【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2017年9月12日にSPIE Photomask Technology 2017、モントレー・マリオット(アメリカ合衆国 カリフォルニア州 モントレー郡350カーレ・プリンシパル)で発表 2017年10月16日に https://www.spiedigitallibrary.org/conference−proceedings−of−spie/10451/104510Q/Development−of−EUV−pellicle−for−suppression−of−contamination−haze−and/10.1117/12.2280595.shortに掲載 2017年12月5日に発行されたProceedings of SPIE, Photomask Technology、10451、Citation identifiers(CIDs) 104510Qに掲載
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記金属層は、アルミニウム、チタン、クロム、鉄、ニッケル、銅、ルテニウム、タンタル、及び金の群から選ばれた何れか一種の金属、前記群から選ばれた二種以上の元素を含む合金、又は、前記群から選ばれる何れか一種又は二種以上の元素を含む酸化物である、請求項11に記載のペリクル。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を、
図1から
図22を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0026】
本明細書において、ある部材又は領域が、他の部材又は領域の「上に(又は下に)」あるとする場合、特段の限定がない限り、これは他の部材又は領域の直上(又は直下)にある場合のみでなく、他の部材又は領域の上方(又は下方)にある場合を含み、すなわち、他の部材又は領域の上方(又は下方)において間に別の構成要素が含まれている場合も含む。
【0027】
[実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に係るペリクル100の上面図である。ペリクル100は、EUVフォトリソグラフィ用ペリクルである。EUVフォトリソグラフィ用ペリクル膜に特段の限定はない。ペリクル100は、ペリクル膜101と、支持枠103と、4つの突起部105とを含む。
【0028】
ペリクル膜101は、ペリクル100に使用される薄膜である。ペリクル膜101は、例えば、SiN、炭素系膜(例えば、グラフェン膜、カーボンナノチューブの膜、カーボンナノシート)、ポリシリコン、又はそれら複数の層が積層した積層構造体である。ペリクル膜101は、ここでは上面が矩形であるが、正方形又はその他の形状であってもよい。
【0029】
ペリクル膜101は、例えば、基板上に、CVD法(Chemical Vapor Deposition)又はスパッタ製膜の方法によって、形成される。基板は、例えば、シリコンウェハ、サファイア、又は炭化ケイ素である。CVD法は、例えば、LP−CVD、又はPE−CVDによる成膜法である。その後、ペリクル膜101が露出するように、基板をエッチング(より具体的には、バックエッチング)することで、ペリクル膜101が製造される。バックエッチングは、ペリクル膜101を残して基板の一部を除去する工程である。
【0030】
支持枠103は、ペリクル膜101を支持する枠体である。支持枠103は、ペリクル膜101の一方の面側からペリクル膜101を支持する。支持枠103は、ペリクル膜101の形状に応じた形状である。支持枠103は、ここではペリクル膜101の外縁部に沿った矩形の枠体であるが、正方形またはその他の形状の枠体であってもよい。
【0031】
支持枠103は、基板を枠状に残してエッチングすることで残った枠体であってもよいし、別の枠体であってもよい。ペリクル膜101を支持枠103に固定する方法は、特に限定されない。例えば、ペリクル膜101は、支持枠103へ直接貼り付けられてもよい。ペリクル膜101は、支持枠103の一方の端面にある膜接着剤層を介して、支持枠103に接着されてもよい。ペリクル膜101は、機械的又は磁気的に、支持枠103に固定されてもよい。
【0032】
4つの突起部105の各々は、支持枠103から突き出た部位である。具体的には、4つの突起部105の各々は、上面視において支持枠103からペリクル膜101が位置する側とは反対側に突き出ている。4つの突起部105のうち、2つの突起部105が、支持枠103の一辺に沿って設けられ、残りの2つの突起部105が、支持枠103の当該一辺に対向する辺に沿って設けられている。
