(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コントローラはさらに、前記吸気イベントの検出に応じて前記一対の電極間に1つ又は複数の放電を生じるために前記一対の電極に電力を供給するよう前記電源に指令する、
請求項15記載の一酸化窒素生成システム。
前記コントローラはさらに、前記吸気イベントの検出に応じて前記一対の電極間に1つ又は複数の放電を生じるために前記一対の電極に電力を供給するよう電源に指令する、
請求項35記載の装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本願でいう「流体」との用語は物質の相に関するものであり、液体、気体、又は2相の液体及び気体をいうことができる。
【0013】
本願でいう「下流」及び「上流」との用語は、流体の流れに対して相対的な方向を示す用語である。
「下流」とは流体の流れ方向に相当し、「上流」とは、流体の流れ方向と逆方向又は流れ方向に逆らう方向をいう。
【0014】
以下記載するように、本願開示は、完全に可搬性で軽量な一酸化窒素(NO)生成システムであって、医療用途においてポイント・オブ・ケアで有用な濃度でNOを高信頼性かつ安全に生成できる一酸化窒素(NO)生成システムを提供する。一般的に、本願開示の一部の非限定的な実施例は、患者への使用及び接触に安全な温度以下にシステムのNO生成器を維持するために冷却されるように構成されたNO生成システムを提供する。一部の非限定的な実施例では、NO生成システムは、NO生成器を冷却するために、NO生成器に向けて及び/又はNO生成器内に通すように流体(例えばガス)を供給するよう構成されたポンプを備えることができる。ポンプによって供給された流体の流れはNO生成の効率を上昇し、生成されたばかりのNOの拡散を促進し、吐き出された二酸化炭素(CO
2)の少なくとも一部がシステムに流入することを防止するのを助けることもできる。
【0015】
図1は、本願開示に係るNO生成システム100の非限定的な一例を示す。NO生成システムはコントローラ102と、電源104と、ポンプ106と、NO生成器108と、フィルタ/スカベンジャ110とを備えている。一部の非限定的な実施例では、電源104は共振電源とすることができる。コントローラ102は電源104及びポンプ106と通信する。一部の非限定的な実施例では、患者へ供給される所望の濃度のNOガスを生成すべく、コントローラ102は、NO生成器108へ電力を供給するように電源104に選択的に指令するよう構成することができる。例えばコントローラ102は、例えば吸気イベント等の1つ又は複数の入力に基づいて電源104を選択的にトリガするよう構成することができる。吸気イベントは、患者の呼吸の1つ又は複数の特性を介して検出することができる。例えば、流体流量、温度、圧力、酸素(O
2)濃度、CO
2濃度、胸郭容積等である。代替的又は追加的に、コントローラ102は人工呼吸器から1つ又は複数の入力を受け取って、吸気イベント中又は吸気イベント前のどの時期にNO生成器108をトリガすべきかを特定するように構成することができる。
【0016】
一部の非限定的な実施例では、コントローラ102は、各吸気イベント中又は各吸気イベント前に所定の時間量にわたって所望の濃度のNOを生成するようにNO生成器108に指令するよう構成することができる。一部の非限定的な実施例では、コントローラ102は、2回のうち1回の吸気イベント中又は2回のうち1回の吸気イベント前に所定の時間量にわたって所望の濃度のNOを生成するようにNO生成器108に指令するよう構成することができる。一部の非限定的な実施例では、コントローラ102は、3回のうち1回の吸気イベント中、3回のうち1回の吸気イベント前、又は吸気イベント間のより大きな間隔(例えば4回、5回又は6回のうち1回の吸気イベント)で、所定の時間量にわたって所望の濃度のNOを生成するようにNO生成器108に指令するよう構成することができる。
【0017】
一部の非限定的な実施例では、電源104はポンプ106へ電力を供給するように構成することができる。かかる非限定的な実施例では、コントローラ102は、NO生成器108内へ及び/又はNO生成器108を通過する流体の流れを促進すべくポンプ106に電力を供給するように電源104に選択的に指令するよう構成することができる。一部の非限定的な実施例では、ポンプ106は自前の電源と統合することができ、又は、電源104とは別個の他の外部電源を介してポンプ106に給電することができる。かかる非限定的な実施例では、コントローラ102は流体の流れを(低流量から高流量まで、又はその逆に)NO生成器108内へ及び/又はNO生成器108に通すように供給するようにポンプ106に選択的に指令するよう構成することができる。
【0018】
