特許第6968192号(P6968192)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイションの特許一覧

特許6968192冷却される一酸化窒素生成器用のシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6968192
(24)【登録日】2021年10月28日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】冷却される一酸化窒素生成器用のシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 21/24 20060101AFI20211108BHJP
   A61K 33/00 20060101ALN20211108BHJP
   A61M 16/10 20060101ALN20211108BHJP
   A61P 9/12 20060101ALN20211108BHJP
   A61P 11/00 20060101ALN20211108BHJP
【FI】
   C01B21/24 Z
   !A61K33/00
   !A61M16/10 Z
   !A61P9/12
   !A61P11/00
【請求項の数】40
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2019-553526(P2019-553526)
(86)(22)【出願日】2018年3月30日
(65)【公表番号】特表2020-512146(P2020-512146A)
(43)【公表日】2020年4月23日
(86)【国際出願番号】US2018025353
(87)【国際公開番号】WO2018183811
(87)【国際公開日】20181004
【審査請求日】2019年12月19日
(31)【優先権主張番号】62/558,882
(32)【優先日】2017年9月15日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/480,320
(32)【優先日】2017年3月31日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】ザポル ウォーレン
(72)【発明者】
【氏名】ユ ビンラン
【審査官】 磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−516488(JP,A)
【文献】 特表2016−512743(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0090261(US,A1)
【文献】 国際公開第2016/064863(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/094138(WO,A1)
【文献】 特開昭61−251487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/10
A61K 33/00
A61P 9/12
A61P 11/00
C01B 21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一酸化窒素(NO)生成システムであって、
第1の端部及び概ね開放された第2の端部を有するハウジングと、
前記ハウジング内に収容された一対の電極と、
前記一対の電極と前記ハウジングとの間に画定された反応室と、
を備えた一酸化窒素生成器と、
内部にスカベンジャ及びフィルタを配置したスカベンジャハウジングであって、前記ハウジングの前記第2の端部に取り外し可能に取り付けられるスカベンジャハウジングと、
前記一対の電極に接続された電源と、
流体の流れを提供するように構成されたポンプと、
前記ポンプ及び前記電源と通信するコントローラであって、前記反応室内で一酸化窒素を生成すべく前記一対の電極間に1つ又は複数の放電を生じさせるため、前記一対の電極に電力を供給するように前記電源に選択的に指令するよう構成されているコントローラと、
前記ポンプと前記反応室とを流体連通させるように構成された流管と、
を備えており、
前記ポンプから前記反応室へ供給される前記流体の流れは、前記一酸化窒素生成器を冷却し、生成された前記一酸化窒素の前記反応室からの拡散を助けるように構成されており、
前記一酸化窒素生成システムはさらに、前記一酸化窒素生成器の温度と、前記スカベンジャハウジングから排出される一酸化窒素含有ガスの温度とのうち少なくとも1つを測定するように配置された温度センサを備えており、
前記コントローラはさらに、前記ポンプによって供給される流体の流量を、前記温度センサによって測定された温度に応じて選択的に制御するように構成されている
ことを特徴とする一酸化窒素生成システム。
【請求項2】
前記一対の電極は、炭化タングステン、炭素、イリジウム、チタン、レニウム、及び白金のうち少なくとも1つを含む、
請求項1記載の一酸化窒素生成システム。
【請求項3】
前記一対の電極はイリジウムを含む、
請求項1記載の一酸化窒素生成システム。
【請求項4】
前記スカベンジャは水酸化カルシウムから作製されている、
請求項1記載の一酸化窒素生成システム。
【請求項5】
前記スカベンジャは、前記一対の電極間の1つ又は複数の放電による不所望の副産物の量を制御する、
請求項1記載の一酸化窒素生成システム。
【請求項6】
前記電源は共振電源を含む、
請求項1記載の一酸化窒素生成システム。
【請求項7】
前記スカベンジャハウジングはさらに第2のフィルタを備えており、
前記スカベンジャは前記フィルタと前記第2のフィルタとの間に配置されている、
請求項1記載の一酸化窒素生成システム。
【請求項8】
前記フィルタ及び前記第2のフィルタはそれぞれ、0.22μm超の粒径を有する粒子をフィルタリングするように構成されている、
請求項7記載の一酸化窒素生成システム。
【請求項9】
前記フィルタ及び前記第2のフィルタはそれぞれHEPAフィルタを含む、
請求項7記載の一酸化窒素生成システム。
【請求項10】
前記フィルタは、患者の気道より上流の電極粒子をフィルタリングし、顆粒状のスカベンジャが前記反応室に流入するのを防止するように構成されており、
前記第2のフィルタは、前記患者の前記気道より上流の電極粒子をフィルタリングするように構成されている、
請求項7記載の一酸化窒素生成システム。
【請求項11】
前記ハウジングの前記第2の端部は、当該第2の端部に結合された第2のフィルタを備えている、
請求項1記載の一酸化窒素生成システム。
【請求項12】
前記フィルタ及び前記第2のフィルタはそれぞれ、0.22μm超の粒径を有する粒子をフィルタリングするように構成されている、
請求項11記載の一酸化窒素生成システム。
【請求項13】
前記フィルタ及び前記第2のフィルタはそれぞれHEPAフィルタを含む、
請求項11記載の一酸化窒素生成システム。
【請求項14】
前記フィルタは、患者の気道より上流の電極粒子をフィルタリングし、顆粒状のスカベンジャが前記反応室に流入するのを防止するように構成されており、
前記第2のフィルタは、前記患者の前記気道より上流の電極粒子をフィルタリングするように構成されている、
請求項11記載の一酸化窒素生成システム。
【請求項15】
前記コントローラは吸気イベントを検出するように構成されている、
請求項1記載の一酸化窒素生成システム。
【請求項16】
前記コントローラはさらに、前記吸気イベントの検出に応じて前記一対の電極間に1つ又は複数の放電を生じるために前記一対の電極に電力を供給するよう前記電源に指令する、
請求項15記載の一酸化窒素生成システム。
