特許第6968186号(P6968186)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6968186付加製造プロセスに基づくレーザ粉末堆積において不確定性に起因して生じる形状誤差をロバストに低減する方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6968186
(24)【登録日】2021年10月28日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】付加製造プロセスに基づくレーザ粉末堆積において不確定性に起因して生じる形状誤差をロバストに低減する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/386 20170101AFI20211108BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20211108BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20211108BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20211108BHJP
   B22F 10/25 20210101ALI20211108BHJP
   B22F 10/85 20210101ALI20211108BHJP
【FI】
   B29C64/386
   B29C64/153
   B33Y10/00
   B33Y50/00
   B22F10/25
   B22F10/85
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-548998(P2019-548998)
(86)(22)【出願日】2018年3月8日
(65)【公表番号】特表2020-510555(P2020-510555A)
(43)【公表日】2020年4月9日
(86)【国際出願番号】US2018021477
(87)【国際公開番号】WO2018165381
(87)【国際公開日】20180913
【審査請求日】2019年11月7日
(31)【優先権主張番号】62/469,587
(32)【優先日】2017年3月10日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517291346
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】イー シュー
(72)【発明者】
【氏名】サンジーヴ スリヴァスタヴァ
(72)【発明者】
【氏名】ルチア ミラベッラ
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド メイドリー
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−097679(JP,A)
【文献】 特開2005−2472(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0263833(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0046076(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0331402(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00−64/40
B22F 1/00−12/90
B33Y 10/00,30/00,50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造(AM)プロセスを最適化する方法であって、
最適化プロセッサにおいて、前記付加製造プロセスにおいて作成される物体における形状とは異なる前記付加製造プロセスの少なくとも1つの設計パラメータを受け取るステップと、
前記最適化プロセッサにおいて、前記付加製造プロセスの少なくとも1つの別のパラメータにおける不確定性に関連する情報を受け取るステップと、
前記少なくとも1つの設計パラメータと不確定性に関連する前記情報とに基づき、前記最適化プロセッサにおいて不確定性定量化を実施して、前記付加製造プロセスにおいて作成される物体における形状誤差を特定するステップと、
前記付加製造プロセスの前記少なくとも1つの設計パラメータを更新するステップと、
前記更新された少なくとも1つの設計パラメータを前記付加製造プロセスにおいて使用するステップと、
を含み、
作成される物体における形状誤差を特定するステップは、
受け取った前記少なくとも1つの設計パラメータと不確定性に関連する前記情報とに基づき、前記付加製造プロセスのシミュレーションを繰り返し実行して、計算された形状誤差を生成するステップと、
反復のたびに前記形状誤差を定量化するステップと、
信頼性のある形状誤差が得られたならば、反復を停止するステップと、
を含む、
付加製造(AM)プロセスを最適化する方法。
【請求項2】
当該方法はさらに、前記付加製造プロセスの前記少なくとも1つの別のパラメータにおける不確定性に関連する前記情報を確率データとして受け取るステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記確率データは確率分布を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記確率分布は、ガウスノイズに基づく正規分布をとる、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記確率分布は、観察された認識に基づく確率分布関数から導出される、請求項3記載の方法。
