(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6968266
(24)【登録日】2021年10月28日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】露出されたプレーナ型のコロナ放電電極を有する粒子センサ
(51)【国際特許分類】
G01N 15/06 20060101AFI20211108BHJP
G01N 27/60 20060101ALI20211108BHJP
【FI】
G01N15/06 D
G01N27/60 C
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-514684(P2020-514684)
(86)(22)【出願日】2018年8月21日
(65)【公表番号】特表2020-533590(P2020-533590A)
(43)【公表日】2020年11月19日
(86)【国際出願番号】EP2018072502
(87)【国際公開番号】WO2019052785
(87)【国際公開日】20190321
【審査請求日】2020年3月11日
(31)【優先権主張番号】102017216046.2
(32)【優先日】2017年9月12日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ズィーモン ゲンター
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ グランツ
(72)【発明者】
【氏名】エンノ バールス
(72)【発明者】
【氏名】ラドスラフ ルサノフ
(72)【発明者】
【氏名】アンディ ティーフェンバッハ
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリク シッテンヘルム
【審査官】
遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−170913(JP,A)
【文献】
特開2016−085094(JP,A)
【文献】
特開2016−225196(JP,A)
【文献】
特開2009−059478(JP,A)
【文献】
国際公開第98/024130(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00−15/14
G01N 27/00−27/10
G01N 27/14−27/24
G01N 27/62−27/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック支持要素(34)と、先鋭部(54)を有するコロナ放電電極(40)と、接地電極(42)と、少なくとも1つのイオントラップ電極(44)とを備える粒子センサ(12)であって、
前記電極(40,42,44)は、前記セラミック支持要素(34)の上にプレーナ状に付着状態で載置されており、これによってプレーナ型の電極を形成し、
前記セラミック支持要素(34)のうちのプレーナ型の前記コロナ放電電極(40)の前記先鋭部(54)が載置されている部分領域(62)であって、かつ、前記セラミック支持要素(34)の境界面によって画定されている部分領域(62)が、前記セラミック支持要素(34)の先鋭部として、前記セラミック支持要素の残余の部分から突出している、
ことを特徴とする粒子センサ(12)。
【請求項2】
前記セラミック支持要素(34)は、当該セラミック支持要素のうちの前記プレーナ型のコロナ放電電極(40)の前記先鋭部(54)が載置されている前記部分領域(62)において、前記プレーナ型のコロナ放電電極(40)が位置している平面(58)に対して平行に位置している断面(60)を有し、
前記断面(60)は、前記コロナ放電電極(40)の前記先鋭部(54)の形状を有する、
請求項1に記載の粒子センサ(12)。
【請求項3】
前記断面(60)は、前記プレーナ型のコロナ放電電極の法線の方向に、前記プレーナ型のコロナ放電電極からの距離が増加するにつれて小さくなっている、
請求項2に記載の粒子センサ(12)。
【請求項4】
前記セラミック支持要素(34)は、前記プレーナ型のコロナ放電電極(40)と前記接地電極(42)との間に配置されている凹部(56)を有し、
前記セラミック支持要素(34)のうちの前記プレーナ型のコロナ放電電極(40)の前記先鋭部(54)が載置されている前記部分領域(62)は、前記凹部(56)内に突出している、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の粒子センサ(12)。
