(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
移動体に配置されて物体が存在するかどうかを検出するセンサから検出結果であるセンサ情報を順次取得し、前記センサによって前記物体を検出することができない領域を示す死角領域を前記センサ情報に基づいて計算し、前記死角領域に進入する前記物体を、前記センサ情報に基づいて検出する死角計算部と、
検出された前記物体の前記死角領域における進路を、前記センサ情報に基づいて予測する予測部と
を有し、
前記予測部は、
前記移動体の移動進路の形状を決定可能な情報を示す形状決定情報を取得し、前記形状決定情報を用いて、検出された前記物体の前記死角領域における進路を予測する進路予測装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には、同一符号を付している。実施の形態の説明において、同一または相当する部分については、説明を適宜省略または簡略化する。
【0011】
実施の形態1.
***構成の説明***
図1から
図16を参照して、実施の形態1の進路予測装置1を説明する。
図1は、車載システム8を示す。車載システム8が搭載される車両を搭載車両71と表記する。
車載システム8は、進路予測装置1、移動予測装置2、表示装置3、複数のセンサ4、および車両管理装置5を備える。これらは車載ネットワーク7で接続される。
(1)進路予測装置1は、死角領域に入ってセンシング結果が得られない障害物の情報を補間する。
(2)移動予測装置2は、センシング結果および進路予測装置1による補間により、障害物の移動を予測する。障害物は例えば他の車両である。他の車両を車両72、車両73と表記する。
(3)表示装置3は、ディスプレイなどによって搭載車両71の搭乗者に情報を伝達する。
(4)センサ4は、ミリ波レーダー、ライダーおよびカメラといった、搭載車両71の車外の物体を検出するためのセンサである。以下ではセンサ4をセンサ4a,センサ4bのように区別する場合がある。区別の必要がないときはセンサ4と表記する。
(5)車両管理装置5は、搭載車両71のハンドル角、アクセル量、速度、位置のような搭載車両71の車両情報を収集し、管理する。
(6)車載ネットワーク7は、CAN(Controller Area Network)または車載Ethernet(登録商標)のようなネットワークである。
【0012】
図2は、進路予測装置1のハードウェア構成を示す。進路予測装置1はコンピュータである。進路予測装置1は、プロセッサ10を備えるとともに、メモリ20、補助記憶装置30、入力インタフェース40および出力インタフェース50といった他のハードウェアを備える。プロセッサ10は、信号線60を介して他のハードウェアと接続され、これら他のハードウェアを制御する。
入力インタフェース40は、センサ4からの情報を取得する。プロセッサ10は演算処理を行い、障害物の進路の補間を行う。補間された障害物の進路は、出力インタフェース50から、移動予測装置2および表示装置3に送信される。
【0013】
進路予測装置1は、機能要素として死角計算部11と予測部12を備える。死角計算部11と予測部12との機能は、ソフトウェアである進路予測プログラムにより実現される。
【0014】
プロセッサ10は、進路予測プログラムを実行する装置である。進路予測プログラムは、死角計算部11と予測部12との機能を実現するプログラムである。プロセッサ10は、死角計算部11と予測部12との処理を行うIC(Integrated Circuit)である。プロセッサ10の具体例は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)である。
【0015】
メモリ20は、データを一時的に記憶する記憶装置である。メモリ20の具体例は、SRAM(STatic Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)である。メモリ20は、プロセッサ10の演算結果を保持する。
【0016】
