(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の撮影装置によれば、橋梁の上でブームやデッキを支持する橋梁点検車や、巻取機などを有する。また、アームの伸長量に応じて、各ケーブルの引張り量を、水平センサの検出値に基づいて調整するために、複雑な制御を必要とする。このため、装置が複雑であり、装置及びその駆動のための高いコストを必要とする。
【0007】
また、橋梁の上に橋梁点検車を配置しなければならないため、橋梁上で大掛かりな交通規制を行う必要がある。したがって、撮影装置のセットアップや撤収等に長時間を要し、作業員もそれなりの人数を要する。
【0008】
本発明の目的は、かかる従来技術の問題点に鑑み、低コストで簡便に橋梁の点検を行うことができる橋梁点検方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第
1発明に係る橋梁点検方法は、
点検対象となる橋梁の幅に対応する長さを有し、橋梁点検用の複数のカメラが設置された棒状のカメラ支持部材の両端部の第1位置及び第2位置にそれぞれの
一端部が取り付けられている第1索体及び第2索体であって該カメラ支持部材をそれぞれ該橋梁の一方の高欄及び他方の高欄から吊り下げて支持している該第1索体及び該第2索体を操作することにより該カメラ支持部材を該橋梁の1つの径間における最初の点検位置に配置する第1工程と、
前記第1工程の後、前記第1索体及び前記第2索体をそれぞれ前記一方の高欄及び前記他方の高欄に沿って前記橋梁の長さ方向に移動させながら前記カメラにより該橋梁の前記1つの径間における点検を行う第2工程と、
前記第2工程の後、前記第2索体による前記カメラ支持部材の支持を
、該第2索体の他端部において解除し、前記カメラ支持部材の前記第1位置及び前記第2位置の間の第3位置に
一端部が取り付けられた第3索体と前記第1索体とで前記一方の高欄から該カメラ支持部材を支持する第3工程と、
前記第3工程の後、前記第1索体及び前記第3索体を前記一方の高欄に沿って移動させることにより前記カメラ支持部材を前記1つの径間の隣の径間に移動させる第4工程と、
前記第4工程の後、前記カメラ支持部材の前記第2位置を前記第2索体により前記橋梁の他方の高欄から支持できるように該第2索体を準備する第5工程と、
前記第5工程の後、前記第2索体による支持を開始して前記第3索体による前記カメラ支持部材の支持を解除する第6工程と、
前記第6工程の後、該隣の径間について前記第1工程及び前記第2工程と同様の工程により点検を行う第7工程とを備え
、
前記第5工程は、前記第2索体の前記他端部を、前記隣の径間における桁下空間を該橋梁を横断する方向に通過させて前記橋梁の他方の高欄に移送することにより行われることを特徴とする。
【0018】
第
1発明によれば、第1〜第3索体を用いてカメラ支持部材を支持することにより、カメラ支持部材を橋梁から吊り下げた状態で各径間の間を移動させながら橋梁の点検を行うことができる。したがって、低コストで簡便に橋梁の点検を行うことができる。
【0019】
第
2発明に係る橋梁点検方法は、
点検対象となる橋梁の幅に対応する長さを有し、橋梁点検用の複数のカメラが設置された棒状のカメラ支持部材の両端部の第1位置及び第2位置にそれぞれの
一端部が取り付けられている第1索体及び第2索体であって該カメラ支持部材をそれぞれ該橋梁の一方の高欄及び他方の高欄から吊り下げて支持している該第1索体及び該第2索体を操作することにより該カメラ支持部材を該橋梁の1つの径間における最初の点検位置に配置する第1工程と、
前記第1工程の後、前記第1索体及び前記第2索体をそれぞれ前記一方の高欄及び前記他方の高欄に沿って前記橋梁の長さ方向に移動させながら前記カメラにより該橋梁の前記1つの径間における点検を行う第2工程と、
前記第2工程の後、
該第2索体による前記カメラ支持部材の支持を
、該第2索体の前記一端部において解除し、前記カメラ支持部材の前記第1位置及び前記第2位置の間の第3位置に
一端部が取り付けられた第3索体と前記第1索体とで前記一方の高欄から該カメラ支持部材を支持する第3工程と、
前記第3工程の後、前記第1索体及び前記第3索体を前記一方の高欄に沿って移動させることにより前記カメラ支持部材を前記1つの径間の隣の径間に移動させる第4工程と、
前記第4工程の後、前記カメラ支持部材の前記第2位置を前記第2索体により前記橋梁の他方の高欄から支持できるように該第2索体を準備する第5工程と、
前記第5工程の後、前記第2索体による支持を開始して前記第3索体による前記カメラ支持部材の支持を解除する第6工程と、
前記第6工程の後、該隣の径間について前記第1工程及び前記第2工程と同様の工程により点検を行う第7工程とを備え
、
前記カメラ支持部材には、前記第2位置から該カメラ支持部材の長さ方向に延出し、該第2位置を支点として回動可能な延出部材が設けられており、
前記カメラ支持部材の前記第1位置又はその近傍には、所定の重量を有する重りが取り付けられており、
前記第1索体の所定の固定位置F1には、前記第3索体を摺動自在に通過させるとともに、該第3索体の所定の固定位置F2をクランプするクランプ装置が設けられており、