【請求項5】
前記セラミック支持要素(34)のうちの前記プレーナ型のコロナ放電電極(40)が付着状態で載置されている部分と、前記セラミック支持要素(34)のうちの前記接地電極(42)が載置されている部分とが、一体的な前記セラミック支持要素(34)の構成部分である少なくとも1つのウェブ(59)を介して相互に接続されている、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の粒子センサ(12)。
【請求項6】
セラミック支持要素(34)と、先鋭部(54)を有するコロナ放電電極(40)と、接地電極(42)と、少なくとも1つのイオントラップ電極(44)とを備える粒子センサ(12)を製造するための方法であって、
セラミック支持要素(34)を、当該セラミック支持要素(34)の上にプレーナ状に付着状態で載置される電極(40,42,44,46)によって被覆し、
前記セラミック支持要素(34)のうちの前記コロナ放電電極(40)の前記先鋭部(54)が載置されている部分領域(62)であって、かつ、前記セラミック支持要素(34)の境界面によって画定されている部分領域(62)を露出させ、これによって、当該部分領域(62)が、先鋭部として、前記セラミック支持要素の残余の部分から突出するようにする、
ことを特徴とする方法。
【請求項7】
前記露出を、材料除去方法によって実施する、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記材料除去方法は、フライス加工である、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記セラミック支持要素(34)を射出成形プロセスによって製造する際に、前記露出を実施する、
請求項6に記載の方法。
【請求項10】
スクリーン印刷と、それに続く共焼結(Co焼結)とによって、前記セラミック支持要素(34)を、付着状態で載置される前記電極(40,42,44,46)によって被覆する、
請求項6乃至9のいずれか一項に記載の、粒子センサ(12)を製造するための方法。
【請求項11】
前記スクリーン印刷の後、前記コロナ放電電極(40)の材料をレーザビームによって蒸発させることにより、前記コロナ放電電極(40)の前記先鋭部(54)の曲率半径を低減させる、
請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来技術
本発明は、請求項1の上位概念に記載の粒子センサと、独立方法請求項の上位概念に記載の、粒子センサを製造するための方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
そのような粒子センサ及びそのような方法は、欧州特許出願公開第2824453号明細書(国際公開第2013/125181号)から公知である。公知の粒子センサは、積層体として実現されたセラミック支持要素と、先鋭部を有するコロナ放電電極と、接地電極と、少なくとも1つのイオントラップ電極とを有する。
【0003】
自動車のパティキュレートフィルタの状態に関して、オンボード診断の目的で粒子センサが使用されることが増えてきている。抵抗原理に従って動作する粒子センサは、市場において非常に大きな地位を占めている。このセンサの機能方式は、2つの櫛形電極の間に導電性の煤経路が形成されることと、電圧が印加されたときの電流の立ち上がり時間を、煤濃度に対する尺度として評価することとに基づいている。質量濃度(mg/m
3)が測定される。このセンサコンセプトの場合、数濃度の計算は、種々の理由から非常に困難であり又は不可能である。センサは、組み込まれた加熱要素によって少なくとも700℃に加熱されることによって周期的に再生され、それによって煤堆積物が焼却される。
【0004】
科学界では長年、健康阻害の観点から、粒子の総質量(mg/m
3単位)の方がより重要であるのか、又は、粒子の数(粒子/m
3)の方がより重要であるのか、という議論がなされてきた。特に、質量が非常に小さい(m〜r
3)ことに起因して全質量のうち非常にわずかな割合しか有していない非常に小さな煤粒子が、特に危険であり得ることに注意すべきである。なぜなら、煤粒子の粒径が小さいことに起因して、人体に深く浸透し得るからである。その検出性能及び価格から許容可能な粒子センサが市場で利用可能となり次第、法律の制定によって、数濃度を測定するために適した粒子センサの使用が定められるであろうと予測される。
