特許第6968162号(P6968162)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6968162フッ素化シクロブタンを生成するためのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6968162
(24)【登録日】2021年10月28日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】フッ素化シクロブタンを生成するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/275 20060101AFI20211108BHJP
   C07C 23/06 20060101ALI20211108BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20211108BHJP
【FI】
   C07C17/275
   C07C23/06
   !C07B61/00 300
【請求項の数】3
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2019-523552(P2019-523552)
(86)(22)【出願日】2017年11月7日
(65)【公表番号】特表2019-532993(P2019-532993A)
(43)【公表日】2019年11月14日
(86)【国際出願番号】US2017060394
(87)【国際公開番号】WO2018089362
(87)【国際公開日】20180517
【審査請求日】2020年10月30日
(31)【優先権主張番号】15/345,695
(32)【優先日】2016年11月8日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/582,981
(32)【優先日】2017年5月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ハリダサン・ケイ・ナイル
(72)【発明者】
【氏名】ラジブ・バナヴァリ
(72)【発明者】
【氏名】イーアン・ヅァイ
(72)【発明者】
【氏名】グレン・マシィーズ
【審査官】 二星 陽帥
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/003085(WO,A1)
【文献】 米国特許第03996299(US,A)
【文献】 特表2003−501552(JP,A)
【文献】 特開2010−116330(JP,A)
【文献】 特開昭57−059822(JP,A)
【文献】 特開2002−047215(JP,A)
【文献】 特表2011−525925(JP,A)
【文献】 特公昭50−035048(JP,B1)
【文献】 特開昭46−003418(JP,A)
【文献】 特公昭49−033166(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 17/275
C07C 23/06
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,1,2−トリフルオロ−2−(トリフルオロメチル)シクロブタン(TFMCB)を生成するためのプロセスであって、
ヘキサフルオロプロペン及びエチレンを反応容器に導入する工程と、
前記ヘキサフルオロプロペン及びエチレンを、少なくとも1つのオリゴマー化/重合(OP)阻害剤、並びにニッケル及びニッケル系合金からなる群から選択される少なくとも1つの金属触媒の存在下において前記反応容器内で反応させる工程と、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記オリゴマー化/重合(OP)阻害剤が、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)、一酸化炭素(CO)及び二酸化硫黄(SO)からなる群から選択される少なくとも1つの気相化合物を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記オリゴマー化/重合(OP)阻害剤が、前記反応容器中の反応組成物の総重量に基づいて、0重量ppm〜,000重量ppmで存在する、請求項1に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,1,2−トリフルオロ−2−(トリフルオロメチル)シクロブタン(TFMCB)の生成に関する。より具体的には、本発明は、市販の反応物質エチレン及びヘキサフルオロプロペンから連続触媒反応を介して1,1,2−トリフルオロ−2−(トリフルオロメチル)シクロブタンを生成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロフルオロ−オレフィン2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf、CFCF=CH)は、冷媒、発泡体発泡剤、ポリマー用モノマー、及び多くの他の用途としての使用が見出されるゼロオゾン層破壊係数を有する低地球温暖化化合物である。HFO−1234yfを製造するための複数の方法が当該技術分野において既知である。例えば、米国特許第8,975,454号、同第8,618,340号、同第8,058,486号及び同第9,061,957号を参照されたい。また、米国特許出願公開第2009−0099396号及び同第2008−0058562号を参照されたい。
【0003】
HFO−1234yfへの別の経路は、米国特許第8,084,653号及び同第8,324,436号に開示されているような、1,1,2,3−テトラクロロ−プロペン(TCP)のフッ化水素処理である。国際公開第2009/003085(A1)号は、ヘキサフルオロプロペン(HFP)及びエチレンのメタセシスを介したHFO−1234yfの調製について記載している。このプロセスは、有機溶媒中で高価なメタセシス触媒を使用する必要があり、したがって商業的生成にとって費用効果がない。
【0004】
HFO−1234yfを製造するためのこれらの方法は、一般に、複数の工程、副生成物の形成を伴い、かつ低い原子効率を有する。原子効率は、以下のように計算される。
(所望の生成物の分子量)を(形成された物質の分子量)で割り、100をかけたもの
【0005】
フルオロオレフィンの熱二量化は、文献に記載されている。例えば、米国特許第2,427,116号、同第2,441,128号、同第2,462,345号、同第2,848,504号、同第2,982,786号、及び同第3,996,301号を参照されたい。また、J.Fluorine.Chem.,2004,125,1519、J.Chem.Soc。,Perkin I,1973,1773、J.Chem.Soc.,Perkin I,1983,1064を参照されたい。
【0006】
米国特許第3,996,299号には、フッ化ビニリデン及び2,3,3,3−テトラフルオロ−プロピレンから生成されるコポリマーを形成するためのプロセスを記載している。このプロセスは、ペルフルオロプロピレンなどのペルフルオロオレフィンの環化を伴い、末端モノオレフィン、例えばエチレンを用いて、環状化合物1,1,2−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−シクロブタン(TFMCB)を生成することを含む。次いで、TFMCBなどの環状化合物をサーマルクラッキング操作に供して、フッ化ビニリデン及び2,3,3,3−テトラフルオロ−プロピレンなどの非環式フッ素含有オレフィンの混合物を生成する。これらは、重合反応においてモノマー及び/又はコモノマーとして使用することができる。
【0007】