【請求項17】
前記コントローラはさらに、所定量の時間にわたって前記一対の電極に電力を供給するよう前記電源に指令する、
請求項16記載の一酸化窒素生成システム。
【請求項18】
前記スカベンジャの重量は2g未満である、
請求項1記載の一酸化窒素生成システム。
【請求項19】
前記スカベンジャの重量は1g未満である、
請求項1記載の一酸化窒素生成システム。
【請求項20】
前記スカベンジャの重量は0.8gである、
請求項1記載の一酸化窒素生成システム。
【請求項21】
一酸化窒素(NO)を生成するための装置であって、
第1の端部、概ね開放した第2の端部、及び当該第1の端部と当該第2の端部との間に配置された空洞を有するハウジングと、記ハウジングの前記空洞内に配置された一対の電極と、記一対の電極と前記ハウジングとの間に画定された反応室と、を備えた一酸化窒素生成器を備えており、
前記一対の電極は、前記反応室内で一酸化窒素を生成するために当該一対の電極間に1つ又は複数の放電を生じるように構成されており、
前記装置はさらに、
内部にスカベンジャ及びフィルタを配置したスカベンジャハウジングであって、前記ハウジングの前記第2の端部に取り外し可能に取り付けられるスカベンジャハウジングと、
前記ハウジングを通って前記反応室内へ延在することによりポンプと前記反応室とを流体連通する流管と、
を備えており、
前記ポンプから前記反応室へ提供される流体の流れは、前記装置を冷却し、生成された一酸化窒素の前記反応室からの拡散を助けるように構成されており、
前記装置はさらに、前記一酸化窒素生成器の温度と、前記スカベンジャハウジングから排出される一酸化窒素含有ガスの温度とのうち少なくとも1つを測定するように配置された温度センサを備えており、
コントローラは、前記ポンプによって供給される流体の流量を、前記温度センサによって測定された温度に応じて選択的に制御するように構成されている
ことを特徴とする装置。
【請求項22】
前記一対の電極は、炭化タングステン、炭素、イリジウム、チタン、レニウム、及び白金のうち少なくとも1つを含む、
請求項21記載の装置。
【請求項23】
前記一対の電極はイリジウムを含む、
請求項21記載の装置。
【請求項24】
前記スカベンジャは水酸化カルシウムから作製されている、
請求項21記載の装置。
【請求項25】
前記スカベンジャは、前記一対の電極間の1つ又は複数の放電による不所望の副産物の量を制御する、
請求項21記載の装置。
【請求項26】
前記装置はさらに、前記一対の電極に接続された電源を備えており、
前記電源は共振電源を含む、
請求項21記載の装置。
【請求項27】
前記スカベンジャハウジングはさらに第2のフィルタを備えており、
前記スカベンジャは前記フィルタと前記第2のフィルタとの間に配置されている、
請求項21記載の装置。
【請求項28】
前記フィルタ及び前記第2のフィルタはそれぞれ、0.22μm超の粒径を有する粒子をフィルタリングするように構成されている、
請求項27記載の装置。
【請求項29】
前記フィルタ及び前記第2のフィルタはそれぞれHEPAフィルタを含む、
請求項27記載の装置。
【請求項30】
前記フィルタは、患者の気道より上流の電極粒子をフィルタリングし、顆粒状のスカベンジャが前記反応室に流入するのを防止するように構成されており、
前記第2のフィルタは、前記患者の前記気道より上流の電極粒子をフィルタリングするように構成されている、
請求項27記載の装置。
【請求項31】
前記ハウジングの前記第2の端部は、当該第2の端部に結合された第2のフィルタを備えている、
請求項21記載の装置。
【請求項32】
前記フィルタ及び前記第2のフィルタはそれぞれ、0.22μm超の粒径を有する粒子をフィルタリングするように構成されている、
請求項31記載の装置。
【請求項33】
前記フィルタ及び前記第2のフィルタはそれぞれHEPAフィルタを含む、
請求項31記載の装置。
【請求項34】
前記フィルタは、患者の気道より上流の電極粒子をフィルタリングし、顆粒状のスカベンジャが前記反応室に流入するのを防止するように構成されており、
前記第2のフィルタは、前記患者の前記気道より上流の電極粒子をフィルタリングするように構成されている、
請求項31記載の装置。
【請求項35】
前記コントローラは吸気イベントを検出するように構成されている、
請求項21記載の装置。
【請求項36】
前記コントローラはさらに、前記吸気イベントの検出に応じて前記一対の電極間に1つ又は複数の放電を生じるために前記一対の電極に電力を供給するよう電源に指令する、
請求項35記載の装置。
【請求項37】
前記コントローラはさらに、所定量の時間にわたって前記一対の電極に電力を供給するよう前記電源に指令する、
請求項36記載の装置。
【請求項38】
前記スカベンジャの重量は2g未満である、
請求項21記載の装置。
【請求項39】
前記スカベンジャの重量は1g未満である、
請求項21記載の装置。
【請求項40】
前記スカベンジャの重量は0.8gである、
請求項21記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本特許出願は、2017年3月31に出願された米国仮特許出願第62/480,320号と、2017年9月15日に出願された米国仮特許出願第62/558,882号に基づくと共にその利益を主張するものである。これらの各文献の内容は、参照により本願の内容に含まれるものとする。
【0002】
<連邦政府の支援による研究に関する言明>
無し。
【背景技術】
【0003】
本願開示は一般に、複数のガスからの一酸化窒素(NO)の電気プラズマ合成に関し、具体的には、医療用途で用いられる冷却されるNO生成器用のシステム及び方法に関する。
【0004】
NOは多くの生体システムの決定的に重要な媒介物質であり、とりわけ、肺動脈及び全身の圧力を選択的に調整し、免疫システムが細胞に侵入する寄生体を殺すのを助け、がん細胞の分裂を阻害し、脳細胞間で信号を伝達し、脳卒中又は心臓発作により人間を衰弱させる脳細胞の死に寄与することが知られている。NOは、例えば血管壁、気管支壁、胃腸管壁及び泌尿器管壁に存在する平滑筋の弛緩を媒介する。吸入による肺へのNOガスの投与は、肺の血管において局所的な平滑筋弛緩を生じさせることが分かっており、例えば全身性の血管拡張及び低血圧等の全身性の副作用を生じることなく正期産児の低酸素血症呼吸不全、肺高血圧、肺炎等を治療するために、幅広く用いられている。
【0005】
NOを吸い込むことによって直ちに、有効な選択的肺血管拡張を生じることができ、これによって換気と灌流との一致が改善され、負傷した肺の酸素輸送効率が増大し、また、NOを吸い込むことによって動脈酸素圧を上昇することができる。NOを吸い込むことによって、呼吸開始の数秒以内に全身性の血管拡張を伴うことなく肺血管拡張薬の活動が迅速に開始する。吸い込むと、NOは肺血管系を通って血流中に拡散し、オキシヘモグロビンとの結合によって急速に不活性化する(NO二原子酸素添加反応)。よって、急性及び慢性の肺高血圧の治療では、吸い込んだNOの血管拡張作用は肺に限定される。吸い込んだNOは、心臓発作を起こした成人において経皮冠動脈インターベンションを行った後の虚血性再灌流障害を防止するために使用することもできる。さらに、吸い込んだNOは、循環するNO生体代謝産物(環式グアノシン一リン酸を含む)のレベルを増大し、例えば血漿中において循環する第一鉄ヘモグロビンを第二鉄ヘモグロビン(メトヘモグロビン)に酸化する等の他のメカニズムによって、全身性の抗炎症作用及び抗血小板作用を生じることもできる。さらに、NOは既知の抗菌活性も有する。
【発明の概要】
【0006】
