(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照しながら実施の形態について説明する。図面は模式的に示されたものであるため、異なる図面にそれぞれ示されている画像のサイズおよび位置の相互関係は、必ずしも正確ではなく適宜変更され得る。また、以下の説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称および機能も同様のものとする。よって、それらについての詳細な説明を省略する場合がある。
【0013】
また、以下の説明では、「上」、「下」、「側」、「底」、「表」または「裏」などの特定の位置および方向を意味する用語が用いられる場合があるが、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするため便宜上用いられているものであり、実際に実施される際の方向を限定するものではない。
【0014】
また、半導体の導電型について、第1導電型をN型、第2導電型をP型として説明を行う。しかし、これらを反対にし、第1導電型をP型、第2導電型をN型としても良い。また、N+型はN型よりも不純物濃度が高く、N−型はN型よりも不純物濃度が低いことを意味する。同様に、P+型はP型よりも不純物濃度が高く、P−型はP型よりも不純物濃度が低いことを意味する。
【0015】
<A.前提技術>
Si誘電体分離基板構造として最も典型的な構造はEPICである。酸化膜で個別に分離された単結晶Siの島状領域内にデバイスが形成されており、基本的に電極は表面側から引き出される。島状領域の内側はN+型領域で覆われており、基板側の電位変動による影響を遮断すると共にダイオードのN+型カソード領域としても機能する。
【0016】
図1は、EPIC内に形成された縦型Si−MOSの断面図である。デバイス本体はソース引出電極101、ドレイン引出電極102、ゲート電極103、N+型ソース領域104、P−型ウェル領域105、N−型ドリフト領域106、N+型ドレイン領域107からなり、誘電体分離層108、層間絶縁膜109および保護膜110によって個別に絶縁分離されている。基板111はポリSiを堆積して形成される。通常、裏面電極112はアース電位に設定される。EPIC内に形成される縦型誘電体分離デバイスは2〜350V耐圧の比較的小電流用途に係るパワーIC製品用途に用いられてきた。基板111はポリSiを堆積して形成されるため、ウエハ状態での反りが大きくなる傾向がある。この為、直径6インチ以上の大口径化には適用が困難であるという限界要因がある。
【0017】
ウエハの大口径化と内蔵パワーデバイスの高耐圧化に対応する構造としてウエハ接着形の誘電体分離構造が提案された。
図2は、ウエハ接着形の誘電体分離構造内に形成された縦型Si−IGBTの断面図である。デバイス本体はエミッタ引出電極201、コレクタ引出電極202、第1ゲート電極203、第2ゲート電極204、N+型エミッタ領域205、P+型エミッタ領域206、P−型ウェル領域207、N−型ウェル領域208、P−型ドリフト領域209、P+型コレクタ領域210、N+型ドリフト領域211、N+型コレクタ領域212から成っており、誘電体分離領域213及び層間絶縁膜214と保護膜215によって個別に絶縁分離されている。基板216は単結晶Siであり、デバイス領域とは誘電体分離領域213を接合面として一体化している。なお、裏面電極217は
図1の裏面電極112と同様、アース電位に設定される。誘電体分離領域213の絶縁膜中には、耐圧印加に係る電界が侵入しないことから、デバイス耐圧の増加に伴う厚膜化は不要であるというメリットがあり,ウエハの大口径化に伴って反りが増大するという問題が解決される。しかし、高耐圧化に伴うSOI層厚さ(DSOI)の厚膜化によってV字型分離領域の幅が広く成らざるを得ず、高耐圧化に伴って集積度が低下することが新たな課題となっている。
【0018】
<B.実施の形態1>
<B−1.構成>
図3は、実施の形態1のSiC−SOIデバイス1001の断面図である。
図3にはSiC−SOIデバイス1001の断面の一部を示しているが、SiC−SOIデバイス1001は実際には中心軸18を軸に左右対称な構造である。
【0019】
