(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6968275
(24)【登録日】2021年10月28日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】気体状の媒体を制御するための調量弁
(51)【国際特許分類】
F16K 1/42 20060101AFI20211108BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20211108BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20211108BHJP
【FI】
F16K1/42 G
F16K31/06 305M
H01M8/04 N
【請求項の数】10
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2020-524096(P2020-524096)
(86)(22)【出願日】2018年9月12日
(65)【公表番号】特表2021-501292(P2021-501292A)
(43)【公表日】2021年1月14日
(86)【国際出願番号】EP2018074545
(87)【国際公開番号】WO2019096461
(87)【国際公開日】20190523
【審査請求日】2020年4月28日
(31)【優先権主張番号】102017220383.8
(32)【優先日】2017年11月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】マゲル,ハンス−クリストフ
【審査官】
西井 香織
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−102874(JP,A)
【文献】
特開2013−194918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/42
F16K 31/06
H01M 8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブハウジング(12)を有する、気体状の媒体を制御するための調量弁(100)であって、流入領域(7)から通過開口部(21)への開口部断面を開放および閉止するために弁座(4)と協同作用する長手方向に可動の平坦な閉止部材(2)が前記バルブハウジング(12)の中に配置され、前記弁座(4)は、前記バルブハウジング(12)に収容されてこれと固定的に結合されたノズル(1)の、前記閉止部材(2)のほうを向いている着座面(1a)にある周回するシールエッジ(20)として構成される、そのような調量弁において、前記ノズル(1)の前記着座面(1a)はテーパ状に構成され、前記閉止部材(2)は前記調量弁(100)が閉じた位置にあるときに前記周回するシールエッジ(20)に接して径方向の突出部(19)を有し、前記径方向の突出部(19)は前記閉止部材(2)の最大の傾斜位置を前記着座面(1a)の上で制限し、テーパ状の前記着座面(1a)の開口角βは172°から178°の間の値範囲にあり、
前記閉止部材(2)は電磁石(130)によって、および前記閉止部材(2)と作用接続された磁気アーマチュア(6)によって長手方向に可動であり、
前記調量弁(100)は、前記磁気アーマチュア(6)と結合されたピン状の部材(5)を介して前記閉止部材(2)を前記シールエッジ(20)側へ押圧する閉止ばね(15)と、前記閉止ばね(15)を収容するばね空間(8)と、前記磁気アーマチュア(6)を収容するアーマチュア空間(9)とを備え、
前記ばね空間(8)と前記アーマチュア空間(9)とは、第1の接続通路(24)により連通され、
前記アーマチュア空間(9)と前記流入領域(7)とは、第2の接続通路(25)により連通され、
前記第1の接続通路(24)及び前記第2の接続通路(25)は長手方向に形成されることを特徴とする調量弁。
【請求項2】
前記径方向の突出部(19)は前記周回するシールエッジ(20)の中央から前記閉止部材(2)の外側の周回エッジ(17)まで延び、0.2mmから2mmの幅Xを有することを特徴とする、請求項1に記載の調量弁(100)。
【請求項3】
前記径方向の突出部(19)は前記周回するシールエッジ(20)の中央から前記閉止部材(2)の外側の周回エッジ(17)まで延び、0.5mmから1mmの幅Xを有することを特徴とする、請求項1に記載の調量弁(100)。
【請求項4】
前記ノズル(1)の前記周回するシールエッジ(20)は0.04mmから0.2mmの間の高さRを有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の調量弁(100)。
【請求項5】
前記ノズル(1)の前記周回するシールエッジ(20)は0.1mmの高さRを有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の調量弁(100)。
【請求項6】
前記弁座(4)と前記閉止部材(2)の間に前記弁座(4)で封止をする弾性的なシール部材(3)が配置されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の調量弁(100)。
【請求項7】
前記調量弁(100)の長軸(18)に対して径方向に流入通路(31)が前記バルブハウジング(12)に構成され、該流入通路によって前記調量弁(100)の前記流入領域(7)を気体状の媒体で充填可能であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の調量弁(100)。