一側面では本願開示は、一酸化窒素生成器を備えた一酸化窒素生成システムを提供する。一酸化窒素生成器は、第1の端部及び概ね開放した第2の端部を有するハウジングと、当該ハウジング内に収容された一対の電極と、当該一対の電極とハウジングとの間に画定された反応室と、を備えている。一酸化窒素生成システムはさらにスカベンジャハウジングも備えており、スカベンジャハウジング内にはスカベンジャとフィルタとが配置されている。スカベンジャハウジングは、上述のハウジングの第2の端部に取り外し可能に取り付けられるように構成されている。一酸化窒素生成システムはさらに、一対の電極に接続された電源、並びに、ポンプ及び電源と通信するコントローラを備えている。コントローラは、反応室内で一酸化窒素を生成すべく一対の電極間に1つ又は複数の放電を生じさせるため、一対の電極に電力を供給するように電源に選択的に指令するよう構成されている。一酸化窒素生成システムはさらに、流体の流れを提供するように構成されたポンプと、ポンプと反応室との間に流体連通を提供するよう構成された流管と、を備えている。ポンプから反応室へ提供される流体の流れは、一酸化窒素生成器を冷却し、生成された一酸化窒素の反応室からの拡散を助けるように構成されている。
【0007】
一側面では、本願開示は一酸化窒素を生成するための装置を提供し、当該装置は、第1の端部、概ね開放した第2の端部、及び第1の端部と第2の端部との間に配置されたキャビティを有するハウジングと、ハウジングのキャビティ内に配置された一対の電極と、一対の電極とハウジングとの間に画定された反応室と、を備えている。一対の電極は、反応室内で一酸化窒素を生成すべく当該一対の電極間に1つ又は複数の放電を生じさせるように構成されている。当該装置はさらにスカベンジャハウジングも備えており、スカベンジャハウジング内にはスカベンジャとフィルタとが配置されている。スカベンジャハウジングは、上述のハウジングの第2の端部に取り外し可能に取り付けられるように構成されている。当該装置はさらに、ハウジングを通って反応室内へ延在することによりポンプと反応室との間に流体連通を提供する流管も備えている。ポンプから反応室へ提供される流体の流れは、一酸化窒素生成器を冷却し、生成された一酸化窒素の反応室からの拡散を助けるように構成されている。
【0008】
一側面では本願開示は、一対の電極間のプラズマ放電によって一酸化窒素ガスを電気的に生成するように構成された一酸化窒素生成器の冷却方法を提供する。一酸化窒素生成器は、一対の電極を包囲するハウジングであって、一対の電極と当該ハウジングとの間に反応室を画定するハウジングを備えている。本方法は、流体の流れを提供するように構成されたポンプを設けるステップと、ポンプと反応室との間に流管を接続してポンプと反応室との間に流体連通を提供するステップと、ポンプから流管に沿って反応室へ流体を流すことにより一酸化窒素生成器を冷却するステップと、を有する。
【0009】
本願開示の上記及び他の側面及び利点は、以下の説明から明らかである。以下の説明では、当該説明の一部を構成する添付の図面を参照しており、当該図面は、本願開示の好適な形態を例示する。しかし、かかる形態は必ずしも本願開示の範囲全部を示すものではないので、本願特許請求の範囲について、及び本願開示の範囲を解釈するために参照される。
【0010】
本発明の以下の詳細な説明を参酌すれば、本発明をより理解することができ、また、上記の構成、側面及び利点以外の構成、側面及び利点が明らかとなる。かかる詳細な説明は、以下の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本願開示の一側面の一酸化窒素生成システムの概略図である。
図2図1の一酸化窒素生成システム内の本願開示の一側面の一酸化窒素生成器の詳細図である。
図3】本願開示の一側面の、図2の一酸化窒素生成器内に径方向に侵入する管を備えた当該生成器の詳細図である。
図4】本願開示の一側面の、図2の一酸化窒素生成器内に角度を成して侵入する管を備えた当該生成器の詳細図である。
図5図1の一酸化窒素生成システムを動作するためのステップを概説するフローチャートである。
図6図1の一酸化窒素生成システムを試験するために使用される機構の図である。
図7図5の試験機構の概略図である。
図8A】本願開示の一側面のハウジングに取り外し可能に取り付けられた0.8gのスカベンジャを有する図2の一酸化窒素生成器のプロトタイプの図である。
図8B】本願開示の一側面のハウジングに取り外し可能に取り付けられた1.6gのスカベンジャを有する図2の一酸化窒素生成器のプロトタイプの図である。
図9図8A及び図8Bのプロトタイプの試験中に電極へ供給された電圧及び電流の波形を時間の関数として示すグラフである。
図10】3日間の試験中に40ppmの一酸化窒素(NO)を生成する間に図8Aのプロトタイプ生成器によって生成される二酸化窒素(NO)濃度を時間の関数として示すグラフである。
図11】3日間の試験中に40ppmの一酸化窒素(NO)を生成する間の図8Aのプロトタイプ生成器の温度を時間の関数として示すグラフである。
図12A】0.8gのスカベンジャを用いた場合及び用いない場合に図8Aのプロトタイプ生成器によって生成されるオゾン(O)濃度を、生成された一酸化窒素(NO)濃度の関数として示すグラフである。
図12B】0.8gのスカベンジャを用いた場合及び用いない場合に図8Aのプロトタイプ生成器により生成されるオゾン(O)濃度を、プロトタイプ装置に投入される酸素(O)濃度の関数として示すグラフである。
図12C】複数の異なる吸入気酸素濃度(FiO)の場合の、0.8gのスカベンジャを用いた図8Aのプロトタイプ生成器により生成されるオゾン(O)濃度を示すグラフである。
図13】40ppmの一酸化窒素(NO)を生成する24時間試験中にスカベンジャとフィルタとの複数の異なる組み合わせを用いて図8Aのプロトタイプ生成器により排出されるニッケル、イリジウム及び白金の濃度を示す表である。
図14】U46619注入と、図8Aのプロトタイプ生成器により生成された種々の濃度の一酸化窒素(NO)の吸入と、NO/Nタンクからの40ppm一酸化窒素(NO)の吸入とによる、急性肺高血圧を発症し麻酔をかけられたウサギにおける右心室収縮圧(RVSP)を時間の関数として示すグラフである。
図15】一呼吸ごと、2回のうち1回の呼吸、及び3回のうち1回の呼吸でトリガされる、図8Aのプロトタイプ生成器により生成された80ppmの一酸化窒素(NO)の吸入、U46619注入による、急性肺高血圧を発症し麻酔をかけられたウサギにおける右心室収縮圧(RVSP)を時間の関数として示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本願でいう「流体」との用語は物質の相に関するものであり、液体、気体、又は2相の液体及び気体をいうことができる。
【0013】
本願でいう「下流」及び「上流」との用語は、流体の流れに対して相対的な方向を示す用語である。
「下流」とは流体の流れ方向に相当し、「上流」とは、流体の流れ方向と逆方向又は流れ方向に逆らう方向をいう。
【0014】
以下記載するように、本願開示は、完全に可搬性で軽量な一酸化窒素(NO)生成システムであって、医療用途においてポイント・オブ・ケアで有用な濃度でNOを高信頼性かつ安全に生成できる一酸化窒素(NO)生成システムを提供する。一般的に、本願開示の一部の非限定的な実施例は、患者への使用及び接触に安全な温度以下にシステムのNO生成器を維持するために冷却されるように構成されたNO生成システムを提供する。一部の非限定的な実施例では、NO生成システムは、NO生成器を冷却するために、NO生成器に向けて及び/又はNO生成器内に通すように流体(例えばガス)を供給するよう構成されたポンプを備えることができる。ポンプによって供給された流体の流れはNO生成の効率を上昇し、生成されたばかりのNOの拡散を促進し、吐き出された二酸化炭素(CO)の少なくとも一部がシステムに流入することを防止するのを助けることもできる。
