(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記音響信号から、低周波数帯域、かつ、モノラル成分の信号と他の信号とを分離する分離部と、前記補正処理を行った前記信号と、前記他の信号とを加算する加算部とを有し、加算後の信号に基づいて前記第一及び第二の振動子を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の音響装置。
第一の振動子と、第二の振動子と、前記第一の振動子と前記第二の振動子とを連結する剛体と、前記剛体が貫通する被振動部材と、を備える振動ユニットを制御する音響制御装置において、
音響信号を取得する取得部と、
前記音響信号に対し、前記第一及び前記第二の振動子からの伝送系を含む位相遅延特性を補正する補正処理を行い、補正後の音響信号に基づき前記第一及び第二の振動子を制御する制御部と、
を有することを特徴とする音響制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の実施形態に係る音響装置10を周辺構成と共に示した図である。
音響装置10は、自動車などの車両に搭載される車載用音響装置である。より具体的には、この音響装置10は、車両の乗員(ユーザー)に対し、振動及び音声によって音楽、音声案内、警告用の振動や音声などの各種情報を伝達可能な車載用情報伝達装置である。
図1に示すように、音響装置10は、ヘッドレスト11の下部に着脱自在に取り付けられ、乗員の首を支えるネックパッドとしても機能する。この音響装置10を取り付けることで、この種の情報伝達装置を予め備えていない車両に対し、簡易に情報伝達装置を追加可能である。なお、この音響装置10を、車両に予め据え付けられる据付型でもよい。また、車両以外の移動体などに音響装置10を取り付けてもよい。
【0013】
この音響装置10は、第一及び第二の振動子として機能する左右一対のエキサイター21L、21Rと、これらエキサイター21L、21Rを連結する連結体(剛体)として機能する軸部材23とを備える。さらに、音響装置10は、軸部材23が装着されるネックパッド及び被振動部材として機能するパッド部25と、エキサイター21L、21Rを制御する制御部として機能する音響制御装置30(後述する
図2)とを備える。
【0014】
エキサイター21L、21Rは、平板状等の薄型に形成された振動子21Aを有し、外部から入力された信号に応じて振動子21Aが振動することによってエキサイター21L、21R全体がそれぞれ振動する。各エキサイター21L、21Rの振動によって軸部材23が加振される。軸部材23は、この軸部材23に装着されたパッド部25を介して乗員に振動を伝達する。これにより、乗員は、パッド部25を介して特に低音域の振動及び低音を認識し易くなる。
【0015】
本構成のエキサイター21L、21Rは、更に、空気を振動させる不図示の空気振動部材(例えば、スピーカー振動板)を備え、振動子21Aの振動に応じて空気振動部材が振動する。これにより、軸部材23単体の場合と比べて広い音域の音声を外部に出力可能である。エキサイター21L、21Rの構造は上記の構造に限定されず、公知のエキサイターの構造を広く適用可能である。
【0016】
各エキサイター21L、21Rは、車内における左右方向に間隔を空けて配置される。左側のエキサイター21Lは、Lチャンネル用のエキサイターであり、右側のエキサイター21Rは、Rチャンネル用のエキサイターである。以下、左右のエキサイター21L、21Rを特に区別する必要がない場合、エキサイター21と表記する。
【0017】
軸部材23は、一端が一方のエキサイター21Lに連結され、他端が他方のエキサイター21Rに連結される。軸部材23は、一直線状に延びる金属製の中実棒である。二つのエキサイター21を、剛性を有する軸部材23で連結することによって、両エキサイター21の振動による軸部材23の振動の方向が同調した場合に軸部材23の振動量(振幅)が増大し、振動が効率良く増大する。
この軸部材23は、金属製の中実棒に限定されず、様々な剛体を適用してもよい。例えば、金属製の中空棒や金属製の板材でもよく、また、金属以外の材料で形成してもよい。また、軸部材23は、一本に限らず、複数本でもよい。
【0018】