前記延出部材の先端部には、該延出部材を回動させて該先端部を上方に吊り上げるための第1係合部が設けられており、
前記第2索体の先端部には、前記第1係合部と係合可能な第2係合部が設けられており、
前記第1工程における前記第2索体による前記カメラ支持部材の支持は、前記延出部材が該カメラ支持部材の長さ方向に延出した初期状態から上方に回動した状態で、前記第1係合部に係合した前記第2係合部を介して行われており、
前記第3工程は、
前記第2索体を下方に送って前記延出部材を前記初期状態に戻し、前記第1係合部に対する前記第2係合部の係合を解除することにより前記第2索体による前記カメラ支持部材の支持を解除する係合解除工程と、
前記係合解除工程と並行して、前記クランプ装置に通してある前記第3索体を前記一方の高欄から引き上げて、該第3索体の固定位置F2が該クランプ装置に達したときに該クランプ装置で該第3索体をクランプするクランプ工程と、
前記クランプ工程の後、前記第1索体の前記固定位置F1よりも上の部分を回転軸線として前記カメラ支持部材を回転させ、前記カメラ支持部材を、前記一方の高欄の下方において該高欄に沿った姿勢にする第1回転工程とを備え、
前記第5工程は、
前記第1索体の前記固定位置F1よりも上の部分を回転軸線として前記カメラ支持部材を回転させ、前記延出部材の先端部を、前記他方の高欄の下方に位置させる第2回転工程と、
前記第2回転工程の後、前記延出部材の第1係合部に、前記他方の高欄から降ろした前記第2索体の第2係合部を係合させる係合工程とを備え、
前記第6工程は、前記係合工程の後、前記第2索体を前記他方の高欄から引き上げることにより前記延出部材を上方に回動させながら、前記第3索体の固定位置F2におけるクランプを解除するクランプ解除工程を備えることを特徴とする。
【0020】
第
2発明によれば、係合解除工程及びクランプ工程が完了してから、第1回転工程、第4工程及び第2回転工程を経て、係合工程が完了するまでの間、カメラ支持部材は、第1索体及び第3索体により支持される。この間、カメラ支持部材の第1位置及び第3位置の間の部分を底辺とし、第1、第3索体の固定位置F1、F2よりも低い部分を他の2辺とする三角形が形成され、カメラ支持部材は、安定して第1、第3索体により支持される。
【0021】
このようにして第1、第3索体により支持されたカメラ支持部材は、支障なく、第1回転工程、第4工程及び第2回転工程を経て、カメラ支持部材を橋梁の1つの径間からその隣の径間に移動させることができる。
【0022】
また、径間の移動の前後では、クランプ装置、延出部材、第1係合部、第2係合部の機能により、係合解除工程、クランプ工程、クランプ解除工程及び係合工程を経て、第3索体による支持と第2索体による支持との切替えを容易に行うことができる。また、このような径間の移動及び支持の切替えのための作業は、すべて橋梁上で行うことができる。
【0023】
第
3発明に係る橋梁点検方法は、第
1発明において、
前記第3位置は、前記カメラ支持部材の長さ方向の中心位置と前記第2位置との間に存在
することを特徴とする。
【0024】
第
3発明によれば、第3索体の一端が取り付けられた第3位置は、カメラ支持部材の長さ方向の中心位置よりも第2位置寄りに存在するので、カメラ支持部材を、第1索体と第3索体とで安定した状態で支持しながら、1つの径間から隣の径間に移動させることができる。
【0025】
第
4発明に係る橋梁点検方法は、第
1発明において、
前記第2索体の
前記他端部の移送は、
前記第2索体の
前記他端部に取り付けられた球状部材を、前記橋梁の一方の高欄に取り付けて前記隣の径間における橋桁より低い位置に配置した球状部材放出装置により、該径間の桁下空間を経て、該橋梁が架けられた両岸のうちの一方の岸に向けて放出し、
前記一方の岸に放出された球状部材を前記橋梁の他方の高欄側に転送することにより行われることを特徴とする。
【0026】
第
4発明によれば、第2索体の
他端部を確実に橋梁の他方の高欄側に移送することができる。
【0027】
第
5発明に係る橋梁点検方法は、第
1発明において、
前記第2索体の
前記他端部の移送は、ドローンを用いて行われることを特徴とする。
【0028】
第
5発明によれば、第2索体の
他端部を、簡便に、橋梁の他方の高欄側に移送することができる。
【0029】
第
6発明に係る橋梁点検方法は、第
1発明において、
前記橋梁は、前記一方の高欄側から前記他方の高欄側に向かう方向の流れを有する河川に架けられており、
前記第2索体の
前記他端部の移送は、
前記第2索体の
前記他端部を浮き輪に固定する浮輪固定工程と、
前記浮輪固定工程の後、前記浮き輪を前記一方の高欄側から前記河川の流れに投入する浮輪投入工程と、
前記浮輪投入工程の後、前記河川の流れによって前記他方の高欄側に流れた前記浮き輪を該他方の高欄側から回収する浮輪回収工程とを経て行われることを特徴とする。
【0030】
第
6発明によれば、第2索体の