【0015】
図1は、本願開示に係るNO生成システム100の非限定的な一例を示す。NO生成システムはコントローラ102と、電源104と、ポンプ106と、NO生成器108と、フィルタ/スカベンジャ110とを備えている。一部の非限定的な実施例では、電源104は共振電源とすることができる。コントローラ102は電源104及びポンプ106と通信する。一部の非限定的な実施例では、患者へ供給される所望の濃度のNOガスを生成すべく、コントローラ102は、NO生成器108へ電力を供給するように電源104に選択的に指令するよう構成することができる。例えばコントローラ102は、例えば吸気イベント等の1つ又は複数の入力に基づいて電源104を選択的にトリガするよう構成することができる。吸気イベントは、患者の呼吸の1つ又は複数の特性を介して検出することができる。例えば、流体流量、温度、圧力、酸素(O)濃度、CO濃度、胸郭容積等である。代替的又は追加的に、コントローラ102は人工呼吸器から1つ又は複数の入力を受け取って、吸気イベント中又は吸気イベント前のどの時期にNO生成器108をトリガすべきかを特定するように構成することができる。
【0016】
一部の非限定的な実施例では、コントローラ102は、各吸気イベント中又は各吸気イベント前に所定の時間量にわたって所望の濃度のNOを生成するようにNO生成器108に指令するよう構成することができる。一部の非限定的な実施例では、コントローラ102は、2回のうち1回の吸気イベント中又は2回のうち1回の吸気イベント前に所定の時間量にわたって所望の濃度のNOを生成するようにNO生成器108に指令するよう構成することができる。一部の非限定的な実施例では、コントローラ102は、3回のうち1回の吸気イベント中、3回のうち1回の吸気イベント前、又は吸気イベント間のより大きな間隔(例えば4回、5回又は6回のうち1回の吸気イベント)で、所定の時間量にわたって所望の濃度のNOを生成するようにNO生成器108に指令するよう構成することができる。
【0017】
一部の非限定的な実施例では、電源104はポンプ106へ電力を供給するように構成することができる。かかる非限定的な実施例では、コントローラ102は、NO生成器108内へ及び/又はNO生成器108を通過する流体の流れを促進すべくポンプ106に電力を供給するように電源104に選択的に指令するよう構成することができる。一部の非限定的な実施例では、ポンプ106は自前の電源と統合することができ、又は、電源104とは別個の他の外部電源を介してポンプ106に給電することができる。かかる非限定的な実施例では、コントローラ102は流体の流れを(低流量から高流量まで、又はその逆に)NO生成器108内へ及び/又はNO生成器108に通すように供給するようにポンプ106に選択的に指令するよう構成することができる。
【0018】
コントローラ102は、ポンプ106によってNO生成器108へ供給される流体流量を制御するように構成することができる。一部の非限定的な実施例では、コントローラ102は、ポンプ106によって供給される流体流量を制御することにより、NO生成器108の温度を所望の温度範囲内に維持するように構成することができる。例えば、コントローラ102は、NO生成器108の温度を測定するように構成された温度センサ112と通信することができ、また、ポンプ106によって供給される流体流量を、温度センサ112によって測定された温度に基づいて制御するように構成することができる。代替的又は追加的に、温度センサ112は、患者に提供されているフィルタ/スカベンジャ110から出る流体の流れの温度を測定するように構成することができ、コントローラ102は、患者へ出て行く流体の流れを所望の温度範囲内に維持するように、ポンプ106によって供給される流体流量を制御するように構成することができる。
【0019】
NO生成器108は、電源104から電力の供給を受けた場合に、NO生成器108内の大気から、及び/又はポンプ106によって供給されたガスから、所望の濃度のNOガスを生成するように構成されている。例えば、NO生成器108は一対又は複数対の電極を備えることができ、当該一対又は複数対の電極は、当該電極間の放電によりプラズマを発生するよう構成されている。NOガスは、電極放電により発生したプラズマ内で、大気又はそれより高圧のガス中の窒素(N)とOとから合成することができる。一部の非限定的な実施例では、電源104によってNO生成器108へ供給される波形(例えば方形波等)が、これにより生成されるNOの濃度を制御することができる。一部の非限定的な実施例では、NO生成器108によって生成されたNO濃度を測定し、コントローラ102はNO濃度を所望の範囲内に維持するように電源104を制御することができる。
【0020】
一般にフィルタ/スカベンジャ110は、NO含有ガスが患者の気道に入る前に粒子を阻止/フィルタリングするように構成された少なくとも1つのフィルタと、NO生成器108によって生成された不所望の副産物(例えばNO及びO)の濃度を制御又は制限するように構成されたスカベンジャと、を備えることができる。一部の非限定的な実施例では、フィルタ/スカベンジャ110は、NO生成器108に取り外し可能に取り付けることができるユニット型部品に組み込むことができる。例えばフィルタ/スカベンジャ110は、NO生成器108に設置されるように構成された交換可能な部品であって、スカベンジャが消耗したら取り外されるように構成された部品とすることができる。一部の非限定的な実施例では、フィルタ/スカベンジャ110は、ねじ部品、クイックジョイント(quick-disconnect、スナップ着脱)、キー機構、剥離可能接着剤、及び/又はねじ部を介して、NO生成器108に取り外し可能に取り付けることができる。
【0021】
NO生成システム100は、例えば低酸素症の乳児にポイント・オブ・ケア治療を施す軽量な可搬装置に組み込むことができる。一部の非限定的な実施例では、NO生成器108は、患者の気道内に挿入される気管内チューブの内部又は付近に設置することができる。一部の非限定的な実施例では、NO生成器108は患者の気道に直接、マウスピースに可能な限り近くに、吸気系統に設置することができる。しかしシステム100は、人間、他の哺乳類又は他の動物を含み得る種々の施術対象と共に用いることができ、又は、施術対象を含まない他の用途で使用することができる。
【0022】
図2を参照すると、非限定的な一実施例では、NO生成器108はハウジング204内に配置された一対の電極202を備えている。電極202は、炭化タングステン、炭素、イリジウム、チタン、白金、レニウム、若しくはこれらの材料の合金、若しくは他の不活性の貴金属から作製されたもの、又はこれらの材料をメッキしたものとすることができる。非限定的な一実施例では、電極202は、国際特許出願PCT/US2015/056443(以下「’443国際出願」という)に記載のような、他の金属との比較においてイリジウムにより生成されたNOに対するNOの比率が低いことによりイリジウムから作製されたもの、又はイリジウムをメッキしたものであり、同文献の記載内容は参照により本願の記載内容に含まれるものとする。他の非限定的な実施例では、NO生成器108は二対又はそれより多くの対数の電極202を備えることができる。電極202は、放電により当該電極202間にプラズマを形成するように構成されている。電極202により生じたプラズマは、NO生成器108が置かれた環境内に窒素及び酸素が存在する限り、NOガスを生成する。
