(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6968250
(24)【登録日】2021年10月28日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】車両盗難防止システム
(51)【国際特許分類】
B60R 25/24 20130101AFI20211108BHJP
E05B 49/00 20060101ALN20211108BHJP
E05B 83/00 20140101ALN20211108BHJP
【FI】
B60R25/24
!E05B49/00 K
!E05B83/00 H
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-176436(P2020-176436)
(22)【出願日】2020年10月21日
【審査請求日】2020年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】特許業務法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤松 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 嘉昭
(72)【発明者】
【氏名】高橋 康弘
(72)【発明者】
【氏名】福岡 隆一郎
【審査官】
瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2019−073206(JP,A)
【文献】
特開2018−071049(JP,A)
【文献】
特許第6747752(JP,B1)
【文献】
特開2008−296607(JP,A)
【文献】
特開2006−046316(JP,A)
【文献】
特開2019−031172(JP,A)
【文献】
特開2015−052223(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第102017205162(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 25/00
E05B 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ID認証を要求するID認証要求を送信する車載器型盗難防止装置と、
前記車載器型盗難防止装置から送信される前記ID認証要求を受信し、前記車載器型盗難防止装置へID認証禁止の信号を含むID認証要求応答を送信する携帯機と、
を備え、
車両システムの停止後に、前記ID認証を自動的に禁止する状態へ切り替えることを特徴とする車両盗難防止システム。
【請求項2】
前記ID認証要求の送信を自動的に禁止状態にすることを特徴とする請求項1に記載の車両盗難防止システム。
【請求項3】
前記ID認証要求応答は、前記車載器型盗難防止装置からの信号により、前記ID認証禁止の信号を含む状態に切り替わることを特徴とする請求項1に記載の車両盗難防止システム。
【請求項4】
前記ID認証要求応答の送信を自動的に禁止状態にすることを特徴とする請求項1に記載の車両盗難防止システム。
【請求項5】
前記車載器型盗難防止装置からの信号により、前記ID認証要求応答の送信が禁止状態になることを特徴とする請求項4に記載の車両盗難防止システム。
【請求項6】
前記携帯機からの信号により、前記ID認証要求の送信禁止状態の解除、および送信禁止状態への切り替えが可能であることを特徴とする請求項2に記載の車両盗難防止システム。
【請求項7】
前記携帯機への入力により、前記ID認証禁止の信号を解除、および設定することが可能であることを特徴とする請求項1に記載の車両盗難防止システム。
【請求項8】
前記携帯機への入力により、前記ID認証要求応答の送信禁止状態の解除、および送信禁止状態への切り替えが可能であることを特徴とする請求項4に記載の車両盗難防止システム。
【請求項9】
前記携帯機からの信号により、前記ID認証の禁止有無をユーザーに通知することを特徴とする請求項1から8の何れか一項に記載の車両盗難防止システム。
【請求項10】
前記車両システムの停止後における前記ID認証の禁止状態への切り替え有無をユーザーが選択できることを特徴とする請求項1から9の何れか一項に記載の車両盗難防止システム。
【請求項11】
前記車両システムの停止時に、前記ID認証の禁止状態への成功あるいは不成功をユーザーに通知することを特徴とする請求項1から10の何れか一項に記載の車両盗難防止システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、車両盗難防止システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯機と車載器の無線通信により、キー認証を行う鞍乗型車両の盗難防止装置(キーレスエントリーシステム、スマートエントリーシステムなど)が開発されている。この鞍乗型車両の盗難防止装置において、車載器から送信された認証要求を携帯機が受信して、携帯機から車載器に固有の識別情報を含む信号を応答することで、車載器は予め登録されている識別情報と照合することにより、ハンドルロック解除およびエンジン始動を行う技術が知られている。
