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特許6968264パワーモジュールのダイの第1の相互接続体の修復を可能にするシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6968264
(24)【登録日】2021年10月28日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】パワーモジュールのダイの第1の相互接続体の修復を可能にするシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20211108BHJP
【FI】
   H01L21/60 301A
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-509524(P2020-509524)
(86)(22)【出願日】2018年10月31日
(65)【公表番号】特表2020-532118(P2020-532118A)
(43)【公表日】2020年11月5日
(86)【国際出願番号】JP2018041258
(87)【国際公開番号】WO2019107095
(87)【国際公開日】20190606
【審査請求日】2020年2月18日
(31)【優先権主張番号】17204198.0
(32)【優先日】2017年11月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503163527
【氏名又は名称】ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンチュク、ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ブランデレロ、ジュリオ
(72)【発明者】
【氏名】モロヴ、ステファン
【審査官】 安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/083250(WO,A1)
【文献】 特開2005−311213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H01L 21/52
H01L 25/00−18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイを電気回路に接続する、パワーモジュールの前記ダイの第1の相互接続体の修復を可能にするシステムであって、前記システムは、
前記パワーモジュールの少なくとも1つの他の相互接続体と、
前記第1の相互接続体の温度を上昇させることによって、及び、前記第1の相互接続体におけるクラックに沿って応力を上昇させ、それによってクラックにおける拡散速度を上昇させて前記クラックの回復を引き起こすことによって前記第1の相互接続体の修復を可能にするために、前記第1の相互接続体の少なくとも一部が所定の持続時間内に所定の温度に達するために、前記第1の相互接続体および前記少なくとも1つの他の相互接続体を通る高周波周期電流フローを生成するように、前記第1の相互接続体および前記少なくとも1つの他の相互接続体に接続される周期電流源と、
を備え、
前記第1の相互接続体および前記少なくとも1つの他の相互接続体はボンディングワイヤであることを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記第1の相互接続体の第1の端子は前記ダイのメタライゼーション部に接続され、前記少なくとも1つの他の相互接続体である第2の相互接続体の第1の端子は、前記第1の相互接続体の第1の端子に接続され、前記周期電流源は、前記第1および前記第2の相互接続体及び前記メタライゼーション部を通る周期電流フローを生成するように前記第1および前記第2の相互接続体の第2の端子に接続されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ボンディングワイヤはアルミニウム合金ボンディングワイヤであることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
ダイを電気回路に接続する、パワーモジュールの前記ダイの第1の相互接続体の修復を可能にするシステムであって、前記システムは、
前記パワーモジュールの少なくとも2つの他の相互接続体と、
前記第1の相互接続体の温度を上昇させることによって、及び、前記第1の相互接続体におけるクラックに沿って応力を上昇させ、それによってクラックにおける拡散速度を上昇させて前記クラックの回復を引き起こすことによって前記第1の相互接続体の修復を可能にするために、前記第1の相互接続体の少なくとも一部が所定の持続時間内に所定の温度に達するために、前記少なくとも2つの他の相互接続体を通る高周波周期電流フローを生成するように、前記少なくとも2つの他の相互接続体に接続される周期電流源と、