SiC−SOIデバイス1001は、アノード電極1、P型拡散領域2、N−型ドリフト領域3A、SOI−N−型領域3B、N+型底部拡散領域4、N+型側面部拡散領域5、カソード電極6、フィールド絶縁膜7、第1トレンチ8、N+型Si埋込領域9、第2トレンチ10、分離絶縁膜領域11、Si埋込領域12、層間絶縁膜13、保護膜14、埋込絶縁膜15、誘電体分離基板16、裏面電極17および薄厚絶縁膜23を備えて構成される。
【0020】
SiC−SOIデバイス1001は、N−型ドリフト領域3A等が形成されるSiC基板と誘電体分離基板16とが埋込絶縁膜15を介して接着されたウエハ接着形であり、誘電体分離基板16上のSiC基板がSOI層となる。誘電体分離基板16のことを第1基板とも称する。誘電体分離基板16の下面には裏面電極17が形成される。
【0021】
SiC基板は、ショットキーバリアダイオード(SBD:Schottky barrier diode)が形成されるデバイス領域RDと、デバイス領域RDを取り囲む周辺領域RCとを有している。ここでは、SiC−SOIデバイス1001が有するデバイスとしてショットキーバリアダイオードを例に挙げるが、その他、MOSFETまたはIGBTなどのスイッチング素子を有していても良い。デバイス領域RDにおいて、SiC基板の表層にはN−型ドリフト領域3Aが形成され、N−型ドリフト領域3Aの表層にはP型拡散領域2が形成される。N−型ドリフト領域3Aの下方はN+型底部拡散領域4である。デバイス領域RDにおいて、N−型ドリフト領域3Aの外周側には、N+型底部拡散領域4と接触するN+型側面部拡散領域5が形成される。N+型側面部拡散領域5の中央部には、N−型ドリフト領域3Aを連続的または断続的に取り囲むように第1トレンチ8が形成されている。第1トレンチ8はSiC基板を貫通しておらず、従って第1トレンチ8の下方にはN+型側面部拡散領域が残されている。第1トレンチ8の内部にはN+型Si埋込領域9が形成されている。N+型底部拡散領域4、N+型側面部拡散領域5およびN+型Si埋込領域9が連結してカソード領域を構成する。
【0022】
アノード電極1は、N−型ドリフト領域3A上とP型拡散領域2上に跨って形成される。また、カソード電極6は、N+型側面部拡散領域5上とN+型Si埋込領域9上に跨って形成される。アノード電極1とカソード電極6の間のN−型ドリフト領域3Aの上面は、フィールド絶縁膜7によってキャップされる。フィールド絶縁膜7は、例えば酸化膜である。
【0023】
N−型ドリフト領域3Aの表面近傍に、複数の薄厚絶縁膜23がN−型ドリフト領域3Aの表面と平行に形成されている。なお、薄厚絶縁膜23を第1薄厚絶縁膜とも称する。薄厚絶縁膜23の厚さT
sic1は所定の値に規定され、隣り合う薄厚絶縁膜23の間隔T
int1は0.4μm以下である。
【0024】
T
int1を0.4μm以下とする理由について、以下説明する。「パワーデバイス・パワーICハンドブック、p.204 (
図8.56)、社団法人 電気学会(1996)」によれば、埋込酸化膜、すなわち薄厚絶縁膜23の厚みが固定された状態でもSOI層の厚さが変われば降伏電圧が変化することが知られている。降伏電圧の変化には一定の傾向が認められる。すなわち、横軸をSOI層の厚み、縦軸を降伏電圧とすると、降伏電圧があるSOI層の厚みで極小値を有する、いわゆる「下に凸」のパターンとなる。SOI層を、降伏電圧が極小値となるときの厚みより薄くすると降伏電圧が増加するのは、アバランシェ降伏によって発生するアバランシェ電流がSOI層の薄さ故に増幅することができず、実効的に降伏電圧が高くなる効果による。降伏電圧が極小値となるときのSOI層は、埋込酸化膜の薄厚化に伴って若干薄くなるが、約1μm強の値に収斂する。すなわち、埋込酸化膜の厚さに関わらず、SOI層の厚さが1μm強以下であればアバランシェ電流を抑制することにより実効的なアバランシェ電界強度の向上を見込めると考えられる。以上はSi−SOIについて解説された資料に依拠した見解である。しかし、SiC−SOIはSi−SOIとは比誘電率とアバランシェ臨界電界強度が異なることから縦軸のスケールに違いが生じる、すなわち全体的に高耐圧化するものの、降伏電圧の変化傾向自体は同様であることから、上記の見解はSiC−SOIについても適切である。
【0025】