【0003】
近年では、車両から遠く離れた携帯機に対して、中継器を用いることにより、携帯機と車両との通信を間接的に伝播させ、車両のハンドルロック解除およびエンジン始動を可能にする技術(リレーアタック)が知られている。この技術は、盗難防止装置における盗難防止性に懸念を生じさせている。
【0004】
盗難手法への対策として、例えば特許文献1から特許文献4に開示されているように、車載器の送信アンテナ出力を段階的に変化させる構成、送信アンテナを複数本配置する構成、電波の伝播距離を計測する構成など、様々な盗難防止手段が考案されている。
これらの盗難防止手段は、電波を使用しているため、車両の周辺環境(建物、金属、人体、他の車両)により影響を受けることによって、リレーアタックの判定精度が下がり、正常な認証要求でもリレーアタックと誤検出するなどの課題がある。また、判定精度を上げるために、複数本のアンテナを使用する技術もあるが、例えば2輪車では搭載しているアンテナの本数が少ない場合があり、対策にはコストアップとなるだけではなくアンテナを搭載するスペースの確保も課題となる。
【0005】
また、前記盗難手法への対策として、携帯機の機能を有効化および無効化する技術が知られているが、ユーザー自身が操作を行う必要があり、機能の無効化を忘れる可能性がある。また、他の対策として、携帯機を電波遮断ケースに収納する方法などがあるが、何れもユーザーにとっての利便性が失われる。
【0006】
以上より、前記盗難手法への対策は、ユーザー操作が変化しないがコストアップ、精度の懸念がある方策、あるいは、盗難防止効果はあるが、ユーザーの利便性が失われる方策のどちらかを選択する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016−084589号公報
【特許文献2】特開2013−127184号公報
【特許文献3】特開2016−017279号公報
【特許文献4】特開2017−059170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願は、前記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、複雑な操作を必要とせずに盗難防止性を向上させる車両盗難防止システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願に開示される車両盗難防止システムは、ID認証を要求するID認証要求を送信する車載器型盗難防止装置と、前記車載器型盗難防止装置から送信される前記ID認証要求を受信し、前記車載器型盗難防止装置へ
ID認証禁止の信号を含むID認証要求応答を送信する携帯機と、を備え、
車両システムの停止後に、前記ID認証を自動的に禁止する状態へ切り替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本願に開示される車両盗難防止システムによれば、複雑な操作を必要とせずに盗難防止性を向上させる車両盗難防止システムを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1に係る車両盗難防止システムの全体的な役割を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1に係る車載器型盗難防止装置の概略的な構成を示すブロック図である。
【
図3】実施の形態1に係る携帯機の概略的な構成を示すブロック図である。
【
図4】実施の形態1に係るエンジン制御装置の概略的な構成を示すブロック図である。
【
図5】実施の形態1に係るエンジン始動許可の例を示す第1のフローチャートであり、車載器型盗難防止装置が実行する動作を表わすフローチャートである。
【
図6】実施の形態1に係るエンジン始動許可の例を示す第2のフローチャートであり、携帯機が実行する動作を表わすフローチャートである。
【
図7】実施の形態1に係るID認証禁止への切り替えの動作を示す第3のフローチャートであり、車載器型盗難防止装置が実行する動作を表わすフローチャートである。
【
図8】実施の形態2に係るID認証禁止への切り替えの動作を示す第1のフローチャートであり、車載器型盗難防止装置が実行する動作を表わすフローチャートである。
【
図9】実施の形態2に係るID認証禁止解除部の動作を示す第2のフローチャートであり、携帯機が実行する動作を表わすフローチャートである。
