前記加工物が、シアニディウム目(Cyanidiales)に属する微生物の細胞及び細胞由来物の乾燥物、粉砕物及び乾燥粉末である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の金の回収方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水銀を使用した金のスモールスケールマイニングには、従事者の健康への悪影響、環境中に放出される水銀による環境汚染等の問題がある。スモールスケールマイニング自体を禁じても従事者の経済的事情から実効性は乏しく、また代替法も安価に実施できるものでなければ普及しないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、より安全にかつより安価に金を回収できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、金、ヨウ素、ヨウ素の塩、及び還元剤が溶解した金溶液から金回収剤により金を回収する工程を備え、上記金回収剤が、シアニディウム目(Cyanidiales)に属する微生物の細胞及び細胞由来物、及びこれらの加工物、並びにこれらを模した人工物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、金の回収方法に関する。
【0007】
本発明に係る金の回収方法は、金、ヨウ素、ヨウ素の塩、及び還元剤が溶解した金溶液からシアニディウム目に属する微生物の細胞等を含む金回収剤により金を回収するものであるため、従事者及び環境に悪影響を与える材料を使用する必要がなく、安全に金の回収が可能である。また、本発明に係る金の回収方法は、必須とする材料を安価に調達することができ、また金の回収率が高く採掘に係るコストを低減することができるため、安価に金を回収することができる。
【0008】
本発明に係る金の回収方法が、高い回収率を有する理由は明らかではないが、金溶液中に金、ヨウ素、ヨウ素の塩、及び還元剤が溶解していることにより、シアニディウム目に属する微生物の細胞等を含む金回収剤に吸着し易い形態で金が溶解しているためであると、本発明者は推察している。なお、後述の実施例及び比較例に示したとおり、金、ヨウ素及びヨウ素の塩が溶解した金溶液に対して、シアニディウム目に属する微生物の細胞等を含む金回収剤を使用しても、金の回収率は極めて低い。
【0009】
上記金の回収方法において、上記ヨウ素の塩は、ヨウ素とアルカリ金属との塩、及びヨウ素とアルカリ土類金属との塩から選ばれる少なくとも1種であってよい。これにより、本発明による上記効果がより顕著になる。
【0010】
上記金の回収方法において、上記ヨウ素の含有量は、上記金溶液全量を基準として、0.01wt%以上12wt%以下であってよい。これにより、本発明による上記効果がより顕著になる。
【0011】
上記金の回収方法において、上記ヨウ素の塩の含有量は、上記金溶液全量を基準として、0.005wt%以上8wt%以下であってよい。これにより、本発明による上記効果がより顕著になる。
【0012】
上記金の回収方法において、上記加工物は、シアニディウム目(Cyanidiales)に属する微生物の細胞及び細胞由来物の乾燥物、粉砕物及び乾燥粉末であってよい。
【0013】
上記金の回収方法において、上記細胞由来物は、シアニディウム目(Cyanidiales)に属する微生物の細胞の一部であってよい。
【0014】
上記金の回収方法において、上記還元剤は、アスコルビン酸を含むものであってよい。これにより、本発明による上記効果がより顕著になる。
【0015】
上記金の回収方法において、上記還元剤の含有量は、上記金溶液全量を基準として、0.2w/v%以上8w/v%以下であってよい。これにより、本発明による上記効果がより顕著になる。
【0016】
本発明はまた、金、ヨウ素及びヨウ素の塩が溶解した金溶液から金を回収するためのキットであって、少なくとも金回収剤を含み、当該金回収剤が、シアニディウム目(Cyanidiales)に属する微生物の細胞及び細胞由来物、及びこれらの加工物、並びにこれらを模した人工物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、キットにも関する。
【0017】
上記キットは、金回収剤に加えて、更に還元剤を含むものであってよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、より安全にかつより安価に金を回収できる方法を提供することができる。本発明に係る金の回収方法は、水銀を使用した金のスモールスケールマイニングの代替法として普及する可能性があり、従事者の健康への悪影響、環境中に放出される水銀による環境汚染等の問題の解決が期待される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0020】
