特許第6968320号(P6968320)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6968320-水処理装置及び水処理方法 図000002
  • 特許6968320-水処理装置及び水処理方法 図000003
  • 特許6968320-水処理装置及び水処理方法 図000004
  • 特許6968320-水処理装置及び水処理方法 図000005
  • 特許6968320-水処理装置及び水処理方法 図000006
  • 特許6968320-水処理装置及び水処理方法 図000007
  • 特許6968320-水処理装置及び水処理方法 図000008
  • 特許6968320-水処理装置及び水処理方法 図000009
  • 特許6968320-水処理装置及び水処理方法 図000010
  • 特許6968320-水処理装置及び水処理方法 図000011
  • 特許6968320-水処理装置及び水処理方法 図000012
  • 特許6968320-水処理装置及び水処理方法 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6968320
(24)【登録日】2021年10月28日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】水処理装置及び水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/34 20060101AFI20211108BHJP
【FI】
   C02F1/34
【請求項の数】14
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2021-536048(P2021-536048)
(86)(22)【出願日】2021年3月9日
(86)【国際出願番号】JP2021009211
【審査請求日】2021年6月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】特許業務法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牛房 裕之
(72)【発明者】
【氏名】村上 直司
(72)【発明者】
【氏名】明田川 恭平
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 誠
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−298856(JP,A)
【文献】 特開2005−169366(JP,A)
【文献】 特開2010−234231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/34
B01J 19/00
B06B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端に開口部を有する処理槽に貯留された水に殺菌を行う水処理装置において、
前記処理槽の前記開口部に上下移動可能に装着された蓋体部材と、
前記処理槽の側面に設けられ、排水流路を形成する排水口と、
前記蓋体部材に鉛直方向の上方から衝撃を印加するとともに前記蓋体部材を上下移動させる衝撃印加機構と、
前記蓋体部材の上下移動に連動して前記排水流路を開閉する水圧弁と、を備え、
前記水圧弁は、前記蓋体部材が前記衝撃印加機構によって下方に移動される際に前記排水流路を開き、前記蓋体部材が前記衝撃印加機構によって上方に移動される際に前記排水流路を閉じる
ことを特徴とする水処理装置。
【請求項2】
前記処理槽の側面に設けられた導水流路と、
前記導水流路を開閉する逆流防止弁と、を備え、
前記逆流防止弁は、前記蓋体部材が前記衝撃印加機構によって下方に移動される際に前記導水流路を閉じ、前記蓋体部材が前記衝撃印加機構によって上方に移動される際に前記導水流路を開く
ことを特徴とする請求項1記載の水処理装置。
【請求項3】
前記逆流防止弁は、前記処理槽の前記側面の内壁に取り付けられる
ことを特徴とする請求項2記載の水処理装置。
【請求項4】
前記処理槽の側面に設けられ、前記導水流路を形成する導水口と、
前記導水口に接続され前記導水流路を形成する導水配管と、をさらに備え、
前記逆流防止弁は、前記導水配管に取り付けられる
ことを特徴とする請求項2記載の水処理装置。
【請求項5】
前記逆流防止弁は、電磁弁である
ことを特徴とする請求項4記載の水処理装置。
【請求項6】
前記逆流防止弁は、前記蓋体部材と一体に形成される
ことを特徴とする請求項2記載の水処理装置。
【請求項7】
前記排水口に接続され前記排水流路を形成する排水配管を備え、
前記水圧弁は、前記排水配管の終端部に取り付けられる
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の水処理装置。