【0033】
4つの突起部105の各々は、支持枠103と一体に形成されている。ただし、4つの突起部105の少なくとも一部が支持枠103とは別の部材で形成され、例えば接着により支持枠103と接続されてもよい。本実施形態では、4つの突起部105は互いに同一の形状、かつ同一の寸法であるものとする。4つの突起部105の少なくとも一部の突起部105は、他の突起部105と形状又は寸法が異なっていてもよい。
【0034】
図2は、突起部105の構成を説明する図である。
図2は、ペリクル100における突起部105およびその周辺の部位の上面図である。突起部105は、上面が台形形状である。具体的には、突起部105は、上底が下底よりも短く、かつ下底が支持枠103と接触する。突起部105の面積は、例えば、30mm
2以上250mm
2以下である。突起部105の上底に相当する部分の長さL1は、例えば15mmである。突起部105の下底に相当する部分の長さL1+L2は、例えば25mm(つまり、L2=10mm)である。突起部105の高さに相当する部分の長さL3は、例えば10mmである。なお、支持枠103の幅L4は、例えば2mm以上4mm以下である。
【0035】
ペリクル100とフォトマスク(後述する、マスク(原版)200)とは、接着剤を用いて接続される。EUV光リソグラフィにおいては、真空下で露光が行われるため、接着剤からのアウトガスの発生を抑えることが求められる場合がある。この問題を解決するために、ペリクルを使用する前に接着剤の一側面に対してEUV光を照射し、あらかじめガスを発生させ、使用時のアウトガス発生量を減らす、という手法がある。しかし、この手法では、EUV光によりダメージを受けて柔軟性を失って脆くなった接着剤由来の粉塵の発生を抑えることが求められる場合がある。また、プリベイクなどでアウトガスを減らす手段においても同様に、粉塵の発生を抑えることが求められる場合がある。ペリクル100は、接着層からのアウトガスの発生を抑え、ペリクル枠の良好な密着性を確保するための構成として、例えば、以下の各構成例の構成を有する。
【0036】
(構成例1)
図3は、ペリクル膜101、支持枠103、及び突起部105を含む平面でペリクル100を切断したときの断面を示す図(すなわち、
図1のA−A断面図)である。
図4は、
図3の構成のペリクル100を下方から見た図(すなわち、後述する第1の端面141に垂直な方向から見た図)である。
図4においては、支持枠103及び突起部105を破線で示し、ペリクル膜101は省略する。本実施形態では、4つの突起部105の周辺の構成は、互いに同一であるものとする。この前提は、以下で説明する各構成例でも同じである。
【0037】
支持枠103は、突起部105及び第1の接着層107を介して、マスク200と接続される。第1の接着層107は、接着剤を含む層である。第1の接着層107は、マスク200にペリクル100を設置するための接着層である。具体的には、第1の接着層107は、突起部105に接触し、突起部105とマスク200とを接続する。第1の接着層107は、例えば支持枠103とは接触しない。支持枠103と突起部105との境界面と、突起部105の第1の接着層107が設けられる端面とは、互いに交差する。
【0038】
第1の接着層107の接着剤は、例えば、アクリル樹脂接着剤、エポキシ樹脂接着剤、ポリイミド樹脂接着剤、シリコーン樹脂接着剤、無機系接着剤、両面粘着テープ、シリコーン樹脂粘着剤、アクリル系粘着剤、又はポリオレフィン系粘着剤であるが、これら以外の接着剤であってもよい。本明細書において、第1の接着層107に含まれる接着剤は、接着剤のみならず粘着剤を含む概念である。
【0039】
第1の接着層107は、第1の側面121と、第2の側面131と、第1の端面141とを含む。第1の側面121は、ペリクル膜101(より詳細には、ペリクル膜101の膜面)と交差する方向の側面であって、ペリクル膜101が位置する側の側面である。なお、「ペリクル膜101が位置する側」とは、ペリクルの水平方向においてペリクル膜の中心が位置する側を指す。第2の側面131は、第1の側面121に対向する側面で、第1の側面121とほぼ平行である。すなわち、第2の側面131は、ペリクル膜101と交差する方向の側面であって、ペリクル膜101が位置する側とは反対側の側面である。第1の端面141は、第1の接着層107が突起部105と接する面と対向する端面である。すなわち、第1の端面141は、第1の側面121と第2の側面131との間に位置し、かつ突起部105と接さずに第1の側面121と第2の側面131とを接続する端面である。第1の接着層107の第1の端面141の形状は制限されないが、例えば、矩形状、台形状、円形状、不定形状、又はその他の形状が挙げられる。