を備え、
前記第1の相互接続体および前記少なくとも2つの他の相互接続体は銅ビアであり、
前記パワーモジュールは、前記所定の持続時間内に前記第1の相互接続体の少なくとも一部が前記所定の温度に達するために、前記少なくとも2つの他の相互接続体に接続される1つの誘導コイルを更に備えるか、又は
前記パワーモジュールは、前記所定の持続時間内に前記第1の相互接続体の少なくとも一部が前記所定の温度に達するために、前記少なくとも2つの他の相互接続体に接続される1つの磁気構造体を更に備えることを特徴とする、システム。
【請求項5】
前記周期電流源が発生する電流は、100kHzを超える周波数及び82アンペア〜108アンペアのRMS値の矩形波信号又は正弦波信号であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記所定の温度は150℃〜200℃の間であり、前記所定の持続時間は50時間〜100時間の間であることを特徴とする、請求項のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
ダイを電気回路に接続する、パワーモジュールの前記ダイの第1の相互接続体の修復を可能にする方法であって、前記方法は、
前記第1の相互接続体の少なくとも一部が所定の温度に達するために、前記第1の相互接続体および少なくとも1つの他の相互接続体を通る周期電流フローを生成するように、高周波周期電流源を前記第1の相互接続体および前記パワーモジュールの前記少なくとも1つの他の相互接続体に接続するステップと、
前記第1の相互接続体の温度を上昇させることによって、及び、前記第1の相互接続体におけるクラックに沿って応力を上昇させ、それによってクラック内の拡散速度を上昇させて前記クラックの回復を引き起こすことによって前記第1の相互接続体の修復を可能にするために、所定の持続時間内に前記所定の温度において前記高周波周期電流源を制御するステップと、
を含み、
前記第1の相互接続体および前記少なくとも1つの他の相互接続体はボンディングワイヤであることを特徴とする、方法。
【請求項8】
ダイを電気回路に接続する、パワーモジュールの前記ダイの第1の相互接続体の修復を可能にする方法であって、前記方法は、
前記第1の相互接続体の少なくとも一部が所定の温度に達するために、少なくとも2つの他の相互接続体を通る周期電流フローを生成するように、高周波周期電流源を前記パワーモジュールの前記少なくとも2つの他の相互接続体に接続するステップと、
前記第1の相互接続体の温度を上昇させることによって、及び、前記第1の相互接続体におけるクラックに沿って応力を上昇させ、それによってクラック内の拡散速度を上昇させて前記クラックの回復を引き起こすことによって前記第1の相互接続体の修復を可能にするために、所定の持続時間内に前記所定の温度において前記高周波周期電流源を制御するステップと、
を含み、
前記第1の相互接続体および前記少なくとも2つの相互接続体は銅ビアであり、
前記パワーモジュールは、前記所定の持続時間内に前記第1の相互接続体の少なくとも一部が前記所定の温度に達するために、前記少なくとも2つの他の相互接続体に接続される1つの誘導コイルを更に備えるか、又は
前記パワーモジュールは、前記所定の持続時間内に前記第1の相互接続体の少なくとも一部が前記所定の温度に達するために、前記少なくとも2つの他の相互接続体に接続される1つの磁気構造体を更に備えることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、パワーモジュールのダイの相互接続体の修復を可能にするデバイス及び方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
アプリケーションに組み込まれたパワーモジュールには、各々が異なる特性を有する種々の層状材料から構成されているという事実があるため、劣化が発生する。
【0003】
パワーモジュールは、動作中、大きな温度の逸脱をサポートしなければならない。動作に固有する劣化は、はんだ層又はボンディングワイヤ等の様々な界面層におけるクラックの増大として現れる。
【0004】
劣化を抑制するために、パワーモジュールは、より整合するような材料を用いて設計されるが、この解決法では、多くの場合、電気的性能が不十分になるとともに製造コストが高くなる。さらに、これらの追加の製造コストが必要となることに起因して、最も過酷な使用条件に適応するようにパワーモジュールを設計することは現実的ではなく、パワーモジュールの寿命が短くなるため、ストレスが多いアプリケーションとなる。
【0005】
通常、劣化によって故障が起こると、パワーモジュールは交換され、ミッションの停止時間と、パワーモジュールの交換が必要となるための追加コストとが必要になる。多くのアプリケーションにおいて、パワーモジュールの故障による停止時間、介入及び予測不可能性によるコスト増大は甚だしく、パワーエレクトロニクスを用いる全体の金銭的利益をなくしてしまう可能性がある。
