(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記劣化判定部は、前記インピーダンス計算部の出力および前記リプル電流計算部の出力から推定した蓄電装置の発熱量から前記蓄電装置の劣化速度を求めることを特徴とした請求項1に記載の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本願を実施するための実施の形態に係る制御装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一符号は同一もしくは相当部分を示している。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による制御装置100の構成を示すブロック図である。蓄電装置10は、1つまたは複数の電池から構成されるものである。変換器20は、蓄電装置10より出力する電圧を変換して昇圧または降圧して電力を負荷30に供給する、あるいは、蓄電装置10に入力する電圧を変換して昇圧または降圧するものである。制御装置100は、検出部1、インピーダンス計算部2、リプル電流計算部3、リプル変動計算部4および制御部5を備えている。検出部1は、蓄電装置10に関する蓄電装置パラメータである、蓄電装置10の温度、電圧値、SOC(State Of Charge:充電率)、蓄電装置10に入力される直流電流の電流値、蓄電装置10から出力される直流電流の電流値、蓄電装置10に印加されるリプル電流の周波数の少なくとも一つを検出する検出器である。インピーダンス計算部2は、検出部1の出力から蓄電装置10のインピーダンスを求める。リプル電流計算部3は、検出部1の出力から蓄電装置10に印加されるリプル電流の大きさを求める。リプル変動計算部4は、蓄電装置10のインピーダンスとリプル電流の値をもとに、蓄電装置10の電圧変動を推定する。制御部5は、リプル変動計算部4の出力である電圧変動の値があらかじめ定められた蓄電装置10の規定電圧範囲を超えないように変換器20を制御する。
【0011】
また、制御装置100と、蓄電装置10と、変換器20とを備えたものが、蓄電システムとなる。
【0012】
蓄電装置10を構成する電池の種類は、リチウムイオン二次電池に限らず、燃料電池、鉛蓄電池、ニッケル水素電池などであってもよい。さらに蓄電装置10の形状は、積層型、巻型、ボタン型など様々な形状の蓄電装置について実施の形態1に示す技術を適用することができる。また蓄電装置10は、単電池に限らず複数個を直列もしくは並列に接続したモジュールあるいはパックであってもよい。変換器20は、片方向のコンバータ、双方向機能を持つコンバータ、DC/DCコンバータ、負荷30に対して蓄電装置10からのDC電力をAC電力に変換するインバータ等であってもよい。
【0013】
蓄電装置10は、規定電圧範囲の上限電圧と下限電圧、規定電流範囲である上限電流が定められており、定められた規定電圧範囲または規定電流範囲を超えて使用すると、性能低下あるいは劣化が生じる可能性がある。リチウムイオン二次電池においては、上限電圧を超えて使用した場合は過充電状態となり、負極にLi金属が析出し、内部の電解液が副反応によって被膜を形成することで抵抗が上がり、さらに電解液の分解反応によってガスが発生し容器が膨張し電極同士の接触性を低下させる場合がある。さらに、負極へのLi析出が進むと、析出したLi金属によって正極と負極の内部短絡を生じさせる、あるいは、Li析出によって過充電が生じた場合に発熱反応による不具合が起こることがある。
【0014】
リチウムイオン電池が下限電圧以下で使用された場合は、正極へのLi挿入による構造破壊、負極集電体の銅の溶解あるいは析出反応が生じ、その後充電すると微短絡などが生じて、性能低下あるいは劣化が生じる場合がある。リチウムイオン電池で上限電流を超えて電流を流した場合には、電池の内部抵抗と電流の積によるジュール発熱によって電池温度が上昇し、さらに上限電流を超えた電流で充電すると負極にLi金属が析出し、性能低下あるいは劣化を生じさせる場合がある。
【0015】
鉛電池が上限電圧を超えて使用された場合、集電体が腐食する、あるいは、電解液の水が電気分解反応し液枯れによって導電性が低下する。鉛電池が下限電圧以下で使用されると、負極で生成された硫酸鉛がサルフェーションとして堆積するなど、性能低下あるいは劣化が生じる場合がある。燃料電池では、流す電流値によって電圧が決まるため、流す電流が大きすぎると水素ガスおよび空気の供給が追い付かず電圧が低下し、さらに性能低下あるいは劣化が生じる場合がある。
【0016】
よって、電池全般においては、電圧、電流、温度等を計測し保護するよう設計されている。ところが、電池の電圧を変換する変換器では、スイッチングデバイスとして使用されるIGBTあるいはMOSFETなどの半導体スイッチング素子のスイッチングによって、リプル電流が発生する。発生したリプル電流が電池に印加された場合、電池の電圧が変動し、上限電圧を超えて大きくなるあるいは下限電圧を超えて下まわる可能性がある。なお、半導体スイッチング素子のスイッチング時に生じるリプルは、リプル電圧の可能性もあり、その場合は電池に流れる電流に変動が生じる。電池にリプル電流が印加されないようにするためには、変換器内の平滑コンデンサ容量を大きくする、適切なリアクトルを配置設計するといった設計面の対策、あるいは、変換器内の半導体スイッチング素子のスイッチング周波数を制御する、例えば、スイッチング周波数を高くすることでリプル電流を抑制する、リアクトルが多重化された変換器にてリアクトル多重状態で動作させるなど、制御面の対策が取られる場合がある。