【0040】
なお、本明細書において、各側面および各端面は平面としているが、それぞれ一部または全部の領域に曲面の領域を含んでもよい。また、各側面は、ペリクル膜101又はマスク200の表面に直交する平面に限られず、ペリクル膜101又はマスク200の表面に対して傾斜した平面であってもよい。
【0041】
第1の無機物層109は、第1の接着層107よりもペリクル膜101が位置する側に設けられている。具体的には、第1の無機物層109は、第1の側面121に設けられている。第1の無機物層109は、例えば、第1の側面121の全体を覆う。第1の無機物層109は、少なくとも突起部105と接触する。第1の無機物層109は、例えば、突起部105と接触するが、支持枠103とは接触しない。第1の無機物層109は、EUV光の透過率が低い材料(例えば、金属又はセラミック)により形成されている。EUV光は、波長5nm以上30nm以下の光である。EUV光の波長は、5nm以上14nm以下が好ましい。
【0042】
第1の無機物層109は、第1の側面121から発生するアウトガスが、マスク200とペリクル膜101により挟まれた領域Tに侵入することを抑える。これにより、マスク200の表面にコンタミネーションが発生することが抑えられる。第1の接着層107の厚みは、10μm以上1mm以下であることが好ましい。ここにおいて、第1の接着層107の厚みとは、ペリクル膜101の膜面に直交する方向における第1の接着層107の長さをいう。例えば、第1の接着層107の厚みが10μm以上であることにより、突起部105とマスク200との密着性が確保されやすくなる。第1の接着層107の厚みが1mm以下であることにより、アウトガスの発生が抑えられる傾向にある。
【0043】
第1の無機物層109は、EUV光による劣化が少なく、かつEUV光の透過率が10パーセント以下であることが好ましい。これにより、第1の接着層107からのアウトガスの発生量が少なくなる。さらに、第1の無機物層109は、水素ラジカルへの耐性を有することが好ましい。第1の無機物層109の厚みは、50nm以上1μm以下程度であることが好ましい。ここで第1の無機物層109の厚みとは、ペリクル膜101の膜面に平行な方向における第1の無機物層109の長さを意味する。
【0044】
なお、EUV光の透過率が10パーセント以下とは、所定の無機物層の厚みが400nmである場合に、波長13.5nmのEUV光を照射してそのEUV光の透過率が10パーセント以下であることをいう。
【0045】
第1の無機物層109を第1の接着層107にコーティングする方法は、例えば、蒸着又はスパッタリングであるが、これに限定されない。第1の無機物層109は、第1の接着層107の表面に形成可能な方法であればよい。
【0046】
また、ペリクル100をマスク200に設置する工程において、その設置方向の力が第1の接着層107に力が加わり、また、露光装置内では該設置方向に交差する方向の力(ずり)が第1の接着層107に作用することがある。この課題を解決するため、第1の無機物層109は、第1の接着層107の形状の変化に追随させるために、金属層により形成されることが好ましい。
【0047】
第1の無機物層109に適用しうる金属としては、例えば、Al(アルミニウム)、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Cr(クロム)、Mn(マンガン)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)、Ga(ガリウム)、Ge(ゲルマニウム)、Rb(ルビジウム)、Sr(ストロンチウム)、Y(イットリウム)、Zr(ジルコニア)、Nb(ニオブ)、Mo(モリブデン)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Hf(ハフニウム)、Ta(タンタル)
、W(タングステン)、Pt(プラチナ)、及びAu(金)の群から選ばれた何れか一種の金属が好ましい。第1の無機物層109は、これらから選択される2以上の元素を用いた合金であってもよいし、酸化物であってもよい。
【0048】
上記の金属のうち、第1の無機物層109に適用しうる金属としては、Al(アルミニウム)、Ti(チタン)、Cr(クロム)、Fe(鉄)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Ru(ルテニウム)、Ta(タンタル)、及びAu(金)の群から選ばれた何れか一種の金属がより好ましい。
【0049】
