特許第6968247号(P6968247)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6968247計時器の振動を測定するためのデバイスおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6968247
(24)【登録日】2021年10月28日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】計時器の振動を測定するためのデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G04D 7/00 20060101AFI20211108BHJP
   G04D 1/00 20060101ALI20211108BHJP
【FI】
   G04D7/00 A
   G04D1/00
【請求項の数】6
【外国語出願】
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-170302(P2020-170302)
(22)【出願日】2020年10月8日
(65)【公開番号】特開2021-89271(P2021-89271A)
(43)【公開日】2021年6月10日
【審査請求日】2020年10月8日
(31)【優先権主張番号】19213433.6
(32)【優先日】2019年12月4日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ミュリエル・リシャール
(72)【発明者】
【氏名】ファブリス・ガンギャン
【審査官】 岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−142401(JP,A)
【文献】 米国特許第02900815(US,A)
【文献】 米国特許第3383983(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04D 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計時器の組立体または組み立てられた計時器のムーブメント内で、計時器の可動構成要素(8)をクランプするように配置されたグリッパ(4)を含む関節機構(3)を保持する構造(50)を備える、計時器の振動を測定するためのデバイス(100)であって、前記関節機構(3)は、前記構造(50)に固定された第1の要素(1)を備え、これに対して、第2の要素(2)は、非接触方式かつ両方向で、測定方向(D)に実質的に平行に前記第2の要素(2)を操作するように配置される、少なくとも1つのアクチュエータ(6)の影響下で実質的に線形運動を行うことができ、前記関節機構(3)は、前記第2の要素(2)を前記第1の要素(1)に接続する、実質的に線形的な力/ストローク特性を有するネックおよび/または可撓性ストリップを有する適合機構(10)を備え、前記デバイス(100)は、前記測定方向(D)における前記第2の要素(2)の位置を決定するように配置された少なくとも1つの位置センサ(9)と、前記グリッパ(4)を保持する前記第2の要素(2)の軸方向の押しまたは引きの負荷の変化、および/または前記負荷の勾配の変化を判定し、前記デバイス(100)に含まれる制御システム(200)に、走行の各方向における前記負荷の勾配の急激な各変化中に、位置測定をトリガするための信号を送信し、外向きのストロークおよび戻りのストロークの間に、勾配の急激な変化が生じる2つの位置で測定された位置の値を比較することにより、取り付けられている前記組立体内の前記可動構成要素(8)の振動Eの値を判定するように配置される少なくとも1つの負荷センサ(7)とを備えることを特徴とする、デバイス(100)。
【請求項2】
前記適合機構(10)は、前記第1の要素(1)と前記第2の要素(2)との間で、互いに垂直に延在している少なくとも2つのクロスピース(31、32)を有する4ネックシステムタイプであり、前記クロスピースのおのおのは、2つのネック(311、312;321、322)を介して接続され、前記2つのクロスピース(31、32)は、前記第1の要素(1)と前記第2の要素(2)とで平行四辺形を構成することを特徴とする、請求項1に記載のデバイス(100)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの負荷センサ(7)は、前記アクチュエータ(6)の電力消費センサであることを特徴とする、請求項1または2に記載のデバイス(100)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの位置センサ(9)は、前記第2の要素(2)に、または前記構造(50)に固定された測定ルーラ(92)と、前記構造(50)に、または、前記第2の要素(2)にそれぞれ固定された読取ヘッド(91)とを有する光学センサであることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のデバイス(100)。