【0023】
ハウジング204は、長手方向に相反対側の第1の端部206及び第2の端部208を有する。一部の非限定的な実施例では、ハウジング204は金属材料(例えばアルミニウム)から作製することができる。第1の端部206は、ハウジング204の内部により形成された空洞211に到達するための開口210を有する。開口210は、電極絶縁体212を受容できる寸法とすることができる。一対の高電圧ワイヤ213が電極絶縁体212内を通って、電極202を電源104に接続する。高電圧ワイヤ213は、電極絶縁体212(例えばセラミック材料)内に配置される場合を除いてワイヤ絶縁部215を備えることができ、これは、電気絶縁して短絡を防止するように働くものである。一部の非限定的な実施例では、ワイヤ絶縁部215は、ワイヤ213及び流管224を通すための開口を有する成型部品とすることができる。かかる非限定的な実施例では、ワイヤ絶縁部215は電気絶縁体から作製することができ、ハウジング204の第1の端部206に取り付けられる構成とすることができる。
【0024】
一部の非限定的な実施例では、第2の端部208は、スカベンジャハウジング214に取り外し可能に取り付けられる概ね開放した端部となることができる。かかる非限定的な実施例では、スカベンジャハウジング214は第1のフィルタ216と、第2のフィルタ218と、当該第1のフィルタ216と第2のフィルタ218との間に配置されたスカベンジャ220と、を備えることができる。組み立てられたとき、図2に示されているように、第1のフィルタ216はハウジング204の第2の端部208と係合することができる。一部の非限定的な実施例では、スカベンジャハウジング214は、ねじ部品、クイックジョイント、キー機構、剥離可能接着剤、及び/又はねじ部を介して、ハウジング204に取り外し可能に取り付けることができる。
【0025】
一部の非限定的な実施例では、第1のフィルタ216はハウジング204に組み込んでその第2の端部208に取り付けることができる。かかる非限定的な実施例では、スカベンジャハウジング214は第2のフィルタ218及びスカベンジャ220を備えることができる。
【0026】
第1のフィルタ216及び第2のフィルタ218は、ハウジング204内のガスが患者の気道に入る前に粒子をフィルタリングする構成とすることができる。例えば第1のフィルタ216及び第2のフィルタ218は、放電中に発生した高温に起因して電極202から蒸発した蒸気/粒子、及び/又はスカベンジャ220からの断片が、患者の気道に入るのを阻止することができる。図示の非限定的な実施例では、NO生成器108はスカベンジャ220の上流に配置された1つのフィルタと、スカベンジャ220の下流に配置されたもう1つのフィルタと、を備えている。一部の非限定的な実施例では、第1のフィルタ216及び第2のフィルタ218は、約0.22μm超の粒径を有する粒子をフィルタリングする構成とすることができる。一形態では、第1のフィルタ216及び第2のフィルタ218はHEPA(high efficiency particulate absorption)フィルタとすることができる。’443国際出願に記載されているように、動作中に侵食及び蒸発した電極断片を除去するためには、患者の上流に配置された0.22μm粒子フィルタで十分である。第1のフィルタ216及び第2のフィルタ218によってフィルタリングされる粒径は、いかなる限定も意図しておらず、別の粒径をフィルタリングする他の代替的な粒子フィルタも本願開示の範囲内であることが明らかである。しかし、第1のフィルタ216及び第2のフィルタ218によってフィルタリングされる粒径は、患者の安全及び健康を維持するために十分に小さくなければならない。
【0027】
スカベンジャハウジング214がハウジング204に取り付けられるとき、スカベンジャ220は電極202の下流に配置されるように構成されている。動作中、スカベンジャ220は、システム100により生成された不所望の副産物(例えばNO及びO)を制御する構成とすることができる。非限定的な一実施例では、スカベンジャ220は水酸化カルシウム(Ca(OH))から作製することができる。他の非限定的な一実施例では、スカベンジャ220は任意の還元剤(例えばアスコルビン酸)から成る還元スカベンジャとすることができる。一部の非限定的な実施例ではNO生成システム100は、患者の吸気でトリガすることにより患者が吸い込むためのNOガスを効率的に生成する構成とすることができ、これにより、システム100の所要電力を低減し、小型のスカベンジャ220の使用を促進することができる。例えば、スカベンジャ220は約2g未満とすることができる。一部の非限定的な実施例では、スカベンジャ220は約1g〜約2gの間とすることができる。一部の非限定的な実施例では、スカベンジャ220は約1.6gとすることができる。一部の非限定的な実施例では、スカベンジャ220は約1g未満とすることができる。一部の非限定的な実施例では、スカベンジャ220は約0.1g〜約1gの間とすることができる。一部の非限定的な実施例では、スカベンジャ220は約0.8gとすることができる。
【0028】
組み立てられたとき、生成されたNO含有ガスの患者への供給を促進する流路を、NO生成器108内を通るように画定することができる。この流路は、反応室222から下流に第1のフィルタ216、スカベンジャ220を通って第2のフィルタ218へ延在することができる。一部の非限定的な実施例では、第2のフィルタ218は上述の流路の出口とすることができる。一部の非限定的な実施例では、スカベンジャハウジング214は穿孔された出口壁を備えることができ、この出口壁は第2のフィルタ218を当該出口壁内に固定するが、流体を当該出口壁に通して流すように構成されている。
【0029】
反応室222は、電極絶縁体212とハウジング204の内表面との間の径方向クリアランスに空洞211の一部として画定することができる。反応室222内の大気は、電極202間の電気プラズマ放電によって化学反応を生じることができ、窒素及び酸素の存在下で、患者に所定の濃度で供給されるNOガスを生成することができる。ここで記載されているように、消費電力とスカベンジャ220のサイズとを削減するため、患者の選択的な吸気イベントに応答して又はその前にのみNOガスを生成するようにNO生成システム100をトリガすることができる。しかし、電極202間の電気プラズマ放電は発熱し、これは動作中にNO生成器108の加熱の原因となり得る。加熱作用を低減してNO生成器108の温度を制御するためには、反応室222とポンプ106とを流体連通するための流管224が配置される。図示の非限定的な実施例では、流管224は、径方向に電極絶縁体212とハウジング204の内表面との間の位置でハウジング204の第1の端部206内へ略軸方向に延在する。
【0030】
ハウジング204及び反応室222を基準とする流管224の向きは、反応室222内で所望の流れパターン及び/又はスワール特性を生じる向きとすることができることが明らかである。例えば、図3及び図4に示されているように、流管224は径方向にハウジング204を通って反応室222内へ延在することができ(図3)、又は、流管224は角度を成してハウジング204内を通って反応室222内へ延在することができる(図4)。一部の非限定的な実施例では、流管224とハウジング204の外表面との間で定まる角度は、約0°〜90°の間とすることができる。
【0031】