【請求項6】
当該方法はさらに、前記付加製造プロセスを3次元(3D)プリンティング装置において実施することを含む、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記3Dプリンティング装置は、レーザ粉末堆積を実施するように構成されている、請求項記載の方法。
【請求項8】
不確定性定量化の実施および前記少なくとも1つの設計パラメータの更新するステップを、前記付加製造プロセスの開始に先立ち行う、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許法第119条(e)に基づき、"METHOD FOR ROBUST REDUCTION OF SHAPE ERROR IN LASER POWDER DEPOSITION BASED ADDITIVE MANUFACTURING PROCESS, BASED ON OPTIMIZATION UNDER UNCERTAINTY"の名称で2017年3月10日に出願された米国仮特許出願第62/469,587号に対する優先権を主張するものである。その開示内容はすべて、ここで参照したことにより本願の開示内容に含まれるものとする。
【0002】
技術分野
本願は付加製造プロセスに関する。
【0003】
背景
付加製造(AM)は、コンピュータ制御のもとで材料を結合または凝固して3次元(3D)物体を生成するプロセスを伴う。作成すべき物体を任意の形状のものとすることができ、コンピュータ支援設計(CAD)またはコンピュータ支援エンジニアリング(CAE)のツールなど、コンピュータ支援によるプロセスまたはアプリケーションを利用して、設計を行うことができる。付加製造ファイル(AMF)など他のコンピュータベースのファイルによれば、順次連続する材料層が組み合わさって3D物体形状全体が規定されるという観点から、3D物体が定義される。AMFが3Dプリンタまたは付加製造装置に供給されると、3Dプリンタ装置が層ごとに材料を逐次加えて所望の3D物体を構築できるようにする情報が、AMFによってもたらされる。
【0004】
AMの1つの方法によれば、順次連続する層を生成するためにレーザが用いられる。レーザ粉末堆積(LPD)または指向性レーザ堆積の場合、付加的な材料を加えるべき箇所で、レーザによって金属基板のごく一部が溶融される。ノズルを用い新たな材料を含む粉末が、圧力の加えられた不活性ガスを利用して、基板に生成された溶融プールに向けて案内される。次いで粉末および溶融プールを凝固させて、新たな基板を生成することができる。所望の3D物体を作成するために、順次連続する層各々に対しこのプロセスが繰り返される。
【0005】
コンピュータ支援ツールを用いることで、3D物体のために最適化された設計を生成することができる。理想的な条件下であるならば、3Dプリンティング装置は最適化された設計を実行して最適化された最終製品を生成するであろう。実際には、製品が最適化された設計と正確に合致するのを妨げる正常変動が発生する。製造用途であればこのことにより、作成された部品とそれらの部品に対応づけられた設計との不一致からだけでなく、3Dプリンティング装置に影響を及ぼす周囲環境要因に起因して個々の部品間に生じる変動からも、部品品質の問題が発生する。レーザパワー、レーザと基板との距離(スタンドオフ距離)、ノズルと溶融プールとの距離、レーザ移動速度、粉末供給レートなどの様々なパラメータ、ならびに周囲の温度、湿度および振動などの周囲環境条件がすべて、AMプロセスにおける変動に関与する可能性がある。しかもこれらおよびその他の変動原因は各々、不確定性を伴う要因によって影響を受ける。不確定であるため、これらの作用を設計により取り除き、設計中および製造作業段階中に最適化することができない。しかも、変動に含まれる不確定性に起因して、3Dプリンティング装置を調節するなど、他の最適化技術を見越して行うことができない。
【0006】
従来、オフライン状態中の決定論的最適化によって、または観察可能なまたは導出されたプロセス痕跡(たとえば目視可能または測定可能な痕跡)に着目して、プリンティングプロセス中に開ループ制御または閉ループ制御することによって、変動に対処してきた。ただしこれらのアプローチでは、時間の経過と共に変動するという特性を有する不確定性に対処することができない。よって、AMプロセスにおける不確定性に対処するように改善された方法およびシステムが望まれる。
【0007】
概要
本明細書で説明する実施形態の態様によれば、付加製造(AM)プロセスを最適化する方法は、最適化プロセッサにおいて、付加製造プロセスの少なくとも1つの設計パラメータを受け取ること、付加製造プロセスの少なくとも1つの別のパラメータにおける不確定性に関連する情報を受け取ること、少なくとも1つの設計パラメータと不確定性に関連する情報とに基づき、最適化プロセッサにおいて不確定性定量化を実施して、付加製造プロセスにおいて作成される物体における形状誤差を特定すること、付加製造プロセスの少なくとも1つの設計パラメータを更新すること、および更新された少なくとも1つの設計パラメータを付加製造プロセスにおいて使用することを含む。
【0008】