コントローラ102は、ポンプ106によってNO生成器108へ供給される流体流量を制御するように構成することができる。一部の非限定的な実施例では、コントローラ102は、ポンプ106によって供給される流体流量を制御することにより、NO生成器108の温度を所望の温度範囲内に維持するように構成することができる。例えば、コントローラ102は、NO生成器108の温度を測定するように構成された温度センサ112と通信することができ、また、ポンプ106によって供給される流体流量を、温度センサ112によって測定された温度に基づいて制御するように構成することができる。代替的又は追加的に、温度センサ112は、患者に提供されているフィルタ/スカベンジャ110から出る流体の流れの温度を測定するように構成することができ、コントローラ102は、患者へ出て行く流体の流れを所望の温度範囲内に維持するように、ポンプ106によって供給される流体流量を制御するように構成することができる。
【0019】
NO生成器108は、電源104から電力の供給を受けた場合に、NO生成器108内の大気から、及び/又はポンプ106によって供給されたガスから、所望の濃度のNOガスを生成するように構成されている。例えば、NO生成器108は一対又は複数対の電極を備えることができ、当該一対又は複数対の電極は、当該電極間の放電によりプラズマを発生するよう構成されている。NOガスは、電極放電により発生したプラズマ内で、大気又はそれより高圧のガス中の窒素(N
2)とO
2とから合成することができる。一部の非限定的な実施例では、電源104によってNO生成器108へ供給される波形(例えば方形波等)が、これにより生成されるNOの濃度を制御することができる。一部の非限定的な実施例では、NO生成器108によって生成されたNO濃度を測定し、コントローラ102はNO濃度を所望の範囲内に維持するように電源104を制御することができる。
【0020】
一般にフィルタ/スカベンジャ110は、NO含有ガスが患者の気道に入る前に粒子を阻止/フィルタリングするように構成された少なくとも1つのフィルタと、NO生成器108によって生成された不所望の副産物(例えばNO
2及びO
3)の濃度を制御又は制限するように構成されたスカベンジャと、を備えることができる。一部の非限定的な実施例では、フィルタ/スカベンジャ110は、NO生成器108に取り外し可能に取り付けることができるユニット型部品に組み込むことができる。例えばフィルタ/スカベンジャ110は、NO生成器108に設置されるように構成された交換可能な部品であって、スカベンジャが消耗したら取り外されるように構成された部品とすることができる。一部の非限定的な実施例では、フィルタ/スカベンジャ110は、ねじ部品、クイックジョイント(quick-disconnect、スナップ着脱)、キー機構、剥離可能接着剤、及び/又はねじ部を介して、NO生成器108に取り外し可能に取り付けることができる。
【0021】
NO生成システム100は、例えば低酸素症の乳児にポイント・オブ・ケア治療を施す軽量な可搬装置に組み込むことができる。一部の非限定的な実施例では、NO生成器108は、患者の気道内に挿入される気管内チューブの内部又は付近に設置することができる。一部の非限定的な実施例では、NO生成器108は患者の気道に直接、マウスピースに可能な限り近くに、吸気系統に設置することができる。しかしシステム100は、人間、他の哺乳類又は他の動物を含み得る種々の施術対象と共に用いることができ、又は、施術対象を含まない他の用途で使用することができる。
【0022】
図2を参照すると、非限定的な一実施例では、NO生成器108はハウジング204内に配置された一対の電極202を備えている。電極202は、炭化タングステン、炭素、イリジウム、チタン、白金、レニウム、若しくはこれらの材料の合金、若しくは他の不活性の貴金属から作製されたもの、又はこれらの材料をメッキしたものとすることができる。非限定的な一実施例では、電極202は、国際特許出願PCT/US2015/056443(以下「’443国際出願」という)に記載のような、他の金属との比較においてイリジウムにより生成されたNOに対するNO
2の比率が低いことによりイリジウムから作製されたもの、又はイリジウムをメッキしたものであり、同文献の記載内容は参照により本願の記載内容に含まれるものとする。他の非限定的な実施例では、NO生成器108は二対又はそれより多くの対数の電極202を備えることができる。電極202は、放電により当該電極202間にプラズマを形成するように構成されている。電極202により生じたプラズマは、NO生成器108が置かれた環境内に窒素及び酸素が存在する限り、NOガスを生成する。
【0023】
ハウジング204は、長手方向に相反対側の第1の端部206及び第2の端部208を有する。一部の非限定的な実施例では、ハウジング204は金属材料(例えばアルミニウム)から作製することができる。第1の端部206は、ハウジング204の内部により形成された空洞211に到達するための開口210を有する。開口210は、電極絶縁体212を受容できる寸法とすることができる。一対の高電圧ワイヤ213が電極絶縁体212内を通って、電極202を電源104に接続する。高電圧ワイヤ213は、電極絶縁体212(例えばセラミック材料)内に配置される場合を除いてワイヤ絶縁部215を備えることができ、これは、電気絶縁して短絡を防止するように働くものである。一部の非限定的な実施例では、ワイヤ絶縁部215は、ワイヤ213及び流管224を通すための開口を有する成型部品とすることができる。かかる非限定的な実施例では、ワイヤ絶縁部215は電気絶縁体から作製することができ、ハウジング204の第1の端部206に取り付けられる構成とすることができる。