次に、周辺領域RCの構成を説明する。周辺領域RCにはN−型領域3Bが形成されている。そして、N−型領域3BにはSiC基板を貫通する第2トレンチ10が形成されている。すなわち、第2トレンチ10はN−型領域3Bを貫通し、埋込絶縁膜15に達する。第2トレンチ10の内部にはノンドープSiが埋め込まれたSi埋込領域12が形成されている。また、Si埋込領域12の側面と上面には分離絶縁膜領域11が形成されている。分離絶縁膜領域11により、SiC−SOIデバイス1001は、第2トレンチ10の外周側と内周側とで絶縁分離される。また、N−型領域3Bの上面はN−型ドリフト領域3Aと同様、フィールド絶縁膜7によってキャップされている。アノード電極1、フィールド絶縁膜7、カソード電極6およびN−型領域3B上には、層間絶縁膜13が形成され、層間絶縁膜13上には保護膜14が形成される。従って、SiC−SOIデバイス1001のデバイス領域RDは、表面側を層間絶縁膜13と保護膜14により絶縁分離され、裏面側を埋込絶縁膜15により絶縁分離され、側面側を分離絶縁膜領域11により絶縁分離されている。
【0026】
デバイス領域RDと周辺領域RCを機械的に支持する誘電体分離基板16と裏面電極17は、従来の技術に係るウエハ接着形誘電体分離構造と同様である。
【0027】
<B−2.動作>
図4は、逆バイアス状態のSiC−SOIデバイス1001の電位ポテンシャル分布を示す断面図である。逆バイアス印加電源19がカソード電極6とアノード電極1の間に接続される。N−型領域3Bはアース20Aに接続され、裏面電極17はアース20Bに接続される。P型拡散領域2とN−型ドリフト領域3Aのpn接合部分では、逆バイアス印加電源19によって空乏層が伸長し、電位ポテンシャル分布21が形成される。また、アース電位がカソード電極6と短絡されている場合、又はカソード電極6とアノード電極1が共にアース電位に対して電位差を有する場合には、SOI誘電体分離領域、すなわち誘電体分離基板16と分離絶縁膜領域11において、電位ポテンシャル分布22が形成される。
【0028】
図5は、SiC−SOIデバイス1001のデバイス領域を逆バイアス状態にしたときの、電位ポテンシャル分布と電界強度分布を示している。
図5の左図は、P型拡散領域2とN−型ドリフト領域3Aのpn接合部分の空乏層中の電位ポテンシャル分布24を示している。
図5の右図は、左図のα−α´断面における電界強度Eの一次元プロファイルを示している。
【0029】
この図から、N−型ドリフト領域3Aにおいて、薄厚絶縁膜23の形成領域における電界強度E
p(SiC)が高いことが分かる。印加バイアス電圧の増加に伴って薄厚絶縁膜23の形成領域における電界強度E
p(SiC)がアバランシェ臨界電界強度に達した時点でも、薄厚絶縁膜23の形成領域ではアバランシェ電流の増幅が抑制されるため、実効的な耐電圧が向上する。しかし、製造方法による制限から、薄厚絶縁膜23の間隔を1μm強以下の範囲に自由に製造できるわけではない。薄厚絶縁膜23の製造方法として、後述する酸素(O)イオン注入工程を用いる場合、「吉野明、「SIMOX技術によるSOI(silicon-on-insulator)構造の形成過程」、表面科学、Vol. 15, No.2, pp. 101-105, 1994」に示されるように、加速エネルギーが80keVの場合には0.08μmの厚みのSOI層が形成され、加速エネルギーが180keVの場合には0.18μmの厚みのSOI層が形成される。そして、酸素イオン照射後のエピタキシャル層の形成実績として0.35μmの厚みが得られている。従って、実際に製造可能な範囲としては、薄厚絶縁膜23の間隔T
int1を0.4μm以下に規定することが妥当である。
【0030】
<B−3.製造方法>
図6から
図11は、SiC−SOIデバイス1001の製造工程を示す断面図である。以下、
図6から
図11に沿ってSiC−SOIデバイス1001の製造工程を説明する。まず、N−型のSiC基板301の一方の主面(以下、「表面」と称する)に写真製版によりマスクパターンを形成する。そして、当該マスクパターンを用いて酸素(O)イオンを注入し、薄厚絶縁膜23を複数形成する。ここでは、加速イオンを制御するか、イオン照射とエピ成長を交互に行う等の方法により、薄厚絶縁膜23を複数形成する。次に、SiC基板301の表面にSBDの活性層となるSiCエピ層303を成長させる。さらに、SiCエピ層303の一部の表層にN+型拡散領域304を形成する。こうして、