他端部を、さほどコストを要することなく、橋梁の他方の高欄側に移送することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る橋梁点検方法で使用される橋梁点検システム1は、点検対象となる橋梁2の幅に対応する長さを有する棒状のカメラ支持部材3と、カメラ支持部材3が橋梁2の幅方向に沿って橋梁2の床版4の下方に位置するようにカメラ支持部材3の両端部を支持するための両端部支持手段5と、カメラ支持部材3上に間隔を置いて設置される橋梁2点検用の複数のカメラ6aとを備える。カメラ支持部材3は、複数の棒状部材7を接続して構成される。
【0033】
カメラ支持部材3の両端部には、点検状況の確認用のカメラ6bが取り付けられる。カメラ6bは、点検用のカメラ6aやカメラ支持部材3を構成する棒状部材7などの床版4の下に配置されるシステム部分全体の状況を確認するために用いられる。各カメラ6a及び6bは、カメラ支持部材3の任意の位置に配置できるように、クランプ8を介してカメラ支持部材3に取り付けられる。
【0034】
図2は、カメラ支持部材3の隣り合う棒状部材7を接続するための構成を示す。
図2に示すように、カメラ支持部材3は、隣接する棒状部材7に対して、一方及び他方の側が固定されて各棒状部材7を接続する接続部材9を備える。
【0035】
本実施形態では、棒状部材7として、横断面が矩形状であるアルミフレームが用いられる。具体的には、例えば、SUS株式会社の40mm角のフレーム材であるXF−40・40(商品名)を好ましく用いることができる。
【0036】
棒状部材7としては、カメラ支持部材3の基本の長さを最長12mとして、長さが2mのものが6本用意される。また、カメラ支持部材3の長さを50cm刻みで調整できるように、1.5m、1m、0.5mのものが1本ずつ用意される。
【0037】
なお、調整量を50cm刻みとしたことにより、カメラ支持部材3の長さには、橋梁2の総幅員に対して最大25cm、すなわち片側の高欄10a又は10bの部分においては最大12.5cmの過不足が生じる。しかし、この値は、高欄10a又は10bに主桁11を加えた高さに比べて十分小さいので、カメラ支持部材3に対して過大な圧縮又は引張応力を生じさせるものではない。
【0038】
接続部材9としては、隣接する各棒状部材7に対して、一方及び他方の側が嵌合されてボルト12で固定されることにより各棒状部材7を結合する金属製の部材、具体的にはアルミ製の部材が用いられる。接続部材9の棒状部材7に対する嵌合は、棒状部材7の内側に対して行われる。接続部材9の中間部には、棒状部材7の嵌合量を決定する位置決め部材9aが設けられる。
【0039】
カメラ支持部材3は、カメラ6a、6bが設置され、かつ両端部支持手段5により支持された状態で重力により直線状となるように、曲りを有する。この曲りは、各接続部材9の曲がった中間部により形成される。
【0040】
すなわち、
図3に示すように、各接続部材9は、その長さ方向の中間部において曲がった部分を有している。接続部材9が曲がった部分を有することによってその両側の棒状部材7が成す角度をθとすれば、たとえばtanθ=1/10を満たすような程度の値である。このような曲がった部分を有する接続部材9は、切削加工や射出成形により形成することができるが、棒状の部材をプレス加工することにより安価に入手することもできる。
【0041】
各接続部材9は、ボルト12による固定を行うためのねじ穴13を、曲がった部分の曲率中心側の側面にのみ有する。このねじ穴13は、各接続部材9の一方の側及び他方の側に1つずつ設けられる。棒状部材7は、ねじ穴13に対応するばか穴14を有する。各接続部材9は、例えば、10cmの長さを有し、各ねじ穴13は中間部から2.5cmの箇所に設けられる。
【0042】
したがって、各隣接する棒状部材7を、ボルト12を用いて接続部材9で接続した場合、各接続部材9の曲がった部分により、カメラ支持部材3全体としての曲りが形成されることになる。
【0043】
図1に戻り、両端部支持手段5は、カメラ支持部材3の一方の端部である第1位置P1に一端が取り付けられた第1索体36と、カメラ支持部材3の他方の端部である第2位置P2に一端が取り付けられた第2索体37と、第1索体36及び第2索体37にそれぞれ作用する2台のウインチ17とを備える。また、カメラ支持部材3の両端部の間の第3位置P3には、カメラ支持部材3を隣接する径間の間で移動させる際に使用される第3索体38の一端が取り付けられる。
【0044】
図4のように、カメラ支持部材3の両端部には、それぞれ中心部が支持されたロッド部材15が設けられる。各ロッド部材15は、カメラ支持部材3に対して垂直な中心軸線を有する。カメラ支持部材3の両端部におけるロッド部材15の支持は、ロッド部材15がその中心軸線の回りに回転自在となるように行われる。すなわち、カメラ支持部材3の各端部では、対応するロッド部材15によりヒンジが構成され、第1索体36及び第2索体37は、このヒンジを介して、カメラ支持部材3に取り付けられる。
【0045】
ただし、ロッド部材15の中心軸線回りの回転を制限なく許容した場合には、カメラ支持部材3を吊り上げたときに、吊り上げ前の地上等に置かれた状態での第1索体36又は第2索体37とロッド部材15との位置関係によっては第1索体36又は第2索体37がロッド部材15と絡み、ロッド部材15が地面に対して平行に吊り上がらない不具合が生じるおそれがある。
【0046】
