(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記切断状態では、前記フランジ部材に所定の駆動力以上の駆動力が伝達されるとき、前記第1永久磁石と前記第2永久磁石との間の磁気カップリングが脱調状態となることで、前記フランジ部材を前記回転部材の回転数よりも低い回転数で連れ回り回転させるように構成したことを特徴とする請求項1に記載のウォータポンプ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のオン/オフ式のウォータポンプでは、例えばエンジンの軽負荷時などに、電磁クラッチによりポンププーリとポンプ軸との間の動力伝達経路を遮断した場合には、冷却水の吐出流量がゼロとなり、ウォータジャケット内の冷却水の循環が停止されるため、エンジンに局部的な発熱が発生して、エンジンの焼き付きやオーバーヒートなどの不具合が発生しやすいという問題があった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、電磁クラッチの作動状態に関わらず、一定流量以上の冷却水を常時循環させることのできるウォータポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明に係るウォータポンプは、動力源からの駆動力により回転する回転部材と、前記回転部材の駆動力により軸線周りに回転するポンプ軸と、前記ポンプ軸の一端部に設けられ
て前記ポンプ軸と一体回転するインペラと、前記ポンプ軸の他端部に設けられて前記ポンプ軸と一体回転するハブ部材を有し、前記回転部材及び前記ハブ部材を摩擦係合させて前記回転部材の駆動力を前記ポンプ軸に伝達する伝達状態と前記回転部材及び前記ハブ部材の摩擦係合を解除させて前記回転部材から前記ポンプ軸への駆動力の伝達を切断する切断状態とに切り替える電磁クラッチと、前記ハブ部材に設けられて前記ポンプ軸と一体回転するフランジ部材とを備えたウォータポンプであって、前記回転部材は、第1永久磁石を保持する第1磁石保持部を有し、前記フランジ部材は、第2永久磁石を保持する第2磁石保持部を有し、前記切断状態においては、
前記回転部材及び前記ハブ部材の摩擦係合が解除されていても、前記第1永久磁石及び前記第2永久磁石の間の磁気吸引力により、前記回転部材の回転に対して前記フランジ部材を連れ回り回転させるように構成したことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るウォータポンプにおいて、前記切断状態では、前記フランジ部材に所定の駆動力以上の駆動力が伝達されるとき、前記第1永久磁石と前記第2永久磁石との間の磁気カップリングが脱調状態となることで、前記フランジ部材を前記回転部材の回転数よりも低い回転数で連れ回り回転させる構成とすることが好ましい。
【0009】
さらに、本発明に係るウォータポンプにおいて、前記第1磁石保持部内には、複数の第1永久磁石が軸線周りに配列され、前記第2磁石保持部内には、複数の第2永久磁石が軸線周りに配列され、前記第1磁石保持部と前記第2磁石保持部とが前記軸線方向及び前記軸線方向と直交する方向に所定の間隔をあけて配置された構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るウォータポンプによれば、電磁クラッチが切断状態であっても、回転部材の回転に対してフランジ部材(ポンプ軸)を連れ回り回転させることで、一定流量以上の冷却水(比較的小流量の冷却水)を常時吐出させることができるため、無駄な動力を消費することなく、エンジンの駆動状態に応じた必要流量の冷却水を常に循環させて、エンジンの焼き付きやオーバーヒートの発生を未然に防止することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。本発明の一実施形態に係るウォータポンプ1は、冷却水の循環経路中に配設されて該冷却水を強制循環させるための装置として用いられる。まず、本実施形態に係るウォータポンプ1を説明する前に、該ウォータポンプ1による冷却水の循環経路について
図1を用いて説明する。
【0013】