【0024】
一部の非限定的な実施例では、第2の端部208は、スカベンジャハウジング214に取り外し可能に取り付けられる概ね開放した端部となることができる。かかる非限定的な実施例では、スカベンジャハウジング214は第1のフィルタ216と、第2のフィルタ218と、当該第1のフィルタ216と第2のフィルタ218との間に配置されたスカベンジャ220と、を備えることができる。組み立てられたとき、
図2に示されているように、第1のフィルタ216はハウジング204の第2の端部208と係合することができる。一部の非限定的な実施例では、スカベンジャハウジング214は、ねじ部品、クイックジョイント、キー機構、剥離可能接着剤、及び/又はねじ部を介して、ハウジング204に取り外し可能に取り付けることができる。
【0025】
一部の非限定的な実施例では、第1のフィルタ216はハウジング204に組み込んでその第2の端部208に取り付けることができる。かかる非限定的な実施例では、スカベンジャハウジング214は第2のフィルタ218及びスカベンジャ220を備えることができる。
【0026】
第1のフィルタ216及び第2のフィルタ218は、ハウジング204内のガスが患者の気道に入る前に粒子をフィルタリングする構成とすることができる。例えば第1のフィルタ216及び第2のフィルタ218は、放電中に発生した高温に起因して電極202から蒸発した蒸気/粒子、及び/又はスカベンジャ220からの断片が、患者の気道に入るのを阻止することができる。図示の非限定的な実施例では、NO生成器108はスカベンジャ220の上流に配置された1つのフィルタと、スカベンジャ220の下流に配置されたもう1つのフィルタと、を備えている。一部の非限定的な実施例では、第1のフィルタ216及び第2のフィルタ218は、約0.22μm超の粒径を有する粒子をフィルタリングする構成とすることができる。一形態では、第1のフィルタ216及び第2のフィルタ218はHEPA(high efficiency particulate absorption)フィルタとすることができる。’443国際出願に記載されているように、動作中に侵食及び蒸発した電極断片を除去するためには、患者の上流に配置された0.22μm粒子フィルタで十分である。第1のフィルタ216及び第2のフィルタ218によってフィルタリングされる粒径は、いかなる限定も意図しておらず、別の粒径をフィルタリングする他の代替的な粒子フィルタも本願開示の範囲内であることが明らかである。しかし、第1のフィルタ216及び第2のフィルタ218によってフィルタリングされる粒径は、患者の安全及び健康を維持するために十分に小さくなければならない。
【0027】
スカベンジャハウジング214がハウジング204に取り付けられるとき、スカベンジャ220は電極202の下流に配置されるように構成されている。動作中、スカベンジャ220は、システム100により生成された不所望の副産物(例えばNO
2及びO
3)を制御する構成とすることができる。非限定的な一実施例では、スカベンジャ220は水酸化カルシウム(Ca(OH)
2)から作製することができる。他の非限定的な一実施例では、スカベンジャ220は任意の還元剤(例えばアスコルビン酸)から成る還元スカベンジャとすることができる。一部の非限定的な実施例ではNO生成システム100は、患者の吸気でトリガすることにより患者が吸い込むためのNOガスを効率的に生成する構成とすることができ、これにより、システム100の所要電力を低減し、小型のスカベンジャ220の使用を促進することができる。例えば、スカベンジャ220は約2g未満とすることができる。一部の非限定的な実施例では、スカベンジャ220は約1g〜約2gの間とすることができる。一部の非限定的な実施例では、スカベンジャ220は約1.6gとすることができる。一部の非限定的な実施例では、スカベンジャ220は約1g未満とすることができる。一部の非限定的な実施例では、スカベンジャ220は約0.1g〜約1gの間とすることができる。一部の非限定的な実施例では、スカベンジャ220は約0.8gとすることができる。
【0028】
組み立てられたとき、生成されたNO含有ガスの患者への供給を促進する流路を、NO生成器108内を通るように画定することができる。この流路は、反応室222から下流に第1のフィルタ216、スカベンジャ220を通って第2のフィルタ218へ延在することができる。一部の非限定的な実施例では、第2のフィルタ218は上述の流路の出口とすることができる。一部の非限定的な実施例では、スカベンジャハウジング214は穿孔された出口壁を備えることができ、この出口壁は第2のフィルタ218を当該出口壁内に固定するが、流体を当該出口壁に通して流すように構成されている。
