特許第6968206号(P6968206)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6968206車両の自動化されて未操作で閉じられるクラッチ、好適にはハイブリッド車両のハイブリッドリリースクラッチで実施された自己調整を識別する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6968206
(24)【登録日】2021年10月28日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】車両の自動化されて未操作で閉じられるクラッチ、好適にはハイブリッド車両のハイブリッドリリースクラッチで実施された自己調整を識別する方法
(51)【国際特許分類】
   B60K 6/387 20071001AFI20211108BHJP
   B60W 10/02 20060101ALI20211108BHJP
   B60W 20/15 20160101ALI20211108BHJP
   F16D 25/12 20060101ALI20211108BHJP
   F16D 48/02 20060101ALI20211108BHJP
   F16D 48/06 20060101ALI20211108BHJP
【FI】
   B60K6/387ZHV
   B60W10/02 900
   B60W20/15
   F16D25/12 D
   F16D48/02 640C
   F16D48/02 640J
   F16D48/06 101C
【請求項の数】7
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2019-566218(P2019-566218)
(86)(22)【出願日】2018年5月11日
(65)【公表番号】特表2020-521667(P2020-521667A)
(43)【公表日】2020年7月27日
(86)【国際出願番号】DE2018100452
(87)【国際公開番号】WO2018219394
(87)【国際公開日】20181206
【審査請求日】2019年11月29日
(31)【優先権主張番号】102017112094.7
(32)【優先日】2017年6月1日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ヴェーバー
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ マンシュペアガー
【審査官】 冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−513052(JP,A)
【文献】 特表2015−528545(JP,A)
【文献】 特開2010−167798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/387
B60W 10/02
B60W 20/15
F16D 25/12
F16D 48/06
F16D 48/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の自動化されて未操作で閉じられるクラッチで実施された自己調整を識別する方法であって、
前記クラッチのプリロード点の設定を用いて、当該クラッチの調整装置の調整を検査し、
前記プリロード点の位置が変化した場合に、クラッチ特性曲線を適合化する、方法において、
前記プリロード点の前記設定を検出し、検出されたプリロード点と所定のプリロード点との間の偏差を求めて記憶し、前記クラッチ特性曲線の走査点を適合化し、
前記走査点を、前記検出されたプリロード点に依存して変化する走査点境界領域と比較し、当該比較に基づいて前記走査点の再利用を検査することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記走査点境界領域は、前記検出されたプリロード点と前記所定のプリロード点との間のシフトに依存して変化する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記検出されたプリロード点の前記偏差を、ビットまたは値として記憶する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記調整装置の前記調整が行われなかったことに起因して、前記検出されたプリロード点と前記所定のプリロード点との間の偏差が識別されない場合、前記適合化によって決定された前記走査点を破棄する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記比較により、前記調整装置の前記調整が行われていることが識別される場合、前記適合化によって決定された前記走査点をクラッチ制御に使用する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記プリロード点の前記設定を、「イグニッションスイッチオフ」の車両状態の間に行う、請求項1から5までの少なくとも1項記載の方法。