図1に示すように、冷却水の循環経路中には、水冷式の内燃機関であるエンジンEGと、エンジンEGから排出される冷却水(エンジン冷却用の冷媒)を冷却するラジエターRDと、冷却水の温度に応じて該冷却水の循環を制御する切換弁SVと、冷却水を強制循環させるウォータポンプ1とが配設されており、これらを接続する複数の流路を介して冷却水が循環されることにより、エンジンEGが水冷されるようになっている。
【0014】
エンジンEGは、例えば水冷式のガソリンエンジンであり、その内部にシリンダ(図示せず)を覆うように形成された空間であるウォータジャケットWJが設けられている。ウォータポンプ1から吐出流路L2を介してウォータジャケットWJに流入した冷却水は、該ウォータジャケットWJを通過する過程でシリンダ等を冷却した後、接続流路CLへ排出される。
【0015】
ラジエターRDは、図示しない冷却ファンからの送風により該ラジエターRD内を通過する冷却水を冷却して外部へ放熱を行うように構成されている。そのため、エンジンEGのウォータジャケットWJで昇温された冷却水は、このラジエターRDを通過する過程で熱を放出して水温が下げられるようになっている。
【0016】
切換弁SVは、排出流路HLを介してラジエターRDに接続されるとともに、ラジエターRDを迂回するバイパス流路BLに接続されている。切換弁SVは、冷却水の温度に応じて開閉するサーモスタット(冷却水感応型の切換弁)から構成されており、冷却水の温度が所定温度以下のときには接続流路CLとバイパス流路BLとを連通し、冷却水の温度が所定温度を超えるときには接続流路CLと排出流路HLとを連通するようになっている。
【0017】
ウォータポンプ1は、その回転軸がエンジンEGのクランクシャフトCSに駆動ベルトDB等を介して連結され、エンジンEGの運転に連動して作動する。ウォータポンプ1には戻り流路L1及び吐出流路L2が接続されており、戻り流路L1から吸入した冷却水を昇圧して吐出流路L2からウォータジャケットWJへ供給するようになっている。
【0018】
このような冷却水の循環経路では、ウォータポンプ1から吐出流路L2を通じて吐出された冷却水は、エンジンEG内部に形成されたウォータジャケットWJに流入し、エンジンEGを冷却して排出される。この排出された冷却水は、ラジエターRDにより冷却されて、もしくはラジエターRDを通らずに、戻り流路L1からウォータポンプ1に戻って循環する。
【0019】
次に、本実施形態に係るウォータポンプ1の構成について、
図2〜
図4を参照しながら説明する。以下では、説明の便宜上、
図2に示すウォータポンプ1の配設姿勢を基準として、軸線方向の左側を「一端側」、軸線方向の右側を「他端側」とも称して説明する。
【0020】
ウォータポンプ1は、エンジンEGのシリンダブロックCBの一部をなすポンプベース2に取り付けられるポンプケース10と、エンジンEGの駆動力により回転するプーリ20と、ポンプケース10に軸線Xを中心として回転自在に取り付けられるポンプ軸30と、ポンプ軸30の一端側の端部に取り付けられるインペラ40と、ポンプケース10とポンプ軸30との間を液密的にシールするためのメカニカルシール50と、ポンププーリ20の駆動力をポンプ軸30に機械的に伝達又は遮断する電磁クラッチ60と、ポンププーリ20の駆動力をポンプ軸30に非接触で伝達する磁気カップリング機構100とを主体に構成されている。なお、軸線Xは、ポンププーリ20及びポンプ軸30の共通する回転中心である。
【0021】
ポンプベース2には、冷却水を戻り流路L1から吸入するための吸入口3と、冷却水を吐出流路L2へ吐出するための吐出口4とが設けられている。また、ポンプベース2には、ポンプケース10と対向する他端側に向けて開口する凹部5が形成されている。凹部5は、吸入口3及び吐出口4と連続的に繋がっている。
【0022】
ポンプケース10は、複数本のボルト19を用いてポンプベース2に着脱可能に取り付けられている。ポンプベース2の他端側に形成された凹部5とポンプケース10の一端側に形成された凹部11との間には、ポンプ室12が画成されている。ポンプケース10は、ポンプ軸30が挿通される中空の円筒部13と、この円筒部13の一端側から径方向外方に拡がって延びた鍔部14とを有して形成されている。円筒部13は、大径部13a及び小径部13bを有して、全体として段付きの円筒形状に形成されている。小径部13bの外周部には、軸受(ベアリング)24を介してポンププーリ20が同軸的に取り付けられている。ポンプケース10の軸心には、軸線方向に貫通する軸孔18が形成されている。また、ポンプケース10には、メカニカルシール50からリークした水蒸気を貯留するための貯留空間16が形成されている。