【0017】
図1に示す変換器20において電圧を変換するときには、変換器20の内部の半導体スイッチング素子をスイッチング動作するが、スイッチング動作はパルス幅変調のPWM(Pulse Width Modulation)信号に従って実施してもよい。PWM信号の生成には例えば三角波を使用し、キャリア周波数が設定される。
【0018】
図1に示した実施の形態1における制御装置100では、検出部1は、蓄電装置10に関する蓄電装置パラメータである、蓄電装置10の温度、電圧値、SOC、蓄電装置10に入力または出力される直流電流の電流値、および、蓄電装置10に印加されるリプル電流の周波数の少なくとも1つを検出し、インピーダンス計算部2は、検出部1において検出された値をもとに蓄電装置10のインピーダンスを計算する。電池のインピーダンス変化は温度の影響によるものが大きいため、検出部1は少なくとも蓄電装置10の温度を検出するものとしてもよい。
【0019】
図2から
図8をもとに、電池のインピーダンスの変化について説明し、検出部1によって検出された値からインピーダンス計算部2においてインピーダンスを求める方法について説明する。
図2は、電池における温度と抵抗との関係を示す図である。電池は、温度が低いほど抵抗が大きくなり、温度が高いほど抵抗は小さくなる。よって、電池の温度が低い状態ではインピーダンスが大きくなり、電池にリプル電流が印加されると電圧の変動も大きくなる。例えば、セ氏15度からセ氏25度の常温時において電池にリプル電流が印加されたときに電池の上限電圧および下限電圧を超えていない場合であっても、低温時においてはリプル電流印加時の電圧の変動が大きくなるため、上限電圧あるいは下限電圧を超えて性能低下あるいは劣化が生じることがある。例えば、リチウムイオン電池においては、特に低温時において上限電圧を超えて使用されると、負極にLi金属が析出して性能低下あるいは劣化が生じる可能性が高くなる。検出部1において蓄電装置10の温度を検出した場合は、インピーダンス計算部2において、
図2に示すような蓄電装置10の温度と抵抗との関係を示す情報をあらかじめ持っておき、
図2に示すような温度と抵抗の関係を示す情報を用いて検出部1において検出した温度の値を蓄電装置10のインピーダンスである抵抗値に変換する。インピーダンス計算部2において、
図2に示すような情報は、マップあるいはテーブルとして保有してもよく、式あるいは関数の形で保有してもよい。
【0020】
図3は、電池におけるSOCと抵抗の関係を示す図である。一般的には、電池においてはSOCまたは電圧が低いほど抵抗値が大きくなる。よって、電池のSOCが低い状態において電池に電流リプルが印加されると、電池の電圧の変動が大きくなり、電池の下限電圧以下の範囲で使用される可能性がある。一方、電池のSOCが高い状態において電池にリプル電流が印加されると、電池の電圧の変動によって、電池の上限電圧を超えた状態で使用されて性能低下あるいは劣化が生じる可能性がある。検出部1においてSOCを検出した場合は、インピーダンス計算部2において、
図3に示すような蓄電装置10のSOCと抵抗との関係を示す情報をあらかじめ持っておき、
図3に示すようなSOCと抵抗の関係を示す情報を用いて検出部1において検出したSOCの値を蓄電装置10のインピーダンスである抵抗値に変換する。インピーダンス計算部2において、
図3に示すような情報は、マップあるいはテーブルとして保有してもよく、式あるいは関数の形で保有してもよい。
【0021】
図4の下側の図は電池に3.9Vの直流電圧とリプル電流とが印加されたときの電圧変動を示しており、
図4の上側の図は電池に4.1Vの直流電圧とリプル電流とが印加されたときの電圧変動を示している。
図4の下側の図と
図4の上側の図では、同じ振幅のリプル電流が印加されている。例えば、電池の規定電圧範囲の上限電圧が4.2Vである場合、
図4の上側の図に示されたように電池に4.1Vの直流電圧とリプル電流とが印加されたときには上限電圧を超えており劣化が生じるが、
図4の下側の図に示されたように電池に3.9Vの直流電圧とリプル電流とが印加されたときには上限電圧を超えず、劣化が生じない。
【0022】
図5は、電池において入力または出力される直流電流の電流値と抵抗の関係を示す図である。例えば、鉛蓄電池においては、
図5に示すように、入力または出力される直流電流の電流値の大きさによって電池の抵抗が変化する。この特徴は、充電あるいは放電によって電池内部に生じるイオン拡散あるいは濃度拡散による影響が大きい。電池において入力または出力される直流電流の電流値あるいは電流の平均値が小さいほど抵抗が大きくなるため、リプル電流印加時の電圧変動が大きくなる可能性があり、電池の規定電圧範囲の上限電圧あるいは下限電圧を超える可能性がある。
【0023】
図6は、燃料電池において入力または出力される直流電流の電流値と抵抗の関係を示す図である。燃料電池は、電流値が小さいときに抵抗が大きく、電流値が高くなるにつれて抵抗は小さくなり、電流値が一定値を超えると燃料電池内のガス供給が不足し、ガス不足となり抵抗が大きくなる。燃料電池に流れる電流の大きさによってリプル印加時の電圧変動が大きくなる可能性があり、電池の規定電圧範囲の上限電圧あるいは下限電圧を超える可能性がある。