そこで、各ロッド部材15のカメラ支持部材3に対する回転可能な範囲を所定の角度範囲内に制限している。この所定の角度範囲は、例えば、上述のヒンジとしての機能を十分達成できる最小限の角度範囲と、上記不具合の発生を防止することができる最大の角度範囲との間の範囲に設定することができる。
【0047】
上述のロッド部材15の回転角度範囲の制限に加え、ロッド部材15と第1索体36及び第2索体37との間の接続金具18に接続されるリング状部材の可動範囲も制限される。これにより、カメラ支持部材3の吊上げ時における第1索体36及び第2索体37のロッド部材15等との絡まりのより確実な防止が図られている。
【0048】
第1索体36及び第2索体37は、それぞれ、対応するロッド部材15の両端部にそれぞれ1本ずつ一端が接続され、他端が相互に固定された2本のロープ16aと、該2本のロープ16aの相互に固定された他端に一端が接続される1本のロープ16bとを有する。ロープ16aとロープ16bとの接続は接続金具18により行われる。
【0049】
図1のように、ウインチ17は、第1索体36及び第2索体37の他端側を巻き上げることができるように、ロープ16bに接続される。また、各ウインチ17は、ウインチ取付手段19により、対応する橋梁2の高欄10a又は10bに対して着脱自在に取り付けられる。各ウインチ取付手段19は、対応する高欄10a又は10bを、その外面側及び内面側から水平方向に挟んでウインチ17を解除可能に固定するためのクランプ部20と、クランプ部20に設けられ、クランプ部20を高欄10a又は10bに沿って移動させるのを補助するために高欄10a又は10bの上面で転動するローラ21とを有する。
【0050】
橋梁2の上には、各カメラ6a、6bを制御するためのモバイル端末としてのタブレット22と、各カメラ6a、6bに電力を供給するための小型電源装置23と、各カメラ6a、6bとタブレット22との間を無線で接続するネットワーク機器、具体的にはLAN用ハブ24やWi−Fiルータ25が配置される。
【0051】
各カメラ6a、6bへの電力の供給は、各カメラ6a、6bとLAN用ハブ24との間を接続するLANケーブル26を介して行われる。タブレット22には、例えば、各カメラ6a、6bのうちの2台分の映像を表示できるようになっており、かつ表示対象のカメラ6a、6bを切り替えることができるようになっている。
【0052】
図5は、第2索体37の端部を橋梁2の高欄10a側から桁下空間を経て高欄10b側に移送する際に用いられる球状部材放出装置40の正面図である。球状部材放出装置40は、基端側にバルブ41、先端側にバルブ42が設けられた筒状の圧力部43と、バルブ42の先端側に隣接して設けられた筒状の吐出部44と、吐出部44の先端側に隣接して設けられた筒状の砲身部45とを備える。
【0053】
圧力部43は、バルブ46を介してコンプレッサ又は真空ポンプに接続され、内部を陽圧又は負圧に設定できるようになっている。吐出部44には、第2索体37の端部が固定された球状部材が位置付けられる円環状の鉄板47が設けられる。砲身部45は、吐出部44に対し、ソケット48を介して着脱できるようになっている。
【0054】
圧力部43を負圧に設定して球状部材を放出する場合には、バルブ41を閉じ、バルブ42を開いた状態で、球状部材を吐出部44に挿入し、鉄板47の先端側に配置する。そして、砲身部45を吐出部44に取り付けて、真空ポンプにより圧力部43を所定の負圧に設定し、バルブ41を開放することにより、球状部材を放出することができる。
【0055】
圧力部43を陽圧に設定して球状部材を放出する場合には、バルブ41及び42を閉じた状態で、球状部材を吐出部44に挿入し、鉄板47の先端側に配置する。そして、砲身部45を吐出部44に取り付けて、コンプレッサにより圧力部43を所定の陽圧に設定し、バルブ42を開放することにより、球状部材を放出することができる。
【0056】
なお、圧力部43を陽圧に設定して球状部材を放出する場合には、バルブ41はなくてもよい。この場合、バルブ42として電磁弁を用いることにより圧力部43内の圧縮空気を高速で開放できるようにして、性能の向上や遠隔操作性の向上を図ってもよい。また、第2索体37の端部をより細いロープに接続し、このロープの先端部を、より小さい球状部材を放出する球状部材放出装置を用いて移送するようにしてもよい。
【0057】
この構成において、橋梁点検システム1を用いた橋梁2の点検は、少なくとも2名の検査員によって行われる。すなわち、点検に際しては、まず、橋梁2の下の河川敷においてカメラ支持部材3が組み立てられる。その際に、各隣接する棒状部材7に対して対応する接続部材9が嵌合され、ボルト12がばか穴14を通してねじ穴13に螺合され、各棒状部材7が連結される。
【0058】
これにより、各接続部材9の中間部の曲がった部分により全体としての曲りが形成されたカメラ支持部材3が構成される。なお、両端の各接続部材9の端部には、ロッド部材15と、第1索体36及び第2索体37のロープ16aとが取り付けられている。
【0059】
次に、カメラ支持部材3に、必要な数のカメラ6a及び6bが、点検に適した所定の位置に所定の間隔を置いて取り付けられる。この取付けは、各カメラ6a又は6bが固定されたクランプ8を用いて行われる。