パッド部25は、乗員に当接する当接部であるネックパッドを構成し、ウレタンなどのクッション材で形成されたクッション部25Aと、クッション部25Aを覆う表皮25Bとを有している。軸部材23は、このパッド部25の内部(クッション部25A)を貫通し、軸部材23の振動でパッド部25全体を振動させる。これにより、各エキサイター21の振動で軸部材23が振動し、パッド部25を介して振動などを乗員に伝達可能である。このパッド部25は、エキサイター21、及び軸部材23などを収容するケースを兼ねている。
【0019】
図2は音響装置10のブロック図である。
音響制御装置(以下、制御装置と言う)30は、制御部31と、音響再生部32とを備える。制御部31は、内蔵するメモリに記録された制御プログラムを実行することにより、制御装置30の各部を制御するコンピューターとして機能する。
音響再生部32は、音響信号を再生する構成を具備しており、再生部41、音声処理部42、D/A変換部43、及びアンプ部44を有する。再生部41は、再生対象のL/Rチャンネル(2チャンネルとも称する)の音響信号SR、SLを取得する取得部として機能する。
【0020】
再生部41は、CD又はDVD等の記録媒体に記録されたデータを読み出し、このデータから得たLチャンネルの音響信号SLと、Rチャンネルの音響信号SRを出力する。なお、再生部41に代えて、或いは、再生部41に加えて、外部から音響信号SR、SLを入力するインターフェースを備えてもよい。
【0021】
音響信号SR、SLは、音楽、音声案内、又は警告などに対応する音声や振動を示す信号であり、本実施形態ではステレオ(L、R)の音声信号である。このため、Lチャンネルの音響信号SLがLチャンネル用のエキサイター21Lに出力され、Rチャンネルの音響信号SRがRチャンネル用のエキサイター21Rに出力されることで、ステレオ音声の出力が可能になる。なお、
図2中の波線は音声信号を示している。
【0022】
音声処理部42は、入力した音響信号SL、SRに、位相補正などの音声処理を施した後、D/A変換部43に出力する。本構成では、ピストンモーション領域を含む低域において、モノラル成分の信号の位相遅延を補正する処理を行う。この音声処理部42で行う処理については後段に詳述する。
D/A変換部43は、入力した音響信号SL1、SR1をデジタルアナログ変換し、アナログ信号からなる音響信号SL2、SR2を出力する。
【0023】
アンプ部44は、Lチャンネルの音響信号SL2を増幅してエキサイター21Lに出力し、Rチャンネルの音響信号SR2を増幅してエキサイター21Rに出力する。各エキサイター21は、入力した音響信号SL2、SR2の波形に応じて振動する。このようにして、制御装置30は、入力信号(音響信号SL、SR)に位相遅延補正処理などを施して音響信号SR2、SL2を生成し、音響信号SL2、SR2に基づき各エキサイター21を駆動する。
【0024】
更に、制御装置30は、各エキサイター21からの伝送系を含む位相遅延特性を測定する構成を備える。この構成は、測定信号発生部33と、音響測定部34とで構成される。
測定信号発生部33は、測定信号を出力する音源であり、M系列符号(Maximum Length Sequence)の信号(M系列信号)、又はTSP(Time Stretched Pulse)信号などの音場測定信号として、Lチャンネル測定信号SA、Rチャンネル測定信号SB)を生成する。これら音場測定信号(以下、測定信号と言う)SA、SBはD/A変換部43に出力され、各測定信号SA、SBに対応する音声及び振動が、各エキサイター21から出力される。
【0025】
音響測定部34は、マイクアンプ51、A/D変換部52、信号収録部53、及び演算部54を備える。マイクアンプ51は、制御装置30に接続されたマイク51Aによって收音された音声を示すアナログ音声信号を増幅し、A/D変換部52に出力する。A/D変換部52は、アナログ音声信号をデジタル音声信号に変換し、信号収録部53に出力する。信号収録部53は、收音された音声のデジタル音声信号からインパルス応答を示すデータDL、DRを生成する。インパルス応答のデータDL、DRは、制御部31内のメモリに記録される。
【0026】
インパルス応答は、各エキサイター21から聴取位置(マイク51Aの位置に相当)に到達する音の挙動(直接音や反射音のレベルや遅延時間など)を表す伝達関数である。従って、インパルス応答は、伝送空間となる車室にて聴取位置に到来する音の位相遅延特性を示している。なお、聴取位置は、音響装置10からの音を聞く乗員の頭位置などに設定される。
演算部54は、インパルス応答のデータDL、DRに基づき、各データDL、DRが示す位相遅延特性を補正する応答(以下、補正応答と言う)XL(ω)、XR(ω)を算出する。補正応答XL(ω)、XR(ω)の算出方法は後述する。なお、値ωは周波数である。