【0006】
パワーモジュールの弱点は上面における相互接続体にある。この相互接続体では、アルミニウムボンディングワイヤ及び/又は銅の相互接続体における微細構造のクラックが生じやすい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、パワーモジュールのダイの少なくとも1つの相互接続体の修復を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このために、本発明は、ダイを電気回路に接続する、パワーモジュールのダイの第1の相互接続体の修復を可能にするシステムに関し、本システムは、
パワーモジュールの少なくとも1つの他の相互接続体と、
第1の相互接続体の温度を上昇させることによって、及び、第1の相互接続体におけるクラックに沿って応力を上昇させ、それによってクラックにおける拡散速度を上昇させてクラックの回復を引き起こすことによって第1の相互接続体の修復を可能にするために、第1の相互接続体の少なくとも一部が所定の持続時間内に所定の温度に達するために、少なくとも1つの他の相互接続体を通る高周波周期電流フローを生成するように、少なくとも1つの他の相互接続体に接続される周期電流源と、
を備え
相互接続体はボンディングワイヤであるか、又は相互接続体は銅ビアであり、周期電流源は他の2つの相互接続体に接続され、パワーモジュールは、所定の持続時間内に第1の相互接続体の少なくとも一部が所定の温度に達するために、2つの相互接続体に接続される1つの誘導コイルを更に備えるか、又はパワーモジュールは、所定の持続時間内に第1の相互接続体の少なくとも一部が所定の温度に達するために、2つの相互接続体に接続される1つの磁気構造体を更に備えることを特徴とする。
【0009】
本発明はまた、ダイを電気回路に接続する、パワーモジュールのダイの第1の相互接続体の修復を可能にする方法に関し、本方法は、
第1の相互接続体の少なくとも一部が所定の温度に達するために、少なくとも1つの他の相互接続体を通る周期電流フローを生成するように、高周波周期電流源をパワーモジュールの少なくとも1つの他の相互接続体に接続するステップと、
第1の相互接続体の温度を上昇させることによって、及び、第1の相互接続体におけるクラックに沿って応力を上昇させ、それによってクラック内の拡散速度を上昇させてクラックの回復を引き起こすことによって第1の相互接続体の修復を可能にするために、所定の持続時間内に所定の温度において周期電流源を制御するステップと、
を含み、
相互接続体はボンディングワイヤであるか、又は相互接続体は銅ビアであり、高周波周期電流源は他の2つの相互接続体に接続され、パワーモジュールは、所定の持続時間内に第1の相互接続体の少なくとも一部が所定の温度に達するために、2つの相互接続体に接続される1つの誘導コイルを更に備えるか、又はパワーモジュールは、所定の持続時間内に第1の相互接続体の少なくとも一部が所定の温度に達するために、2つの相互接続体に接続される1つの磁気構造体を更に備えることを特徴とする。
【0010】
このようにすることによって、パワーモジュールの健全性(health)は、単純な介入によって修復することができる。
【0011】
特に、相互接続体における微細構造のクラックは、相互接続体の温度を上昇させるだけでなく、これらのクラックに沿う応力を上昇させ、それによってこの範囲における拡散速度を上昇させるため、高周波電流を注入する標的となる。この拡散によってクラックは修復し、その結果、パワーモジュールの寿命が延びる。
【0012】
特定の特徴によれば、第1の相互接続体の第1の端子はダイに接続され、少なくとも1つの第2の相互接続体の第1の端子は、第1の相互接続体の第1の端子に接続され、周期電流源は、相互接続体を通る周期電流フローを生成するように両方の相互接続体の第2の端子に接続される。
【0013】
したがって、パワーモジュールの単純かつ低コストである変更によって修復プロセスが可能になる。
【0014】
周期電流を注入しても半導体コンポーネントには無害である。なぜなら、この電流は、ダイの上面メタライゼーション部および相互接続体を通して短絡されているため、温度は、通常は175℃である臨界シリコン温度未満に維持されるからである。
【0015】
特定の特徴によれば、相互接続体はボンディングワイヤである。
【0016】
したがって、修復プロセスを、融通性及び低コストでの製造することが求められるパッケージに適用することができる。
【0017】
特定の特徴によれば、ボンディングワイヤはアルミニウム合金ボンディングワイヤである。
【0018】
したがって、修復プロセスは、現行技術水準のパワーモジュールパッケージで見られる標準的な合金に対して適用可能である。
【0019】
特定の特徴によれば、周期電流源が発生する電流は、100kHzを超える周波数及び82アンペア〜108アンペアのRMS値の矩形波信号又は正弦波信号である。