付加製造プロセスの少なくとも1つの別のパラメータにおける不確定性に関連する情報を、確率データとして受け取ることができる。確率データを確率分布の形態にあるものとすることができる。一部の実施形態によれば確率分布は、ガウスノイズに基づく正規分布をとる。別の実施形態によれば確率分布は、観察された認識に基づく確率分布関数から導出される。
【0009】
作成される物体における形状誤差を特定することはさらに、受け取った少なくとも1つの設計パラメータと不確定性に関連する情報とに基づき、付加製造プロセスのシミュレーションを繰り返し実行して、計算された形状誤差を生成するステップと、反復のたびに形状誤差を定量化するステップと、信頼性のある形状誤差が得られたならば、反復を停止するステップとを含むことができる。本開示で説明する実施形態による付加製造プロセスは、3次元(3D)プリンティング装置において付加製造プロセスを実施することを含むことができる。3Dプリンティング装置は、レーザ粉末堆積を実施するように構成されている。本発明の実施形態の態様によれば、付加製造プロセスの開始に先立ち、不確定性定量化が実施され、少なくとも1つの設計パラメータが更新される。
【0010】
付加製造(AM)プロセスを最適化するシステムは、付加製造プロセスによって製造すべき物体のために少なくとも1つの設計パラメータを生成するように構成された設計プロセッサと、最適化プロセッサとを含み、この最適化プロセッサは、少なくとも1つの設計パラメータを受け取り、付加製造プロセスの少なくとも1つのプロセスパラメータにおける不確定性を表す情報を受け取り、製造すべき物体における形状誤差を特定し、特定された形状誤差に基づき少なくとも1つの設計パラメータを更新するように構成されている。このシステムはさらに3次元(3D)プリンティング装置を含むことができ、この3次元(3D)プリンティング装置は、少なくとも1つの設計パラメータを受け取り、この少なくとも1つのパラメータに基づき製造すべき物体を作成するように構成されている。
【0011】
実施形態によれば3Dプリンティング装置はさらに、製造中に測定値を取得してそれらの測定値を最適化プロセッサに供給するように構成された測定装置を含むことができ、この場合、最適化プロセッサは受け取った測定情報を使用して、形状誤差を最小化するために少なくとも1つのパラメータを再計算し、再計算された少なくとも1つのパラメータを3Dプリンティング装置に伝達する。
【0012】
一部の実施形態によれば3Dプリンティング装置は、レーザ粉末堆積(LPD)を実施するように構成されている。
【0013】
少なくとも1つのプロセスパラメータにおける不確定性を表す情報を、不確定性に起因する製造誤差の確率分布の形態にあるものとすることができる。少なくとも1つの設計パラメータは、付加製造装置におけるレーザパワーと付加製造装置におけるレーザ移動速度のうち少なくとも一方を含み、少なくとも1つのプロセスパラメータの不確定性情報を、付加製造装置のレーザと製造すべき物体との距離により決定されるスタンドオフ距離とすることができる。最適化プロセッサをさらに、受け取った少なくとも1つの設計パラメータと不確定性情報とを用いて、付加製造プロセスのシミュレーションを実行し、付加製造プロセスのシミュレーション中に形状誤差を繰り返し計算するように構成することができる。最適化プロセッサはさらに、各反復中に不確定性情報に基づき不確定性を定量化することができる。最適化プロセッサは、形状誤差を求めるために不確定性情報からのサンプル数を選択することができ、シミュレーションセットを実施し、ただし各シミュレーションはそれぞれ異なるサンプル数に基づくものであり、各シミュレーションについて平均期待誤差と誤差範囲とを求め、誤差範囲が予め定められた閾値よりも小さい最小サンプル数を有するシミュレーションに対応するサンプル数を選択する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
以下の詳細な説明を添付の図面を参照しながら読めば、本発明の前述の態様およびその他の態様の理解が最も深まる。本発明を例示する目的で、図面には現時点で好ましい実施形態が示されているけれども、本発明は開示された特定の手段に限定されるものではないことを理解されたい。図面には以下の図が含まれている。
図1】本開示の実施形態の態様に従いAMプロセスを最適化するためのプロセスを示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態の態様に従い形状誤差を確実に特定する目的でサンプル数を求めるためのグラフを示す図である。
図3】本発明の実施形態の態様に従いAMプロセスを最適化するシステムを示す図である。
図4】本開示の実施形態の態様に従いAMプロセスを最適化する方法を示すプロセスフローチャートである。
図5】本開示の実施形態の態様に従いAMプロセスを最適化する方法を実施するコンピュータシステムを示す図である。
【0015】
詳細な説明
寸法および形状の誤差、不所望な有孔率、層の剥離、ならびに不十分なまたは不定の材料特性を含む部品品質の問題によって、AMの普及は困難な状況となっている。指向性レーザ堆積としても知られるレーザ粉末堆積(LPD)は、学術研究および産業用途において注目度が増してきたAMプロセスである。一般的にLPDは、新たな材料が被加工物に加えられる箇所で、レーザにより金属基板のごく一部を最初に溶融することによって動作する。次に、材料の粉末がノズルから溶融プールに噴射される。粉末は、ノズルを通して導かれる不活性ガス流を用いて案内される。堆積させられた粉末および溶融プールが凝固して、新たな基板が形成される。
【0016】