【0023】
ポンププーリ20は、駆動ベルトDBが掛け渡されるプーリ部21と、内周側に軸受24が嵌合される支持部22と、プーリ部21及び支持部22を連結する連結部23とを有して形成されており、クランクシャフトCSの駆動力(回転力)が駆動ベルトDBを介してポンププーリ20に伝達されるようになっている。連結部23の他端側には、後述のアーマチュア83と摩擦係合するための平坦な摩擦面23aが形成されている。
【0024】
ポンプ軸30は、ポンプケース10の軸孔18に嵌合された軸受(ベアリング)17を介してポンプケース10に回転自在に支持されている。このポンプ軸30の一端側には、インペラ40が同軸的に取り付けられている。ポンプケース10の軸孔18とポンプ軸30との間は、ポンプ室12の密閉性を保持するためのメカニカルシール50によりシールされている。
【0025】
メカニカルシール50は、ポンプケース10の軸孔18の内周面に固定された第1シール部材51と、ポンプ軸30の外周面に固定された第2シール部材52とからなり、両シール部材51,52が軸線方向に対向した状態で滑り接触することにより、ポンプ室12の密閉性が保持されるようになっている。
【0026】
インペラ40は、一端側から他端側へ向かって拡径する切頭円錐形状に形成されたカバー41と、カバー41の他端側に設けられた複数枚の羽根42と、ポンプ軸30が圧入固定されるシュラウド43とを備えて構成される。シュラウド43の中心には、中空状のブッシュ43aがインサート成形されている。複数枚の羽根42は、軸心周りに放射状に配列されており、互いに隣り合う羽根42同士の周方向の間隔は径方向内側から径方向外側へ向けて(すなわち、冷却水の吐出方向へ向けて)漸次大きくなるように形成されている。このインペラ40は、ポンプ軸30と一体回転することで、ポンプベース2の吸入口3から冷却水をポンプ室12に吸入し、該冷却水を羽根42同士の間の空間を通じてポンプベース2の吐出口4から外部へ吐出する。なお、本実施形態におけるインペラ40はクローズドインペラを採用しているが、オープンインペラを採用してもよい。
【0027】
電磁クラッチ60は、ポンプケース10に取り付けられるフィールドコアアッシー70と、ポンプ軸30に取り付けられるアーマチュアアッシー80と、ポンププーリ20に取り付けられる磁石部90とを備えて構成される。
【0028】
フィールドコアアッシー70は、大径部13aの他端側に端面にスナップリング74を用いて着脱可能に取り付けられるブラケット71と、ブラケット71に固定されたコア72と、コア72の内部に配設された励磁コイル73とを有しており、不図示の制御手段からの電気信号に基づき励磁コイル73が通電されることにより磁界を発生する。励磁コイル73は、ボビンの外周にコイル線が巻回されて構成されており、コア72の内部に収容されて絶縁樹脂によりモールドされている。
【0029】
アーマチュアアッシー80は、ポンプ軸30に固定されるハブ81と、ハブ81に取り付けられた弾性部材としての板ばね82と、板ばね82に取り付けられたアーマチュア83とを備えている。ハブ81は、ポンプ軸30の他端側が圧入されるボス部81aと、ボス部81aの外周側に一体的に形成された円板部81bとを有し、軸心Xを中心としてポンプ軸30と一体回転可能に取り付けられている。板ばね82は、ばね鋼鋼材の打ち抜き加工により帯板状に形成されており、その基端側(固定端側)がリベット84を介してハブ81に締結され、その先側側(自由端側)がリベット85を介してアーマチュア83に締結されることで、ハブ81とアーマチュア83との間に跨って略板厚方向に弾性変形可能に取り付けられている。アーマチュア83は、磁性材料を用いて略円盤状に形成されており、板ばね82の先端側に取り付けられて、ハブ81に対して軸線方向に相対移動自在に支持されている。アーマチュア83は、常には板ばね82の弾性力によりポンププーリ20(摩擦面23a)から離間する方向に付勢されている。アーマチュア83の一端側の端面は、ポンププーリ20の摩擦面23aと摩擦係合が可能な摩擦面83aとして形成されている。