第1の無機物層109は、Al(アルミニウム)、Ti(チタン)、Cr(クロム)、Fe(鉄)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Ru(ルテニウム)、Ta(タンタル)、及びAu(金)のうちから選択される二種以上の元素を用いた合金であってもよいし、酸化物であってもよい。
【0050】
第1の接着層107と第1の無機物層109との間に、中間層が設けられてもよい。中間層は、第1の無機物層109のクラックの発生を防止することに寄与する。中間層には第1の無機物層109が積層されることから、EUV光の透過率及びアウトガスに関する物性には限定がない。中間層は、例えば、パリレン、ポリイミド、セラミック又は金属の材料を用いて、蒸着、スパッタリング又はCVDにより形成される。
【0051】
第1の接着層107の第1の端面141に、保護層が設けられてもよい。保護層は、例えば、剥離ライナー(剥離フィルム又はセパレーターとも呼ばれる。)などの公知のものを特に制限なく適用されてよい。保護層は、搬送時に第1の接着層107の粘着力が低下することを抑制することに寄与する。
【0052】
図5は、第1の接着層107、及び第1の無機物層109の構成の他の例を示す図である。この例では、第1の無機物層109は、第1の側面121に加え、第1の端面141の一部の領域と接触する。具体的には、第1の無機物層109は、第1の端面141のうちの第1の側面121に隣接する領域1411に接触する。第1の端面141のうちの領域1411に隣接する領域1413は、マスク200の表面と接触する。ペリクル膜101の膜面に垂直な方向における第1の無機物層109の厚みは、領域1413に近づくほど小さくなっている。第1の無機物層109を形成する方法は、例えば、第1の接着層107のうち、領域1413をマスキングテープで保護しつつ、例えばマグネトロンスパッタリングにて無機物をコーティングし、その後にマスキングテープを剥離する方法である。
【0053】
構成例1に係るペリクル100によれば、支持枠103が第1の接着層107を介してマスク200に接着されるので、スタッドを用いた物理的接続が採用される場合に比べて、粉塵の発生が抑えられる。また、第1の無機物層109が第1の側面121を覆うため、第1の接着層107からのアウトガスが発生しにくい。さらに、第1の接着層107は、支持枠103から突き出た突起部105に設けられる。このため、第1の接着層107が支持枠103に設けられる場合に比べて、第1の接着層107がEUV照射部から遠ざかるため、EUV光に起因する熱による劣化が少なくなる。
【0054】
(構成例2)
図6は、ペリクル膜101、支持枠103、及び突起部105を含む平面でペリクル100を切断したときの断面を示す図(すなわち、
図1のA−A断面図)である。
図7は、
図6の構成のペリクル100を下方から見た図である。
図7においては、支持枠103及び突起部105を破線で示し、ペリクル膜101を省略する。構成例2において、第1の無機物層109は、第1の接着層107の第1の側面121、及び第2の側面131に設けられている。第1の無機物層109は、例えば、第1の接着層107の側面の全体に設けられている。第1の無機物層109は、例えば、突起部105と接触するが、支持枠103とは接触しない。
【0055】
図8は、第1の接着層107及び第1の無機物層109の構成の他の例を示す図である。この例では、第1の無機物層109は、第1の側面121及び第2の側面131に加え、第1の端面141の一部の領域と接触する。具体的には、第1の無機物層109は、第1の端面141のうちの第1の側面121に隣接する領域1415と、第2の側面131に隣接する領域1417とに接触する。領域1419は、第1の端面141のうちの領域1415と領域1417との間に位置し、かつ領域1415と領域1417とに隣接する領域であり、マスク200の表面と接触する。ペリクル膜101の膜面に垂直な方向における第1の無機物層109の厚みは、領域1419に近づくほど小さくなっている。第1の無機物層109を形成する方法は、例えば、第1の接着層107のうち、領域1419をマスキングテープで保護しつつ、例えばマグネトロンスパッタリングにて無機物をコーティングし、その後にマスキングテープを剥離する方法である。
【0056】
構成例2に係るペリクル100によれば、第1の無機物層109が第2の側面131を覆うため、第1の接着層107からアウトガスがさらに発生しにくくなる。これ以外にも、構成例2に係るペリクル100によれば、構成例1に係るペリクル100と同等の効果を奏する。
【0057】
(構成例3)
図9は、ペリクル膜101、支持枠103、及び突起部105を含む平面でペリクル100を切断したときの断面を示す図(すなわち、