補助記憶装置30は、データを保管する記憶装置である。補助記憶装置30の具体例は、HDD(Hard Disk Drive)である。また、補助記憶装置30は、SD(登録商標)(Secure Digital)メモリカード、CF(CompactFlash)、NANDフラッシュ、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ブルーレイ(登録商標)ディスク、DVD(Digital Versatile Disk)といった可搬記録媒体であってもよい。
【0017】
入力インタフェース40は、センサ4および車両管理装置5のような装置から、情報を取得する。出力インタフェース50は、移動予測装置2および表示装置3のような装置へ情報を出力する。
【0018】
進路予測プログラムは、メモリ20からプロセッサ10に読み込まれ、プロセッサ10によって実行される。メモリ20には、進路予測プログラムだけでなく、OS(Operating SySTem)も記憶されている。プロセッサ10は、OSを実行しながら、進路予測プログラムを実行する。進路予測プログラムおよびOSは、補助記憶装置30に記憶されていてもよい。補助記憶装置30に記憶されている進路予測プログラムおよびOSは、メモリ20にロードされ、プロセッサ10によって実行される。なお、進路予測プログラムの一部または全部がOSに組み込まれていてもよい。
【0019】
進路予測装置1は、プロセッサ10を代替する複数のプロセッサを備えていてもよい。これら複数のプロセッサは、進路予測プログラムの実行を分担する。それぞれのプロセッサは、プロセッサ10と同じように、進路予測プログラムを実行する装置である。
【0020】
進路予測プログラムにより利用、処理または出力されるデータ、情報、信号値および変数値は、メモリ20、補助記憶装置30、または、プロセッサ10内のレジスタあるいはキャッシュメモリに記憶される。
【0021】
進路予測プログラムは、死角計算部11と予測部12の各部の「部」を「処理」、「手順」あるいは「工程」に読み替えた各処理、各手順あるいは各工程をコンピュータに実行させるプログラムである。また、進路予測方法は、コンピュータである進路予測装置1が進路予測プログラムを実行することにより行われる方法である。
【0022】
進路予測プログラムは、コンピュータ読取可能な記録媒体に格納されて提供されてもよいし、プログラムプロダクトとして提供されてもよい。
【0023】
図3は、車両管理装置5のハードウェア構成を示す。車両管理装置5は進路予測装置1と同様のコンピュータである。車両管理装置5は、プロセッサ10aを備えるとともに、メモリ20a、補助記憶装置30a、入力インタフェース40aおよび出力インタフェース50aといった他のハードウェアを備える。プロセッサ10aは、信号線60aを介して他のハードウェアと接続され、これら他のハードウェアを制御する。車両管理装置5は制御部5aによって制御される。制御部5aの機能はプログラムによって実現される。このプログラムは補助記憶装置30aに格納されている。プロセッサ10aはこのプログラムをメモリ20aにロードして実行する。
【0024】
***動作の説明***
図4から
図16を参照して進路予測装置1の動作を説明する。進路予測装置1の動作は、進路予測方法に相当する。また、進路予測装置1の動作は、進路予測プログラムの処理に相当する。
図4は、進路予測装置1による進路の補間を示している。進路予測装置1は、車両のような障害物66が死角領域65を通過する際に、通過前進路67と通過後進路68との間の死角領域65の障害物66の進路を予測進路64として予測し、通過前進路67と通過後進路68との間の進路を補間する。
【0025】
図5は、実施の形態1で想定する道路81および道路81の周辺の状況である。搭載車両71が進行方向82へ走行している。搭載車両71では、センサ4aがフロントの中央に取り付けられており、センサ4bがリヤの右側に取り付けられている。センサ4aのセンシング範囲83aおよびセンサ4bのセンシング範囲83bは、点線で表した扇形の内部である。なお、説明の簡単化のためにセンサは2つとしているが、センサの数は2つにかぎらない。例えばセンサ4bと対称に搭載車両71のリヤの左側にセンサを取り付けても良い。
【0026】
図6は、死角計算部11の動作を示すフローチャートである。