【0030】
磁石部90は、アーマチュア83を磁気吸引して該アーマチュア83の摩擦面83aをポンププーリ20の摩擦面23aに当接させて摩擦係合させるための永久磁石91と、この永久磁石91をポンププーリ20に固定するための外極板92とを有している。永久磁石91は、円環状に形成されており、アーマチュア83を吸引する方向(フィールドコアアッシー70の磁界とは逆方向)に磁界を発生する。外極板92は、磁性材料を用いて断面L字形となる環状に形成されており、永久磁石91を嵌め込んだ状態でプーリ部21の内周側に固定されている。
【0031】
磁気カップリング機構100は、複数(本実施形態では24個)の永久磁石111を保持してポンププーリ20に取り付けられる駆動側保持部材110と、アーマチュアアッシー80のハブ81に取り付けられるフランジ部材120と、複数(本実施形態では24個)の永久磁石131を保持してフランジ部材120に取り付けられる従動側保持部材130とを備えて構成される。なお、永久磁石111,131は、電磁クラッチ60における励磁コイル73及び永久磁石91による磁気の影響を受けない位置(直径方向にずれた位置)に配設されている。
【0032】
駆動側保持部材110は、例えば非磁性体の材料を用いて、軸線Xを中心とした円環状に形成されている。駆動側保持部材110は、複数本の平頭ボルト113を用いてポンププーリ20に同軸的に固定されており、該ポンププーリ20と一体回転可能に構成されている。なお、この平頭ボルト113は、駆動側保持部材110に形成されたボルト挿通孔114に挿通される。プーリ側保持部材110の一端側の端面には、円周方向に沿って複数(24個)の磁石保持孔112が開口形成されている。本例では、磁石保持孔112を3個置きに所定の間隔(ボルト挿通孔114のスペース)を空けて配置している。磁石保持孔112には、フランジ部材120側に一方の磁極(N極)を向けて永久磁石111が装着されている。すなわち、永久磁石111の他端側の表面は、N極となっている。
【0033】
フランジ部材120は、例えば非磁性体の材料を用いて、軸線Xを中心とした中空の円盤状に形成されている。フランジ部材120は、ハブ81のボス部81aに嵌挿された状態で、複数本の平頭ボルト125を用いてハブ81の他端側に固定されている。フランジ部材120の外周面は、プーリ部21の内周面よりも僅かに小さく形成されている。
【0034】
従動側保持部材130は、例えば非磁性体の材料を用いて、軸線Xを中心とした円環状に形成されている。従動側保持部材130は、複数本の平頭ボルト133を用いてフランジ部材120に同軸的に固定されており、該フランジ部材120と一体回転可能に構成されている。なお、この平頭ボルト133は、従動側保持部材130に形成されたボルト挿通孔134に挿通される。フランジ側保持部材130の内外径はプーリ側保持部材110の内外径と略同一に設定されており、フランジ側保持部材130及びプーリ側保持部材110は軸線方向に所定の隙間を空けて相対向している。具体的には、フランジ側保持部材130の一端側の端面とプーリ側保持部材110の他端側の端面とが軸線方向に対向する位置関係である。フランジ側保持部材130の他端側の端面には、円周方向に沿って複数(24個)の磁石保持孔132が開口形成されている。本実施形態では、磁石保持孔132を3個置きに所定の間隔(ボルト挿通孔134のスペース)を空けて配置している。各磁石保持孔132には、ポンププーリ20の連結部23側に一方の磁極(N極)を向けて永久磁石131が装着されている。すなわち、永久磁石131の一端側の表面(永久磁石111との対向面)は、S極となっている。なお、フランジ側保持部材130及びプーリ側保持部材110は、軸線方向及び該軸線方向と直交する方向(例えば垂直方向又は水平方向)に所定の隙間を空けて配置されていてもよい。
【0035】
永久磁石111及び永久磁石131は、互いに異なる磁極を対向して配置されており、永久磁石111,131間の隔壁(両保持部材110,130の隔壁)を透過して磁気的な吸引力が誘起されるようになっている。そのため、永久磁石111,131間の磁力の作用により、ポンププーリ20とフランジ部材120とが磁気結合される。なお、磁気カップリング力は、例えば、永久磁石111,131の個数や、各永久磁石111,131の磁力、両永久磁石111,131間の距離(軸線方向の距離及び該軸線方向と直交する方向の距離)などを変更することで、適宜に調節することができる。