【0060】
このとき、カメラ6aは、カメラ支持部材3の曲りの外方(曲率中心と反対側)を向くように取り付けられる。カメラ6bは、カメラ支持部材3などが観察できるように、カメラ支持部材3に沿った方向を向くようにして、カメラ支持部材3の両端部に取り付けられる。
【0061】
カメラ支持部材3の第3位置P3には、第3索体38の一端が取り付けられる。第3索体38の他端は、
図1のように、第3索体38が一方の高欄10a側から高欄10aを超えるようにして、橋梁2上に配置される。
【0062】
次に、橋梁2の両側の高欄10a及び10bにそれぞれ取り付けられたウインチ17に一端側が取り付けられている第1索体36及び第2索体37のロープ16bの他端側が、各ウインチ17の操作により河川敷に下される。
【0063】
次に、第1索体36及び第2索体37のロープ16aとロープ16bとが、接続金具18を用いて接続される。このとき、第1索体36及び第2索体37によってカメラ支持部材3の両端部を吊り下げたときに、カメラ支持部材3の湾曲により凸んだ側(曲率中心と反対側)が上方を向くように、カメラ支持部材3とロープ16aとの位置関係が考慮される。
【0064】
次に、各ウインチ17により、各ロープ16bがそれぞれ巻き上げられる。このとき、上述のロッド部材15の回転範囲の制限などにより第1索体36及び第2索体37のロッド部材15との絡まりが防止されているので、特に作業員を配置して絡まりの有無を監視する必要はない。したがって、2名の作業員で2台のウインチ17を操作するだけで、巻上げ作業を行うことができる。
【0065】
図6は、以降の作業手順を示す。すなわち、上記のように第1索体36及び第2索体37でカメラ支持部材3をそれぞれ高欄10a及び10bから吊り下げて支持している状態において、まず、第1索体36及び第2索体37を操作することにより、カメラ支持部材3を橋梁2の1つの径間における最初の点検位置に配置する(第1工程S1)。この第1索体36及び第2索体37の操作は、ウインチ17を駆動させることにより、又はウインチ17を高欄10a及び10bに沿って移動させることにより行うことができる。
【0066】
これにより、カメラ支持部材3は、上述の湾曲により凸んだ側が上方を向いた姿勢で、橋梁2の1つの径間における床版4下方の点検位置に配置される。このとき、カメラ支持部材3は、自身の重量、カメラ6a、6b、クランプ8などに働く重力により、下方へ撓んだ状態となっている。この結果、カメラ支持部材3は、それが予め有する曲りが矯正されて、ほぼ直線の状態に遷移している。
【0067】
これにより、点検用のカメラ6aは、チルトやパン、ズームによることなく、すべて鉛直上方を向き、かつ同一の倍率で橋梁2の床版4の下面が撮影可能な状態となっている。また、カメラ6bは、すべてのカメラ6a及びカメラ支持部材3を含むその周囲の様子が確認できる状態となっている。すなわち、カメラ6a、6bは、この状態となるように、カメラ支持部材3に対してクランプ8により予め取り付けられている。
【0068】
次に、第1索体36及び第2索体37をそれぞれ高欄10a及び10bに沿って橋梁2の長さ方向に移動させながらカメラ6a及び6bにより該1つの径間における点検を行う(第2工程S2)。この点検を行っている様子が
図7に示されている。
【0069】
なお、
図7では、主桁11の数が2つである橋梁2について、3台の点検用のカメラ6aを用いて点検を行う様子が示されている。このように、主桁11の数や、橋梁2の幅に応じて、カメラ6aの台数や、カメラ支持部材3の長さが適宜選択される。
【0070】
最初の点検位置においては、タブレット22により各カメラ6a及び6bからのリアルタイムの映像により撮影範囲における床版4の異常の有無を確認しながら、必要な静止画像を取得するなどの橋梁2の点検が行われる。
【0071】
かかる点検に際しては、各カメラ6a及び6bのズームや、パン、チルトの操作が、各カメラ6a又は6b同時に又はカメラ6a及び6b毎に必要に応じて行われる。ただし、上述のように、カメラ6a及び6bは、ほぼ一直線上に位置しているので、ズームやパン、チルトの操作は、必要な映像を取得するに十分な範囲で行われる。取得される各静止画像の橋梁2上の位置は、各カメラ6a及び6bのカメラ支持部材3上の位置などによって特定され、記録される。
【0072】
これにより、現在の橋軸方向の点検位置(カメラ支持部材3の位置)において、橋軸に直角な方向のすべての床版4の下面を点検し、撮影して得られたデータがタブレット22により保存される。
【0073】
そして、このような点検作業が、点検位置を橋軸方向に変更しながら、当該1つの径間の各点検位置について順次行われる。点検位置の変更は、高欄10a及び10bに対するクランプ部20の固定を解除し、ウインチ取付手段19を高欄10a及び10bに沿って所望の位置まで移動させ、再度クランプ部20を高欄10a及び10bに固定することにより行われる。
【0074】
かかる一連の点検作業は、タブレット22にリアルタイムで表示されるカメラ支持部材3の両端部のカメラ6bからの画像により、橋梁点検システム1の床版4の下の部分、すなわち点検用のカメラ6a、各棒状部材7などの全体の状況をリアルタイムで確認しながら行われる。