【請求項8】
前記排水配管の一部は、鉛直方向において前記蓋体部材の下面よりも高い位置に配置される
ことを特徴とする請求項7記載の水処理装置。
【請求項9】
前記処理槽の側面に設けられ、導水流路を形成する導水口と、
前記導水口に接続され前記導水流路を形成する導水配管と、を備え、
前記排水配管の管径は、前記導水配管の管径よりも小さい
ことを特徴とする請求項7または請求項8に記載の水処理装置。
【請求項10】
前記導水口と前記排水口は、鉛直方向において異なる高さに設けられる
ことを特徴とする請求項4または請求項9に記載の水処理装置。
【請求項11】
前記衝撃印加機構は、前記蓋体部材にワイヤまたは紐で接続されたピストンを有し、前記ピストンを上方から落下させることにより前記蓋体部材に衝撃を印加し、前記ピストンの重量によって前記蓋体部材を下方に移動させ、前記ピストンを上方に引き上げることにより前記蓋体部材を上方へ移動させる
ことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の水処理装置。
【請求項12】
前記処理槽は、前記処理槽の底部に沈殿した固形物を排出する固形物排出部を有する
ことを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の水処理装置。
【請求項13】
複数の前記処理槽が直列に接続してある
ことを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の水処理装置。
【請求項14】
上端に開口部を有する処理槽に貯留された水に殺菌を行う水処理方法において、
前記処理槽の前記開口部に蓋体部材を上下移動可能に装着し、前記処理槽の側面に設けられた導水流路を介して前記処理槽に前記水を貯留する準備ステップと、
前記処理槽に貯留された前記水が前記蓋体部材の下面に接触している状態で、衝撃印加機構によって前記蓋体部材に鉛直方向の上方から衝撃を印加し、前記処理槽に貯留された前記水に殺菌を行う衝撃印加ステップと、
前記衝撃印加機構によって前記蓋体部材が下方に移動される際に前記処理槽の側面に設けられた排水流路の水圧弁が開き、処理後の前記水が排出される排出ステップと、
前記衝撃印加機構によって前記蓋体部材が上方に移動される際に前記排水流路の前記水圧弁が閉じ、前記導水流路を介して前記処理槽内に水が導入される導入ステップと、
を含むことを特徴とする水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、水処理装置及び水処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水中に存在する菌類等の微生物を殺菌する手法として、薬剤、微細な膜、及びキャビテーション等を利用した手法が知られている。例えば特許文献1には、電極間の放電により第1の液体中に衝撃波を発生させ、この衝撃波が第2の液体中でキャビテーションによる気泡を発生させる浄化装置が開示され、気泡の崩壊によって液体に殺菌を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−80656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、異常気象、地震等の被災地及び発展途上国等においては、生活用水及び飲料水の確保が重要な課題である。溜め池、養殖池等の池に貯留された水は、流入する栄養分によって大腸菌等の細菌及び微生物が大量発生しやすく、汚染される恐れがある。また、送電網が整備されていない地域もあり、水処理装置の操作、管理及びメンテナンスのための人員の確保も困難である。このような地域において溜め池等の水を継続的に殺菌するためには、省エネルギで駆動可能であり、簡易な構成で故障し難く、管理及びメンテナンスが容易な水処理装置が必要である。
【0005】
しかしながら、薬剤または微細な膜等を使用した従来の殺菌方法は、薬剤の管理及び膜の交換等のメンテナンスが煩雑であるという課題がある。また、キャビテーション等を使用した特許文献1のような従来の殺菌方法は、水槽の他、電極ユニットを含む衝撃波発生ユニット及び電極支持部等を備えた装置が必要となる。そのため、装置構成が複雑であり、電極ユニットの交換等の比較的負荷の大きなメンテナンスが必要という課題がある。
【0006】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、省エネルギで駆動可能であり、簡易な構成で故障し難く、管理及びメンテナンスが容易な水処理装置及び水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に開示される水処理装置は、上端に開口部を有する処理槽に貯留された水に殺菌を行う水処理装置において、処理槽の開口部に上下移動可能に装着された蓋体部材と、処理槽の側面に設けられ排水流路を形成する排水口と、蓋体部材に鉛直方向の上方から衝撃を印加するとともに蓋体部材を上下移動させる衝撃印加機構と、蓋体部材の上下移動に連動して排水流路を開閉する水圧弁とを備え、水圧弁は、蓋体部材が衝撃印加機構によって下方に移動される際に排水流路を開き、蓋体部材が衝撃印加機構によって上方に移動される際に排水流路を閉じるものである。