LPDプロセスの場合、出力された物体の最終的な形状および特性は、他にもいろいろある中で、レーザパワー、レーザが移動する速度、粉末供給レート、ノズルと基板との距離、またはレーザと基板との距離(たとえばスタンドオフ距離)など、多くの要因によって影響を受ける可能性がある。たとえばレーザパワーによって、溶融プールの温度およびサイズを決定することができる。同様に材料供給レートおよびレーザ移動速度によって、目下のAMプロセスステップにおいてワークピースに加えられる新たな材料の量を決定することができる。
【0017】
これに加え、スタンドオフ距離およびステップオーバー距離(堆積の各ライン間の距離)など他のパラメータも、プリントされる部品の形状および品質全体に作用を及ぼす。3Dプリンタにおいてプリンティングプロセス開始時に多数のパラメータを設定することができ、これらのパラメータはプリンティングプロセス中、一定であるとみなされる。実際にはこれらのパラメータは、AMプロセス中に進行する基板の形状における変化に起因して、絶えず変動する。周囲環境要因には、温度および湿度の変化、材料特性の変化、または機器の公差、ならびに振動などのノイズが含まれ、これらの要因によって、設計されたものと実際に作成されたものとの間に重大な相違が引き起こされる可能性がある。このため、作成される部品の望ましい形状および品質を考えるならば、変動およびノイズにより不確定性が引き起こされることから、それらを考慮する目的で設計およびプロセスのパラメータにおいて最適化の必要性が生じる。AMプリンティングプロセス中に入り込む不確定性という観点において、AMプロセス中に最適化を実施することができる。
【0018】
前述の困難な課題に鑑み、また、望ましい部品の形状および品質を保証してLPDなどAM技術の普及を促進するために、以下のことに対処するのが重要である。すなわち、
・AMプロセスパラメータとプロセス/部品特性との間の相関関係を確立する。
・プリンティングプロセス開始前に不確定のプロセスパラメータの最適値を決定する。
・プリンティング進行中、センサ測定からのフィードバックに基づきプロセスパラメータを調節する。
【0019】
本開示で説明する方法およびシステムは、AMプリンティングプロセス開始に先立ち、プロセスパラメータにおける不確定性に対処する最適値を決定するために、第2および第3の項目に対処しようというものである。この問題に対する従来のアプローチは、オフライン段階中の決定論的最適化プロセスを含むことができる。プリンティングプロセス中、溶融プールの形状および温度など可視のプロセス痕跡、または溶融プールの深さおよび残留応力など分析的なモデリングまたはシミュレーションにより求められる導出されたプロセス痕跡の観察を通して、開ループ制御または閉ループ制御が実施される。
【0020】
本開示の実施形態においては、所望のまたは設計された物体形状とプリントされた実際の形状との間の形状相違を最小化するための方法について説明する。実際の状況では、すべてではないにしてもほとんどのパラメータが、ある程度の不確定性を有する。ノイズの原因には、プリンティング機器稼働中の温度および湿度の変化など周囲環境の不確定性、ならびに限られた機器精度(たとえば公差)および基板振動など機器の不確定性が含まれる可能性がある。これらの不確定性によって、たとえ最適な処理パラメータを計算するために使用されるプロセスモデルが正確であるとみなされていても、出力された作成物と設計との間に不一致が引き起こされる。本開示の実施形態によれば、上述の困難な課題は、不確定性のもとでのオフライン最適化(offline optimization under uncertainties, OUU)を介して対処される。
【0021】
実施形態によれば、OUUの出力を決定論的最適化と区別することができる。決定論的最適化は、すべての設計パラメータに対応する決定論的値セットを使用する。OUUの場合、少なくとも一部のパラメータが、決定論的最適化の場合のように一定に保持されているのではなく、確率分布の形態で不確定性を認識する。一部の実施形態によれば、1つの共通する前提は、所与のパラメータがガウスノイズ(たとえば正規分布)の影響を受けている、ということである。別の実施形態によれば、(たとえば過去の経験から)ノイズに関して十分な認識が得られる箇所で、もっと複雑な確率密度関数(PDF)を考慮することができる。パラメータに関連する不確定性を、不確定性定量化(UQ)のアプローチによって、最適化の目的関数に伝達することができる。よって、OUUの目的は、目的関数の期待値を最小化することである。
【0022】
次に1つの例について説明する。この場合、レーザパワーおよびレーザ速度が設計パラメータとして想定されている一方、スタンドオフ距離は何らかのタイプの確率分布の特性を有する。このケースにおいてOUUの目標は、スタンドオフ距離の不確定性に起因する予期される形状領域相違(ΔAで表される形状誤差)が最小化されるように、レーザ速度およびレーザパワーを最適化することである。このシナリオは非制限的な例として与えられたものであるが、当業者であれば、1つまたは複数のプロセス設計パラメータあるいはそれらの組み合わせに関して、この方法を使用できることを理解するであろう。この方法を、種々の設計されたプロセスパラメータ、不確定なパラメータおよび目的関数と共に使用することができる。
【0023】