【請求項5】
計時器の振動を測定するための方法であって、機構に組み立てられた可動構成要素(8)の測定方向(D)の振動の測定のために、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のデバイス(100)が実施され、前記第2の要素(2)は、前記測定方向(D)に位置合わせされ、前記グリッパ(4)を使用して、前記可動構成要素(8)が把持され、前記アクチュエータ(6)は、前記アクチュエータ(6)への前記負荷の勾配の第1の急激な変化が記録されるまで、第1の走行方向で実施され、前記第1の変化が発生する第1の位置が記録され、前記アクチュエータ(6)は、前記アクチュエータ(6)の前記負荷の勾配の第2の急激な変化が記録されるまで、前記第1の走行方向に対向する第2の走行方向に操作され、前記第2の変化が発生する第2の位置が記録され、前記可動構成要素の前記振動の値は、前記第1の位置と前記第2の位置との間の距離を使用して計算されることを特徴とする、方法。
【請求項6】
前記可動構成要素(8)を把持するために、前記グリッパ(4)はクランプの形態で選択され、前記グリッパ(4)は前記可動構成要素(8)のショルダの周りで開かれ、前記グリッパ(4)は、前記可動構成要素(8)をクランプするように閉じられることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計時器の振動を測定するためのデバイスに関し、計時器の組立体または組み立てられた計時器のムーブメント内で、計時器の可動構成要素をクランプするように配置されたクランプを備える関節機構を保持する構造を備える。
【0002】
本発明は、このデバイスを実施する、計時器の振動を測定するための方法に関する。
【0003】
本発明は、機構の最終組立段階における計時器計測の分野に関し、より詳細には、組立体において、または計時器のムーブメントにおいて、組み立てられた特定の可動構成要素における振動を測定することに関する。
【背景技術】
【0004】
計時器のムーブメントなど、組み立てられた機構内の計時器の可動構成要素の振動の測定は、困難であり、しばしば不正確なオペレーションである。この測定は、計時器の機構の構成要素へのアクセスが不十分なために、実行するのが非常に困難であり、測定条件、特に重力場の位置に依存する。測定には構成要素が変位することが必要であるが、摩擦、マイクロメトリック形状、表面仕上げの欠陥、および潤滑の性質によって歪む可能性がある。
【0005】
既知の原理は、機構全体を重力場に戻すことと、2つの対向する上部/下部構成における位置およびストロークを測定することであるが、これを実施するのは困難である。
【0006】
既存の機構では、振動を測定するために機構の両側にアクセスする必要があり、これは、特定の機構、特に一体化された腕時計、または構成要素が溶接されている機構、または同様の機構では常に可能とは限らない。
【0007】
さらに、現在利用可能な機器では、測定を実行するために加えられる押圧力は経験に基づいて加えられており、これは、振動の測定が、変形、たとえばブリッジ、または同様の構成要素の変形によって、歪まないことを保証するものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、計時器の機構の片側のみへのアクセスを必要とする測定デバイスおよび方法を実施することを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
適合要素に基づく振動測定の原理は、この条件を満たす。
【0010】
適合システムには、線形的な負荷/変位特性があるという利点があり、可動構成要素の力と変位を同時に知ることができる。したがって、振動のみが測定され、ブリッジまたはムーブメントの他の部分や、腕時計のヘッドの変形は測定されないことを保証することが可能である。
【0011】
本発明による測定はまた、革新的な方式で実行され、システムは、ムーブメントの変形を検出するまで、測定方向、たとえば下向きなどの第1の方向に可動構成要素を押し、そのゼロ点を確立し、振動を判定するために、変形するまで、上昇動作中にこのオペレーションを逆方向に繰り返す。