図7は、燃料電池において入力または出力される直流電流の電流値と電圧値の関係を示す図である。燃料電池は、電流値が小さいときに電圧が大きくなる。
【0024】
検出部1において、蓄電装置10において入力または出力される直流電流の電流値を検出した場合は、インピーダンス計算部2において、
図5または
図6に示すような蓄電装置10において入力または出力される直流電流の電流値と抵抗との関係を示す情報をあらかじめ持っておき、検出部1において検出した電流値と
図5または
図6に示すような電流値と抵抗の関係を示す情報とから、蓄電装置10のインピーダンスである抵抗値を求める。
図5または
図6に示すような情報は、マップあるいはテーブルとして保有してもよく、式あるいは関数の形で保有してもよい。
【0025】
図8は、リチウムイオン電池における周波数と抵抗の関係を示したインピーダンスボード線図である。10mHzから20kHzの周波数における抵抗値を示している。周波数が1kHzから20kHzの範囲の抵抗値は、電池内部の配線、複数個の電池を直列もしくは並列に接続した電池モジュールであれば電池間の配線、さらに電池から変換器への配線のインピーダンスの影響が大きい。周波数が1kHzのときの抵抗値は、リチウムイオン電池内の電解液抵抗、内部配線等の直流抵抗に相当する。周波数が1kHz以下の範囲の抵抗値は、リチウムイオン電池内部の正極、負極とLiイオンとの反応あるいは電極内、電解液中のLiイオンの拡散インピーダンスに相当するものである。インピーダンス周波数特性は、
図8に示す通り、リプル周波数が高周波であるほど大きく、約1kHz付近で最も小さくなり、1kHz以下の低周波範囲ほど大きくなる特徴を持つ。そのため、リチウムイオン電池に印加されるリプル電流の周波数によって、リプル電流印加時の電池の電圧変動が変化することになる。
【0026】
検出部1において蓄電装置10に印加されるリプル電流の周波数を検出した場合は、インピーダンス計算部2において
図8に示すような蓄電装置10に印加されるリプル電流の周波数と抵抗の関係を示す情報をあらかじめ持っておき、検出部1において検出したリプル電流の周波数と
図8に示すようなリプル電流の周波数と抵抗の関係を示す情報とから、蓄電装置10のインピーダンスである抵抗値を求める。
図8に示すような情報は、マップあるいはテーブルとして保有してもよく、式あるいは関数の形で保有してもよい。また、検出部1におけるリプル電流の周波数の検出は、例えばFFT(Fast Fourier Transform)による解析を実施し、発生割合として最も多い周波数を検出結果としてもよい。
【0027】
蓄電装置10が複数個の電池を接続したものである場合は、インピーダンス計算部2では、複数個の電池を接続したときの蓄電装置10の全体の電池インピーダンスと、複数の電池を接続するためのバスバーおよびケーブルのインピーダンスと、蓄電装置10と変換器20を接続するケーブルのインピーダンスを求めてもよい。基本的に蓄電装置10は1つの電池から構成されることはなく、複数個の電池を直列接続あるいは並列に接続したモジュールの形態で利用されるため、電池のインピーダンスと接続時に使用されるバスバー、ケーブルのインピーダンスの影響は大きい。そのため、インピーダンス計算部2において、複数個の電池を接続したときの蓄電装置10の全体の電池インピーダンスと、複数の電池を接続するためのバスバーおよびケーブルのインピーダンスと、蓄電装置10と変換器20を接続するケーブルのインピーダンスを求めてることにより、正確に蓄電装置10に印加されるリプル電流を計算することができる。またバスバーおよびケーブルのインピーダンスは温度、周波数によって変化する特徴をもつため、その特徴を情報として保有し、インピーダンスを求める構成としてもよい。
【0028】
また、インピーダンス計算部2で求めた蓄電装置10のインピーダンスは電池の劣化が進むにつれて変化する傾向を持つため、検出部1にてさらに電池の劣化状態あるいは劣化度を検知し、劣化度と抵抗の関係を保有しておくことで、劣化状態における電池のインピーダンスを計算する構成にしてもよい。
【0029】
次に、リプル電流計算部3においてリプル電流を求める方法について説明する。
図9は、変換器20の等価回路の一例を示す図である。
図9において、変換器20は、昇圧コンバータであり、一次側コンデンサ21、リアクトル22、半導体スイッチング素子23および二次側コンデンサ24から構成されている。変換器20は、蓄電装置10からの入力電圧V
inを出力電圧V
outに昇圧し、負荷30に出力する。
【0030】
リアクトル22のインダクタンス値をL、リアクトル22に流れる電流をiL、リアクトル22の入力電圧をV
inとしたとき、半導体スイッチング素子23のON期間であるT
onにおいて、電流iLはdiLだけ増加し、以下の式(1)に示すような関係となる。
【0032】
式(1)を書き換えると、以下の式(2)となる。
【0034】
半導体スイッチング素子23のON期間であるT
onは、半導体スイッチング素子23のスイッチング周波数f、オンデューティ比D、変換器20の入力電圧V
in、出力電圧V
outを用いると、以下の式(3)で表される。