【0008】
本願に開示される水処理方法は、上端に開口部を有する処理槽に貯留された水に殺菌を行う水処理方法において、処理槽の開口部に蓋体部材を上下移動可能に装着し、処理槽の側面に設けられた導水流路を介して処理槽に水を貯留する準備ステップと、処理槽に貯留された水が蓋体部材の下面に接触している状態で、衝撃印加機構によって蓋体部材に鉛直方向の上方から衝撃を印加し、処理槽に貯留された水に殺菌を行う衝撃印加ステップと、衝撃印加機構によって蓋体部材が下方に移動される際に処理槽の側面に設けられた排水流路の水圧弁が開き、処理後の水が排出される排出ステップと、衝撃印加機構によって蓋体部材が上方に移動される際に排水流路の水圧弁が閉じ、導水流路を介して処理槽内に水が導入される導入ステップと、を含むものである。
【発明の効果】
【0009】
本願によれば、省エネルギで駆動可能であり、簡易な構成で故障し難く、管理及びメンテナンスが容易な水処理装置及び水処理方法を提供することが可能となる。
本願の上記以外の目的、特徴、観点及び効果は、図面を参照する以下の詳細な説明から、さらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る水処理装置の構成を示す概略断面図である。
図2】実施の形態1に係る水処理装置の動作を説明する図である。
図3】実施の形態2に係る水処理装置の構成を示す概略断面図である。
図4】実施の形態2に係る水処理装置の動作を説明する図である。
図5】実施の形態3に係る水処理装置の逆流防止弁の構成を示す図である。
図6】実施の形態3に係る水処理装置の逆流防止弁の別の構成を示す図である。
図7】実施の形態4に係る水処理装置の動作を説明する図である。
図8】実施の形態5に係る水処理装置の構成を示す概略断面図である。
図9】実施の形態5に係る水処理装置の変形例を示す概略断面図である。
図10】実施の形態5に係る水処理装置の別の変形例を示す概略断面図である。
図11】実施の形態6に係る水処理装置の構成を示す概略断面図である。
図12】実施の形態6に係る水処理装置の別の構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
以下に、実施の形態1に係る水処理装置について図面に基づいて説明する。図1は、実施の形態1に係る水処理装置の構成を示す概略断面図、図2は実施の形態1に係る水処理装置の動作を説明する図である。なお、各図において同一、相当部分には同一符号を付している。実施の形態1による水処理装置1は、処理槽2に貯留された被処理水20に衝撃を印加することにより殺菌(減菌)を行うものであり、被処理水20として溜め池、養殖池等の池に貯留された水を用いてもよい。
【0012】
円筒状の処理槽2は、鉛直方向の上端に略円形の開口部2aを有する。処理槽2は円筒状に構成されているため、衝撃を均等に印加することができる。処理槽2の側面には導水口3と排水口4が別個に設けられ、それぞれ導水流路32と排水流路42を形成する。導水口3には導水配管31が接続されて導水流路32を形成し、排水口4には排水配管41が接続されて排水流路42を形成している。
【0013】
ただし、導水口3と導水配管31、排水口4と排水配管41は、それぞれ一体形成されていてもよい。導水口3と排水口4は、鉛直方向において異なる高さに設けられ、実施の形態1では、排水口4は導水口3よりも低い位置に配置されている。ここで、処理槽2は被処理水20を貯留し処理する水槽であり、導水口3は被処理水20を処理槽2に導入する導水流路32であり、排水口4は処理後の水を排水する排水流路42である。
【0014】
なお、実施の形態1に係る水処理装置1について、円筒状の処理槽2を一例として説明したが、本願はこれに限定されるものではない。例えば、角筒状の処理槽としてもよい。角筒状の処理槽の場合、例えば、水処理装置の配置スペースの確保が容易になるという効果が得られる。
【0015】
処理槽2の開口部2aには、蓋体部材である蓋体5が上下移動可能に装着される。蓋体5は、開口部2aに対して着脱可能であり、その外径が処理槽2の内径よりも若干小さく形成される。蓋体5の周面には、被処理水20の漏れ防止のためにOリング51が装着される。蓋体5の上面5aは、衝撃印加機構6により衝撃が印加される衝撃印加面であり、下面5bは、処理槽2に貯留された被処理水20に衝撃波を発生させる衝撃波発生面である。また、処理槽2の底部2bに、衝撃波を反射して増強または増幅させる衝撃波増強部(図示省略)を設けてもよく、底部2bの内壁が衝撃波増強部を兼ねていてもよい。