〔金の回収方法〕
本実施形態に係る金の回収方法は、金、ヨウ素、ヨウ素の塩、及び還元剤が溶解した金溶液から金回収剤により金を回収する工程(回収工程)を備える。回収工程で使用される金回収剤は、シアニディウム目(Cyanidiales)に属する微生物の細胞及び細胞由来物、及びこれらの加工物、並びにこれらを模した人工物からなる群より選択される少なくとも1種(まとめて「シアニディウム目に属する微生物の細胞等」ともいう。)を含む。
【0021】
回収工程では、金、ヨウ素、ヨウ素の塩、及び還元剤が溶解した金溶液から金回収剤により金を回収する。本実施形態に係る金回収剤は、シアニディウム目に属する微生物の細胞等を含んでいる。このため、金溶液中に溶解している金が金回収剤に吸着するので、金回収剤と共に金を回収することができる。
【0022】
本実施形態に係る金の回収方法は、回収工程の後に、金回収剤に吸着した金を精製する工程(精製工程)を更に備えていてもよい。
【0023】
精製工程は、例えば、金が吸着した金回収剤を燃焼させて、金回収剤を焼失させることで金を精製する方法を適用して実施することができる。また、例えば、金が吸着した金回収剤を金属溶出用溶液に浸漬して、金を溶出することにより金を精製する方法を適用して実施することもできる。金属溶出用溶液としては、例えば、酸性のチオウレア溶液、アンモニア及びアンモニウム塩を含む混合溶液、酸溶液(例えば、塩酸溶液、王水)、アルカリ溶液(例えば、KOH溶液)、又は金属キレート溶液(例えば、EDTA溶液)を挙げることができる。
【0024】
回収工程は、金、ヨウ素、ヨウ素の塩、及び還元剤が溶解した金溶液と、金回収剤とが接触することが重要である。金、ヨウ素及びヨウ素の塩が溶解した溶液に還元剤を更に溶解させることで、シアニディウム目に属する微生物の細胞等を含む金回収剤に吸着し易い形態で金が溶解している金溶液になると考えられる。このため、金、ヨウ素、及びヨウ素の塩が溶解した溶液に対する、還元剤及び金回収剤の添加順序は任意である。したがって、例えば、金回収剤は、金、ヨウ素、及びヨウ素の塩が溶解した溶液に対して更に還元剤を溶解させた金溶液に添加してもよいし、金、ヨウ素、及びヨウ素の塩が溶解した金溶液に還元剤と共に添加してもよい。
【0025】
金溶液の溶媒は、例えば、水、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール等)、アセトニトリル等の有機溶媒、並びにこれらの2種又は3種以上を混合した混合溶媒を使用することができる。取り扱い性に優れることから、溶媒としては、水と低級アルコールの混合溶媒であることが好ましく、水とエタノールの混合溶媒(エタノール水溶液)であることがより好ましい。エタノール水溶液を使用する場合、エタノール水溶液中のエタノール濃度は、例えば、50〜90vol%であってよく、60〜80vol%であることが好ましい。
【0026】
ヨウ素の塩としては、溶媒中でヨウ化物イオンを放出する化合物であればよく、例えば、ヨウ素とアルカリ金属との塩、ヨウ素とアルカリ土類金属との塩が挙げられる。ヨウ素の塩の具体例としては、例えば、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化ルビジウム、ヨウ化セシウムが挙げられる。ヨウ素の塩は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
還元剤としては、有機還元剤であってもよく、無機還元剤であってもよい。
【0028】
有機還元剤としては、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸(イソアスコルビン酸)、エリソルビン酸ナトリウム、ギ酸、シュウ酸、シュウ酸カルシウム、シュウ酸ナトリウム、クエン酸等が挙げられる。有機還元剤に光学異性体が存在する場合、いずれの光学異性体を使用してもよい。無機還元剤としては、例えば、チオシアン化物、チオ硫酸塩、硫化ナトリウム、亜硫酸、亜硫酸塩、鉄粉等が挙げられる。
【0029】
還元剤としては、本発明による効果をより顕著に発揮できることから、有機還元剤が好ましく、アスコルビン酸(L−アスコルビン酸、D−アスコルビン酸及びこれらの混合物)、アスコルビン酸ナトリウム(L−アスコルビン酸ナトリウム、D−アスコルビン酸ナトリウム及びこれらの混合物)がより好ましい。還元剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