【
図10】実施の形態3に係るID認証禁止解除時の動作を示す第1のフローチャートであり、携帯機が実行する動作を表わすフローチャートである。
【
図11】実施の形態3に係るID認証禁止解除時の動作を示す第2のフローチャートであり、車載器型盗難防止装置が実行する動作を表わすフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本願に係る車両盗難防止システムの実施の形態について図面を用いて説明する。なお、各図において、同一または同様の構成部分については同一符号を付しており、対応する各構成部のサイズと縮尺はそれぞれ独立している。例えば構成の一部を変更した断面図の間で、変更されていない同一構成部分を図示する際に、同一構成部分のサイズと縮尺が異なっている場合もある。また、車両盗難防止システムおよび車載器型盗難防止装置の構成は、実際にはさらに複数の部材を備えているが、説明を簡単にするため、説明に必要な部分のみを記載し、他の部分については省略している。
【0013】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る鞍乗型車両に対応した車両盗難防止システムの概略的な構成を示している。実施の形態1に係る車両盗難防止システム100は、車載器型盗難防止装置1、携帯機2、およびエンジン制御装置3などから構成されている。車両盗難防止システム100は、例えば、自動二輪車などの鞍乗型の車両4に適用される。車両4は図示しないエンジンを備えている。
【0014】
前記車両盗難防止システム100において、ID(Identification)認証が禁止されていない場合、ユーザー(ドライバー)が車両4の入力装置5を操作することにより、車両システム(車両電源)がオンとなり、車載器型盗難防止装置1と携帯機2がID認証通信を開始し、車載器型盗難防止装置1は携帯機2にID認証要求1Aを送信し、携帯機2はID認証要求1Aを受信後、ID認証が成功すればID認証要求応答2Aを車載器型盗難防止装置1に送信する。さらに車載器型盗難防止装置1がID認証要求応答2Aを受信し、ID認証が成功すれば、エンジン制御装置3によりエンジン始動が可能(エンジン始動許可)となる。
【0015】
また、車載器型盗難防止装置1は、ID認証通信成功時あるいはID認証禁止有無の設定時に、ユーザーに当該状態を通知できる表示装置6を備えている。
【0016】
図2は、車載器型盗難防止装置1の概略的な構成を示している。車載器型盗難防止装置1は、第1の入力装置7、第2の入力装置8、信号送信ユニット9、信号受信ユニット10、制御部11、記憶装置12などから構成されている。車載器型盗難防止装置1の制御部11は、ID認証禁止部13、ID認証禁止解除部14などから構成されている。第1の入力装置7は車両システム(車両電源)をオフからオンに変更するときに使用し、第2の入力装置8はID認証禁止設定の無効化と有効化を切り替えるために使用できる。
【0017】
図3は、携帯機2の概略的な構成を示すブロック図である。携帯機2は、信号送信ユニット15、信号受信ユニット16、第3の入力装置17、制御部18、および記憶装置19などから構成されている。携帯機2は、車載器型盗難防止装置1およびエンジン制御装置3と、信号送信ユニット15および信号受信ユニット16を通じて無線通信を行うことが出来る。
【0018】
携帯機2は、車載器型盗難防止装置1からID認証要求1Aを受信すると、ID認証要求応答2Aを、車載器型盗難防止装置1に送信する。車載器型盗難防止装置1とID認証要求応答2Aを送信する携帯機2とは、ペアリング関係にあるが、携帯機2を追加でペアリングし、車載器型盗難防止装置1に対して複数の携帯機2を使用することができる。
【0019】
また、携帯機2の第3の入力装置17を操作することにより、ID認証禁止解除状態をID認証禁止状態、または再度ID認証禁止解除状態へ切り替えることができる。
【0020】
図4は、エンジン制御装置3の概略的な構成を示している。エンジン制御装置3は、信号受信ユニット20、信号送信ユニット21、第4の入力装置22、制御部23、記憶装置24などから構成されている。
【0021】
車両盗難防止システム100において、エンジン制御装置3は、車両4に取り付けられており、エンジンの始動あるいは出力の調整などの制御を行う他に、車両の全体的な制御も行う。
【0022】
次に、
図5と
図6を参照して、車載器型盗難防止装置1と携帯機2を使用したエンジン始動許可の動作フローを説明する。
図5は、車載器型盗難防止装置1における全体的な動作を示すフローチャートである。車載器型盗難防止装置1のID認証禁止部13、またはID認証禁止解除部14により、ID認証禁止有無が制御されている。車載器型盗難防止装置1は、入力装置5を操作して車両システムをオンすると、フローがスタートする(ステップST500)。