【0016】
処理槽2の上方に設けられた衝撃印加機構6は、蓋体5に鉛直方向の上方から衝撃を印加するとともに、蓋体5を上下移動させる。衝撃印加機構6は、蓋体5にワイヤ62または紐で接続されたピストン61を有し、ピストン61を上方から落下させることにより蓋体5に衝撃を印加し、ピストン61の重量によって蓋体5を下方に移動させ、ピストン61を上方に引き上げることにより蓋体5を上方へ移動させる。
【0017】
衝撃印加機構6は、省エネルギで駆動可能であることが求められ、水力、風力、または太陽エネルギ等の自然エネルギによって駆動される。例えばピストン61を上下運動させるための動力源として、水車及び風車等がある。動力源が水車の場合、水車が水によって回転すると、その中心にある心棒が回転する。心棒は軸受けによって支えられており、心棒に取り付けられた歯車を別の歯車と噛み合わせることにより、回転運動を上下運動に変えたり速度を上げたりすることができる。
【0018】
なお、実施の形態1に係る水処理装置1について、水力、風力、または太陽エネルギ等の自然エネルギによって駆動される形態を一例として説明したが、本願はこれに限定されるものではない。例えば、送電網によって供給された電力により、モータによる動力を用いてもよい。モータを用いた場合、例えば、水処理装置の小型化が容易になるという効果が得られる。
【0019】
また、水処理装置1は、蓋体5の上下移動に連動して排水流路42を開閉する水圧弁7を備えている。水圧弁7は、蓋体5が衝撃印加機構6によって下方に移動される際に排水流路42を開き、蓋体5が衝撃印加機構6によって上方に移動される際に排水流路42を閉じる。水圧弁7は、例えば板材71とヒンジ72とで構成され、排水配管41の終端部に取り付けられる。板材71は、ヒンジ72のピンを支柱として開閉され、その開閉は処理槽2内に生じた水圧と水流に依存している。
【0020】
具体的には、蓋体5が衝撃印加機構6によって下方に移動される際に処理槽2内に生じる水流によって水圧弁7が「開」となり、排水流路42を開く。また、蓋体5が衝撃印加機構6によって上方に移動される際に処理槽2内に生じる水圧の低下によって水圧弁7が「閉」となり、排水流路42を閉じる。このため、外部から排水配管41を通って水が逆流することは殆どない。
【0021】
水圧弁7は板材71が開閉するだけの簡単な構造であるため、排水配管41の終端部を完全に密閉するものではない。なお、水圧弁7は、処理槽2内の通常の水圧(すなわち蓋体5が定位置にある時の満水時の水圧)によって板材71が開かないように調整されており、板材71を閉じておくためのバネ部材またはストッパー等を有していてもよい。
【0022】
処理槽2の材料には、耐腐食性及び耐衝撃性の高い材料が好適であり、例えばステンレス、アルミニウム等の金属、ポリカーボネート、アクリル樹脂等の合成樹脂が用いられる。また、蓋体5の材料には、処理槽2と同様に耐腐食性及び耐衝撃性の高い材料が好適であり、ポリカーボネート、アクリル樹脂等の合成樹脂または金属が用いられる。特に、蓋体5の材料の密度と音速の積(音響インピーダンス、あるいは比音響インピーダンス)が被処理水20のそれと同等であることが好ましく、その代表としてポリカーボネートが挙げられる。
【0023】
実施の形態1による水処理方法、すなわち水処理装置1の動作について、図2(a)から図2(c)を用いて説明する。実施の形態1による水処理方法は、処理槽2内に被処理水20を貯留する準備ステップ、被処理水20に衝撃を印加し殺菌を行う衝撃印加ステップ、処理後の水を排出する排出ステップ、及び新しい被処理水を導入する導入ステップを含んでいる。
【0024】
まず、処理槽2の開口部2aに蓋体5を上下移動可能に装着し、処理槽2の側面に設けられた導水流路32を介して処理槽2に被処理水20を貯留する(準備ステップ)。具体的には、処理槽2内に、導水配管31及び導水口3を介して、被処理水20を例えば流量F1(図2(a)参照)で導入し、蓋体5の下面5bに接触するまで貯留する。この準備ステップでは、水圧弁7は閉じている。この際、蓋体5と被処理水20の境界には、衝撃力を被処理水20に最大限に伝えるため、空気等の気体層が極力生じないように隙間なく密着させるのが望ましい。
【0025】
被処理水20の導入方法としては、処理槽2を溜め池等の水源に対して低い場所に設置し、高低差によって被処理水20を処理槽2内に導入する。高低差を利用した場合、例えば、動力を使用せず水処理が可能なため、省エネルギ化が可能となる。
【0026】
なお、実施の形態1に係る水処理装置1について、処理槽2と水源との高低差を利用した被処理水20の導入方法を一例として説明したが、本願はこれに限定されるものではない。例えば、送電網によって供給された電力により、ポンプ(図示省略)による動力を用いてもよい。ポンプを用いた場合、例えば、水処理装置を水源との高低差によらず設置できるため、設置自由度が向上するという効果が得られる。
