【氏名又は名称】ヘレーウス クヴァルツグラース ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
石英ガラス部材は、多くの用途(例えば、管または中実円筒体の形態で光ファイバを製造するために使用する半完成の母材;ランプ製造での紫外線、赤外線及び可視スペクトル領域のランプならびにラジエータ用のスリーブ管、ガラス球、カバープレートまたは反射器キャリヤ;化学装置構築または半導体製造での半導体構成要素、ジグ、ベルジャー、るつぼまたは保護シールド処理のための石英ガラスの反応器及び装置の形態;または管、棒、プレート、フランジ、環またはブロックを含む単純な石英ガラス部材)で使用される。特別な性質を作成するために、石英ガラスは、他の物質(例えばチタン、アルミニウム、ホウ素、ゲルマニウムまたはこれらの物質の組み合わせ)によってドープされる。
【0003】
光ファイバの設計及び用途に関する応用科学及び工学技術の分野は、ファイバオプティックスとして公知である。光ファイバは、ヒトの毛髪よりわずかに太い直径までガラス(シリカ)を引き伸ばすことにより製造される、可撓性で透明な繊維である。光ファイバは、ほとんどの場合、ファイバの両端の間に光を伝達するために使用され、光ファイバ通信で広く用いられており、そこで、ワイヤケーブルより長い距離にわたって及び高い帯域(データ速度)での伝送を可能にする。ファイバは、信号が低減した損失でそれらに沿って移動するので、金属ワイヤの代わりに使用される。更に、ファイバは、電磁干渉(金属ワイヤを悩ます問題)にも影響を受けない。ファイバは照明でも使用されて、画像伝達で使用できるようにバンドルで包まれ、そうしてファイバスコープの場合のように閉鎖空間内の観察を可能にする。特別に設計されたファイバは、様々な他の用途(例えば、光ファイバセンサ及びファイバレーザー)でも使用される。
【0004】
光ファイバは通常、低屈折率を有する透明なクラッド材料によって囲まれる透明なコアを含む。光は、ファイバを導波路として機能させる内部全反射の現象によって、コアに保持される。多くの伝播路または横モードを支援するファイバは多モードファイバと呼ばれており、単一モードを支援するものは単一モードファイバと呼ばれている。
【0005】
光ファイバは、通常、2つの別個の工程で製作される。最初に、母材の棒が調製されて、そうして母材は、ロッドインチューブ法(RIT)またはオーバークラッドロッドインシリンダ(RIC)工程によって作成される。次に、光ファイバは、作成した母材から溶融線引される。2つの工程の最初のものを完了して、光ファイバ母材を作成する従来の方法及び装置は、Ohらに発行された米国特許第6,053,013号に開示されている。
【0006】
具体的には、Ohらは光ファイバ棒のオーバークラッド装置を提供する。オーバークラッド装置は、立て旋盤、立て旋盤の各端に取り付けられるチャック、立て旋盤の両端の間を垂直に移動するための立て旋盤の往復台、往復台に取り付けられる酸素水素バーナー、往復台に取り付けられる炉、立て旋盤の端に提供される真空ポンプ、立て旋盤の端まで真空ポンプを接続するためのカプラ、ならびに往復台の垂直運動、酸素水素バーナーの流量及びチャックの回転を制御するための立て旋盤の外側のコントローラを含む。炉は、ガラス管で母材をオーバークラッドするために、ガラス管を予熱または加熱する。特許は、2000年にOhらに発行された。
【0007】
更に最近になると、石英ガラス管、棒またはつぶしたオフラインロッドインシリンダ(ORIC)の母材は、下端がストランドを軟化させて形成し始めるように、垂直配向の加熱ゾーンを含む装置(例えば、炉)に石英ガラス部材(例えば、円筒体、インゴットまたは非コラプスRIC)を入れることにより作成された。そうしてストランドは、1セット以上の牽引ホイールを含む牽引装置に置かれる。ストランドの線引速度は牽引ホイールの速度により制御され、それは形成ゾーン温度もしくは粘性及びホイールにより支持されるストランドの重量に応じて、下向き力または上向き力を適用できる。形成は、成形型を使用せずに行われる。したがってストランドの寸法は、石英ガラス部材の供給速度、加熱ゾーンの温度及び牽引ホイールの速度により制御される。
【0008】
細長くされる石英ガラス円筒体の端がより小さい直径のダミー管またはホルダの形状で取り付け部分に溶接される場合、牽引段階を改良できる。この部分は、牽引工程を短縮することができ、同時に材料の損失を減らすことができる。通常、ホルダとして有用な石英ガラス部材は細長くされる石英ガラス円筒体の上端に溶接されるが、ホルダは円筒体の下端にまたは両端に溶接されることができる。
【0009】
このようなアセンブリを製造するのに適している方法は、Heraeus Tenevo GmbHを代表して出願した国際特許公開第WO2007/039426号に記載されている。光ファイバ用母材として機能する石英ガラス管をダミー管またはホルダに突合せ溶接するために、互いに接続している前面は、溶融結合の形成の前に面取りされることができる。結合面はプロパン/酸素バーナーまたは電気的に加熱した炉を使用して軟化されて、それから結合面は互いに対して押圧される。
【0010】
Shimadaらに発行され、対象出願の譲受人Heraeus Quarzglas GmbH&Co.KGに譲渡された米国特許第6,484,540号は、光ファイバ母材として使用するためにダミー管を石英ガラス管に溶接する方法が開示されている。前記方法は、石英ガラス管をダミー管と溶接する前のダミー管の及び/または石英ガラス管の内縁部を面取りすることを含む。それからダミー管及び石英ガラス管は、互いに溶接される。
【0011】
Sattmannに発行されて、Heraeus Quarzglas GmbH&Co.KGに譲渡された米国特許第8,161,772号は、石英ガラスから製造される光学要素の製造のための方法を開示する。石英ガラスジャケット管によって囲まれるコアロッドの同軸配置は、加熱ゾーン内に垂直方向に導入されて、加熱ゾーン中で部分ごとに軟化されて、延伸バルブが形成されると細長く伸ばされて、石英ガラス部材を得る。上下に配置された少なくとも2つの別個のコアロッド部分を有するコアロッドが使用され、上側のコアロッド部分の重量は、延伸バルブ上に提供されるジャケット管の取り付けまたは支持領域により支持される。
【0012】