米国特許第3,996,299号は、非常に広い範囲の反応条件下で、シクロ二量体化反応が生じ得ることを開示している。例えば、この特許では、反応温度が200℃〜600℃、好ましくは300℃〜400℃の範囲であり得、反応時間が約4〜約1000時間、好ましくは10〜100時間の範囲であることを示している。また、米国特許第3,996,299号は、モノオレフィン対ペルフルオロオレフィンの比が、通常、0.1:1〜約100:1、好ましくは1:1〜約10:1の範囲であることを示している。
【0008】
米国特許第3,996,299号は、500℃〜1000℃の範囲、好ましくは600℃〜700℃の範囲の温度での環状化合物のサーマルクラッキングを開示している。クラッキング反応は、0.01〜10秒の範囲の接触時間を維持しながら、加熱させた反応管を通過させることにより、連続的に行うことができる。
【0009】
出願人らは、米国特許第3,996,299号に記載されているプロセスに従うHFO−1234yfの形成に関連するいくつかの問題及び欠点を認識するにいたった。このような問題の1つは、米国特許第3,996,299号が、高温でのオレフィンオリゴマー化に関連するクラッキング反応における潜在的な問題を認識していないことである。他の問題は、米国特許第3,996,299号において言及されていない他の副生成物と共に、クラッキング生成物中にHFP及びエチレン(出発物質)が存在していることである。出願人らは、これらの問題が、米国特許第3,996,299号に明記した多くのシクロ二量化反応条件下で悪化することを理解するにいたった。したがって、最終反応生成物は、特定の反応条件下で、特にエチレン対HFPの比がかなり過剰である複合混合物である。別の問題は、HFPなどのペルフルオロオレフィンとエチレンなどのモノレフィンとの許容されている比率の多くが、望ましくないか若しくは有害な副生成物並びに/又は不十分な変換及び/若しくは選択性を含む、望ましくない反応生成物の結果を生成する可能性があることである。望ましくないか若しくは有害な副生成物並びに/又は不十分な変換及び/若しくは選択性に関連する同様の欠点は、クラッキング反応に関する反応条件の範囲内で可能である。
【0010】
少なくとも一部は、先行技術によるこれらの問題を認識した結果として、出願人らは、HFO−1234yfの生成及びHFO−1234yfとフッ化ビニリデン(VDF)との混合物の生成において、有意かつ予想外の利点をもたらす、新規かつ大幅に改善されたプロセスを開発した。
【0011】
上記の観点から、フッ素化シクロブタン、具体的には1,1,2−トリフルオロ−2−(トリフルオロメチル)シクロブタン(以下、TFMCBと称する)は、本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願第15/345,695号(この開示は参照により本明細書に明確に組み込まれる)に開示されている方法に従って、熱分解により高収率で、ヒドロフルオロオレフィン1234yf(CFCF=CH、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン)及びフッ化ビニリデン(VDF、CH=CF)に変換することができる非常に有用な中間体である。
【0012】
TFMCBの化学構造を以下に示す。
【0013】
【化1】
【0014】
1234yfは、商品名Solstice(商標)でHoneywell International Inc.から市販されている。1234yf及びVDFは両方とも、商業的に重要な化合物であり、具体的には、1234yfは、冷媒、発泡剤、ポリマー用モノマー及び他の多くの用途として有用なゼロオゾン層破壊係数を有する低地球温暖化化合物であり、VDFは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのポリマーの生成に有用なモノマーである。
【0015】
TFMCBは、68℃の沸点を有する既知の化合物である。TFMCBは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,026,499号及び同第5,035,830号の洗浄溶媒組成物の成分として使用されていた。TFMCBの合成方法は既知である。例えば、参照により本明細書に組み込まれる国際出願PCT2000/75092号は、テトラフルオロシクロブタンを付与するためのTFE及びエチレンの共二量化、及びその後の電気化学フッ素化を行い、ペルフルオロシクロブタンを得ることが記載されている。
【0016】
しかしながら、TFMCBを生成するための方法は非常に少ない。Birchall,M.et.al.,(J.Chem.Soc.1973,1773〜1779)では、ヘキサフルオロプロペン(HFP)とエチレンとを250℃で18時間、揺動式オートクレーブ中で反応させることによるTFMCBの形成について記載している。Haszeldine et.al.,(J.Fluorine Chem.1982,21,253〜260)では、280℃で4日間、ヘキサフルオロプロペンと塩化エチルとの反応における副生成物のうちの1つとしてTFMCBを報告している。米国特許第3,996,299号及び同第4,086,407号は、ヘキサフルオロプロペン及びエチレンを350℃で約3日間密閉されたステンレス鋼製シリンダ内で加熱することによる、1,1,2−トリフルオロ−2−(トリフルオロメチル)シクロブタンの生成について記載している。
【0017】
前述の方法のいずれも、コスト効率が高くなく、大規模な商業的規模で実践することができない。したがって、TFMCBを生成するための商業的に実現可能な方法を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0018】
本発明は、1,1,2−トリフルオロ−2−(トリフルオロメチル)シクロブタン(TFMCB)の生成に関し、市販の原料エチレン及びヘキサフルオロプロペンからの連続触媒反応を介して、1,1,2−トリフルオロ−2−(トリフルオロメチル)シクロブタンを生成するための方法を提供する。
【0019】
その一形態では、本発明は、1,1,2−トリフルオロ−2−(トリフルオロメチル)シクロブタン(TFMCB)を生成するための連続プロセスであって、本プロセスは、(a)ヘキサフルオロプロペン及びエチレンを反応容器に導入する工程と、(b)少なくとも1つの金属触媒の存在下で、反応容器内のヘキサフルオロプロペン及びエチレンを反応させる工程と、(c)反応容器からTFMCB生成物を取り出す工程と、(d)当該導入する工程、反応させる工程、及び取り出す工程(a)〜(c)を繰り返す工程と、を含む。
【0020】
前述のプロセスは、追加の工程である、反応容器から未反応のヘキサフルオロプロペン及び未反応のエチレンのうちの少なくとも1つを取り出す工程と、未反応のヘキサフルオロプロペン及び未反応のエチレンのうちの少なくとも1つを反応容器に戻して再循環させる工程と、を更に含んでもよい。あるいは、前述のプロセスは、追加の工程である、反応容器から未反応のヘキサフルオロプロペン及び未反応のエチレンを取り出す工程と、未反応のヘキサフルオロプロペン及び未反応のエチレンを反応容器に戻して再循環させる工程と、を更に含んでもよい。
【0021】
金属触媒は、ニッケル及びニッケル系合金からなる群から選択される少なくとも1つの金属触媒を含んでもよい。反応させる工程において、次の条件のうちの少なくとも1つが存在し得る:反応は、600psig〜1500psigの圧力、又は800psig〜1200psigの圧力で実施されてもよい。反応は、300℃〜500℃の温度、又は300℃〜400℃の温度で行われてもよく、ヘキサフルオロプロペン及びエチレンは、1:1〜1:6のモル比、又は1:1〜1:3のモル比で存在してもよい。
【0022】
反応させる工程は、カテコール及びその誘導体、テルペン、キノン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのオリゴマー化/重合(oligomerization/polymerization、OP)阻害剤の存在下で実施されてもよく、及び/又は気相酸化窒素(NO)であってもよい。オリゴマー化/重合(OP)阻害剤は、反応容器中の反応組成物の総重量に基づいて約50重量ppm〜約2,000重量ppmで存在してもよく、又は反応容器中の反応組成物の総重量に基づいて約500ppm〜約1,000ppmで存在してもよい。