【0075】
このようにして、橋梁2の1つの径間SP1についての点検作業が終了したときの様子が
図8において模式的に示されている。
【0076】
図8〜
図14では、第2工程S2が完了した時点から第6工程S6が完了するまでのカメラ支持部材3及び第1〜第3索体36〜38の様子が示されている。理解を容易にするために、
図8〜
図14において、橋梁点検システム1、橋梁2等はデフォルメして示され、ウインチ17等の表示は省略されている。
【0077】
図8のように、1つの径間SP1の点検作業が終了すると、次に、隣の径間SP2についての点検作業を行うために、カメラ支持部材3を径間SP1から径間SP2に移動させる。
【0078】
すなわち、まず、第2索体37によるカメラ支持部材3の支持を解除し、第1索体36及び第3索体38で、径間SP1において高欄10aからカメラ支持部材3を支持する(第3工程S3)。
【0079】
この第3工程S3は、本実施形態では、
図9〜
図11のように、カメラ支持部材3を径間SP1の桁下空間において回動させながら行われる。すなわち、まず、
図9のように、カメラ支持部材3の第2索体37を徐々に下方に送り出しながら第3索体38による支持力を徐々に強めてゆく。そして、
図10のように、完全に第2索体37による支持を解除し、第3索体38により支持した状態とする。
【0080】
この間に、第2索体37のカメラ支持部材3に固定されていない側の端部は、高欄10aから、先端に鉤を有する棒などを用いて手繰り寄せ、
図10のように、橋梁2上に配置しておく。
【0081】
図10の状態になった後、第3索体38を引き上げて、カメラ支持部材3の当該端部を上昇させる。これにより、カメラ支持部材3を高欄10aに沿った姿勢となるように配置する。なお、第3索体38の送り出しや引き上げなどの操作は、操作員が橋梁2上から手作業で行うことができる。
【0082】
この第3工程S3が完了すると、
図11に示すように、カメラ支持部材3が、ほぼ水平な姿勢で、第1索体36及び第3索体38により高欄10aから支持された状態となる。
【0083】
次に、第1索体36及び第3索体38を高欄10aに沿って移動させることにより、カメラ支持部材3を径間SP1の隣の径間SP2に移動させる(第4工程S4)。第1索体36の移動は、これを支持している高欄10a上のウインチ17を高欄10aに沿って移動させることにより行うことができる。第3索体38の移動は、操作員が第3索体38を把持して行うことができる。これにより、
図12に示すように、カメラ支持部材3は、隣の径間SP2において高欄10aから吊り下げられた状態となる。
【0084】
次に、カメラ支持部材3の第2位置P2を第2索体37により橋梁2の他方の高欄10bから支持できるように第2索体37を準備する(第5工程S5)。この準備は、本実施形態では、第2索体37の他端側の端部を当該隣の径間SP2の桁下空間を経て橋梁2の他方の高欄10b側に移送することにより行われる。
【0085】
具体的には、
図13のように、第2索体37の他端側の端部に取り付けられた球状部材を、橋梁2の該一方の高欄10aに取り付けて該隣の径間SP2における主桁11(
図7参照)より低い位置に配置した球状部材放出装置40により、径間SP2の桁下空間を経て、橋梁2が架けられた両岸のうちの一方の岸に向けて放出する。そして、該一方の岸に放出された球状部材を橋梁2の他方の高欄10b側に転送する。この転送は、作業員が徒歩により行うことができる。
【0086】
次に、
図14のように、第2索体37による支持を開始して第3索体38によるカメラ支持部材3の支持を解除する(第6工程S6)。
【0087】
この後、該隣の径間SP2について上述の第1工程S1及び第2工程S2と同様の工程により点検を行う(第7工程S6)。さらに、第3〜第6工程S3〜S6、第7工程(第1、第2工程S1、S2)を順次繰り返すことにより、橋梁2の残りの複数の径間についても順次点検を行うことができる。
【0088】
このようにして、各径間での点検を完了すると、対岸においてカメラ支持部材3を降ろし、橋梁2の点検を終了することができる。
【0089】
なお、橋梁2の点検は、橋梁2上で組み立てたカメラ支持部材3を高欄10a越しに吊り下げて橋梁の最初の径間の橋桁の下まで降ろすことにより
図11の状態とし、その最初の径間について上述の第5工程から点検を開始し、上記のように各工程を繰り返すことにより、各径間についての点検を行うようにしてもよい。この場合、最後の径間の点検が完了したとき、カメラ支持部材3を橋梁2上に引き上げて、橋梁2の点検を終了するようにしてもよい。これによれば、点検作業のすべてを橋梁2上で行うことができる。
【0090】
以上のように、本実施形態によれば、第1〜第3索体36〜38を用いてカメラ支持部材3を支持し、カメラ支持部材3を橋梁2から吊り下げた状態のまま、橋梁2の各径間SP1、SP2の間を移動させて橋梁2の点検を行うことができる。したがって、各径間の下で川が流れているような場合でも、支障なく各径間での検査を行うことができる。
【0091】
図15A及び
図15Bは、本発明の第2実施形態の橋梁点検方法に係る橋梁点検システム60のカメラ支持部材3を橋梁の長さ方向に沿って視た様子を示す図である。