【0005】
冒頭で挙げた欧州特許出願公開第2824453号明細書(国際公開第2013/125181号)から公知の高電圧粒子センサは、粒子濃度を検出するために電荷測定原理を使用している。この場合、(煤)粒子は、コロナ放電によって帯電される。コロナ放電は、差し当たり非導電性である媒体中における放電であり、この媒体において、媒体の構成成分のイオン化によって自由な電荷キャリアが生成される。粒子の帯電は、イオンの付着によって発生する。続いて、これらの粒子の電荷が測定され、又は、排気ガスの流れと共に荷電粒子が搬送されることによって高電圧粒子センサから漏洩する電流が測定される。公知の高電圧粒子センサにおいては、「漏洩電流(escaping current)」とも呼ばれるこの電流の測定が実施される。コロナ放電は、そこの「イオン発生区画(ion generation section)」において発生する。生成されたイオンは、ノズルを介して加圧空気と共に「電荷区画(electric charge section)」に注入され、この「電荷区画」には、さらなる入口を介して被測定ガスが供給される。公知のセンサにおいては、コロナ放電は、粒子の含有量が測定されるべき被測定ガスから、空間的に分離されたところで実施される。被測定ガスの入口開口部は、コロナ放電電極の後方(イオンの流れにおける下流)にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2824453号明細書(国際公開第2013/125181号)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の開示
本発明は、請求項1に記載の特徴的構成による装置の態様と、独立方法請求項に記載の特徴的構成による方法の態様とにおいて、上記の従来技術とは異なっている。本発明によれば、本粒子センサは、電極が、セラミック支持要素の上にプレーナ状に付着状態で載置されており、これによってプレーナ型の電極を形成し、セラミック支持要素のうちのプレーナ型のコロナ放電電極の先鋭部が載置されている部分領域であって、かつ、セラミック支持要素の境界面によって画定されている部分領域が、セラミック支持要素の先鋭部として、セラミック支持要素の残余の部分から突出していることを特徴とする。
【0008】
本方法は、セラミック支持要素を、当該セラミック支持要素の上にプレーナ状に付着する電極によって被覆し、セラミック支持要素のうちのコロナ放電電極の先鋭部が載置されている部分領域であって、かつ、セラミック支持要素の境界面によって画定されている部分領域を露出させ、これによって、当該部分領域が、セラミック支持要素の先鋭部として、セラミック支持要素の残余の部分から突出するようにすることを特徴とする。
【0009】
粒子センサの製造時に、セラミック支持要素のうちのコロナ放電電極の先鋭部が載置されている部分領域であって、かつ、セラミック支持要素の境界面によって画定されている部分領域を露出させ、これによって、当該部分領域が、セラミック支持要素の先鋭部として、セラミック支持要素の残余の部分から突出するようにすることにより、粒子センサの動作時にコロナ放電電極の先鋭部から発せられるコロナ放電は、セラミック支持要素の露出された領域にも伝播することが可能となると共に、コロナ放電電極の先鋭部から発せられるコロナ放電は、プレーナ型のコロナ放電電極の平面においてコロナ放電電極の先鋭部を越えて突出しているセラミックによって阻害されなくなる。
【0010】
粒子センサの1つの好ましい実施形態は、セラミック支持要素が、当該セラミック支持要素のうちのプレーナ型のコロナ放電電極の先鋭部が載置されている部分領域において、プレーナ型のコロナ放電電極が位置している平面に対して平行に位置している断面を有し、断面は、コロナ放電電極の先鋭部の形状を有することを特徴とする。
【0011】
形状が同様であって、かつ、好ましくはサイズも同等である結果として、コロナ放電電極の先鋭部の側縁部から発せられるコロナ放電も、プレーナ型のコロナ放電電極の平面においてコロナ放電電極の先鋭部の側縁部を越えて突出しているセラミックによって阻害されなくなる。先鋭部の曲率半径をさらに若干小さくし、それによって先鋭部をさらに若干先鋭に形成するために、先鋭部の狭幅の縁部がレーザ加工ステップによって蒸発されるという実施形態の場合にも、この有利な効果が奏される。
【0012】