従来の下方へ線引システム及び工程により、原型の円筒体またはクラッドサイズに近接する、より大きな外径の母材を作成するには大きな問題がある。かなりの量の良好な母材ガラスは工程の開始で無駄になってしまい、母材の形状及び導波性は、形状、クラッド対コア比及び湾曲などのパラメータに関して要求される仕様からほど遠い。したがって、従来の母材システム及び工程には明白な欠点がある。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ここで図面を参照するが、図面を含む種々の図の全体にわたって類似の参照番号は類似の要素を指し、
図1は、一実施形態に従って光ファイバ母材(または光ファイバ)を製造するための装置10を示す。装置10は、ガラスクラッド内に置かれる導波性光ファイバコアを形成する、ガラスコアロッド1を含む。更に具体的には、クラッドは好ましくはコアロッド1上に形成されて、放射状にコアロッド1を囲む。クラッドは、1つの管で、または
図1に示すように、ガラスの内管2及び外管3で形成されることができる。コアロッド1、内管2及び外管3の長手方向軸線は、装置10全体の垂直に配向した中心軸線4に対して同軸の方向にそれぞれ延在する。第1空隙5はコアロッド1と内管2の間に最初に存在し、第2空隙6は内管2と外管3の間に最初に存在する。クラッドは外径「OD」を有する。
【0022】
クラッドは、純粋な石英ガラス、または少なくとも85%のSiO
2成分を有するドープした石英ガラスでもよい。しかし、好ましくはクラッドは高純度の石英ガラスである。コアロッド1は、好ましくは大部分は純粋な石英ガラスである。石英ガラスは、低熱膨張係数によって、広い波長帯にわたる光透明性によって、及び高い化学抵抗及び熱抵抗によって区別される。高純度の石英ガラスは、不純物Li、Na、K、Mg、Ca、Fe、Cu、Ni、Cr、及びMnの総含量が重量を基準にして10ppm未満である、石英ガラスとして定義される。
【0023】
クラッド及びコアロッド1はそれぞれ、任意の好適な工程(例えば、溶融石英、または内部蒸着、外部蒸着及び軸蒸着を含む、1つ以上の種類の化学蒸着(CVD))によって形成されることができる。コアロッド1の材料は、周囲のクラッドの材料の屈折率より大きい屈折率を通常有して、母材から線引されるファイバを通過する光信号の内部反射を可能にし、効率的な導波路をもたらす。
【0024】
図1に戻ると、第1ホルダ14(「ダミー管」と呼ばれる場合もある)は、外管3の上端に接合される、溶融される、または溶接される(ひとまとめにして「溶接される」)。第1ホルダ14は通常、コアロッド1またはクラッドより低質かつ低コストの石英ガラス(例えば、より多くの不純物、泡などを含有する石英ガラス)でできている円筒体である。第1ホルダ14は通常、薄型であり、小型の外径を有し、コアロッド1またはクラッドにほぼ等しい内径を有する。第1ホルダ14は、外管3を保持して移動するグリッパー(図示せず)用のレシーバとして有用な周囲の矩形溝15を有する。外管3が中心軸線4に対して横方向に載置するジンバルの周囲を枢動できるように、グリッパーはジンバルで支えられ、それは延伸工程の間の自動調心に寄与する。
【0025】
第1ホルダ14の上端は蓋17によって閉じられて、それを通って、ガス管18が通過する、外管3の内側孔、したがって内管2の内側孔も排気され得る、及びパージガスが導入され得る。更なる石英ガラス部分19は、コアロッド1及び内管2の上端に置かれる。部分19は、部分19を通して及び内管2の内側孔内に真空を通すための溝または孔も有する。コアロッド1が延伸工程の間に浮動するのを防ぐ、支持棒20は、部分19と蓋17の間に延在する。
【0026】
装置10の代替的実施形態が、
図2に示される。
図1とは対照的に、
図2による実施形態は、小さい開口部1cによって分離される上側コアロッド部1a及び下側コアロッド部1bに分割されたコアロッド1を示す。上側コアロッド部1a及び下側コアロッド部1bのそれぞれは、約3mの長さを有することができる。この実施形態は、内管2上の上側コアロッド部1aの宙吊り取り付けを可能にする。内管2は、内管2の上端に接合、溶融または溶接される石英ガラスの第2ホルダ14aによって保持される。そうでなければ、内管2に対する第2ホルダ14aの構成は、外管3に対する第1ホルダ14の構成と類似している。したがって、
図2に示す装置10の実施形態は、光学母材を製造する工程中に複数のホルダが複数のガラス部材に取り付けられ得ることを示す。
【0027】
上側コアロッド部1aの宙吊り取り付けは、その壁を通って及び上側コアロッド部1aの上端を通って内管2の上端で延在する、石英ガラスピン7によって達成される。この目的で、上側コアロッド部1aは、ピン軸周囲での枢動性を確実にする適切な孔を備える、冷却状態で提供される。下側コアロッド部1bは、その壁を通して内管2の下端で延在する更なる石英ガラスピン8上にある。小さい開口部1cは、コアロッド部1a、1bの間に残る。内管2の内側孔の真空気密性は、外管3によって確実にされる。
【0028】
装置10の更なる実施形態(図示せず)は、
図1に示す実施形態のいくつかの態様及び
図2に示す実施形態のいくつかの態様を含む。例えば、
図2に示した実施形態に特徴的な上側コアロッド部1aの宙吊り取り付けの代わりに、更なる実施形態は、ピン7、8を
図1に示す実施形態に特徴的な蓋17、部分19及び支持棒20と交換する。したがって、第1ホルダ14及び第2ホルダ14aの上端は蓋17(所望により、それを通って、ガス管18が通過できる、外管3の内側孔、したがって内管2の内側孔も排気され得る、及びパージガスが導入され得る)によって閉じられる。部分19は、第2ホルダ14aが取り付けられる内管2の上端上ではなく、
図1に示す実施形態と異なり上側コアロッド部1aの上端上だけに配置される。支持棒20は上側コアロッド部1aが延伸工程の間に浮動するのを防ぎ、部分19と蓋17の間に延在する。
【0029】
別の実施形態(図示せず)で、第1ホルダ14(または代わりのホルダ)は、コアロッド1に取り付けられることができる。したがって別個のホルダはそれぞれ、コアロッド1、内管2及び外管3に取り付けられることができる。2つのホルダは、更なる別の実施形態(図示せず)でコアロッド1、コアロッド1の各端上の1つのホルダに取り付けられることができる。
【0030】
実施形態を問わず、装置10は通常、下側開放端、予熱絶縁ゾーン、加熱ゾーン、後熱冷却、アニール及びオーブンガスパージゾーン、及び下側開放端に対向する上側開口端を有する。加熱ゾーンは、加熱要素(通常、オーブンまたは炉)によって、好ましくは500℃〜2,300℃、及び更に好ましくは1,000℃〜2,300℃、及び更に最も好ましくは1,500℃〜2,300℃の温度まで加熱されることができる。更に具体的には、加熱要素は好ましくは環状形状である。加熱要素は、装置10の加熱ゾーンを形成する。不活性ガスは、酸化が母材の外側表面に生じるのを防いで、その優れた熱伝導率により母材の外側表面上の均一な熱温度分布を強化するために、高温で加熱要素に注入される。