ヨウ素の含有量は、金溶液全量を基準として、例えば、0.01wt%以上12wt%以下であってよい。金の回収率をより高める観点からは、ヨウ素の含有量は、金溶液全量を基準として、0.1wt%以上6wt%以下であるのが好ましく、0.3wt%以上3wt%以下であるのがより好ましく、0.5wt%以上1.5wt%以下であるのが更に好ましい。
【0031】
ヨウ素の塩の含有量は、金溶液全量を基準として、例えば、0.005wt%以上8wt%以下であってよい。金の回収率をより高める観点からは、ヨウ素の塩の含有量は、金溶液全量を基準として、0.05wt%以上4wt%以下であるのが好ましく、0.1wt%以上2wt%以下であるのがより好ましく、0.2wt%以上1wt%以下であるのが更に好ましい。
【0032】
還元剤の含有量は、金溶液全量を基準として、例えば、0.2w/v%以上8w/v%以下であってよい。金の回収率をより高める観点からは、還元剤の含有量は、金溶液全量を基準として、0.3w/v%以上6w/v%以下であるのが好ましく、0.4w/v%以上4w/v%以下であるのがより好ましく、0.5w/v%以上3w/v%以下であるのが更に好ましい。
【0033】
金溶液中の金の濃度は、金が溶解する限りにおいて特に制限はないが、通常、金溶液全量を基準として、0.00002w/v%以上0.2w/v%以下である。金の回収率をより高める観点からは、金溶液中の金の濃度は、金溶液全量を基準として、0.0002w/v%以上0.1w/v%以下であるのが好ましく、0.001w/v%以上0.05w/v%以下であるのがより好ましい。
【0034】
本実施形態に係る金回収剤は、シアニディウム目に属する微生物の細胞及び細胞由来物、及びこれらの加工物、並びにこれらを模した人工物からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0035】
シアニディウム目に属する微生物としては、例えば、ガルディエリア属(Galdieria)、シアニジウム属(Cyanidium)、及びシアニディオシゾン属(Cyanidioshyzon)に属する微生物を挙げることができる。これらの中でも、ガルディエリア属に属する微生物が好ましく、Galdieria sulphurariaがより好ましい。シアニディウム目に属する微生物は、細胞内又は細胞表層において、金属溶液中から金を選択的に吸着して回収することができるという特徴を有する。
【0036】
シアニディウム目に属する微生物の細胞は、生細胞(増殖可能な細胞)であってもよく、死細胞(増殖不能な細胞)であってもよい。
【0037】
また、シアニディウム目に属する微生物は、上述した特徴を失わない限りにおいて、遺伝子組換え技術により、遺伝的改変を加えた組換え微生物であってもよい。
【0038】
シアニディウム目に属する微生物の細胞由来物は、シアニディウム目に属する微生物の細胞の一部を取り出したものであってよい。上述のとおり、シアニディウム目に属する微生物は、細胞内又は細胞表層において、金属溶液中から金を選択的に吸着して回収することができるため、細胞由来物は、細胞内由来物(例えば、細胞内小器官を含む細胞質)であってもよく、細胞表層由来物(例えば、細胞壁、細胞膜)であってもよい。
【0039】
シアニディウム目に属する微生物の細胞又は細胞由来物の加工物は、例えば、シアニディウム目に属する微生物の細胞又は細胞由来物の乾燥物、粉砕物及び乾燥粉末であってよい。
【0040】
乾燥物は、シアニディウム目に属する微生物の細胞又は細胞由来物に乾燥処理を施すことによって得ることができる。乾燥処理の方法としては、特に制限されず、例えば、スプレードライ処理、凍結乾燥処理、高温乾燥処理又は減圧乾燥処理等の公知の方法を用いることができる。
【0041】
粉砕物は、シアニディウム目に属する微生物の細胞又は細胞由来物に粉砕処理を施すことによって得ることができる。粉砕処理の方法としては、特に制限されず、例えば、ボールミル処理等の公知の方法を用いることができる。
【0042】
乾燥粉末は、シアニディウム目に属する微生物の細胞又は細胞由来物に上述の乾燥処理を施した後、粉末化処理を行うことで得ることができる。粉末化処理の方法としては、例えば、乾燥物に対して、上述の粉砕処理を行う方法を用いることができる。
【0043】
シアニディウム目に属する微生物の細胞、細胞由来物、又はこれらの加工物を模した人工物としては、例えば、これらを模して有機合成、3Dプリンティング等により作製された人工物等が挙げられる。
【0044】
本実施形態に係る金回収剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0045】
〔キット〕