図1のA−A断面図)である。
【0058】
構成例3において、ペリクル100の第1の接着層107には、第1の無機物層109が設けられていない。すなわち、第1の接着層107の第1の側面121、及び第2の側面131が外部に露出している。
【0059】
構成例3において、ペリクル100は、密着層111と、第2の無機物層113とを有する。密着層111は、支持枠103とマスク200との密着性を向上させる。密着層111は、第1の接着層107よりも、ペリクル膜101が位置する側に設けられている。具体的には、密着層111は、支持枠103に設けられ、支持枠103とマスク200とを接続する。密着層111は、少なくとも支持枠103と接触する。密着層111は、例えば、支持枠103と接触するが、突起部105とは接しない。支持枠103と突起部105との境界面と、支持枠103の密着層111が設けられる端面とは、互いに交差する。
【0060】
密着層111は、第3の側面151と、第4の側面161と、第2の端面171とを含む。第3の側面151は、ペリクル膜101と交差する方向の側面であって、ペリクル膜101が位置する側の側面である。第3の側面151は、マスク200とペリクル膜101により挟まれた領域Tを形成する側の側面である。第4の側面161は、第3の側面151に対向する側面で、第3の側面151とほぼ平行である。すなわち、第4の側面161は、ペリクル膜101と交差する方向の側面であって、ペリクル膜101が位置する側とは反対側の側面である。第2の端面171は、密着層111が支持枠103に接する面と対向する端面である。すなわち、第2の端面171は、第3の側面151と第4の側面161との間に位置し、かつ支持枠103と接さずに第3の側面151と第4の側面161とに接続された端面である。
【0061】
密着層111は、ここでは、有機材料を用いて形成される。有機材料は、例えば、ニトリルゴム、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、水素化ニトリルゴム、パーフルオロエラストマー、テトラフルオロエチレン−プロピレン系フッ素ゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレン、ウレタンゴム、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、又はアミド系エラストマーである。また、より少ない力で密着層111とマスク200との密着性(接触幅)を向上させるため、有機材料の弾性率は、20℃の温度において0.1MPa以上100MPa以下である所定範囲内に含まれることが好ましい。
【0062】
第2の無機物層113は、密着層111よりもペリクル膜101が位置する側に設けられた無機物層である。具体的には、第2の無機物層113は、第3の側面151に設けられている。第2の無機物層113は、例えば、第3の側面151の全体を覆う。第2の無機物層113は、少なくとも支持枠103と接触する。第2の無機物層113は、例えば、支持枠103と接触するが、突起部105とは接触しない。第2の無機物層113は、第1の無機物層109と同じ材料で形成されてもよいし、異なる材料で形成されてもよい。
【0063】
図10は、
図9の構成のペリクル100を下方から見た図である。
図10においては、支持枠103及び突起部105を破線で示し、ペリクル膜101を省略する。密着層111、及び第2の無機物層113は、支持枠103の形状に応じた形状を有する。すなわち、密着層111、及び第2の無機物層113は、ここでは、矩形の枠状に形成されている。密着層111、及び第2の無機物層113は、支持枠103の底面1032に沿って枠状に形成されている。底面1032は、支持枠103のうち、マスク200側を向く端面である。換言すると、密着層111、及び第2の無機物層113は、支持枠103の周方向に沿って連続的に配置されている。第2の無機物層113は、密着層111の第3の側面151の全体を覆う。ペリクル100をマスク200側から見たとき、支持枠103、密着層111、及び第2の無機物層113は、領域Tを取り囲む。これにより、領域Tは、ペリクル膜101と、マスク200と、密着層111と、第2の無機物層113とによって閉鎖された閉鎖領域となる。
【0064】
構成例3に係るペリクル100によれば、第1の接着層107及び密着層111を用いて、支持枠103がマスク200に接続されるので、粉塵の発生が抑えられるとともに、ペリクル100とマスク200との密着性が向上する。また、領域Tは、閉鎖領域であるため、領域Tに粉塵やアウトガスが侵入しにくい。また、第2の無機物層113は、密着層111の第3の側面151を覆う。さらに、第1の接着層107は、第2の無機物層113及び密着層111よりもペリクル膜101から離れた位置に設けられている。このため、ペリクル100は、アウトガスが発生しにくく、また、EUV光に起因する熱による劣化が少ない。