図6に示す構造が形成される。
【0031】
次に、
図7に示すように、Si基板305の一方の主面上と他方の主面上に、各々SiO2層306とSiO2層307を成膜する。以上の工程を経たSi基板305を、
図8に示すようにSiC基板301の他方の主面(以下、「裏面」と称する)に接合し、接合強化アニール工程を加えることで両者を一体化させる。ここで、Si基板305は、SiO2層307を介してSiC基板301と接合されている。この一体化した構造体をSOI接合基板308と称する。なお、
図8以降ではSiCエピ層303をSiC基板301と区別せず、SiC基板301として示している。
【0032】
次に、
図8に矢印309Aで示すように、SiC基板301の表面から水素(H)イオンを照射する。このとき、水素イオンの飛程位置309Bは、薄厚絶縁膜23の数μm手前となるように制御される。水素イオンの照射後、飛程位置309Bに沿ってSiC基板301の表面側を剥離し、剥離面を研磨することにより、以降のプロセスに対応するSOI接合基板308を作成する。
【0033】
次に、SOI接合基板308にP型拡散領域2とフィールド絶縁膜7を順次形成した後、薄厚絶縁膜23の外周側にN+型拡散領域304に達する第1トレンチ8を形成する。そして、第1トレンチ8内にN+型Siを埋め込んでN+型Si埋込領域9を形成する。また、アニールを行い第1トレンチ8の内周側および外周側にN+型側面部拡散領域5を形成する。ここで、N+型側面部拡散領域5より内周側のN−型の領域がN−型ドリフト領域3Aとなり、N+型側面部拡散領域5より外周側のSOI層がN−型領域3Bとなる。こうして、
図9に示す構造が得られる。
【0034】
次に、第1トレンチ8より外周側に、SiO2層306に達する第2トレンチ10を形成する。その後、第2トレンチ10の側壁を酸化して分離絶縁膜領域11を形成する。また、第2トレンチ10にポリSiを埋め込んで、Si埋込領域12を形成すると共に、Si埋込領域12の上面を酸化して分離絶縁膜領域11を形成する。また、N−型領域3Bの表面にフィールド絶縁膜7を形成する。こうして、
図10に示す構造が得られる。
【0035】
次に、アノード電極1、カソード電極6、層間絶縁膜13、および保護膜14を順次形成する。そして、SiO2層307を除去し、除去した面に裏面電極17を形成することにより、
図11に示すSiC−SOIデバイス1001が得られる。なお、Si基板305は誘電体分離基板16に対応し、SiO2層306は埋込絶縁膜15に対応している。
【0036】
<B−4.効果>
実施の形態1のSiC−SOIデバイス1001は、第1基板である誘電体分離基板16と、誘電体分離基板16と埋込絶縁膜15を介して接合されたSiC基板とを備え、SiC基板に、デバイス領域RDと、デバイス領域RDを取り囲む周辺領域RCが形成され、デバイス領域RDは、第1導電型のドリフト領域であるN−型ドリフト領域3Aと、N−型ドリフト領域3Aを連続的または断続的に取り囲み、SiC基板を貫通しない第1トレンチ8と、第1トレンチ8の両側面に形成された第1導電型の第1拡散領域であるN+型側面部拡散領域5と、N−型ドリフト領域3Aの下方に形成されN+型側面部拡散領域5と接する第1導電型の第2拡散領域であるN+型底部拡散領域4と、N−型ドリフト領域3Aの表面近傍において、N−型ドリフト領域3Aの表面と平行に0.4μm以下の間隔で形成された複数の薄厚絶縁膜23と、を備える。そして、周辺領域RCは、第1トレンチ8を連続的に取り囲むように形成され、SiC基板を貫通する第2トレンチ10と、第2トレンチ10の両側面に形成された分離絶縁膜領域11と、を備える。
【0037】
SiC−SOIデバイス1001によれば、第1トレンチ8とその周辺構造、すなわちN+型側面部拡散領域5およびN+型底部拡散領域4によりオン抵抗が低減されるため、通電損失が抑制される。また、第2トレンチ10とその周辺構造、すなわち分離絶縁膜領域11により、デバイス領域RCを誘電体分離することが可能となる。これにより、ブリッジ回路内のハイサイドデバイスとローサイドデバイスを同一基板内に集積化、すなわちインバータ回路をワンチップ化することが可能となり、制御性向上の効果が得られる。また、薄厚絶縁膜23の形成領域内でアバランシェ電流が発生しても、アバランシェ電流の増幅が抑制される作用が働く。従って、薄厚絶縁膜23の形成領域内で電界強度が局所的に最大となるようデバイス構造を調整することにより、SOI層を厚くすることなく高い耐圧値を実現することが可能となる。
