(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の方法においては、反応活性の高い共役ジエン類を反応基質として使用するものであり、共役ジエン類よりも反応性が低いモノエン類を反応基質として使用して、芳香族炭化水素にアルキル基を導入する方法が求められている。
【0005】
特許文献2に記載の方法では、アルミナ、アルカリ土類金属化合物、及びアルカリ金属水素化物から調製される固体塩基により、例えば、モノエン類であるエチレンを、トルエンと反応させ、アルキル置換芳香族炭化水素を製造することができることが開示されている。しかしながら、特許文献2に記載の方法では、固体塩基の調製のために複数の処理工程を必要とし、また、固体塩基の調製のために高い温度で熱処理する必要があるため、より生産効率が高く、転化率や選択性に優れ、高収率でアルキル置換芳香族炭化水素を得られる製造方法が求められている。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、反応基質の芳香族炭化水素の転化率に優れ、高選択的且つ高収率でアルキル置換芳香族炭化水素を製造できる製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らがアルキル置換芳香族炭化水素の製造方法について鋭意検討した結果、特定の化合物から形成された固体塩基を触媒として使用することによって、反応基質である芳香族炭化水素の転化率を向上させ、目的物のアルキル置換芳香族炭化水素を高選択的且つ高収率で得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0008】
[1]
α位に水素原子を有するアルキル基を有する芳香族炭化水素(X−1)における前記アルキル基を、アルケンによってアルキル化する工程を含む、アルキル置換芳香族炭化水素(X−2)の製造方法であって、
酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、及び炭酸カルシウムのいずれか一種以上を含有するアルカリ土類金属化合物(A)、水酸化カリウム、及び炭酸カリウムのいずれか一種以上を含有するカリウム化合物(B)、並びに、金属ナトリウム(C)を含有する組成物に由来する固体塩基(D)を、前記アルキル化の反応触媒として用いる、アルキル置換芳香族炭化水素(X−2)の製造方法。
[2]
前記固体塩基(D)に含有される、カリウムとナトリウムとのモル比が、0.01:1〜3:1である、[1]に記載のアルキル置換芳香族炭化水素(X−2)の製造方法。
[3]
前記固体塩基(D)における、金属ナトリウム(C)の質量割合が、7wt%〜40wt%である、[1]又は[2]に記載のアルキル置換芳香族炭化水素(X−2)の製造方法。
[4]
前記芳香族炭化水素(X−1)が、トルエン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、o−ジエチルベンゼン、m−ジエチルベンゼン、p−ジエチルベンゼン、メシチレン、プソイドクメン、1,2,3,5−テトラメチルベンゼン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン、ペンタメチルベンゼン、ヘキサメチルベンゼン、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、テトラヒドロナフタレン、インダン、2−メチルピリジン、4−メチルピリジンからなる群より選択されるいずれか一種である、[1]〜[3]のいずれかに記載のアルキル置換芳香族炭化水素(X−2)の製造方法。
[5]
前記アルケンが、エチレン又はプロピレンである、[1]〜[4]のいずれかに記載のアルキル置換芳香族炭化水素(X−2)の製造方法。
[6]
前記芳香族炭化水素(X−1)が、トルエンであり、前記アルケンが、エチレンである、[1]〜[5]のいずれかに記載のアルキル置換芳香族炭化水素(X−2)の製造方法。
[7]
前記芳香族炭化水素(X−1)が、m−キシレンであり、前記アルケンが、プロピレンである、[1]〜[5]のいずれかに記載のアルキル置換芳香族炭化水素(X−2)の製造方法。