【0029】
反応室222は、電極絶縁体212とハウジング204の内表面との間の径方向クリアランスに空洞211の一部として画定することができる。反応室222内の大気は、電極202間の電気プラズマ放電によって化学反応を生じることができ、窒素及び酸素の存在下で、患者に所定の濃度で供給されるNOガスを生成することができる。ここで記載されているように、消費電力とスカベンジャ220のサイズとを削減するため、患者の選択的な吸気イベントに応答して又はその前にのみNOガスを生成するようにNO生成システム100をトリガすることができる。しかし、電極202間の電気プラズマ放電は発熱し、これは動作中にNO生成器108の加熱の原因となり得る。加熱作用を低減してNO生成器108の温度を制御するためには、反応室222とポンプ106とを流体連通するための流管224が配置される。図示の非限定的な実施例では、流管224は、径方向に電極絶縁体212とハウジング204の内表面との間の位置でハウジング204の第1の端部206内へ略軸方向に延在する。
【0030】
ハウジング204及び反応室222を基準とする流管224の向きは、反応室222内で所望の流れパターン及び/又はスワール特性を生じる向きとすることができることが明らかである。例えば、
図3及び
図4に示されているように、流管224は径方向にハウジング204を通って反応室222内へ延在することができ(
図3)、又は、流管224は角度を成してハウジング204内を通って反応室222内へ延在することができる(
図4)。一部の非限定的な実施例では、流管224とハウジング204の外表面との間で定まる角度は、約0°〜90°の間とすることができる。
【0031】
一部の非限定的な実施例では、ポンプ106は周囲から流管224を介して大気を増圧下でNO生成器108へ供給する構成とすることができる。ポンプ106によって反応室222へ供給された空気流は、NO生成器108を患者への使用及び接触に安全な温度以下に維持するためにNO生成器108を対流冷却するよう作用することができる。追加的に、ポンプ106により供給された空気流は、大気中の窒素及び酸素からのNOガスの生成を促進するため、反応室内へ新気を供給するように働くこともできる。さらに、ポンプ106により供給された空気流は、生成されたばかりのNOガスがNO生成器108の出口へ拡散するのを促進することができ、これにより患者への拡散を促進することができる。さらに、ポンプ106により供給された空気流は、吐き出されたCO
2の少なくとも一部のスカベンジャ220への到達を防止するのを助けることもできる。一般的に、人間は呼気中に約50,000ppmのCO
2を放出することができ、CO
2は、スカベンジャ220の使用可能寿命を短縮するように働き得る。よって、吐き出されたCO
2がNO生成器108に入るのを阻害又は防止することが望ましい場合がある。NO生成システム100は、呼吸サイクル中連続的にではなく、吸気時又は吸気前に生成をトリガし、ポンプ106及び流管224を用いて追加の空気流を反応室222内へ供給することにより、吐き出されたCO
2によるスカベンジャ220の劣化を抑えるように構成されている。ポンプ106により供給されたこの追加の空気流は、大気との比較において反応室222内で僅かに正の圧力を生じ、NO生成器108内への逆流を阻止することにより、吐き出されたCO
2の少なくとも一部がスカベンジャ220に到達するのを阻止するように働くことができる。
【0032】
ここで記載されているように、NO生成システム100はポイント・オブ・ケアで、例えば低酸素症の乳児のために高信頼性かつ安全なNOガスを生成するために使用することができる。
図1〜5を参照して、NOガス生成システム100の動作の非限定的な一例を説明する。最初に、
図5に示されているように、ステップ300においてNO生成器108を患者の気道に結合することができる。例えば、ハウジング204に取り付けられたスカベンジャハウジング214にNO生成器108を組み付け、NO生成器108の出口を患者の気道に流体連通させることができる。一部の非限定的な実施例では、NO生成器108の出口は人工呼吸器に連結することができる。一部の非限定的な実施例では、NO生成器108の出口は、患者の気道に入れられた呼吸管に連結することができる。
【0033】
ステップ300においてNO生成器108が患者の気道に結合された後、ステップ302においてNO生成器108の生成特性を決定することができる。例えば種々のパラメータの中でもとりわけ、生成すべきNOの所望の濃度、吸気後にNOを生成する時間量、一回呼吸量、体重、呼吸数、大気温度、及び大気圧を入力し、及び/又はコントローラ102によって決定することができる。これらの動作パラメータに基づき、例えばコントローラ102は、所望量の時間にわたって所望量のNOガスを生成するために必要なNO生成特性を決定することができる。一部の非限定的な実施例ではコントローラ102は、一秒あたりの電極放電群の所要数、一群あたりの電極放電数、一群における隣り合う電極放電間の時間(例えば単位μs)、及び、電源104によって電極202へ供給される各電極放電のパルス時間(例えば単位μs)を決定することができる。コントローラ102によって決定された特性は動作中に調整することができ、例えば、吐出されるNO濃度、吐出されるNO
