量計64及びシャワーノズル65が含まれている。
タンク60には、水60aが貯められている。
加圧機61は、タンク60内に圧縮空気を供給してタンク60内を加圧する。
圧力計62は、タンク60の内部圧力を計測する。圧力計62によって計測される内部圧力が所定値となるように、加圧機61の加圧動作が制御される。また、圧力計62の計測値は、図示しない記憶装置に記憶できるとともに、圧力計62又は圧力計62とは別に設けられた表示器に表示できる。
開閉弁63は、タンク60の供給管60b内の流路を開閉するために供給管60bに設けられている。開閉弁63は、流路の開閉状態を全閉及び全開で切り替えてもよいし、流路の開度を連続的に変更してもよい。開閉弁63により供給管60b内の流路が開かれているとき、加圧されたタンク60内の水60aが供給管60bを通してシャワーノズル65に供給される。
流量計64は、タンク60の供給管60bを通過する水60aの流量を計測できる。また、流量計64は、タンク60の供給管60bを通過する水60aの積算流量を計測できる。流量計64の計測値は、加圧機61及び開閉弁63の動作制御に使用できる。また、流量計64の計測値は、図示しない記憶装置に記憶できるとともに、流量計64又は流量計64とは別に設けられた表示器に表示できる。
本実施の形態のシャワーノズル65は、微細な開口部を有するノズル体であり、供給管60bを通して供給された水60aを液滴として管3内の流路に供給する。シャワーノズル65は、シャワーノズル65からの液滴の大きさを変更するために、異なる大きさの開口部を有する他のシャワーノズルに取り換えることができる。本実施の形態のシャワーノズル65は、ガス4bの流れ方向に関する下流側に向けて液滴を噴射する向きに配置されている。しかしながら、シャワーノズル65は、ガス4bの流れ方向に関する上流側に向けて液滴を噴射してもよい。
【0019】
本実施の形態のハニカム構造体用ハウジング33は、ハニカム構造体7を内蔵する管状体である。ハニカム構造体7は、周知のようにハニカム構造体7の長手方向に延びる複数のセルがハチの巣状に設けられた円柱状の構造体であり、車両の排気ガスの浄化に使用され得るものである。複数のセルは、隔壁により互いに区画されて形成されており、ハニカム構造体7の第1端面から第2端面まで貫通している。また、複数のセルは、ハニカム構造体7の内部において流体の流路を形成する。ハニカム構造体7の素材としては、セラミックス又は金属が使用され得る。
【0020】
本実施の形態のハニカム構造体7は、ガス4bの流れ方向に関するガスセンサ1(チャンバ35)の上流側であって、水供給機6による水分の供給位置(シャワーノズル65)の下流側において流路に配置されている。この位置にハニカム構造体7が配置されていることで、ハニカム構造体7に付着及び/又は含浸された水分がガスセンサ1に向かって飛散するという実際の車両で起こり得る状態を模擬することができる。特にセラミックス製のハニカム構造体7の場合、金属製のハニカム構造体7と比較してより多くの水分がハニカム構造体7に付着及び/又は含浸されるという性質を有している。ガスセンサ1が搭載される車両にセラミックス製のハニカム構造体7が搭載されると想定される場合、この位置にセラミックス製のハニカム構造体7を配置して、実際の車両で起こり得る状態を模擬することが特に有用である。
【0021】
本実施の形態の第1フレキシブルチューブ34及び第2フレキシブルチューブ36は、可撓性を有する管状体である。本実施の形態の第1及び第2フレキシブルチューブ34,36は、金属製の蛇腹構造管によって構成されている。これら第1フレキシブルチューブ34及び第2フレキシブルチューブ36は、チャンバ35の両端に取り付けられている。第1フレキシブルチューブ34はチャンバ35をハニカム構造体用ハウジング33に接続しており、第2フレキシブルチューブ36はチャンバ35を第2接続管37に接続している。第1及び第2フレキシブルチューブ34,36は、後述のように加振機8がチャンバ35に振動を加えるときに、その振動を吸収する。第1及び第2フレキシブルチューブ34,36が振動を吸収することで、管3の他の部分に伝わる振動が低減される。
【0022】