【0036】
次に、本実施形態の理解を容易なものとするため、ウォータポンプ1の作用について説明する。
【0037】
まず、ウォータポンプ1は、エンジンEGの運転時に、励磁コイル73への通電が遮断されると、電磁クラッチ60が動力伝達状態となる。動力伝達状態においては、励磁コイル73への通電が遮断されることにより、アーマチュア83が永久磁石91の磁界により板ばね82の付勢力に抗してポンププーリ20に磁気吸着される。このとき、ポンププーリ20の摩擦面23aとアーマチュア83の摩擦面とが摩擦係合することにより、エンジンEGの駆動力がポンププーリ及びアーマチュア83(ハブ81)を介してポンプ軸30に伝達され、インペラ40がポンプ軸30と一体回転する。従って、ウォータポンプ1が駆動状態となり、ウォータポンプ1からエンジンEGの内部(ウォータジャケットWJ)に冷却水が供給されて、エンジンEGが冷却水の作用により水冷されることになる。なお、動力伝達状態において、フランジ部材120(ポンプ軸30)は、ポンププーリ20と同期回転し、ポンププーリ20と略同じ回転数で回転する。つまり、動力伝達状態では、ポンププーリ20の回転数(入力回転数)とポンプ軸30の回転数(出力回転数)とが略一致する。
【0038】
一方、ウォータポンプ1は、エンジンEGが所定の駆動状態(例えば軽負荷である場合や冷却水の温度が所定温度よりも低い場合)になると、励磁コイル73が通電され、電磁クラッチ60が動力切断状態となる。動力切断状態では、励磁コイル73が通電されることにより、フィールドコアアッセンブリ70が磁界を発生する。フィールドコアアッセンブリ70の磁界は、永久磁石91の磁界とは反対方向に形成されるため、該磁界同士が互いに打消し合うことになる。そのため、アーマチュア83は、永久磁石91の磁界による拘束から解放され(磁界の影響を受けず)、板ばね82の付勢力を受けてポンププーリ20から離間する。それにより、ポンププーリ20とアーマチュア83との摩擦係合が解かれる。従って、ポンププーリ20の摩擦面23aとアーマチュア83の摩擦面83aとの接触(摩擦係合)による駆動力の伝達がなくなる。
【0039】
一方、ウォータポンプ1には磁気カップリング機構100が搭載されているため、動力切断状態においてポンププーリ20が回転すると、フランジ部材120に設けられた永久磁石131がポンププーリ20に設けられた永久磁石111に引き付けられ、その磁力(磁気吸引力)により、ポンププーリ20の回転に対してフランジ部材120が追従して連れ回り回転する。すなわち、磁気カップリング機構100は、ポンププーリ20の駆動力を非接触でフランジ部材120及びポンプ軸30に伝達する。このとき、ポンプ軸30の回転数が増加するほど、それに伴いポンプの駆動力(駆動トルク)も増加するのであるが、この磁気吸引力(磁気カップリング力)は、ポンプの駆動力(ポンプ軸30を回転させる駆動力)が一定値を超えると、ポンププーリ20の回転に対してフランジ部材120の回転が追従できなくなる脱調状態となるように調節してある。本実施形態では、上記の一定値を相対的に低い値に設定しているため、ポンププーリ20の回転数が低回転領域であるときから、磁気カップリング機構100が脱調状態となるようになっている。このように磁気カップリング機構100が脱調状態となることで、ポンププーリ20からフランジ部材120に伝達される駆動力が低減されて、ポンププーリ20の回転数よりも低い回転数でフランジ部材120(ポンプ軸30)が回転することになる。つまり、ポンプ軸30の回転数(出力回転数)は、ポンププーリ20の回転数(入力回転数)よりも低い回転数となる。従って、動力伝達状態である場合よりも、動力切断状態である場合の方が、入力回転数が同じであっても、フランジ部材120(ポンプ軸30)の回転数を低く抑えることができる。このように磁気カップリング機構100が脱調状態となり、ポンププーリ20とフランジ部材120(ポンプ軸30)との間で回転差(相対的な回転)を発生させることで、ポンププーリ20の入力回転数に対してポンプ軸30の出力回転数を落とすことができ、その結果、動力切断状態であっても比較的少量の冷却水(一定流量以上の冷却水)を常時循環させることができる。