図1は、本開示の実施形態によるスタンドオフ距離の不確定性に関するレーザパワーおよびレーザ速度の最適化ワークフローを示すプロセスフローチャートである。1つまたは複数の設計パラメータ101が選択される。選択された設計パラメータ101に関して、レーザポジションまたはスタンドオフ距離などのパラメータ105における不確定性の観点で、不確定性定量化プロセス103が実施される。選択された設計パラメータ101およびパラメータ105における不確定性を用い、AMプロセスのシミュレート107が行われる。ここで前提とするのは、パラメータ105における不確定性は確率分布関数に従う、ということである。シミュレーション107は、形状誤差ΔA 109の値を計算するために実施される。形状誤差109に基づき不確定性の再定量化103が行われ、不確定パラメータ105が、不確定パラメータ105のPDFを介してシミュレートされる。UQ103のループは、ΔA 109の信頼性のある値が見つけられるまで続けられる。期待形状誤差111が最適化関数113に供給される。最適化関数113は、入力として形状誤差ΔAをとる次の設計パラメータ101のセットを選択する。設計パラメータ101のために最適化された出力が不確定パラメータ105に基づき生成されるまで、このプロセスの反復115が行われる。複数回実施された反復に基づき、または最適化された設計パラメータ101が収束するまで、最適化された出力を求めることができる。目下の反復と先行の反復との間における設計パラメータ101の変化が、予め定められた何らかの閾値よりも小さければ、収束と判断することができる。最適化113の目標は、形状誤差ΔA 109を最小化することである。
【0024】
形状相違領域の期待値を取得するために、不確定パラメータ105がその確率分布に基づきサンプリングされる。1つの例示的なサンプリング方法は、均一なサンプリングによるものである。例として挙げると、不確定性(ノイズ)がガウス状である不確定領域の標準偏差の−2倍から+2倍までの範囲にわたって、不確定量を均一にサンプリングすることができる。このケースでは、形状相違領域の予期される関数値は
【数1】
であり、ただしpは各サンプリングポイントの確率、fはそのポイントに対する関数値、さらにNはサンプリングポイント数である。
【0025】
図2は、本開示の一部の実施形態の態様に従い、必要とされるサンプリングポイント数を決定するための分析について示す図である。水平軸201上に示されているサンプリングポイント数は、対数的に変化する。サンプリングポイント10の種々の個数について、シミュレーション203a〜jのセットを実施して関数を求め、各セットについて期待誤差を求めることができる。期待誤差の平均205と誤差範囲207とが計算される。誤差のバーの長さが所与の閾値よりも短ければ、対応する個数のサンプル201で十分であると決定することができる。たとえば1つの実施形態によれば、シミュレーション203hに対応する2個のサンプルであれば、不確定性定量化を実施するために妥当なサンプル数がもたらされることになる。
【0026】
本開示の実施形態による方法によれば、周囲環境要因または機器の変動に起因して不確定性の影響を受けるプロセスパラメータについて、確率分布に基づき形状または形態の誤差を低減するために、付加製造プロセスのパラメータの統計的最適化がもたらされる。
【0027】
図3は、本開示の実施形態の態様に従い、AMプロセスにおける形状誤差を低減するためのシステム300を示す図である。このシステムは3Dプリンティング装置301を含む。3Dプリンティング装置301を、LPD付加製造を実施するように構成することができる。設計プロセッサ311によって設計者は、設計パラメータ310を3Dプリンティング装置301に供給することができ、これらの設計パラメータによって、3Dプリンティング装置301が所望の物体305を生成できるようにする処理パラメータが提供される。たとえば設計パラメータ310は、レーザ移動速度307およびレーザパワー309など3Dプリンティング装置301の特性を指定することができる。設計プロセッサ311においては、すべての処理パラメータが一定であるとみなされている。ただし一部のパラメータに対し、周囲環境要因および/または機器の制約によって影響が及ぼされる可能性があり、これらによって処理パラメータの一部において非制御状態の変動に起因する不確定性が引き起こされる。たとえば、スタンドオフ距離303として知られるレーザと作成される物体305との距離が、レーザまたは物体305のいずれかを動かす周囲環境の力に基づき変動する可能性がある。通常の動作振動などの小さい振動によって、物体305が僅かに動かされる可能性があり、これにより製造プロセス全体にわたってスタンドオフ距離303が変動させられる。処理パラメータにおける不確定性によって、設計された物体305の所望の形状が実際に作成されたものとは異なったものにさせられてしまう可能性があり、その理由は、予期される処理パラメータが製造プロセス全体にわたって一定には保持されないからである。
【0028】
最適化プロセッサ320は、形状誤差321を特定するように構成されている。最適化プロセッサ320は、レーザのパワーおよび移動307、309を含む設計パラメータを受け取る。これに加え最適化プロセッサ320は、一部のパラメータたとえばスタンドオフ距離303の不確定性に関する情報を受け取る。例として挙げると、不確定性情報を確率分布として受け取ることができる。最適化プロセッサは、受け取った設計パラメータ307、309および不確定性パラメータ303を用いたシミュレーションによって求められた形状誤差の不確定性定量化を実施する。信頼性のある形状誤差が求められるまで、シミュレーションおよび不確定性定量化の反復321が行われる。信頼性のある形状誤差に基づき、最適化された設計パラメータ323のセットが設計プロセッサ311に供給される。設計プロセッサは、更新された設計パラメータ310aのセットを生成し、これら更新された設計パラメータ310aを3Dプリンティング装置301に供給する。
