(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
外部から液体導入経路を経由して導入する液体によって液体旋回流を発生させる第一旋回室と、前記第一旋回室内の液体旋回流を流入させ外部から導入した気体と混合させて微細気泡混じりの気液旋回流を発生させる第二旋回室と、前記第二旋回室内の気液旋回流を流入させて乱流化する気液混合室と、前記気液混合室内の微細気泡混じりの気液混合流体を外部へ排出する所定口径の排出孔と、を備え、
前記第一旋回室が、両方の端部に隔壁を有する第一筒状体と、一方の前記隔壁を貫通して前記第一筒状体内に向かって挿入された筒状の液体導入経路と、前記液体導入経路の軸心と捩れの位置をなす方向に沿って当該液体導入経路の周壁に開設された液体流出孔と、を備え、
前記第二旋回室が、両方の端部に隔壁を有し、少なくとも一方の端部側が前記第一筒状体内に収容保持された第二筒状体と、前記第一筒状体内に位置する前記第二筒状体の周壁にその軸心と捩れの位置をなす方向に沿って開設された液体導入孔と、前記第二筒状体内に気体を流入させる気体導入経路と、前記第二筒状体の他方の端部の隔壁に開設された貫通孔と、を備え、
前記気液混合室が、前記貫通孔を経由して前記第二筒状体内と連通する混合容器と、前記混合容器の隔壁に開設された複数の前記排出孔と、を備えた気液混合ノズル。
【背景技術】
【0002】
水中あるいはその他の液体中にマイクロバブルやナノバブルとも呼称される微細気泡を発生させる機能を有する器具や装置については、従来、様々な形状、構造を有するものが提案されているが、本発明に関連するものとして、例えば、特許文献1に記載された「微細気泡発生装置」あるいは特許文献2に記載された「高濃度気体溶解液の製造装置」などがある。
【0003】
特許文献1に記載された「微細気泡発生装置」は、円筒形の第一の円筒状密閉容器と、気液混合流体の旋回可能な空間を有する円筒形第二の円筒状開放容器と、第一の円筒状密閉容器の内側面の接線方向に沿って気液混合流体を導入する導入口と、エジェクター導入口を備えた気液導入口と、第一の円筒状密閉容器のエジェクター導入口が配設された面と直交する底面壁と、その壁面と対向し、導入口の近くに位置する天井壁と、円筒形第二の円筒状開放容器の中心軸線に位置し、天井壁を貫通した気液吐出口を備えた第二の円筒状開放容器により構成され、気液混合流体に旋回力を加え、剪断力により気泡を微細化する機能を有している。
【0004】
特許文献2に記載された「高濃度気体溶解液の製造装置」は、円筒形の内側スペースを有する容器本体の一端側が壁体で閉口され、他端側がその中央部に前記円筒形の内側スペースの内径より小さな径の開口を有する壁体で覆われてなる容器本体と、前記一端側の壁体に開設された被溶解気体導入孔と、前記容器本体の円筒部の内壁面の一部に円周の接線方向に開設された加圧液体導入口とからなる旋回式気体溶解装置の前記他端側の壁体の中央部の開口に、一端部と他端部に開口部を有する壁体を備えた液体を貯留した別容器の一端部を結合して構成され、前記別容器他端部の開口部から高濃度気体溶解液を導出する機能を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された「微細気泡発生装置」は、粒径がマイクロメートルオーダーの気泡を効率的に発生させることができるという長所を有するが、マイクロメートルのレベルを超える大きな粒径の気泡が混在することがある。
【0007】
一方、特許文献2に記載された「高濃度気体溶解液の製造装置」は、液体中に気体を高効率で溶解することができるという長所を有するが、前述と同様、マイクロメートルのレベルを超える大きな粒径の気泡が混在することがある。また、この「高濃度気体溶解液の製造装置」は、特許文献2の[発明を実施するための形態]に記載されているように、加圧液体導入口に0.3MPaの加圧水を導入した場合、高濃度気体溶解液粒放出口から放出される高濃度気体溶解液流は水勢が強すぎて、空気中でシャワーなどとして利用することが困難となることがある。
【0008】
本発明の属する技術分野においては、液体に対する気体の溶解効率を高めること、及び、ナノメートルあるいはマイクロメートルのレベルを超える大きな粒径の気泡の混在を抑制することは、常に要請され続ける重要な解決課題である。