【0038】
<C.実施の形態2>
<C−1.構成>
図12は、実施の形態2のSiC−SOIデバイス1002のデバイス領域の断面図である。SiC−SOIデバイス1002のデバイス領域は、N−型ドリフト領域3A内にP型埋込領域25が形成されたFJ−SBD(Floating Junction SBD)構造である。なお、FJ−SBD構造については、例えば「松波弘之他 編集、「半導体SiC技術と応用 第2版」、p.352
図8.3.8 (2011)」に説明されている。
【0039】
また、N−型ドリフト領域3A内において、P型埋込領域25に隣接した同じ深さの領域に、複数の薄厚絶縁膜26がN−型ドリフト領域3Aの表面と平行に形成されている。P型埋込領域25と薄厚絶縁膜26以外のSiC−SOIデバイス1002の構成は、実施の形態1のSiC−SOIデバイス1001から薄厚絶縁膜23を除外した構成と同様である。なお、薄厚絶縁膜26を第2薄厚絶縁膜とも称する。薄厚絶縁膜26の厚さT
sic2は所定の値に規定され、隣り合う薄厚絶縁膜26の間隔T
int2は0.4μm以下である。
【0040】
<C−2.動作>
図13は、SiC−SOIデバイス1002のデバイス領域を逆バイアス状態にしたときの、電位ポテンシャル分布と電界強度分布を示している。
図13の左図は、P型拡散領域2とN−型ドリフト領域3Aのpn接合部分の空乏層中の電位ポテンシャル分布27を示している。
図13の右図は、左図のβ−β´断面における電界強度Eの一次元プロファイルを示している。
【0041】
この図から、N−型ドリフト領域3Aにおいて、薄厚絶縁膜26の形成領域における電界強度E
p(SiC)が高いことが分かる。印加バイアス電圧の増加に伴って薄厚絶縁膜23の形成領域における電界強度E
p(SiC)がアバランシェ臨界電界強度に達した時点でも、薄厚絶縁膜26の形成領域ではアバランシェ電流の増幅が抑制されるため、実効的な耐電圧が向上する。
【0042】
<C−3.製造方法>
SiC−SOIデバイス1002の製造方法は、実施の形態1のSiC−SOIデバイス1001の製造方法に準ずる。SiC−SOIデバイス1001の製造方法との違いは、
図6に示す薄厚絶縁膜23の形成に代えて薄厚絶縁膜26を形成することと、
図9に示すP型拡散領域2の形成の際に、P型拡散領域2より深く、かつ薄厚絶縁膜26と同じ深さにP型埋込領域25を形成することである。
【0043】
すなわち、SiC−SOIデバイス1002の製造方法は、(a)第1導電型のSiC基板301のドリフト領域の表層に第2導電型の第3拡散領域であるP型拡散領域2を形成し、(b)ドリフト領域のP型拡散領域2よりも深い位置に第2導電型の埋込領域であるP型埋込領域25を形成し、(c)ドリフト領域のP型埋込領域25と同じ深さに、ドリフト領域の表面と平行に0.4μm以下の間隔で複数の第2薄厚絶縁膜である薄厚絶縁膜26を形成し、(d)第1導電型のSiC基板301の裏面を絶縁層であるSiO2層306を介してSi基板305と接合し、(e)SiC基板301のドリフト領域を連続的または断続的に取り囲むように、SiC基板301の表面からSiC基板301を貫通しない第1トレンチ8を形成し、(f)第1トレンチ8の両側面にドリフト領域より不純物濃度の高い第1導電型の第1拡散領域であるN+型側面部拡散領域5を形成し、(g)第1トレンチ8を取り囲むように、SiC基板301を貫通する第2トレンチ10を形成し、(h)第2トレンチ10の両側面に分離絶縁膜領域11を形成する。
【0044】
<C−4.効果>