【0029】
図4は、本開示の実施形態の態様に従い、AMプロセスにおける設計パラメータを最適化するためのプロセスフローチャートである。複数の設計パラメータ401および製造プロセスにおける不確定性を表す少なくとも1つのプロセスパラメータ403が、最適化シミュレーション405を実施するように構成されたプロセッサによって受け取られる。例として挙げると、設計者はコンピュータ支援設計ツールを用いて、設計パラメータ401を生成することができる。実施形態によれば不確定性パラメータ403を、関連づけられたプロセスパラメータにおける非制御状態の変動に起因して発生する形状誤差の確率分布の形態にあるものとすることができる。信頼性のある形状誤差が求められるまで、製造プロセスおよび不確定性定量化のシミュレーションを実施するため、受け取られた設計パラメータ401および不確定性パラメータ403を用いることによって、最適化シミュレーション405が実施される。最適化シミュレーション405に基づき、期待形状誤差の計算407が行われる。作成された物体の形状誤差として現れた不確定性誤差の大きさを表すため、期待形状誤差と閾値との比較409が行われる。形状誤差が閾値よりも小さいケース413であれば、製造プロセスが続けられ、最適化プロセス405により新たな期待形状誤差が計算される。
【0030】
期待形状誤差が閾値を超えているケース411であれば、期待形状誤差を最小化する最適化に基づき、設計パラメータが更新される。更新された設計パラメータ415による元の設計パラメータ401の置き換え417が行われ、更新され最適化された設計パラメータに基づき、更新された最適化シミュレーションが実施される。
【0031】
図5には、本発明の実施形態を具現化可能な例示的なコンピューティング環境500が示されている。コンピュータシステム510およびコンピューティング環境500などのコンピュータおよびコンピューティング環境は、当業者には周知であり、よって、これらについては本明細書では手短に説明する。
【0032】
図5に示されているように、コンピュータシステム510は、システムバス521などの通信メカニズムを含むことができるし、またはコンピュータシステム510内の情報を通信するための他の通信メカニズムを含むことができる。さらにコンピュータシステム510は情報を処理するために、システムバス521と接続された1つまたは複数のプロセッサ520を含んでいる。
【0033】
プロセッサ520は、1つまたは複数の中央処理ユニット(CPU)、グラフィック処理ユニット(GPU)、または当技術分野において周知の他の任意のプロセッサを含むことができる。より一般的に述べると、本明細書で用いられるプロセッサは、タスクを実施するためにコンピュータ可読媒体に記憶された機械可読命令を実行するデバイスであり、ハードウェアおよびファームウェアのうち任意の1つまたはこれらの組み合わせを含むことができる。プロセッサは、タスクを実施するために実行可能な機械可読命令を記憶するメモリも含むことができる。プロセッサは情報に応答して動作し、その際、実行可能なプロシージャまたは情報デバイスによって使用するために、情報を操作、解析、変更、変換または伝送し、かつ/またはこの情報を出力デバイスにルーティングする。プロセッサはたとえば、コンピュータ、コントローラまたはマイクロプロセッサの能力を使用することができ、または含むことができ、汎用のコンピュータによって実施されない特別な目的のファンクションを実施するために実行可能な命令を用いて、コンディショニング可能である。プロセッサを、他の任意のプロセッサと(電気的にかつ/または実行可能なコンポーネントを含むように)接続することができ、これによってそれらの間のインタラクションおよび/またはコミュニケーションが可能になる。ユーザインタフェースプロセッサまたはユーザインタフェースジェネレータは周知の要素であり、ディスプレイイメージまたはその一部分を生成するために、これには電子回路またはソフトウェアまたは両者の組み合わせが含まれている。ユーザインタフェースは、プロセッサまたは他のデバイスとのユーザインタラクションを可能にする1つまたは複数のディスプレイイメージを有する。
【0034】
引き続き図5を参照すると、コンピュータシステム510は、情報とプロセッサ520によって実行すべき命令とを記憶するために、システムバス521と接続されたシステムメモリ530も含む。システムメモリ530は、リードオンリメモリ(ROM)531および/またはランダムアクセスメモリ(RAM)532など、揮発性メモリおよび/または不揮発性メモリの形態のコンピュータ可読ストレージ媒体を含むことができる。RAM532は、(1つまたは複数の)他のダイナミックストレージデバイス(たとえばダイナミックRAM、スタティックRAM、およびシンクロナスDRAM)を含むことができる。ROM531は、(1つまたは複数の)他のスタティックストレージデバイス(たとえばプログラマブルROM、消去可能なPROM、および電気的に消去可能なPROM)を含むことができる。これらに加えシステムメモリ530を、プロセッサ520による命令実行中、一時的な変数または他の中間段階の情報を記憶するために用いることができる。スタートアップ中などに、コンピュータシステム510内部の各要素間での情報伝送を支援する基本ルーチンを含む基本入/出力システム533(BIOS)を、ROM531内に記憶することができる。RAM532には、プロセッサ520により即座にアクセス可能な、かつ/またはプロセッサ520により目下実行されているデータモジュールおよび/またはプログラムモジュールを含めることができる。これらに加えシステムメモリ530は、たとえばオペレーティングシステム534、アプリケーションプログラム535、他のプログラムモジュール536、およびプログラムデータ537を含むことができる。