【0023】
その別の形態では、本発明は、以下の工程を含む、1,1,2−トリフルオロ−2−(トリフルオロメチル)シクロブタン(TFMCB)を生成するための連続プロセスであって、(a)ヘキサフルオロプロペン及びエチレンを反応容器に導入する工程と、(b)少なくとも1つの金属触媒及び少なくとも1つのオリゴマー化/重合(OP)阻害剤の存在下で、反応容器内のヘキサフルオロプロペン及びエチレンを反応させる工程と、(c)反応容器からTFMCB生成物を取り出す工程と、(d)当該導入する工程、反応させる工程、及び取り出す工程(a)〜(c)を繰り返す工程と、を含む、プロセスを提供する。
【0024】
少なくとも1つの金属触媒は、ニッケル及びニッケル系合金からなる群から選択される少なくとも1つの金属触媒を含んでもよい。
【0025】
反応させる工程は、カテコール及びその誘導体、テルペン、キノン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのオリゴマー化/重合(OP)阻害剤の存在下で実施され、及び/又は気相酸化窒素(NO)であってもよい。オリゴマー化/重合(OP)阻害剤は、反応容器中の反応組成物の総重量に基づいて、約50重量ppm〜約2,000重量ppmで存在してもよい。
【0026】
前述のプロセスでは、反応させる工程中に、以下の条件のうちの少なくとも1つが存在してもよい。反応させる工程は、600psig〜1500psigの圧力で実施されてもよく、反応させる工程は、300℃〜500℃の温度で実施されてもよい、反応させる工程中に、ヘキサフルオロプロペン及びエチレンは、1:1〜1:6のモル比で存在してもよい。
【0027】
更なる形態では、本開示は、ヘキサフルオロプロペン及びエチレンを反応容器に導入する工程と、ヘキサフルオロプロペン及びエチレンを、少なくとも1つのオリゴマー化/重合(OP)阻害剤及び少なくとも1つの金属触媒の存在下において反応容器内で反応させる工程と、を含む1,1,2−トリフルオロ−2−(トリフルオロメチル)シクロブタン(TFMCB)を生成するためのプロセスを提供する。
【0028】
プロセスは連続プロセスであってもよく、反応させる工程の後に、反応容器からTFMCB生成物を取り出す工程と、当該導入する工程、反応させる工程、及び取り出す工程(a)〜(c)を繰り返す工程との追加の工程を更に含んでもよい。
【0029】
プロセスは、反応させる工程の後、反応容器から未反応のヘキサフルオロプロペン及び未反応のエチレンのうちの少なくとも1つを取り出す工程と、未反応のヘキサフルオロプロペン及び未反応のエチレンのうちの少なくとも1つを反応容器に戻して再循環させる工程との、追加の工程を更に含んでもよい。
【0030】
プロセスは、反応させる工程の後に、反応容器から未反応のヘキサフルオロプロペン及び未反応のエチレンを取り出す工程と、未反応のヘキサフルオロプロペン及び未反応のエチレンを反応容器に戻して再循環させる工程と、を含む、追加の工程を更に含んでもよい。
【0031】
金属触媒は、ニッケル及びニッケル系合金からなる群から選択されてもよい。
【0032】
オリゴマー化/重合(OP)阻害剤としては、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)、一酸化炭素(CO)及び二酸化硫黄(SO)からなる群から選択される少なくとも1つの気相化合物を含んでもよい。オリゴマー化/重合(OP)阻害剤は、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシルであってもよい。オリゴマー化/重合(OP)阻害剤は、カテコール及びカテコール誘導体、テルペン、キノン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0033】
オリゴマー化/重合(OP)阻害剤は、反応容器中の反応組成物の総重量に基づいて約50重量ppm〜約2,000重量ppmで存在してもよく、又は反応容器内の反応組成物の総重量に基づいて約500ppm〜約1,000ppmで存在してもよい。
【0034】
反応させる工程は、600psig〜1500psig、又は800psig〜1200psigの圧力で実施されてもよい。反応させる工程は、300℃〜500℃の温度、又は300℃〜400℃の温度で実施されてもよい。反応させる工程中、ヘキサフルオロプロペン及びエチレンは、1:1〜1:6のモル比で存在してもよい。
【0035】
その別の形態では、本開示は、化合物2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234yf)とフッ化ビニリデンとの混合物を形成するためのプロセスを提供し、本プロセスには、1,1,2−トリフルオロ−2−トリフルオロ−メチル−シクロブタン(TFMCB)を熱分解する工程を含み、TFMCBは、1234yf及びフッ化ビニリデンを含む反応生成物を生成するのに有効な条件下で、92%超の純度を有し、1234yf中:フッ化ビニリデンのモル比が約0.5〜約1.2である。
【0036】
熱分解は、約750℃〜約800℃の範囲の温度で、かつ約2秒〜約25秒の接触時間、及び約1atmの圧力で実施することができる。
【0037】
熱分解は、ステンレス鋼管反応器内で実施されてもよく、反応は、生成物が反応器から出るときに冷却により急冷されてもよい。
【0038】
その更なる形態では、本開示は、化合物2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234yf)とフッ化ビニリデンとの混合物を形成するためのプロセスを提供し、本プロセスには、1234yf及びフッ化ビニリデンを含む反応生成物を生成するのに有効な条件下で、1,1,2−トリフルオロ−2−トリフルオロ−メチル−シクロブタンを熱分解する工程を含み、1234yf中:フッ化ビニリデンのモル比は約0.5〜約1.2であり、熱分解が約80%〜約90%の範囲の収率をもたらす。
【0039】
熱分解は、約70%の変換率をもたらし得る。熱分解は、バッチモード又は連続モードで行われてもよい。
【0040】
方法は、化合物1234yfとフッ化ビニリデンとの混合物を分離する工程を更に含んでもよい。
【0041】
なお更なる形態では、本開示は、化合物2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234yf)とフッ化ビニリデンとの混合物を形成するためのプロセスを提供し、本プロセスには、1234yf及びフッ化ビニリデンを含む反応生成物を生成するのに有効な条件下で、1,1,2−トリフルオロ−2−トリフルオロ−メチル−シクロブタンを熱分解する工程を含み、1234yf中:フッ化ビニリデンのモル比は約0.5〜約1.2であり、このプロセスは、重合又はオリゴマー化阻害剤の存在下で、ヘキサフルオロ−プロペン(HFP)と化学量論的に過剰のエチレンとの混合物の熱二量化によって、化合物1,1,2−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−シクロブタン(TFMCB)を形成する工程を更に含み、TFMCBは、92%超の純度を有する。
【0042】
HFP及びエチレンは、1:1〜1:10のモル比又は1:1〜1:6のモル比で、反応器内で混合されてもよい。阻害剤は、約200ppm〜約3重量%、又は約500ppm〜5000ppmで存在し得る。阻害剤は、カテコール及びその誘導体、テルペン、キノン、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得る。阻害剤は、t−ブチルカテコール、リモネン、ピネン、1,4−ナフトキノン、2,5−ジ−tert−ブチル−ヒドロキノン、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、モノ−tert−ブチルヒドロキノン、パラ−ベンゾキノン、トルヒドロキノン、トリメチル−ヒドロキノン、及びこれらの任意の2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得る。