【請求項8】
前記調量弁(100)が比例弁として構成されることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の調量弁(100)。
【請求項9】
前記気体状の媒体は水素であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の調量弁(100)
【請求項10】
燃料電池への水素供給を制御するために請求項1から9までのいずれか1項に記載の調量弁(100)を有している燃料電池構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば燃料電池駆動装置を有する車両で適用するための、気体状の媒体を、特に水素を制御するための調量弁に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、気体状の媒体を、特に水素を制御するための比例弁として構成された調量弁を記載しており、この比例弁は、ノズル本体と、閉止部材と、弾性的なシール部材とを含んでいる。ノズル本体には、閉止部材によって弁座で解放または閉止することができる少なくとも1つの通過開口部が構成されている。弾性的なシール部材は弁座で封止をする。
【0003】
特に燃料電池システムのアノード領域の比例弁として適用するときの比例弁の通常の動作では、頻繁な開放プロセスと閉止プロセスが生じる。燃料電池のアノード経路での洗浄プロセスを最適化するために、または燃料電池構造での吸引ジェットポンプの最善の動作のために、追加の切換プロセスも望まれる場合があり得る。しかし比例弁の頻繁な開放と閉止は弁座での摩耗や、弁座に対する閉止部材の傾動をもたらす。閉止部材と弁座の間で角度許容差が発生し得るからである。このことは、ひいては比例弁全体の密閉性に対してマイナスの影響を及ぼす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102012204565号明細書
【発明の概要】
【0005】
それに対して、気体状の媒体を、特に水素を制御するための本発明による調量弁は、調量弁の頻繁な開放プロセスと閉止プロセスにもかかわらず、弁座での密閉性が保証されるという利点を有する。
【0006】
そのために、気体状の媒体を、特に水素を制御するための調量弁は、流入領域から通過開口部への開口部断面を開放および閉止するために弁座と協同作用する長手方向に可動の平坦な閉止部材が中に配置されたバルブハウジングを有する。弁座は、バルブハウジングに収容されてこれと固定的に結合されたノズルの、閉止部材のほうを向いている着座面にある周回するシールエッジとして構成される。これに加えてノズルの着座面はテーパ状に構成されており、閉止部材は調量弁が閉じた位置にあるときに周回するシールエッジに接して径方向の突出部を有する。径方向の突出部は、閉止部材が最大に形成された傾斜姿勢にあるときノズルの着座面の上で閉止部材の最大の傾斜位置を制限し、テーパ状の着座面の開口角βは172°から178°の間の値範囲にある。
【0007】
本発明に基づく調量弁により、下降していく着座面によって、弁座と閉止部材の間の角度誤差にもかかわらず均等な力分布が閉止部材で生成され、このことは、ひいてはいっそう高い密閉性につながる。
【0008】
第1の好ましい発展例では、径方向の突出部は周回するシールエッジの中央から閉止部材の外側の周回エッジまで延び、0.2mmから2mmの、好ましくは0.5mmから1mmの幅Xを有することが意図される。ノズルの周回するシールエッジは0.04mmから0.2mmの間の、好ましくは0.1mmの高さRを有するのが好ましい。このようにしてシールエッジが、弁座と閉止部材の間に配置された弾性的なシール部材の中へ低い力で入り込むことができるという利点があり、それにより、閉止部材と、ノズルの着座面への径方向の突出部の載置面とに追加的な傾き位置が生じたときに、弁座での高い密閉性およびそれによる調量弁の最善の機能形態が保証される。
【0009】
本発明の別の実施形態では、閉止部材が電磁石によって、および閉止部材と作用接続された磁気アーマチュアによって長手方向に可動であることが意図されるのが好ましい。このようにして、気体状の媒体を調量弁によって制御可能である。
【0010】
好ましい発展例では、調量弁の長軸に対して径方向に流入通路がバルブハウジングに構成され、該流入通路によって調量弁の流入領域を気体状の媒体で充填可能であることが意図される。
【0011】
記載されている調量弁は比例弁として構成されるのが好ましく、特に燃料電池構造で燃料電池のアノード領域への水素供給を制御するのに適している。その利点は、アノード経路での少ない圧力変動と静粛な動作である。
【0012】
図面には、燃料電池への特に水素のガス供給を制御するための本発明による調量弁の実施例が示されている。図面は次のものを示す。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明による調量弁の実施例を示す縦断面図である。
【
図2】
図1の本発明による調量弁を弁座の領域で縦断面図として示す拡大部分図である。
【
図3】
図1の本発明による調量弁を、弁座で閉止部材が傾いたときに弁座の領域で縦断面図として示す拡大部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
機能が同じコンポーネントは同一の符号で表されている。
【0015】