図6を用いて、死角計算部11の動作アルゴリズムをフローチャートで説明する。
図6のフローチャートは、
図5の道路81の状態に基づき説明する。
【0027】
<ステップST101>
ステップST101では、死角計算部11は、センサ4a,4bが取得した障害物のセンシング結果を受信する。
図7は、センシング結果84を示す。
図7に示すように、センシング結果84は障害物の位置と、同一のものに継続的にセンサによって付与される識別番号を基本とする。
図7の各行の情報がセンシング結果84としてセンサから送信される。センシング結果84は、センサによっては障害物の速度情報も含まれる。
図7は3つのセンシング結果を示している。
【0028】
<ステップST102>
ステップST102では、センサの死角領域を計算する。以下のように死角領域には2種類あり、第1の死角領域61、第2の死角領域62と呼ぶ。第1の死角領域61は、各センサのセンシング範囲および搭載車両71に取り付けられた各センサの位置とに起因する。第2の死角領域62は各センサのセンシング領域内に存在する障害物の陰になる領域に生じる。第1の死角領域61については、死角計算部11は、センサ4の仕様と搭載車両71における設置位置とから計算できる。第2の死角領域62については、死角計算部11は、センシング結果84を用いて計算できる。
図8は、第1の死角領域61および第2の死角領域62を示す。第1の死角領域61は、センサ4aのセンシング範囲にも、センサ4bのセンシング範囲にも含まれない領域である。
【0029】
また、第2の死角領域62は、センサ4bのセンシング範囲に車両72が存在している場合に、車両72の陰になるセンシング範囲である。センサ4bの第2の死角領域62を得るためには、車両72の外形を推定する必要がある。センサ4bが電波または光線を照射するタイプのセンサである場合は、電波または光線の反射点72aの両端を用いて車両72の外形を推定できる。
図8のように、車両72の車幅Bのサイズが分からない場合は、死角計算部11は一般的な車両の車幅Bとして仮定する。一般的な車幅Bのような死角計算部11の使用する情報は、補助記憶装置30に格納されている。同様に、予測部12の使用する情報も補助記憶装置30に格納されている。
【0030】
図9は、第2の死角領域62aを示す。
図10は、
図9を搭載車両71の進行方向82の左側から見た図である。
図9、
図10に示すように、センサ4aのセンシング範囲83aに坂道85がある場合、センサ4aのセンシングできる範囲は坂道85の斜面までとなってしまう。このため坂道85の奥の領域は第2の死角領域62aとなる。
【0031】
以上のように、死角計算部11は、移動体である搭載車両71に配置されて物体が存在するかどうかを検出するセンサ4から、検出結果であるセンサ情報として、センシング結果84を順次取得する。死角計算部11は、センサによって物体を検出することができない領域を示す死角領域をセンサ情報であるセンシング結果84に基づいて計算する。
【0032】
<ステップST103>
ステップST103では、死角計算部11は、センサ4aまたはセンサ4bによって前回センシングされた障害物が、今回はセンシングされなかったか否かを判定する。この判定のために、死角計算部11は、センサが出力する識別番号を事前に記憶しておき、それを使用する。具体的には以下のようである。死角計算部11は、入力インタフェース40を介して、
図7の各行のセンシング結果84をセンサ4から受信する。センシング結果84には識別番号が含まれているので、死角計算部11はこの識別番号を事前に記憶しておき、この識別番号を使用する。前回受信したセンシング結果84が識別番号002を含むセンシング結果と、識別番号003を含むセンシング結果であり、今回受信したセンシング結果84が識別番号002を含むセンシング結果のみであるとする。この場合、識別番号003の障害物は前回センシングされ、今回はセンシングされなかった障害物に該当する。
【0033】
<ステップST104>
ステップST104では、死角計算部11は今回受信しなかった障害物が、前回受信したセンシング結果84において、死角領域の方向に進んでいたか否かを判定する。具体的には以下のようである。上記の例では、今回受信しなかった障害物は識別番号003の障害物である。死角計算部11は、前回受信した識別番号003のセンシング結果84の速度情報を参照することで、識別番号003の障害物が死角領域の方向に進んでいたかを判定できる。