[8]
前記芳香族炭化水素(X−1)が、イソプロピルベンゼンであり、前記アルケンが、エチレンである、[1]〜[5]のいずれかに記載のアルキル置換芳香族炭化水素(X−2)の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法は、反応基質である芳香族炭化水素の転化率を向上させ、目的物のアルキル置換芳香族炭化水素を高選択的且つ高収率で得ることができ、工業的に有利に製造することができる。また、本発明の製造方法によって、医薬品、香料といった中間原料等として有用なアルキル置換芳香族炭化水素を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0011】
本実施形態の製造方法は、α位に水素原子を有するアルキル基を有する芳香族炭化水素(X−1)における前記アルキル基を、アルケンによってアルキル化する工程を含む、アルキル置換芳香族炭化水素(X−2)の製造方法である。また、上記製造方法において、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、及び炭酸カルシウムのいずれか一種以上を含有するアルカリ土類金属化合物(A)、水酸化カリウム、及び炭酸カリウムのいずれか一種以上を含有するカリウム化合物(B)、並びに、金属ナトリウム(C)を含有する組成物に由来する固体塩基(D)を、アルキル化の反応触媒として用いる。
【0012】
本実施形態における芳香族炭化水素(X−1)は、α位に水素原子を有するアルキル基を有する芳香族炭化水素である。本実施形態におけるα位は、アルキル基上の炭素位置であり、アルキル基が結合した芳香族炭化水素環上の炭素に隣接する位置である。α位の水素原子数は、1〜3であれば特に制限されない。
【0013】
芳香族炭化水素(X−1)としては、例えば、トルエン、エチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン(以下、クメンともいう。)、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、o−ジエチルベンゼン、m−ジエチルベンゼン、p−ジエチルベンゼン、メシチレン、プソイドクメン、1,2,3,5−テトラメチルベンゼン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン、ペンタメチルベンゼン、ヘキサメチルベンゼン、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、テトラヒドロナフタレン、インダン、2−メチルピリジン、4−メチルピリジン等が挙げられる。これらの芳香族炭化水素(X−1)は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
本実施形態におけるアルキル化とは、芳香族炭化水素(X−1)における前記アルキル基のα位水素原子が、アルケンとの反応によりアルキル基に置換されることを指す。
本実施形態におけるアルケンとしては、炭素数が2〜20の直鎖又は分岐のアルケンが挙げられ、具体的には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、3−ヘキセン、1−ヘプテン、2−ヘプテン、3−ヘプテン、オクテン、ノネン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−メチル−2−ペンテン等が挙げられる。これらのアルケンは、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらのアルケンの中でも、好ましくはエチレン又はプロピレンである。
【0015】
本実施形態の製造方法において、芳香族炭化水素(X−1)は、トルエンであり、アルケンは、エチレンであることが好ましい。また、本実施形態の製造方法において、芳香族炭化水素(X−1)は、m−キシレンであり、アルケンは、プロピレンであることが好ましい。またさらに、本実施形態の製造方法において、芳香族炭化水素(X−1)は、イソプロピルベンゼンであり、アルケンは、エチレンであることが好ましい。