【0043】
熱二量化は、約250℃〜450℃の範囲の温度で行われてもよく、又は熱二量化は、約300〜350℃の範囲の温度で行われてもよい。熱二量化は、約1〜5時間の範囲の反応時間、又は約1〜5時間の範囲の反応時間で行われてもよい。
【0044】
更なる実施形態では、任意の未反応出発物質を別個の容器に再循環させることができ、生成物TFMCBは、99.8%超の純度で蒸留によって精製されてもよい。
【0045】
本発明が、本発明の任意の特定の態様及び/又は実施形態に関して本明細書に記載の特性のうちのいずれかを、組み合わせの適合性を確実にするように適切な修正により、本明細書に記載の本発明の任意の他の態様及び/又は実施形態の他の特性のうちのいずれかの1つ以上と組み合わせることができることを、本発明に関係する当業者は理解するべきである。かかる組み合わせは、本開示によって考慮される本発明の一部であるとみなされる。
【0046】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、いずれもただ例示的かつ説明的なものであり、特許請求される本発明を限定するものではないことが理解されるべきである。他の実施形態は、本明細書に開示の本発明の仕様及び実施を考慮することで当業者には明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0047】
添付の図面を考慮して、本発明の実施形態についての以下の記載を参照することによって、本発明の上述及び他の特性及び有利性、並びにそれらを達成する様式がより明らかになり、本発明自体がより良好に理解されるであろう。
【0048】
図1】本発明によるTFMCBの生成のための例示的なプロセスの一般的概略図である。
図2】本発明によるTFMCBの生成のための例示的なプロセスで使用される構成要素を含む構造概略図である。
【0049】
図面は、本開示に従った様々な特性及び構成要素の実施形態を表すが、図面は必ずしも縮尺どおりではなく、本開示をより良好に例示及び説明するために、ある特定の特性が誇張されている場合がある。本明細書に記載の例証は、本発明の実施態様を例示するものであり、かかる例証は、いかなる様式においても本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0050】
I.1,1,2−トリフルオロ−2−(トリフルオロメチル)シクロブタン(TFMCB)の生成
図1を参照すると、1,1,2−トリフラフルオロ(triflfuoro)−2−(トリフルオロメチル)シクロブタン(TFMCB)を生成するための方法又はプロセスが示されている。以下に更に記載されるように、本方法は、エチレン(C)及びヘキサフルオロプロペン(C)反応物質(すなわち、原材料又は「原料」)を必要に応じて反応容器に連続的又は周期的に添加する連続プロセスを伴い、生成物は、必要に応じて連続的又は周期的に反応容器から取り出され、所望により精製され、未反応の材料は、必要に応じて連続的又は周期的に反応容器から取り出され、所望により反応容器内へ戻して再循環される。この様式で、反応は、反応物質を一定に供給し生成物(TFMCB)を取り出すこと、及び未反応エチレン(C)並びにヘキサフルオロプロペンを再循環させることによって行われる。
【0051】
ヘキサフルオロプロペンのTFMCBへの変換及びその選択性は、温度、圧力、流量、反応物質の比、並びに触媒及び/又は重合阻害剤の使用に依存する。
【0052】
反応物質はオリゴマー化/重合を起こしやすい場合があるが、下記のとおり、本発明者らは、反応条件の制御によって、並びに/又は少なくとも1つの触媒及び/若しくは少なくとも1つのオリゴマー化/重合(OP)阻害剤の使用によって、所望のTFMCB生成物への反応物質の変換を強化するために、反応物質のオリゴマー化/重合を制御できることを見出した。
【0053】
図2を参照すると、連続反応を実施するための例示的な構成要素が示されている。反応自体は、反応容器10内で実施され、反応容器10は、加熱させた管反応器であってもよく、例えば以下で更に詳細に論じられるように、触媒12を含有する。反応物質のエチレン及びヘキサフルオロプロペンは、それぞれ導管18及び20を介して、それぞれの供給タンク14及び16から所望の流量で、反応容器10に供給される。反応容器10は、炉内に配置されることによって、又は加熱スリーブ及び/若しくはテープを使用することによってなど、適切な加熱機構によって加熱されてもよく、内部温度を監視するための内部温度センサ22を備える。反応容器10は、ステンレス鋼、ニッケル、ニッケル系合金、例えば、Monel(登録商標)(例えば、最大67%のニッケル、銅、並びに少量の鉄、マンガン、炭素、及びケイ素から作製されてもよい。Monel(登録商標)は、Huntington Alloys Corporationの登録商標である)及び/又は銀で裏打ちされてもよい。
【0054】
一実施形態では、反応容器10へのエチレンの送達は、導管18内の質量流量制御装置24によって制御され、HFPは、適切な高圧液体ポンプ26を使用して、導管20を通して液体としてポンプ圧送される。所望により、反応物質を反応容器10内に搬送する前に反応物質を予混合するために、プレミキサー28を反応容器10及び導管18及び20と共に使用してもよい。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態では、オリゴマー化/重合(OP)阻害剤は、オリゴマー化及び/又は重合が反応中に生じることを制御又は防止するために使用される。OP阻害剤は、専用導管32を介して供給タンクから送達されてもよく、あるいは導管18及び/又は20を介していずれか又は両方の反応物質と共に送達されてもよい。OP阻害剤の物理的性質に応じて、OP阻害剤を送達するために、質量流量制御装置又はポンプなどの供給装置34を使用してもよい。
【0056】
反応容器10内の一定圧力は、図2に36で概略的に示されている背圧調節器又は研究用制御弁(research control valve、RCV)アセンブリを使用して維持されてもよい。反応は、所望の間隔で、ガスクロマトグラフィー(GC)を使用して出口生成物を分析すること、例えば、かつ/又は他の分析方法によって監視されてもよい。
【0057】
生成物TFMCBは、セパレータ38を介して未反応のエチレン及びヘキサフルオロプロペンから分離させ、例えば、冷却された容器40内で反応容器10から取り出した後に連続的に収集されてもよい。未反応のエチレン及びヘキサフルオロプロペンは、導管42を介して反応容器10に(及び/又はプロセス内の別の好適な点に)戻して再循環されてもよい。当業者には理解されるように、図2に示す描写からの反応容器10及びその関連する構成要素の様々な改変が、反応を行うため、並びに生成物の収集及び分離を行うために可能である。
【0058】
反応は、低い温度では250℃、300℃、若しくは330℃、又は高い温度では400℃、500℃、又は600℃で実施されてもよく、又は250〜600℃、300〜500℃、若しくは330〜400℃などの前述の値のいずれか2つの間に定義される任意の範囲内で実施されてもよい。特定の実施形態では、反応温度は300〜350℃である。
【0059】
反応は、低い圧力では400psig、600Psg、若しくは800psig、又は高い圧力では1200psig、1500psig、若しくは2000psigで実施されてもよく、又は400〜2000psig、600〜1500psig、若しくは800〜1200psigなどの前述の値のいずれか2つの間に定義される任意の範囲内で実施されてもよい。特定の実施形態では、反応圧力は800〜900psigである。
【0060】