【請求項7】
前記走査点の前記適合化を、「イグニッションスイッチオン」の車両状態において行う、請求項1から6までの少なくとも1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の自動化されて未操作で閉じられるクラッチ、好適にはハイブリッド車両のハイブリッドリリースクラッチで実施された自己調整を識別する方法に関している。ここでは、クラッチのプリロード点の設定を用いた当該クラッチの調整装置の調整が検査され、ここで、プリロード点の位置が変化した場合に、クラッチ特性曲線が適合化される。
【0002】
独国特許出願公開第102012219034号明細書からは、調整装置を備えかつ制御機器によって制御されたクラッチアクチュエータによって操作される摩擦クラッチを制御する方法が公知である。この調整装置は、カウンタプレートと、該カウンタプレートに対向するクラッチアクチュエータを用いて変位可能なプレッシャプレートとの間で緊締可能な摩擦ライニングの軸方向の摩耗を、カウンタプレートに固定的に結合されたハウジングに支持されクラッチアクチュエータによって軸方向に付勢されたレバーの軸方向の調整によって補償する。この調整装置は、摩擦クラッチの摩耗量に依存して求められる制御機器の制御パルスに依存して調整する。
【0003】
第102016213037.4号の出願番号を有する本出願人のまだ公開されていない独国特許出願明細書からは、電気式アクチュエータと摩擦クラッチとを有する操作装置と調整装置とを備えたクラッチ装置を操作する方法が公知である。この調整装置は、操作装置の調整のために用いられ、この場合、摩擦ライニングの摩耗によって発生する操作力の増加が低減されるかまたは阻止される。ここでは、調整装置の調整は、プリロード点を用いて検査される。
【0004】
調整の時点を予測するのは困難である。クラッチが調整されると直ぐにクラッチ特性曲線はシフトする。調整過程の後でクラッチが再び閉じられると、ソフトウェアに格納されているクラッチ特性曲線はもはや物理的なクラッチ特性曲線と一致せず、要求されたトルクはクラッチによって適正に設定されなくなる。
【0005】
その上さらに、ソフトウェア内の走査点ルーチンによって、ソフトウェア特性曲線が再びハードウェア特性曲線に適合化されることは公知である。適合化された走査点と所定の走査点との間で大きな偏差が確認された場合には、新たに適合化された走査点は、誤った適合化の阻止のために妥当性検査する必要がある。しかしながら、そのような妥当性検査は、車両の動作準備が整わない非常に多くの時間を費やすことになる。
【0006】
本発明が基礎とする課題は、検査時間が短縮され、車両の動作準備が常に整っている、自動化されて未操作で閉じられるクラッチで実施された自己調整を識別する方法を提供することにある。
【0007】
上記課題は、本発明により、プリロード点の設定が検出され、検出されたプリロード点と所定のプリロード点との間の偏差が求められて記憶され、次いで、クラッチ特性曲線の走査点が適合化され、ここで、走査点は、検出されたプリロード点に依存して変化する走査点境界領域と比較され、当該比較に基づいて走査点の再利用が検査されることにより解決される。このことは、適合化された走査点の妥当性検査を省くことができるにもかかわらず、クラッチの自己調整が実施されたかどうかが高い信頼性のもとで識別されるという利点を有する。これにより、車両の動作準備が整うまでの許容不能な遅延が阻止される。
【0008】
好適には、走査点境界領域は、検出されたプリロード点と所定のプリロード点との間のシフトに依存して適合化される。特に、調整の確認の際に、許容される走査点の境界が拡大する場合には、適合化された走査点による特性曲線シフトがどの位置にかなっているのかを有意義な方法で確認することができる。それゆえ、もはや妥当性を問い合わせる必要がなくなり、そのためクラッチの自己調整の識別のための期間が短縮される。
【0009】
一実施形態では、検出されたプリロード点の偏差は、ビットまたは値として記憶される。このことは、それぞれ使用されるソフトウェアルーチンに依存しており、このソフトウェアルーチンに適合化可能である。