【0027】
次に、図2(a)に示すように、処理槽2に貯留された被処理水20が蓋体5の下面5bに接触している状態で、衝撃印加機構6によって蓋体5に鉛直方向の上方から衝撃を印加し、処理槽2に貯留された被処理水20に殺菌を行う(衝撃印加ステップ)。具体的には、ピストン61を上方から落下させることにより蓋体5の上面5aに衝撃を印加する。この衝撃により、蓋体5の下面5bから第1の衝撃波22が発生する。第1の衝撃波22は、水中でキャビテーションによる微小気泡の発生と消滅を生じさせる。
【0028】
処理槽2に貯留された被処理水20には、溶存気体を含む微小気泡21が含まれており、第1の衝撃波22が微小気泡21に伝わると、微小気泡21が瞬間的に圧縮され、消滅した微小気泡から気泡崩壊による第2の衝撃波(図示省略)が発生する。この第2の衝撃波が被処理水20中の大腸菌等の菌類、微生物、ウィルス等に衝突することにより、被処理水20に殺菌が行われる。
【0029】
第1の衝撃波22のエネルギが大きく、被処理水20に含まれる微小気泡21が多いほど、殺菌効果は高くなる。第1の衝撃波22のエネルギの大きさと伝わり方は、処理槽2、蓋体5及びピストン61の材料、処理槽2の形状、大きさ(直径、深さ)、蓋体5の厚さ、ピストン61による衝撃の大きさ(ピストン61の重量、落下距離)等によって変わり、これらを最適化することによって非常に高い殺菌効果が得られる。
【0030】
続いて、衝撃印加機構6によって蓋体5が下方に移動される際に処理槽2の側面に設けられた排水流路42の水圧弁7が開き、処理後の水が排出される(排出ステップ)。蓋体5に衝撃が印加された後、図2(b)に示すように、ピストン61の重量によって蓋体5が下方に移動される。これにより、処理槽2内に水流が生じるため排水流路42の水圧弁7が開き、図中矢印Aで示すように排水配管41から処理後の水が排出される。なお、実施の形態1では、排出ステップにおいて、図中矢印Bで示すように導水配管31からも処理後の水が排出される。
【0031】
続いて、衝撃印加機構6によって蓋体5が上方に移動される際に排水流路42の水圧弁7が閉じ、導水流路32を介して処理槽2内に被処理水20が導入される(導入ステップ)。図2(c)に示すように、ピストン61が上方に引き上げられると蓋体5も上方へ移動される。これにより、処理槽2内の水圧が低くなり排水流路42の水圧弁7が閉じる。一方、導水配管31からは例えば流量F2で被処理水20が引き込まれ、導水口3を介して処理槽2内に被処理水20が導入される。導入ステップにおける流量F2は、準備ステップにおける流量F1よりも大きくなる(F1<F2)。導入ステップの後、ピストン61は元の位置に戻る。
【0032】
これにより、処理槽2内には、処理後の水と新しい被処理水20との混合水が満たされ、この混合水が次回の被処理水20となる。このような方法によれば、溜め池等の水源から導入される被処理水20の流量F1が小さい場合にも、導入ステップにおいて流量F1よりも大きい流量F2で被処理水20を導入することができるため、処理槽2内の水を効率よく入れ替えることができる。
【0033】
なお、処理後の水の用途(生活用水、飲料水等)によって目標とする殺菌率は異なり、衝撃印加の回数を増やすことにより殺菌率は高くなる。処理槽2内の被処理水20に対して衝撃印加回数を増やすためには、排出ステップと導入ステップによって入れ替えられる水の量を減らし、同じ水に対して何度も衝撃が印加されるようにすればよい。
【0034】
以上のように、実施の形態1における水処理装置1及び水処理方法によれば、衝撃印加機構6によって蓋体5に衝撃を印加し処理槽2に貯留された被処理水20に殺菌を行うとともに蓋体5を上下移動させ、この蓋体5の上下移動に連動して水圧弁7を開閉させることにより、処理槽2内の処理後の水の排出と、処理槽2内への被処理水20の導入を行うことが可能である。このため、ポンプ等を用いることなく処理槽2内の水を入れ替えることができる。
【0035】
また、処理槽2、蓋体5、及び水圧弁7は、非常に簡易な構成であり故障し難いため、部品交換等も殆ど必要なく、薬剤または微細な膜等を使用した従来の水処理装置に比べて管理及びメンテナンスが容易である。
【0036】
また、衝撃印加機構6が蓋体5の上下駆動機構を兼ねているため、部品点数の増加が抑制されるとともにエネルギの省力化が可能である。さらに、衝撃印加機構6を水力、風力、または太陽エネルギ等の自然エネルギによって駆動することにより、送電網が整備されていない地域でも使用することができる。これらのことから、実施の形態1によれば、省エネルギで駆動可能であり、簡易な構成で故障し難く、管理及びメンテナンスが容易な水処理装置1が得られる。
【0037】
実施の形態2.