本実施の形態のチャンバ35は、ガスセンサ1が取り付けられた管状体である。ガスセンサ1は、ガス検知素子を含むセンシング部分1aが管3内の流路に位置するようにチャンバ35に取り付けられている。センシング部分1aとは、ガス4bに曝される素子を含む部分である。チャンバ35には、例えばアクリル樹脂等の透明な板材が取り付けられた開口35aが設けられている。この開口35aを通して、チャンバ35内のセンシング部分1aの様子及び水の飛散状況を外部から確認することができる。ガスセンサ1には、ガスセンサ1の計測値を記憶する記憶装置10が接続されている。記憶装置10は、ガスセンサ1の出力信号をA/D変換する回路を含むことができる。また、ガスセンサ1の計測値は図示しない表示器に表示できる。
【0023】
本実施の形態のチャンバ35には、チャンバ35に振動を加えるための加振機8が接続されている。加振機8としては、例えば一軸に沿って進退するプランジャ8aを有するアクチュエータを使用することができる。加振機8がチャンバ35に振動を加えることで、例えばエンジンの振動及び/又は路面変動による振動等の車両実走行中の振動がガスセンサ1に作用することを模擬することができる。加振機8には、加振制御機80が接続されている。加振制御機80が加振機8の加振動作を制御することにより、加振機8による振動の振幅及び周波数の少なくとも一方が可変とされている。加振制御機80は、プログラムに基づき演算処理を行う演算装置及びインバータ等を含むことができる。
【0024】
図2に示すように、加振機8は、チャンバ35の周囲方向に延在された枠体81に支持されており、この枠体81に案内されてチャンバ35の周囲方向に変位可能とされている。すなわち、加振機8は、鉛直方向の振動のみならず鉛直方向に対して傾いた方向の振動もチャンバ35に加えることができる。図2に示すように、加振機8の振動方向に沿う直線8bがチャンバ35の中心軸35bを通るように傾けられながら加振機8が変位されることが好ましい。また、加振機8の振動方向に沿う直線8bが、中心軸35bと平行な直線を通るように傾けられながら加振機8が変位されてもよい。なお、図1では枠体81の図示を省略している。
【0025】
また、図2において二点鎖線で示すように、チャンバ35へのガスセンサ1の取付位置も可変とされている。ガスセンサ1は、ガスセンサ1の長手方向がチャンバ35の中心軸35bを通るようにチャンバ35に取り付けることができる。また、ガスセンサ1は、ガスセンサ1の長手方向がチャンバ35の中心軸35bを通らないようにチャンバ35に取り付けることもできる。例えばガスセンサ1が取り付けられた状態でガスセンサ1の変位を案内する枠体をチャンバ35の周面に取り付ける等して、被水試験中にガスセンサ1を変位させてもよい。
【0026】
図1に戻り、本実施の形態の第2接続管37は、第2フレキシブルチューブ36と圧力変動発生器用ハウジング38とを接続している。
【0027】
本実施の形態の圧力変動発生器用ハウジング38は、圧力変動発生器9の弁体91を内蔵する管状体である。圧力変動発生器9は、流路の実効断面積を変化させることで流路を流れるガス4bの圧力に変動を生じさせる機器である。流路の実効断面積とは、ガス4bの流れ方向に沿って圧力変動発生器用ハウジング38の内側を見たときに、圧力変動発生器用ハウジング38の内断面のうちガス4bが流通できる領域の面積である。圧力が変動するガス4bによりガスセンサ1に水分を飛散させることにより、同様に圧力が変動するエンジンからの排気ガスによりガスセンサ1に水分を飛散させる状況を模擬することができる。圧力変動発生器9は、流路の実効断面積をランダムに変化させてもよいが、流路の実効断面積を周期的に変化させることが好ましい。圧力変動発生器9としては、例えば0.1〜250回/秒(Hz)の周期的な圧力変動(脈動)を実現できる機器等を使用できる。
【0028】
本実施の形態の圧力変動発生器9は、ガス4bの流れ方向に関するガスセンサ1の下流側に配置されている。このような位置に圧力変動発生器9が配置されることで、より鋭敏な圧力脈動を有するガス4bをガスセンサ1に吹き付けることができる。また、ガスセンサ1の上流側に圧力変動発生器9を配置すると、本来であればガスセンサ1に付着するはずの水分が圧力変動発生器9に付着する虞があるが、ガスセンサ1の下流側に圧力変動発生器9を配置することでこのような虞を回避できる。