【0031】
装置10を用いて母材を製造する工程は、
図1を参照して説明される。ガラスアセンブリ(それは、コアロッド1及びクラッドを含む)は加熱され、軟化され、光学要素(例えば、光学ファイバ母材または光ファイバ)を形成するために引き伸ばされる。更に具体的には、ガラスアセンブリは、ガラスアセンブリが加熱ゾーンにてゾーン的方法で加熱される装置10を通って、上方(または下方)方向に進む。母材は、溶融による変形(及び所望により、工程中の牽引力または圧縮力による伸張/延伸)によって連続的に作成される。
【0032】
一実施形態で、ガラスアセンブリは、2つの別個のガラス部材、コアロッド1及びクラッドの同軸アセンブリである。更に具体的には、コアロッド1は中実の円筒状棒の形態であり、クラッドは1つの中空オーバークラッド円筒体の形態、または
図1に示すように2つの中空のオーバークラッド円筒体は、内管2及びコアロッド1(すなわち、ロッドインシリンダアセンブリ)を囲む外管3を含む。同軸アセンブリで、ガラスアセンブリが加熱ゾーンに入る前に、コアロッド1及びクラッドは一緒に融着されない。
【0033】
ガラスアセンブリのこの実施形態の同軸アセンブリが装置10を通って進む際、2つのガラス部材を軟化させ一緒に融着させて、一体化したガラス体を形成するために十分な所定の温度まで、コアロッド1及びクラッドは加熱される(「所定の」とは、所定の特徴が決定されなければならないように、すなわちいくつかの事象に先立って選択されているまたは少なくとも知られているように、事前に決定されることを意味する。「一体化」とは、単一部分、または追加部分なしでそれ自体で完成する1つの一体型部分(すなわち、部分が別の部分を備えるユニットとして形成される1つの一体型構造部分である)を意味する)。更に具体的には、多部品型ガラスアセンブリの連続部分が、加熱ゾーンに接近して、加熱ゾーンで加熱される際、クラッド及びコアロッド1は軟化されて、軟化されたクラッドはコアロッド1上で潰れて、それと融合する。少なくとも1つの及びより好ましくは複数の母材または光ファイバは、得られた一体型構造のガラス体から線引されることができる。
【0034】
好ましくは、アセンブリのこの実施形態の同軸配置は、500℃〜2,300℃、及び更に好ましくは1,000℃〜2,300℃、及び最も好ましくは1,500℃〜2,300℃の温度まで加熱される。より好ましくは、コアロッド1上のクラッドの軟化及び潰れは、1,000℃〜2,200℃、及び更に好ましくは1,300℃〜2,000℃、及び最も好ましくは1,600℃〜1,800℃の温度で生じる。軟化して潰れたクラッドと軟化したコアロッド1の融着は、好ましくは1,000℃〜2,200℃、及び更に好ましくは1,300℃〜2,200℃、及び最も好ましくは1,600℃〜2,200℃の温度で生じる。しかし当業者であれば、他の要因(例えば、ガラス材料の組成及びスループット)が、クラッドが潰れて、コアロッド1に融着する温度に影響を及ぼすと理解する。
【0035】
本開示は、上述のとおりに2つの石英ガラス部材を取り付けるために使用する、溶接プロセスに焦点を合わせる。溶接プロセスは、旋盤の両方の石英ガラス部材を固定する工程と、旋盤を使用して石英ガラス部材を互いに向かって移動させる工程と、両方の石英ガラス部材の両面を接合して同時に加熱及び軟化を行う工程と、続いて互いに対して軟化した面を押圧して、溶接シームを有する部材アセンブリを形成する工程と、周囲温度まで部材アセンブリを冷却する工程と、を含む。必要に応じて、黒鉛パドルを軟化した外側表面に対して押圧して、前記表面は−特に同じ直径の2つの円筒体が融着される場合−この工程で形成される。
【0036】
石英ガラス部材が溶接されるとき、不純物が、周囲雰囲気、加熱バーナーから、もしくは境界壁から形成され得る、または放出され得る。不純物は、接合される石英ガラス部材に、特に軟化した接続面上に堆積できる。これらの不純物は有害であり、境界面上の泡または他の欠陥に、またはガラスアセンブリの更なる工程中の破損にまでつながり得る。更に、溶接の間、望ましくない塑性変形は、溶融ゾーン領域で生じる可能性がある。変形が面倒な機械的再加工により排除される場合もあるが、寸法の誤差は通常見つかる。このような塑性変形は、溶接工程の間の不規則かつ不明確な加熱条件により促進される。
【0037】
溶接工程が2つの石英ガラス部材を一緒に取り付けることを必要としているいくつかの用途で、部品の端を面取りすることは有用であるとわかった。装置10に戻って、
図3a及び
図3bは、母材及び第1ホルダ14(または、更に一般的には、任意のガラス部材の縁部分及びそのガラス部材に取り付けられる任意のホルダ)として使用するために、両方のコアロッド1の縁部分を面取りすることを示す。面取り9を有するコアロッド1及び面取り11を有する第1ホルダ14は、それらの2つの部材が取り付けられる(好ましくは、溶接によって)前を
図3aに、及びそれらが溶接シーム13に沿って取り付けられた後を
図3bに示す。比較的低コストの第1ホルダ14は、比較的高価な石英ガラスコアロッド1の端に溶接されて、輸送、クラッドを有するコアロッド1を一体型構成のガラス体内に溶接するような処理工程などを容易にする。それらの目標に向けて、第1ホルダ14は、コアロッド1への損傷の危険を冒さずに固定され、操作されることができる。
【0038】
図3aに示すように、面取りしたコアロッド1及び面取りした第1ホルダ14は、両方の部材を加熱して溶融することにより一緒に溶接されて、そうして矢印12の方向に互いに対して直接面取りした縁9、11を押圧して、均一な一体型構成体16を形成する。面取り9、11は、酸素/水素バーナー、プロパン/酸素バーナーまたは電気炉を使用して加熱されて、一緒に溶融される。溶接棒は必要ない。溶接の後、必要に応じてまたは所望により、均一な一体型構成体16の外側表面は、グラファイトこてまたはパドルまたは類似の成形ツールを使用して外周面を押圧することにより、形成されることができる。
【0039】
1つの例示的実施形態で、母材として使用するために面取りしたガラスコアロッド1は、外形180mm及び内径50mmを有し、面取りした第1ホルダ14は外形120mm及び内径50mmを有する。両方の部材の溶接側上の内側縁は、周方向10mm及び長手方向10mmの長さで面取りされた。面取りで最も有益な量はコアロッド1及び第1ホルダ14の内径、壁厚及び他の寸法に依存するが、面取りの好適な量は約2mm以上だが壁厚の30%以下である。
【0040】