【0023】
車載器型盗難防止装置1は、ID認証の状態を知るために、まず、車両4がID認証の禁止を解除されている状態であるのか、否かを判定する(ステップST501)。ステップST501における判定結果が、ID認証禁止解除状態であればID認証が許可されているため、車載器型盗難防止装置1と携帯機2がID認証通信を開始し、車載器型盗難防止装置1は携帯機2にID認証要求1Aを送信し(ステップST502)、携帯機2からは、ID認証要求応答2Aを送信する(ステップST503)。ID認証成功後(ステップST504)、エンジン始動許可のフローは終了する(ステップST505)。
【0024】
ここで、ID認証禁止とは、車両4がID認証を禁止されている状態、即ち、ID認証が許可されていないことを表している。ID認証禁止解除は、車両4がID認証の禁止を解除されている状態、即ち、ID認証が許可されていることを表している。
【0025】
ステップST501の判定結果が不成立であれば、即ち、ID認証禁止状態であれば、エンジン始動許可のフローは終了(エンジン始動不可)となる。
【0026】
図6は、エンジン始動動作のフローにおける、携帯機2の動作を示すフローチャートである。携帯機2は、通常、電源がオンの状態にあり、待ち受け状態にある(ステップST600)。フローが開始された携帯機2は、車載器型盗難防止装置1からID認証要求1Aを受信すると(ステップST601)、車載器型盗難防止装置1にID認証要求応答2Aを送信する(ステップST602)。携帯機2の動作フローは、以上で終了する(ステップST603)。
【0027】
なお、携帯機2と車載器型盗難防止装置1が一定値以上の場合、あるいは信号を遮蔽する障害物がある場合、車載器型盗難防止装置1からID認証要求1Aを正常に受信できない。このため、ステップST602において、携帯機2は車載器型盗難防止装置1へID認証要求応答2Aを送信できない。このような場合、車載器型盗難防止装置1は、ステップST504において、ID認証要求応答2Aは正常ではないと判定する。
【0028】
一般に車載器型盗難防止装置1から送信されるID認証要求1Aの信号到達距離が、携帯機2から送信されるID認証要求応答2Aに比べて短く、車両4の近傍に制限されている。例えば、ID認証要求応答2Aの信号到達距離が、携帯機2の送信アンテナから20mから100m程度であるのに対し、ID認証要求1Aの信号到達距離は、車載器型盗難防止装置1の送信アンテナから、1mから1.5m程度である。このような制限により、通常は、車載器型盗難防止装置1が送信するID認証要求1Aの信号到達距離内にある場合にのみ、携帯機2とのID認証が行われる。
【0029】
上述のような車両盗難防止システムを搭載した車両の盗難手法として、信号(電波)を中継する方法(以下、リレーアタックという。)が知られている。リレーアタックでは、車載器型盗難防止装置1から送信されたID認証要求1Aを、第三者が所有する中継器を用いて遠方へ中継して、車載器型盗難防止装置1の信号到達距離外にある携帯機2までID認証要求1Aを到達させる。この手法により、車載器型盗難防止装置1が送信するID認証要求1Aの到達距離内に携帯機2がない場合でも携帯機2とのID認証が成功するため、第三者が車両のエンジン始動を行うことが可能な状態となり、車両の盗難の虞が生じる。
【0030】
そこで、本願では前記盗難の虞を回避している。以下、その実施の形態について
図7のフローチャートにおいて説明する。
図7は、車載器型盗難防止装置1が実行する動作を表わすフローチャートである。
図7においてユーザーが車両走行などの目的を完了し、エンジンを停止後、入力装置5の操作により車両システムをオフにすると、フローがスタートする(ステップST700)。
【0031】
車載器型盗難防止装置1は、車両システムがオフされた後、ID認証の禁止状態への自動切り替えの設定有無を確認する(ステップST701)。自動切り替え設定ありの場合、車載器型盗難防止装置1のID認証(ID認証要求送信)が禁止される(ステップST702)。その後は待機状態となり、車両システムがオンされた後は、
図5のステップST500からのフローが開始される。
【0032】
ID認証の禁止状態においては、第三者がリレーアタックを試みた場合も、
図5のステップST502以降に進めない。即ち、ID認証が成功せず、エンジンの始動が出来ず車両の盗難の虞を抑制できる。
【0033】
以上のように、実施の形態1に係る車両盗難防止システム100によれば、複雑な操作を必要とせずに盗難防止性を向上させる車両盗難防止システムを提供することが出来る。
【0034】
また、リレーアタックの誤検出を防ぐことができると共に、リレーアタックの検出精度を上げるための方策が不要となり、2輪車などのアンテナ本数が少ない車両についてはコストアップを抑えることができる。
【0035】
実施の形態2.