【0029】
図3に特に示すように、本実施の形態の圧力変動発生器9は、モータ90と、モータ90により回転駆動される弁体91とを有するバタフライ弁によって構成されている。弁体91の回転軸91aは、圧力変動発生器用ハウジング38に回転自在に支持されている。弁体91の回転により、流路の実効断面積が周期的に変化される。バタフライ弁によって圧力変動発生器9を構成することにより、様々な圧力脈動を有するガス4bをより確実に得ることができる。モータ90には、回転制御機92が接続されている。回転制御機92がモータ90の動作を制御することにより、弁体91による流路の実効断面積の変化周波数(開閉周波数)が可変とされている。
【0030】
本実施の形態の弁体91は、圧力変動発生器用ハウジング38内で回転可能な大きさの板によって構成されている。弁体91の外形は、任意であるが、圧力変動発生器用ハウジング38の内縁と同形状であることが好ましい。すなわち、図3に示すように圧力変動発生器用ハウジング38の内縁が円形である場合、弁体91は円板であることが好ましい。
【0031】
本実施の形態の弁体91及び圧力変動発生器用ハウジング38の少なくとも一方を別のものと取り換えることにより、流路の最大閉塞率を変更できる。最大閉塞率は、圧力変動発生器用ハウジング38の内断面積に占める弁体91の最大延在面積の割合である。すなわち、最大閉塞率は、(弁体91の最大延在面積÷圧力変動発生器用ハウジング38の内断面積)×100%で表される。圧力変動発生器用ハウジング38の内断面積は、圧力変動発生器用ハウジング38の長手方向に直交する面における圧力変動発生器用ハウジング38の内側の面積である。圧力変動発生器用ハウジング38の内縁が円形である場合、圧力変動発生器用ハウジング38の内径から圧力変動発生器用ハウジング38の内断面積を算出してよい。弁体91の最大延在面積は、圧力変動発生器用ハウジング38の長手方向に直交する面に沿って弁体91の端面が延在しているときに圧力変動発生器用ハウジング38の長手方向に沿って弁体91を見たときの弁体91の端面の面積である。弁体91が円板である場合、弁体91の最大延在面積は円板の直径から算出した円板の端面の面積としてよい。
【0032】
本実施の形態の排出管39は、排出端3bが設けられた管状体である。排出管39の排出端3bは開放されており、排出端3bからは飛散された水分がガス4bとともに排出される。
【0033】
次に、圧力変動発生器9としてバタフライ弁を用いることによる作用についてより詳細に説明する。図4図1の送風機4からのガス4bの流量を変更した際の弁体91による流路の開閉周波数とガス4bの圧力脈動幅との関係を示すグラフであり、図5図1の送風機4からのガス4bの流量を変更した際の弁体91による流路の開閉周波数とガス4bの静圧との関係を示すグラフであり、図6図4のガス4bの圧力脈動幅及び図5のガス4bの静圧を示す説明図である。
【0034】
本発明者らは、送風機4からのガス4bの流量を変更しながら、弁体91による流路の開閉周波数とガス4bの圧力脈動幅及び静圧との関係を調査した。その結果を図4及び図5に示す。
【0035】
図4の横軸は弁体91による流路の開閉周波数[回/秒]であり、図4の縦軸はガス4bの圧力脈動幅[mbar]である。流路の開閉周波数は、1秒(単位時間)当たりの流路開閉回数であり、弁体91の回転軸91aの回転数とは異なる。弁体91の回転軸91aが1秒当たりに1回転した場合、弁体91による流路の開閉周波数は2[回/秒]となる。流路の開閉周波数は、ガス4bの脈動周波数に相当する。ガス4bの圧力脈動幅[mbar]は、図6に示すようにガス4bの圧力における極小値の平均値と極大値の平均値との差を表している。
【0036】