全体として、これによってコロナ放電のさらなる安定化と、被測定ガスのイオン化の改善とがもたらされる。なぜなら、セラミック支持要素の先鋭な形状は、そのような先鋭部なしで実現された平坦なセラミック支持要素よりも、粒子センサを規定通りに使用した場合に生じる、被測定ガスによるコロナ放電ゾーンの通過を、阻害することが少ないからである。これにより、被測定ガスのイオン化の改善がもたらされ、その結果として、被測定ガスと共に搬送される粒子がより効果的に帯電することとなる。
【0013】
また、好ましくは、断面は、セラミックの方を向いているプレーナ型のコロナ放電電極の法線の方向に、プレーナ型のコロナ放電電極からの距離が増加するにつれて小さくなっている。いわば、コロナ放電電極の先鋭部の露出部を越えて突出している、コロナ放電電極の先鋭部のアンダーカットについて説明しているこの特徴により、コロナ放電電極の先鋭部から発せられるコロナ放電のための伝播自由度がさらに増加し、このことによって、上述した利点がさらに増大する。
【0014】
さらに好ましくは、支持要素は、プレーナ型のコロナ放電電極と接地電極との間に配置されている凹部を有し、部分領域は、凹部内に突出している。凹部は、止まり孔又は貫通孔であってもよい。この構成により、セラミック支持要素を、一体的な部品として実現することが可能となり、このことによって製造が簡単になり、使用時における粒子センサのロバスト性が改善される。このことは、粒子センサを自動車の排気システムにおいて使用する場合に、特に有利である。
【0015】
さらに好ましい実施形態は、支持要素のうちのプレーナ型のコロナ放電電極が付着状態で載置されている部分と、支持要素のうちの接地電極が載置されている部分とが、一体的なセラミック支持要素の構成部分である少なくとも1つのウェブ(Steg)を介して相互に接続されていることを特徴とする。孔を有する構成は、被測定ガスがこの孔を通って流れることも可能となるという利点があり、このことによって流れ抵抗が減少し、粒子の帯電が改善される。
【0016】
本方法に鑑みて、好ましくは、支持要素のうちのコロナ放電電極の先鋭部が載置されている部分領域の露出が、フライス加工のような材料除去方法によって実施される。フライス加工により、所期の形状を特に正確に製造することが可能となる。
【0017】
また、好ましくは、セラミック支持要素を射出成形プロセスによって製造する際に、支持要素のうちのコロナ放電電極の先鋭部が載置されている部分領域の露出が実施される。この実施形態は、製造が特に簡単になり、従って、時間が節約されるという利点を有する。
【0018】
1つの好ましい実施形態は、スクリーン印刷と、それに続く共焼結(Co焼結)とによって、セラミック支持要素を、付着状態で載置される電極によって被覆することを特徴とする。この特徴により、より少ない材料消費量で、かつ、セラミック支持要素とより頑強に接続された状態で、電極を製造すること、及び、電極とセラミック支持要素とを接続することが可能となる。
【0019】
また、好ましくは、スクリーン印刷の後、コロナ放電電極の材料をレーザビームによって蒸発させることにより、コロナ放電電極の先鋭部の曲率半径が低減される。この特徴により、コロナ放電電極の先鋭部に存在する電界強度が増加し、このことによって、コロナ放電の所期の生成が促進される。
【0020】
本発明は、一般に、被測定ガス(必ずしも排気ガスとは限らない)中の粒子濃度(必ずしも煤粒子とは限らない)を測定するために使用可能であり、例えば、粉塵濃度を検出するために使用可能である。本出願において排気ガス及び煤粒子が話題となっている場合には、それぞれ例えば、より一般的な用語である粒子及び被測定ガスに関する一例として理解されるべきである。本発明の実施例が図面に示されており、以下の記載においてより詳細に説明される。ここで、複数の異なる図面における同一の参照符号は、それぞれ同等の要素を示し、又は、少なくとも機能に関して比較し得る要素を示す。個々の図面の説明に際して、場合によっては、他の図面の要素が参照されることもある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】粒子センサと、ケーブルハーネスと、制御装置とを有する粒子センサユニットと、排気管との形態の、本発明の技術的環境を示す図である。
【
図2】複数の異なる電極を支持する、粒子センサのセラミック支持要素の断面図である。
【
図3】本発明に係る粒子センサの1つの実施例の電極支持用セラミック支持要素の平面図である。
【
図4】
図3の実施例の第1の実施形態の断面図である。
【
