【文献】
Brain Res. (2013) vol.1511, p.153-163
【文献】
Brain Res. (1991) vol.547, p.152-161
【文献】
J. Clin. Invest. (2014) vol.124, issue 7, p.2858-2860
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記前部運動視床、淡蒼球外節(GPe)、または視床下核(STN)のニューロンに興奮性DREADDをトランスフェクトすることが、Gq−DREADD遺伝子、Gs−DREADD遺伝子、またはこれらの両方を含むAAVウイルスベクターを注入することである、請求項1に記載の組成物。
前記淡蒼球内節(GPi)におけるニューロン活動を抑制することと、前記前部運動視床、淡蒼球外節(GPe)または視床下核(STN)におけるニューロン活動を亢進することとが同時に行われる、請求項1に記載の組成物。
前記抑制性DREADDを活性化すること、前記興奮性DREADDを活性化すること、またはその両方が、前記GPiニューロン、前部運動視床ニューロン、GPeニューロン、STNニューロン、またはこれらの任意の組み合わせをCNOと接触させることである、請求項1に記載の組成物。
【背景技術】
【0002】
合成リガンドによって、または光によって活性化される操作された受容体を用いたいくつかの新規な手法が、ニューロンの活動の正確な実験的操作を可能とする脳研究の新しい時代を切り拓いた。これらの技術は、現在、複雑な行動への個別の脳回路の関与を調べるために使用されている(Ferguson and Neumaier, 2012)。
【0003】
こうした手法の1つに、デザイナー薬物のみによって活性化されるデザイナー受容体(designer receptors exclusively activated by designer drugs)(DREADD)を用いることで細胞機能を調節するものがある(Rogan and Roth, 2011)。この進歩したムスカリン受容体のファミリーは、通常であれば不活性の合成リガンドであるクロザピン−n−オキシドの投与後に細胞活性を高める(Gs−DREADD、Gq−DREADD)かまたは低下させる(Gi/o−DREADD)ことが示されている(Armbruster et al, 2007)。ウイルスベクターに封入するか、または遺伝子導入マウスモデルで発現させることで、これらのツールによって、細胞活性を所定の空間的および時間的に制御することが可能である。例えば、Gq−DREADD受容体による海馬ニューロンの活性化はガンマリズムを増幅し、マウスの自発運動量および常同を高める(Alexander et al, 2009)。膵臓β細胞でGs−DREADDまたはGq−DREADD受容体を発現および活性化させることでインスリンの放出が増大し、これらの受容体を繰り返し活性化することでβ細胞の肥大につながることから、DREADD受容体によって非ニューロン細胞の活性を制御することも可能である(Guettier et al, 2009)。
【0004】
DREADDはムスカリン受容体の突然変異体である。A:DREADDは、ムスカリン受容体の第3および第5の膜貫通領域の点突然変異により形成される(hM3のY149CおよびA239G)。更に、Gs共役型DREADDは、M3ムスカリン受容体の細胞内ループの代わりにβ1−ARの第2および第3の細胞内ループを有している。B:ヒト肺動脈平滑筋細胞では、hM3Dq受容体(hM3D)はAchではなくCNOにより選択的に活性化され、PIP2加水分解が起きる。逆に、野生型M3ムスカリン受容体(hM3)は、CNOではなくAChにより強く活性化される(Armbruster et al., 2007)。
【0005】
DREADD受容体技術を細胞特異的に用いることによって、薬物中毒および強迫性障害のような神経精神疾患における線条体回路の役割が解明された。神経ペプチドプロモーター(ダイノルフィンまたはエンケファリン)を用いたウイルスベクターを使用して、線条体の特定の細胞集団を標的としてDREADD受容体を発現させることが行われていた(それぞれ線条体黒質ニューロンと線条体淡蒼球ニューロン)。アンフェタミンに繰り返し曝露されたラットの線条体淡蒼球ニューロンの一時的な活動低下によって行動感作の形成が促進されるのに対して、線条体黒質ニューロンの活動を阻害することでこの現象の持続性が損なわれることを示す結果がある(Ferguson et al, 2011)。したがって、これらの知見は、線条体黒質ニューロンと線条体淡蒼球ニューロンとは、薬物経験依存的な行動可塑性の調節において重要かつ拮抗する役割を有することを明らかに示すものである。
【0006】
DREADDは、グリア細胞の活動を制御して自律神経系を調節するためにも使用されている(Agulhon et al., 2013)。末梢では、DREADDは、膵臓β細胞(Guettier et al., 2009)、肝細胞(Li et al., 2013)および乳癌細胞(Yagi et al., 2011)におけるGPCRシグナル伝達を制御するために使用されている。
【0007】
運動低下疾患または運動低下症とは、身体運動量の低下のことを指す。運動低下症は、大脳基底核の障害による筋運動の部分的または完全な喪失によって特徴付けられる。パーキンソン病(PD)などの運動低下疾患を有する患者は、筋強剛および運動不能を経験する。運動低下疾患は、他の疾患の中でも、病気による精神衛生疾患および長期の活動不能もともなう。
【0008】
運動亢進性疾患または運動亢進症(hyperkinesias)(またはhyperkinesis)とは、過剰な異常運動、過剰な正常運動、または両者の組み合わせを生じうる筋肉活動の増大のことを指す。運動亢進症は、ハンチントン病などの、運動動作を制御する能力に影響を及ぼす広範な疾患で見られる過剰な不穏状態である。多くの運動過剰は、大脳基底核/視床皮質回路の不適切な調節の結果として生じる。多くの場合、運動亢進症は、筋緊張の低下である緊張低下をともなっている。多くの運動亢進性疾患は本質的に心因性のものであり、一般的に小児期に顕著である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】正常コントロールマウス(コントロール)および6OHDAで誘発させた片側PDを有するマウス(6OHDA)に対するCNOの効果を示す棒グラフである。盲検下でのCNO投与の効果を、5分間の運動活動性試験における時計回りの回転の回数および割合(%)(AおよびB)、運動活動性試験における平均速度(C)、ならびにロータロッド試験において回転ロッド上にマウスが乗っていた平均時間(D)の3つの行動パラメータについてNSと比較した。CNOは、これらの行動パラメータのいずれにも有意な効果を示さなかった。
【
図2】GPi(EP)およびSNrにおける一側性のGi−DREADDの効果、すなわち、6OHDAで誘発させた片側PDを有し、EPおよびSNr核でGi−DREADDを発現しているマウスに対するCNOの効果を示す棒グラフである。盲検下でのCNO投与の効果を、5分間の運動活動性試験における時計回りの回転の回数および割合(%)(AおよびB)、運動活動性試験における平均速度(C)、ならびにロータロッド試験において回転ロッド上にマウスが乗っていた平均時間(D)の3つの行動パラメータについてNSと比較した。検討したすべての行動パラメータについてCNOの有益な効果がみられた。
**p<0.01
【