【0036】
リプル電流diLは、式(2)および式(3)をもとに、以下の式(4)で表される。
【0038】
リプル電流のピーク値P
diLは、以下の式(5)で表される。
【0040】
式(4)で示されるリプル電流diLは、一次側コンデンサ21の容量C
inによって蓄電装置10にリプル電流として印加され、蓄電装置10のインピーダンスによって電圧変動が生じる。以上のように、リプル電流計算部3では、変換器20における、MOSFET等の半導体スイッチング素子23のスイッチング周波数f、一次側電圧V
inと二次側電圧V
outの昇降電圧比、リアクトル22のインダクタンス値L、一次側コンデンサ21の容量C
inと二次側コンデンサ24の容量C
outをもとに、リプル電流を計算する。リプル電流計算部3は、変換器20のリアクトル22のインダクタンス値L、一次側コンデンサ21の容量C
inおよび二次側コンデンサ24の容量C
outの情報は、あらかじめ入手して記憶しておいてもよいし、MOSFET等の半導体スイッチング素子23のスイッチング周波数f、一次側電圧V
inと二次側電圧V
outの値と共に、変換器20から入手してもよい。さらに、リプル電流計算部3は、MOSFET等の半導体スイッチング素子23のスイッチング周波数f、一次側電圧V
inと二次側電圧V
outの情報を、制御部5から入手してもよい。あるいは、変換器20の半導体スイッチング素子23のスイッチング周波数をもとにサンプリングを実施するタイミングを設定し、検出部1においてリプル電流を計測して、その値を用いてもよい。
【0041】
また、リプル電流計算部3では、蓄電装置10の等価回路をもとにリプル電流を求めてもよい。
図10は、蓄電装置10の等価回路を示す図であり、蓄電装置10の電気的、化学的な特性を簡易的な電気回路で表現している。
図10において、Lは蓄電装置10の内部の導電経路、集電体金属、電池モジュールの電池間のバスバーおよびケーブルのインダクタンス、Rlは配線抵抗、Rsは電池内部の電解液抵抗、Rcは電池内部の反応に伴う反応抵抗、Cは電気二重層容量、OCV(Open Circuit Voltage)は電池の開回路電圧を示している。各素子の定数を設定した後に、例えば、
図9に示す入力電圧V
inに
図10に示す等価回路を組み込むことで、交流が印加されたときのリプル電流をシミュレーションで計算することができる。あるいは、式(1)から式(5)において入力電圧V
inの代わりに
図10に示す蓄電装置10の等価回路の電圧Vbを用いることにより、リプル電流を計算してもよい。等価回路は、電池間のバスバー、ケーブルに関するインダクタンスおよび抵抗成分だけでもよく、電池内の導電経路、集電体となる金属のインダクタンスおよび抵抗を含めてもよい。
【0042】
例えば、リチウムイオン電池は、電極と集電体が巻回されている構造であり、電池内部のインダクタンス、導電経路に基づくインダクタンスおよび抵抗成分が大きい可能性がある。
図11は、電池の1つのセルのインピーダンスナイキスト線図である。
図11は、電池の1つのセルのインピーダンスを実数部Zreと虚数部Zimに分けて各周波数でのそれぞれの値をプロットしたものである。
図11において、電池のインダクタンスに基づくインピーダンスは虚数部Zimが正の範囲であり、Zimが正の範囲においては周波数が高くなるほどインダクタンスと実数成分が大きくなる特性が示されている。これら特性を反映した等価回路を組み込むことによって、より正確に電池に印加されるリプル電流の計算が可能となり、電池の電圧変動を推定することができる。また、リプル電流は、
図11に示す特性をもとに算出したインピーダンスを
図9に示す入力電圧V
inに抵抗として組み込むことにより計算することができる。等価回路の各回路素子の定数は、電池の種類、電気的または化学的な特性に合わせて可変とすることで、使用する電池にあったインピーダンスを計算する構成にしてもよい。更に、等価回路は、電池間の接続に使用するバスバーあるいはケーブルの配線インダクタンス、配線抵抗に基づく等価回路を利用してもよい。それら配線、ケーブルの回路素子定数は温度、周波数によって変化するため、それら変化の関係を表し計算するようにしてもよい。
【0043】
リプル変動計算部4は、インピーダンス計算部2の出力であるインピーダンスの値と、リプル電流計算部3の出力であるリプル電流の値から、蓄電装置10にリプル電流が印加された場合の電圧変動を推定する。蓄電装置10のインピーダンスの値をもとに蓄電装置10の電圧変動を推定するので、蓄電装置10の規定電圧範囲の上限電圧あるいは下限電圧を超えて使用されないかをより正確に判断することができるため、電池の性能低下あるいは劣化をより正確に抑制することができる。
【0044】
制御部5では、リプル変動計算部4の出力である蓄電装置10の電圧変動の情報をもとに、変換器20を制御することによって、蓄電装置10に印加するリプル電流を制御し、蓄電装置10の電圧があらかじめ定められた蓄電装置10の規定電圧範囲を超えないように変換器20を制御する。リプル電流の制御は、例えば、変換器20の内部の半導体スイッチング素子のスイッチング周波数を調整することによって行われる。半導体スイッチング素子のスイッチング動作をパルス幅変調のPWM信号によって行っている場合は、リプル電流の制御は、PWM信号生成のためのキャリア周波数を調整することによって行ってもよい。半導体スイッチング素子のスイッチング周波数あるいはPWM信号生成のためのキャリア周波数を高くすることによりリプル電流の振幅を小さくするように制御してもよいし、半導体スイッチング素子のスイッチング周波数あるいはPWM信号生成のためのキャリア周波数を低くすることによりリプル電流の振幅を大きくするように制御してもよい。あるいは、制御部5では、蓄電装置10の電圧目標値を設定し、電圧値あるいはSOCを上げるあるいは下げるように制御してもよい。さらに、蓄電装置10に流す電流目標値を設定し、電流値を制御してもよい。