このように、死角計算部11は、死角領域に進入する物体を、センサ情報であるセンシング結果84に基づいて検出する。
【0034】
<ステップST105>
ステップST105では、死角計算部11は、ステップST104で識別番号003の障害物が死角領域の方向に進んでいたと判定した場合(ステップST104でYES)、識別番号003の障害物を補間対象として選択する。識別番号003の障害物が死角領域の方向に進んでいた場合は、識別番号003のセンシング結果84を今回受信できなかった理由は、識別番号003の障害物が死角領域に進入したことが原因とみなせるからである。
図11は、識別番号003の障害物が死角領域に進入した場合を示す図である。
図11は、
図8の状態に車両73を追加している。
図11では車両72が識別番号002の障害物に該当し、車両73が識別番号003の障害物に該当する。車両73は、第2の死角領域62に進入している。車両73は車両72によって生じる第2の死角領域62に進入するため、ステップST105において死角計算部11は車両73を補間対象に選択する。
【0035】
図12は、予測部12の動作を示すフローチャートである。
図12を用いて、予測部12の動作アルゴリズムをフローチャートで説明する。
【0036】
<ステップST201>
ステップST201では、予測部12は、死角計算部11によって補間対象とし選択された障害物があるかどうかを判定する。
【0037】
<ステップST202>
選択された障害物が存在する場合、ステップST202において、予測部12はその障害物が搭載車両71後方にいたか前方にいたかを判定する。
予測部12は、検出された物体の死角領域における進路を、センサ情報であるセンシング結果84に基づいて予測する。センシング結果84に基づいて予測するとは、予測部12は、検出された物体である他の車両の位置が搭載車両71の前方か後方かをセンシング結果84を用い決定し、この決定結果から他の車両の進路を予測することを意味する。
なお、前方か後方かは、センシング結果84に含まれる物体、つまり他の車両の位置と、搭載車両71の位置とから判定できる。搭載車両71の位置は車両管理装置5が補助記憶装置30aに保有している。予測部12はセンサから取得するセンシング結果84と車両管理装置5から取得する搭載車両71の位置とから、前方か後方かを判定できる。
【0038】
<ステップST203>
障害物が搭載車両71後方にいた場合、ステップST203で、予測部12は搭載車両71の走行履歴である走行軌跡を基にそのデータを補間する。
図11を例にとれば、予測部12は搭載車両71の走行履歴である走行軌跡を用いて、第2の死角領域62における車両73の進路を予測する。搭載車両71の走行軌跡は車両管理装置5の制御部5aが収集し、管理している。
搭載車両71の走行軌跡は補助記憶装置30aに記憶されている。
図13は、障害物である車両73が搭載車両71後方にいた場合の、車両73の進路予測を説明する図である。
図13に示すように、予測部12は、搭載車両71のこれまでの走行軌跡71aを車両73の位置まで水平方向にシフトさせる。車両73の位置とは、車両73が第2の死角領域62に進入する直前の位置である。直前の位置は、ステップST103において前回受信して今回受信しなかったセンシング結果84が有る場合に、前回受信したセンシング結果84に含まれる位置である。予測部12は、シフトさせた走行軌跡71aを車両73の第2の死角領域62における進路と予測する。
予測部12は、補助記憶装置30aから走行軌跡71aを取得する。走行軌跡71aは、移動体である搭載車両71の移動進路の形状を決定可能な情報を示す形状決定情報である。
この場合、走行軌跡71aは搭載車両71の移動進路の形状そのものである。予測部12は、移動体である搭載車両71の移動進路の形状を決定可能な情報を示す形状決定情報を車両管理装置5から取得し、形状決定情報を用いて、死角領域への進入が検出された物体の死角領域における進路を予測する。
【0039】
<ステップST204>
