(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6968064
(24)【登録日】2021年10月28日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】格納式注射器
(51)【国際特許分類】
A61M 5/32 20060101AFI20211108BHJP
【FI】
A61M5/32 510H
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-524821(P2018-524821)
(86)(22)【出願日】2016年11月18日
(65)【公表番号】特表2018-533435(P2018-533435A)
(43)【公表日】2018年11月15日
(86)【国際出願番号】AU2016051119
(87)【国際公開番号】WO2017079811
(87)【国際公開日】20170518
【審査請求日】2019年11月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】518163127
【氏名又は名称】グローバル メディセーフ ホールディングス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】ワルシュ,アラン
【審査官】
田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/128274(WO,A1)
【文献】
特表2008−532657(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/096909(WO,A1)
【文献】
米国特許第04927414(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0070854(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射筒と、前記注射筒内で可動なプランジャとを有する自動格納式注射器であって、前記注射筒は、その前部の内側にグランドを有し、前記グランドは、皮下注射針が取り付けられる針ハブ、摺動アクチベータスリーブ、および前記注射筒内へと前記針ハブを付勢する傾向があるように前記摺動アクチベータスリーブと前記針ハブとの間に配置された圧縮されたばねを着脱可能に収容し、
前記プランジャは、前記針ハブを受け入れることができる内部空洞を有するとともに1つまたは複数の空気逃し穴を有し、
前記針ハブは、前記注射筒を出入りする前記針ハブの移動を防止する戻り止め構成によって、使用前に適所に保持され、
前記戻り止め構成は、前記針ハブ内に、その内部プロファイルが正方形または長方形である1つ以上の窪み領域であって、前記1つ以上の窪み領域は、係合されたときに、前記注射筒に入るか、または、出るかを問わない前記針ハブの動きを防止するプロファイルを有する、1つ以上の窪み領域と、前記窪み領域を占める、1つまたは複数の窪みのプロファイルと相補的な正方形または長方形のラグを有し、したがって前記針ハブを適所にロックし、前記圧縮されたばねを解放から拘束する弾性爪のセットとを備え、
前記摺動アクチベータスリーブは、前記針ハブおよび前記圧縮されたばねの周りに嵌合され、
ばねは前記針ハブおよび前記摺動アクチベータスリーブと接触し、
前記プランジャの前記摺動アクチベータスリーブとの係合は、前記戻り止め構成を解放させ、前記圧縮されたばねが前記針ハブを前記プランジャ内の前記内部空洞内に押し込むことを可能にする、自動格納式注射器。
【請求項2】
前記弾性爪の上側領域は、前記針ハブから外方に傾斜した傾斜面を有し、前記摺動アクチベータスリーブは、その前縁の周りで面取りされて、傾斜面を形成し、組立時には、面取りされた面は前記弾性爪の相補的に傾斜した面に可能な限り近接して配置され、
この結果、前記摺動アクチベータスリーブが注射の方向に動く前記プランジャに係合すると、それによって加えられる力は、前記弾性爪を前記針ハブから外方に押す傾向があり、これにより前記針ハブを解放し、前記圧縮されたばねが前記針ハブを前記プランジャ内に押し込むことを可能にする、請求項1に記載の注射器。
【請求項3】
前記プランジャは、その液体係合端にストッパを有し、前記ストッパは、前記針ハブを前記プランジャに押し込む前記圧縮されたばねの力によって克服され得る戻り止め構成によって定位置に保持される、請求項1または2に記載の注射器。
【請求項4】
前記ストッパは、部分的に球形の液体係合面を有する、請求項3に記載の注射器。
【請求項5】
前記圧縮されたばねは部分的に圧縮されて取り付けられる、請求項1または2に記載の注射器。
【請求項6】
前記圧縮されたバネが部分的に圧縮されて取り付けられる、請求項3に記載の注射器。
【請求項7】
前記圧縮されたバネが部分的に圧縮されて取り付けられる、請求項4に記載の注射器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮下注射器製造の分野に関する。特に、本発明は、針が、ばねまたは同様の機構を介して使用後に注射器の注射筒内に引き込まれることが可能である、格納式安全注射器に関する。