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、液体に対する気体の溶解効率が高く、ナノメートルあるいはマイクロメートルのレベルを超える大きな粒径の気泡の混在が極めて少ない気液混合ノズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の気液混合ノズルは、外部から液体導入経路を経由して導入する液体によって液体旋回流を発生させる第一旋回室と、前記第一旋回室内の液体旋回流を流入させ外部から導入した気体と混合させて微細気泡混じりの気液旋回流を発生させる第二旋回室と、前記第二旋回室内の気液旋回流を流入させて乱流化する気液混合室と、前記気液混合室内の微細気泡混じりの気液混合流体を外部へ排出する所定口径の排出孔と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、前記気液混合ノズルにおいては、
前記第一旋回室が、両方の端部に隔壁を有する第一筒状体と、一方の前記隔壁を貫通して前記第一筒状体内に向かって挿入された筒状の液体導入経路と、前記液体導入経路の軸心と捩れの位置をなす方向に沿って当該液体導入経路の周壁に開設された液体流出孔と、を備え、
前記第二旋回室が、両方の端部に隔壁を有し、少なくとも一方の端部側が前記第一筒状体内に収容保持された第二筒状体と、前記第一筒状体内に位置する前記第二筒状体の周壁にその軸心と捩れの位置をなす方向に沿って開設された液体導入孔と、前記第二筒状体内に気体を流入させる気体導入経路と、前記第二筒状体の他方の端部の隔壁に開設された貫通孔と、を備え、
前記気液混合室が、前記貫通孔を経由して前記第二筒状体内と連通する混合容器と、前記混合容器の隔壁に開設された複数の前記排出孔と、を備えたものとすることができる。
【0012】
さらに、前記気液混合ノズルにおいては、
複数の前記排出孔を、前記混合容器の前記貫通孔と対向する隔壁面に仮想される複数の放射曲線に沿って並んだ状態に配列することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、液体に対する気体の溶解効率が高く、ナノメートルあるいはマイクロメートルのレベルを超える大きな粒径の気泡の混在が極めて少ない気液混合ノズルを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、
図1〜
図6に基づいて、本発明の実施形態である気液混合ノズル100について説明する。
図1〜
図4に示すように、本実施形態の気液混合ノズル100は、外部から液体導入経路1を経由して導入する液体Rによって液体旋回流F1を発生させる第一旋回室10と、第一旋回室10内の液体旋回流F1を流入させ外部から気体導入経路50を経由して導入した気体Gと混合させて微細気泡AB混じりの気液旋回流F2を発生させる第二旋回室20と、第二旋回室20内の気液旋回流F2を流入させて乱流化する気液混合室30と、気液混合室30内の微細気泡AB混じりの気液混合流体F3を外部へ排出する所定口径の複数の排出孔40と、を備えている。
【0016】
図2,
図3に示すように、第一旋回室10は、両方の端部に隔壁11a,11bを有する円筒状の第一筒状体11と、一方の隔壁11aを貫通して第一筒状体11内に向かって挿入された円筒状の液体導入経路1と、液体導入経路1の軸心1cと捩れの位置をなす方向に沿って液体導入経路1の周壁に開設された複数の液体流出孔2と、を備えている。第一筒状体11内に位置する液体導入経路1の先端部は蓋体3で閉塞されている。円管状の気体導入経路50は、液体導入経路1の筒状周壁を貫通し、軸心1cと同軸をなすように配管され、蓋体3を貫通して第二旋回室20内に連通している。本実施形態においては、液体導入経路1の液体流出孔2は軸心1cの周りに60度間隔で6個開設しているが、これに限定するものではない。
【0017】
図2,
図4に示すように、第二旋回室20は、両方の端部に隔壁21a,21bを有し、一方の端部側(隔壁21a側)が第一筒状体11内に収容保持された円筒状の第二筒状体21と、第一筒状体11内に位置する第二筒状体21の周壁にその軸心21cと捩れの位置をなす方向に沿って開設された複数の液体導入孔22と、第二筒状体21内に気体Gを流入させる気体導入経路50と、第二筒状体21の他方の端部の隔壁21bの中心部(軸心21cを含む位置)に開設された円形の貫通孔23と、を備えている。
【0018】
本実施形態において、第二筒状体21の複数の液体導入孔22は口径3mmであり、これらの液体導入孔22を、軸心21cの周りに約70度の間隔をおいて、且つ、軸心21c方向に沿って所定距離ずつ変位させて配置している。これにより、複数の液体導入孔22は、軸心21cを中心とする螺旋に沿って所定間隔ごとに並ぶように配列されているが、これに限定するものではない。
【0019】
図1,