【0012】
さらに、適合システムには遊びも摩擦もないため、ガイドは、測定を妨害/歪める可能性のある効果を引き起こさないことが保証されている。
【0013】
したがって、本発明は、請求項1に記載の計時器の振動を測定するためのデバイスに関する。
【0014】
本発明はさらに、このデバイスを実施する、振動を測定するための方法に関する。
【0015】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して与えられる以下の詳細な説明を読むことにより、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明による振動測定デバイスを図式的に示す斜視図であり、これは、計時器のムーブメントまたは計時器の組立体を位置決めし、測定方向にアクセスを得ることができる構造と、この場合はクランプであるグリッパとを備えたマシンであり、このグリッパは、アクチュエータによって実質的に線形的に移動するビームの端に取り付けられ、このビームは、構造に固定された別の要素に対して適合機構によって吊下され、この適合機構は、この場合、ビームと固定要素とで変形可能な平行四辺形を形成するネック付きクロスピースを備え、移動ビームには、その線形位置を検査するための非接触手段、この場合は、光学検査を設けられる。
図2】グリッパが可動構成要素を把持する位置でグリッパを見ることを可能とした、別の角度からの同じ機構を示す図1と同様の図である。
図3】無負荷の自由状態にある、弾性アームを備えたクランプによって構成されるグリッパを図式的に示す図である。
図4】カムの影響下で開位置にある、弾性アームを備えたクランプによって構成されるグリッパを図式的に示す図である。
図5】閉位置にあり、可動構成要素を把持している、弾性アームを備えたクランプによって構成されるグリッパを図式的に示す図である。
図6】適合機構、操作アクチュエータ、開位置のグリッパ、および検査される可動構成要素を備えた関節機構のみを示す、図1の機構の一部を図式的に示す図である。
図7】データ収集機能モジュールを示すブロック図である。
図8】振動を画定する、負荷の勾配における急激な変化がある2つの位置を示す力/ストローク図であり、2つの位置の間では、力特性は、適合機構の線形特性であり、それを超えると、絶対負荷値は、適合機構単独の負荷の値よりも大きく、負荷勾配は可変であり、適合機構の特性の勾配よりも大きい。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、計時器の振動を測定するためのデバイス100に関する。このデバイス100は、計時器の組立体または組み立てられた計時器のムーブメント内で、計時器の可動構成要素8をクランプするように配置されたグリッパ4を備える関節機構3を保持する構造50を備える。グリッパという用語は、広義で使用され、図面は、可動構成要素8のショルダをクランプすることができるアーム41、42を備えたクランプである機械式グリッパ4を示しているが、このグリッパは、たとえば真空グリッパ、磁気グリッパ、または依然として本発明の範囲内にある別のタイプのような、異なるタイプのものとすることができる。
【0018】
本発明によれば、この関節機構3は、構造50に固定された第1の要素1を備え、これに対して、第2の要素2は、少なくとも1つのアクチュエータ6の影響下で実質的に線形運動を行うことができる。このアクチュエータ6は、非接触方式かつ両方向で、測定方向Dに実質的に平行に第2の要素2を操作するように配置される。たとえば、アクチュエータ6は、コア、またはシリンダ、または同様の構成要素の動きを生成するコイルを備えることができ、この場合、「モータ」という用語は、この負荷が機械的、電気的、油圧、空気圧などに関係なく、負荷を生成する要素を表すために使用される。
【0019】
関節機構3は、第2の要素2を第1の要素1に接続する、実質的に線形的な力/ストローク特性を有するネックおよび/または可撓性ストリップを有する適合機構10を備える。
【0020】
デバイス100は、測定方向Dにおける第2の要素2の位置を決定するように配置された少なくとも1つの位置センサ9を備える。
【0021】