【背景技術】
【0002】
皮下注射針用の安全注射器は、医療の非常に重要な道具になってきている。針刺しによる損傷を防ぐ能力は、血液媒介性疾患のまん延を予防する上で非常に重要である。
【0003】
1つの特定のタイプの安全注射器は、格納式注射器である。これは、流体の注入の完了を受けて作動され、それによって、注射器の内部の機構、通常はばね、が作動して注射筒の内部に針を格納する、注射器の内部の機構が提供される注射器である。これにより、針が針刺し損傷を引き起こすことが防止され、特に、針の操作者が、片手操作で針を引き抜くことを可能にし、忙しい病院または診療所内で患者に注射を提供するという状況における達成をはるかに容易にする。
【0004】
1つのタイプの格納式注射器は、国際公開第2006/096901号パンフレットに開示されているものであり、引き込まれた針および針ハブを収容することができる中空プランジャを備えた注射器が提供され、このハブおよび針は、ばねがプランジャ内へと伸長することによって作動され、ばねは、ばねを解放から拘束することによってハブを定位置に保持するアセンブリに対するプランジャの圧力によって解放される。
【0005】
このような注射器は、一般に、「自動格納式」と呼ばれ、これは、操作者が針を注射器の注射筒内へと引き、押し、または他の様態で移動させることを要求するのではなく、注射器自体の中の機構によって、針格納の作動がもたらされることを意味する。
【0006】
このタイプの格納式注射器の欠点は、液体漏れが起こりやすく、機構が機能的信頼性の問題を被る傾向があることである。
【0007】
他の設計は比較的複雑であり、そのため製造が困難または費用がかかる。さらに、他の設計では、注射筒内にデッドゾーンが残っているため、注入可能な流体をすべて施与することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2006/096901号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、従来技術に関連する問題の少なくともいくつかを改善する格納式注射器構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、注射筒と、上記注射筒内で可動なプランジャとを有する自動格納式注射器が提供され、上記注射筒は、その前部の内側にグランドアセンブリを有し、上記グランドアセンブリは、皮下注射針が取り付けられる針ハブを着脱可能に収容し、上記注射筒内へと針ハブを付勢する傾向があるように、グランドアセンブリと上記針ハブとの間に付勢部材が配置され、上記プランジャは、針ハブを受け入れることができる内部空洞を有し、針ハブは、注射筒を出入りするハブの移動を防止する戻り止め構成によって、使用前に適所に保持され、上記針ハブとの上記プランジャの係合は、戻り止め構成を解放させ、付勢部材が針ハブをプランジャ内の上記空洞内に押し込むことを可能にする。
【0011】
このタイプの注射器は、流体の漏れが低減または排除され、また、注射器がより単純であり、したがってより経済的な構造であるという点で、従来技術に対する改善を表す。付勢部材(例えばばね)を介して注射筒内に針を瞬間的に格納することは、注射器を一回の動作で、かつ片手操作で使用および動作停止することができることを意味する。
【0012】
好ましくは、戻り止め構成は、針ハブ内に1つ以上の窪み領域であって、上記1つ以上の窪み領域は、係合されたときに、注射筒に入るか、または、出るかを問わない上記ハブの動きを防止するプロファイルを有する、1つ以上の窪み領域と、窪み領域を占める、1つまたは複数の窪みのプロファイルと相補的なプロファイルを有し、それによって針ハブを適所にロックし、付勢部材の力を打ち消す弾性爪のセット(例えば3つの爪)とを備える。より好ましくは、上記窪みの内部プロファイルは正方形または長方形である。両方向への移動を不可能にすることにより、針ハブを所定位置により堅固に保持する戻り止め構成は、特定の利点を提供する。
【0013】
好ましい実施形態では、上記爪の上側領域は、針ハブから外方に傾斜した傾斜面を有し、それによって、注射の方向に動く部材に係合すると、それによって加えられる力は、爪を針ハブから外方に押す傾向にあり、これにより針ハブを解放し、付勢部材がハブをプランジャ内に押し込むことを可能にする。このような上面は、爪のより確実な係合を可能にし、爪の制御された係合解除を生成するために別の可動部分による単純な係合を可能にする。
【0014】
好ましくは、プランジャは、その液体係合端にストッパを有し、上記ストッパは、針ハブをプランジャに押し込む付勢部材の力によって克服され得る戻り止め構成によって定位置に保持される。これにより、プランジャを針とともに空洞内に押し戻すことができる。これはまた、注射器の製造をより容易にし、部分的に球形の液体係合面を有するものなど、より効率的な形状のプランジャストッパを利用することができる。
【0015】
好ましい実施形態では、付勢部材はばねであり、上記ばねは部分的に圧縮されて取り付けられる。ばねの部分的な圧縮(完全な圧縮とは対照的に)は、より単純な構造および格納操作のより良好な制御を可能にする。
【0016】