図2に示すように、気液混合室30は、貫通孔23を経由して第二筒状体21内と連通する円筒状の混合容器31と、第二筒状体21の隔壁21bと対向する位置にある、混合容器31の隔壁(底板41)に開設された複数の排出孔40と、を備えている。
図5に示すように、複数の排出孔40は、底板41面に仮想される複数の放射曲線Lに沿って並んだ状態に配列されている。本実施形態では、5本の放射曲線Lに沿って、口径2mmの排出孔40を21個開設しているが、これに限定するものではない。
【0020】
図1,
図2に示すように、気液混合ノズル100においては、一本の円筒部材5内に、貫通孔23を有する円板部材4を、当該円筒部材5内を横断する状態で固着することにより、第一旋回室10及び気液混合室30を区画形成している。また、第一筒状体11内において、第二筒状体21の下端開口部21dを円板部材4に固着して第二旋回室20を形成したことにより、円板部材4は、第一旋回室10の隔壁11b及び第二旋回室20の隔壁21bの機能を兼備している。なお、前述した構造は一例であり、これに限定するものではない。
【0021】
次に、
図6に基づいて、
図1に示す気液混合ノズル100の使い方及び機能などについて説明する。
図6に示すように、水槽60内に貯留された水Wの中に気液混合ノズル100が浸漬され、気液混合ノズル100の液体導入経路1とポンプPとが送水管62で接続されている。また、ポンプPから水槽60内の水Wの中に向かって吸水管61が配管されている。気液混合ノズル100の気体導入経路50の上流側(気体送給側)は水面W1から突出して水槽60外に配設されている。
【0022】
気液混合ノズル100及びポンプPを
図6に示すようにセットした後、ポンプPを稼働させると、水槽60内の水Wが吸水管61及び送水管62を経由して、気液混合ノズル100の液体導入経路1へ供給される。これと並行して、気液混合ノズル100に対し、気体導入経路50を経由して空気が供給される。この場合、空気体導入経路50を経由して供給される空気は、後述するように、第二旋回室20(
図2参照)の内部に生じる減圧に基づく吸気圧によって自吸される。
【0023】
液体導入経路1を経由して気液混合ノズル100に供給された水Wは、
図2に示すように、液体導入経路1の蓋体3に向かって流動した後、複数の液体流出孔2から第一旋回室10内へ流出する。
図3に示すように、複数の液体流出孔2はそれぞれ軸心1cに対して捩れの位置をなす方向(本実施形態では、前記方向の一つである液体導入経路1の周壁の接線方向)に沿って開設されているので、複数の液体流出孔2から流出する水流により、第一旋回室10内には液体旋回流F1が形成される。
【0024】
この後、第一旋回室10内に形成される液体旋回流F1は、
図2,
図4に示すように、第二旋回室20の周囲を旋回しながら、複数の液体導入孔22を通過して第二旋回室20内へ流入する。
図4に示すように、複数の液体導入孔22はそれぞれ軸心21cに対して捩れの位置をなす方向(本実施形態では、前記方向の一つである液筒状体21の周壁の接線方向)に沿って開設されているので、複数の液体導入孔22から流入する水流によって第二旋回室20内に軸心21c周りの旋回水流が発生するとともに、気体導入経路50から導入される空気と混合した気液旋回流F2が形成される。
【0025】
第二旋回室20内に形成される気液旋回流F2は軸心21cの周りを高速回転するので、気液旋回流F2の中心付近(軸心21cを含む領域)には減圧空洞部Xが発生する。気体導入経路50を経由して第二旋回室20内へ導入された空気は減圧空洞部X内へ流入し、高速回転する気液旋回流F2によって細かく剪断されるので、気液旋回流F2内には大量の微細気泡ABが発生する。
【0026】
大量の微細気泡ABを含む気液旋回流F2は隔壁21bに向かって流動し、隔壁21bの中心にある貫通孔23を通過し、大量の微細気泡ABを含む気液混合流体F3の乱流となって気液混合室30内を拡散流動する。このとき、前記乱流の撹拌作用により、大量の微細気泡ABは気液混合流体F3内に均等に分散混合された状態となる。
【0027】
気液混合室30内において撹拌混合された気液混合流体F3は、
図2に示すように、底板41に開設された複数の排出孔40を通過して排出され、水槽60内の水Wの中へ拡散流動して行く。これにより、水W中に大量の空気を溶解させることができる。
【0028】
本実施形態の気液混合ノズル100においては、排出孔40の口径は2mmに設定しているので、気液混合室30内の気液混合流体F3中に粒径2mmを超える大粒径の気泡Bが発生することがあっても、気液混合ノズル100の外部(水Wの中)へ排出されることはない。なお、排出孔40の口径は2mmに限定するものではないので、使用状況などに応じて適切な口径に設定することができる。