【0035】
コンピュータシステム510には、磁気ハードディスク541およびリムーバブル媒体ドライブ542(たとえばフロッピーディスクドライブ、コンパクトディスクドライブ、テープドライブ、および/またはソリッドステートドライブ)など、情報および命令を記憶するための1つまたは複数のストレージデバイスを制御するために、システムバス521と接続されたディスクコントローラ540も含まれている。ストレージデバイスを、適切なデバイスインタフェース(たとえばsmall computer system interface(SCSI)、integrated device electronics(IDE)、Universal Serial Bus(USB)またはFireWire)を用いて、コンピュータシステム510に追加することができる。
【0036】
コンピュータシステム510には、コンピュータユーザに情報を表示するためのブラウン管(CRT)または液晶ディスプレイ(LCD)など、ディスプレイまたはモニタ566を制御するために、システムバス521と接続されたディスプレイコントローラ565も含めることができる。コンピュータシステムには、コンピュータユーザとのインタラクションおよびプロセッサ520への情報の供給のために、入力インタフェース560と、キーボード562およびポインティングデバイス561など1つまたは複数の入力デバイスが含まれている。方向情報およびコマンド選択をプロセッサ520に伝達するために、かつディスプレイ566上でのカーソルの動きを制御するために、ポインティングデバイス561を、たとえばマウス、ライトペン、トラックボール、またはポインティングスティックとすることができる。ディスプレイ566によって、タッチスクリーンインタフェースを提供することができ、このインタフェースによって、ポインティングデバイス561による方向情報およびコマンド選択の伝達を補足または置き換えるための入力が可能となる。一部の実施形態によれば、ユーザによって着用可能な拡張現実デバイス567によって、ユーザが物理的世界と仮想世界の両方とインタラクトできるようにする機能の入/出力を提供することができる。拡張現実デバイス567は、ディスプレイコントローラ565およびユーザ入力インタフェース560と通信し、これによってユーザは、ディスプレイコントローラ565により拡張現実デバイス567において生成された仮想アイテムとインタラクトすることができる。ユーザはジェスチャを与えることもでき、このジェスチャは拡張現実デバイス567によって検出され、入力信号としてユーザ入力インタフェース560に伝達される。
【0037】
コンピュータシステム510は、システムメモリ530などのメモリ内に含まれている1つまたは複数の命令の1つまたは複数のシーケンスを実行する、プロセッサ520に応答して、本発明の実施形態の処理ステップの一部分またはすべてを実施することができる。かかる命令を、磁気ハードディスク541またはリムーバブル媒体ドライブ542など他のコンピュータ可読媒体から、システムメモリ530に読み込むことができる。磁気ハードディスク541は、本発明の実施形態により使用される1つまたは複数のデータストアおよびデータファイルを含むことができる。セキュリティ改善のため、データストアのコンテンツおよびデータファイルを暗号化することができる。システムメモリ530内に含まれている1つまたは複数の命令シーケンスを実行するために、複数のプロセッサ520を多重処理構成で使用することもできる。択一的な実施形態によれば、ソフトウェア命令の代わりに、またはソフトウェア命令と組み合わせて、ハードワイヤード回路を使用することができる。したがって実施形態は、ハードウェア回路とソフトウェアの何らかの特定の組み合わせに限定されるものではない。
【0038】
上述のようにコンピュータシステム510は、本発明の実施形態に従ってプログラミングされた命令を保持するための、およびデータ構造、テーブル、レコードまたは本明細書で述べられている他のデータを入れるための、少なくとも1つのコンピュータ可読媒体またはメモリを含むことができる。本明細書で用いられている用語「コンピュータ可読媒体」とは、実行のためにプロセッサ520に命令を供給することに関与する任意の媒体のことを指す。コンピュータ可読媒体は、以下に限定されるものではないが、非一時的媒体、不揮発性媒体、揮発性媒体および伝送媒体を含む数多くの形態をとることができる。不揮発性媒体の非限定的な例には、光ディスク、ソリッドステートドライブ、磁気ディスク、および光磁気ディスクが含まれ、たとえば磁気ハードディスク541またはリムーバブル媒体ドライブ542などである。揮発性媒体の非限定的な例には、システムメモリ530などのダイナミックメモリが含まれる。伝送媒体の非限定的な例には、同軸ケーブル、銅線、および光ファイバが含まれ、これにはシステムバス521を構築するワイヤが含まれる。伝送媒体は、電波や赤外線によるデータ通信中に発せられるような、音響波または光波の形態をとることもできる。
【0039】