障害物が搭載車両71の前方にいた場合、予測部12は障害物の進路を以下のように予測する。
つまり、ステップST103において前回受信して今回受信しなかったセンシング結果84が有る場合に、前回受信したセンシング結果84に含まれる位置がセンシング結果84の受信時点での搭載車両71の位置よりも前方にいた場合である。
図14は、障害物が搭載車両71の前方にいた場合の障害物の進路予測を示す。
図14において障害物は車両73が該当する。
図14に示すように障害物が搭載車両71の前方にいた場合、予測部12は、搭載車両71のハンドル角を基にデータを補間する。つまり、予測部12は、搭載車両71のハンドル角を基に、車両73の第1の死角領域61のおける車両73の進路を予測する。搭載車両71のハンドル角は車両管理装置5の制御部5aが収集し、補助記憶装置30aに格納している。予測部12は車両管理装置5からハンドル角を取得する。
図15は、搭載車両71のハンドル角がゼロ度の場合を示している。搭載車両71の直進状態のハンドル角をゼロ度とし、左方向へのハンドルの回転をプラス、右方向へのハンドルの回転をマイナスとする。
図15に示すように、予測部12は、搭載車両71のハンドル角から今後の搭載車両71の予測走行進路71bを求める。予測部12は、搭載車両71の予測走行進路71bを車両73の第1の死角領域61への進入直前の位置まで水平方向にシフトさせる。シフトされた搭載車両71の予測走行進路71bが、車両73の第1の死角領域61における予測走行進路である。予測部12は、車両73がそのシフトされた搭載車両71の予測走行進路71bを走行するものとしてデータを補間する。
図15では直線路なので、搭載車両71のハンドル角は中央のままのゼロ度で変わらないため、搭載車両71の予測走行進路71bは直線である。
【0040】
図16は、搭載車両71のハンドル角がプラスの値を持つ場合を示す。
図16は、搭載車両71が左曲りのカーブ路を有する道路81を走行している場合を示す。
図16の場合、搭載車両71は左カーブに合わせてハンドルが切られる。よって、搭載車両71の予測走行進路71bは、この左カーブに沿うように、すなわち一定の回転半径に沿った進路となっている。このときの車両73の回転半径は、搭載車両71の回転半径と、搭載車両71と車両73との左右方向距離を用いて以下の式1とする。
車両73の回転半径=搭載車両71の回転半径+搭載車両71と車両73との左右方向距離 (式1)
予測部12は、搭載車両71のハンドル角から搭載車両71の回転半径を計算する。また、予測部12は、搭載車両71と車両73との左右方向距離を、車両73のセンシング結果84から計算する。予測部12は、車両73の回転半径から車両73の予測走行進路71bを計算する。
搭載車両71に関する情報は車両管理装置5が保有しているので進路予測装置1は搭載車両71に関する情報は車両管理装置5から取得する。
【0041】
なお、搭載車両71の回転半径は、一般的に以下の式2で表される。ホイールベースとは、前輪の車軸中心と後輪の車軸中心の距離である。
搭載車両71の回転半径=ホイールベース/sinθ (式2)
θは搭載車両71のハンドル角である。なおハンドル角は操舵角である。
【0042】
予測部12は、補助記憶装置30aからハンドル角を取得する。ハンドル角は、移動体である搭載車両71の移動進路の形状を決定可能な情報を示す形状決定情報である。
この場合、予測部12は、ハンドル角から搭載車両71の移動進路である予測走行進路71bを計算する。
つまり、予測部12は、移動体である搭載車両71の移動進路の形状を決定可能な情報を示す形状決定情報としてハンドル角を車両管理装置5から取得し、形状決定情報を用いて、死角領域への進入が検出された物体の死角領域における進路を予測する。
なお、ハンドル角は、移動体である搭載車両71が操縦されている操縦情報である。
操縦情報としては搭載車両71のハンドル角の他に、前輪の舵角またはハンドル機構を形成するラックピニオン機構におけるラックの移動距離でもよい。
【0043】