【0016】
本実施形態の製造方法に使用される固体塩基(D)は、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、及び炭酸カルシウムのいずれか一種以上を含有するアルカリ土類金属化合物(A)(以下、単に「アルカリ土類金属化合物(A)」ともいう。)、水酸化カリウム、及び炭酸カリウムのいずれか一種以上を含有するカリウム化合物(B)(以下、単に「カリウム化合物(B)」ともいう。)、並びに、金属ナトリウム(C)を含有する組成物に由来する。固体塩基(D)は、具体的には、アルカリ土類金属化合物(A)、カリウム化合物(B)、及び金属ナトリウム(C)を含有する組成物を、不活性ガス雰囲気下で熱処理することによって得られる。
【0017】
固体塩基(D)は、具体的には、不活性ガス雰囲気下で、アルカリ土類金属化合物(A)、カリウム化合物(B)、及び金属ナトリウム(C)を混合し、好ましくは98℃〜400℃で、10分〜5時間加熱撹拌することによって製造することができる。アルカリ土類金属化合物(A)、カリウム化合物(B)、及び金属ナトリウム(C)の混合する順番は特に限定されない。
不活性ガスとしては、例えば、ヘリウム、窒素、アルゴン等を挙げることができる。
固体塩基(D)調製における温度は、好ましくは98℃〜400℃であり、より好ましくは110℃〜300℃であり、さらに好ましくは120℃〜280℃である。温度が、98℃〜400℃であることにより、金属ナトリウムが融解するために、分散混合しやすく、且つ、十分に焼成され、活性の高い触媒となる傾向にあり、芳香族炭化水素(X−1)の転化率を向上させることができる。
固体塩基(D)調製における加熱時間は、好ましくは10分〜5時間であり、より好ましくは30分〜3時間であり、さらに好ましくは30分〜2時間である。加熱時間が、10分〜5時間であることにより、十分に焼成され、活性の高い触媒となる傾向にあり、芳香族炭化水素(X−1)の転化率を向上させることができる。
【0018】
アルカリ土類金属化合物(A)、カリウム化合物(B)は、吸湿性が高く、活性が低下する傾向にあることから、固体塩基(D)の調製前に熱処理を加えてもよい。調製前の熱処理は不活性ガス雰囲気下、又は、真空下で行うことが好ましい。調製前の熱処理の温度は、不要な水分を取り除くことができれば特に限定されないが、好ましくは200℃〜500℃であり、より好ましくは250℃〜400℃である。調製前の熱処理の温度が200℃〜500℃であることにより、十分に水分を取り除くことができ、固体塩基(D)が活性の高い触媒となる傾向にある。
調製前の熱処理の時間は、好ましくは10分〜5時間であり、より好ましくは30分〜3時間であり、さらに好ましくは30分〜2時間である。調製前の熱処理の時間が、10分〜5時間であることにより、十分に水分を取り除くことができ、固体塩基(D)が活性の高い触媒となる傾向にあり、芳香族炭化水素(X−1)の転化率を向上させることができる。
【0019】
固体塩基(D)における、カリウムとナトリウムとのモル比は、芳香族炭化水素(X−1)の転化率を向上させる観点から、好ましくは0.01:1〜3:1であり、より好ましくは0.1:1〜2.5:1であり、さらに好ましくは0.3:1〜2:1である。
固体塩基(D)における、カリウムとナトリウムとのモル比は、アルカリ土類金属化合物(A)、カリウム化合物(B)、及び、金属ナトリウム(C)を含有する組成物におけるカリウム化合物(B)及び金属ナトリウム(C)の配合量より求めることができる。
【0020】
固体塩基(D)における、金属ナトリウム(C)の質量割合は、好ましくは7wt%〜40wt%であり、より好ましくは8wt%〜30wt%であり、さらに好ましくは9wt%〜20wt%である。金属ナトリウム(C)の質量割合が7wt%〜40wt%であることにより、副反応の発生を抑制でき、目的の生成物であるアルキル置換芳香族炭化水素(X−2)の選択率に優れる傾向にある。
固体塩基(D)における、金属ナトリウム(C)の質量割合は、アルカリ土類金属化合物(A)、カリウム化合物(B)、及び、金属ナトリウム(C)の合計質量に対する金属ナトリウム(C)の質量の割合から求めることができる。