一部の非限定的な実施例では、ポンプ106は周囲から流管224を介して大気を増圧下でNO生成器108へ供給する構成とすることができる。ポンプ106によって反応室222へ供給された空気流は、NO生成器108を患者への使用及び接触に安全な温度以下に維持するためにNO生成器108を対流冷却するよう作用することができる。追加的に、ポンプ106により供給された空気流は、大気中の窒素及び酸素からのNOガスの生成を促進するため、反応室内へ新気を供給するように働くこともできる。さらに、ポンプ106により供給された空気流は、生成されたばかりのNOガスがNO生成器108の出口へ拡散するのを促進することができ、これにより患者への拡散を促進することができる。さらに、ポンプ106により供給された空気流は、吐き出されたCOの少なくとも一部のスカベンジャ220への到達を防止するのを助けることもできる。一般的に、人間は呼気中に約50,000ppmのCOを放出することができ、COは、スカベンジャ220の使用可能寿命を短縮するように働き得る。よって、吐き出されたCOがNO生成器108に入るのを阻害又は防止することが望ましい場合がある。NO生成システム100は、呼吸サイクル中連続的にではなく、吸気時又は吸気前に生成をトリガし、ポンプ106及び流管224を用いて追加の空気流を反応室222内へ供給することにより、吐き出されたCOによるスカベンジャ220の劣化を抑えるように構成されている。ポンプ106により供給されたこの追加の空気流は、大気との比較において反応室222内で僅かに正の圧力を生じ、NO生成器108内への逆流を阻止することにより、吐き出されたCOの少なくとも一部がスカベンジャ220に到達するのを阻止するように働くことができる。
【0032】
ここで記載されているように、NO生成システム100はポイント・オブ・ケアで、例えば低酸素症の乳児のために高信頼性かつ安全なNOガスを生成するために使用することができる。図1〜5を参照して、NOガス生成システム100の動作の非限定的な一例を説明する。最初に、図5に示されているように、ステップ300においてNO生成器108を患者の気道に結合することができる。例えば、ハウジング204に取り付けられたスカベンジャハウジング214にNO生成器108を組み付け、NO生成器108の出口を患者の気道に流体連通させることができる。一部の非限定的な実施例では、NO生成器108の出口は人工呼吸器に連結することができる。一部の非限定的な実施例では、NO生成器108の出口は、患者の気道に入れられた呼吸管に連結することができる。
【0033】
ステップ300においてNO生成器108が患者の気道に結合された後、ステップ302においてNO生成器108の生成特性を決定することができる。例えば種々のパラメータの中でもとりわけ、生成すべきNOの所望の濃度、吸気後にNOを生成する時間量、一回呼吸量、体重、呼吸数、大気温度、及び大気圧を入力し、及び/又はコントローラ102によって決定することができる。これらの動作パラメータに基づき、例えばコントローラ102は、所望量の時間にわたって所望量のNOガスを生成するために必要なNO生成特性を決定することができる。一部の非限定的な実施例ではコントローラ102は、一秒あたりの電極放電群の所要数、一群あたりの電極放電数、一群における隣り合う電極放電間の時間(例えば単位μs)、及び、電源104によって電極202へ供給される各電極放電のパルス時間(例えば単位μs)を決定することができる。コントローラ102によって決定された特性は動作中に調整することができ、例えば、吐出されるNO濃度、吐出されるNO濃度、吐出されるO濃度、大気温度、大気圧、NO生成器108温度、及び/又は、患者の生体パラメータの測定値(例えば心室収縮圧、肺動脈圧等)を調整することができる。
【0034】
ステップ304では、ステップ302において決定されたNO生成パラメータを用いて、患者の吸気イベントが検出されたか否かを判定することができる。一部の非限定的な実施例ではかかる吸気イベントは、患者の例えば流体流量、温度、圧力、酸素(O)濃度、CO濃度、胸郭容積、及び/又は人工呼吸器動作パラメータ等の1つ又は複数の呼吸特性を監視することによって検出することができる。ステップ304において吸気イベントが検出された場合、ステップ306において、検出された吸気イベント後所望量の時間にわたって所望の濃度のNOガスを生成するようにNO生成器108をトリガすることができる。
【0035】
ステップ308においてNO生成システム100の1つ又は複数の吐出パラメータを監視することができ、ステップ310において、吐出パラメータの測定値に基づいてNO生成特性を変更すべきか否かを判定することができる。例えば、吐出NO濃度、吐出NO濃度、吐出O濃度、NO生成器108温度、及び/又は患者の生体パラメータの測定値(例えば心室収縮圧、肺動脈圧等)をコントローラ102によって監視し、及び/又はコントローラ102に入力することができる。一部の非限定的な実施例では、ステップ308においてコントローラ102は吐出パラメータのうち1つ又は複数を監視し、ステップ310において吐出パラメータのうちいずれか1つが、予め定められた動作範囲外に出たか否か、変更が必要であるか否かを判定することができる。例えば、コントローラ102は生成されたNOガスの濃度が所望の濃度の予め定められた範囲内にないことを検出し、その応答として、ステップ302において決定された生成特性のうち1つ又は複数を変更するよう構成することができる。代替的又は追加的に、NO及び/又はOの吐出濃度を監視して、スカベンジャ220を交換すべきか否かを判定することができる。例えば、患者の安全のためのNO及び/又はOの所定の最大濃度を確立し、この所定の最大濃度に近づいている場合、スカベンジャ220を交換する必要があると判定することができる。スカベンジャハウジング214とハウジング204とは取り外し可能に取り付けられているので、現在のスカベンジャハウジング214を取り外して、内部に新たなスカベンジャ220を配置した新たなスカベンジャハウジング214を設置することにより、スカベンジャ220を容易に交換することができる。
【0036】
一部の非限定的な実施例では、NO生成器108の温度を監視することができ、ステップ310において、ポンプ106がNO生成器108に十分な流れの空気を供給しているか否かを判定することができる。例えば、NO生成器108の温度が、予め定められた最大値に近づいている場合には、コントローラ102は患者への使用及び接触に安全な温度以下にNO生成器108を維持するため、反応室222へ供給される空気の流量を増大するようにポンプ106に指令することができる。代替的又は追加的に、ステップ310において、NOガスが所望量の時間にわたって生成された否かを判定することができる。そうである場合、NO生成器108はステップ312においてNOガスの生成を停止し、次の又は他の吸気イベントまで待機することができる。一部の非限定的な実施例では、NO生成システム100は患者の吸気の終了前又は吸気中にNOガスの生成を停止するようにNO生成器108に指令する構成とすることができる。
【0037】
上述のステップ302〜312は、患者へ高信頼性かつ安全なNO含有ガスを連続供給するため、及び、患者への使用及び接触に安全な温度にNO生成器108を維持するため、吸気イベントごとに繰り返すことができる。一般に本願開示は、NO生成器108、とりわけ反応室222を冷却するために少量の流体(例えばガス)の流れを利用するNO生成システム100を提供するものである。少量の流体の流れは、生成されたNOの拡散も促進するので、所望レベルのNOを生成するために高いエネルギーを用いる必要が無くなる。よって、本発明のNO生成システム100はエネルギー消費量の削減を達成し、なおかつ、高エネルギーを必要とすることなくNO生成器108における温度上昇も抑えるものである。