2濃度、吐出されるO
3濃度、大気温度、大気圧、NO生成器108温度、及び/又は、患者の生体パラメータの測定値(例えば心室収縮圧、肺動脈圧等)を調整することができる。
【0034】
ステップ304では、ステップ302において決定されたNO生成パラメータを用いて、患者の吸気イベントが検出されたか否かを判定することができる。一部の非限定的な実施例ではかかる吸気イベントは、患者の例えば流体流量、温度、圧力、酸素(O
2)濃度、CO
2濃度、胸郭容積、及び/又は人工呼吸器動作パラメータ等の1つ又は複数の呼吸特性を監視することによって検出することができる。ステップ304において吸気イベントが検出された場合、ステップ306において、検出された吸気イベント後所望量の時間にわたって所望の濃度のNOガスを生成するようにNO生成器108をトリガすることができる。
【0035】
ステップ308においてNO生成システム100の1つ又は複数の吐出パラメータを監視することができ、ステップ310において、吐出パラメータの測定値に基づいてNO生成特性を変更すべきか否かを判定することができる。例えば、吐出NO濃度、吐出NO
2濃度、吐出O
3濃度、NO生成器108温度、及び/又は患者の生体パラメータの測定値(例えば心室収縮圧、肺動脈圧等)をコントローラ102によって監視し、及び/又はコントローラ102に入力することができる。一部の非限定的な実施例では、ステップ308においてコントローラ102は吐出パラメータのうち1つ又は複数を監視し、ステップ310において吐出パラメータのうちいずれか1つが、予め定められた動作範囲外に出たか否か、変更が必要であるか否かを判定することができる。例えば、コントローラ102は生成されたNOガスの濃度が所望の濃度の予め定められた範囲内にないことを検出し、その応答として、ステップ302において決定された生成特性のうち1つ又は複数を変更するよう構成することができる。代替的又は追加的に、NO
2及び/又はO
3の吐出濃度を監視して、スカベンジャ220を交換すべきか否かを判定することができる。例えば、患者の安全のためのNO
2及び/又はO
3の所定の最大濃度を確立し、この所定の最大濃度に近づいている場合、スカベンジャ220を交換する必要があると判定することができる。スカベンジャハウジング214とハウジング204とは取り外し可能に取り付けられているので、現在のスカベンジャハウジング214を取り外して、内部に新たなスカベンジャ220を配置した新たなスカベンジャハウジング214を設置することにより、スカベンジャ220を容易に交換することができる。
【0036】
一部の非限定的な実施例では、NO生成器108の温度を監視することができ、ステップ310において、ポンプ106がNO生成器108に十分な流れの空気を供給しているか否かを判定することができる。例えば、NO生成器108の温度が、予め定められた最大値に近づいている場合には、コントローラ102は患者への使用及び接触に安全な温度以下にNO生成器108を維持するため、反応室222へ供給される空気の流量を増大するようにポンプ106に指令することができる。代替的又は追加的に、ステップ310において、NOガスが所望量の時間にわたって生成された否かを判定することができる。そうである場合、NO生成器108はステップ312においてNOガスの生成を停止し、次の又は他の吸気イベントまで待機することができる。一部の非限定的な実施例では、NO生成システム100は患者の吸気の終了前又は吸気中にNOガスの生成を停止するようにNO生成器108に指令する構成とすることができる。
【0037】
上述のステップ302〜312は、患者へ高信頼性かつ安全なNO含有ガスを連続供給するため、及び、患者への使用及び接触に安全な温度にNO生成器108を維持するため、吸気イベントごとに繰り返すことができる。一般に本願開示は、NO生成器108、とりわけ反応室222を冷却するために少量の流体(例えばガス)の流れを利用するNO生成システム100を提供するものである。少量の流体の流れは、生成されたNOの拡散も促進するので、所望レベルのNOを生成するために高いエネルギーを用いる必要が無くなる。よって、本発明のNO生成システム100はエネルギー消費量の削減を達成し、なおかつ、高エネルギーを必要とすることなくNO生成器108における温度上昇も抑えるものである。
【0038】
事例
以下の事例は、NO生成システム100及び/又はNO生成器108を使用又は具現化できる態様を詳細に記載しており、当業者はかかる態様を参酌すると、当該態様の原理をより容易に理解することができる。以下の事例は例示であり、いかなる限定も意図していない。