データを補間する際に速度を使用する場合は、障害物が死角領域に入る直前の速度および加速度を用いる。速度情報はセンサ自身が検出した情報を用いるが、センサの精度が悪化する状況では、速度情報はセンサ自身が検出したものではなく障害物の位置の変化を微分した値を用いる。具体的には、例えば、ミリ波レーダーは、障害物の速度の検出にドップラ効果を用いる。この方式は、障害物がセンサに近づく、あるいは遠ざかる方向には精度良く速度が得られるが、センサと一定の距離を保ったまま移動するような場合には精度が悪化する。
【0044】
予測部12によるデータの補間は、補間した結果である障害物の位置が死角領域の外に出た場合に終了する。しかし、搭載車両71と障害物である他車との速度差が極めて近い場合、障害物が死角領域内に滞留する時間も長くなってしまう。このため、このような場合は補間、つまり障害物の進路予測処理を終了する打ち切り時間を設けても良い。あるいは、逆に、詳細な位置までは分からないが、予測部12は、障害物が死角領域内に滞留していることを基に、死角領域内に障害物が存在していることを表示装置3に報知しても良い。
【0045】
***実施の形態1の効果***
以上、実施の形態1では、進路予測装置1によって得られた障害物の予測走行進路で障害物の進路を補間した補間結果を移動予測装置2に入力することができる。補間結果を移動予測装置2に入力することができるため、移動予測装置2は障害物が死角に入った場合でも障害物のセンシング結果が補間されることになり、継続してその障害物の移動予測を行うことが可能となる。また、実施の形態1では車両を例にして記載したが、船舶または軌道を走行する列車に適用した場合も車両に適用した場合と同様の効果を有する。
【0046】
実施の形態2.
図17から
図19を参照して実施の形態2を説明する。実施の形態1では、他の車両が搭載車両71に配置されたセンサの死角領域内に存在する際の進路予測に、搭載車両71の走行軌跡または操舵角から、他の車両の進路を予測した。実施の形態2では、他の車両が搭載車両71に配置されたセンサの死角領域内に存在する際の進路予測に、地図情報を使用する。
図17は、実施の形態2の車載システム8を示す。
図17に示すように、地図記憶装置6をハードウェア構成に追加した場合について説明する。
【0047】
地図記憶装置6には、地図情報として道路の車線形状についての情報が格納されている。具体的には、車線の中心を表す点の位置情報が一定間隔で格納されている。
図18は、実施の形態2の予測部12の動作アルゴリズムを示す。なお死角計算部11の動作アルゴリズムは実施の形態1の
図6と同じである。以下に、実施の形態2の予測部12の動作を
図18を参照して説明する。
実施の形態2の予測部12は、死角領域を含む地図情報を取得し、地図情報を用いて、死角領域への進入が検出された物体の死角領域における進路を予測する。
【0048】
<ステップST301>
ステップST301の動作は、ステップST201と同じであるので説明は省略する。
【0049】
<ステップST302>
該当する障害物が存在する場合、予測部12は、ステップST302において、他車である該当する障害物が走行していた車線の地図情報を地図記憶装置6から取得する。他車である該当する障害物が走行していた車線とは、他車のセンシング結果84が途絶えた直前のセンシング結果84の示す位置から決定される車線である。予測部12は、取得した地図情報における車線上を他車が継続して走行するとみなして、死角領域での他車の進路を予測する。
【0050】
地図情報には、1つの車線が2つの車線に分岐する情報が格納されていることがある。また地図情報には、交差点の情報が格納されていることもある。このような場合、予測部12は、他車がどの進路を走行するか決めて、地図情報の位置情報を使用する必要がある。この場合、予測部12は、以下の(1)(2)の判断ルールに従い進路を決定する。
(1)他車は道路の幅が最も広い道路を選択して走行する。
(2)複数の道路の幅が同一である場合、他車は搭載車両71に、最も近い道路を選択して走行する。
【0051】
なお、障害物が自動車ではなく、人間の場合も同様の進路予測を行うことができる。人間の場合、予測部12は、地図情報における車線情報に加えて、地図情報における歩道および横断歩道の情報を用いる。さらに、予測部12は、人間の進路を決定する判断ルールには上記(1)(2)に、以下の(3)を追加する。