図3は、実施の形態2に係る水処理装置の構成を示す概略断面図、図4は実施の形態2に係る水処理装置の動作を説明する図である。実施の形態2における水処理装置1Aは、処理槽2の側面に設けられた導水流路32を開閉する逆流防止弁8を備えている。逆流防止弁8は、蓋体5が衝撃印加機構6によって下方に移動される際に導水流路32を閉じ、蓋体5が衝撃印加機構6によって上方に移動される際に導水流路32を開く。その他の構成については上記実施の形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0038】
水処理装置1Aの逆流防止弁8は、水圧弁7と同様に板材81とヒンジ82とで構成され、導水口3が形成された処理槽2の側面の内壁に取り付けられる。板材81は、ヒンジ82のピンを支柱として開閉され、その開閉は処理槽2内に生じた水圧(水流)に依存している。具体的には、蓋体5が衝撃印加機構6によって下方に移動される際の水圧によって逆流防止弁8が「閉」となり、導水流路32を閉じる。また、蓋体5が衝撃印加機構6によって上方に移動される際の水圧の低下によって「開」となり、導水流路32を開く。
【0039】
実施の形態2による水処理方法、すなわち水処理装置1Aの動作について、図4(a)から図4(c)を用いて簡単に説明する。まず、被処理水20を、導水配管31及び導水口3を介して処理槽2内に導入し、蓋体5の下面5bに接触するまで貯留する(準備ステップ)。この準備ステップでは、水圧弁7は閉じ、逆流防止弁8は開いている。
【0040】
次に、図4(a)に示すように、処理槽2内の被処理水20が蓋体5の下面5bに接触している状態で、ピストン61を上方から落下させることにより蓋体5の上面5aに衝撃を印加し、被処理水20に殺菌を行う(衝撃印加ステップ)。
【0041】
蓋体5に衝撃が印加された後、図4(b)に示すように、ピストン61の重量によって蓋体5が下方に移動する。これにより、処理槽2内に水流が生じるため水圧弁7が開き、図中矢印Aで示すように排水配管41から処理後の水が排出される(排出ステップ)。また、この時の水圧によって逆流防止弁8が閉じるため、導水配管31からは処理後の水が排出されない。
【0042】
続いて、図4(c)に示すように、ピストン61が上方に引き上げられると、蓋体5も上方へ移動する。これにより、処理槽2内の水圧が低くなり水圧弁7が閉じる。また、処理槽2内の水圧が低くなることにより逆流防止弁8が開き、導水配管31から例えば流量F2で被処理水20が引き込まれ、処理槽2内に被処理水20が導入される(導入ステップ)。
実施の形態2によれば、上記実施の形態1と同様の効果に加え、逆流防止弁8を備えることにより処理後の水の逆流を防止することができ、水処理の効率が向上する。
【0043】
実施の形態3.