反応中に反応容器10中に存在する反応物質ヘキサフルオロプロペンのエチレンに対する比は、1:1〜1:10、あるいは1:1〜1:6、更に代替的には1:1〜1:3の範囲であり得る。特定の実施形態では、比は1:2である。
【0061】
金属触媒としては、ニッケル及びニッケル系合金、例えば、Monel(登録商標)合金、ニッケルPropak(登録商標)蒸留カラムパッキング(サイズ0.16又は0.24インチ)、ニッケル合金200(UNS NO2200、ニッケル合金201(UNS NO2201)、及び99%超の純度のニッケル合金が挙げられる。触媒はまた、メッシュ、顆粒、ワイヤ、発泡体などの形態であってもよいが、典型的には、蒸留カラムパッキングの形態で使用される。
【0062】
反応中、TFMCBの合成には、反応物質の望ましくないオリゴマー化及び/又は重合を制御するために、任意によるOP阻害剤の存在下でのヘキサフルオロプロペン及びエチレンの熱触媒シクロ二量化を含み、これにより望ましくない副生成物が形成される。本発明のプロセスによれば、TFMCBは、ヘキサフルオロプロペンとエチレンとの反応から直接、約70〜90%の高い選択性、並びに80〜90%の高純度となるように生成され得る。あるいは、所望であれば、TFMCB生成物自体は、その後の工程において、その純度を更に上げるために、蒸留などによって更に精製されてもよい。
【0063】
複数のOP阻害剤を用いて、エチレン及びHFPのオリゴマー化又は重合を最小限に抑えるか、又は防止することもできる。例示的なOP阻害剤としては、テルペン、キノン、ニトロキシルニトロキシル、ヒルドキシルアミン(hyrdoxylamine)系及び他の阻害剤、例えば、α−ピネン、リモネン、テルピネオール、t−ブチルカテコール、ヒドロキノン、ナフトキノン、p−メトキシヒドロキノン(MEHQ)、N,N−ジアキルヒドロキシルアミン、2,2,6,6,−テトラメチルピペリジニル−1−オキシル(TEMPO)、2−sec−ブチル−4,6−ジントロフェノール(dintrophenol)(DNBP);並びに一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)、一酸化炭素(CO)、及び二酸化硫黄(SO)などの気相阻害剤、並びに前述の組み合わせが挙げられる。気相阻害剤の一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)、一酸化炭素(CO)及び/又は二酸化硫黄(SO)は、未希釈ガスとして反応混合物に添加されてもよく、又は窒素などの不活性ガスで希釈されてもよく、例えば、使用されるOP阻害剤の量が、反応物質原料の総重量に基づいて、例えば0.01重量%〜5重量%、又は下記に記載の範囲内であるようにする。
【0064】
OP阻害剤の多くは固体であり、したがって典型的には、例えばポンプ20を介して反応容器10内にポンプ圧送される前に、典型的にはドデカンなどの好適な非反応性溶媒に溶解される。窒素で希釈された一酸化窒素などの気体の又は気相の重合阻害剤は、質量流量制御装置18を介して反応容器10に供給されてもよい。典型的には、OP阻害剤は、原料に対して低濃度で使用され、例えば、使用されるOP阻害剤の量は、反応容器10中の反応組成物の重量に基づいて、少なくて50ppm、100ppm、200ppm、若しくは500ppm、又は多くて1,000ppm、2,000ppm、若しくは1重量%の量であってもよく、又は100ppm〜1重量%、200ppm〜2,000ppm、又は500ppm〜1,000ppmなど、前述の値のいずれか2つの間に定義される任意の範囲内に存在してもよい。
【0065】
一実施形態では、OP阻害剤は、一酸化窒素(NO)などの気相阻害剤であり、これは、有利には、未希釈であるか、窒素などの不活性ガスで希釈されるかのいずれかで、質量流量制御装置を介して、反応容器10内に供給されてもよい。
【0066】
II.2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)の生成
本発明の別の態様は、HFO−1234yf及び/又はフッ化ビニリデン(VDF)を、例えば、クラッキングなどによって、及びいくつかの実施形態ではサーマルクラッキング(以下「熱分解」という)によって、TFMCBをVDF及び/又はHFO−1234yfに変換することにより、HFO−1234yf及び/又はフッ化ビニリデン(VDF)を生成するためのプロセスを目的とし、TFMCBは、約10秒未満の接触時間、及び約850℃未満の平均温度で反応域に保持されて、(VDF)及び/又はHFO−1234yf、好ましくはVDF及びHF−1234yfの両方を生成し、更により好ましくはVDF中:HFO−1234yfのモル比が約1.5:1未満及び約0.8:1以上である。
【0067】
更なる実施形態では、VDF及び/又はHFO−1234yfを形成するためのプロセスは、(a)1,1,2−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−シクロブタン(TFMCB)を含むストリームを提供する工程と、(b)約10秒未満の接触時間、及び約850℃未満の平均温度で1,1,2−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−シクロブタン(TFMCB)をクラッキング(例えば、熱分解など)して、VDF及び/又はHFO−1234yf、好ましくはVDF及びHF−1234yfの両方を生成する工程を含むプロセスであって、更により好ましくはVDF中:HFO−1234yfのモル比が約1.5:1未満及び約0.8:1以上である。
【0068】
本発明のこの態様による熱分解反応の一実施形態は、以下の反応スキームIに描写されている:
【0069】
【化2】
【0070】
本明細書に記載されるように、この反応の一実施形態は、主な重量比率などを含むストリーム、又は更に代替的に、本質的にTFMCBからなるストリームを加熱させた管状反応容器などの反応容器に導入することによって行われる。管状反応器は、ステンレス鋼管であってもよく、この管は、高温に維持された炉内に配置され、連続操作などを介して、約10秒未満、あるいは約5秒未満の接触時間で、反応器からTFMCBを通過させて、1234yf及び/又はVDFを含む反応生成物ストリームを作り出すことができる。
【0071】
急冷操作を用いて、反応生成物の温度を迅速に低下させて、例えば、加熱させた反応容器の温度よりもはるかに低い温度に維持されたシリンダ内に反応生成物ストリームを導入して、熱分解反応を停止させる。いくつかの実施形態では、キャリアガス(例えば、ヘリウム)は反応物ストリーム中には存在せず、これにより、コストが削減され、反応生成物の精製が単純化される。反応温度は、500℃〜1000℃、あるいは750℃〜850℃の範囲であってもよい。
【0072】
出願人は、いかなる特定の操作理論によって、又はいかなる特定の操作理論にも束縛されるものではないが、例えば米国特許第3,996,299号に例示されているように、従来の実施に従って熱分解反応を実施することが考えられる。例えば、反応物質の過クラッキングの結果として、生成物の収率及び/又は変換が不十分となる場合があり、これはまた、同様に、結果的に短い実行時間及び/又は高い反応器汚染速度となる潜在的な欠点も有し、そのような操作を潜在的に商業的に実行できない可能性がある。出願人らは、本明細書に記載のプロセス範囲内で熱分解反応を操作することにより、従来の操作に関連するこれらの欠点及び他の欠点を回避することができ、また、実質的かつ重要な改善を達成できることを予想外に見出した。
【0073】
ある特定の実施形態では、熱分解は、VDF及びHFO−1234yfの量に基づいて約80%〜約90%の範囲の収率をもたらし、好ましくはVDF中:HFO−1234yfのモル比は、約1.5:1〜約0.8:1である。特定の実施形態では、熱分解は、出発物質の変換に基づいて約70%の変換率をもたらす。
【0074】
ある実施形態では、熱分解はバッチモードで行われる。あるいは、熱分解は連続モードで行われる。プロセスは、従来技術を使用して、HFO−1234yf及びフッ化ビニリデンの化合物の混合物を分離する工程を更に含んでもよい。