図3】GPi(EP)およびSNrにおける両側性のGi−DREADDの効果、すなわち、EPおよびSNr核の両方でGi−DREADDを発現している、6OHDAで誘発させた両側PDに対するCNOの効果を示す棒グラフである。盲検下でのCNO投与の効果を、運動活動性試験における平均速度(A)、およびロータロッド試験において回転ロッド上にマウスが乗っていた平均時間(B)の2つの行動パラメータについてNSと比較した。平均速度およびロータロッド試験の両方でCNOの有益な効果がみられた。
**p<0.01
【
図4】GPeにおける一側性のGi−DREADDの効果、すなわち、GPe核でGq−DREADDを発現している、6OHDAで誘発させた片側PDに対するCNOの効果を示す棒グラフである。盲検下でのCNO投与の効果を、5分間の運動活動性試験における時計回りの回転の回数および割合(%)(AおよびB)、運動活動性試験における平均速度(C)、ならびにロータロッド試験において回転ロッド上にマウスが乗っていた平均時間(D)の3つの行動パラメータについてNSと比較した。検討したすべての行動パラメータについてCNOの有益な効果がみられた。
**p<0.01
【
図5】GPeにおける両側性のGq−DREADDの効果、すなわち、両方のGPe核でGq−DREADDを発現している、6OHDAで誘発させた両側PDに対するCNOの効果を示す棒グラフである。盲検下でのCNO投与の効果を、運動活動性試験における平均速度(A)、およびロータロッド試験において回転ロッド上にマウスが乗っていた平均時間(B)の2つの行動パラメータについてNSと比較した。平均速度およびロータロッド試験の両方でCNOの有益な効果がみられた。
**p<0.01
【
図6】STNにおける一側性のGq−DREADDの効果、すなわち、STN核でGq−DREADDを発現している、6OHDAで誘発させた片側PDに対するCNOの効果を示す棒グラフである。盲検下でのCNO投与の効果を、5分間の運動活動性試験における時計回りの回転の回数および割合(%)(AおよびB)、運動活動性試験における平均速度(C)、ならびにロータロッド試験において回転ロッド上にマウスが乗っていた平均時間(D)の3つの行動パラメータについてNSと比較した。反転および平均速度に対するCNOの有益な効果がみられたが、ロータロッド試験ではみられなかった。
**p<0.01
【
図7】STNにおける両側性のGq−DREADDの効果、すなわち、両方のSTN核でGq−DREADDを発現している、6OHDAで誘発させた両側PDに対するCNOの効果を示す棒グラフである。盲検下でのCNO投与の効果を、運動活動性試験における平均速度(A)、およびロータロッド試験において回転ロッド上にマウスが乗っていた平均時間(B)の2つの行動パラメータについてNSと比較した。平均速度およびロータロッド試験の両方でCNOの有益な効果がみられた。
**p<0.01
【
図8A】異なる核、すなわち、EPおよびSNr核におけるGi、GPe核におけるGq、STNにおけるGq、両方のSTN核におけるGq(上の2つのパネル)、STNにおけるGi、腹側視床におけるGqでDREADDを発現している、6OHDAで誘発させた実験用PDのマウス、コントロールマウス、および6OHDAで誘発させた片側PDのマウスに対するCNOの効果をまとめて示す棒グラフである。CNOおよびNS(CNO/NS)の相対的な効果を、運動活動性試験における平均速度(A)、ロータロッド試験において回転ロッド上にマウスが乗っていた平均時間(B)、および5分間の運動活動性試験における時計回りの回転の低下率(%)の3つの行動パラメータについて示す。
**p<0.01
【
図8B】異なる核、すなわち、EPおよびSNr核におけるGi、GPe核におけるGq、STNにおけるGq、両方のSTN核におけるGq(上の2つのパネル)、STNにおけるGi、腹側視床におけるGqでDREADDを発現している、6OHDAで誘発させた実験用PDのマウス、コントロールマウス、および6OHDAで誘発させた片側PDのマウスに対するCNOの効果をまとめて示す棒グラフである。CNOおよびNS(CNO/NS)の相対的な効果を、運動活動性試験における平均速度(A)、ロータロッド試験において回転ロッド上にマウスが乗っていた平均時間(B)、および5分間の運動活動性試験における時計回りの回転の低下率(%)の3つの行動パラメータについて示す。
**p<0.01
【
図8C】異なる核、すなわち、EPおよびSNr核におけるGi、GPe核におけるGq、STNにおけるGq、両方のSTN核におけるGq(上の2つのパネル)、STNにおけるGi、腹側視床におけるGqでDREADDを発現している、6OHDAで誘発させた実験用PDのマウス、コントロールマウス、および6OHDAで誘発させた片側PDのマウスに対するCNOの効果をまとめて示す棒グラフである。CNOおよびNS(CNO/NS)の相対的な効果を、運動活動性試験における平均速度(A)、ロータロッド試験において回転ロッド上にマウスが乗っていた平均時間(B)、および5分間の運動活動性試験における時計回りの回転の低下率(%)の3つの行動パラメータについて示す。
**p<0.01
【
図9】GPi(EP)およびSNrにおける一側性のGi−DREADDの連続5日間の活性化、すなわち、6OHDAで誘発させたPDマウスのGPeにおけるGq−DREADDの5日間の活性化による間接路の抑制を示す棒グラフである。オープンフィールド試験およびロータロッド試験を、GPe核で一側性にGq−DREADDを発現している6OHDAで処理したPDマウスに生理食塩水(NS)およびCNOを5日間投与する間に行った。NSおよびCNOで処理した一側性PDマウス(n=6)における運動速度(A)、ロータロッドスコア(B)、ならびに時計回りの回転の回数(C)および割合(%)(D)の平均(平均±SEM)。**p<0.01
【
図10】GPeにおける一側性のGq−DREADDの連続5日間の活性化、すなわち、6OHDAで誘発させたPDマウスの出力大脳基底核の活動の5日間の抑制を示す棒グラフである。オープンフィールド試験およびロータロッド試験を、GPiおよびSNR核で一側性にGi−DREADDを発現している6OHDAで処理したPDマウスに生理食塩水(NS)およびCNOを5日間投与する間に行った。NSおよびCNOで処理した一側性PDマウス(n=6)における運動速度(A)、ロータロッドスコア(B)、ならびに時計回りの回転の回数(C)および割合(%)(D)の平均(平均±SEM)。**p<0.01
【
図11】EP(GPi)およびSNrにおけるGi−DREADDと、GPeおよびSNrにおけるGq−DREADDとを同時に一側性で、すなわち、6OHDAで誘発させたPDマウスの大脳基底核内の3つの標的を連続して5日間同時に操作した場合を示す棒グラフである。オープンフィールド試験およびロータロッド試験を、GPiおよびSNr核でGi−DREADDを、GPe核でGq−DREADDを、STN核でGq−DREADDを一側性に発現している6OHDAで処理したPDマウスに生理食塩水(NS)およびCNOを5日間投与する間に行った。NSおよびCNOで処理した一側性PDマウス(n=6)における運動速度(A)、ロータロッドスコア(B)、ならびに時計回りの回転の回数(C)および割合(%)(D)の平均(平均±SEM)。**p<0.01