【0020】
したがって、電流源は、標準的なパワーエレクトロニクスコンバータ技術によって開発することができる。
【0021】
特定の特徴によれば、所定の温度は150℃〜200℃の間であり、所定の持続時間は50時間〜100時間の間である。
【0022】
したがって、修復プロセスは、保守のためにコンバーターが停止している短い期間中に行うことができる。
【0023】
特定の特徴によれば、相互接続体は銅ビアであり、周期電流源は他の2つの相互接続体に接続され、パワーモジュールは、所定の持続時間内に第1の相互接続体の少なくとも一部が所定の温度に達するために、2つの相互接続体に接続される1つの誘導コイルを更に備える。
【0024】
したがって、修復プロセスは、銅ビアに対する直接の接触を伴わず、局所的な熱を印加することによって、組込みパッケージにおいて開始することができる。
【0025】
特定の特徴によれば、相互接続体は銅ビアであり、周期電流源は他の2つの相互接続体に接続され、パワーモジュールは、所定の持続時間内に第1の相互接続体の少なくとも一部が所定の温度に達するために、2つの相互接続体に接続される1つの磁気構造体を更に備える。
【0026】
したがって、修復プロセスは、銅ビアに対する直接の接触を伴わず、局所的な熱及び誘導された電流フローを印加することによって、組込みパッケージにおいて開始することができる。
【0027】
本発明の特徴は、例示の実施形態の以下の説明を読むことによってより明らかになる。この説明は、添付図面に関して作成されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】パワーモジュールのアルミニウムボンディングワイヤの上面相互接続体の一例を表す図である。
図2】本発明を実施することを可能にする少なくとも1つの追加接続体を備えるパワーモジュールの側面図である。
図3a】ボンディングワイヤにおけるクラックと、ボンディングワイヤにおけるパルス電流フローとを表す拡大図である。
図3b】ボンディングワイヤにおけるクラックと、ボンディングワイヤにおけるパルス電流フローと、本発明によるクラックの回復プロセス(healing process)とを表す拡大図である。
図4】少なくとも1つの追加接続体と、本発明を実施することを可能にする少なくとも1つの組込み誘導コイルとを備えるパワーモジュールの側面図である。
図5】少なくとも1つの追加接続体と、本発明を実施することを可能にする少なくとも1つの組込み磁気構造体とを備えるパワーモジュールの側面図である。
図6】本発明によるコントローラーのアーキテクチャの一例を表す図である。
図7】パワーダイの少なくとも1つの上部接続体の回復プロセスを制御するアルゴリズムを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、パワーモジュールのアルミニウムボンディングワイヤの上面相互接続体の一例を表している。
【0030】
ボンディングワイヤBdは、メタライゼーション層Meを介してダイDi上に固定されている。
【0031】
ボンディングワイヤBdには、微細構造のクラックCrが生じている。図2は、本発明を実施することを可能にする少なくとも1つの追加接続体を備えるパワーモジュールの側面図を表している。
【0032】
従来のパワーモジュールは、上部相互接続体Cn20及びCn21を備える。相互接続体Cn20及びCn21は、ベースプレートBP及びヒートシンクHSに固定されるダイレクト銅ボンディングDCBの銅層20及び21上にそれぞれ固定されている。
【0033】
相互接続体Cn21及び銅層21は、微細構造のクラックが生じている可能性があるボンディングワイヤBd21によってダイDiに接続されている。
【0034】
本発明によれば、パワーモジュールは、ダイレクト銅ボンディングDCBの銅層22上に固定される追加相互接続体Cn22を更に備える。相互接続体Cn22、銅層22は、追加ボンディングワイヤBd22によってダイDiに接続されている。
【0035】
相互接続体Cn21、Cn22、銅層21及び22、ボンディングワイヤBd21及びBd22が電路を形成する。
【0036】
相互接続体Cn21及びCn22が、例えば高周波電流源のような電源に接続されると、電流は、相互接続体Cn21及びCn22、銅層21及び22、ボンディングワイヤBd21及びBd22を通過する。
【0037】
本発明によれば、高周波電流は、高い構造統合性状態を保持するために定期的な間隔をおいて、相互接続体Cn21及びCn22、銅層21及び22、ボンディングワイヤBd21及びBd22を通過する。特に、アルミニウムボンディングワイヤにおける微細構造のクラックは、ボンディングワイヤ温度を上昇させるだけでなく、これらのクラックに沿う応力を上昇させ、それによってこの範囲における拡散速度を上昇させるため、高周波電流を注入する標的となる。この拡散によってクラックは修復し、その結果、パワーモジュールの寿命が延びる。