面取り9、11が形成された後、母材及び第1ホルダ14として使用するためにコアロッド1の溶接側上の縁は、所定の発熱量、位置関係などを維持すると共に、約20分間の加熱によって溶融されて、前記縁は、
図3aの矢印12により示すように互いに対して押圧された。このように得られた一体型構成体16の内径は50mmであり、それがコアロッド1及び第1ホルダ14両方の第1内径を維持するとわかった。静荷重抗張力試験を実施する際、3トン(または約6,000ポンド)の最大試験荷重が適用されたときでも、溶接シーム13で破損が生じないことがわかった。
【0041】
例示的実施形態が示すように、面取り9、11は、コアロッド1及び第1ホルダ14が、溶接シーム13での破損の最小リスクと共に高い溶接強度を有する溶接シーム13で溶着されるのを可能にする。溶接中に適用される圧力により膨張が発生する場合でも、面取り9、11は更に、コアロッド1及び第1ホルダ14が、コアロッド1及び第1ホルダ14の実質的に一定の内径(例えば50mm)を収縮せずに、一体型構成体16を形成できる。面取り9、11は、「C面取り」として公知の線面取り工程により形成されることができる。あるいは、類似の効果は、「R面取り」として公知の非線形面取りによって得られることができる。C面取りは、それが作業荷重(例えば、加工)を低減するので好ましい。
【0042】
様々な従来の溶接工程が、ガラス管及び母材を取り付けるために必要な熱を発生させるために存在する。4つのこのような工程を順番に記載する。第1に、水素バーナーが、石英ガラスマッフルのないガラス旋盤と組み合わせて使用されてきた。この構成は他の工程より小さな領域を加熱して、溶接点の近くに応力帯を作成する。水素バーナーが限られた火力を提供するので、大きい火力需要を伴う用途では複数のバーナーアセンブリを必要とする。そうして複数のバーナーアセンブリはマッフル筐体に大きな開口部を必要とし、したがって適切に円筒体を保護することは非実用的である。更にマッフルがないと、溶接した部品は素早く冷却して、高応力を作成し、地の円筒体に不適当な構成を示す。現在利用可能な水素バーナー構成は、外径200mmを有し及び確実に外径230mmほどではない円筒体を溶接するために十分な許容サイズならびに低い複雑さを有さない。この第1の従来工程により溶接されるガラス補足物(例えば、母材、管など)は通常、研磨表面を有する。
【0043】
第2の従来の溶接工程は、石英ガラスマッフルのないガラス旋盤と組み合わせて、プラズマ溶接旋盤を使用する。この構成は火力制限も有し、現在、最大150mmの外径を有する良質の部品を溶接できる。前記構成は、溶接の間、溶接点への接近を可能にせず、したがってパドルによる溶接部のスムージングは不可能である。溶接点の小さい環状溝は応力集中点として作用して、溶接点強度を低減する。この第2の従来の溶接工程の不利な点は、高コスト、高価な旋盤及び電力供給、高い自動化グレードの必要性、ならびに溶接中の空間に対する近づきにくさを含む。
【0044】
第3の従来の溶接工程は、レーザーを使用する。レーザー装置は高価になる傾向があり、操作が困難であり得て、高い維持費を必要とする。高度なパーソナルスキル及び資格が、レーザーのオペレータに要求される。更にレーザー溶接は、150mmより小さい直径を有するガラス部材に限定される。高応力が溶接点で生じるので、オフライン焼き戻しは、過剰な期間、高価なレーザー装置を使用することを回避するために必要である。また更に、円筒体の端及びハンドルでなされる切断は、レーザー溶接を可能にするために、非常に正確でなければならない(すなわち、部材間の極めて小さい空隙だけが許される)。
【0045】
第4の従来の溶接工程は、抵抗炉または誘導炉などの炉を使用する。このような炉は高い器材コストを生じさせて、旋盤への提供が困難である。溶接の間、溶接点が見えない、または近づきにくいので、溶接寸法の厳しい仕様を保証することはほぼ不可能である。炉長は、特別な用途用の短い部材を溶接することも困難にする。炉は、水平にまたは垂直に配向されることができ、各配向には不利な点がある。垂直配向の炉は、より高い器材費及び建築費を有し、載置が困難である。水平配向の炉は、それ自体が炉パーツからの汚染の危険性があり(酸化粒子がガラス面上へ落下する可能性がある)、炉の適切な封止がより困難になる(ZrOまたはセラミックヒーターは汚染の危険性を増大させる)。
【0046】
ガラス管及び母材を取り付ける(例えば、溶接する)ために必要な熱を発生させるための、改良装置及びその装置を使用する関連処理の説明が、以下に続く。改良装置及び関連処理は、接合される石英ガラス部材の間に正確及び再現可能な方法で中実溶接シームを作成することによって、光学ファイバ母材を得て、そこで不純物がほとんど防止される。
図4aは、マッフル管の形状の筐体35を有する装置100の一実施形態の側面図である。
図4bは、
図4aに示す筐体の正面図である。部材が筐体35内で互いの接続面の領域で加熱されて、軟化される際、装置100のこの実施形態は、部材の接続面の間の一体化した結合を形成することによって、第1ガラス部材と少なくとも1つの第2のガラス部材を接合する溶接方法を強化する。上記の実施形態に関して、例えば、第2ホルダ14aは、クラッドの中空内管2に溶接されて、輸送、処理などを容易にする。そうして、第2ホルダ14aを使用して、内管2は、光ファイバ用の母材内に、または直接コアロッド1と組み合わせた光ファイバ内に延長されて、それは中空内管2の内側孔内に挿入される。
【0047】
装置100は、一組のチャック33を有する旋盤を含む。第2ホルダ14a及び内管2のそれぞれの長手方向軸線が共通の中心軸線4に沿ってあるように、1つのチャック33は第2ホルダ14aを留めて、残りのチャック33は内管2を留める。換言すれば、第2ホルダ14a及び内管2は互いに同軸であり、溶接されたそれらの対応する前方縁は互いに対向する。溶接される前方縁を含む第2ホルダ14a及び内管2の対向領域は、筐体35内で加熱され、軟化される。
【0048】
一実施形態で、筐体35は3つの部材として構成されて、両側で開口している。中心部は、2つの加熱バーナーまたはトーチ37、38が内部39へ突き出る開口部36を備える、その側壁に提供される(代替実施形態では、もちろん、1つ以上の加熱トーチ37は、完全に筐体35内部に配置されることができる)。
図4a及び
図4bに示すように、加熱トーチ37、38は互いに平行である。特定の用途は、加熱トーチ37、38の数(1つ、2つ以上)及びそれらが配置される方法の両方を定める。溶接される前方縁領域の筐体35の壁周囲の加熱トーチ37、38の平行でない配置は、筐体35のより大きい領域上へ加熱トーチ37、38の熱を分散させて、結果として筐体35上の小さい熱負荷になる。加熱トーチ37、38は、筐体35の内部39に互いに対向して配置されることもできる。