【0027】
制御部31は、ユーザーからの指示に応じて音響測定処理、及び補正応答算出処理を実行する。
図3は音響測定処理のフローチャートである。
まず、制御部31は、測定信号発生部33によりLチャンネル測定信号SAをエキサイター21Lから放音(再生とも称する)させる(ステップS1A)。放音された音は、マイク51Aに収音され、マイクアンプ51で増幅され、A/D変換部52を介して信号収録部53に入力される。信号収録部53は、入力された信号に基づきインパルス応答を生成し、インパルス応答に対応するデータDLを制御部31に出力する。そして、制御部31は、このデータDLを記録する(ステップS2A)。
次に、制御部31は、測定信号発生部33によりRチャンネル測定信号SBをエキサイター21Rから放音(再生)させ(ステップS3A)、信号収録部53で生成されたインパルス応答のデータDRを記録する(ステップS4A)。以上が音場測定処理である。
【0028】
図4は補正応答算出処理のフローチャートである。
演算部54は、制御部31の制御の下、制御部31に記憶されたインパルス応答のデータDL、DRを読み込む(ステップS1B)。次に、演算部54は、各インパルス応答をFFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)することにより、それぞれの周波数特性HL(ω)、HR(ω)を算出する(ステップS2B)。次いで、演算部54は、それぞれの周波数特性HL(ω)、HR(ω)から、各エキサイター21からの伝送系を含む位相遅延特性を補正する補正応答XR(ω)、XL(ω)を算出する(ステップS3B)。補正応答XL(ω)、XR(ω)を算出する式(1)、式(2)は以下の通りである。
【0031】
なお、値NはFFT長(サンプリング数)であり、周波数の値ω=2πkである。HL(ω)はLチャンネルの周波数特性を示し、HR(ω)はRチャンネルの周波数特性を示す。また、τL(ω)はLチャンネルのインパルス応答の位相遅延を示し、τR(ω)はRチャンネルのインパルス応答の位相遅延を示す。
そして、制御部31は、演算部54により算出された補正応答XL(ω)、XR(ω)を取得し、内部のメモリに記録する(ステップS4B)。
【0032】
続いて、音声処理部42について説明する。
図5は音声処理部42のブロック図である。
音声処理部42は、FFT部61と、低域分離部62と、高域分離部63と、位相遅延補正部64と、合成部65、66と、IFFT部67とを備えている。
FFT部61は、入力した音響信号SR、SLを高速フーリエ変換することにより、時間領域の情報から周波数領域の情報にそれぞれ変換する。低域分離部62は、乗算部62Aと、モノラル・ステレオ分離部62Bとを備える。乗算部62Aは、FFT部61から入力する信号であるL/RチャンネルのデジタルデータDL、DRに、線形位相であるローパスフィルタの応答を畳み込み演算して低域周波数成分を抽出する。この低域周波数成分は、ピストンモーション領域の周波数帯域である。本発明において、低域周波数成分は、一般に低域といわれる100Hz未満に限定されず、中域を含む2kHz未満の範囲で適宜に設定すればよい。
【0033】
モノラル・ステレオ分離部62Bは、乗算部62Aにより分離された低域周波数成分をモノラル成分(
図5中、「Mono」で示す)と、ステレオ成分(
図5中、「Stereo L/R」で示す)とに分離し、位相遅延補正部64に出力する。なお、モノラル・ステレオ分離部62Bは、和差方式であっても、振幅・位相の閾値分離処理であってもよい。
高域分離部63は、乗算部63Aを備える。乗算部63Aは、FFT部61から入力する信号(デジタルデータDL、DR)に、線形位相であるハイパスフィルタの応答を畳み込み演算して高域周波数成分を抽出する。この高域周波数成分は、低域分離部62で抽出される低域周波数成分を除く周波数成分である。つまり、低域分離部62及び高域分離部63によって、各音響信号SR、SLは低域成分と高域成分とに分割される。
【0034】
位相遅延補正部64は、低域分離部62によって分離された、低域、かつモノラル成分の信号(
図5中、「Mono」)に、位相遅延特性を補正する補正処理を行う。より具体的には、位相遅延補正部64は、上記信号(
図5中、「Mono」)に補正応答XL(ω)を畳み込み演算する乗算部(以下、第一乗算部という)64Aと、上記信号(