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、一実施形態において、淡蒼球内節(GPi)、淡蒼球外節(GPe)、前部運動視床、視床下核(STN)、またはこれらの任意の組み合わせにおけるニューロン活動に影響を及ぼすことによって、身体運動量の調節を要する対象における身体運動量を調節する方法を提供する。一実施形態では、運動機能を制限する神経性またはCNS疾患に罹患した対象における運動遂行能および/または運動機能を改善するための方法が提供される。一実施形態では、解剖学的に間接路(GPe核)を標的化して調節することにより、運動機能を制限する神経性またはCNS疾患に罹患した対象における運動遂行能および/または運動機能を改善するための方法が提供される。
【0019】
一実施形態では、Gq−DREADDによりSTNの活動を亢進することにより、片側および両側の実験用PDの両方で実証されているように、ニューロン性運動低下疾患に罹患した対象における運動活動の運動遂行能が回復および/または有意に改善される。一実施形態では、GPeおよびSTNの両方の活性化によって、GPeがSTNを阻害することから、同じ行動的治療成績が得られることが予期せずして見出された。一実施形態では、GPeおよびSTNの両方の活性化によって、例えばPDなどの(ただしPDに限定されない)ニューロン性運動低下疾患に罹患した対象の運動遂行能の有意な改善がみられることが予期せずして見出された。一実施形態では、大脳基底核複合体内の3つの標的、すなわち、間接路核GPe、出力核であるGPiおよびSNr、ならびにSTNのDREADDによる調節により、例えばPDなどの(ただしPDに限定されない)ニューロン性運動低下疾患に罹患した対象における運動遂行能の有意な改善が生じることが予期せずして見出された。
【0020】
一実施形態では、本明細書において、大脳基底核複合体内の3つの標的、すなわち、間接路核GPe、出力核であるGPiおよびSNr、ならびにSTNのDREADDによる調節により、ニューロン性運動低下疾患(例えばPD)に罹患した対象における運動遂行能を有意に改善するための方法が提供される。
【0021】
別の実施形態では、「調節する」なる用語は、変化させることである。別の実施形態では、「調節する」なる用語は、活性化する、亢進させる、回復させる、改善する、またはこれらの任意の組み合わせのことである。別の実施形態では、「調節する」なる用語は、阻害することである。別の実施形態では、「調節する」なる用語は、増大させることである。別の実施形態では、「調節する」なる用語は、誘導することである。別の実施形態では、「調節する」なる用語は、上昇させることである。別の実施形態では、「調節する」なる用語は、低減することである。別の実施形態では、「調節する」なる用語は、差次的に活性化することである。別の実施形態では、「調節する」なる用語は、減少させることである。別の実施形態では、「調節する」なる用語は、差次的に阻害することである。
【0022】
別の実施形態では、「身体運動量を調節する」とは、少なくとも1つの運動の頻度を調節することである。別の実施形態では、「身体運動量を調節する」とは、少なくとも1つの運動の振幅を調節することである。
【0023】
一実施形態において、本発明は、ニューロン性運動低下疾患または障害に罹患した対象を治療するための方法であって、a.淡蒼球内節(GPi)のニューロン活動を抑制することと、b.前部運動視床、淡蒼球外節(GPe)、視床下核(STN)のニューロン活動を亢進することと、を含み、ニューロン活動を抑制することが、GPiニューロンに抑制性DREADDをトランスフェクトすることと、抑制性DREADDを活性化することとを含み、ニューロン活動を亢進することが前部運動視床、淡蒼球外節(GPe)、または視床下核(STN)のニューロンに興奮性DREADDをトランスフェクトすることと、興奮性DREADDを活性化することとを含み、これにより、ニューロン性運動低下疾患または障害に罹患した対象を治療する、方法を提供する。
【0024】
別の実施形態では、DREADD、抑制性DREADD、興奮性DREADD、またはこれらの任意の組み合わせは、Gαq(Gq)シグナル伝達と共役し、ニューロンの発射を誘発するhM3Dq、Gαiシグナル伝達と共役し、ニューロン性およびシナプス性サイレンシングを媒介するhM4Di、およびGαsシグナル伝達と共役し、ニューロン活動を調節するrM3Dsである。別の実施形態では、抑制性DREADDは、Gαi(Gi)シグナル伝達と共役し、ニューロン性およびシナプス性サイレンシングを媒介するhM4Diである。別の実施形態では、興奮性DREADDは、Gαq(Gs)シグナル伝達と共役するhM3Dqである。別の実施形態では、興奮性DREADDは、Gαsシグナル伝達と共役するrM3Dsである。
【0025】
別の実施形態では、本明細書に述べられるDREADDは、ニューロン性標的組織または細胞で発現させるためのベクターにより運ばれる。別の実施形態では、本明細書に述べられるDREADDは、ニューロン性標的組織または細胞で発現させるためのウイルスベクターにより運ばれる。別の実施形態では、ウイルスベクターにより運ばれたDREADDは、4〜31日以内にニューロン性標的組織または細胞で充分に発現する。別の実施形態では、ウイルスベクターにより運ばれたDREADDは、7〜25日以内にニューロン性標的組織または細胞で充分に発現する。別の実施形態では、ウイルスベクターにより運ばれたDREADDは、10〜25日以内にニューロン性標的組織または細胞で充分に発現する。別の実施形態では、ウイルスベクターにより運ばれたDREADDは、7〜21日以内にニューロン性標的組織または細胞で充分に発現する。
【0026】
別の実施形態では、本明細書に述べられるすべてのDREADDは、CNOにより活性化される。別の実施形態では、本明細書に述べられるすべてのDREADDは非経口投与により投与されるCNOにより活性化される。別の実施形態では、本明細書に述べられるすべてのDREADDは経口投与により投与されるCNOにより活性化される。
【0027】
別の実施形態では、DREADDは、クロザピン−N−オキシド(CNO)により活性化される。別の実施形態では、DREADDは、0.1〜20mg/kgの用量のクロザピン−N−オキシド(CNO)により活性化される。別の実施形態では、DREADDは、1〜5mg/kgの用量のクロザピン−N−オキシド(CNO)により活性化される。
【0028】
別の実施形態では、本発明は、GPiニューロンに抑制性DREADDをトランスフェクトすることが、Gi−DREADD遺伝子をGPiニューロンと接触させることであることを規定する。別の実施形態では、本発明は、GPiニューロンに抑制性DREADDをトランスフェクトすることが、Gi−DREADD遺伝子を含むAAVウイルスベクターを注入することであることを規定する。別の実施形態では、本発明は、前部運動視床、および/または視床下核(STN)、および/または淡蒼球外節(GPe)のニューロンに興奮性DREADDをトランスフェクトすることが、Gq−DREADD遺伝子、Gs−DREADD遺伝子、またはこれらの両方を含むAAVウイルスベクターを注入することを含むことを規定する。
【0029】