【0065】
(構成例4)
図11は、ペリクル膜101、支持枠103、及び突起部105を含む平面でペリクル100を切断したときの断面を示す図(すなわち、
図1のA−A断面図)である。構成例4において、第2の無機物層113は、第3の側面151、第4の側面161、及び第2の端面171に設けられている。第2の無機物層113は、例えば、密着層111の側面の全体、及び第2の端面171の全体を覆う。第2の無機物層113は、少なくとも支持枠103と接触する。第2の無機物層113は、例えば、支持枠103と接触するが、突起部105とは接触しない。
【0066】
図12は、
図11の構成のペリクル100を下方から見た図である。
図12においては、支持枠103及び突起部105を破線で示し、ペリクル膜101を省略する。密着層111、及び第2の無機物層113は、支持枠103の形状に応じた形状を有する。すなわち、第2の無機物層113は、支持枠103の底面1032に沿って枠状に形成されている。換言すると、第2の無機物層113は、支持枠103の周方向に沿って連続的に配置されている。第2の無機物層113は、密着層111の第3の側面151、第4の側面161、および第2の端面171の全体を覆う。ペリクル100をマスク200側から見たとき、第2の無機物層113は領域Tを取り囲む。これにより、領域Tは、密着層111、及び第2の無機物層113によって閉鎖された閉鎖領域となる。
【0067】
構成例4において、第2の無機物層113は、密着層111とマスク200とを接続する第2の端面171を覆う。第2の無機物層113が形成されていても、密着層111の弾性率が上記所定範囲に含まれていることにより、密着層111が第2の無機物層113を介してマスク200に密着し、領域Tへの粉塵の侵入が抑えられる。密着層111とマスク200との密着性をより向上させる観点から、第2の端面171に形成された第2の無機物層113の厚みは、10μm以下が好ましく、1μm以下がより好ましい。また、クラックを生じにくくする観点から、第2の無機物層113の厚みは50nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましい。
【0068】
(構成例5)
図13は、ペリクル膜101、支持枠103、及び突起部105を含む平面でペリクル100を切断したときの断面を示す図(
図1のA−A断面図)である。構成例5は、実質的に、構成例2及び構成例4を組み合わせた構成に等しい。すなわち、第1の無機物層109は、第1の接着層107の第1の側面121、及び第2の側面131を覆う。第2の無機物層113は、密着層111の第3の側面151、第4の側面161、及び第2の端面171に設けられている。第2の無機物層113は、例えば、第3の側面151、第4の側面161、及び第2の端面171の全体を覆う。
【0069】
図14は、
図13の構成のペリクル100を下方から見た図である。
図14においては、支持枠103及び突起部105を破線で示し、ペリクル膜101を省略する。ペリクル100をマスク200側から見たとき、第2の無機物層113は領域Tを取り囲む。これにより、領域Tは、密着層111、及び第2の無機物層113によって閉鎖された閉鎖領域となる。
【0070】
構成例5に係るペリクル100によれば、上述した構成例2に係るペリクル100の効果、および構成例4に係るペリクル100の効果を奏する。
【0071】
(構成例6)
ペリクル100の支持枠の強度を高めるため、構成例6に係るペリクル100の支持枠103は、第1の枠体103Aと第2の枠体115とを含む。
【0072】
図15は、構成例3の支持枠103に、第1の枠体103A、及び第2の枠体115を適用した場合のペリクル100の断面を示す図である。
図16は、構成例4の支持枠103に、第1の枠体103A、及び第2の枠体115を適用した場合のペリクル100の断面を示す図である。
図17は、構成例5の支持枠103に、第1の枠体103A、及び第2の枠体115を適用した場合のペリクル100の断面を示す図である。
【0073】