【0038】
高周波電流を注入しても半導体コンポーネントに無害である。なぜなら、高周波電流は、上面メタライゼーション部Me、ボンディングワイヤBd21及びBd22、並びに相互接続点Cn21及びCn22を通して短絡されており、温度は、通常は175℃である臨界Si温度未満に維持されるからである。
【0039】
追加のボンディングワイヤの数は、従来のパワーモジュールに既に存在するボンディングワイヤの数に少なくとも等しくあるべきであることに留意されたい。
【0040】
実装の一例として、ダイは6本のボンディングワイヤを備える。各ボンディングワイヤにおける電流密度を95A/mm〜143A/mmの間で維持するように、注入される高周波電流が82A〜108AのRMS値を有していれば、14mmのボンディングワイヤ接続体にわたって(周辺温度が35℃であると仮定して)ボンディングワイヤのピーク温度は150℃〜200℃になる。
【0041】
これほどの高温であれば、50時間〜100時間の期間、すなわち介入時間にわたって自己回復特質がボンディングワイヤの微細構造に大きく影響を及ぼすために必要な高拡散速度を誘導するためには十分である。自己回復効果の重要な要素は、物質の高拡散速度を生み出すための、クラックにおける熱応力の持続時間および温度である。
【0042】
ここで、自己回復特性を向上するのに、又はより高速の自己拡散速度をもたらすためには、他のアルミニウム合金、すなわちAl−Cuの使用を検討できることに留意しなければならない。
【0043】
高周波電流注入は、表皮効果に起因する、クラックの縁に沿うボンディングワイヤの抵抗を更に高めるために必要である。一例として、400umのアルミニウムボンディングワイヤに対して500kHzの電流を注入することができ、これは、同じ電流の大きさに対するボンディングワイヤにおいて115umの表皮深さ及び4倍の損失に相当する。この電流は、500kHzの矩形波信号又は正弦波信号によって構成することができる。
【0044】
図3aは、ボンディングワイヤにおけるクラックと、ボンディングワイヤにおけるパルス電流フローとの拡大図を表している。
【0045】
図3aで、矢印はボンディングワイヤBdを流れる高周波電流を表している。
【0046】
パワーモジュールパッケージにおいて、アルミニウム(99%Al合金)ボンディングワイヤは、通常、一番もろいコンポーネントであり、これらのワイヤのリフトオフが最もありふれた故障モードである。ボンディングワイヤが通常稼働中に熱疲労を受けるにつれて、クラックは、ボンディングワイヤとチップメタライゼーション表面の境界内で、外縁から中心に向かって形成される。高周波注入電流を印加するのは、ボンディングワイヤ界面におけるクラックがボンディングワイヤBdにおいて微視的レベル、すなわち1um〜10umである時点が好ましい。パワーモジュールが20年の稼働寿命に設計されている場合、すなわち、熱サイクルに起因する熱機械摩耗を想定することによって20年の稼働寿命に設計されている場合、保守間隔は、例えば、約5年とすることができる。
【0047】
高周波注入電流は、矢印によって示されるようにアルミニウムボンディングワイヤを通過する。クラックは高抵抗の局所点であるので、残りの注入回路部分と比較して、大量の熱がボンディングワイヤ内のクラックゾーンZnaに発生する。この局所的な熱が外方向の熱膨張を引き起こし、クラックの両側が高応力及び高温を受けて接着するようになり、それにより、クラック内で物質の拡散が起こるようになる。このような状況下でしばらく経つと、図3bに示すようにクラックが修復され、図3aにおけるクラックゾーンZnaは、図3bにおけるクラックゾーンZnbに変化する。
【0048】
図4は、少なくとも1つの追加接続体と、本発明を実施することができる少なくとも1つの組込み誘導コイルとを備えるパワーモジュールの側面図を表している。
【0049】
パワーモジュールは、ダイDiを外部のコンポーネントと接続する、例えば銅層のような、Vi1、Vi2及びVi3と表記されるビアの形態で相互接続体を備える。
【0050】
ダイDiは、ソルダー130を用いてダイレクト銅ボンディング(DCB)基板のうちの銅層140上に固定され、セラミック150は、コールドプレート上に固定された銅ベースプレート160上に固定されている。
【0051】
本発明によれば、パワーモジュールは、少なくとも1つの相互接続体に対して、組込み誘導コイルIn1及びIn2並びに追加相互接続体Extp41及びExtp42を更に備える。
【0052】
このように、組込み誘導コイル層In1及びIn2が、各Vi1、Vi2及びVi3に沿って加熱コイルを複製するように設置されているので、電流は、各銅ビア内で加熱を誘導するために相互接続体Extp41及びExtp42を通して注入される。通常、ビア長がビア幅より大きいので、これらの組込みコイルの設置が可能だが、当然ながら、ビアごとのターン数と積層の複雑度との間のトレードオフが存在する。