別の実施形態では、本発明は、前部運動視床のニューロンに興奮性DREADDをトランスフェクトすることが、Gq−DREADD遺伝子、Gs−DREADD遺伝子、またはこれらの両方を含むAAVウイルスベクターを、前部運動視床のニューロンと接触させることを含むことを規定する。別の実施形態では、本発明は、視床下核のニューロンに興奮性DREADDをトランスフェクトすることが、Gq−DREADD遺伝子、Gs−DREADD遺伝子、またはこれらの両方を含むAAVウイルスベクターを、視床下核のニューロンと接触させることを含むことを規定する。別の実施形態では、本発明は、GPeのニューロンに興奮性DREADDをトランスフェクトすることが、Gq−DREADD遺伝子、Gs−DREADD遺伝子、またはこれらの両方を含むAAVウイルスベクターを、GPeのニューロンと接触させることを含むことを規定する。別の実施形態では、AAVウイルスベクターを接触させることは、AAVウイルスベクターを本明細書に述べられるニューロン部位に注入することを含む。別の実施形態では、AAVウイルスベクターを接触させることは、AAVウイルスベクターを本明細書に述べられるニューロンに注入することを含む。
【0030】
別の実施形態では、本発明は、淡蒼球内節(GPi)のニューロン活動を抑制することと、前部運動視床および/または淡蒼球外節(GPe)および/または視床下核(STN)のニューロン活動を亢進することとが同時に行われることを規定する。別の実施形態では、本発明は、CNOの投与が、淡蒼球内節(GPi)のニューロン活動を抑制し、前部運動視床および/または視床下核(STN)および/または淡蒼球外節(GPe)のニューロン活動を一度におよび/または同時に亢進することを規定する。別の実施形態では、本発明は、抑制性DREADDを活性化すること、および興奮性DREADDを活性化することが、これに限定されないがCNOなどの単一のリガンドによって実現されることを規定する。別の実施形態では、本発明は、抑制性DREADDを活性化することが第1のリガンドによって実現され、興奮性DREADDを活性化することが第2のリガンドによって実現されることを規定する。別の実施形態では、第1のリガンドと第2のリガンドとは交差反応しない。
【0031】
別の実施形態では、抑制性DREADDを活性化すること、興奮性DREADDを活性化すること、またはその両方は、DREADDを発現しているGPiニューロン、DREADDを発現している前部運動視床ニューロン、DREADDを発現しているSTNニューロン、DREADDを発現しているGPeニューロン、またはこれらの任意の組み合わせをCNOと接触させることである。
【0032】
一実施形態では、Gq−DREADDによりSTNの活動を亢進することにより、片側および両側の実験用PDの両方の運動遂行能が回復および/または有意に改善される。一実施形態では、GPeおよびSTNの活性化によって、GPeがSTNを阻害することから、同じ行動的治療成績が得られることが予期せずして見出された。一実施形態では、GPeおよびSTNの活性化によって、PDにおける運動遂行能が有意に改善されることが予期せずして見出された。一実施形態では、大脳基底核複合体内の3つの標的、すなわち、間接路核GPe、出力核であるGPiおよびSNr、ならびにSTNのDREADDによる調節により、PDマウスにおける運動遂行能の有意な改善が生じることが予期せずして見出された。
【0033】
一実施形態では、間接路核GPe、出力核であるGPiおよびSNr、ならびにSTNのDREADDによる調節により、上記に述べたような疾患に罹患した対象における運動機能が改善および/または回復する。
【0034】
別の実施形態では、運動低下疾患または障害に罹患した対象を治療することは、対象の運動活動性を改善することである。別の実施形態では、運動低下疾患は、心血管疾患である。別の実施形態では、運動低下疾患は、癌の一形態である。別の実施形態では、運動低下疾患は、背部痛をともなう。別の実施形態では、運動低下疾患は、背部から生じる機能障害をともなう。別の実施形態では、運動低下疾患は、肥満症である。別の実施形態では、運動低下疾患は、2型糖尿病である。別の実施形態では、運動低下疾患は、骨粗鬆症である。別の実施形態では、運動低下疾患は、変形性関節症である。別の実施形態では、運動低下疾患は、精神疾患をともなう。別の実施形態では、運動低下疾患は、高血圧である。
【0035】
別の実施形態では、運動低下疾患に罹患した対象は、運動低下症または運動活動性の低下に罹患している。別の実施形態では、運動低下疾患に罹患した対象は、大脳基底核の損傷を有する。
【0036】
別の実施形態では、運動低下疾患に罹患した対象は、大脳基底核の破壊による筋運動の部分的喪失を有する。別の実施形態では、運動低下疾患に罹患した対象は、大脳基底核の破壊による筋運動の完全な喪失を有する。別の実施形態では、運動低下疾患に罹患した対象は、パーキンソン病(PD)に罹患している。別の実施形態では、運動低下疾患に罹患した対象は、筋強剛および運動不能を経験している。
【0037】
別の実施形態では、運動低下疾患に罹患した対象は、アキネジアまたはパーキンソン病の重症例を有する。別の実施形態では、運動低下疾患に罹患した対象は、動作緩徐または「ストーンフェイス」(無表情)を有する。別の実施形態では、運動低下疾患に罹患した対象は、構音障害を有する。別の実施形態では、運動低下疾患に罹患した対象は、ジスキネジアを有する。別の実施形態では、運動低下疾患に罹患した対象は、ジストニアを有する。別の実施形態では、運動低下疾患に罹患した対象は、いずれの所望の方向にも筋肉を動かすことができないことにより特徴付けられるフリージングを有する。別の実施形態では、運動低下疾患に罹患した対象は、神経遮断薬悪性症候群を有する。別の実施形態では、運動低下疾患に罹患した対象は、核上性麻痺を有する。別の実施形態では、運動低下疾患に罹患した対象は、筋緊張の増大を有する。別の実施形態では、運動低下疾患に罹患した対象は、「歯車様」硬直を有する。別の実施形態では、運動低下疾患に罹患した対象は、「鉛管様」硬直を有する。別の実施形態では、運動低下疾患に罹患した対象は、姿勢動揺を有する。
【0038】
別の実施形態では、「治療する」とは、筋強剛を低下させることである。別の実施形態では、「治療する」とは、筋強剛を低下させることである。別の実施形態では、「治療する」とは、少なくとも1つの肢の運動範囲を増大させることである。別の実施形態では、「治療する」とは、少なくとも1つの臓器の運動範囲を増大させることである。別の実施形態では、「治療する」とは、運動低下疾患または障害にともなう症状を緩和することである。
【0039】
一実施形態では、DREADDは、大脳皮質−大脳基底核ループ内の核の活動を調節するために用いられる。一実施形態では、DREADDは、本明細書に述べられるような疾患(これに限定されないがPDなど)により引き起こされるネットワーク異常を打ち消すために用いられる。一実施形態では、DREADDは、本明細書に述べられるような疾患に罹患した対象の運動活動性を増大させるために用いられる。一実施形態では、DREADDは、大脳基底核の出力活動を低下させるために用いられる。
【0040】
一実施形態では、DREADDは、Gq−DREADDである。一実施形態では、DREADDは、Gi−DREADDである。一実施形態では、核は、淡蒼球外節(GPe)核である。一実施形態では、核は、視床下核(STN)核である。一実施形態では、核は、淡蒼球内節(GPi)核である。
【0041】
別の実施形態では、「治療する」とは、脳循環の変化を低下させることである。別の実施形態では、「治療する」とは、頭頂葉の縁上回および角回の血流を低下させることである。別の実施形態では、「治療する」とは、心臓活動および心臓血管の張力の変化を低下させることである。別の実施形態では、「治療する」とは、パーキンソン病にともなう非運動症状を緩和することである。
【0042】