【0040】
図5は、本実施形態のウォータポンプ1において入力回転数に対する吐出流量及び駆動力(消費電力)の関係を示すグラフである。本実施形態では、動力切断状態において、ポンプの駆動力が一定値(Lp)を超えたときに、磁気カップリング機構100が脱調状態となるように調節されている。そのため、該動力切断状態において、入力回転数が低回転領域であり、ポンプの駆動力が一定値以下であるときは、ポンププーリ20とフランジ部材120とが同期回転する。これに対して、入力回転数が増加するに伴って、ポンプの駆動力が一定値(Lp)を超えると、ポンププーリ20の回転に対してフランジ部材120の回転が追従できなり、磁気カップリング機構100が脱調状態となる。そのため、入力回転数が同一であっても、動力切断状態であるときのポンプの駆動力は、動力伝達状態であるときのポンプの駆動力の20%程度に抑えられる。このように動力切断状態では、ポンプの駆動力(ポンププーリ20からフランジ部材120へ伝達される駆動力)を低減することができる。従って、無駄な動力を消費することなく、エンジンEGが必要とする一定流量以上の冷却水を常時吐出することができる。なお、動力切断状態においても、ポンプの駆動力は入力回転数の増加に応じてリニアに変化する。その理由としては、各保持部材110,130には周方向に複数の永久磁石111,131を配列しているため、ポンププーリ20の回転数(入力回転数)が増加するほど、両永久磁石111,131間に作用する磁気カップリング力が強まるからである。
【0041】
以上、本実施形態に係るウォータポンプ1によれば、電磁クラッチ60が動力切断状態であっても、ポンププーリ20の回転に対してフランジ部材120(ポンプ軸30)を連れ回り回転させることで、一定流量以上の冷却水(比較的小流量の冷却水)を常時吐出させることができるため、無駄な動力を消費することなく、エンジンEGの駆動状態に応じた必要流量の冷却水を常に循環させて、エンジンEGの焼き付きやオーバーヒートの発生を未然に防止することが可能となる。
【0042】
また、本実施形態のウォータポンプ1によれば、エンジンの駆動状態に応じて、電子制御により励磁コイル73の通電をオン/オフ切り替えることで、ウォータポンプ1の運転状態を通常運転(動力伝達状態)と省エネ運転(動力切断状態)とに任意に切り替えることができるため、消費電力を一層低減させることが可能である。
【0043】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば適宜改良可能である。
【0044】
上記実施形態では、各保持部材110,130に複数(24個)の永久磁石111,131を円周方向に配列した構成を例示したが、永久磁石111,131の配置や形状、個数等は、上記実施形態で例示したものに限定されるものではなく、他の配置や形状、個数等を適用してもよい。また、上記実施形態では、プーリ側保持部材110の内外径と、フランジ側保持部材130の内外径とを略同一の寸法に設定した構成を例示して説明したが、この構成に限定されるものではなく、プーリ側保持部材110の内外径と、フランジ側保持部材130の内外径とを異なる寸法に設定してもよい。
【0045】
上記実施形態では、磁気カップリング機構100において、各保持部材110,130の壁面を介して両永久磁石111,131が軸線方向に所定の間隔をあけて対向配置された構成を例示したが、この構成に限定されるものではなく、各保持部材110,130の壁面を介して両永久磁石111,131が軸線方向及び該軸線方向と直交する方向に所定の間隔をあけて配置された構成や、各保持部材110,130の壁面を介することなく両永久磁石111,131が軸線方向及び該軸線方向と直交する方向に直接、所定の間隔(空隙)をあけて配置される構成であってもよい。
【0046】
上記実施形態では、電磁クラッチ60として、非通電時にポンププーリ20とポンプ軸30とが接続状態(動力伝達状態)となる、いわゆるノーマルクローズ型の電磁クラッチを例示して説明したが、この構成に限定されるものではなく、非通電時にポンププーリ20とポンプ軸30とが遮断状態(動力切断状態)となる、いわゆるノーマルオープン型の電磁クラッチを適用してもよい。