次に、実施の形態2に係る車両盗難防止システムについて説明する。なお、実施の形態2に係る車両盗難防止システムの構成は、実施の形態1と同様であり、ここでは、
図8および
図9のフローチャートを参照して、車両盗難防止システムにおける携帯機のID認証を禁止する仕方について説明する。
図8は、実施の形態2に係る車両盗難防止システム100の車載器型盗難防止装置1が実行する動作を示すフローチャートである。
実施の形態2に係る車両盗難防止システム100の車載器型盗難防止装置1は、エンジンを停止し、車両システムがオフになると、フローがスタートする(ステップST800)。
【0036】
エンジンの停止後、ユーザーが事前に設定できるID認証禁止状態への自動切り替え有無を確認する(ステップST801)。ID認証禁止状態への自動切り替え設定有の場合、車載器型盗難防止装置1が携帯機2にID認証禁止要求3Aを送信し(ステップST802)、携帯機2からID認証禁止要求応答4Aを受信する(ステップST803)。
【0037】
図9は、携帯機2のID認証禁止への切り替え動作を示すフローチャートである。携帯機2は、通常、電源がオンの状態にあり、待ち受け状態にある(ステップST900)。フローが開始された携帯機2は、車載器型盗難防止装置1からID認証禁止要求3Aを受信すると(ステップST901)、車載器型盗難防止装置1にID認証禁止要求応答4Aを送信する(ステップST902)。携帯機2は、その後、適当な時間が経過すると、ID認証禁止状態となり、フローを終了する(ステップST903)。
【0038】
通常、エンジンを停止し、車両システムのオフ後、車載器型盗難防止装置1と携帯機2のID認証禁止要求3AおよびID認証禁止要求応答4Aの送受信は、ユーザーが車両から一定の距離離れる迄、即ち、携帯機2と車載器型盗難防止装置1の距離が一定値内にある間に完了させる設計となっている。もし、車載器型盗難防止装置1が携帯機2からID認証禁止要求3Aを受信しなかった場合、即ち、ID認証禁止状態へ切り替えできなかった場合は、表示装置6を駆動し、ユーザーに通知を行う。
【0039】
また、車両盗難防止システム100において、ID認証禁止への自動切り替えの設定をするには、ユーザーは、例えば車載器型盗難防止装置1の第2の入力装置8を使って設定できる。例えば、第2の入力装置8(例えばボタンスイッチ)がオフの状態であれば、ID認証を禁止する状態、第2の入力装置8がオンの状態であれば、ID認証の禁止を解除する状態(ID認証を許可する状態)であるとする。
【0040】
携帯機2がID認証禁止状態であれば、車載器型盗難防止装置1からのID認証要求1Aに対し、ID認証禁止状態である情報を含む信号を応答、または、応答自体を禁止することで、
図5のステップST504においてID認証は成功しない。
【0041】
以上のように、実施の形態2に係る車両盗難防止システム100によれば、実施の形態1と同様の効果を得ると共に、ID認証禁止状態への変更にユーザーによる携帯機2の操作が不要であり、操作し忘れを防ぎ盗難防止性を向上させることができる。
【0042】
実施の形態3.