図5】セラミック支持要素の凹部が貫通孔である、代替的な実施形態を示す図である。
【
図6】セラミック支持要素の部分同士がウェブによって相互に接続されている、さらなる代替的な実施形態を示す図である。
【
図7】本発明に係る粒子センサの電極支持用セラミック支持要素のさらなる実施例を示す図である。
【
図8】本発明に係る製造方法の1つの実施例のフローチャートである。
【
図9】レーザ加工ステップの前及び後の、プレーナ型のコロナ放電電極の先鋭部の平面図である。
【
図10】セラミック支持要素の裏側に配置された加熱要素を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、粒子センサ12を有する粒子センサユニット10を詳細に示し、粒子センサ12は、ケーブルハーネス14を介して粒子センサユニット10の制御装置16に接続されている。
【0023】
粒子センサ12は、被測定ガス20として排気ガスを案内する排気管18内に突出しており、被測定ガス20の流れに向かって突出している内側金属管22及び外側金属管24の管アセンブリを有する。このような管アセンブリは、本発明の好ましい実施例において使用されるものであるが、本発明の本質的な要素ではない。
【0024】
2つの金属管22,24は、好ましくは一般的な円筒形状又は角柱形状を有する。円筒形状の底面は、好ましくは円形、楕円形又は多角形である。複数の円筒体が、好ましくは同軸上に配置されており、これらの円筒体の軸線は、管アセンブリの外側に設けられた排気管18内に存在する被測定ガス20の流れ方向を横断する方向に配置されている。管アセンブリのうちの、排気管18の取付開口部とは反対側にある第1の端部26においては、内側金属管22が外側金属管24を越えて、被測定ガス20の流れに向かって突出している。2つの金属管22,24のうちの、排気管18の取付開口部の方を向いた第2の端部28においては、外側金属管24が内側金属管22を越えて突出している。外側金属管24の内法幅は、2つの金属管22,24の間に第1の流れ断面又は隙間5が形成されるように、好ましくは内側金属管22の外径よりも格段に大きくなっている。内側金属管22の内法幅Wは、第2の流れ断面を形成している。
【0025】
上記の幾何学形状の結果として、被測定ガス20は、第1の端部26において第1の流れ断面を介して管アセンブリに流入し、次いで、管アセンブリの第2の端部28で方向を転換して内側金属管22に流入し、通流している被測定ガス20によって内側金属管22から吸い出される。この際、内側金属管22内において層流が形成される。管22,24からなるこの管アセンブリは、本発明に係る粒子センサの1つの好ましい実施例によれば、排気管18に接して、排気管18内に存在する被測定ガス20の流れ方向を横断する方向に、かつ、被測定ガス20の流れに向かって側方から突出するように固定され、この場合、金属管22,24の内部は、好ましくは排気管18の周囲に対して密閉されている。この固定は、好ましくは、ねじ留め結合によって実施される。
【0026】
1つの実施例においては、固定部は、外部への開口部30を有することもでき、必要に応じて新鮮な空気32を、この開口部30を通して外部から管アセンブリに注入するようにしてもよい。
【0027】
内側金属管22内には、セラミック支持要素34が配置されており、このセラミック支持要素34は、当該セラミック支持要素34に付着している複数の電極を有する電極アセンブリ36を支持している。電極アセンブリ36の電極は、通流している被測定ガス20に曝されており、ケーブルハーネス14を介して粒子センサユニット10の制御装置16に接続されている。制御装置16は、粒子センサ12を動作させ、電極アセンブリ36の電極で発生する電流及び電圧のような電気パラメータから、排気ガス中の粒子濃度を表す出力信号を生成するように構成されている。この出力信号は、制御装置16の出力部38において提供される。出力信号の生成は、例えば、冒頭で挙げた欧州特許出願公開第2824453号明細書に記載されている原理に従って実施される。
【0028】
図2は、複数の異なる電極を支持する、粒子センサのセラミック支持要素34の断面を示し、コロナ放電によって動作するプレーナ型の粒子センサの動作原理を説明するために使用される。
【0029】
電気絶縁性のセラミック支持要素34には、コロナ放電電極40と、接地電極42と、イオントラップ電極44とが配置されている。図示の実施例においては、セラミック支持要素34は、粒子電荷検出用電極として機能する測定電極46をさらに追加的に支持しているが、この測定電極46は、必ずしも必要というわけではない。1つの実施形態においては、セラミック支持要素34の裏側48に加熱要素50が、この裏側48に付着状態で載置されている加熱電極の形態で配置されている。