【0029】
また、本実施形態の気液混合ノズル100においては、第二旋回室20(
図2参照)の内部に生じる減圧に基づく吸気圧により、空気は気体導入経路50を経由して第二旋回室20内へ自吸されるが、必要に応じてエアポンプ(図示せず)を用いて圧送することもできる。
【0030】
本実施形態の気液混合ノズル100においては、第一旋回室10内に液体旋回流F1を発生させ、これを第二旋回室20内へ流入させることにより、高速で回転する気液旋回流F2を形成するので、大量の微細気泡ABを効率良く発生させることができ、気体の溶解効率が高まる。第一旋回室10内で発生させた液体旋回流F1を第二旋回室20内へ導入する方式としたことにより、第二旋回室20内の気液旋回流F2の旋回流速を高めることができるため、従来に比べて小型のポンプPでも大量の微細気泡ABを発生させることができる。
【0031】
また、気液混合ノズル100においては、気液混合室30の底板41に開設された複数の流出孔40を通して微細気泡AB混じりの気液混合流体F3を排出するので、排出孔40より排出される微細気泡AB混じりの気液混合流体F3中に粒径の大きな気泡Bが混在するのを防止することができる。このように、気液混合ノズル100を使用することにより、液体(例えば、水)に対する気体(例えば、空気)の溶解効率を大幅に高めることができる。
【0032】
図6に示すように、気液混合ノズル100を用いて処理した水槽60中の水Wには大量の空気が溶解しているため、この水Wを植物栽培用水として使用すると、植物の生育状態を大幅に向上させることができる。例えば、気液混合ノズル100を用いて処理した水Wをトマトの水耕栽培用水として使用したり、サツマイモ苗を水Wに一定時間浸漬して培地に植えたりしたところ、いずれの場合においても、収穫量を大幅に高めることができた。
【0033】
なお、
図6においては、気液混合ノズル100を用いて水槽60中の水Wに空気を溶解させる場合について説明しているが、気液混合ノズル100の用途を限定するものではないので、気液混合ノズル100は、水W以外の液体に対し、空気以外の様々な気体を溶解させる分野においても使用することができる。
【0034】
本実施形態に係る気液混合ノズル100は、外部から液体導入経路1を経由して導入する液体Rの圧力が0.02MPa程度の低圧であっても、気体導入経路50を経由する気体の自吸が始まり微細気泡の発生が可能である。従って、水道水、省電力の安価なポンプで利用できるので、利用分野が大きく広がる。
【0035】
また、気液混合ノズル100は、液体導入経路1を経由して導入する液体Rの圧力(水圧)が0.1MPa以下であっても使用することができるので、シャワーなどとしても、安全に使用することができる。
【0036】
気液混合ノズル100においては、第一旋回室10を設けたことにより、第二旋回室20への液体導入孔22を複数設けることが可能となり、0.02MPa程度の水圧でも、第二旋回室20内の旋回流が乱れることなく生成される。一方、特許文献2記載の発明においては、同文献中の
図1に記載されているように、加圧液体導入口4が1箇所であるため、円筒部2a内に旋回流を乱れることなく発生させるには、必然的に、加圧液体導入口4に供給する液体の圧力を高める必要がある。
【0037】
気液混合ノズル100においては、第二旋回室20から気液混合室30へ流入した気液中の気体が過剰になり気液混合室30内で滞留すると、第二旋回室20内の減圧空洞部Xと連通し、減圧が解消されると吸気圧も解消され、気体導入経路50からの気体Gの供給がストップするので、気体Gの過剰状態が防止され、大径の気泡の発生を防止することができる。このため、気液混合ノズル100の排出孔40から排出される気液混合流体F3においては、大きな粒径の気泡の混在が極めて少ない。また、気液混合ノズル100においては、気体Gの供給量が常に自動調整されるので、気体Gの供給量を調整するためのコック(開閉弁)なども不要である。
【0038】
気液混合ノズル100をシャワーなどとして使用する場合は、液体導入経路1に供給する水圧を弱め、前記機能を積極的に利用することにより、気液混合ノズル100の排出孔40から排出される水流(気液混合流体F3)に脈動を発生させることができるため、心地良いマッサージ効果を得ることができる。
【0039】
また、
図1〜
図6に基づいて説明した気液混合ノズル100及びその使い方や用途などは一例を示すものであり、本発明の気混合ノズル及びその使い方や用途などは、前述した気液混合ノズル100に限定されない。