【0045】
制御部5は、劣化判定部を備えてもよい。劣化判定部では、リプル変動計算部4の出力である蓄電装置10の電圧変動の情報をもとに、リプル電流の制御要否、制御目標を判定し、蓄電装置10に印加するリプル電流を制御する。例えば、劣化判定部では、検出部1において検出した蓄電装置10の電圧もしくはSOCをもとにリプル変動計算部4で求めた電圧変動によって、蓄電装置10の上限電圧、上限SOC、下限電圧および下限SOCのいずれかを超えるときには、リプル電流の制御が必要と判断し、リプル電流を制御する。
【0046】
さらに、劣化判定部は、変換器20のスイッチング動作によって生じるリプル電流が蓄電装置10に印加され、蓄電装置10の電圧変動が上限電圧あるいは下限電圧を超えた場合に、上限電圧あるいは下限電圧と蓄電装置10の電圧との差分である電圧超過値を求める。電圧超過値と蓄電装置10の劣化速度との関係、例えば、電圧超過値と蓄電装置10の容量の変化との関係を示す情報をあらかじめ持っておき、電圧超過値と蓄電装置10の劣化速度との関係を示す情報と求めた電圧超過値とから、劣化速度が遅くなるように蓄電装置10に印加するリプル電流を制御してもよい。また、リプル電流の印加回数と蓄電装置10の容量の変化との関係を示す情報をあらかじめ持っておき、リプル電流の印加回数と蓄電装置10の劣化速度との関係を示す情報と求めた電圧超過値とから、劣化速度が遅くなるように蓄電装置10に印加するリプル電流を制御してもよい。電圧超過値と蓄電装置10の劣化速度との関係を示す情報、あるいは、リプル電流の印加回数と蓄電装置10の容量の変化との関係を示す情報は、マップあるいはテーブルとして保有してもよく、式あるいは関数の形で保有してもよい。
【0047】
検出部1において検出した蓄電装置10の温度によって、蓄電装置10の電圧変動に対する蓄電装置10の劣化速度が変化するため、劣化判定部は、蓄電装置10の温度とリプル変動計算部4によって求まる電圧変動と蓄電装置10の劣化速度との関係を示す情報をあらかじめ保有し、この情報をもとにリプル電流を制御してもよい。蓄電装置10の温度とリプル変動計算部4によって求まる電圧変動と蓄電装置10の劣化速度との関係を示す情報は、マップあるいはテーブルとして保有してもよく、式あるいは関数の形で保有してもよい。
【0048】
また、検出部1で検出した蓄電装置10の温度によって蓄電装置10の上限電圧あるいは下限電圧が変化するため、劣化判定部は、検出部1において検出された蓄電装置10の温度に応じて上限電圧あるいは下限電圧を変更し、リプル電流が印加されたときの蓄電装置10の電圧変動と上限電圧または下限電圧との差分をもとに、蓄電装置10の劣化が少なくなるようにリプル電流を制御してもよい。この構成により、例えばリチウムイオン電池では、低温時に変換器20のスイッチング動作によって生じるリプル電流が蓄電装置10に印加された場合に負極へのLi析出に伴う劣化が進行しやすくなる特徴を持つため、低温時の電池劣化を抑制することができる。また、高温状態においても、リチウムイオン電池は変換器のスイッチング動作によって生じるリプル電流が電池に印加された場合に電解液の還元分解反応、負極、正極の副反応、Li金属の析出が進行しやすくなるため、高温時の劣化を抑制することができる。
【0049】
図12は、蓄電装置10のそれぞれの温度における、蓄電装置10の電圧変動および上限電圧の差分と劣化速度との関係を示す図であり、四角はセ氏マイナス20度のときの様子、三角はセ氏0度のときの様子、丸はセ氏25度のときの様子、ひし形はセ氏45度のときの様子を示している。劣化判定部は、
図12に示すような情報をあらかじめ持っておき、リプル電流が印加されたときの蓄電装置10の電圧変動と上限電圧との差分をもとに、蓄電装置10の劣化が少なくなるようにリプル電流を制御してもよい。
図12に示すような情報は、マップあるいはテーブルとして保有してもよく、式あるいは関数の形で保有してもよい。
【0050】
リプル電流が蓄電装置10に印加されたときに温度が上昇し、あらかじめ定めた蓄電装置の上限温度を超え、蓄電装置10が劣化することがある。劣化判定部は、インピーダンス計算部2で求めたインピーダンスの値とリプル電流計算部3で求めたリプル電流とから蓄電装置10の発熱量を求め、この発熱量により上昇した蓄電装置10の温度を求め、この上昇後の温度の情報をもとにリプル電流を制御してもよい。変換器20のスイッチング動作によって生じるリプル電流と蓄電装置10の内部抵抗Rに基づく発熱量Qは、リプルの実効電流をI
rmsとすると、以下の式(6)によって定義される。
【0052】