【0038】
事例
以下の事例は、NO生成システム100及び/又はNO生成器108を使用又は具現化できる態様を詳細に記載しており、当業者はかかる態様を参酌すると、当該態様の原理をより容易に理解することができる。以下の事例は例示であり、いかなる限定も意図していない。
【0039】
試験用機構及びプロトタイプのNO生成器
【0040】
図6及び図7は、プロトタイプNO生成器(図8A及び図8B)を試験するために使用される試験用機構を示す。図6及び図7に示されているように、プロトタイプNO生成器400(例えば、本願で記載されているNO生成器108のプロトタイプ)は、プロトタイプNO生成器400の下流に配置された試験用肺402と流体連通状態に置かれた。試験用肺402へ供給されるNOの濃度(Sievers 280i Nitric Oxide Analyzer, GE Analytical Instruments, Boulder, CO)と、NOの濃度(CAPS NO2monitor, Aerodyne Research Inc., Billerica, MA)と、Oの濃度(EC 9810 Ozone Analyzer, American Ecotech, Warren, RI)と、を測定するため、NOプロトタイプNO生成器400と試験用肺402との間にガス分析器403が配置されている。プロトタイプNO生成器400の上流では、投入されたOの濃度を酸素分析器404(MiniOX I, Ohio Medical Corporation, Gurnee, IL)が測定し、小児用人工呼吸器406(Inspira asv, Harvard Apparatus, Holliston, MA)が試験用肺402に呼吸を提供し、プロトタイプNO生成器400へ投入される流体流量をフローメータ408(NICO2, Respironics)が測定した。
【0041】
図8A及び図8Bに示されているプロトタイプ生成器は、ハウジング204の第1の端部206に取り付けられたワイヤ絶縁体215と、複数の固定要素410(例えばねじ部品又はボルト)を介してハウジング204の第2の端部208に取り外し可能に取り付けられたスカベンジャハウジング214と、を有する構成であった。図8AのプロトタイプNO生成器は0.8gのスカベンジャを備えた構成であり、重量は約14gであった。図8BのプロトタイプNO生成器は1.6gのスカベンジャを備えた構成であり、重量は約20gであった。よって、上述のような構成のプロトタイプNO生成器は非常に軽量であり、この軽量性はプロトタイプNO生成器の可搬性に寄与し、ポイント・オブ・ケアにおいてNO含有ガスを供給する能力に寄与する。
【0042】
これらの各プロトタイプNO生成器は、2つのイリジウム放電電極と、Ca(OH)を含むスカベンジャと、スカベンジャの相反対側の端部に配置された2つの0.22μmHEPAフィルタと、冷却及びNO供給を促進するために内部に延在する流管と、を備えている。これらの構成要素はセラミック絶縁体によって包囲され、セラミック絶縁体はアルミニウムハウジング内部に収容されていた。電極にはマイクロコントローラ回路によって給電され、オートトランスによってエネルギーが蓄積及び放出されてスパークギャップ(2mm)へ供給されることにより、プラズマを発生する。NO生成レベルは、毎秒のスパーク群の数と、一群あたりのスパーク放電数と、2つのスパーク放電間の時間(単位μsec)と、パルス時間(単位μsec)とを含む4つのパルスパターン変数によって制御された。試験中、プロトタイプNO生成器において連続的にスパークを発生し、又は、フローメータ408によって吸気の開始が測定されるごとに0.5sにわたってスパークをトリガした。
【0043】
電圧及び電流の波形の測定
【0044】
NO生成中、スパークギャップにおける電圧の波形とイリジウム電極を流れる電流の波形とが、1000×高電圧プローブ(Tektronix p6015A, Beaverton, OR)と電流プローブ(I-prober 520, Aim & Thurlby Thandar Instruments Ltd, Cambridgeshire, UK)とを備えたデジタル・フォスファ・オシロスコープ(Tektronix DPO 2012B, Beaverton, OR)によって取得されて記録された。図8AのプロトタイプNO生成器では、一回呼吸量が18mL、呼吸数が40拍/分(bpm)、気道Oレベルが50%、かつNO濃度が40ppmで、スパーク持続時間が0.5秒で毎秒パルス数40を生成したときの電圧及び電流の波形が測定及び比較された。電極は、プロトタイプNO生成器の上流で50%のO気道ガスと混合された70ml/minの空気によって連続的に冷却された。
【0045】
典型的には、電気アークを生じるための電圧及び電流は、最初のアークの方がその後のアークより高い。図9に示されているように、初期電圧は、各0.5秒スパーク発生時には約3kVであり、その後、プラズマが形成されて電極が加熱されると電圧は指数関数的に減少していく。電流についても、初期電流は約200mAであり、その後漸減していく。エネルギー消費量は、一回呼吸量18mL、呼吸数40bpmかつ50%の気道Oレベルで40ppmのNOを生成する場合、約2〜3Wの間であった。NO生成システムの空気ポンプ、高電圧オーバーヘッド及び電源を含めた他の構成要素は、約1.5Wのエネルギーを消費する。よって、ここで記載されているNO生成システム100の電力消費量は低く、このことはNO生成システム100の可搬性を助け、ポイント・オブ・ケアでNO含有ガスを提供する能力に寄与する。
【0046】
Ca(OH)スカベンジャのスカベンジング能力
【0047】
図8AのプロトタイプNO生成器の0.8gのCa(OH)スカベンジャのスカベンジング能力の試験を行った。試験中、18mLの一回呼吸量と40bpmの呼吸数とを生じるために、小児用人工呼吸器406を使用した。気道Oレベルを50%に設定し、所望のNO濃度を40ppmとした。フローメータが気道流を検知してプロトタイプNO生成器をトリガした。気管(ID=1.6mm)を介して70ml/minの空気を注入したことにより、吸気酸素濃度分画(FiO)を測定すると0.48であった。最初の12時間では1時間ごとにNOレベルを測定して記録し、その後24時間、48時間及び72時間に1回測定して記録した。赤外線サーモメータ(Cole-Parmer, Vernon Hills, IL)を用いて、最初の12時間では1時間ごとに、その後24時間、48時間及び72時間に1回、プロトタイプNO生成器のアルミニウムハウジングの温度変化を測定した。
【0048】
図10及び図11に示されているように、NOレベルは48時間にわたって1ppm未満であり、温度はNO生成試験全体を通じて30.6±0.5℃であった。これらのデータは、吸気に基づいてNO生成をトリガする場合、少なくとも2日間にわたってNOレベルを低減するためには0.8gのスカベンジャで十分であることを示唆するものであり、スパークチャンバの温度は3日間にわたって約31℃で一定に保たれた。
【0049】
スカベンジャを用いた場合及び用いない場合の流出ガス中のオゾン(O)レベル
【0050】