【0075】
1,1,2−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−シクロブタン(TFMCB)の熱分解又はクラッキングは、好適な反応器(例えば、ステンレス鋼など)において、約750℃〜約800℃の平均温度で連続的に実施して、HFO−1234yf及びVDFの両方の混合物を得てもよい。
【0076】
典型的には、ホットチューブリアクター中の未希釈シクロブタン化合物のサーマルクラッキングは、約70%の変換速度で、優れた収率(約80%〜90%の原子効率)で1234yfとVDFとの混合物を得た。約3%〜5%の未反応のHFP及びエチレンが生成物混合物中に観察された。所望であれば、この化合物の混合物は、従来の方法を用いて分離されてもよい。
【0077】
TFMCBは液体(沸点67℃)であるため、TFMCBを気化させる約100℃で操作される加熱ミキサーを介して反応器に都合よく添加される。管状反応器に窒素を最初に流し、その後、未希釈の液体TFMCBを、例えばシリンジポンプなどを介して、所定の流量で加熱域に導入する。
【0078】
実施例ではTFMCBの熱分解中、HFP及びエチレンの両方が形成され、それぞれ500℃〜900℃の範囲の温度間で約3%〜約5%で生成されたことに留意されたい。この比率は、温度、接触時間、及びキャリアガスの有無など、熱分解条件に変更を行った場合であっても、変化しなかった。この発見は、熱分解プロセスにおいてHFP及び/又はエチレン形成を開示していない、上記の米国特許第3,996,299号及び米国特許第4,086,407号の教示を考慮すると驚くべきことであった。
【実施例】
【0079】
以下に提供される実施例は、例示目的のためのものであり、TFMCBの連続生成を実証するのみのためである。
【0080】
実施例1〜5の一般的背景
ステンレス鋼パイプ状反応器(24×1.25インチ又は24×1.0インチ)に、Monel(合金400、0.16インチ)又はニッケル(合金200、サイズ0.24インチ)Propak(登録商標)蒸留カラムパッキングを充填した。この管状反応器は、安全性のための破裂ディスクアセンブリ(適切な圧力を定格にする)、並びに内部熱センサ(5点)を装備していた。反応器の上端部(垂直方向)をプレミキサーに接続し、底端部を背圧調節器に接続して、所定の圧力を維持した。管状反応器を加熱テープか、又は炉内に反応器を配置することのいずれかによって、必要な温度まで加熱した。管状反応器の加熱域は、以下に記載の全ての実施例において、長さ12インチであった。それぞれの試料ポートから試料を収集することにより、供給物と生成物との混合物をGCにより監視した。液体生成物、主にTFMCBは、反応器の底部に取り付けられたステンレス鋼シリンダ内で収集され、純度について、GCによって分析される。
【0081】
実施例1
Monel(合金400)パッキングによる、エチレンとHFPとの連続反応
エチレン(質量流量制御装置を介して245sccm)及び液体HFP(液体ポンプを介して0.61mL/分)の混合物を、760〜810psig及び335℃で3時間(接触時間約10分)、Monel Propak(登録商標)を充填したステンレス鋼製管状反応器(24×1.25インチ)に常に供給した。反応物質は、主反応器に通過させる前に、150〜180℃でプレミキサー(静的ミキサーで12×0.75インチ)を通過させた。これらの条件下で、GCによる出口ガスの分析は、HFPのTFMCBへの変換17%、及び選択性79%を示した。
【0082】
実施例2
ニッケル(合金200)パッキングによるエチレン及びHFPの連続反応
反応は、Monelの代わりに合金200(ニッケル)パッキングを使用したことを除いて、実施例1と同じ様式で実施した。これらの条件下で、GCによる出口ガスの分析では、HFPのTFMCBへの変換16%及び選択性86%を示した。
【0083】
比較例3
触媒を含まないエチレン及びHFPの連続反応
触媒パッキングを使用しなかったことを除いて、実施例1と同じ様式で反応を実施した。これらの条件下で、GCによる出口ガスの分析は、HFPのTFMCBへの変換率5%未満及び選択率85%を示した。
【0084】
実施例4
Monelパッキングによる5時間にわたるエチレンとHFPとの連続反応
エチレン(21g/時)及びHFP(84.8g/時)を、335℃及び760〜810psigで5時間、Monelパッキングを充填したステンレス鋼管状反応器(24×1.25インチ、加熱域12インチ)に連続的に供給した。接触時間は約10分であった。出口ガスのGC分析は、HFPのTFMCBへの変換14%を示した。5時間かけて、合計509gのHFPを反応器に通過させ、GCにより80% TFMCBを含有する83gの液体生成物を収集し、HFPの変換に基づいて収率80%を収集した。
【0085】
実施例5
重合阻害剤を用いたエチレン及びHFPの連続反応
エチレン(245sccm)、液体HFP(0.61mL/分)及び重合阻害剤(2,2,6,6,−テトラメチルピペリジニル−1−オキシル(TEMPO)の入ったドデカン(〜500ppm)を、361℃及び760〜810psigで3時間、Monelパッキングを充填したステンレス鋼管状反応器(24×1.25インチ、加熱域12インチ)に連続的に供給した。反応終了時に、55% TFMCBを含有する80.4gの液体を収集した。
【0086】
異なる重合阻害剤、すなわちt−ブチルカテコールを含むトルエン(〜500ppm)を349℃で阻害剤として使用することにより、前述の反応を繰り返した。反応の終了時に、TFMCBを61%含む粗生成物59gを収集した。
【0087】
実施例6〜8の一般的背景
a)供給システム:エチレンは、Bronkhost(商標)質量流量制御装置(mass flow controller、MFC)を介して、圧力差(ΔP〜50psig)により、圧縮ガスシリンダから反応に供給した。Cシリンダ上のレギュレータを、動作圧力よりも高い約50psigの圧力に設定した。MFCを、ステンレス鋼編組線で供給マニホールドに接続した。使用されていないときは、供給マニホールド内の弁により、エチレン供給を隔離した。第2のエチレンシリンダを使用して、事前にシステムのパッド付けを行い、所望の動作圧力よりもわずかに低くなるように(10〜20psig)して、起動時間を短縮した。一酸化窒素(窒素中2%)は、レギュレータ及びBronkhorst質量流量制御装置(MFC)を通って供給マニホールドに供給された。
【0088】
ヘキサフルオロプロペン(HFP)は、高性能液体定量ポンプ(Eldex Optos 2HM)を介してマニホールドに液体として供給した。HFPを含む2つの1リットルステンレス鋼製シリンダ(それぞれ〜1000g)には、〜400psigになるまで窒素を加えた。3方向弁により、HFPの供給を、供給源シリンダ間で切り替えることができた。Swagelok(商標)15マイクロメートルのフィルタ及び逆止弁は、ライン内にあった。ポンプへの入口管を冷却機(〜0℃)で冷却した。HFPは、エチレン及び阻害剤入口弁のわずかに前方の供給マニホールドに入った。
【0089】
供給マニホールドは、静的ミキサーを備えた3/4インチスケジュール80ステンレス鋼管から入った。静的ミキサーアセンブリを加熱テープで150℃〜200℃の温度まで加熱し、繊維ガラス布断熱材で包み、熱損失を制限した。単一点型「J」熱電対を静的ミキサーの開始部及び終了部に挿入した。温度データは、HP DataLinkシステムで収集した。システム圧力は、静的ミキサーの直前に供給マニホールドに配置された2000psigステンレス鋼圧力計から監視した。
【0090】
b)反応器システム:予熱済みの供給材料は、静的ミキサーから出て、縦型反応器に向かって流れた。反応器は、24インチ長である、1インチスケジュール80ステンレス鋼管である。使用された全てのパイプ継手は、スケジュール80であった。安全対策として、反応器の頂部に、1/2インチInconel 1500psig破裂ディスクを装備した。全ての嵌合部、パイプ、管、及び装置は、1500psigを超える圧力を定格とした。