図5中、「Mono」)に補正応答XR(ω)を畳み込み演算する乗算部(以下、第二乗算部という)64Bとを備える。また、位相遅延補正部64は、これら乗算部64A、64Bの出力をL/Rチャンネルの2出力にする2ch部64Cを備える。
【0035】
合成部(以下、第一合成部と言う)65は、2ch部64Cから出力された信号と、モノラル・ステレオ分離部62Bで分離されたステレオ成分(
図5中、「Stereo L/R」)とを合成し、L/Rチャンネルの低域信号を生成する。また、第1合成部65の後段に位置する合成部(以下、第二合成部と言う)66は、第一合成部65から出力された信号と、高域分離部63から出力される信号とを合成する。
IFFT部67は、第二合成部66から出力されるL/Rチャンネルの信号を逆高速フーリエ変換することにより、周波数領域の情報から時間領域の情報にそれぞれ変換する。これによって、L/Rチャンネルの音響信号SR、SLに、伝送系を含む位相遅延特性を補正する補正処理を施した音響信号SL1、SR1が生成される。
【0036】
図6は音声処理部42で音声処理を行わない場合の振幅特性を示す図であり、横軸は周波数(Hz)、縦軸は音量(dB)である。
図6には、Lチャンネルからモノラル信号を出力した場合の音響測定結果(
図6中、符号L)、Rチャンネルからモノラル信号を出力した場合の音響測定結果(
図6中、符号R)、L/Rチャンネルからモノラル信号を出力した場合の音響測定結果(
図6中、符号LR)を示している。
図6の例では、特性曲線LRが、低域(符号AR1で示す)と中域(符号AR2で示す)とで大きく減衰している。つまり、エキサイター21L、21Rのピストンモーション領域で干渉が発生していることを示している。
【0037】
図7は補正応答XL(ω)、XR(ω)の周波数−音量の関係を示す図である。
図7に示すように、補正応答XL(ω)、XR(ω)はオールパスフィルタの特性を有している。
図8は補正応答XL(ω)、XR(ω)の周波数−遅延量の関係を示す図であり、縦軸が遅延量に相当するサンプル数を示している。補正応答XL(ω)、XR(ω)は、ピストンモーション領域を考慮し、1600Hzのカットオフ周波数を持つ線形位相ローパスフィルタ、及びハイパスフィルタとしている。
図8では、補正応答XR(ω)については、20〜1600Hzの範囲で遅延量を補正する特性の場合を示し、補正応答XL(ω)については位相遅延量がほぼ零となった特性の場合を示している。
【0038】
次に音声処理部42で音声処理を行った場合の振幅特性を
図9及び
図10に示す。
図9はLチャンネルからモノラル信号を出力した場合の音響測定結果(
図9中、LX)を示す。
図9には、音声処理を行わない場合の特性曲線L(
図6)も示している。
図9に示すとおり、音声処理後と音声処理前とで振幅特性に大きな変化がなく、音声処理後の出力信号に特定の周波数帯域の音、及び振動レベルの減衰が見られないことがわかる。RチャンネルについてもLチャンネルと同様の処理が施される。これによって、Rチャンネルについても、音声処理後と音声処理前とで振幅特性に大きな変化がなく、出力レベルの減衰が抑制される。
【0039】
図10はL/Rチャンネルからモノラル信号を出力した場合の音響測定結果(
図10中、符号LRX)を示す。また、
図10にはLチャンネルの特性曲線LX、及びRチャンネルの特性曲線RXも示す。
図10に示すとおり、ピストンモーション領域を含む低域において、エキサイター21L、21Rの位相遅延を補正することで、干渉が低減されていることがわかる。
本構成では、特定の周波数帯域において位相を反転して定在波を抑制する、といった処理は実行しない。従って、干渉を低減しながら、出力レベルの減衰を抑制することが可能である。これらにより、音及び振動を効率良く再生可能になる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態の制御装置30は、音声処理部42によって、音響信号SR、SLに対し、剛体で連結された第一及び第二の振動子であるエキサイター21L、21Rからの伝送系を含む位相遅延特性を補正する補正処理を行う。その後、制御装置30は、補正後の音響信号SL1、SR1に基づきエキサイター21L、21Rを制御する。これにより、エキサイター21L、21Rに起因する干渉を低減しながら出力レベルの減衰を抑制し、音及び振動を効率良く再生できる。
【0041】