別の実施形態では、「治療する」とは、精神神経疾患を緩和することである。別の実施形態では、「治療する」とは、認知障害を緩和することである。別の実施形態では、「治療する」とは、視空間障害を改善することである。別の実施形態では、「治療する」とは、痴呆のリスクを低減することである。別の実施形態では、「治療する」とは、行動および気分変動の頻度および/または重篤度を低減することである。別の実施形態では、「治療する」とは、うつ病を緩和することである。別の実施形態では、「治療する」とは、アパシーを緩和することである。別の実施形態では、「治療する」とは、不安を緩和することである。別の実施形態では、「治療する」とは、精神病症状のリスクを低減することである。別の実施形態では、「治療する」とは、幻覚または妄想のリスクを低減することである。別の実施形態では、「治療する」とは、睡眠障害を緩和することである。別の実施形態では、「治療する」とは、起立性低血圧症のリスクを低減することである。別の実施形態では、「治療する」とは、脂性肌のリスクを低減することである。別の実施形態では、「治療する」とは、多汗症のリスクを低減することである。別の実施形態では、「治療する」とは、尿失禁のリスクを低減することである。別の実施形態では、「治療する」とは、性機能不全のリスクを低減することである。別の実施形態では、「治療する」とは、胃運動不全のリスクを低減することである。別の実施形態では、「治療する」とは、瞬目率の低下、ドライアイ、追跡眼球運動(眼球追跡)不全、および衝動性運動(同じ方向への両眼の素早い自動的な運動)などの眼球および視角異常のリスクを低減することである。別の実施形態では、「治療する」とは、上方注視障害を低減することである。別の実施形態では、「治療する」とは、かすみ目または複視のリスクを低減することである。別の実施形態では、「治療する」とは、嗅覚障害のリスクを低減することである。別の実施形態では、「治療する」とは、痛覚のリスクを低減することである。別の実施形態では、「治療する」とは、感覚異常症(皮膚の刺痛およびしびれ感)のリスクを低減することである。別の実施形態では、「治療する」とは、脳の永久的損傷にともなう副作用を低減することである。別の実施形態では、「治療する」とは、本発明の治療によって脳への永久的な損傷がないことである。
【0043】
別の実施形態では、ニューロン活動を亢進することは、ニューロン頻度を増大させることである。別の実施形態では、ニューロン活動を亢進することは、ニューロン入力、出力、またはその両方を増大させることである。別の実施形態では、ニューロン活動を亢進することは、活動電位を増大させることである。別の実施形態では、ニューロン活動を亢進することは、ニューロンが発射する速度を高めることである。別の実施形態では、ニューロン活動を亢進することは、ニューロンの活動を増大させることである。別の実施形態では、ニューロン活動を亢進することは、ニューロンの活動を誘発することである。別の実施形態では、ニューロン活動を亢進することは、振動活性を生成することである。別の実施形態では、ニューロン活動は、当業者には周知の任意の方法または手段によって測定される。
【0044】
別の実施形態では、ニューロン活動を抑制することは、ニューロン頻度を減少させることである。別の実施形態では、ニューロン活動を抑制することは、ニューロン入力、出力、またはその両方を減少させることである。別の実施形態では、ニューロン活動を抑制することは、活動電位を減少させることである。別の実施形態では、ニューロン活動を抑制することは、ニューロンが発射する速度を減少させることである。別の実施形態では、ニューロン活動を抑制することは、ニューロンの活動を減少させることである。別の実施形態では、ニューロン活動を抑制することは、振動活性を阻害することである。
【0045】
別の実施形態において、本発明は、ニューロン性運動亢進疾患または障害に罹患した対象を治療するための方法であって、a.淡蒼球内節(GPi)のニューロン活動を亢進することと、b.前部運動視床または淡蒼球外節(GPe)、または視床下核(STN)のニューロン活動を抑制することと、を含み、ニューロン活動を亢進することが、GPiニューロンに興奮性DREADDをトランスフェクトすることと、興奮性DREADDを活性化することとを含み、ニューロン活動を抑制することが前部運動視床または視床下核(STN)、または淡蒼球外節(GPe)のニューロンに抑制性DREADDをトランスフェクトすることと、抑制性DREADDを活性化することとを含み、これにより、ニューロン性運動亢進疾患または障害に罹患した対象を治療する、方法を提供する。
【0046】
別の実施形態では、GPiニューロンに興奮性DREADDをトランスフェクトすることは、Gq−DREADD遺伝子、Gs−DREADD遺伝子、またはその両方を含むAAVウイルスベクターを注入することである。別の実施形態では、前部運動視床または淡蒼球外節(GPe)、または視床下核(STN)のニューロンに抑制性DREADDをトランスフェクトすることは、Gi−DREADD遺伝子を含むAAVウイルスベクターを注入することである。別の実施形態では、淡蒼球内節(GPi)のニューロン活動を亢進することと、前部運動視床または淡蒼球外節(GPe)、または視床下核(STN)のニューロン活動を亢進することとは、一度におよび/または同時に行われる。別の実施形態では、抑制性DREADDを活性化すること、および興奮性DREADDを活性化することは、これに限定されないがCNOなどの単一のリガンドによって実現される。
【0047】
別の実施形態では、ニューロン性運動亢進疾患または障害に罹患した対象を治療することは、対象の運動活動性を改善することである。別の実施形態では、ニューロン性運動亢進疾患または障害に罹患した対象を治療することは、脳に永久的な損傷を誘発しない。
【0048】
別の実施形態では、運動亢進疾患または障害は、運動過剰症または運動亢進症である。別の実施形態では、運動亢進疾患は、ハンチントン病である。別の実施形態では、運動亢進疾患は、低血圧症を更に含む。別の実施形態では、運動亢進疾患または疾患は、コレア、ジストニア、ダニ障害、トゥレット症候群、片側バリズム、またはこれらの任意の組み合わせである。別の実施形態では、運動亢進疾患または障害は、アテトーシスである。別の実施形態では、運動亢進疾患または障害は、運動失調である。別の実施形態では、運動亢進疾患または障害は、片側バリズムである。
【0049】
別の実施形態では、運動亢進疾患または障害は、遅発性ジスキネジアである。別の実施形態では、運動亢進疾患または障害は、常同症である。別の実施形態では、運動亢進疾患または障害は、ミオクロ−ヌスである。別の実施形態では、運動亢進疾患または障害は、片側顔面けいれんである。別の実施形態では、運動亢進疾患または障害は、遅発性ジストニアである。別の実施形態では、運動亢進疾患または障害は、ウィルソン病である。別の実施形態では、運動亢進疾患または障害は、意志運動過剰症(volitional hyperkinesias)を含む。別の実施形態では、運動亢進疾患または障害は、振戦を含む。別の実施形態では、運動亢進疾患または障害は、脚不穏症候群を含む。
【0050】
別の実施形態では、運動亢進疾患または障害は、脳卒中後後遺症を含む。
【0051】
別の実施形態では、運動亢進疾患または障害は、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症を含む。。
【0052】