【0010】
一応用形態では、調整装置の調整が行われなかったことに起因して、検出されたプリロード点と所定のプリロード点との間の偏差が識別されない場合、適合化によって決定された走査点が破棄される。この場合、ソフトウェア内に存在するクラッチ特性曲線は、当該クラッチ特性曲線がクラッチの物理的なクラッチ特性曲線と十分に一致することが想定されるので、引き続き使用することが可能である。
【0011】
一代替形態では、比較により、調整装置の調整が行われていることが識別される場合、適合化によって決定された走査点がクラッチ制御のために引き続き使用される。この場合、同様に所定の走査点境界領域内に存在する適合化された走査点も、ソフトウェアのクラッチ特性曲線を物理的なクラッチ特性曲線に適合化させるために使用され、ここで、クラッチによって伝達されるトルクは、要求されたトルクに適正に設定される。
【0012】
一実施形態では、プリロード点の設定は、「イグニッションスイッチオフ」の車両状態の間に行われる。これにより、摩擦クラッチの現下の状態が評価され、クラッチの自己調整に関する証明が導出されることが保証される。
【0013】
好適には、走査点の適合化は、「イグニッションスイッチオン」の車両状態において行われる。
【0014】
本発明は、多数の実施形態を可能にする。そのうちの一つが説明される。
【0015】
ハイブリッドリリースクラッチは、自動車のドライブトレーンに配置されており、この場合、このドライブトレーンはハイブリッドドライブトレーンとして形成されている。そのようなハイブリッドドライブトレーンは、第1の駆動機械として内燃機関を有し、第2の駆動機械として電気モーターを有する。ハイブリッドリリースクラッチは、ここでは、内燃機関と電気モーターとの間に効果的に配置されている。特に、ハイブリッドリリースクラッチが摩擦クラッチとして形成されている場合、このクラッチは、押圧プレート、プレッシャプレートおよびクラッチディスクを有する。クラッチディスクの両側は、ここでは摩擦ライニングで覆われている。プレッシャプレートは、押圧プレートに対して相対的に軸方向に制限されて変位可能であってもよい。この変位は、クラッチ噛合された操作位置とクラッチ解除された操作位置との間で有効である。その際、押圧プレートとプレッシャプレートの間のクラッチディスクは、摩擦結合式の機械的動力伝達のためにクランプ可能である。ライニング摩耗の増加に伴って、クラッチ操作力は増加する。このライニング摩耗は、調整装置を介して補償される。この調整装置の調整の後で、クラッチ特性曲線の検査および/または新たな適合化が行われる。
【0016】
調整装置で行われる調整は、プリロード点を用いて検査される。このプリロード点は、ハイブリッドリリースクラッチにおける摩擦クラッチの機械的動力伝達が開始される操作位置を表す。ここでは、プリロード点の適合化は、「イグニッションスイッチオフ」の車両状態で実施され、ここで、この適合化によって見つかったプリロード点が妥当性検査される。プリロード点の変化が確認されると、自己調整が実施されたことが推論され、このことは、制御機器の不揮発性メモリ、例えばEEPROMに記憶される。この記憶は、ベースとなる制御ソフトウェアに応じて、ビットまたは値として行うことができる。
【0017】
ハイブリッドリリースクラッチがトルクを伝達し始めたばかりのクラッチ特性曲線の点を表す走査点の次に続く適合化では、走査点境界がプリロード点の適合化中に求められたプリロード点に依存して拡大される。「イグニッションスイッチオン」の車両状態において適合化される、新たに適合化された走査点が、所定の走査点境界領域内に存在するならば、新たに適合化された走査点の妥当性検査を要することなく走査点の跳躍的変化が許容される。すなわち、ソフトウェア特性曲線は、新たな走査点を用いて、実際に存在する物理的なクラッチ特性曲線に適合化され、それによって、要求されたトルクが高い精度で提供される。これにより、走行快適性が高まる。
【0018】
新たに適合化された走査点が、走査点境界領域内に存在するならば、走査点の妥当性検査を要することなくクラッチ特性曲線の適合化が行われる。新たな走査点が走査点領域外に存在するならば、この新たな走査点は破棄され、それによって、クラッチ特性曲線の適合化は行われない。
【0019】
提示された解決手段は、ソフトウェア機能を用いた自己調整機構の検査を可能にする。ソフトウェア内に格納された機能を用いることにより、調整がトリガされたかどうかが検査され、それに応じてソフトウェア特性曲線が適合化され、それによって、ソフトウェアは、測定不能なクラッチトルクを事前設定に応じて正確に設定できる。