第1の枠体103Aは、構成例3から構成例5に係る支持枠103の各々と同じ構成の枠体である。突起部105は、第1の枠体103Aと一体に形成されている。ただし、4つの突起部105の少なくとも一部が第1の枠体103Aとは別の部材で形成され、例えば接着により第1の枠体103Aと接続されてもよい。第1の枠体103Aの材質は特に問わないが、例えば、シリコン、サファイア、又は炭化ケイ素が好ましく、シリコンがより好ましい。第2の枠体115は、第1の枠体103Aの形状に応じた形状を有する。具体的には、第2の枠体115は、マスク200側から見たときに、第1の枠体103Aと重なり合うように、矩形の枠状に形成されている。すなわち、第2の枠体115は、第1の接着層107よりもペリクル膜101が位置する側に設けられている。
【0074】
第2の枠体115は、第2の接着層117を介して、第1の枠体103Aと接続されている。第2の枠体115の材質は特に制限されないが、軽量さ及び強度を両立する観点から、アルミニウム、アルミニウム合金(5000系、6000系、7000系等)、又はシリコンが好ましい。第2の枠体115は、例えば、第1の枠体103Aよりも厚い。すなわち、ペリクル膜101の膜面に垂直な方向における長さは、第2の枠体115の方が第1の枠体103Aよりも長い。第2の接着層117は、第1の枠体103Aと第2の枠体115とを接続する接着層である。第2の接着層117の接着剤は、第1の接着層107と同じ接着剤であってよいし、異なる接着剤であってもよい。
【0075】
なお、EUV光が第2の接着層117に当たり、第2の接着層117からアウトガスが発生することを抑制する観点からは、第2の接着層117の側面にも無機物層が設けられることが好ましい。しかし、第2の接着層117は、マスク200から遠く、マスク200の表面で散乱したEUV光は第2の枠体115により遮られる傾向にある。このため、第2の接着層117の側面に無機物層を設けることは必須ではない。また、第2の枠体115の側面にも無機物層が設けられてもよい。
【0076】
図15、
図16、及び
図17に示すように、密着層111及び第2の無機物層113は、第2の枠体115に設けられている。より具体的には、密着層111、及び第2の無機物層113は、第2の枠体115の底面1152に沿って設けられている。このため、密着層111及び第2の無機物層113は、領域Tを閉鎖する。このため、
図15、
図16、及び
図17に示したペリクル100によれば、それぞれ構成例3、構成例4、及び構成例5と同等の効果を奏する。さらに、上述した基板を枠状に残してエッチングすることで残った枠体を第1の枠体103Aとし、第2の枠体115を接続することにより、ペリクル膜101の製造時の取り扱いを簡便にしつつ、支持枠103がより軽量になり、また支持枠103の強度がより向上する。
【0077】
(構成例7)
構成例7に係るペリクル100では、突起部が第2の枠体115に設けられる。
図18から
図20は、第2の枠体115に突起部105Aを適用した場合のペリクル100の断面を示す図である。
図18に示す例では、第1の接着層107、密着層111及び第2の無機物層113は、構成例3と同じ位置に設けられている。
図19に示す例では、密着層111及び第2の無機物層113は、構成例4と同じ位置に設けられている。
図20に示す例では、第1の接着層107、第1の無機物層109、密着層111及び第2の無機物層113は、構成例5と同じ位置に設けられている。
【0078】
突起部105Aは、第2の枠体115から突き出た部位である。具体的には、突起部105Aは、支持枠103からペリクル膜101が位置する側とは反対側に突き出ている。突起部105Aは、第1の接着層107を介してマスク200と接続される。突起部105Aは、第2の枠体115と一体に形成されている。ただし、4つの突起部105Aの少なくとも一部が第2の枠体115とは別の部材で形成され、例えば接着により第2の枠体115と接続されてもよい。
【0079】
構成例7のペリクル100によれば、構成例6と同様の効果を奏する。また、構成例6に比べ、第1の接着層107の厚みを薄くできるため、アウトガスの発生をより抑制できる傾向にある。
【0080】
なお、構成例1から構成例7で説明した各部材の形状、寸法、および材料は一例に過ぎず、種々の変形が可能である。
【0081】
例えば、ペリクル100において、突起部105は上面視において台形以外の形状であってもよい。
図21は、一変形例に係る突起部105の構成を説明する図である。この例では、突起部105は、上面が矩形である。突起部105の面積は、例えば、30mm
2以上250mm
2以下である。突起部105の短辺に相当する部分の長さL5は、例えば1.5mm以上20mm以下である。なお、突起部105は、例えば、四角形以外の多角形及び円形若しくはこれらの組み合わせで例示される台形以外の形状でもよい。また、支持枠103が有する突起部105の数は、4つに限定されず、2つ以上であればよい。突起部105の数は、例えば2個以上10個以下とすることができる。突起部105の数が多いと、ペリクル100とマスク200との固定が充分になる傾向にあり、突起部105の数が少ないと、アウトガスの発生がより抑えられる傾向にある。なお、突起部105Aの形状、寸法及び数についても、突起部105と同様の変形が可能である。