図15A及び
図15Bにおいて、
図1と同じ符号は、同様の要素を示す。
【0092】
図15A及び
図15Bは、カメラ支持部材3を隣接する径間で移動させる際に、カメラ支持部材3を支持する索体を、その索体のうちの第2索体37b及び第3索体38bの間で切り替えるときの様子を示している。すなわち、
図15Aでは、カメラ支持部材3を第1索体36b及び第3索体38bで支持しており、
図15Bは、カメラ支持部材3を第1索体36b及び第2索体37bで支持している。
【0093】
本実施形態の橋梁点検方法は、第1実施形態の場合と同様に上記の第1〜第7工程S1〜S7に従って行われ、
図6のフローチャートが適用さる。ただし、使用されるシステムの構成、並びに第1工程S1〜第6工程S6の具体的内容においては、第1実施形態の場合と異なる点がある。
【0094】
システム構成の相違点として、カメラ支持部材3には、その一方の端部である第2位置P2からカメラ支持部材3の長さ方向に延出し、第2位置P2を支点として回動可能な延出部材50が設けられる。カメラ支持部材3の第2位置P2側の端部には、ロッド部材15は設けられていない。カメラ支持部材3の第1位置P1又はその近傍には、所定の重量を有する重り52が取り付けられる。
【0095】
また、第1索体36bの所定の固定位置F1には、クランプ装置51が設けられる。クランプ装置51は、第3索体38bが摺動自在に通過し得るようになっていて、通過する第3索体38bを任意の位置においてクランプすることができる。カメラ支持部材3を橋梁2上から吊り下げる際には、第3索体38bの所定の固定位置F2がクランプ装置51によりクランプされる。
【0096】
クランプ装置51は、第1実施形態における第1索体36bの二股に分かれていないロープ16bの部分に設けられる。クランプ装置51としては、例えば、遠隔操作用のレバーを備え、このレバーをワイヤなどで橋梁2上からリターンばねの付勢力に抗して引くことにより第3索体38bのクランプを開放し、リターンばねの戻りを許容することにより第3索体38bをクランプするように構成されたものを採用することができる。
【0097】
あるいは、クランプ装置51は、遠隔から駆動されるモータにより第3索体38bをクランプし及び開放するものであってもよい。
【0098】
また、延出部材50の先端部には、リング状の第1係合部53が設けられる。これに対応して、第2索体37bは、1本のロープで構成されており、その先端部には、第1係合部53と係合可能な鉤状の第2係合部54が設けられる。
【0099】
第3索体38bが取り付けられるカメラ支持部材3の第2位置P2は、カメラ支持部材3の長さ方向のほぼ中心に配置される。延出部材50の長さは、カメラ支持部材3の長さの1/4程度とされる。重り52の重さは、カメラ6a、6bなどが取り付けられた状態のカメラ支持部材3の重さと同程度である。
【0100】
これらの配置、長さ、重さを採用することにより、クランプ装置51が第3索体38bの固定位置F2をクランプしている間、カメラ支持部材3を、ほぼ水平な状態で、第1索体36b及び第3索体38bによって吊り下げた状態とすることができる。
【0101】
この状態で、
図15Aに示すように、カメラ支持部材3を、水平面内で橋梁2に垂直となるように回転させた場合には、カメラ支持部材3の重り52側の端部が、橋梁2の桁下空間から、ほぼ延出部材50の長さの分だけ横方向に突出した状態となる。
【0102】
図6の各工程は、本実施形態においては次のようにして行われる。すなわち、第1工程S1における第2索体37bによるカメラ支持部材3の位置P2における支持は、
図15Bのように、延出部材50がカメラ支持部材3の長さ方向に延出した初期状態から上方に回動した状態で、第1係合部53に係合した第2係合部54を介して行われている。位置P1の支持は、第1実施形態の場合と同様に、
図4のようにロッド部材15を介して行われている。
【0103】
そして、第1実施形態の場合と同様にして、第1工程S1及び第2工程S2を行うことにより、1つの径間SP1の点検が行われる。この点検が終了すると、隣の径間SP2の点検を行うために、カメラ支持部材3を橋梁2の一方の高欄10aから吊り下げて支持する上述の第3工程S3を行う必要がある。
【0104】
この第3工程S3は、第1実施形態の場合と異なり、
図16に示すように、第2索体37bによるカメラ支持部材3の支持を解除する係合解除工程S3aと、クランプ装置51で第3索体38bをクランプするクランプ工程S3bと、カメラ支持部材3を、一方の高欄10aの下方において高欄10aに沿った姿勢にする第1回転工程S3cとで構成される。
【0105】
係合解除工程S3aは、第2索体37bを下方に送って延出部材50を、カメラ支持部材3と一直線をなす初期状態に戻し、第1係合部53に対する第2係合部54の係合を解除することにより行われる。
【0106】
クランプ工程S3bは、係合解除工程S3aと並行して、クランプ装置51に通してある第3索体38bを一方の高欄10aから引き上げて、第3索体38bの固定位置F2がクランプ装置51に達したときにクランプ装置51で第3索体38bをクランプすることにより行われる。