【0053】
図5は、少なくとも1つの追加接続体と、本発明を実施することができる少なくとも1つの組込み磁気構造体とを備えるパワーモジュールの側面図を表している。
【0054】
パワーモジュールは、ダイDiを外部のコンポーネントと接続する、例えば銅層のような、Vi51、Vi52及びVi53と表記されるビアの形態で相互接続体を備える。
【0055】
ダイDiは、ソルダー130を用いてダイレクト銅ボンディング(DCB)基板のうちの銅層140上に固定され、セラミック150は、コールドプレート上に固定された銅ベースプレート160上に固定されている。
【0056】
本発明によれば、パワーモジュールは、少なくとも1つの相互接続体に対して、組込み磁気構造体Mm1、Mm2、Mm3及びMm4を更に備える。ニッケル鉄フレーク等の物質を、PCB構造内に組み込むことができる。この構造は、変圧器と同じように銅ビアから相互接続表面及びメタライゼーション表面を流れるように電流を誘導するように、配置される。磁気構造体Mm1及びMm2は第1の変圧器を形成し、磁気構造体Mm3及びMm4は第2の変圧器を形成する。
【0057】
図6は、本発明によるコントローラのアーキテクチャの一例を表している。
【0058】
コントローラ10は、例えば、バス601によって合わせて接続されたコンポーネントに基づくアーキテクチャと、図7に開示するようなプログラムによって制御されるプロセッサ600とを有する。
【0059】
バス601は、プロセッサ600を、リードオンリーメモリROM602、ランダムアクセスメモリRAM603及び入出力インターフェースI/O IF605に連結する。
【0060】
メモリ603は、変数と、図7に開示するようなアルゴリズムに関するプログラムの命令とを受け取るように意図されたレジスタを含む。
【0061】
プロセッサ600は、入出力インターフェースI/O IF605を通じて、コレクタ電流Ic、温度センサによって感知された温度、又は熱感受性パラメータフィードバックを受信し、回復状態を誘導する特定のレベルにまでパワーモジュール内の電力散逸を制御するように追加相互接続体を通過する電流を制御する。パワーモジュールにおける修復材料の特性に応じて、温度は一定に保持される必要となる可能性がある。その場合、調整の目的で、パワーモジュール上に組み込まれる熱電対を採用することができ、又は、熱感受性電気パラメータ(例えば、或る特定の電流Icに対するVg)を採用することができる。
【0062】
リードオンリーメモリ又は場合によりフラッシュメモリ602は、図7に開示するようなアルゴリズムに関するプログラムの命令を収容し、その命令は、コントローラ10に電源が投入されると、ランダムアクセスメモリ603に転送される。
【0063】
コントローラ10は、PC(パーソナルコンピュータ)、DSP(デジタル信号プロセッサ)若しくはマイクロコントローラ等のプログラマブルコンピューティングマシンによって、命令若しくはプログラムのセットの実行により、ソフトウェアで実装するか、又は、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)若しくはASIC(特定用途向け集積回路)等、マシン若しくは専用コンポーネントにより、ハードウェアで実装することができる。
【0064】
言い換えれば、コントローラ10は、コントローラ10が図7に開示するようなアルゴリズムに関するプログラムを実行することができるようにする、回路、又は回路を備える装置を備える。
【0065】
図7は、本発明による回復プロセスを実現するためにはんだ層の加熱状態を制御するアルゴリズムを表している。
【0066】
本アルゴリズムは、コントローラ10のプロセッサ600によって実行される一例によって開示する。
【0067】
ステップS700において、修復プロセスが無効にされる。
【0068】
次のステップS701では、プロセッサ600は、高周波電流が接続体Cn21及びCn22、又はExtp41及びExtp42、又はExtp51及びExtp52を通過することを可能にするとともに、加熱状態制御ループを制御する。
【0069】
温度は、所与の時間、アルミニウム合金ボンディングワイヤに対して、例えば30分間150℃に調整される。
【0070】
ステップS702において、プロセッサ600は、所与の時間が完了したか否か判断する。所与の時間が完了した場合、プロセッサ600はステップS703に進む。完了していない場合、プロセッサ600はステップS701に戻る。
【0071】
ステップS703では、プロセッサ600は、修復プロセスを無効にする。
【0072】
当然のことながら、本発明の範囲から逸脱することなく、上記で説明した本発明の実施形態に対して多くの変更を行うことができる。
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7