ここで、蓄電装置10の内部抵抗Rは、検出部1において検出した蓄電装置10の温度、SOC、入力される電流、出力される電流、あるいは、印加されるリプル電流の周波数に応じて変化するため、インピーダンス計算部2で求めたインピーダンスの抵抗値を用いてもよい。式(6)から求まる蓄電装置10の発熱量Qおよび時間によって生じるエネルギーと、電池の熱容量Cv[J/K]とをもとに、蓄電装置10の温度上昇を推定することができる。以上の処理により、変換器20のスイッチング動作によって生じるリプル電流が蓄電装置10に印加され、蓄電装置10の内部発熱によって蓄電装置10の温度が上昇して蓄電装置10の劣化が進行することを防ぐことができる。
【0053】
劣化判定部は、リプル電流を印加したときの蓄電装置10の内部発熱による温度上昇と、蓄電装置10の電圧変動と、蓄電装置10の劣化速度との関係を示す情報をあらかじめ持っておき、この情報をもとにリプル電流を制御してもよい。蓄電装置10に印加される電流リプルと蓄電装置10のインピーダンスによって蓄電装置10にジュール発熱が生じ、蓄電装置10の温度が上昇するため、特に高温状態で使用している場合には温度上昇によってさらに蓄電装置10は高温状態となるため、性能低下または劣化が生じる可能性があるが、劣化判定部においてこのような処理をすることにより、蓄電装置10の性能低下または劣化を抑制することができる。内部発熱による温度上昇と、蓄電装置10の電圧変動と、蓄電装置10の劣化速度との関係を示す情報は、マップあるいはテーブルとして保有してもよく、式あるいは関数の形で保有してもよい。
【0054】
劣化判定部は、蓄電装置10の電圧の時間積分値と蓄電装置10の劣化速度との関係を示す情報をあらかじめ持っておき、リプル電流の周波数とリプル電流印加による電池電圧変動に対して電圧の時間積分値を算出し、この電圧の時間積分値をもとにリプル電流を制御してもよい。あるいは、劣化判定部は、蓄電装置10の電圧の実効電圧値と蓄電装置10の劣化速度との関係を示す情報をあらかじめ持っておき、蓄電装置10の電圧の実効電圧値を算出して、この実効電圧値をもとにリプル電流を制御してもよい。リプル電流印加時の蓄電装置10の電圧変動において電圧の時間積分値あるいは実効電圧によって電池の劣化進行速度が変化するため、電圧の時間積分値あるいは実効電圧の値をもとにリプル電流を制御することで、蓄電装置10の性能低下または劣化を抑制することができる。蓄電装置10の電圧の時間積分値と蓄電装置10の劣化速度との関係を示す情報は、マップあるいはテーブルとして保有してもよく、式あるいは関数の形で保有してもよい。
【0055】
劣化判定部は、変換器20のスイッチング動作によって生じるリプル電流の周波数をもとに、電池に印加するリプル電流を制御してもよい。リチウムイオン電池は、電池内部の電解液中のLiイオンの移動あるいは電池内の電極反応によって、例えば1kHz以下の周波数領域のリプル電流が印加された場合に劣化が進行しやすくなる特徴を持っている。そのため、劣化判定部は、1kHz以下のリプル電流が印加されるときは、蓄電装置10に印加するリプル電流を抑制するなどの制御を行うことにより、蓄電装置10の性能低下または劣化を制御することができる。
【0056】
リチウムイオン電池については、劣化の要因によって劣化判定部において使用する蓄電装置10の上限電圧の値を変更する必要がある。よって、蓄電装置10の劣化要因を診断する劣化要因診断部を劣化判定部に設けて、劣化要因診断部によって診断された劣化要因の情報をもとに劣化判定部においてリプル電流を制御してもよい。劣化要因診断部では、例えば、一般的な方法である未劣化電池の電圧曲線および微分電圧曲線と、劣化電池の電圧曲線および微分電圧曲線とをそれぞれ解析比較し、パラメータとして正極劣化、負極劣化、Li析出による劣化を診断し、Li析出による劣化パラメータが閾値を超える場合にリプル電流を抑制するように制御する。なお、必ずしも電圧曲線および微分電圧曲線の両方を解析比較する必要はなく、どちらか一方を解析比較するようにしてもよい。例えば、リチウムイオン電池では、負極にLi析出が生じることで、正極および負極内を充放電に伴い移動するLiイオンが消費されて容量低下または劣化が生じる場合、さらにLi析出が進行するとセパレータを突き破り微短絡あるいは内部短絡を生じさせることがあるため、電池の性能低下、劣化を抑制することができる。
【0057】
なお、変換器20に設けられるリアクトルのインダクタンス値、コンデンサ容量は、予め設計段階で変換器20のスイッチング動作によって生じるリプル電流を計算した上で、想定される蓄電装置10のインピーダンスを計算し、電圧変動を推定し上で、それをもとに設計する構成にしてもよい。これらの処理により、変換器20に搭載するリアクトルの小型化あるいはコンデンサ容量を提言することができる。
【0058】
以上のように、実施の形態1による制御装置100は、蓄電装置10に入力される電圧および蓄電装置10から出力される電圧の少なくとも一方を半導体スイッチング素子によって変換する変換器20を制御する制御装置100であって、蓄電装置10に関する蓄電装置パラメータを検出する検出部1と、検出部1の出力から蓄電装置10のインピーダンスを求めるインピーダンス計算部2と、検出部1の出力から蓄電装置10に印加されるリプル電流の振幅を求めるリプル電流計算部3とを備え、インピーダンス計算部2の出力およびリプル電流計算部3の出力をもとに変換器20を制御するので、蓄電装置10の性能低下または劣化を抑制することができる。
【0059】
実施の形態2.