図4の丸のプロットは、送風機4からのガス4bの流量を100Nm3/hに設定した際の流路の開閉周波数[回/秒]と圧力脈動幅[mbar]との関係を表している。同様に、三角のプロットはガス4bの流量を92Nm3/hに設定した際の関係を示し、四角のプロットはガス4bの流量を57Nm3/hに設定した際の関係を示し、ひし形のプロットはガス4bの流量を30Nm3/hに設定した際の関係を示している。なお、図4のX印のプロットは、2L直列4気筒ディーゼルエンジンの排気ガスの脈動周波数[回/秒]と圧力脈動幅[mbar]との関係を示している。
【0037】
図4に示すように、弁体91による流路の開閉周波数を変更することで、ガス4bの圧力脈動幅を変更できることが確認できた。また、送風機4からのガス4bの流量を増やすほど、ガス4bの圧力脈動幅を増やすことができることも確認できた。
【0038】
図5の横軸は弁体91による流路の開閉周波数[回/秒]であり、図5の縦軸はガス4bの静圧[mbar]である。ガス4bの静圧は、図6の示すようにガス4bの圧力の平均値を表している。
【0039】
図5の丸のプロットは、送風機4からのガス4bの流量を100Nm3/hに設定した際の流路の開閉周波数[回/秒]と静圧[mbar]との関係を表している。同様に、三角のプロットはガス4bの流量を92Nm3/hに設定した際の関係を示し、四角のプロットはガス4bの流量を57Nm3/hに設定した際の関係を示し、ひし形のプロットはガス4bの流量を30Nm3/hに設定した際の関係を示している。なお、図5のX印のプロットは、2L直列4気筒ディーゼルエンジンの排気ガスの脈動周波数[回/秒]と静圧[mbar]との関係を示している。
【0040】
図5に示すように、送風機4からのガス4bの流量を変更することで、ガス4bの静圧を変更できることが確認できた。
【0041】
次に、図7は、図1の流路の最大閉塞率を変更した際の弁体91による流路の開閉周波数とガス4bの圧力脈動幅との関係を示すグラフである。本発明者らは、流路の最大閉塞率を変更した際の弁体91による流路の開閉周波数とガス4bの圧力脈動幅との関係も調査した。その結果を図7に示す。なお、上述のように、流路の最大閉塞率は、弁体91及び圧力変動発生器用ハウジング38の少なくとも一方を別のものと取り換えることにより変更可能である。
【0042】
図7の横軸は弁体91による流路の開閉周波数[回/秒]であり、図7の縦軸はガス4bの圧力脈動幅[mbar]である。図7の四角のプロットは最大閉塞率が80%のときの流路の開閉周波数[回/秒]と圧力脈動幅[mbar]との関係を表し、ひし形のプロットは最大閉塞率が50%のときの同関係を表している。
【0043】
図7に示すように、流路の最大閉塞率を変更することでも、流路の開閉周波数[回/秒]と圧力脈動幅[mbar]との関係を調整できることが確認できた。
【0044】
図4図5及び図7に示す結果から、弁体91による流路の開閉周波数(流路の実効断面積の変化周波数)、送風機4からのガス4bの流量及び流路の最大閉塞率を変更することで、様々なエンジンの排気ガスを模擬したガス4bを得ることができると理解されるであろう。
【0045】
次に、図8は、図1の被水試験装置2を用いたガスセンサ1の被水試験方法を示すフローチャートである。本実施の形態の被水試験方法は、取付工程(ステップS1)、水供給工程(ステップS2)及び気流供給工程(ステップS3)を含んでいる。
【0046】
取付工程(ステップS1)では、試験対象となるガスセンサ1を管3のチャンバ35に取り付ける。
【0047】
水供給工程(ステップS2)では、水供給機6により管3内の流路に水分を供給する。水供給機6による水分の供給は、流路内に所定量の水分が供給されるまで行われる。
【0048】
気流供給工程(ステップS3)では、圧力変動発生器9により流路の実効断面積を変化させながら、送風機4により流路にガス4bを流す。また、送風機4により流路にガス4bを流しているとき、ガスセンサ1が取り付けられたチャンバ35に加振機8が振動を加える。上述のように、流路の実効断面積の変化に応じてガス4bの圧力が変動する。流路の水分は、圧力が変動するガス4bによってガスセンサ1に向けて飛散される。従って、エンジンの使用を回避しながら、エンジンからの排気ガスを模したガス4bにより水分をガスセンサ1に向けて飛散させることができる。これにより、外乱影響を抑えることができ、より定量的な試験結果を得ることができる。試験対象となるガスセンサ1が搭載される車両における排気ガスをガス4bが模擬できるように、弁体91による流路の開閉周波数、送風機4からのガス4bの流量及び流路の閉塞率が、被水試験方法の開始前に所定値に設定される。