次に、実施の形態3に係る車両盗難防止システムについて説明する。なお、実施の形態3に係る車両盗難防止システムの構成は、実施の形態1あるいは実施の形態2と同様であり、ここでは、
図10および
図11のフローチャートを参照して、車両盗難防止システムにおけるID認証禁止の解除の仕方について説明する。
まず、ユーザーは、携帯機2の第3の入力装置17(例えばボタンスイッチ)を操作し、ID認証禁止を解除(ID認証が許可されている状態)する。
【0043】
ユーザーがエンジンを始動させる場合には、ID認証禁止を解除する必要があり、本実施の形態では、通常、正規ユーザーが身に付けている携帯機2の簡単な操作により、ID認証禁止解除が容易に行える。
【0044】
図10は、車両盗難防止システム100におけるID認証禁止解除時のフローチャートのうち、携帯機2が実行する動作を示すフローチャートである。また、
図11は、ID認証禁止解除時のフローチャートのうち、車両盗難防止システム100において、車載器型盗難防止装置1が実行する動作を示すフローチャートである。
【0045】
図10において、携帯機2は、電源がオンであればフローがスタートし(ステップST1000)、待ち受け状態にある。携帯機2の第3の入力装置17において、ユーザーの操作を検知すると(ステップST1001)、入力がID認証禁止解除条件と一致しているか否かを判定する(ST1002)。
【0046】
ID認証禁止解除条件が成立していれば、携帯機2から車載器型盗難防止装置1へ、ID認証禁止解除要求4Bを送信(ステップST1003)し、フローを終了する(ステップST1004)。ID認証禁止解除条件が不成立であれば、再び、第3の入力装置17からの入力値を得る(ステップST1001)。
【0047】
ここで、携帯機2の第3の入力装置17において、ユーザーがID認証禁止解除条件を入力する前に、携帯機2の第3の入力装置17への入力により、ID認証禁止状態を確認できる。例えば、携帯機2の第3の入力装置17における入力により、車両からユーザーに表示装置6の点滅などでID認証禁止状態を通知することも可能である。
【0048】
次に、
図11において、車載器型盗難防止装置1は、フローがスタート(ステップST1100)し、ID認証禁止解除要求4Bを受信する(ステップST1101)。車載器型盗難防止装置1のID認証禁止解除部14は、受信したID認証禁止解除要求4Bが正常であるか否かを判定する。即ち、受信したIDがペアリング済みの携帯機2のIDと合致しているか否かを判定する(ステップST1102)。受信したIDがペアリング済みの携帯機2のIDと合致していれば、ID認証の禁止を解除し(ステップST1103)し、フローを終了する(ステップST1104)。なお、同様に携帯機2の簡単な操作により、ID認証禁止状態への変更を行うことも可能である。
【0049】
以上のように、本願によれば、エンジンを始動するためにID認証を行う車載器型盗難防止装置1と、認証用ID(ID認証要求応答)を送信する携帯機2がペアリング関係にある車両盗難防止システム100において、コストおよびシステムがサイズアップせず、操作の複雑化も少なく、なおかつ盗難防止性の向上した車両盗難防止システムを提供することが可能となる。
【0050】
また、前記実施の形態では、鞍乗型車両の盗難防止装置について説明したが、船舶、および特殊車両に適用してもよく、同等の作用効果を奏することは言うまでもない。また、前記実施の形態では、車両の動力源として、エンジンを例に説明したが、これがモーターであっても同等の作用効果を奏ることは言うまでもない。
【0051】
本願は、様々な例示的な実施の形態および実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、および機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0052】
1 車載器型盗難防止装置、2 携帯機、3 エンジン制御装置、4 車両、5 入力装置、6 表示装置、7 第1の入力装置、8 第2の入力装置、9、15、21 信号送信ユニット、10、16、20 信号受信ユニット、11、18、23 制御部、12、19、24 記憶装置、13 ID認証禁止部、14 ID認証禁止解除部、17 第3の入力装置、22 第4の入力装置、100 車両盗難防止システム、1A ID認証要求、2A ID認証要求応答、3A ID認証禁止要求、4A ID認証禁止要求応答、4B ID認証禁止解除要求。
【要約】
【課題】複雑な操作を必要とせずに盗難防止性を向上させる車両盗難防止システムを提供する。
【解決手段】ID認証を要求するID認証要求1Aを送信する車載器型盗難防止装置1と、車載器型盗難防止装置1から送信されるID認証要求1Aを受信し、車載器型盗難防止装置1へID認証要求応答2Aを送信する携帯機2を備え、車載器型盗難防止装置1は、ID認証要求応答2Aを受信すると、受信したID認証要求応答2Aが正常であるか否かを判定し、車両システムの停止後に、ID認証を自動的に禁止する状態へ切り替える。
【選択図】
図1