【0039】
試験用機構及びプロトタイプのNO生成器
【0040】
図6及び
図7は、プロトタイプNO生成器(
図8A及び
図8B)を試験するために使用される試験用機構を示す。
図6及び
図7に示されているように、プロトタイプNO生成器400(例えば、本願で記載されているNO生成器108のプロトタイプ)は、プロトタイプNO生成器400の下流に配置された試験用肺402と流体連通状態に置かれた。試験用肺402へ供給されるNOの濃度(Sievers 280i Nitric Oxide Analyzer, GE Analytical Instruments, Boulder, CO)と、NO
2の濃度(CAPS NO
2monitor, Aerodyne Research Inc., Billerica, MA)と、O
3の濃度(EC 9810 Ozone Analyzer, American Ecotech, Warren, RI)と、を測定するため、NOプロトタイプNO生成器400と試験用肺402との間にガス分析器403が配置されている。プロトタイプNO生成器400の上流では、投入されたO
2の濃度を酸素分析器404(MiniOX I, Ohio Medical Corporation, Gurnee, IL)が測定し、小児用人工呼吸器406(Inspira asv, Harvard Apparatus, Holliston, MA)が試験用肺402に呼吸を提供し、プロトタイプNO生成器400へ投入される流体流量をフローメータ408(NICO2, Respironics)が測定した。
【0041】
図8A及び
図8Bに示されているプロトタイプ生成器は、ハウジング204の第1の端部206に取り付けられたワイヤ絶縁体215と、複数の固定要素410(例えばねじ部品又はボルト)を介してハウジング204の第2の端部208に取り外し可能に取り付けられたスカベンジャハウジング214と、を有する構成であった。
図8AのプロトタイプNO生成器は0.8gのスカベンジャを備えた構成であり、重量は約14gであった。
図8BのプロトタイプNO生成器は1.6gのスカベンジャを備えた構成であり、重量は約20gであった。よって、上述のような構成のプロトタイプNO生成器は非常に軽量であり、この軽量性はプロトタイプNO生成器の可搬性に寄与し、ポイント・オブ・ケアにおいてNO含有ガスを供給する能力に寄与する。
【0042】
これらの各プロトタイプNO生成器は、2つのイリジウム放電電極と、Ca(OH)
2を含むスカベンジャと、スカベンジャの相反対側の端部に配置された2つの0.22μmHEPAフィルタと、冷却及びNO供給を促進するために内部に延在する流管と、を備えている。これらの構成要素はセラミック絶縁体によって包囲され、セラミック絶縁体はアルミニウムハウジング内部に収容されていた。電極にはマイクロコントローラ回路によって給電され、オートトランスによってエネルギーが蓄積及び放出されてスパークギャップ(2mm)へ供給されることにより、プラズマを発生する。NO生成レベルは、毎秒のスパーク群の数と、一群あたりのスパーク放電数と、2つのスパーク放電間の時間(単位μsec)と、パルス時間(単位μsec)とを含む4つのパルスパターン変数によって制御された。試験中、プロトタイプNO生成器において連続的にスパークを発生し、又は、フローメータ408によって吸気の開始が測定されるごとに0.5sにわたってスパークをトリガした。
【0044】
NO生成中、スパークギャップにおける電圧の波形とイリジウム電極を流れる電流の波形とが、1000×高電圧プローブ(Tektronix p6015A, Beaverton, OR)と電流プローブ(I-prober 520, Aim & Thurlby Thandar Instruments Ltd, Cambridgeshire, UK)とを備えたデジタル・フォスファ・オシロスコープ(Tektronix DPO 2012B, Beaverton, OR)によって取得されて記録された。
図8AのプロトタイプNO生成器では、一回呼吸量が18mL、呼吸数が40拍/分(bpm)、気道O
2レベルが50%、かつNO濃度が40ppmで、スパーク持続時間が0.5秒で毎秒パルス数40を生成したときの電圧及び電流の波形が測定及び比較された。電極は、プロトタイプNO生成器の上流で50%のO
2気道ガスと混合された70ml/minの空気によって連続的に冷却された。
【0045】
典型的には、電気アークを生じるための電圧及び電流は、最初のアークの方がその後のアークより高い。
図9に示されているように、初期電圧は、各0.5秒スパーク発生時には約3kVであり、その後、プラズマが形成されて電極が加熱されると電圧は指数関数的に減少していく。電流についても、初期電流は約200mAであり、その後漸減していく。エネルギー消費量は、一回呼吸量18mL、呼吸数40bpmかつ50%の気道O