中の放電は、可能性のある有害副産物としてOを生成し得る。NOレベル及びOレベルを変えながら図8AのプロトタイプNO生成器により生成されるOレベルを測定し、Oを除去する0.8gのCa(OH)スカベンジャの能力の試験を行った。図12Aに示されているように、1L/minの空気流量では、NO生成の増大と共にOレベルが増大した。しかしスカベンジャを通過した後は、NOが80ppmである場合、Oレベルは3ppbの低さまで低減した。図12Bに示されているように、Oレベルを21%から80%まで変えると、Oレベルはスカベンジャ前では5.5ppbであり、スカベンジャ後では1.5ppbであった。また図12Cに示されているように、1L/minのガス流量かつ40ppmのNO濃度では、21%から100%までの範囲のいかなるO濃度に対しても、Oレベルは1.5ppb未満に保たれた。かかるデータは、電気的プロトタイプNO生成器が生成するOの量は、試験対象のどのO濃度でも最小限であったこと、及び、0.8gスカベンジャは、1日8時間にわたって米国環境保護庁(EPA)の80ppbのO暴露限界を十分に下回るレベルにまでOを効果的に除去することを示唆するものである。
【0051】
プロトタイプNO生成器より下流の流出ガス中の微量金属
【0052】
図8AのプロトタイプNO生成器より下流の流出ガス中の微量金属のレベルを測定するため、以下の5つの群を調べた:(1)スカベンジャ及びHEPAフィルタを用いない群、(2)スカベンジャと1つのHEPAフィルタを用いる群、(3)スカベンジャと直列の2つのHEPAフィルタとを用いる群、(4)スカベンジャのみを用いる群、及び(5)1つのHEPAフィルタのみを用いる群。NOは、24時間にわたって1L/minの空気流量で40ppmで生成された。流出ガスは、15mlの5%硝酸(Optima Grade, Fisher Scientific, Cambridge, MA)に連続的に混入された。24時間で全てのサンプルが収集され、マサチューセッツ大学質量分析センター(Mass Spectrometry Center、Amherst, MA)で四重極形質量分析計(ICP−MS)を用いて分析された。
【0053】
図13の表に示されているように、フィルタ及びスカベンジャを用いない場合、1L/minの空気流量で24時間NOを生成した後、プラズマによって40ppbのニッケル粒子が生成された。インラインのCa(OH)(0.8g)スカベンジャを用いてHEPAフィルタを用いない場合、ニッケルレベルは1.7ppbにまで減少した。1つのHEPAフィルタのみを用いた場合、ニッケルレベルは0.3ppbであった。NO生成器の後に0.8gのCa(OH)スカベンジャと1つ又は2つのHEPAフィルタを用いた場合、ニッケルレベルは1ppb未満に減少した。これは、8時間シフトで週40時間の作業中に作業者を保護するための作業室空気中の金属ニッケル及びニッケル化合物のOSHA限界レベル1.0mg/m(mg/m=1ppb)を下回るレベルである。他の微量金属のイリジウム及び白金は、スカベンジャ又はHEPAフィルタを用いた場合又は用いない場合0.03ppb未満であった。これは、電気的に生成されるNOガス中において無視できるものである。これらのデータは、NO生成中に放出されるニッケルは極微量であり、これはスカベンジャ及びHEPAフィルタによって効果的にブロックすることができることを示唆している。
【0054】
肺高血圧を有する麻酔されたウサギの調査
【0055】
ウサギの調査は、マサチューセッツ・ジェネラルホスピタル組織的動物保護利用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee、マサチューセッツ州ボストン)によって承認されたものである。体重3.4±0.4kg(平均±SD)の5匹の健康な6歳のオス及びメスのニュージーランド白ウサギであった(Jackson Laboratory, Bar Harbor, ME)。ウサギに麻酔をかけ(IVケタミン及びフェンタニル)、麻痺させ(ロクロニウム)、気管切開によって6ml/kgの一回呼吸量、40〜50bpmの呼吸数、投与気道FiOが0.5、0.5秒の吸気時間、かつPEEP1〜2cmHOで、機械的に人工呼吸した。外頸静脈を介して配置された4−Frカテーテル(Swan-Ganz, Edwards Lifesciences, Irvine, CA)を用いて、右心室収縮圧(RVSP)を連続的にモニタリングした。有効な肺血管収縮薬U46619(Cayman Chemical, Ann Arbor, MI)を注入して60分にわたって右心室収縮圧(RVSP)を上昇させることにより、肺高血圧を引き起こした。U46619注入中、NO吸気前及び吸気後に、平均的な動脈圧及び心拍数をベースラインでモニタリングした。図8AのプロトタイプNO生成器は気管カニューレの外部端に配置され(ID=3.5mm)、フローメータ408によって吸気に基づきトリガされて0.5秒にわたってNOを生成した。
【0056】
一部の非限定的な用途では、プロトタイプNO生成器は肺高血圧を治療するための乳児人工呼吸に対応した構成とすることができる。プロトタイプNO生成器から生成されたNOをスタンダード・オブ・ケアであるNO/NタンクからのNOと比較し、これによって、プロトタイプNOが、急性肺高血圧を発症したウサギにおいて収縮を生じるか否かを確認した。図14及び図15に示されているように、麻酔をかけられたウサギは60分にわたってトロンボキサンアナログのU46619の連続注入を受けた。これにより、RVSPは14±2mmHgから28〜30mmHgにまで上昇した。NOは吸気のプラズマ放電により生成され、70ml/minで気管内チューブに注入された。ウサギは50%のOと、吸気に基づいてプロトタイプNO生成器によって生成された20ppm、40ppm又は80ppmのNOとを4分間吸い込み、その後NOの生成及び投与を停止し、その後の5分間にわたってRVSPを測定した。図14を詳細に参照すると、電気的に生成されたNOを吸い込むことにより、RVSPがNO吸い込み前の30mmHgからNO吸い込み後1分で24mmHgにまで急速に減少した。比較対象として、複数のウサギがタンク(N中500ppmNO、Airgas, Cinnaminson, NJ)から50%Oで希釈された40ppmのNOを吸い込んだ。このデータは、電気的に生成されたNOが、従来のNO/Nシリンダから希釈されたNOを吸い込む場合と同程度に、RVSPの低減に有効であることを示唆する。
【0057】
エネルギーを削減してスカベンジャの消費量を低減するため、2回又は3回の呼吸で1回、吸気に基づいてスパークを生じることが、肺高血圧を発症したウサギにおいてRVSPを低減するか否かの試験を行った。図15に示されているように、NOを2回又は3回の呼吸で1回生成することにより、ウサギにおいてRVSPが30mmHgから26mmHgにまで減少した(P<0.05はNO吸い込み前と比較して異なる)。これは、2回又は3回の呼吸で1回トリガすることが肺高血圧の治療に効果的となり、NO生成システム100の電力消費量を低減してスカベンジャ200のライフタイムを延長し得ることを示唆している。
【0058】
本願明細書では、明確かつ簡潔に明細書を記載できるように実施形態を記載しているが、本発明から逸脱することなく実施形態を種々組み合わせ、又は分離することが可能であることを意図しており、またこのことは明らかである。例えば、本願で記載されている好適な特徴はいずれも、本願で記載されている発明の全ての側面に適用できることが明らかである。
【0059】
よって、上記では特定の実施形態及び事例を参酌して本発明を説明したが、本発明は必ずしもかかる限定を受けるものではなく、これらの実施形態、事例及び使用からの数多くの他の実施形態、事例、使用、改良及び発展形態が、添付した特許請求の範囲に包含されることを意図している。本願にて引用した各特許及び刊行物の開示内容は全て参照によって含まれ、これは、当該各特許又は刊行物が個別に参照によって含まれている場合と同様である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13
図14
図15