【0049】
旋盤は、回転有または回転無で作動することができる。しかし、通常、第2ホルダ14a及び内管2は、共通の中心軸線4の周囲を回転する。第2ホルダ14a及び内管2の回転は、例えばチャック33を回転させることによって達成されることができる。特に加熱トーチ37、38が旋盤の片面上だけにあるとき、このような回転は、第2ホルダ14a及び内管2の円周周辺を加熱することさえ確実にする。回転は、加熱中、冷却中、または好ましくは加熱及び冷却の両方の間、生じることができる。回転速度は、重要なパラメータである。通常、回転速度範囲は、0〜100回転/分の間である。好適な回転速度範囲は、30〜50回転/分である。
【0050】
一実施形態で、筐体35は不透明な石英ガラスの管状体40を有し、それは丸い断面を備える、Heraeus Quarzglas GmbH&Co.KG製の登録商標Rotosil(登録商標)下で市販されている。内部39に向かう本体40の内側は、10mm〜12mmの層厚を有する内層41で覆われることができ、それは高品質の石英から形成される。内部39の丸い断面は、中心軸線4に同軸である加熱プロファイル、及びそれにより更に丸い断面を有する第2ホルダ14a及び内管2を均一に加熱することを容易にする。更に、丸い断面は、中心軸線4の方向に実質的に層流噴出ガスフロー(通常、酸素フロー)の調整を単純化して、不純物または粒子が徐々に蓄積し得る死角を防ぐ。
【0051】
例示の筐体35は、約400mmの内径D、及び拡張継手として機能するその長さに沿った長手方向スリットを有する。加熱トーチ37、38の反対側で、筐体35の内部39は高純度石英ガラスの殻状挿入物43で覆われており、それは筐体35の中心部を熱から保護し、そのうえ筐体35の熱容量を強化して、そうして筐体35内部の温度分布を均一にする。筐体35の前側開口部に沿ってある程度延在して、筐体35から熱い排気ガスを除去する吸引装置42は、筐体35の上方に提供される。高純度グラファイトの支持体(図示せず)は、筐体35を配置及び固定するために機能する。
【0052】
第2ホルダ14a及び内管2は、加熱トーチ37、38の熱によって筐体35で軟化される。筐体35は断熱を提供して、蓄熱体として作用する。これにより、溶接継手の質に有益な効果を有し、継手の再現可能な製造を容易にする、局所的に均質かつ均一な加熱プロファイルが得られる。筐体35は加熱トーチ37、38の熱損失を低減して、溶着される部材の所定の徐冷も容易にし、その結果、溶接シーム13の亀裂及び破損につながる可能性がある熱応力は最小化される。更に、筐体35は外部環境から内部39を実質的に保護して、その結果、浮遊粒子または他の不純物は大部分加熱ゾーンから遠ざけられる。
【0053】
コントローラは、2つ以上の部材の間のデータフローを管理するまたは誘導する(すなわち、情報伝送を容易にする)ハードウエア装置またはソフトウエアプログラムである。装置100は、コントローラ70を含む。コントローラ70は、例えばチャック33、筐体35、トーチ37、38及び吸引装置42からデータを得て、そのデータを使用して装置100の他の構成要素及び関連する溶接工程を制御する能力を提供する。コントローラ70は、予め設定した制御プログラムまたはルーチンが効率的に最適加熱及び移動処理工程を保証するように、当業者に周知の方法でプログラムされている。コントローラ70は、製造のためのロバストかつ再現可能な「ワンボタン」自動工程を保証するのを助ける。
【0054】
それぞれ正面図及び側面図を表す
図5a及び
図5bに示すように、レンガハウス筐体35と呼ばれている特定のタイプの筐体35は、好ましくは横旋盤上に設置されて、溶接シーム13があまりに急速に冷却されるのを防ぐ。レンガハウス筐体35は、好ましくはRotosil(登録商標)レンガで製造される。最も好ましくは、Rotosil(登録商標)レンガは、グレード不透明溶融材料(OFM)70で作成される。OFM70は、純粋な砂から電気的に溶融される。物理的に、溶融石英は非晶質に凝固する石英である−微細な気泡及び微量の金属酸化物の含有物がそれを白くかつ不透明にする。溶融は、回転成形型で行われる。この工程によって、得られる溶融石英生成物の内部輪郭は、はじめ単に遠心力により形成される。溶融熱は、内部燃焼電気アークによって提供される。この工程は、非常に平らで高密度の壁及び炎でつや出し加工した内側表面を有する軸方向に対称な形状を作成する。壁厚は、電気アークの強度及び燃焼時間で確定される。
【0055】
OFM70は、腐食、高温、熱衝撃及び電気誘導に対して高耐性である。低熱膨張係数は、急速な加熱及び冷却を可能にする。OFM70は、かなり高温でも非常に有効な電気絶縁体である。OFM70の耐食性は本来、異物が材料の構造から放出されるのを防ぐのに十分である。この特徴は、OFM70に、純粋で透明な溶融石英ガラスの内側層を供給することによって更にもっと強化されることができ、それはOFM70自体よりかなり少ない微量の不純物を含有する。
【0056】
比熱容量(または、単に比熱)は、質量単位当たりの物質の温度を上昇させるのに必要なエネルギー量である。材料の比熱容量(C)は、定圧(C
p)で一般に測定される物理的特性である。SI単位で、比熱容量は、物質1kgを1ケルビン度上昇させるために必要なジュール熱量であり、したがってkg(またはg)当たりのケルビン度当たりジュールで計算される。
【0057】
分子(単原子からなるガスとは異なり)を含む物質の比熱容量は定数ではなく、それらは温度に応じていくらか変化する。したがって、測定がなされる温度も通常明記される。例えば、石英ガラス(レンガハウス筐体35を製造するために用いる)の比熱容量(C
p)は、以下のとおり温度によって変化する。1,000ケルビン度でC
p=1.17J/(g*K)、1,500ケルビン度でC
p=1.27J/(g*K)及び2,000ケルビン度でC
p=1.49J/(g*K)。比熱容量は、どれくらいのエネルギーが、所定量当たりの所定質量の物体(例えば、レンガハウス筐体35)を加熱または冷却するために必要かの指標を提供する。それにより、このエネルギー要求量は、その工程のコスト上の問題と同様に、加熱または冷却工程がエネルギー供給下でどれくらい時間がかかるかに関する情報をもたらす。
【0058】
図5a及び
図5bで示すように、レンガハウス筐体35は、グラファイトプレートで作成される基部または第1層46を有する。Rotosil(登録商標)レンガの適切な数の層48が、第1層46上に配置されている。積み重ねられたRotosil(登録商標)レンガの11つの層48は、