一実施形態では、PDなどのニューロン性運動低下疾患に罹患した対象は、大脳基底核ループ内の異なる核の活動を改変することにより、本明細書に述べられる方法にしたがって治療される。一実施形態では、大脳基底核ループ内の異なる核の活動を変化させることは、「デザイナー薬物のみによって活性化されるデザイナー受容体」(DREADD)(実施例2)によって実現される。一実施形態では、本明細書において、抑制性GPiおよびSNr核の腹側視床への出力を低減するための方法が提供される。一実施形態では、本明細書において、新皮質への興奮性ドライブを増大させるための方法が提供される。
【0053】
一実施形態では、本明細書において、大脳基底核ループの3つの異なる核、すなわち、大脳基底核ループの出力核としての機能を有するGPiおよびSNr核、間接路にのみ関与しているGPe、ならびにPD患者の深部脳刺激(DBS)の主標的としての役割を有するSTNを標的とすることにより、PDの運動症状を改善するための方法が提供される。一実施形態では、本発明は、抑制性出力核(GPiおよびSNr核)におけるニューロン発射の阻害を提供する。一実施形態では、本発明は、Gi−DREADDを介した抑制性出力核(GPiおよびSNr核)におけるニューロン発射の阻害を提供する。一実施形態では、本発明は、STNで発現されるGiの活性化を提供する。一実施形態では、PDを治療すること、またはPDにともなう副作用を阻害することは、STNで発現されるGq−DREADDの活性化を含む。一実施形態では、PDを治療すること、またはPDにともなう副作用を阻害することは、両側性のGq活性化を含む。一実施形態では、治療することは、運動活動性を増大、回復、または亢進することである。
【0054】
一実施形態では、「生理学的に許容される担体」および/または「医薬的に許容される担体」は、CNOなどのDREADD活性化物質と組み合わされる。一実施形態では、互換可能に使用される「生理学的に許容される担体」および「医薬的に許容される担体」なる語句は、生物に顕著な刺激を生じず、投与された調節物質の生物学的活性および特性を損なわない担体または希釈剤のことを指す。これらの語句にはアジュバントが含まれる。一実施形態では、医薬的に許容される担体に含まれる成分の1つを例えば、有機および水性媒体の両方に広範囲の溶解度を有する生体適合性ポリマーであるポリエチレングリコール(PEG)とすることができる(Mutter et al. (1979))。
【0055】
一実施形態では、「賦形剤」とは、有効成分の投与を更に促進するために医薬組成物に添加される不活性物質のことを指す。一実施形態では、賦形剤として、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、各種の糖類、ならびに各種のデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0056】
薬剤を処方および投与するための技術は、本明細書に参照により援用するところの「レミントン医薬品科学」(Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co., ペンシルベニア州イーストン、最新刊)に記載されている。
【0057】
一実施形態では、好適な投与経路として、例えば、経口投与、直腸投与、経粘膜投与、経鼻投与、腸内投与、または、筋肉内注射、皮下注射および脊髄内注射を含む非経口投与、ならびにくも膜下注射、直接心室内注射、静脈内注射、腹腔内注射、鼻腔内注射、または眼内注射が挙げられる。
【0058】
一実施形態では、経口投与は、錠剤、カプセル剤、ロゼンジ、チュアブル錠、懸濁液、エマルジョンなどからなる単位剤形を含む。かかる単位剤形は、安全かつ有効な量の1乃至複数の所望の調節物質を含む。経口投与用の単位剤形の調製に適した医薬的に許容される担体は、当該技術分野では周知のものである。
【0059】
特定の実施形態では、錠剤は一般的に、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、マンニトール、ラクトースおよびセルロースなどの不活性希釈剤;デンプン、ゼラチンおよびスクロースなどの結合剤;デンプン、アルギン酸およびクロスカルメロースなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸およびタルクなどの潤滑剤などの従来の医薬的に適合性を有するアジュバントを含む。一実施形態では、粉末混合物の流動特性を改善するために二酸化ケイ素などの滑剤を使用することができる。一実施形態では、外観用にFD&C色素などの着色料を添加することができる。アスパルテーム、サッカリン、メントール、ペパーミント、およびフルーツフレーバーなどの甘味料および香味剤は、チュアブル錠で有用な補助剤である。カプセル剤は、上記に開示した1以上の固体希釈剤を一般的に含む。特定の実施形態では、担体成分の選択は、味、コスト、および保存安定性などの副次的な考慮事項によって決まるが、これらは本発明の目的にとって重要なものではなく、当業者によって容易に行うことができる。
【0060】
一実施形態では、経口剤形は、所定の放出プロファイルを有する。一実施形態では、本発明の経口剤形は、徐放性の錠剤、カプセル剤、ロゼンジ、またはチュアブル錠を含む。
【0061】
特定の実施形態では、本発明の方法で使用するための組成物は、溶液またはエマルジョンを含み、これらは特定の実施形態では、安全かつ有効な量の本発明の調節物質と必要に応じて他の化合物とを含む水溶液または水性エマルジョンである。
【0062】
別の実施形態では、医薬組成物は、液体製剤の静脈内注射、動脈内注射、または筋肉内注射によって投与される。特定の実施形態では、液体製剤として、溶液、懸濁液、分散液、エマルジョン、オイルなどが挙げられる。一実施形態では、医薬組成物は静脈内投与されるため、静脈内投与に適した形態で配合される。別の実施形態では、医薬組成物は動脈内投与されるため、動脈内投与に適した形態に配合される。一実施形態では、医薬組成物は筋肉内投与されるため、筋肉内投与に適した形態に配合される。
【0063】
一実施形態では、本発明の医薬組成物は、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、湿式粉砕、乳化、カプセル化、封入、または凍結乾燥によるなど、当該技術分野では周知のプロセスによって製造される。
【0064】
別の実施形態では、調節物質は小胞、詳細にはリポソーム中で投与される(Langer, Science 249:1527−1533 (1990); Treat et al., in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer, Lopez− Berestein and Fidler (eds.), Liss, New York, pp. 353−365 (1989); Lopez−Berestein, 同上, pp. 317−327; 概論は同上参照)。
【0065】
一実施形態では、本発明の組成物は、調節物質を含んだ1以上の単位剤形を含む、FDAにより承認されたキットのようなパックまたはディスペンサー装置で提供される。一実施形態では、パックは例えばブリスターパックのような金属箔またはプラスチック箔からなるものである。一実施形態では、パックまたはディスペンサー装置には、投与の説明書が付属する。一実施形態では、パックまたはディスペンサーは、処方薬用に米国食品医薬品局により認可されたものか、医薬品の製造、使用または販売を規制する行政機関により指定された形態の容器に付属する、行政機関による組成物の形態または人間もしくは家畜への投与の承認を反映した、承認された製品注意書きにしたがうものである。一実施形態では、かかる注意書きは、挿入書きによって承認されたラベリングである。