デバイス100は、グリッパ4を保持する第2の要素2の軸方向の押しまたは引きの負荷の変化、および/またはこの負荷の勾配の変化を判定するように配置された少なくとも1つの負荷センサ7をさらに備える。この負荷センサ7は、デバイス100に含まれる制御システム200に、走行の各方向における負荷の勾配の急激な各変化中に、位置測定をトリガするための信号を送信し、外向きのストロークおよび戻りのストロークの間に、勾配の急激な変化が生じる2つの位置で測定された位置の値を比較することにより、取り付けられている組立体内の可動構成要素8の振動Eの値を判定するように配置される。
【0022】
図8は、負荷/ストローク図を示し、位置Aと位置Bとの間の特定の勾配の線形特性が、適合機構に適正を与え、第1の位置Aより下、および第2の位置Bより上では、測定された負荷は、絶対値の形態で、適合機構10に固有の負荷よりも大幅に大きく、したがって、可動構成要素8である、ブリッジ、ガイド、または他の構造を保持する構造の変形を統合する。したがって、デバイス100は、これらの2つの位置A、Bを識別するのに役立ち、振動Eは単に、これら2つの位置の間の線形的なストロークである。
【0023】
より具体的には、適合機構10は、第1の要素1と第2の要素2との間で、特に互いに実質的に垂直に延在しているが、それに限定されない少なくとも2つのクロスピース31、32を有する4ネックシステムタイプであるが、クロスピース31および32のおのおのは、2つのネック311、312および321、322それぞれを介して接続され、2つのクロスピース31、32は、第1の要素1および第2の要素2とで、図面における特定かつ非限定的な例では、平行四辺形を構成する。
【0024】
具体的には、この少なくとも1つの位置センサ9は、第2の要素2で適合機構10に固定された、または構造50に固定された測定ルーラ92を備えた光学センサであり、読取ヘッド91は、構造50に、または、適合機構10の第2の要素2にそれぞれ固定されている。
【0025】
特に、この少なくとも1つの負荷センサ7は、アクチュエータ6の電力消費センサである。より具体的には、適合機構10の力/変位特性は線形的で、知られており、力は、モータに投入された電流を介して測定することができる。振動のある領域にある場合、力は、適合機構10の特性にしたがい、当接後、次の位置に到達するためにアクチュエータ6のモータに投入する必要がある電流が増加し、このモータの電力消費勾配しきい値を簡単に検出できる。
【0026】
本発明はさらに、計時器の振動を測定するための方法に関する。機構に組み立てられた可動構成要素8の、測定方向Dにおける振動を測定するためのこの方法にしたがって、そのようなデバイス100が実施され、以下のステップが実行される。
− 第2の要素2が、測定方向Dに位置合わせされ、
− グリッパ4を使用して、可動構成要素8が把持され、
− アクチュエータ6は、アクチュエータ6への負荷の勾配の第1の急激な変化が記録されるまで、第1の走行方向で実施され、
− 第1の変化が発生する第1の位置が記録され、
− アクチュエータ6は、アクチュエータ6の負荷の勾配の第2の急激な変化が記録されるまで、第1の走行方向に対向する第2の走行方向に操作され、
− この第2の変化が発生する第2の位置が記録され、
− 可動構成要素の振動の値が、第1の位置と第2の位置との間の距離を使用して計算される。
【0027】
より具体的には、可動構成要素8を把持するために、グリッパ4はクランプの形態で選択され、グリッパ4は可動構成要素8のショルダの周りで開かれ、グリッパ4は、可動構成要素8をクランプするように閉じられる。
【0028】
可動構成要素の振動の測定だけが可能な用途ではなく、このシステムは、他の多くの可能な用途の中でも、たとえば、機械式ムーブメントのテンプの振動の測定や、振動ウェイトベアリングのビートの測定など、力の制御が必要な、他の距離や遊びの測定にも使用できる。
【0029】
結論として、本発明は、適合要素に基づいて振動を測定するための信頼できる安価な手段を提供し、測定の優れた再現性を保証する。本発明により、ムーブメントの上から、または腕時計のヘッドのみからのアクセスにより、可動構成要素の振動を測定することができる。
【0030】
適合システムは、安価で製造でき、特性を変更することなく非常に長い寿命を有する。
【符号の説明】
【0031】
1 第1の要素
2 第2の要素
3 関節機構
4 グリッパ
6 アクチュエータ
7 負荷センサ
8 可動構成要素
9 位置センサ
10 適合機構
31 クロスピース
32 クロスピース
41 アーム
42 アーム
50 構造
91 読取ヘッド
92 測定ルーラ
100 デバイス
200 制御システム
311 ネック
312 ネック
321 ネック
322 ネック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8