実施の形態2のSiC−SOIデバイス1002のデバイス領域RDは、第1基板である誘電体分離基板16と、誘電体分離基板16と埋込絶縁膜15を介して接合されたSiC基板301とを備え、SiC基板301に、デバイス領域RDと、デバイス領域RDを取り囲む周辺領域RCが形成され、デバイス領域RDは、第1導電型のドリフト領域であるN−型ドリフト領域3Aと、N−型ドリフト領域3Aを連続的または断続的に取り囲み、SiC基板を貫通しない第1トレンチ8と、第1トレンチ8の両側面に形成された第1導電型の第1拡散領域であるN+型側面部拡散領域5と、N−型ドリフト領域3Aの下方に形成されN+型側面部拡散領域5と接する第1導電型の第2拡散領域であるN+型底部拡散領域4と、N−型ドリフト領域3Aの表層に形成された第2導電型の第3拡散領域であるP型拡散領域2と、N−型ドリフト領域3AのP型拡散領域2よりも深い位置に形成された第2導電型の埋込領域であるP型埋込領域25と、N−型ドリフト領域3A内においてP型埋込領域25と同じ深さに、N−型ドリフト領域3Aの表面と平行に0.4μm以下の間隔で形成された複数の第2薄厚絶縁膜である薄厚絶縁膜26と、を備える。そのため、薄厚絶縁膜26の形成領域内でアバランシェ電流が発生しても、アバランシェ電流の増幅が抑制される作用が働く。従って、薄厚絶縁膜26の形成領域内で電界強度が局所的に最大となるようデバイス構造を調整することにより、SOI層を厚くすることなく高い耐圧値を実現することが可能となる。
【0045】
<D.実施の形態3>
<D−1.構成>
図14は、実施の形態3のSiC−SOIデバイス1003のデバイス領域の断面図である。SiC−SOIデバイス1003は、N−型ドリフト領域3Aの表面側のフィールド絶縁膜7上に、アノード−カソード間の容量分割構造28を有する。容量分割構造28とは、フローティング状態の複数の電極であり、アノード電極1とカソード電極6の間を容量分割して電位ポテンシャルを均等に分布させる。
【0046】
また、N−型ドリフト領域3Aの表面近傍には、実施の形態1のSiC−SOIデバイス1001と同様、複数の薄厚絶縁膜23がN−型ドリフト領域3Aの表面と平行に形成されている。薄厚絶縁膜23の厚さT
sic1は所定の値に規定され、隣り合う薄厚絶縁膜23の間隔T
int1は0.4μm以下である。容量分割構造28と薄厚絶縁膜23以外のSiC−SOIデバイス1003の構成は、実施の形態2のSiC−SOIデバイス1002と同様である。
【0047】
<D−2.動作>
図15は、SiC−SOIデバイス1003のデバイス領域を逆バイアス状態にしたときの、電位ポテンシャル分布と電界強度分布を示している。
図15の左図は、P型拡散領域2とN−型ドリフト領域3Aのpn接合部分の空乏層中の電位ポテンシャル分布29を示している。
図15の右図は、左図のγ−γ´断面における電界強度Eの一次元プロファイルを示している。
【0048】
容量分割構造28によってフィールド絶縁膜7内での電界強度が均一化されるため、フィールド絶縁膜7とN−型ドリフト領域3Aとの界面近傍における電界強度も抑制される。N−型ドリフト領域3A内では、薄厚絶縁膜23の形成領域および薄厚絶縁膜26の形成領域で、相対的に高い電界強度分布が認められる。しかしながら、これらの形成領域でアバランシェ電流が発生した場合、隣り合う薄厚絶縁膜23の間隔および隣り合う薄厚絶縁膜26の間隔が各々0.4μm以下であることから、アバランシェ電流の増幅は抑制される。従って、実効的な耐電圧が向上する。
【0049】
<D−3.効果>
実施の形態3のSiC−SOIデバイス1003のデバイス領域RDは、P型拡散領域2の上に形成された第1電極であるアノード電極1と、第1拡散領域であるN+型側面部拡散領域5の上に形成された第2電極であるカソード電極6と、P型拡散領域2とN+型側面部拡散領域5の間のN−型ドリフト領域3Aの上に形成されたフィールド絶縁膜7と、フィールド絶縁膜7上に形成された容量分割構造28と、N−型ドリフト領域3Aの表面近傍において、ドリフト領域の表面と平行に0.4μm以下の間隔で形成された複数の第1薄厚絶縁膜である薄厚絶縁膜23と、を備える。従って、容量分割構造28により、フィールド絶縁膜7とN−型ドリフト領域3Aとの界面における電界強度が緩和される。また、薄厚絶縁膜23と薄厚絶縁膜26の形成領域内で電界強度が局所的に最大となるようデバイス構造を調整することにより、SOI層を厚くすることなく高い耐圧値を実現することが可能となる。
【0050】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。