(3)人間は歩道と横断歩道とがある場合、横断歩道を選択して歩行する。
【0052】
なお、地図記憶装置6に格納されている情報は、車線の中心を表す点の位置情報が一定間隔で格納されているとした。しかし、車線の中心を表す点の位置情報が一定間隔で格納されていることの他に、車線の中心を表す線分の形状を多項式で表現した際の係数が、格納されていても良い。また、地図記憶装置6に格納されている情報としては、車線の中心ではなく、車線を構成する区画線の情報が、格納されても良い。
【0053】
また、地図記憶装置6に記憶される地図情報は、すでに作成されている情報に限らない。
例えば、搭載車両71の前方に備えられたセンサ4aによって車線を検出し、随時生成、記録された地図情報でも良い。
図19は、進路予測装置1が地図生成部13を有する構成である。地図生成部13は、搭載車両71の前方に備えられたセンサ4aによって検出された車線の情報をもとに地図情報を生成し、地図情報をメモリ20に格納する。地図生成部13は、メモリ20に格納された地図情報を補助記憶装置30に格納する。予測部12は、地図生成部13の生成した地図情報を補助記憶装置30からメモリ20へロードし、ロードした地図情報を用いて、死角領域への進入が検出された障害物の死角領域における進路を予測する。
【0054】
***実施の形態2の効果***
実施の形態2では、地図記憶装置6に格納された地図情報を用いて、進路予測装置1が死角領域における障害物の進路予測を行い、障害物の進路データを補間する。進路予測装置1によって補間された障害物の進路データが移動予測装置2に入力される。これにより、移動予測装置2は障害物が死角に入った場合でも、障害物のセンシング結果が補間されるため、継続してその障害物の移動予測を行うことが可能となる。また、実施の形態2では自動車を例にして記載したが、実施の形態1と同様に、船舶または軌道を走行する列車に適用した場合も同様の効果を有する。船舶の場合は、地図として航路図を使用しても良い。また、列車の場合は線路の軌道の形状を表した図を使用しても良い。
【0055】
<変形例>
実施の形態1および実施の形態2では、進路予測装置1の機能がソフトウェアで実現されるが、変形例として、進路予測装置1の機能がハードウェアで実現されてもよい。
図20は、実施の形態1の変形例に係る進路予測装置1の構成を示す図である。
図20の電子回路90は、死角計算部11、予測部12,地図生成部13、メモリ20、補助記憶装置30、入力インタフェース40および出力インタフェース50との機能を実現する専用の電子回路である。電子回路90は、具体的には、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ロジックIC、GA、ASIC、または、FPGAである。GAは、Gate Arrayの略語である。
ASICは、Application Specific Integrated Circuitの略語である。FPGAは、Field−Programmable Gate Arrayの略語である。進路予測装置1の構成要素の機能は、1つの電子回路で実現されてもよいし、複数の電子回路に分散して実現されてもよい。別の変形例として、進路予測装置1の構成要素の一部の機能が電子回路で実現され、残りの機能がソフトウェアで実現されてもよい。
【0056】
プロセッサと電子回路の各々は、プロセッシングサーキットリとも呼ばれる。つまり、進路予測装置1において、死角計算部11、予測部12、地図生成部13の機能がプロセッシングサーキットリにより実現される。あるいは、死角計算部11、予測部12、地図生成部13、メモリ20、補助記憶装置30、入力インタフェース40および出力インタフェース50の機能がプロセッシングサーキットリにより実現されてもよい。
【0057】
以上、実施の形態1および実施の形態2について説明したが、これらの実施の形態のうち、2つ以上を組み合わせて実施しても構わない。あるいは、これらの実施の形態のうち、1つを部分的に実施しても構わない。あるいは、これらの実施の形態のうち、2つ以上を部分的に組み合わせて実施しても構わない。なお、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。