図5a及び
図5bに示される。第1層46及びRotosil(登録商標)レンガ層48の適切な寸法(mm)も示されている。レンガハウス筐体35は、合理的な時間量の溶接ゾーンの適切な火炎研磨を可能にする、溶接シーム13周囲の熱分布を確実にする。熱及び水酸化物は、ハンドルと円筒体間の溶接シーム13周囲に均等に分配される。Rotosil(登録商標)レンガハウス筐体35は以前可能だったものよりゆっくりとした材料の冷却を可能にして、低応力な溶接点をもたらす冷却速度を得る。
【0059】
図6aは、レンガハウス筐体35を使用しない、溶接シーム13の冷却を示す。示されているように、溶接シーム13を約2,100℃から約650℃まで冷却した。更に具体的には、溶接シーム13は、約3.33分間で約1500℃から約900℃まで冷却した(約180℃/分の速度)。
【0060】
図6bは、レンガハウス筐体35を使用する、溶接シーム13の冷却を示す。示されているように、溶接シーム13を約2,100℃から約650℃まで冷却した。更に具体的には、溶接シーム13は、約10分中に約1500℃から約900℃まで冷却した(約60℃/分の速度)。
【0061】
図6aと
図6bの間の比較は、レンガハウス筐体35を用いて得られる冷却速度が約1/3に低減され得ることを示す。このような徐冷速度は、溶接シーム13の強度を高める。レンガハウス筐体35は、冷却速度と溶接サイクル時間の間の最適比を達成する。
【0062】
上述のような有利な冷却速度は、低応力溶接部を得る。溶接シーム13全体の強度は、小さい内径を有するOD200mmの円筒体を溶接できるのに十分に高い。開示された工程を使用して溶接される円筒体は、最高250kg(例えば、OD=210mm、ID=43mm、長さ=3,400mm)の重量を有することができる。このような円筒体は、二重円筒体として溶接される。このようなアセンブリのバッチ重量は、約550〜600kgの範囲である。従来の溶接工程では、このような強度の溶接点を得ることはできない。溶接工程がレンガハウス筐体35なしで試みられる場合、150mm超のODを有する円筒体の破損率はほぼ100%である。
【0063】
レンガハウス筐体35は、上述の石英ガラスマッフル筐体35と置き換えられる場合もある。しかし、石英ガラスマッフル筐体35はかなりより高価であり、寿命が短く、レンガハウス筐体35より小さい熱容量を提供する。レンガハウス筐体35は、石英ウールで溶接シーム13を包むこととも置き換えられる場合がある。しかし、石英ウールは、溶接シーム13に汚染の高リスクを誘導し、環境に石英ファイバの供給源を誘発する。石英ガラスマッフル筐体35及び石英ウールの覆いの両方とも、大量処理に適していない。
【0064】
レンガハウス筐体35の様に、トーチ37、38の選択も、溶接工程の成功にとって重要である。各トーチ37、38は、十分な水酸化物を深さ約10μmに導入するのに十分な電力を有しなければならない。適切なトーチ37、38は
図7に示され、独国のMesser Cutting Systems GmbHから市販されている。示されるトーチ37、38は、電解研磨したステンレス鋼管を有するプロパン−酸素石英溶融トーチである。トーチヘッドは、良好な熱伝導率を有する材料から作成される。各トーチ37、38は、好ましくは約120〜130kWの定格電力を有する。
【0065】
グラファイトパドル50は、トーチ37、38によるより簡単な火炎研磨用に溶接点を平滑化するために使用できる。適切なグラファイトパドル50の上面図及び側面図を、それぞれ
図8a及び
図8bに示す。SGLグレード580の押出グラファイトは、パドル50の材料として好適であり、約500ppm未満の灰分を有する。
【0066】
図9a及び
図9bは、2つの溶接した中空の円筒体52、62及び円筒体52、62の表面状態を示す(一実施形態で、第1円筒体52は第2ホルダ14aでもよく、第2円筒体62は内管2でもよい)。円筒体52、62は、中心軸線4に沿って同軸状に配置される。各円筒体52、62は、それぞれの
研がれた表面54、64を有する。残念なことに、ガラス強度に表面欠陥(例えば、研磨により誘発される)の周知の悪影響がある。したがって、
図9aの中心にあって、そこで2つの円筒体52、62が接合される溶接シーム13の領域で、各円筒体52、62の表面は、トーチ37、38の熱により火炎研磨されて実質的に滑らかな表面を作成する。これにより各円筒体52、62は、対応する火炎研磨した表面56、66を有する。ガラスの抗張力は、
研がれた表面54、64と比較して、火炎研磨した表面56、66で非常に増大する。
【0067】
図9bは、円筒体52、62の中心軸線4に沿った、粗さ及び表面水酸化物値を示す。算術平均粗さR
a及び十点平均粗さR
zは、粗さの異なるパラメータである。R
aは、表面の平均粗さである。R
zは、表面の最高ピークと最低谷底の間の差である。プロファイル粗さパラメータは、ISO4287:1997標準と同一のBS EN ISO4287:2000英国標準に含まれる。円筒体52、62の
研がれた表面54、64の粗さは、R
z≦6μmであり、それは火炎研磨表面56、66で、R
z≦0.3μmに減少する。
【0068】
水酸化物は、共有結合により結合される酸素原子及び水素原子からなる2価陰イオンであり、陰電荷を持ち、化学式OH−で表される。水酸化物は重要だが、通常水の従属成分である。水酸化物は、多くの場合、塩基、配位子、求核剤、及び触媒として機能する。
【0069】
円筒体52、62のバルク材料の水酸化物値は通常、1ppmよりはるかに小さく、管内部の低水酸化物基材では0.1ppm未満である。円筒体52、62は溶接工程の間、パージされて(例えば、酸素によって)、トーチ37、38の炎が円筒体52、62内部に入るのを防ぎ、したがって、著しく少ない水酸化物が、円筒体の内部表面上に植え付けされる。トーチ37、38によって作成される燃料ガス(プロパン)の燃焼による炎で生じる水酸化物が原因で、水酸化物は、バルク値以上に溶接ゾーンで増加する。この水酸化物は、火炎研磨表面56、66の及び深さわずか約10μmの表面領域にある。溶接シーム13に近接し、及び火炎研磨表面56、66によって画定される溶接ゾーンの水酸化物濃度またはレベルを、約10ppm超まで、好ましくは約20〜100ppmの範囲に上昇させることは望ましい。その後10μmの表面領域をエッチング除去することによって、水酸化物はそのオリジナル値(すなわち、バルク材料の指定された値)に減少できる。
【0070】