【0091】
反応器に、154cmの合金200、0.24インチPro−Pak(登録商標)突出金属パッキングを充填した。熱電対の活性域は、154cc触媒床にある。管状反応器内の内部温度の読み取り値は、触媒床(それぞれ1/2インチ、3インチ、6インチ、9インチ、及び12インチ)に沿って3インチ離れたところにセンサを有する5点型「J」熱電対(36インチ×1/4インチステンレス鋼)に接続されたHP DataLinkシステムにより収集した。触媒は、触媒床の頂部及び底部に、少量のニッケルメッシュで定位置に保持した。熱損失を制限するためにファイバーガラス布地で包まれた加熱テープによって反応器を所望の温度まで加熱し、その温度に維持した。ドレイン弁として機能する、反応器の底部に1/4インチSwagelok(商標)ボール弁が存在した。これは、維持中のみ使用され、他の時間は全て閉じたままであった。反応器内の圧力を、Equilibar(商標)ダイヤフラム型の背圧調節器(BPR)で制御/維持した。
【0092】
c)生成物の収集:BPRから出て、ステンレス鋼Pro−Pak(登録商標)が充填された30インチジャケット付きステンレス鋼カラムによって1/2インチに入った。カラムを0℃まで冷却した。より多くの副生成物を濃縮し、250ccのステンレス鋼製の2重端シリンダ(doubled ended cylinder)内で収集し、所望であれば反応中に分離させて排出させることができる。蒸気は、圧力計及びシリンダの半分の点まで延在するディップチューブを装備している1ガロンのドライアイストラップまで続く。TFMCB及びHFPの大部分をここで収集した。第2のトラップ(1L、圧力計を有する)は、第1のトラップから逃れたあらゆるHFPを収集した。典型的には、エチレンは排気されたか、又は液体窒素トラップ内で凝縮され得る。
【0093】
d)試料採取:蒸気試料を2つの別個の点で採取した。供給混合物の試料は、静的ミキサーの後であるが、反応器の直前に採取することができる。2つの弁の間に少量の材料を捕捉するために、1対の1/4インチステンレス鋼Swagelok(商標)ボール弁を順に使用した。第2の弁を開いて、材料を300立方センチメートルのステンレス鋼シリンダに通した。
【0094】
分析のために、気相中の反応生成物を収集し、デジタル圧力計を有するステンレス鋼シリンダをBPR後に試料採取ループ内に設置した。所望であれば、1/4インチステンレス鋼Swagelok(商標)ボール弁を閉じて、試料シリンダを通る流出を導くことができる。試料採取シリンダの出口弁を閉じ、圧力が〜20psigに達するまでシリンダを充填した。次いで、上流弁を閉じ、1/4インチステンレス鋼Swagelok(商標)ボール弁を再び開き、流路を復元した。
【0095】
e)分析−GC:気相試料をCryo GC[モデルHP5890A、FID装備、及びRestek(商標)RTX1カラム105m長動作条件:初期温度−55℃、ランプ15℃/分、150℃(保持なし)及び25℃/分〜180℃(5分間保持)及び実行時間、29.37分]で分析した。TFMCBの液体試料を、通常のGC[モデルHP5890A、FID装備及びRestek(商標)RTX1カラム105m長;条件は以下のとおり:初期温度=60℃で1分、ランプ7℃/分〜200℃(200℃で5.5分間保持)及び総実行時間=27.5分]で実行した。気相GC成分は、BRL分析部門によって体積/モル%に正規化/較正されたことに留意されたい。粗液体生成物中のTFMCBのGC純度%を、重量測定(蒸留)及びNMR(H及び19F)分析により検証した。
【0096】
実施例6
オリゴマー化/重合(OP)阻害剤の非存在下でのHFP及びエチレンの連続反応
ヘキサフルオロプロペン(HFP)及びエチレンを、重合阻害剤を使用せずに、触媒床[触媒=合金200、温度=343℃、圧力=800〜850psig、HFP対エチレン比=1:2、及び接触時間=10分]上の加熱管に連続的に10時間通過させた。これらの条件下で、選択性84%、変換率34%でTFMCBを生成した。精度3%内の質量収支が観察された。
【0097】
実施例7
重合触媒の存在下でのHFP及びエチレンの連続反応
ヘキサフルオロプロペン(HFP)及びエチレンを、オロゴマー化(ologomerization)/重合(OP)阻害剤(一酸化窒素)と共に、触媒床[触媒=合金200、温度=330℃、圧力=800〜850psig、HFP対エチレン比=1:2、及び接触時間=15分]上の加熱管に連続的に、それぞれ3時間及び10時間通過させた。これらの条件下で、選択性は91〜94%の範囲であり、変換率9〜11%であった。したがって、選択性は、気相オリゴマー化/重合(OP)阻害剤の使用により改善することができる。
【0098】
実施例8
HFP及びエチレンの連続反応−4.5日間にわたるTFMCBの連続生成
ヘキサフルオロプロペン(HFP)及びエチレンを、オリゴマー化/重合(OP)阻害剤(一酸化窒素)と共に、触媒床[触媒=合金200、温度=322℃、圧力=840〜850psig、HFP対エチレン比=1:1.5、及び接触時間=12分]上の加熱管に、連続して4.5日間通過させた。選択性91%、変換率12%でTFMCBを得た。
【0099】
比較例9
TFMCBの非触媒バッチ生成。
1000mLのステンレス鋼シリンダに、0.6gのt−ブチルカテコールを入れ、窒素を用いてシリンダを3回排気させる。次に、52.0gのHFP及び11.6gのエチレン(モル比1/1.19)をシリンダで縮合させた。シリンダを72時間、242℃〜250℃まで加熱し、反応終了時に内側圧力を600psi〜500psiまで低下させた。未反応のHFP及びエチレンを別個のシリンダ(39.6g)で回収し、真空によって反応器から19.6gの生成物を取り除いた。GC分析は、96.58%純粋なTFMCBを示した。
【0100】
比較例10
TFMCBの非触媒バッチ生成。
2Lのステンレスシリンダに1.01gのt−ブチルカテコールを入れ、窒素によりシリンダを3回排気した。次に、50.0gのHFP及び56.5gのエチレンをシリンダで縮合させた。シリンダを1時間、320℃〜329℃まで加熱し、反応終了時に内圧を700psi〜500psiまで低下させた。未反応のHFP及びエチレンを別個のシリンダ中で回収し(75.8g)、TFMCB生成物(29.4g)を反応器からデカントした。
【0101】
GC分析は、94.34%純度(HFPに基づいて収率46.2%)を示した。カラムを通して更に蒸留して、99.8%純粋な1,1,2−トリフルオロ−2−トリフルオロメチル−シクロブタン(TFMCB)を得た。H−NMR(CDCl)2.62ppm(m,1H),2.45ppm(m,2H),2.24ppm(m,1H);19F−NMR(CDCl)−80.70ppm(dt,J=9.3,2.5Hz,CF)、−101.0ppm(dm,J=212.9Hz,1F)、−114.73ppm(dtm,J=211.9,16.2Hz,1F)、−176.37ppm(m,1F)。
【0102】
比較例11
TFMCBの非触媒バッチ生成。
2Lのステンレスシリンダに1.10gのt−ブチルカテコールを入れ、窒素によりシリンダを3回排気した。次に、算出された量のHFP及びエチレンをシリンダで縮合させた。シリンダを様々な期間、指定温度まで加熱した。結果を以下の反応表Iに列挙した。
【0103】
【表I】
【0104】
比較例12
TFMCBの非触媒バッチ生成
1ガロンのステンレスシリンダに、60mgのt−ブチルカテコール(200ppm)を入れ、窒素を用いてシリンダを3回排気させる。次に、140.7gのHFP及び159.0gのエチレン(モル比1/6.05)をシリンダで縮合させた。シリンダを1時間320℃〜329℃まで加熱し、反応終了時に内圧を800psi〜600psiまで低下させた。未反応のHFP及びエチレンを別個のシリンダ(174.5g)で回収し、121.7gの生成物を反応器からデカントした。GC分析は、78.10%のTFMCBを示し、GC及びGCMS分析によれば、エチレンオリゴマーからの副生成物は21.40%であった。