【0066】
一実施形態では、本発明の調節物質は、更なる有効成分と併用して個人に投与されることで、各薬剤単独による治療と比較して高い治療効果を得ることができる点は認識されよう。別の実施形態では、併用療法にともなう有害な副作用に対して対策が講じられる(例えば相補的な薬剤の投与および選択)。
実施例
材料および方法
動物
【0067】
本実験では、成体のC57ブラックマウスを用いる。
ベクター
【0068】
DREADDは、ウイルス粒子内で与えられる。ウイルス粒子はインサイチューで注射される。
【0069】
AAV−hSyn−hM3D(Gq)−mCherryおよびAAV−hSyn−hM4D(Gi)−mCherryの2種類のウイルスベクターを用いる。これらのウイルスを標的脳領域(GPi、視床、GPe、または視床下核のいずれか)に定位固定装置により注入する。
パーキンソン病モデル
【0070】
6OHDAモデルを使用した。
行動試験
【0071】
運動障害およびこれらの障害を逆行させるDREADD治療の効果を観察するため、以下の行動試験を行った。オープンフィールド試験:運動活動性機能障害を測定するもの。この試験では、正方形のアリーナ内でのマウスの自然な運動を記録し、定量した。ロータロッド試験:マウスを回転するロッドの上に乗せ、予め設定された加速プログラムを用いて回転速度を4〜40RPMに徐々に上げた。ロッド上で測定される最大時間を300秒として、マウスが回転ロッドから落下した時間を測定した
実施例1:DREADDは、運動亢進症および運動低下症に効果を有する。
【0072】
C57ブラックマウスにウイルスベクターを注射する(興奮性DREADD(Gq)の遺伝子を含むAAV−hSyn−hM3D(Gq)−mCherryまたは抑制性DREADD(Gi)の遺伝子を含むAAV−hSyn−hM4D(Gi)−mCherryのいずれかを、標的脳領域(GPi、GPe、STNまたは前部視床、単独若しくは組み合わせ)に注射する。注射は、定位固定装置に取り付けたマイクロインジェクターにより行う。ウイルスを腹腔内注射した後、6OHDAを投与して(定位固定注射)実験用パーキンソン病マウスを作製する。
【0073】
6OHDAによる実験用パーキンソン病の誘発のおよそ3週間後に行動実験を行う。DREADD分子(Gq、Gi、または両方)をCNOのIP注射により活性化する。これらの実験では、コントロール条件(注射しないもの)、CNOの注射、および生理食塩水の偽注射を行ったパーキンソン病マウスの行動を比較する。
【0074】
マウスの運動遂行能をオープンフィールド試験、ロータロッド試験で観察する。
【0075】
以下のDREADDを含んだウイルスベクターの各注射を行う。
【0076】
すなわち、1)Gi−DREADDをGPiに両側性に注射する。2)Gq−DREADDを視床に両側性に注射する。3)Gi−またはGq−DREADDのいずれか一方をSTNに両側性に注射する。4)Gq−DREADDをGPeに両側性に注射する。
【0077】
更に、相乗効果を得るために、DREADDを含むウイルスベクターを2つの別々の脳領域に同時に注射する。すなわち、1)Gi−DREADDをGPiおよびSTNに両側性に注射する。2)両側性にGi−DREADDをGPiに注射し、Gq−DREADDをSTNに注射する。3)両側性にGi−DREADDをGPiに注射し、Gq−DREADDを視床に注射する。4)Gq−DREADDをGPeに両側性に注射する。
実施例2:パーキンソン病の化学遺伝子治療
【0078】
この一群の実験は、PDにともなうネットワーク異常を、本明細書に述べられるような「デザイナー薬剤によってのみ活性化するデザイナー受容体」(Designer Receptors Exclusively Activated by Designer Drugs)(DREADD)を用いて大脳基底核ループ内の異なる核の活性を改変することによって矯正可能であることのエビデンスを与えるものである。
【0079】
各実験は、月齢2〜4ヶ月の野生型C57ブラックマウスで行った。実験用PDを誘発するため、6−ヒドロキシドーパミン(6−OHDA)を含有する溶液(3mg/1ml)1μLを頭蓋に穿孔した小さな開頭部より内側前脳束に注射した。マウスの頭部を定位固定フレームに固定し、マイクロマニピュレータで掴んだガラスピペットおよびマイクロインジェクターを用いて6OHDA含有溶液を注射した。
【0080】
マウスは手技の全体を通じてイソフルランで麻酔した。6OHDAをMFB(内側前脳束)に一側性または両側性に注射して両側性の実験用PDを誘発させた。
【0081】
6OHDA注射後まもなく、麻酔から回復した後、マウスは時計回りに回転を始めた(注射した側と同側)マウスを6OHDAの注射後の最初の数日間、IPグルコースおよび生理食塩水で処置した。更に、注射後の最初の1週間、マウスにスクロース溶液を自由に飲ませた。実験用PDの誘発後少なくとも3週間にわたって行動実験を行った。
DREADDの発現
【0082】
DREADD(抑制性DREADD(Gi)または興奮性DREADD(Gq)のいずれか)を発現させるため、ウイルスベクターを注射した(AAV8−hSyn−hM3D(Gq)−mCherryまたはAAV8−hSyn−hM4D(Gi)−mCherry)。ウイルスベクターは、マイクロマニピュレータで掴んだガラスピペットおよびマイクロインジェクターを用いて開頭部から注射した。注射を行う際、正確な注射を行うために頭部を定位固定フレームで固定した。マウスは手技の全体を通じてイソフルランで麻酔した。
【0083】
ウイルスベクター(200〜500μL)を、STN(GiおよびGq)、EPおよびSNr核(Gi)、GPe(Gq)、ならびに腹側視床(Gq)を含む大脳基底核ループの複数の標的に注射した。注射は通常、6OHDA注射を行った側に一側性に行った。しかしながら、両側性に6OHDA注射を行った場合では、ウイルスベクターを標的核に両側性に注射した。通常、ウイルスベクターと6OHDAとは同じセッションで注射した。
【0084】
DREADD発現の位置を確認するため、すべての実験の最後に脳を摘出してパラホルムアルデヒド(4%)中で固定した。数日後にビブラトームを用いて脳を切片化(100μm体軸断面)し、DREADDの発現を蛍光タンパク質mCherryの蛍光画像法によってイメージングした。DREADD発現の解剖学的位置を、脳切片の同時明視野イメージングによって決定した。
クロザピン−N−オキシド(CNO)および生理食塩水の投与
【0085】
DREADD活性化の効果を調べるため、500μLの腹腔内CNO(5mg/kg)または生理食塩水(NS、0.9%NaCl)を投与した。CNOまたは生理食塩水の投与は盲検的に行った。CNOおよびNSの入ったバイアルは、腹腔内投与も行わなければ行動の分析も行わない第2の実験者によって数値コードで標識させた。腹腔内薬剤投与の約20〜30分後に行動実験を行った。
行動試験
【0086】