2レベルで40ppmのNOを生成する場合、約2〜3Wの間であった。NO生成システムの空気ポンプ、高電圧オーバーヘッド及び電源を含めた他の構成要素は、約1.5Wのエネルギーを消費する。よって、ここで記載されているNO生成システム100の電力消費量は低く、このことはNO生成システム100の可搬性を助け、ポイント・オブ・ケアでNO含有ガスを提供する能力に寄与する。
【0046】
Ca(OH)
2スカベンジャのスカベンジング能力
【0047】
図8AのプロトタイプNO生成器の0.8gのCa(OH)
2スカベンジャのスカベンジング能力の試験を行った。試験中、18mLの一回呼吸量と40bpmの呼吸数とを生じるために、小児用人工呼吸器406を使用した。気道O
2レベルを50%に設定し、所望のNO濃度を40ppmとした。フローメータが気道流を検知してプロトタイプNO生成器をトリガした。気管(ID=1.6mm)を介して70ml/minの空気を注入したことにより、吸気酸素濃度分画(FiO
2)を測定すると0.48であった。最初の12時間では1時間ごとにNO
2レベルを測定して記録し、その後24時間、48時間及び72時間に1回測定して記録した。赤外線サーモメータ(Cole-Parmer, Vernon Hills, IL)を用いて、最初の12時間では1時間ごとに、その後24時間、48時間及び72時間に1回、プロトタイプNO生成器のアルミニウムハウジングの温度変化を測定した。
【0048】
図10及び
図11に示されているように、NO
2レベルは48時間にわたって1ppm未満であり、温度はNO生成試験全体を通じて30.6±0.5℃であった。これらのデータは、吸気に基づいてNO生成をトリガする場合、少なくとも2日間にわたってNO
2レベルを低減するためには0.8gのスカベンジャで十分であることを示唆するものであり、スパークチャンバの温度は3日間にわたって約31℃で一定に保たれた。
【0049】
スカベンジャを用いた場合及び用いない場合の流出ガス中のオゾン(O
3)レベル
【0050】
O
2中の放電は、可能性のある有害副産物としてO
3を生成し得る。NOレベル及びO
2レベルを変えながら
図8AのプロトタイプNO生成器により生成されるO
3レベルを測定し、O
3を除去する0.8gのCa(OH)
2スカベンジャの能力の試験を行った。
図12Aに示されているように、1L/minの空気流量では、NO生成の増大と共にO
3レベルが増大した。しかしスカベンジャを通過した後は、NOが80ppmである場合、O
3レベルは3ppbの低さまで低減した。
図12Bに示されているように、O
2レベルを21%から80%まで変えると、O
3レベルはスカベンジャ前では5.5ppbであり、スカベンジャ後では1.5ppbであった。また
図12Cに示されているように、1L/minのガス流量かつ40ppmのNO濃度では、21%から100%までの範囲のいかなるO
2濃度に対しても、O
3レベルは1.5ppb未満に保たれた。かかるデータは、電気的プロトタイプNO生成器が生成するO
3の量は、試験対象のどのO
2濃度でも最小限であったこと、及び、0.8gスカベンジャは、1日8時間にわたって米国環境保護庁(EPA)の80ppbのO
3暴露限界を十分に下回るレベルにまでO
3を効果的に除去することを示唆するものである。
【0051】
プロトタイプNO生成器より下流の流出ガス中の微量金属
【0052】
図8AのプロトタイプNO生成器より下流の流出ガス中の微量金属のレベルを測定するため、以下の5つの群を調べた:(1)スカベンジャ及びHEPAフィルタを用いない群、(2)スカベンジャと1つのHEPAフィルタを用いる群、(3)スカベンジャと直列の2つのHEPAフィルタとを用いる群、(4)スカベンジャのみを用いる群、及び(5)1つのHEPAフィルタのみを用いる群。NOは、24時間にわたって1L/minの空気流量で40ppmで生成された。流出ガスは、15mlの5%硝酸(Optima Grade, Fisher Scientific, Cambridge, MA)に連続的に混入された。24時間で全てのサンプルが収集され、マサチューセッツ大学質量分析センター(Mass Spectrometry Center、Amherst, MA)で四重極形質量分析計(ICP−MS)を用いて分析された。
【0053】
図13の表に示されているように、フィルタ及びスカベンジャを用いない場合、1L/minの空気流量で24時間NOを生成した後、プラズマによって40ppbのニッケル粒子が生成された。インラインのCa(OH)
2(0.8g)スカベンジャを用いてHEPAフィルタを用いない場合、ニッケルレベルは1.7ppbにまで減少した。1つのHEPAフィルタのみを用いた場合、ニッケルレベルは0.3ppbであった。NO生成器の後に0.8gのCa(OH)
2スカベンジャと1つ又は2つのHEPAフィルタを用いた場合、ニッケルレベルは1ppb未満に減少した。これは、8時間シフトで週40時間の作業中に作業者を保護するための作業室空気中の金属ニッケル及びニッケル化合物のOSHA限界レベル1.0mg/m
3(mg/m