本発明はまた、金を回収するためのキットにも関する。本実施形態に係るキットは、金、ヨウ素及びヨウ素の塩が溶解した金溶液から金を回収するためのキットであって、少なくとも金回収剤を含む。当該キットは、金回収剤に加えて更に還元剤を含むものであってよい。本実施形態に係るキットは、ヨウ素及びヨウ素の塩を含む溶液に純度の低い金(例えば、金鉱石等の固体金)を溶解させ、より純度の高い金を回収するために使用することができる。
【0046】
本実施形態に係るキットにおいて、還元剤及び/又は金回収剤の具体的態様は、上述した金の回収方法における還元剤及び/又は金回収剤の具体的態様を適用することができる。また、本実施形態に係るキットが還元剤及び金回収剤を含む場合、還元剤及び金回収剤は、別々にキットに含まれていてもよく、混合されて(例えば、還元剤と金回収剤の混合粉末として)キットに含まれていてもよい。
【0047】
本実施形態に係るキットは、還元剤及び金回収剤に加えて、ヨウ素及びヨウ素の塩を上述した溶媒に溶解させた溶液(ヨウ素溶液)を更に含むものであってよい。ヨウ素溶液としては、例えば、市販されているヨードチンキ、希ヨードチンキ等を使用してもよい。
【実施例】
【0048】
以下、実施例に基づき本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
〔実施例1〕
(G.sulphurariaの乾燥粉末の調製)
定常期まで増殖させたG.sulphurariaの細胞を、遠心分離により回収した。回収した細胞を80℃で12時間乾燥させた後、乳鉢と乳棒を用いて粉末化し、G.sulphurariaの乾燥粉末を得た。
【0050】
(金溶液の調製)
金(Au)1mgに対して、市販されているヨードチンキ(6wt%ヨウ素、4wt%ヨウ化カリウム、60〜80vol%エタノール水溶液)を70〜80vol%エタノール水溶液で2倍希釈したもの(希ヨードチンキ)1mLを滴下し、攪拌して金を溶解させた。この溶液に市販されているビタミンCサプリメント(食品添加物グレード,100%ビタミンC(L−アスコルビン酸))40mgと水4mLを添加して還元させ、金溶液1を得た。
【0051】
金溶液1の金濃度は、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(Agilent社製)で波長242.794nmの発光強度を測定して算出した。金濃度の算出には、金の標準溶液を酸溶液で希釈して作成した検量線を使用した。その結果、金溶液1の金濃度は185.6ppm(mg/L)であった。なお、本実施例における金濃度の測定は、いずれも本手順により実施した。
【0052】
(金回収試験)
1mLの金溶液1に対して、20mgのG.sulphuraria(乾燥粉末)を添加し、ボルテックスで攪拌しながら、室温で30分間インキュベートした。次いで、遠心分離により細胞を沈殿させ、上清(上清1)を回収した。上清1の金濃度は、39.4ppm(mg/L)であった。
【0053】
(結果)
下記式により算出した回収率は、78.8%であった。
回収率=[{(金溶液の金濃度)−(上清の金濃度)}/(金溶液の金濃度)]×100(%)
また、G.sulphuraria(乾燥粉末)1g当たりの金回収量は7.3mgであった。
【0054】
〔実施例2〕
(G.sulphurariaの乾燥粉末の調製)
実施例1と同様の手順でG.sulphurariaの乾燥粉末を調製した。
【0055】
(金溶液の調製)
金(Au)1mgに対して、市販されているヨードチンキ(6wt%ヨウ素、4wt%ヨウ化カリウム、60〜80vol%エタノール水溶液)1mLを滴下し、攪拌して金を溶解させた。この溶液に試薬グレードのアスコルビン酸(L−アスコルビン酸)100mgと水4mLを添加して還元させ、金溶液2を得た。金溶液2の金濃度は、202.2ppm(mg/L)であった。
【0056】
(金回収試験)
金溶液1に代えて金溶液2を使用したこと、G.sulphuraria(乾燥粉末)の添加量を10mgに変更したことの他は、実施例1と同様の手順で金回収試験を行い、回収した上清(上清2)の金濃度を測定した。その結果、上清2の金濃度は、80.6ppm(mg/L)であった。
【0057】
(結果)
実施例1と同様に算出した回収率は、60.1%であった。また、G.sulphuraria(乾燥粉末)1g当たりの金回収量は12.2mgであった。
【0058】
〔実施例3−1〕
(G.sulphurariaの乾燥粉末の調製)
実施例1と同様の手順でG.sulphurariaの乾燥粉末を調製した。
【0059】
(金溶液の調製)