図13は、実施の形態2による制御装置100aの構成を示す図である。実施の形態2による制御装置100aは、互いに並列に接続された複数のリアクトルと、複数のリアクトルのそれぞれに接続された複数の半導体スイッチング素子とを備えた変換器20aを制御するものである。
図13に示す実施の形態2による制御装置100aを
図1に示す実施の形態1による制御装置100と比較すると、リプル電流計算部3がリプル電流計算部3aになっており、制御部5が制御部5aになっており、リプル変動計算部4ではなく損失計算部6を備えている。損失計算部6は、変換器損失計算部61と電池損失計算部62とを備えている。実施の形態2による制御装置100aの他の構成は、実施の形態1による制御装置100の構成と同じである。
【0060】
また、制御装置100aと、蓄電装置10と、変換器20aとを備えたものが、蓄電システムとなる。
【0061】
リプル電流計算部3aは、検出部1の出力と、変換器20aにおいて動作しているリアクトルの数、すなわち、変換器20aにおいて動作している半導体スイッチング素子の数とから、蓄電装置10に印加されるリプル電流の大きさを求める。変換器損失計算部61は、蓄電装置10において入力あるいは出力される直流電流の値を検出部1から入手し、直流電流の値から変換器20aの半導体スイッチング素子のスイッチング動作によって生じる損失である変換器損失を求める。電池損失計算部62は、インピーダンス計算部2の出力である蓄電装置10のインピーダンスと、リプル電流計算部3の出力であるリプル電流の値とから、蓄電装置10に生じる電池損失である蓄電装置10のインピーダンスによる内部発熱量を求める。制御部5aは、変換器損失計算部61の出力である変換器損失と、電池損失計算部62の出力である電池損失の値とから、変換器20aにおいて動作させる半導体スイッチング素子の個数を制御する。以上の構成により、変換器損失および電池損失を考慮しつつ動作させるリアクトルの数を多くすることにより、リプル電流を抑制し、蓄電装置10の性能低下を抑制することができる。
【0062】
電圧を変換するリアクトルを2個備えて2重化した変換器20aを例に、リプル電流を制御する方法について説明する。
図14は、変換器20aの等価回路を示す図である。
図14において、変換器20aは、一次側コンデンサ21a、リアクトル22a、半導体スイッチング素子23a、半導体スイッチング素子23b、リアクトル22b、半導体スイッチング素子23c、半導体スイッチング素子23dおよび二次側コンデンサ24aから構成されている。
【0063】
リアクトルを2重化した変換器20aにおいて、キャリア周波数fで半導体スイッチング素子23aおよび半導体スイッチング素子23bをスイッチング動作したときにリアクトル22aに流れるリプル電流をi
1とし、キャリア周波数fで半導体スイッチング素子23cおよび半導体スイッチング素子23dをスイッチング動作したときにリアクトル22bに流れるリプル電流をi
2とする。i
1とi
2とを合成したi
3のリプル電流が蓄電装置10に印加されることになる。
図15は、比較例の変換器においてi
1とi
2との位相が同じになるように半導体スイッチング素子のスイッチング動作を行ったときの、i
1、i
2およびi
3の様子を示した図である。振幅がi
aで同位相のi
1とi
2とが合成されて、リプル電流i
3の振幅は2i
aとなっている。一方、
図16は、実施の形態2の変換器においてi
1とi
2との位相が180度ずれるように半導体スイッチング素子のスイッチング動作を行ったときのi
1、i
2およびi
3の様子を示した図である。振幅がi
aで位相が180度ずれたi
1とi
2とが合成されて、リプル電流i
3の振幅はi
aとなり周波数は2fとなっている。実施の形態2の変換器においては、蓄電装置10には合成された振幅がi
aのリプル電流i
3が印加されることになり、i
1とi
2との位相が同じになるように半導体スイッチング素子のスイッチング動作を行う比較例と比べて蓄電装置10に印加されるリプル電流の振幅を抑制することができる。また、リアクトルを2重化することにより、1つのリアクトルを用いて同じ大きさの直流電流を流すときに比べて、1つのリアクトルに流れる直流電流が低減され、変換器20aの発熱量が低減される。
【0064】
一方、リアクトルを2重化すると、スイッチングによる損失が生じ、効率が低下するという欠点がある。
図17は、変換器20aにおいて昇圧する場合の、直流電流と損失との関係を示す図である。
図17において、リアクトルを2重化して動作させたときのリアクトル1つ当たりの変換器損失をQa1とし、リアクトルを2重化せずに1つのリアクトルのみで動作させたときの変換器損失をQa2として示している。リアクトルを2重化して動作させると、リアクトル1つ当たりに流れる電流は小さくなり、リアクトル1つ当たりの変換器損失も小さくなるが、変換器20aの全体としての変換器損失は2Qa1となる。変換器20aの全体としての変換器損失を小さくしたいときは、例えば、制御部5aにおいて、リアクトルを2重化して動作させたときの変換器損失である2Qa1と、1つのリアクトルのみで動作させたときの変換器損失であるQa2とを比較し、2Qa1がQa2よりも大きいときは1つのリアクトルのみで動作させるように制御する。なお、直流電流と変換器損失との関係は、蓄電装置10の電圧を変換器20aによって昇圧または降圧するときの電流に対する効率をもとに損失を計算してもよい。
【0065】
図18は、蓄電装置10に印加されるリプル電流と、インピーダンスをもとに計算した蓄電装置10の電池損失、すなわち、蓄電装置10の発熱による損失との関係を示す図である。