図5及び図6は、実施の形態3に係る水処理装置の逆流防止弁の構成を示している。なお、図5及び図6では、衝撃印加機構6を省略している。実施の形態3における水処理装置1B、1Cは、導水配管31に逆流防止弁8、8Aが取り付けられている。その他の構成及び動作については上記実施の形態1及び2と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0044】
上記実施の形態2では、円筒状の処理槽2の側面の内壁に逆流防止弁8を取り付けているが、側面の内壁は平面でないため逆流防止弁8を取り付けるための加工が必要である。例えば導水口3の周囲の内壁に凹部または凸部を設け、逆流防止弁8を取り付けるための平面を形成する加工を行う。これに対し、図5に示す水処理装置1Bのように、逆流防止弁8を導水配管31の途中に取り付けることは容易である。
【0045】
また、図6に示す水処理装置1Cは、逆流防止弁8Aとして、電気をオン、オフすることにより開閉する電磁弁を用いている。一般的な電磁弁は、電気エネルギを機械運動に変換するソレノイド部と、流路の開閉を行う弁体と弁座から構成される弁部を備えている。逆流防止弁8Aは、衝撃印加機構6の動作に同期して開閉するよう制御され、蓋体5に衝撃が印加された時に導水流路を閉じ、蓋体5が引き上げられる時に導水流路を開く。
実施の形態3によれば、上記実施の形態1及び2と同様の効果に加え、上記実施の形態2よりも容易に逆流防止弁8、8Aを取り付けることができる。
【0046】
実施の形態4.
図7は、実施の形態4に係る水処理装置の動作を説明する図である。実施の形態4による水処理装置1Dは、蓋体5と一体に形成された逆流防止弁52を備えている。その他の構成については上記実施の形態1と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0047】
実施の形態4による水処理方法、すなわち水処理装置1Dの動作について、図7(a)から図7(c)を用いて簡単に説明する。まず、被処理水20を、導水配管31及び導水口3を介して処理槽2内に導入し、蓋体5の下面5bに接触するまで貯留する(準備ステップ)。この準備ステップでは、水圧弁7は閉じ、逆流防止弁52は開いている。
【0048】
次に、図7(a)に示すように、処理槽2内の被処理水20が蓋体5の下面5bに接触している状態で、ピストン61を上方から落下させることにより蓋体5の上面5aに衝撃を印加し、被処理水20に殺菌を行う(衝撃印加ステップ)。
【0049】
蓋体5に衝撃が印加された後、図7(b)に示すように、ピストン61の重量によって蓋体5が下方に移動する。これにより、処理槽2内に水流が生じるため水圧弁7が開き、図中矢印Aで示すように排水配管41から処理後の水が排出される(排出ステップ)。
【0050】
また、蓋体5の下方への移動に伴って逆流防止弁52がシャッターのように下降して導水口3を塞ぐため、導水配管31への処理後の水の逆流を防止することができる。ただし、逆流防止弁52が導水口3を塞ぐ速度は蓋体5の移動速度と同じであるため、処理後の水の逆流を完全に防止するものではない。
【0051】
続いて、図7(c)に示すように、ピストン61が上方に引き上げられると、蓋体5も上方へ移動する。これにより、処理槽2内の水圧が低くなり水圧弁7が閉じる。また、蓋体5が上方に移動することにより逆流防止弁52がシャッターのように上昇し、導水配管31から例えば流量F2で被処理水20が引き込まれ、処理槽2内に被処理水20が導入される(導入ステップ)。
【0052】
実施の形態4によれば、上記実施の形態1及び2と同様の効果に加え、蓋体5と一体形成された逆流防止弁52を備えることにより、さらに簡単な構成で部品点数を増やすことなく処理後の水の逆流を抑制することができる。
【0053】
実施の形態5.