溶接ゾーンの火炎研磨表面56、66(深さ約10μm)のより高い水酸化物は、材料の粘性、したがってその脆性を低下させる。減少した粗さと共に、溶接ゾーンは実際に、レンガハウス筐体35を使用して溶接ゾーンの適切な冷却速度を保証することによって応力を最小化することを条件として、円筒体52、62の未処理の
研がれた表面54、64より高い強度レベルに達する。
【0071】
トーチ37、38の研磨効果は、実際の溶接工程の完了後、火炎効果を続けることによって増加できる。したがって、トーチ37、38の処理は、グラファイトパドル50により形成された後、約5〜10分の間続けられて、溶接ゾーンを火炎研磨する。このような処理は、パドル工程によって誘発される、いかなる抗張力低減粗さも除去する。
【0072】
パージガス(通常、酸素)の使用は上述してある。
図10は、パージガスを装置100に送るガス管18及び関連するパージ支援システム85を含む、装置100を示す。パージ支援システム85は、2つ以上の垂直な棒76によって装置100のテーブル75に接続している。上方水平レール77及び平行する下方水平レール78も、垂直な棒76に接続している。上方水平レール77は上方軌道77aを画定して、下方水平レール78は下方軌道78aを画定する。示されているように、下方軌道78aが下方水平レール78の上面に画定され得ると共に、示されているように、上方軌道77aは上方水平レール77の底面に画定され得る。
【0073】
パージ支援システム85は、枢動アーム80に接続する摺動可能な垂直支柱79を更に含む。
図12に示すように、枢動アーム80は、垂直支柱79の周囲を約180度の弧で枢動できる。垂直支柱79は、通常1つ以上の車輪ブラケットにより複数の車輪81を運ぶ。垂直支柱79が上方及び下方水平レール77、78に沿って摺動できるように、車輪81は軌道77a、78aを係合する。
図13は、車輪81と下方軌道78aの間の係合を強調している背面図である。枢動アーム80は、枢動アーム80の上面に配置され得る連結部82を運ぶ(図示する)。
【0074】
図11に示すように、連結部82はパージ装置90を係合して保持する。パージ装置90の一端は、ガス管18に取り付けられることができる(通常、迅速接続連結により)。パージ装置90の他の端は、ガラス部材(例えば、円筒体52)に取り付けられることができる。摺動可能な垂直支柱79及び枢動アーム80の動作により、パージ装置90は、ガス管18及び円筒体52の両方に対して容易に配置されることができる。
【0075】
図14は、パージ装置90の例示的実施形態を示す。ここに示した例で、パージ装置90は、雄肘継手93及びポートコネクタ94により迅速接続軸92と接続する、回転継手91を含む。迅速接続軸92はガス管18を係合する。回転継手91は雌管アダプタ95にも接続して、それにより微粒子フィルタ96を通して管97に接続される。管97は、例えばプラグ98(
図11に示すような)を通してガラス部材(例えば、円筒体52)に接続している。多くの材料はプラグ98に適しており(シリコーン及びグラファイトを含む)、そうして管97は円筒体52に封止される。
【0076】
これにより装置100のパージ支援システム85は、ガス管18から円筒体52の内部までパージガスを放出するように機能する。パージガスは、溶接工程の成功を促進して、溶接シーム13の適切な質を確実にするのを助ける。更に具体的には、パージガスは粒子が溶接シーム13の表面内に溶け込む(それは、溶接点強度に悪影響を与えることができ、最終製品の特性に悪影響をもたらす場合がある)のを防ぐのを助ける。
【実施例】
【0077】
以下の実施例は、本発明の全体の性質をより明瞭に示すために含まれる。これらの実施例は本発明の例示であり、それを制限するものではない。
【0078】
第1の実施例は、第1円筒体52を第2円筒体62に溶接するための溶接の方策に関する(
図9aに示すように)。円筒体52、62のそれぞれは、大きな外径(OD)及び小さな内径(ID)により画定される約3超、好ましくは約3.2超の超高比(「UHR」)を有する。したがって、シリンダ52、62は好ましくは3.2<OD/IDのUHRを有し、それは比較的厚い円筒体壁を画定する。UHRを有するシリンダは、応力、亀裂及び破損の危険性の増加がある−特に冷却中。開示した溶接工程は有利には、排除できない場合、その危険性を低減しつつ、このようなUHR円筒体を溶接できる。
【0079】
下記の表1は、例示の溶接(すなわち、突合せ)プロセスまたは方策の12個の工程をまとめている。「トーチ」列は、プロセスの特定の工程の間、1つのトーチ37(T1)を作動させるか、2つのトーチ37、38(T1−T2)を作動させるか、またはいずれのトーチ37、38も作動させないかを示す。「時間」列は、開始から全プロセスの総累積時間を表し(分で)、例示のプロセスは合計85分続いた。「期間」列は、プロセスの各工程の期間を表し(分で)、冷却工程は30分続いた。「距離」列は、2つのトーチ37、38の間の中心線から2つの円筒体52、62の端までの距離を表し(それぞれインチ及びミリメートルの両方で)、距離がゼロのとき、端は接触していた。トーチ37、38と円筒体52、62の間の一定距離は、60mmである。
【表1】
【0080】
表1にまとめた例示の溶接プロセスを、UHR円筒体52、62を溶接するためにうまく使用した。
【0081】
第2の実施例は、
図4aで示すように、ハンドル(例えば、第2ホルダ14a)をUHR円筒体(例えば、内管2)に溶接するが、レンガハウス筐体35を使用する、溶接プロセスまたは方策に関する。下の表2は、冷却前の例示の溶接プロセスまたは方策の12個の工程をまとめる。
図15は、プロセスの各工程の間、互いに対する及びレンガハウス筐体35に対する、ハンドル(第2ホルダ14a)、円筒体(内管2)及び2つ(1&2)のトーチ37、38の位置を概略的に示す。示すように、レンガハウス筐体35は約640mmを有する(そして、その端は
図15で表される2つの垂直実線により画定される)。
【0082】
下の表2の「時間」列は、開始から全プロセスの総累積時間を表し(分で)、例示のプロセスは合計60分続いた(冷却前)。「期間」列は、プロセスの各工程の期間を表す(分で)。「距離」列は、ハンドルの端から円筒体の端までの距離を表し(ミリメートルで)、距離がゼロのとき、端は接触していた。「ハンドル−トーチ間」列は、ハンドルの端から2つのトーチ37、38の間の中心線までの距離を表す(ミリメートルで)。「円筒体−トーチ間」列は、円筒体の端から2つのトーチ37、38の間の中心線までの距離を表す(ミリメートルで)。「トーチ」列は、プロセスの特定の工程の間、1つのトーチ37(1)を作動させるか、2つのトーチ37、38(1&2)を作動させるかを示す。
【表2】
【0083】