図18において、リアクトルを2重化して動作させたときの蓄電装置10の電池損失をQb1とし、リアクトルを2重化せずに1つのリアクトルのみで動作させたときの蓄電装置10の電池損失をQb2として示している。蓄電装置10の電池損失を小さくしたいときは、例えば、制御部5aにおいて、リアクトルを2重化して動作させたときの電池損失であるQb1と、1つのリアクトルのみで動作させたときの電池損失であるQb2とを比較し、電池損失が小さな方で動作させるように制御する。また、変換器20aの変換器損失と蓄電装置10の電池損失との合計を小さくしたいときには、例えば、制御部5aにおいて、2Qa1+Qb1とQa2+Qb2を比較して、変換器20aにおいて動作させるリアクトルの数を決定して制御する。
【0066】
さらに、制御装置100aは、インピーダンスおよびリプル電流の値をもとに蓄電装置10の電圧変動を推定するリプル変動計算部4をさらに備え、制御部5aにおいて蓄電装置10に印加されるリプル電流を抑制するように動作させる前記半導体スイッチング素子の個数を制御してもよい。このような構成にすることにより、蓄電装置10のインピーダンスおよび蓄電装置10に印加されるリプル電流により蓄電装置10の電圧変動が生じ、上限電圧あるいは下限電圧を超えることで蓄電装置10の劣化が生じることを抑制することができる。
【0067】
変換器20aの並列に接続されるリアクトルの個数は2個よりも多い数を多重化してもよく、制御部5aは、動作させるリアクトルの個数を決定することで蓄電装置10に印加されるリプル電流を制御するようにしてもよい。リアクトルの個数を増やすことによって、蓄電装置10に印加されるリプル電流をより抑制することができる。また、並列に接続されるリアクトルの数が多い変換器20aを制御するときは、変換器20a全体の損失はリアクトル1つ当たりのスイッチング動作による損失をリアクトルの個数分だけ足し合わせた値となるため、リプル電流を考慮しながら動作させるリアクトルの個数を減らすことにより、変換器20aの変換器損失を減らすこともできる。
【0068】
また、リアクトルには定格電流値が定められているため、多重化されたリアクトルのいくつかを停止させるときには、動作しているリアクトルの1個あたりに流れる電流は定格電流値以下となるように動作させる個数を制御することが望ましい。また、
図17に示したように、2つ以上のリアクトルを動作させると変換器20aの全体の変換器損失は大きくなる傾向を持っているため、負荷が軽く変換器20aをリアクトルの定格電流値以下の小さな直流電流で動作させるときには、リアクトルを1つだけ動作させることにより変換器20aの変換器損失を小さくすることができる。例えば、
図14に示した変換器20aにおいて、蓄電装置10に印加されるリプル電流をi
3がリアクトルの定格電流の1/2以下の場合、半導体スイッチング素子23cと半導体スイッチング素子23dとをゲートオフしてリアクトル22bを停止することにより、変換器20aの変換器損失を小さくすることができる。このとき、リアクトル22aに流れるリプル電流i
1が蓄電装置10に印加されるリプル電流をi
3となる。
【0069】
実施の形態1および実施の形態2による制御装置は、制御方法として実現されてもよく、制御方法の各動作を記述したコンピュータプログラムとして実現されてもよい。コンピュータプログラムは、通信路を介して提供されてもよいし、記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0070】
図19は、実施の形態1および実施の形態2による制御装置のハードウェアの一例を示す模式図である。インピーダンス計算部2、リプル電流計算部3、3a、リプル変動計算部4、制御部5、5a、損失計算部6は、メモリ202に記憶されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ201によって実現される。メモリ202は、プロセッサ201が実行する各処理における一時記憶装置としても使用される。また、複数の処理回路が連携して上記機能を実行してもよい。さらに、専用のハードウェアによって上記機能を実現してもよい。
【0071】
専用のハードウェアによって上記機能を実現する場合は、専用のハードウェアは、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、または、これらを組み合わせたものである。プロセッサ201およびメモリ202によって上記機能を実現する場合は、プロセッサ201はCPUであり、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)など、あるいは、これらを組み合わせたものである。メモリ202は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(登録商標)(Electrically EPROM)などの不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD(登録商標)(Digital Versatile Disk)、または、これらを組み合わせたものである。検出部1、プロセッサ201およびメモリ202は、互いにバス接続されている。
【0072】
本願は、様々な例示的な実施の形態が記載されているが、1つまたは複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、および機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
したがって、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
蓄電装置(10)に関する蓄電装置パラメータを検出する検出部(1)と、検出部(1)の出力から蓄電装置(10)のインピーダンスを求めるインピーダンス計算部(2)と、検出部(1)の出力から蓄電装置(10)に印加されるリプル電流の振幅を求めるリプル電流計算部(3)とを備え、インピーダンス計算部(2)の出力およびリプル電流計算部(3)の出力をもとに変換器(20)を制御する。