ここで、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を特定の非限定的な例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明による注射器の「針」端部の断面図である。
【0018】
【
図2】施与の完了前で示されている、本発明による注射器の断面図である。
【0019】
【
図3】施与の完了時点で示されている、
図4の注射器の断面図である。
【0020】
【
図4】針ハブの格納後で示されている、
図4の注射器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、格納式皮下注射器の「施与」端部に作用部分を配置することによって具現化することができる。これらは、添付図面を参照することによって最もよく理解される。
【0022】
図1を参照すると、自動格納式注射器5が示されている。注射器の主な構成要素は、注射筒10、プランジャ15、グランド20および針25である。グランド20は、注射筒10に圧入されて挿入され、針ハブアセンブリを収容する。グランドはねじ込みタイプにすることも可能である。
【0023】
針ハブアセンブリは、針ハブ30を含み、その中に針25が挿入される。摺動アクチベータスリーブ35が針ハブの周りに嵌合され、これら2つの部分の間に、部分的に圧縮されたばね40が配置される。ばね40は、ハブの段付き後方対向面45およびスリーブ35の内側前方段差面50と接触している。したがって、ばねの役割は、ハブ30をスリーブ35に対して後方に押しやる傾向があることである。
【0024】
しかしながら、施与の前に、ばね40のこの傾向は、戻り止め機構によって係止して保持されている。この機構は、グランド20の内側前面60から突出する3つの弾性爪55からなる。上記爪の各々は、針ハブ25の方に向けられた正方形または長方形のラグ65を有する。それらはまた、最上端においてハブ30の表面から最も遠いという意味で、滑らかであるが傾斜した後方の「ヘッド」面85を有し、上記表面は爪55の「施与端部」においてハブ30またはグランド20により近い。
【0025】
アクチベータスリーブ35は、その前縁の周りで面取りされて、傾斜面90を形成する。組立時には、この面取りされた面90は、3つの爪55の相補的に傾斜した「ヘッド」面85に可能な限り近接して配置される。位置の近さは、移動する距離がより短いため、起動スリーブ35への施与圧力に対するより迅速な応答を意味する。
【0026】
針ハブ25は、円周のまわりに相補的な溝70を有し、この溝は、ラグ65が施与前構成において上記溝70内に受容されるように配置される。ラグ/溝の組み合わせの正方形形状は、前方または後方のいずれかの方向のハブ30の動きを防止するため、ラグ65および溝70の位置決めおよび形状は、針ハブの非常に確実な不動の位置決めを提供する。
【0027】
アクチベータスリーブ35の外周にはOリング75が配置され、グランド20の内面の内部溝80内に位置決めされる。これは、施与中の流体漏れを防止するために、ハブ/スリーブアセンブリの周りにより効果的なシールを提供する。
【0028】
プランジャ15は、内部空洞100を有する中空注射筒として形成されている。上記プランジャ注射筒の端部は、ゴム製の、単純な戻り止めリング110によって所定の位置に保持されるストッパ105を介してシールされる。プランジャ注射筒の外側には、注射筒10の内面と密封係合するゴム製ガスケット115が配置されている。ストッパの前面120は部分的に球形であり、針ハブ30の後面125は、最大施与および最小の「デッドゾーン」をもたらすために、相補的に成形される。
【0029】
図2を参照すると、流体施与段階中の本発明による注射器200が示されており、流体は、プランジャ215と針ハブ225の後部との間に形成された空洞205内にある。残りの部分は
図1で説明したとおりである。さらに、プランジャ注射筒215内には、ハブが(後で)空洞205に押し込まれるときに空気が逃げることを可能にするために必要な「空気逃し」穴210が設けられていることに留意されたい。
【0030】
図3を参照すると、プランジャ315によって起動スリーブ335の後端部300を圧迫するために圧力がかかった場合と同様に、
図2の注射器が全施与の時点で示されている。起動スリーブ335が前方に押されると、面取りされた前面390が、爪355の傾斜した「ヘッド」面385と接触し、爪をハブ330から外方に押し始め、それによってラグ365が溝380と係合解除し始め、それによって、ばね340を解放するように見える。
【0031】
図4を参照すると、戻り止め機構の解放後の
図3の注射器が示されている。ばね440は、伸長しており、それによって、針ハブ430およびストッパ505を、プランジャの内部空洞500内に十分に押し込んでいる。針425は、注射器405の本体の十分内側にあるようにも見える。この時点において、注射器は針刺し傷害の危険なく安全に処分することができる。
【0032】
上記の実施形態は、本発明の概念がどのように実施され得るかの単なる一例に過ぎないことは、当業者には理解されるであろう。詳細が異なるが、同じ発明概念内にあり、同じ発明を表す他の実施形態も考えられることが理解されよう。