【0021】
固体塩基(D)における、アルカリ土類金属の含有量は、0molより大きければ特に制限はないが、副反応の発生を抑制し、目的の生成物であるアルキル置換芳香族炭化水素(X−2)の選択率を向上させる観点から、アルカリ土類金属とナトリウムとのモル比として、好ましくは0.1:1〜20:1であり、より好ましくは0.5:1〜10:1であり、さらに好ましくは1:1〜8:1である。
固体塩基(D)における、アルカリ土類金属とナトリウムとのモル比は、アルカリ土類金属化合物(A)、カリウム化合物(B)、及び、金属ナトリウム(C)を含有する組成物におけるアルカリ土類金属化合物(A)及び金属ナトリウム(C)の配合量より求めることができる。
【0022】
アルキル化反応において固体塩基(D)を使用する方法としては、種々の反応方式が採られる。反応方式としては、例えば、触媒を仕込んだ反応器に原料をバッチ方式やセミバッチ方式にて供給する方法、反応器に触媒及び原料を連続的に供給する完全混合流通方式、又は、触媒を反応器に充填し原料を流通させる固定床流通方式等が挙げられる。反応方式は、目的とする反応生成物の種類によって適宜選択することができるが、バッチ方式が好ましい。バッチ方式を用いることによって、反応を行うための操作が煩雑とならず、水分混入による触媒の失活を抑制し、触媒の活性を維持することができる傾向にある。
【0023】
芳香族炭化水素(X−1)に対するアルケンの比は、一般的には、モル比で0.01〜2、好ましくは0.03〜1の範囲である。
アルケンがモル比で2よりも大きい場合、生成したアルキル置換芳香族炭化水素(X−2)がさらにアルケンと反応して、芳香族炭化水素(X−1)1分子にアルケンが2分子以上付加した化合物の生成が多くなり、アルキル置換芳香族炭化水素(X−2)の選択率が低下する傾向にある。また、アルケンがモル比で0.01よりも小さい場合、製造効率が低下する傾向にある。
【0024】
アルキル化反応において用いる触媒の量は、反応させる基質の種類等に応じて適宜調整すればよく、一般的には、原料である芳香族炭化水素(X−1)の質量に対して、0.01〜30質量%、好ましくは0.05〜25質量%である。
反応温度は、反応させる基質の種類等に応じて適宜調整すればよく、一般的には50〜300℃、好ましくは90〜200℃の範囲である。温度が50℃よりも低い場合にも反応は起こるが充分な反応速度が得られず、また、選択率が悪化する傾向にある。温度が300℃より高い場合にはタール分等の副生物が多くなり好ましくない。
反応圧力は、反応条件下で芳香族炭化水素(X−1)及び生成物が実質的に液体として存在するに必要な圧力で充分であり、絶対圧で0.05〜50気圧、好ましくは0.1〜20気圧の範囲である。
【0025】
アルキル化反応の反応時間は、バッチ方式、セミバッチ方式の反応時間、又は、完全混合流通方式での滞留時間として、通常0.1〜10時間である。固定床流通方式の場合には、芳香族炭化水素(X−1)のLSVとして、通常0.1〜10h
-1が採用される。
【0026】
触媒を懸濁させて反応を行う場合、反応後における反応液と触媒の分離は沈降、遠心分離、濾過等の一般的な方法により行うことができる。分離された触媒は反応系に循環してもよく、また、付着した有機物の空気燃焼による除去や水による洗浄等の必要な処理を行った後に触媒調製工程に循環してもよい。
【実施例】
【0027】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0028】
(触媒調製例1)
磁気撹拌子を備えた200mlのナスフラスコに窒素雰囲気下で、酸化マグネシウム(MgO,和光純薬工業製)3.2g、炭酸カリウム(K
2CO
3,和光純薬工業製)1.8g、金属ナトリウム(和光純薬工業製)0.6gを仕込んだ。このナスフラスコをアルミブロックヒータースターラーにて250℃、1時間加熱撹拌した後に、アルミブロックヒータースターラーから取り外し、空冷で室温まで冷却することで5.6gの粉状の固体塩基を得た。触媒の組成内容を表1に示す。
【0029】
(触媒調製例2)
加熱撹拌温度を150℃としたこと以外は、触媒調製例1と同様に調製し、5.6gの粉状の固体塩基を得た。触媒の組成内容を表1に示す。