【0105】
実施例13
TFMCBの熱分解
蒸留TFMCB(495g、99.6%)の熱分解を炉内の加熱ステンレスパイプ反応器内で実施した(表IIを参照されたい)。反応器を800℃で30分間加熱して、平衡化させ、窒素でフラッシュした。液体1,1,2−トリフルオロ−2−(トリフルオロメチル)−シクロブタンを、プログラムされたシリンジポンプを用いて加熱域(100℃)に導入した。
【0106】
シクロブタンの流れが開始されると、窒素流をオフに切り替えて、熱分解を連続モードで行った。得られた熱分解生成物を、冷却された1ガロンのステンレス鋼シリンダ内に収集した。GCによる生成物の監視を反応の開始及び終了時に行った。詳細を以下の表IIに要約する。
【0107】
【表II】
【0108】
表IIに示すように、直径0.375インチ及び長さ12インチの寸法を有し、10.85cmの加熱域のある実験室規模の反応器をステンレス鋼から作製した。示されるように、TFMCBの流量は、熱分解反応のために5秒の接触時間とした。収集容器も、ステンレス鋼から作製され、反応生成物混合物の収集中に液体窒素で冷却した。
【0109】
反応器は、生成することを目的として、非常に多量のTFMCBに熱分解反応を実施するために好適な構造材料を使用しており、非常に大きくなる。反応温度は、実験室規模の反応器で用いられるものと異なってもよい。1234yf/VDFのHFP/エチレンに対する生成物組成は変化しないが、TFMCBの変換は、動作温度の変化によって影響されることが予想される。生成プラントでは、キャリアガスは使用されないことが予想される。最後に、生成プロセスにおいて、収集容器は非常に大きくなり、冷却は、冷水などの代替手段によってもたらされる。生成プラントでは、反応器から出た生成物ガスは、蒸留又は更なる処理の前に、加圧された貯蔵容器内に圧縮されることが予想される。
【0110】
比較例14A及び14B
1A.実施例13の精製TFMCB(3.0g)を、加熱したステンレス管状反応器に800℃、0.5mL/分で、通過させた。反応管は、13.0cmの反応域長を有する1.5cmの直径を有し、6.8gのInconel 625メッシュで充填した。ヘリウムキャリアガス(66.7mL/分)との接触時間は、14.1秒であり、3.0gの生成ガスが収集された。GC分析では、エチレン3.8%、VDF 48.7%、HFP 3.3%、及び1234yf 44.2%を示した。
【0111】
1B.反応温度を750℃まで下げ、3.79gのTFMCBを、接触時間32.4秒で管に通過させた。3.78gの生成物を回収した。GC分析では、エチレン3.8%、VDF 48.9%、HFP 3.2%、及び1234yf 44.1%を示した。
【0112】
実施例15
様々な温度及び接触時間で多数の反応を実施した。典型的には、反応は、未希釈の1,1,2−トリフルオロ−2−(トリフルオロメチル)−シクロブタンを、加熱炉内に配置させたステンレス管/パイプ反応器に通過させることによって実施した。これらの結果を以下の表IIIに示す。
【0113】
【表III】
【0114】
表IIIに示すように、VDFとHFPとの比は比較的一定であり、約2〜5%の未反応のHFP及びエチレンが残った。
【0115】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈がそうでない旨を明確に指示しない限り、複数形を含む。更に、量、濃度、又は他の値若しくはパラメータが、範囲、好ましい範囲、又は上方の好ましい値と下方の好ましい値との列挙のいずれかとして与えられるとき、これは、範囲が別々に開示されているかどうかにかかわらず、任意の上限範囲又は上方の好ましい値と任意の下限範囲又は下方の好ましい値との任意の対から形成される全ての範囲を具体的に開示しているものとして理解されるべきである。数値の範囲が本明細書に列挙されている場合、特に明記しない限り、範囲は、その端点、並びに範囲内の全ての整数及び端数を含むことが意図される。本発明の範囲は、範囲を定義するときに列挙される特定の値に限定されることを意図するものではない。
【0116】
以上から、例示の目的のために具体的な実施例が記載されてきたが、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができることが理解されるであろう。したがって、前述の発明を実施するための形態は、限定ではなく例示的なものとみなされることが意図されており、これは、特許請求される主題を特に指摘し明確に請求することを意図した全ての等価物を含む、以下の特許請求の範囲であることを理解されたい。
本明細書は以下の発明の態様を包含する。
[1]
1,1,2−トリフルオロ−2−(トリフルオロメチル)シクロブタン(TFMCB)を生成するためのプロセスであって、
ヘキサフルオロプロペン及びエチレンを反応容器に導入する工程と、
前記ヘキサフルオロプロペン及びエチレンを、少なくとも1つのオリゴマー化/重合(OP)阻害剤及び少なくとも1つの金属触媒の存在下において前記反応容器内で反応させる工程と、を含む、プロセス。
[2]
前記プロセスが連続プロセスであり、前記反応させる工程後、追加の工程である、
前記反応容器からTFMCB生成物を取り出す工程と、
前記導入する工程、反応させる工程、及び取り出す工程(a)〜(c)を繰り返す工程と、を更に含む、[1]に記載のプロセス。
[3]
前記反応させる工程後、追加の工程である、
前記反応容器から未反応のヘキサフルオロプロペン及び未反応のエチレンのうちの少なくとも1つを取り出す工程と、
未反応のヘキサフルオロプロペン及び未反応のエチレンのうちの前記少なくとも1つを前記反応容器に戻して再循環させる工程と、を更に含む、[1]に記載のプロセス。
[4]
前記反応させる工程後、追加の工程である、
前記反応容器から未反応のヘキサフルオロプロペン及び未反応のエチレンを取り出す工程と、
前記未反応のヘキサフルオロプロペン及び未反応のエチレンを前記反応容器に戻して再循環させる工程と、を更に含む、[1]に記載のプロセス。
[5]
前記金属触媒が、ニッケル及びニッケル系合金からなる群から選択される、[1]に記載のプロセス。
[6]
前記オリゴマー化/重合(OP)阻害剤が、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)、一酸化炭素(CO)及び二酸化硫黄(SO)からなる群から選択される少なくとも1つの気相化合物を含む、[1]に記載のプロセス。
[7]
前記オリゴマー化/重合(OP)阻害剤が、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシルである、[1]に記載のプロセス。
[8]
前記オリゴマー化/重合(OP)阻害剤が、カテコール及びカテコール誘導体、テルペン、キノン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、[1]に記載のプロセス。
[9]
前記オリゴマー化/重合(OP)阻害剤が、前記反応容器中の反応組成物の総重量に基づいて、約50重量ppm〜約2,000重量ppmで存在する、[1]に記載のプロセス。
[10]
前記オリゴマー化/重合(OP)阻害剤が、前記反応容器中の反応組成物の総重量に基づいて、約500ppm〜約1,000ppmで存在する、[1]に記載のプロセス。
[11]
前記反応させる工程が、600psig〜1500psigの圧力で実施される、[1]に記載のプロセス。
[12]
前記反応させる工程が、800psig〜1200psigの圧力で実施される、[1]に記載のプロセス。
[13]
前記反応させる工程が、300℃〜500℃の温度で実施される、[1]に記載のプロセス。
[14]
前記反応させる工程が、300℃〜400℃の温度で実施される、[1]に記載のプロセス。
[15]
前記反応させる工程中、前記ヘキサフルオロプロペン及びエチレンが、1:1〜1:6のモル比で存在する、[1]に記載のプロセス。
図1
図2