【0030】
セラミック支持要素34の長手方向は、
図1の内側金属管22内を流れる被測定ガス20の方向に対して平行に配置されている。コロナ放電電極40と、接地電極42と、イオントラップ電極44と、場合によっては測定電極46とをこのように配置することによって、被測定ガス20は、矢印の方向によって指示された流れ方向で流れることとなる。コロナ放電は、コロナ放電電極40と接地電極42との間のコロナ放電ゾーン52において発生する。コロナ放電ゾーン52を、粒子が含有された被測定ガス20が通過する。コロナ放電ゾーン52において、そこに存在している被測定ガス20の一部がイオン化される。続いて粒子は、イオンと、ひいては電荷とを吸収する。
【0031】
コロナ放電電極40と接地電極42との間でコロナ放電を発生させるために必要な電圧は、制御装置16に組み込まれた高電圧源によって生成される。
【0032】
イオントラップ電極44は、被測定ガス20と共に搬送される比較的重くて不活性である粒子に付着していないイオンをトラップする。
図2には図示されていない内側金属管22は、イオントラップ電極44に対する対向電極として機能することができる。煤粒子と共に搬送される電荷の測定は、粒子電荷検出用電極として機能する測定電極46における電荷の影響を用いて実施され、又は、欧州特許出願公開第2824453号明細書に記載されている「漏洩電流(escaping current)」原理を用いて実施される。
【0033】
図3は、本発明に係る粒子センサの実施例の電極支持用セラミック支持要素34の平面図を示す。セラミック支持要素34には、先鋭部54を有するコロナ放電電極40と、接地電極42と、イオントラップ電極44と、場合によっては測定電極46とが、それぞれプレーナ状に付着状態で載置されており、プレーナ型の電極を形成している。
【0034】
セラミック支持要素34のうちのプレーナ型のコロナ放電電極40の先鋭部54が載置されている部分領域であって、かつ、セラミック支持要素の境界面によって画定されている部分領域が、セラミック支持要素34の先鋭部として、セラミック支持要素の残余の部分から突出している。
図3においてはコロナ放電電極40の先鋭部54によって覆われているこの部分領域は、先鋭部54と共にセラミック支持要素34の凹部56内に突出しており、なお、この凹部56は、セラミック支持要素34のセラミック材料によって充填されていない。
【0035】
図4は、
図3の実施例の第1の実施形態の断面を示す。セラミック支持要素34は、プレーナ型のコロナ放電電極40が位置している平面58を有する。平面58に対して平行な、セラミック支持要素34の仮想断面60は、セラミック支持要素34のうちのプレーナ型のコロナ放電電極40の先鋭部54が載置されている部分領域62であって、かつ、セラミック支持要素34の先鋭部を形成している部分領域62において、プレーナ型のコロナ放電電極40の先鋭部54の縁部を越えては突出しない。すなわち、プレーナ型のコロナ放電電極40の先鋭部54は、セラミック支持要素34の先鋭部を形成している部分領域62の上に載置されている。
【0036】
図示の実施形態においては、プレーナ型のコロナ放電電極40の先鋭部54と、プレーナ型のコロナ放電電極40の先鋭部54の側縁部とは、セラミック支持要素34の先鋭部を形成している部分領域62の材料を越えては突出しない。すなわち、凹部56内において、プレーナ型のコロナ放電電極40の先鋭部54は、セラミック支持要素34の材料から露出された状態で、セラミック支持要素34の先鋭部を形成している部分領域62の上に位置している。
【0037】
電極がプレーナ状に載置されるセラミック支持要素34は、好ましくは、単一片から形成されており、又は、共に焼結される複数のセラミック箔(箔積層体)から形成されている。セラミック支持要素34の先鋭部を形成する部分領域62を、このセラミック支持要素34の内部で実現可能とするために、セラミック支持要素34は、プレーナ型のコロナ放電電極40と接地電極42との間に配置される凹部56を有し、セラミック支持要素34のうちのプレーナ型のコロナ放電電極40の先鋭部54が載置される部分領域62が、側面からこの凹部56内へと突出している。凹部56は、
図4に示されるように貫通していない止まり孔であってもよい。
【0038】