【0082】
[露光原版]
本実施形態の露光装置は、本実施形態の露光原版を備える。このため、本実施形態の露光原版と同様の効果を奏する。
【0083】
本実施形態の露光装置は、露光光(好ましくはEUV光等、より好ましくはEUV光。以下同じ。)を放出する光源と、本実施形態の露光原版と、光源から放出された露光光を露光原版に導く光学系と、を備え、露光原版は、光源から放出された露光光がペリクル膜を透過して原版に照射されるように配置されていることが好ましい。
【0084】
この態様によれば、EUV光等によって微細化されたパターン(例えば線幅32nm以下)を形成できることに加え、異物による解像不良が問題となり易いEUV光を用いた場合であっても、異物による解像不良が低減されたパターン露光を行うことができる。
【0085】
[露光装置]
図22は、本実施形態の露光装置の一例である、EUV露光装置180の概略断面図である。
【0086】
図22に示されるように、EUV露光装置180は、EUV光を放出する光源182と、本実施形態の露光原版の一例である露光原版181と、光源182から放出されたEUV光を露光原版181に導く照明光学系183と、を備える。EUV露光装置180では、光源182から放出されたEUV光が照明光学系183で集光され照度が均一化され、露光原版181に照射される。露光原版181に照射されたEUV光は、原版(マスク)184によりパターン状に反射される。
【0087】
露光原版181は、本実施形態の露光原版の一例である。すなわち、露光原版181は、ペリクル膜101及び支持枠を含む本実施形態のペリクルの一例であるペリクル100と、原版184と、を備えている。この露光原版181は、光源182から放出されたEUV光がペリクル膜101を透過して原版184に照射されるように配置されている。
【0088】
照明光学系183には、EUV光の光路を調整するための複数枚の多層膜ミラー189と光結合器(オプティカルインテグレーター)等が含まれる。
【0089】
光源182及び照明光学系183は、公知の光源及び照明光学系を用いることができる。
【0090】
EUV露光装置180において、光源182と照明光学系183との間、及び照明光学系183と原版184の間には、フィルター・ウィンドウ185及び186がそれぞれ設置されている。フィルター・ウィンドウ185及び186は、飛散粒子(デブリ)を捕捉し得るものである。また、EUV露光装置180は、原版184が反射したEUV光を感応基板187へ導く投影光学系188を備えている。EUV露光装置180では、原版184により反射されたEUV光が、投影光学系188を通じて感応基板187上に導かれ、感応基板187がパターン状に露光される。なお、EUVによる露光は、減圧条件下で行われる。投影光学系188には、複数枚の多層膜ミラー190、191等が含まれる。フィルター・ウィンドウ185、フィルター・ウィンドウ186及び投影光学系188としては、公知の投影光学系を用いることができる。
【0091】
感応基板187は、半導体ウェハ上にレジストが塗布された基板等であり、原版184によって反射されたEUV光により、レジストがパターン状に硬化する。このレジストを現像し、半導体ウェハのエッチングを行うことで、半導体ウェハに所望のパターンを形成する。
【0092】
[半導体装置の製造方法]
本実施形態の半導体装置の製造方法は、光源から放出された露光光を、本実施形態の露光原版の前記ペリクル膜を透過させて前記原版に照射し、前記原版で反射させ、前記原版によって反射された露光光を、前記ペリクル膜を透過させて感応基板に照射することにより、前記感応基板をパターン状に露光する。
【0093】
本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、異物による解像不良が問題となり易いEUV光を用いた場合であっても、異物による解像不良が低減された半導体装置を製造することができる。
【0094】
以上、本発明の好ましい実施形態によるペリクル膜の製造方法について説明した。しかし、これらは単なる例示に過ぎず、本発明の技術的範囲はそれらには限定されない。実際、当業者であれば、特許請求の範囲において請求されている本発明の要旨を逸脱することなく、種々の変更が可能であろう。よって、それらの変更も当然に、本発明の技術的範囲に属すると解されるべきである。