3=1ppb)を下回るレベルである。他の微量金属のイリジウム及び白金は、スカベンジャ又はHEPAフィルタを用いた場合又は用いない場合0.03ppb未満であった。これは、電気的に生成されるNOガス中において無視できるものである。これらのデータは、NO生成中に放出されるニッケルは極微量であり、これはスカベンジャ及びHEPAフィルタによって効果的にブロックすることができることを示唆している。
【0054】
肺高血圧を有する麻酔されたウサギの調査
【0055】
ウサギの調査は、マサチューセッツ・ジェネラルホスピタル組織的動物保護利用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee、マサチューセッツ州ボストン)によって承認されたものである。体重3.4±0.4kg(平均±SD)の5匹の健康な6歳のオス及びメスのニュージーランド白ウサギであった(Jackson Laboratory, Bar Harbor, ME)。ウサギに麻酔をかけ(IVケタミン及びフェンタニル)、麻痺させ(ロクロニウム)、気管切開によって6ml/kgの一回呼吸量、40〜50bpmの呼吸数、投与気道FiO
2が0.5、0.5秒の吸気時間、かつPEEP1〜2cmH
2Oで、機械的に人工呼吸した。外頸静脈を介して配置された4−Frカテーテル(Swan-Ganz, Edwards Lifesciences, Irvine, CA)を用いて、右心室収縮圧(RVSP)を連続的にモニタリングした。有効な肺血管収縮薬U46619(Cayman Chemical, Ann Arbor, MI)を注入して60分にわたって右心室収縮圧(RVSP)を上昇させることにより、肺高血圧を引き起こした。U46619注入中、NO吸気前及び吸気後に、平均的な動脈圧及び心拍数をベースラインでモニタリングした。
図8AのプロトタイプNO生成器は気管カニューレの外部端に配置され(ID=3.5mm)、フローメータ408によって吸気に基づきトリガされて0.5秒にわたってNOを生成した。
【0056】
一部の非限定的な用途では、プロトタイプNO生成器は肺高血圧を治療するための乳児人工呼吸に対応した構成とすることができる。プロトタイプNO生成器から生成されたNOをスタンダード・オブ・ケアであるNO/N
2タンクからのNOと比較し、これによって、プロトタイプNOが、急性肺高血圧を発症したウサギにおいて収縮を生じるか否かを確認した。
図14及び
図15に示されているように、麻酔をかけられたウサギは60分にわたってトロンボキサンアナログのU46619の連続注入を受けた。これにより、RVSPは14±2mmHgから28〜30mmHgにまで上昇した。NOは吸気のプラズマ放電により生成され、70ml/minで気管内チューブに注入された。ウサギは50%のO
2と、吸気に基づいてプロトタイプNO生成器によって生成された20ppm、40ppm又は80ppmのNOとを4分間吸い込み、その後NOの生成及び投与を停止し、その後の5分間にわたってRVSPを測定した。
図14を詳細に参照すると、電気的に生成されたNOを吸い込むことにより、RVSPがNO吸い込み前の30mmHgからNO吸い込み後1分で24mmHgにまで急速に減少した。比較対象として、複数のウサギがタンク(N
2中500ppmNO、Airgas, Cinnaminson, NJ)から50%O
2で希釈された40ppmのNOを吸い込んだ。このデータは、電気的に生成されたNOが、従来のNO/N
2シリンダから希釈されたNOを吸い込む場合と同程度に、RVSPの低減に有効であることを示唆する。
【0057】
エネルギーを削減してスカベンジャの消費量を低減するため、2回又は3回の呼吸で1回、吸気に基づいてスパークを生じることが、肺高血圧を発症したウサギにおいてRVSPを低減するか否かの試験を行った。
図15に示されているように、NOを2回又は3回の呼吸で1回生成することにより、ウサギにおいてRVSPが30mmHgから26mmHgにまで減少した(P<0.05はNO吸い込み前と比較して異なる)。これは、2回又は3回の呼吸で1回トリガすることが肺高血圧の治療に効果的となり、NO生成システム100の電力消費量を低減してスカベンジャ200のライフタイムを延長し得ることを示唆している。
【0058】
本願明細書では、明確かつ簡潔に明細書を記載できるように実施形態を記載しているが、本発明から逸脱することなく実施形態を種々組み合わせ、又は分離することが可能であることを意図しており、またこのことは明らかである。例えば、本願で記載されている好適な特徴はいずれも、本願で記載されている発明の全ての側面に適用できることが明らかである。
【0059】
よって、上記では特定の実施形態及び事例を参酌して本発明を説明したが、本発明は必ずしもかかる限定を受けるものではなく、これらの実施形態、事例及び使用からの数多くの他の実施形態、事例、使用、改良及び発展形態が、添付した特許請求の範囲に包含されることを意図している。本願にて引用した各特許及び刊行物の開示内容は全て参照によって含まれ、これは、当該各特許又は刊行物が個別に参照によって含まれている場合と同様である。