図5は、凹部56が貫通孔である、代替的な実施形態を示す。
【0039】
図6は、さらなる代替的な実施形態を示し、この実施形態においては、セラミック支持要素34のうちのプレーナ型のコロナ放電電極40が付着状態で載置されている部分と、セラミック支持要素のうちの接地電極42が載置されている部分とが、一体的なセラミック支持要素34の構成部分である少なくとも1つのウェブ59を介して相互に接続されている。これらの選択肢(止まり孔、貫通孔、ウェブ)は、
図7の実施例にも適用される。
【0040】
図7は、本発明に係る粒子センサの電極支持用セラミック支持要素34のさらなる実施例を示す。ここでも、セラミック支持要素は、プレーナ型のコロナ放電電極40が位置している平面58を有する。平面58に対して平行な、セラミック支持要素34の仮想断面60は、
図7においては下方を向いているプレーナ型のコロナ放電電極40の法線の方向に、プレーナ型のコロナ放電電極40からの距離が増加するにつれて、小さくなっている。
【0041】
すなわち、凹部56内において、プレーナ型のコロナ放電電極40の先鋭部54及び側縁部は、セラミック支持要素34の材料から露出された状態で、セラミック支持要素34のうちのコロナ放電電極40の先鋭部54が載置されている部分であって、かつ、セラミック支持要素34の先鋭部を形成している部分の上に載置されており、この際、セラミック支持要素34のうちのコロナ放電電極40の先鋭部54が載置されている部分であって、かつ、セラミック支持要素34の先鋭部を形成している部分は、コロナ放電電極の先鋭部からの距離が増加するにつれて小さくなっており、従って、まるでコロナ放電電極の先鋭部がアンダーカットされたかのようになっている。接地電極42も、このようなアンダーカットを有することができる。このことは、
図7に破線で示されており、この破線は、この実施形態においては、セラミック支持要素34のうちの凹部56を画定している境界面64の位置を表している。
【0042】
図8は、本発明に係る製造方法の1つの実施例のフローチャートを示す。第1のステップ66において、セラミック支持要素34が、セラミック射出成形部品又はセラミック箔部品として製造される。この場合、露出された又はアンダーカットされた先鋭部を有するセラミック支持要素34の形状は、射出成形工具のキャビティの形状によるだけで製造され、又は、未加工物を注いだ後に若しくはセラミック箔を積層した後に、フライス加工のような第2の材料除去ステップ68によって生成される。
【0043】
第3のステップ70において、セラミック支持要素の表面が、スクリーン印刷方法によって電極40,42,44と、場合によっては46とによって被覆される。1つの好ましい実施形態においては、セラミック支持要素34の裏側48に、加熱要素50が追加的に被着される。裏側48は、セラミック支持要素34の、特にコロナ放電電極40が配置されている側とは反対側に位置している。
【0044】
(電極のスクリーン印刷を含む)セラミック射出成形部品の完成に引き続いて、第4のステップ72として、セラミック材料及び電極ペーストの硬化をもたらす熱処理ステップが実施される。
【0045】
このステップシーケンスは、1つの実施形態においては、第5のステップ74としてのレーザ加工ステップによって補完され、
図9を参照しながら以下に説明する。
図9は、プレーナ型のコロナ放電電極の先鋭部54の平面図を示す。外縁部76は、スクリーン印刷ステップの結果に対応する。先鋭部の曲率半径を小さくし、それによって先鋭部をさらに先鋭に形成するために、電極の外縁部をレーザによって蒸発させることができる。その結果、レーザ加工ステップよりも前の状態に比較してより先鋭なコロナ放電電極が残留し、このコロナ放電電極は、内縁部78によって画定される。
【0046】
図10は、セラミック支持要素に付着状態で載置されている加熱要素50を有する、セラミック支持要素の裏側の平面図を示す。加熱素子50は、好ましくはメアンダ形状の加熱電極を有し、加熱電極も、例えばスクリーン印刷方法によって被着されており、2つの端子パッド80を有し、これら2つの端子パッド80を介して加熱電極に、動作中、制御装置によって電気エネルギが供給される。すべての電極は、好ましくはプラチナ層のスクリーン印刷によって生成される。例えば、電極間の短絡をもたらす可能性のある煤粒子の堆積を低減するために、及び/又は、既に堆積した煤粒子を燃焼するために、加熱素子50を使用して、セラミック支持要素の温度と、付着状態で載置されている電極の温度とを上昇させることができる。