図8は、実施の形態5に係る水処理装置の構成を示す概略断面図、図9及び図10は、実施の形態5に係る水処理装置の変形例を示す概略断面図である。なお、図8から図10では、衝撃印加機構6を省略している。実施の形態5における水処理装置1E、1F、1Gの処理槽2は、排水口4が導水口3よりも高い位置に配置されている。その他の構成及び動作については上記実施の形態1及び2と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0054】
図8から図10に示す水処理装置1E、1F、1Gでは、導水口3を排水口4よりも低い位置に配置している。このような構成とすることにより、被処理水20である溜め池等の水を高低差によって処理槽2内に導入する際に、高低差が大きくなるため有利である。また、排水口4を導水口3よりも高い位置に配置することにより、被処理水20に汚泥等の固形物が含まれている場合に、処理後の水の上澄みを排水配管41から排出することができる。
【0055】
また、図9に示す水処理装置1Fは、排水配管41の管径を導水配管31の菅径よりも小さくしている。このような構成とすることにより、排水配管41内の圧力が大きくなり、排出ステップ(図4(b)参照)において排出される処理後の水の流量が増加する。排水配管41内を流れる水の流量は、排水配管41内の圧力の平方根に比例する。
【0056】
また、図10に示す水処理装置1Gは、排水配管41の一部が鉛直方向において蓋体5の下面5bよりも高い位置に配置されている。このような構成とすることにより、準備ステップにおいて被処理水20を蓋体5の下面5bまで充填し易くなる。
実施の形態5によれば、上記実施の形態1及び2と同様の効果に加え、排水口4を導水口3よりも高い位置に配置することにより、処理槽2内に被処理水20を充填し易くなる効果を奏する。
【0057】
実施の形態6.
図11及び図12は、実施の形態6に係る水処理装置の構成を示す概略断面図である。なお、図11及び図12では、衝撃印加機構6を省略している。実施の形態6では、複数の水処理装置を備え、各々の処理槽が直列に接続された例について説明する。その他の構成及び動作については上記実施の形態1及び2と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0058】
図11に示す例は、上記実施の形態5による水処理装置1G(図10参照)を二つ接続したものである。前段の水処理装置1G−1の処理槽2には、導水配管31及び導水口3を介して被処理水20が導入され貯留される。前段の水処理装置1G−1の排水口4と後段の水処理装置1G−2の導水口3は、接続配管9によって接続される。接続配管9の一部は鉛直方向において蓋体5の下面5bよりも高い位置に配置されている。
【0059】
水処理装置1G−1で殺菌された処理後の水は、被処理水として水処理装置1G−2に導入され、水処理装置1G−2において殺菌が行われる。これにより、水処理装置1G−2から排出される水は、水処理装置1G−1から排出される水よりも殺菌率が高くなる。各々の処理槽2は逆流防止弁8を備えているため、処理後の水の逆流を防止することができる。
【0060】
また、図12に示す例は、3つの水処理装置1H−1、1H−2、1H−3を接続したものである。水処理装置1H−1、1H−2は、弁11を含む固形物排出部10を有しており、弁11を開けることにより処理槽2の底部2bに沈殿した汚泥、藻類等の固形物を排出することができる。
【0061】
また、各処理槽2を結ぶ接続配管9が、処理槽2の側面の高い位置に配置されているため、処理後の水の上澄みを次の処理槽2または外部に排出することができる。このような構成は、被処理水20が固形物を多く含む場合、及び被処理水20の濁度が大きい場合等に好適である。また、接続配管9が直管であるため、図11に示す例よりも省スペース化が図られる。
実施の形態6によれば、上記実施の形態1及び2と同様の効果に加え、複数の水処理装置を備えることにより、さらに高い殺菌効果を実現することが可能である。
【0062】
本開示は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0063】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1G−1、1G−2、1H−1、1H−2、1H−3 水処理装置、2 処理槽、2a 開口部、2b 底部、3 導水口、4 排水口、5 蓋体、5a 上面、5b 下面、6 衝撃印加機構、7 水圧弁、8、8A、52 逆流防止弁、9 接続配管、10 固形物排出部、11 弁、20 被処理水、21 微小気泡、22 第1の衝撃波、31 導水配管、32 導水流路、41 排水配管、42 排水流路、51 Oリング、61 ピストン、62 ワイヤ、71 板材、72 ヒンジ、81 板材、82 ヒンジ
【要約】
水処理装置(1)は、衝撃印加機構(6)によって蓋体(5)に衝撃を印加し、処理槽(2)に貯留された被処理水(20)に殺菌を行うとともに蓋体部材(5)を上下移動させる。蓋体部材(5)の上下移動に連動して水圧弁(7)が開閉し、処理槽(2)内の処理後の水の排出と、処理槽(2)内への被処理水(20)の導入とを行うことができる。処理槽(2)、蓋体(5)、及び水圧弁(7)は、簡易な構成で故障し難いため、部品交換等も殆ど必要なく、管理及びメンテナンスが容易である。また、衝撃印加機構(6)が蓋体(5)の上下駆動機構を兼ねているため、部品点数の増加が抑制されるとともにエネルギの省力化が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12