【0030】
(触媒調製例3)
酸化マグネシウム3.2gを3.5gに変更し、炭酸カリウム1.8gを水酸化カリウム(KOH,シグマアルドリッチ製、無水グレード)1.5gとしたこと以外は、触媒調製例1と同様に調製し、5.6gの粉状の固体塩基を得た。触媒の組成内容を表1に示す。
【0031】
(触媒調製例4)
酸化マグネシウムの量を6gとしたこと以外は、触媒調製例1と同様に調製し、8.4gの粉状の固体塩基を得た。触媒の組成内容を表1に示す。
【0032】
(触媒調製例5)
酸化マグネシウムの量を10.2gとしたこと以外は、触媒調製例1と同様に調製し、12.6gの粉状の固体塩基を得た。触媒の組成内容を表1に示す。
【0033】
(触媒調製例6)
酸化マグネシウムの量を1.6gとしたこと以外は、触媒調製例1と同様に調製し、4.0gの粉状の固体塩基を得た。触媒の組成内容を表1に示す。
【0034】
(触媒調製例7)
酸化マグネシウムの量を4.1gとし、炭酸カリウムの量を0.9gとしたこと以外は、触媒調製例1と同様に調製し、5.6gの粉状の固体塩基を得た。触媒の組成内容を表1に示す。
【0035】
(触媒調製例8)
酸化マグネシウムの量を1.4gとし、炭酸カリウムの量を3.6gとしたこと以外は、触媒調製例1と同様に調製し、5.6gの粉状の固体塩基を得た。触媒の組成内容を表1に示す。
【0036】
(触媒調製例9)
磁気撹拌子を備えた200mlのナスフラスコに窒素雰囲気下で、炭酸カリウム5g、金属ナトリウム0.6gを仕込んだ。このナスフラスコをアルミブロックヒータースターラーにて250℃、1時間加熱撹拌した後に、アルミブロックヒータースターラーから取り外し、空冷で室温まで冷却することで5.6gの粉状の固体塩基を得た。触媒の組成内容を表1に示す。
【0037】
(触媒調製例10)
炭酸カリウム5gの代わりに酸化マグネシウム5gを用いたこと以外は、触媒調製例9と同様に調製し5.6gの粉状の固体塩基を得た。触媒の組成内容を表1に示す。
【0038】
(触媒調製例11)
磁気撹拌子を備えた30mlのオートクレーブに窒素雰囲気下で、酸化マグネシウム0.18g、水酸化カリウム0.07g、金属ナトリウム0.1gを仕込んだ。このオートクレーブを250℃、1時間加熱撹拌した後に、空冷で室温まで冷却することで0.35gの粉状の固体塩基を得た。触媒の組成内容を表1に示す。
【0039】
(触媒調製例12)
磁気撹拌子を備えた30mlのオートクレーブに窒素雰囲気下で、金属ナトリウム0.1g、金属カリウム(ナカライテクス製)0.1gを仕込んだ。このオートクレーブを180℃、1時間加熱撹拌した後に、空冷で室温まで冷却することで0.2gの固体塩基を得た。触媒の組成内容を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
(実施例1)
30mlオートクレーブに窒素雰囲気下で、マグネチックスターラーバー、触媒調製例1で調製した固体塩基0.45g、及び、トルエン(和光純薬工業製、超脱水品)2.05gを入れた後に、オートクレーブをエチレンガスボンベに接続し0.30gのエチレンガス(ジャパンファインプロダクツ製、エチレン純度>99.9vol.%)を吹き込み、系中の気相をエチレン雰囲気とした。700rpmの撹拌下で160℃まで昇温後1時間反応を行った。反応後オートクレーブを空冷で室温まで冷却し、反応液を4mlの1M HCl水溶液に滴下した。反応液を含む水溶液を静置し、下方の水相及び、上方の有機相に分離し、有機相をガスクロマトグラフィー分析することによりトルエンの転化率、ノルマルベンゼンの選択率及びノルマルベンゼンの収率を算出した。結果を表2に示す。
【0042】
(実施例2)
触媒調製例2で調製した固体塩基を使用したこと以外は、実施例1に準拠して実施した。結果を表2に示す。
【0043】
(実施例3)