図1は、本発明による調量弁100の実施例を縦断面図で示している。この調量弁100は、内部空間26が中に構成されたバルブハウジング12を有している。内部空間26の中に、磁気コイル13と内極10と外極11とを含む電磁石130が配置されている。内極10は、非磁性材料からなるスペーサブッシュ部材14を介してバルブハウジング12と結合されている。
【0016】
さらに、内部空間12で取り囲まれるアーマチュア空間9の中に、ピン状の部材5を有するストローク運動可能な磁気アーマチュア6が配置されており、ピン状の部材5は磁気アーマチュア6と固定的に結合されるとともに、内極10の切欠き27にもバルブハウジング12の切欠き28にも収容、案内されている。磁気アーマチュア6はプランジャ型アーマチュアとして構成され、ストローク運動をするときに内極10の切欠き22に収容される。
【0017】
バルブハウジング12と内極10がばね空間8を区切っており、該ばね空間の中に、磁気アーマチュア6のピン状の部材5の皿状の端部16が突入している。ピン状の部材5の皿状の端部16に閉止ばね15が支持されていて、該閉止ばねにより磁気アーマチュア6がピン状の部材5とともに初期応力をかけられる。閉止ばね15と反対を向くほうのピン状の部材5の端部は、平坦な閉止部材2と固定的に結合されている。閉止部材2はピン状の端部5と反対を向くほうの端部に弾性的なシール部材3を有しており、調量弁100の流入領域7に配置されている。ばね空間8とアーマチュア空間9は第1の接続通路24を介して、およびアーマチュア空間9と流入領域7は第2の接続通路25を介して、それぞれ互いに流体接続されている。
【0018】
調量弁100の長軸18に対して径方向に流入通路31が構成されていて、該流入通路によって調量弁100の流入領域7を気体状の媒体で充填可能である。流入領域7はバルブハウジング12のほかにノズル1によっても区切られており、該ノズルに通過開口部21が構成されている。弾性的なシール部材3のほうを向く、調量弁100の長軸18に対して径方向にテーパ状であるノズル1の着座面1aに周回するシールエッジ20が構成されていて、これに弁座4が構成されている。周回するシールエッジ20は、軸方向に0.04mmから0.2mmの間の、好ましくは0.1mmの高さRを有している。調量弁100が閉じた位置にあるとき、弾性的なシール材3が閉止ばね15の力付勢によって弁座4に当接し、それにより流入領域7と通過開口部21の間の接続が閉じられる。
【0020】
調量弁100はここでは比例弁として構成されている。磁気コイル13が通電されていないとき、閉止ばね15を通じて閉止部材2が弁座4に押圧され、それにより、流入領域7と通過開口部21の間の接続が遮断されて、ガス貫流が行われない。
【0021】
磁気コイル13が通電されると、閉止ばね15の閉止力と反対方向を向く磁力が磁気アーマチュア6に対して生成される。この磁力がピン状の部材5を介して閉止部材2に伝達され、それにより閉止ばね15の閉止力が過剰補償されて、閉止部材2が弁座4から持ち上げられる。流入領域7から通過開口部21の方向へのガス貫流がリリースされる。
【0022】
閉止部材2のストロークは、磁気コイル13での電流強さの高さを通じて調整することができる。磁気コイル13での電流強さが高くなるほど、閉止部材2のストロークが大きくなるとともに、調量弁100でのガス貫流も多くなる。閉止ばね15の力はストローク依存的だからである。磁気コイル13での電流強さが低下すると閉止部材2のストロークも減少し、そのようにしてガス貫流が絞られる。
【0023】
磁気コイル13での電流が遮断されると磁気アーマチュア6に対する磁力が低下し、それにより、ピン状の部材5による閉止部材2に対する力が低下する。閉止部材2が通過開口部21の方向に動いて、弾性的なシール部材3をもって弁座4で封止をする。調量弁100でのガス貫流が遮断される。
【0024】
図2は、
図1の本発明による調量弁の弁座4の領域の拡大部分図を縦断面で示している。調量弁100が閉じた位置にあるとき、弾性的なシール部材3が弁座4の上に当接して、周回するシールエッジ20が弾性的なシール部材3の中に入り込む。ノズル1のテーパ状の着座面1aにより、閉止部材2は弾性的なシール部材3をもって、周回するシールエッジ20の中央から閉止部材10の外側の周回エッジ17まで延びる、0.2mmから2mmの、好ましくは0.5mmから1mmの幅Xを有する径方向の突出部10を有している。
【0025】
弁座4と弾性的なシール部材3との間の角度許容差は、弾性的なシール部材3を含めた閉止部材2全体の傾きにつながる。このことが
図3に示されている。ここで最大に形成された閉止部材10の傾斜姿勢が示されている。そのときに径方向の突出部19が、閉止部材2の最大の傾斜位置をノズル1の着座面1aの上で制限する。テーパ状の着座面1aの開口角βは、172°から178°の間の値範囲にある。最大に形成された閉止部材2の傾斜姿勢のとき、径方向の突出部19は着座面1aとの接触線30をもって180°−βに相当する角度αを形成する。この角度αは2°から8°の間の値範囲にある。このようにして閉止部材2の傾動にもかかわらず、最大に形成された閉止部材2の傾斜姿勢のときであっても、弁座4での密閉性を実現することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 ノズル
1a 着座面
2 閉止部材
3 弾性的なシール部材
4 弁座
6 磁気アーマチュア
7 流入領域
12 バルブハウジング
18 長軸
19 径方向の突出部
20 シールエッジ
21 通過開口部
31 流入通路
100 調量弁
130 電磁石