コンピューティング環境500にはさらに、リモートコンピューティングデバイス580など、1つまたは複数のリモートコンピュータとの論理的コネクションを用いてネットワークが構築された環境で動作するコンピュータシステム510を含めることができる。リモートコンピューティングデバイス580を、パーソナルコンピュータ(ラップトップまたはデスクトップ)、モバイルデバイス、サーバ、ルータ、ネットワークPC、ピアデバイス、または他の一般的なネットワークノードとすることができ、このリモートコンピューティングデバイス580には一般に、コンピュータシステム510に関連して述べた上述の要素のうちの多数またはすべてが含まれている。ネットワーキング環境で用いられる場合、コンピュータシステム510は、インターネットなどのネットワーク571を介して通信を確立するために、モデム572を含むことができる。モデム572を、ユーザネットワークインタフェース570を介して、または他の適切なメカニズムを介して、システムバス521と接続することができる。
【0040】
ネットワーク571を、当技術分野において一般的に知られている任意のネットワークまたはシステムとすることができ、これにはインターネット、イントラネット、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、メトロポリタンエリアネットワーク(MAN)、1つのダイレクトコネクションまたは一連のダイレクトコネクション、セルラ電話回線網、またはコンピュータシステム510と他のコンピュータ(たとえばリモートコンピューティングデバイス580)との間の通信を容易にすることのできる他の任意のネットワークまたは媒体が含まれる。ネットワーク571を有線、ワイヤレス、またはそれらの組み合わせとすることができる。有線コネクションを、Ethernet、Universal Serial Bus(USB)、RJ−6、または当技術分野で一般的に知られている他の任意の有線コネクションを用いて、具現化することができる。ワイヤレスコネクションを、Wi−Fi、WiMAXおよびBluetooth、赤外線ネットワーク、セルラネットワーク、衛星、または当技術分野で一般的に知られている他の任意のワイヤレスコネクションを用いて、具現化することができる。これらに加え、複数のネットワークを単独で動作させてもよいし、または互いに通信し合う状態で動作させてもよく、これによってネットワーク571における通信が容易になる。
【0041】
本明細書で用いられる実行可能なアプリケーションは、たとえばユーザのコマンドまたは入力に応答して、オペレーティングシステム、コンテキストデータ取得システムまたは他の情報処理システムのファンクションなど、予め定められたファンクションを具現化するために、プロセッサをコンディショニングするためのコードまたは機械可読命令を含む。1つの実行可能なプロシージャは、1つまたは複数の特定のプロセスを実施するために実行可能なアプリケーションの、コードまたは機械可読命令の1つのセグメント、サブルーチン、またはコードまたは一部分の他の別個のセクションである。これらのプロセスには、入力データおよび/または入力パラメータの受け取り、受け取った入力データに基づくオペレーションの実施、および/または受け取った入力パラメータに応答したファンクションの実施、および結果として生じた出力データおよび/または出力パラメータの供給、を含めることができる。
【0042】
本明細書で用いられるグラフィックユーザインタフェース(GUI)は、ディスプレイプロセッサにより生成される1つまたは複数のディスプレイイメージを含み、これによってプロセッサまたは他のデバイスおよび関連づけられたデータ取得および処理ファンクションとのユーザインタラクションが可能になる。GUIは、実行可能なプロシージャまたは実行可能なアプリケーションも含む。実行可能なプロシージャまたは実行可能なアプリケーションは、GUIディスプレイイメージを表現する信号を生成するよう、ディスプレイプロセッサをコンディショニングする。これらの信号は、ユーザが見るためのイメージを表示するディスプレイデバイスに供給される。プロセッサは、実行可能なプロシージャまたは実行可能なアプリケーションの制御のもとで、入力デバイスから受け取った信号に応答して、GUIディスプレイイメージを操作する。このようにしてユーザは、プロセッサまたは他のデバイスとのユーザインタラクションを可能にする入力デバイスを用いることで、ディスプレイイメージとインタラクトすることができる。
【0043】
本明細書におけるファンクションおよびプロセスステップを、自動的にまたはユーザコマンドに応答して全体的にまたは部分的に、実施させることができる。自動的に実施される(1つのステップを含む)1つのアクティビティは、そのアクティビティをユーザがじかに開始させることなく、1つまたは複数の実行可能な命令またはデバイスオペレーションに応答して実施される。
【0044】
図面のシステムおよびプロセスは、他を排除するものではない。同じ目的を達成するために、本発明の原理に従い他のシステム、プロセスおよびメニューを導き出すことができる。特定の実施形態を参照しながら本発明について説明してきたけれども、本明細書で示し説明した実施形態および変形は例示目的であるにすぎない、ということを理解されたい。当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、現行の設計に対する変更を具現化することができる。本明細書で述べたように、様々なシステム、サブシステム、エージェント、マネージャおよびプロセスを、ハードウェアコンポーネント、ソフトウェアコンポーネント、および/またはそれらの組み合わせを用いて具現化することができる。本願の特許請求の範囲の構成要件を「〜のための手段」というフレーズを用いて特別に挙げない限り、その構成要件は米国特許法第112条第6項の条項に従って解釈されるものではない。
図1
図2
図3
図4
図5