マウスの行動を観察するために2つの行動試験を行った。(1)オープンフィールド試験:マウスを30cm×30cm×30cmの上部が開いた箱に5分間入れ、ビデオに継続的に記録した。結果を実験終了後にオフラインで分析した。EthoVisionソフトウェアを使用して、マウスが移動した平均速度および距離を5分間のオープンフィールド試験の間に観察した。更に、180°の反転の回数および方向をEthoVisionソフトウェアを用いて観察した。オープンフィールド試験は2日間連続して行った(マウスに薬剤(NSまたはCNO)を盲検投与した20〜30分後)。(2)ロータロッド試験:マウスを回転するロッドの上に乗せ、予め設定された加速プログラムを用いて回転速度を4〜40RPMに徐々に上げた。ロッド上で測定される最大時間を300秒として、マウスが回転ロッドから落下した時間を測定した。各試験セッションについて、ロータロッド試験を連続3日間行った。初日にマウスに4回のトレーニングセッションを行った。残りの2日間では、マウスを一日1回試験した(腹腔内薬剤(盲検投与したCNOまたはNS)を投与した20〜30分後)。
【0087】
下記に示す結果は、大脳基底核ループの3つの異なる核、すなわち、大脳基底核ループの出力核としての機能を有するEP(霊長類のGPiに相当)およびSNr核、間接路にのみ関与しているGPe、ならびにPD患者の深部脳刺激(DBS)の主標的としての役割を有するSTNを標的とすることによって得られたPDの運動症状の改善を示している。
脳脚内核(EP、齧歯類のGPi)および黒質網様部
【0088】
EPおよびSNr核は、直接路、間接路、およびハイパー直接路が収束する大脳基底核ループの出力核としての機能を有している。この実験の目的は、Gi−DREADDを用いてSNrおよびEP核(霊長類GPiの齧歯類における相当物)の発射を阻害することにより、PDまたはPDの症状を治療することにある。
【0089】
詳細には、生理食塩水(NS)およびCNOの盲検腹腔内投与を、片側パーキンソン病(MFBに6−OHDAを注射したもの)およびコントロールマウスで比較した。検討した行動パラメータとしては、オープンフィールド試験における同側性反転および移動速度、ならびにロータロッド試験において回転ロッドから落下するまでの時間が挙げられる。
【0090】
正常コントロールと、実験用に6OHDAで片側PDを誘発させたマウスとでは、CNOおよびNSの盲検腹腔内投与間で、検討した3つの行動パラメータのいずれにおいても有意差は認められなかった(
図1)。
【0091】
これに対して、6OHDAで片側PDを誘発させ、EPおよびSNr核でGi−DREADDを発現させたマウスでは、盲検下でのCNO投与により、NSと比較して検討したすべての行動パラメータで有意かつ驚くほど良好な行動遂行能が生じた。NSと比較して、CNOでは、オープンフィールド試験における平均速度には36±9%の改善がみられ、時計回り回転の回数は68.9±10.8%低下し、その割合(%)は46±8.6%低下し、ロータロッド試験における回転ロッド上での時間は30.5±7.1%増大した(
図2)。
淡蒼球外節(GPe)核の標的化
【0092】
この一群の実験では、間接路にのみ属する主中継核としての機能を有するGPe核を標的とした。より詳細には、GPeニューロンを興奮性Gq−DREADDを用いて活性化し、6−OHDAで誘発させた片側パーキンソン病マウスの行動に対する効果を観察した。
【0093】
これらの実験により、CNOの盲検投与は、腹腔内(IP)投与された生理食塩水(NS)と比較してすべての行動パラメータの有意な改善を生じたことが示された。CNOの投与により、オープンフィールド試験における平均速度に77.2±24.7%の増大がみられ、時計回り回転の回数は37.7±20%低下し、その割合(%)は40±7.8%低下し、ロータロッド試験における回転ロッド上での時間は25.6±6.1%増大した(
図4)。したがって、GPe核のDREADD媒介活性化による間接路の活性化を抑制することにより、一側性および両側性の6−OHDA誘発PDマウスで検討したすべての運動パラメータの遂行能が有意に改善された。運動遂行能および/または機能に対するGPeのDREADD媒介活性化の効果は、両側性の6−OHDA誘発PDの場合でより顕著であった(Gq−DREADDは、片側または両側パーキンソン病マウスのGPeでそれぞれ一側性および両側性に発現させた)。
視床下核(STN)
【0094】
GPe核と異なり、STNニューロンは間接路およびハイパー直接路の両方に関与している。実験用に6OHDAで誘発させたPDの行動に対するSTNで発現させた抑制性および興奮性DREADDの効果について試験した。
【0095】
NSに対するCNOの盲検腹腔内投与の効果をオープンフィールド試験およびロータロッド試験で比較したところ、STNで発現させたGiの活性化によってロータロッド試験における平均速度にも遂行能にも有意な影響は見られないことが示された。STN核で発現したGi−DREADDの活性化は、反転についてはわずかではあるが有意な有益な効果を示した。
【0096】
これに対して、STNで発現したGq−DREADDの活性化は、6−OHDAによる実験用PDに対して大きな、予想外かつ有意な有益な効果を示した。CNOの投与により、オープンフィールド試験における平均速度に117.6±26.9%の増大がみられ、時計回り回転の回数は37.2±17%低下し、その割合(%)は47.6±11.1%低下した。ロータロッド試験における遂行能は、この群での盲検CNOおよびNS投与間で有意差は認められなかった(
図6)。
【0097】
更に、両側性の実験用PD(MFBに6OHDAを両側性に注射したもの)に対する両側性のGq活性化の効果について試験した。これらのマウスでのGq活性化は劇的な予想外の効果をもたらすことが見出された。CNO投与により、オープンフィールド試験において平均速度は294.4±70.9%増大し、ロータロッドから転落するまでの時間は81±15.8%増大した(
図7)。この場合、最初に両側性の実験用PDを有するマウスでどちらの側にも回転する傾向をほとんど示さなかったことから(毎分0.1±0.06の反転)、反転については分析を行わなかった。
【0098】
図8は、これらの実験で行った異なるDREADD媒介操作間の比較を示している。
出力核と間接路の同時抑制
【0099】
この項で得られた結果は、上記に示した知見を更に支持するものである。この一群の実験では、NSとCNOを毎日、連続5日間腹腔内投与した。オープンフィールド試験を2日目および4日目に行った(CNOおよびNS群の両方で)。ロータロッド試験を3日目および5日目に行った。運動速度、回転、およびロータロッドスコアの結果を、生理食塩水とCNOの投与間で比較した。
【0100】
以下の条件について検討した。出力核の抑制の影響、すなわち、片側パーキンソン病マウスのGPiおよびSNr核における、DREADDを介したGiの活性化の影響を更に支持する結果を
図9に示す。片側パーキンソン病マウスのGPe核におけるGq−DREADDの活性化による、運動活動性に対する間接路の抑制の影響を更に支持する結果を
図10に示す。出力核と間接路の同時抑制、ならびに、GPiおよびSNR核におけるGi−DREADD、GPe核におけるGq−DREADD、およびSTNにおけるGq−DREADDの同時活性化によるSTNの活性化の影響のエビデンスを
図11に示す。
【0101】
これらの実験群は、実験用パーキンソン病において大脳基底核内の異なる核および経路を標的とすることで、実験用PDの予想外の改善された運動遂行能および/または機能がもたらされることを示すものである。詳細には、GPe核を標的とすることにより間接路の活動を抑制し、STNを活性化し、更に、出力核であるGPiおよびSNrを標的として大脳基底核の出力活性を抑制することで、PDに罹患したマウスにおける運動遂行能および/または機能の前例のない回復および/または改善がもたらされた。