しかも、制御装置30は、音響信号SR、SLのうち、低周波数帯域、かつ、モノラル成分の信号に対し、前記補正処理を行う。この構成によれば、干渉が発生し易いピストンモーション領域の干渉が効率良く低減される。これにより、モノラル成分の音及び振動を明瞭に再生できる。また、音響信号SR、SLにステレオ成分が含まれる場合、ステレオ成分には前記補正処理が行われない。これによって、ステレオ感(残響効果を含む)を維持したり、向上させたりする効果も期待できる。
【0042】
また、制御装置30においては、低域分離部62及び高域分離部63が、音響信号SR、SLから、低周波数帯域、かつ、モノラル成分の信号と他の信号とを分離する分離部として機能する。また、第二合成部66が、前記補正処理を行った前記信号と、前記残余の信号とを加算する加算部として機能する。そして、制御装置30は、第二合成部66で加算された信号に基づいてエキサイター21L、21Rを制御する。この構成により、前記補正処理が行われた低周波数帯域、かつ、モノラル成分の信号を含む音響信号SL1、SR1を生成することができ、音響信号SL1、SR1に基づきエキサイター21L、21Rを適切に制御することができる。
【0043】
さらに、音響信号SR、SLは、エキサイター21Lに対応するLチャンネル(第一チャンネル)の信号と、エキサイター21Rに対応するRチャンネル(第二チャンネル)の信号とを有している。そして、制御装置30は、音響測定部34によって、所定位置におけるエキサイター21L、21Rの各々のインパルス応答を取得し、各インパルス応答に基づき、位相遅延特性を補正するLチャンネル用の補正情報である補正応答XL(ω)と、Rチャンネル用の補正情報である補正応答XR(ω)とを取得する。その後、制御装置30は、前記補正処理として、補正応答XL(ω)に基づいてLチャンネルの音響信号SLを補正するとともに、補正応答XR(ω)に基づいてRチャンネルの音響信号SRを補正する。このように、各エキサイター21L、21Rの各々のインパルス応答から各チャンネルの補正情報を得るので、位相遅延特性を精度良く補正できる。
【0044】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一実施の態様を例示するものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形、及び応用が可能である。
例えば、上述した実施形態では、実測により得たインパルス応答から各チャンネルの補正情報(補正応答XR(ω)、XL(ω))を得る場合を説明したが、これに限らず、シミュレーションによって得たインパルス応答から補正情報を得てもよい。この場合、制御装置30は外部からインパルス応答の情報を入力すればよい。この構成によれば、制御装置30から音響測定部34を省略することが可能になる。
また、インパルス応答を利用して補正情報を取得する構成に限定しなくてもよい。位相遅延特性を補正する補正情報を利用して補正情報を取得する他の構成を適用してもよい。
【0045】
さらに、上述した実施形態では、低周波数帯域、かつ、モノラル成分の信号に前記補正処理を行う場合を説明したが、この構成に限定しなくてもよい。干渉を低減しながら出力レベルの減衰を抑制可能な範囲で、低周波数帯域、或いは低中周波数帯域以外の帯域も含む信号、若しくは、ステレオ成分を含む信号に前記補正処理を行うようにしてもよい。
また、上述した実施形態では、エキサイター21を音響装置10の振動子に使用する場合を説明したが、これに限らず、公知の振動子を広く使用可能である。
【0046】
また、上述した実施形態では、制御装置30とエキサイター21とが一体の音響装置10に本発明を適用する場合を説明したが、これに限定されない。例えば、制御装置30と、エキサイター21などの振動子を備えた振動ユニットとが分離可能な構成でもよい。また、制御対象となる振動ユニットを変更可能な制御装置30に本発明を適用してもよい。なお、上述した実施形態では、エキサイター21及び軸部材23が振動ユニットの要部を構成する。
【0047】
また、上述した実施形態では、音響装置10がネックパッドを兼用する場合を説明したが、これに限らない。例えば、音響装置10が乗員の腰を支えるクッションを兼用してもよい。また、音響装置10によって乗員に情報を伝達可能な範囲で、音響装置10の配置位置は限定されない。例えば、音響装置10をシートの座面に埋め込む構成にしてもよいし、シートの背もたれ部分に埋め込む構成にしてもよい。さらに、本発明を、車載用の装置(音響装置10、制御装置10)に適用する場合を例示したが、これに限らず、車載用以外の音響装置に本発明を適用してもよい。