【0107】
このクランプ工程S3bが完了すると、カメラ支持部材3の第1位置P1及び第2位置P2の間の部分を底辺とし、第1索体36b及び第3索体38bの固定位置F1及びF2よりも低い部分を他の2辺とする三角形が形成される。これにより、カメラ支持部材3が第1索体36b及び第3索体38bによって支持された状態となる。
【0108】
第1回転工程S3cは、クランプ工程S3bの後、第1索体36bの固定位置F1よりも上の部分を回転軸線としてカメラ支持部材3を回転させ、カメラ支持部材3を、一方の高欄10aの下方において該高欄10aに沿った姿勢にすることにより行われる。カメラ支持部材3の回転は、高欄10aから(高欄10a越しに)、棒などを用いてカメラ支持部材3に回転方向の力を加えることにより行うことができる。
【0109】
このようにして第3工程が完了すると、第1索体36b及び第3索体38bを一方の高欄10aに沿って移動させる第4工程が、第1実施形態の場合と同様にして行われる。
【0110】
図17に示すように、次の第2索体37bを準備する第5工程S5は、次のような内容の第2回転工程S5aと、係合工程S5bとで構成される。また、第2索体37bによる支持を開始して第3索体38bによる支持を解除する第6工程S6は、次のような内容のクランプ解除工程S6aにより構成される。
【0111】
すなわち、第2回転工程S5aでは、第1索体36bの固定位置F1よりも上の部分を回転軸線としてカメラ支持部材3を回転させ、延出部材50の先端部を、他方の高欄10bの下方に位置させる。この回転は、例えば、橋梁2の高欄10aから棒状の部材を用いて、カメラ支持部材3の第1位置P1近傍に、そのような回転が生じるような力を加えることよって生じさせることができる。
【0112】
次の係合工程S5bでは、延出部材50の第1係合部53に、他方の高欄10bから降ろした第2索体37bの第2係合部54を係合させる。この係合は、例えば第1係合部53をリング状の部材で構成し、第2係合部54を、このリング状の部材に引っ掛けられるような形状を有する鉤状の部材で構成しておくことにより、容易に行うことができる。
【0113】
これにより、カメラ支持部材3の第2位置P2を第2索体37bにより橋梁2の他方の高欄10bからウインチ17を用いて牽引できるように第2索体37bが準備されたことになる。
【0114】
クランプ解除工程S6aでは、第2索体37bを高欄10bの方向に引き上げることにより延出部材50を上方に回動させながら、上述のクランプ工程S3bで行われた第3索体38bの固定位置F2におけるクランプを解除する。これにより、
図15Bのように、カメラ支持部材3についての第2索体37bによる支持を開始して第3索体38bによる支持が解除された状態となる。
【0115】
次の第7工程S7は、第1実施形態の場合と同様に、上記の第1工程S1及び第2工程S2を繰り返すことにより行われる。
【0116】
以上のように、第2実施形態によれば、係合解除工程S3a及びクランプ工程S3bによりカメラ支持部材3を安定して第1索体36b及び第3索体38bにより支持し、その後の第1回転工程S3c、第4工程及び第2回転工程S5aを経て、カメラ支持部材3を橋梁2の1つの径間SP1からその隣の径間SP2に移動させることができる。
【0117】
また、この径間の移動の前後では、クランプ装置51、延出部材50、第1係合部53、第2係合部54の機能により、係合解除工程S3a、クランプ工程S3b、クランプ解除工程S6a及び係合工程S5bを経て、第3索体38bによる支持と第2索体37bによる支持との切替えを容易に行うことができる。また、このような径間の移動及び支持の切替えのための作業は、すべて橋梁2上で行うことができる。
【0118】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1実施形態の第5工程S5における第2索体37の他端側の端部を他方の高欄10b側に移送する操作は、球状部材放出装置40によらずに、ドローンを用いて行うようにしてよい。
【0119】
すなわち、ドローンに第2索体37の他端側の端部を固定し、ドローンを高欄10a側から当該径間の桁下空間を経て高欄10b側に飛行させ、橋梁2の高欄10b側に着地させることにより行うようにしてもよい。
【0120】
また、球状部材放出装置40の代わりに、弓矢やクロスボウを用いて、第2索体37の端部や、これを取り付けた部材などを放出するようにしてもよい。また、球状部材に限らず、他の形状の部材、例えば円錐、矩形、矢、又は円盤の形状を有する部材を放出する放出装置を用いてもよい。
【0121】
また、橋梁2が、その一方の高欄10a側から他方の高欄10b側に向かう方向の流れを有する河川に架けられている場合には、浮き輪を用いて第5工程S5における第2索体37の端部の移送を行うようにしてもよい。
【0122】
この場合、第5工程S5は、第2索体37の端部を浮き輪に固定する浮輪固定工程と、浮輪固定工程の後、浮き輪を一方の高欄10a側から当該河川の流れに投入する浮輪投入工程と、浮輪投入工程の後、当該河川の流れによって他方の高欄10b側に流れた浮き輪を該他方の高欄10b側から回収する浮輪回収工程とで構成することができる。