表2にまとめられて、
図15に示される例示の溶接プロセスは、ハンドルをUHR円筒体に溶接するためにうまく使用された。
【0084】
前述のプロセスにより調製される円筒体−ハンドル間(二重円筒体を含む)の溶接点は、非常に重い及び費用効果的なバッチから低水酸化物基材及び他の管を線引するのに有益である。水酸化物含量は、重いバッチを処理するのにちょうど有益なレベルで溶接ゾーンにある。溶接ゾーンの外側層または表面の約20〜100ppmの水酸化物含量は、滑らかな表面と組み合わせて、可能な限り最高の溶接強度を提供する。ファイバ用途のための水酸化物のエッチング及び除去の後、円筒体は、線引用の塔へ直接運搬されることができる。したがって、基材及び円筒体は、最も有益な水酸化物範囲で使用することができる。
【0085】
ファイバ用途において、強度考慮のためにより高い水酸化物濃度を目標にすることができない。これは減衰を増加させ、それはこの用途にとって有益でない。ハンドル基材の水酸化物含有量は少なくとも10ppmであり、そうでなければ基材は非常にもろい。粘性が悪影響を受け、形成塔の終了段階で悪影響を受ける(ハンドルのガラス粘性が低いことにより、最後の円筒体部分があまりに早く滴下する)ので、約50ppm超の水酸化物含量を有するハンドル基材は選択肢ではない。したがって、ハンドル用の好適な水酸化物含量は、約10〜50ppmの範囲内である。
【0086】
アニールコストがあまりに高いので、円筒体材料と同じ低水酸化物濃度のハンドル材料を目標にすることは有益でない。そのうえ約10ppmより低い水酸化物濃度は、ハンドル強度を著しく低下させる。そのような低水酸化物濃度は、線引塔の高いハンドルヘッド破損率を生じさせる。
【0087】
要約すると、溶接プロセスは、(i)両方の石英ガラス部材(例えば、第2ホルダ14a及び中空内管2)を旋盤のチャック33に留めることと、(ii)旋盤を用いて互いに向かって部材を移動することと、(iii)部材の対向端領域を一緒にかつ同時に加熱して軟化させることと、(iv)互いに対して軟化した前方端を押圧して、溶接シーム13を有する部材アセンブリを形成することと、(v)必要に応じて、軟化した外側表面に対してグラファイトパドルを押圧して、表面を形成することと、(vi)周囲温度まで部材アセンブリを冷却することと、の工程を含む。好ましくは部材は、2,200℃超の、通常は約2,200℃〜2,300℃の間のプロセス温度で、20分間加熱されて軟化される。それから部材は、レンガハウス筐体35内部で少なくとも5分、通常約10分の間隔を必要とするプロセス温度から約1,000℃の温度に要する間、冷却される。
【0088】
開示した装置及び関連する溶接プロセスは、高強度の溶接点を有する重たい重量の円筒体アセンブリを供給でき、少なくとも100kgの垂直に保持された円筒体を支持できる。垂直に配置されたシステムは、それらの間の溶接ゾーンに取り付けられる少なくとも2つの石英ガラス部材を含む。下方石英ガラス部材は、少なくとも100kgの重量を有する。上方のハンドル溶接部は、それぞれ少なくとも100kgの重量を有する2つまたは3つの円筒体を保持できる。溶接ゾーンは、約10MPa及び好ましくは約15MPaを超える抗張力を有する。張力試験は、ハンドルヘッド強度が約2MPaであることを示した。溶接ゾーンの少なくとも80%は、表面から深さ10μmに平均約10ppm超の水酸化物含量を有する。
【0089】
前述のプロセスは、溶接ゾーンを表面欠陥のない領域に研磨するのを可能にする。プロパントーチ37、38の利用はガラス粘性を最適レベルに保つために表面の適切な水酸化物含量を確実にして、レンガハウス筐体35により、ガラスの徐冷速度が溶接点の応力を最小化するのを可能にする。これらの構造的特徴の組み合わせにより、従来の溶接プロセスと比較して、破損が最小化される溶接点が得られる。
【0090】
具体的には、例えば溶接点が前述の工程に従って形成されるとき、形成塔での、またはそれへ向かう途中の二重円筒体溶接点の亀裂率は0.5%よりはるかに小さい。従来のプロセスによって得られる亀裂率と、このような好ましい亀裂率を比較する。アーク溶接プロセスは5%超の亀裂率を有し、外径(OD)は熱をより大きい表面に加えるのが困難な約100mmまで低減しなければならない。冷却速度を低減するために使用するレンガハウス筐体及びガラスウールなしで設定される従来の水素バーナーは、約1%の亀裂率を有した。そのうえODは、水素トーチの出力不足をもたらす約150mmに減少した。従来のレーザー溶接プロセスの亀裂率は約10%超であり、ODは約150mmに制限される。プラズマ溶接のODは、約120mmに制限される。炉溶接は、汚染の危険性をもたらす導波路ファイバ用途で使用できない。
【0091】
世界中の及び接続機器、クラウドサービス、5G(第五世代モバイルネットワークまたは第五世代無線システム(それは、モバイル電気通信標準の主要段階を意味する))及びインダストリー4.0(または第四次産業革命、サイバーフィジカルシステム、モノのインターネット及びクラウドコンピューティングを含む製造技術の自動化及びデータ交換の最近の傾向)及び他の進歩は、帯域幅への指数関数的に増加する要求を加速させている。したがって、光ファイバの製造業者は、それらの生産高及び生産性を上昇させなければならない。次世代光ファイバ製造において、高速で線引される非常に大きな母材が必要とされる。大きな断面積を有する重いガラス母材を作成するための高強度の溶接プロセスの結果は、複数日の連続的な光ファイバ線引を持続させることができる「すぐに線引できる」中実母材であり、母材のユーザのための生産性及び光ファイバ生産高を増加させる。
【0092】
本発明の好ましい実施形態の前の記述は、特許請求の範囲によって定義される本発明を制限するというよりは、例示として取られるべきである。直ちに認識されるように、上述の特徴の多数の変形及び組み合わせは、特許請求の範囲で説明するように、本発明を逸脱しない範囲で利用できる。そのような変形は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱するとは見なされず、すべてのそのような変形は、以下の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。例えば、広くこの文書で詳述されるすべての範囲が、より広い範囲内に入るより狭いすべて範囲を、それらの範囲内に含むことが、はっきりと意図されている。当業者であれば理解されるように、プロセスに含まれる特定の工程は省略できる、特定の追加工程を加えることができる、及び工程の順序は示した順番から変えることができることも明確に意図されている。