100mlの振盪式オートクレーブに窒素雰囲気下で、触媒調製例3で調製した固体塩基5.60g、及び、トルエン25.26gを入れた後に、オートクレーブをエチレンガスボンベに接続し3.70gのエチレンガス(ジャパンファインプロダクツ製、エチレン純度>99.9vol.%)を吹き込み、系中の気相をエチレン雰囲気とした。160℃まで昇温後、2時間振盪させ反応を行った。反応後オートクレーブを空冷で室温まで冷却し、反応液の一部を吸出し、4mlの1M HCl水溶液に滴下した。反応液を含む水溶液を静置し、下方の水相及び、上方の有機相に分離し、有機相をガスクロマトグラフィー分析することによりトルエンの転化率、ノルマルベンゼンの選択率及びノルマルベンゼンの収率を算出した。結果を表2に示す。
【0044】
(実施例4)
固体塩基量を0.19gとしたこと以外は、実施例1に準拠して実施した。結果を表2に示す。
【0045】
(実施例5)
触媒調製例4で調製した固体塩基を使用したこと以外は、実施例1に準拠して実施した。結果を表2に示す。
【0046】
(実施例6)
触媒調製例5で調製した固体塩基を使用したこと以外は、実施例1に準拠して実施した。結果を表2に示す。
【0047】
(実施例7)
触媒調製例6で調製した固体塩基を使用し、触媒量を0.37gとしたこと以外は、実施例1に準拠して実施した。結果を表2に示す。
【0048】
(実施例8)
触媒調製例7で調製した固体塩基を使用したこと以外は、実施例1に準拠して実施した。結果を表2に示す。
【0049】
(実施例9)
触媒調製例8で調製した固体塩基を使用したこと以外は、実施例1に準拠して実施した。結果を表2に示す。
【0050】
(比較例1)
触媒調製例9で調製した固体塩基を使用し、触媒量を0.19gとしたこと以外は、実施例1に準拠して実施した。結果を表2に示す。
【0051】
(比較例2)
触媒調製例10で調製した固体塩基を使用したこと以外は、実施例1に準拠して実施した。結果を表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
(実施例10)
30mlオートクレーブに窒素雰囲気下で、マグネチックスターラーバー、触媒調製例1で調製した固体塩基0.14g、及び、クメン(和光純薬工業製、和光特級)2.56gを入れた後に、オートクレーブをエチレンガスボンベに接続し0.3gのエチレンガス(ジャパンファインプロダクツ製、エチレン純度>99.9vol.%)を吹き込み、系中の気相をエチレン雰囲気とした。700rpmの撹拌下で160℃まで昇温後1.5時間反応を行った。反応後オートクレーブを空冷で室温まで冷却し、反応液を4mlの1M HCl水溶液に滴下した。反応液を含む水溶液を静置し、下方の水相及び、上方の有機相に分離し、有機相をガスクロマトグラフィー分析することによりクメンの転化率、tert−アミルベンゼンの選択率及びtert−アミルベンゼンの収率を算出した。結果を表3に示す。
【0054】
(比較例3)
触媒調製例9で調製した固体塩基を使用したこと以外は、実施例10に準拠して実施した。結果を表3に示す。
【0055】
【表3】
【0056】
(実施例11)
触媒調製例11で触媒調製を行った30mlオートクレーブ(触媒調製例11で調製した固体塩基0.35gを含み、磁気撹拌子を備える)を、引き続き、窒素雰囲気下とし、m−キシレン5.0gを入れた後に、オートクレーブをプロピレンガスボンベに接続し2.2gのプロピレンガス(住友精化株式会社製)を吹き込み、系中の気相をプロピレン雰囲気とした。700rpmの撹拌下で180℃まで昇温後3時間反応を行った。反応後オートクレーブを空冷で室温まで冷却し、反応液を4mlの1M HCl水溶液に滴下した。反応液を含む水溶液を静置し、下方の水相及び、上方の有機相に分離し、有機相をガスクロマトグラフィー分析することによりm−キシレンの転化率、1−イソブチル−3−メチルベンゼンの選択率及び1−イソブチル−3−メチルベンゼンの収率を算出した。結果を表4に示す。
【0057】
(比較例4)
触媒調製例12で触媒調製を行った30mlオートクレーブ(触媒調製例12で調製した固体塩基0.2gを含み、磁気撹拌子を備える)を使用し、プロピレンガスの仕込み量を2.0gとしたこと以外は、実施例11に準拠して実施した。結果を表4に示す。
【0058】
【表4】
【0059】
なお、金属ナトリウムを使用しない触媒(酸化マグネシウムと炭酸カリウムを不活性ガス下において250℃で熱処理して調製した。)を使用して、実施例1と同様に反応を行ったが、反応は進行しなかった。