【0049】
本実施の形態に係るガスセンサ1の被水試験装置2及びそれを用いた被水試験方法では、流路を流れるガス4bの圧力に圧力変動発生器9が変動を生じさせるので、エンジンの使用を回避しながら、エンジンからの排気ガスを模したガス4bの流れにより水分をガスセンサ1に向けて飛散させることができる。これにより、外乱影響を抑えることができ、より定量的な試験結果を得ることができる。
【0050】
また、本実施の形態に係る圧力変動発生器9が流路の実効断面積を周期的に変化させることが可能であるので、エンジンからの排気ガスを模したガス4bの流れをより確実に得ることができる。
【0051】
さらに、本実施の形態に係る圧力変動発生器9は、モータ90と、モータ90により回転駆動される弁体91とを有するバタフライ弁であるので、様々な圧力脈動を有するガス4bの流れをより確実に得ることができる。
【0052】
さらにまた、本実施の形態に係る送風機4からのガス4bの流量及び/又は流速と圧力変動発生器9による流路の実効断面積の変化周波数とが可変とされているので、様々な圧力変動を有するガス4bの流れをより確実に得ることができる。送風機4からのガス4bの流量及び/又は流速と圧力変動発生器9による流路の実効断面積の変化周波数とのいずれか一方のみが変更可能とされていても、様々な圧力変動を有するガス4bの流れを得ることができる。
【0053】
また、本実施の形態に係る圧力変動発生器9は、ガス4bの流れ方向に関するガスセンサ1の下流側に配置されているので、より鋭敏な圧力脈動を有するガス4bをガスセンサ1に吹き付けることができるとともに、ガスセンサ1に付着するはずの水分が圧力変動発生器9に付着する虞を回避できる。
【0054】
さらに、本実施の形態に係るガスセンサ1が取り付けられたチャンバ35に加振機8が振動を加えることができるので、車両実走行中の振動がガスセンサ1に作用することを模擬しながら被水試験を実施でき、被水試験の精度を向上できる。
【0055】
さらにまた、本実施の形態に係るチャンバ35の両端にフレキシブルチューブ34,36が取り付けられているので、加振機8によりチャンバ35に振動を加えるときに管3の他の部分に伝わる振動を低減できる。
【0056】
また、本実施の形態では、ガス4bの流れ方向に関するガスセンサ1の上流側であって、水供給機6による水分の供給位置の下流側において流路にハニカム構造体7が配置されているので、ハニカム構造体7に付着又は含浸された水分がガスセンサ1に向かって飛散するという実際の車両で起こり得る状態を模擬しながら被水試験を実施でき、被水試験の精度を向上できる。この構成は、ガスセンサ1が搭載される車両にセラミックス製のハニカム構造体7が搭載されると想定される場合に特に有用である。
【0057】
なお、実施の形態では、圧力変動発生器9がバタフライ弁であるように説明しているが、圧力変動発生器は例えばシリンダ弁、ゲート弁又はボール弁等の他の弁により管の流路を開閉してもよい。また、圧力変動発生器は、管の少なくとも一部分を可撓性管状体とし、外部から可撓性管状体を断続的に狭窄する等の他の方法により流路の実効断面積を変化させてもよい。
【0058】
また、実施の形態では、水供給機6が液滴の状態の水分を流路に供給するように説明したが、水供給機は、例えば水流又は水蒸気等の他の態様にて水分を流路に供給してもよい。
【0059】
さらにまた、実施の形態では、管3(チャンバ35)に1つのガスセンサが取り付けられるように説明したが、複数のガスセンサを管に取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 ガスセンサ
2 被水試験装置
3 管
4 送風機
6 水供給機
7 ハニカム構造体
8 加振機
9 圧力変動発生器
34,36 フレキシブルチューブ
35 チャンバ
90 モータ
91 弁体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8