金(Au)1mgに対して、市販されているヨードチンキ(6wt%ヨウ素、4wt%ヨウ化カリウム、60〜80vol%エタノール水溶液)を70〜80vol%エタノール水溶液で2倍希釈したもの(希ヨードチンキ)1mLを滴下し、攪拌して金を溶解させた。この溶液に市販されているビタミンCサプリメント(食品添加物グレード,100%ビタミンC(L−アスコルビン酸))40mgと水4mLを添加して還元させ、金溶液3−1を得た。金溶液3−1の金濃度は、198.6ppm(mg/L)であった。
【0060】
(金回収試験)
1mLの金溶液3−1に対して、20mgのG.sulphuraria(乾燥粉末)を添加し、ボルテックスで攪拌しながら、室温で30分間インキュベートした。次いで、遠心分離により細胞を沈殿させ、上清(上清3−1)を回収した。上清3−1の金濃度は、26.6ppm(mg/L)であった。
【0061】
(結果)
実施例1と同様に算出した回収率は、86.6%であった。また、G.sulphuraria(乾燥粉末)1g当たりの金回収量は8.6mgであった。
【0062】
〔実施例3−2〕
(G.sulphurariaの乾燥粉末の調製)
実施例1と同様の手順でG.sulphurariaの乾燥粉末を調製した。
【0063】
(金溶液の調製)
金(Au)1mgに対して、市販されているヨードチンキ(6wt%ヨウ素、4wt%ヨウ化カリウム、60〜80vol%エタノール水溶液)を70〜80vol%エタノール水溶液で2倍希釈したもの(希ヨードチンキ)1mLを滴下し、攪拌して金を溶解させた。この溶液に水4mLを添加して希釈し、金溶液3−0とした。
【0064】
(金回収試験)
市販されているビタミンCサプリメント(食品添加物グレード,100%ビタミンC(L−アスコルビン酸))40mgとG.sulphuraria(乾燥粉末)20mgを混合し、プレミックス粉末1を調製した。
【0065】
1mLの金溶液3−0に対して、プレミックス粉末1を添加し、ボルテックスで攪拌しながら、室温で30分間インキュベートした。次いで、遠心分離により細胞を沈殿させ、上清(上清3−2)を回収した。上清3−2の金濃度は、32.8ppm(mg/L)であった。
【0066】
(結果)
金溶液3−1の金濃度(実施例3−1参照)と上清3−2の金濃度から、実施例1と同様に算出した回収率は、83.5%であった。また、G.sulphuraria(乾燥粉末)1g当たりの金回収量は8.3mgであった。
【0067】
〔実施例3−3〕
(G.sulphurariaの乾燥粉末の調製)
実施例1と同様の手順でG.sulphurariaの乾燥粉末を調製した。
【0068】
(金溶液の調製)
実施例3−2と同様の手順で金溶液3−0を調製した。
【0069】
(金回収試験)
市販されているビタミンCサプリメント(食品添加物グレード,100%ビタミンC(L−アスコルビン酸))8mgとG.sulphuraria(乾燥粉末)20mgを混合し、プレミックス粉末2を調製した。
【0070】
1mLの金溶液3−0に対して、プレミックス粉末2を添加し、ボルテックスで攪拌しながら、室温で30分間インキュベートした。次いで、遠心分離により細胞を沈殿させ、上清(上清3−3)を回収した。上清3−3の金濃度は、28.5ppm(mg/L)であった。
【0071】
(結果)
金溶液3−1の金濃度(実施例3−1参照)と上清3−3の金濃度から、実施例1と同様に算出した回収率は、85.6%であった。また、G.sulphuraria(乾燥粉末)1g当たりの金回収量は8.5mgであった。
【0072】
実施例3−1と実施例3−2は、ビタミンCの金溶液への添加をG.sulphurariaの乾燥粉末の添加前に実施するか、同時に実施するかの点で異なっている。両者で回収率等に大きな差がなかったことから、添加タイミングは任意であることが分かる。
【0073】
〔比較例1〕
(G.sulphurariaの乾燥粉末の調製)
実施例1と同様の手順でG.sulphurariaの乾燥粉末を調製した。
【0074】
(金溶液の調製)
金(Au)1mgに対して、市販されているヨードチンキ(6wt%ヨウ素、4wt%ヨウ化カリウム、60〜80vol%エタノール水溶液)1mLを滴下し、攪拌して金を溶解させ、金溶液4を得た。金溶液4には、ビタミンC及び水を添加していない。金溶液4の金濃度は、910ppm(mg/L)であった。
【0075】
(金回収試験)
金溶液1に代えて金溶液4を使用したこと、G.sulphuraria(乾燥粉末)の添加量を10mgに変更したことの他は、実施例1と同様の手順で金回収試験を行い、回収した上清(上清4)の金濃度を測定した。その結果、上清4の金濃度は、950ppm(mg/L)であり、全く金が回収されていなかった。
【0076】
各実施例及び比較例の結果を表1にまとめた。
【表1】
【解決手段】金、ヨウ素、ヨウ素の塩、及び還元剤が溶解した金溶液から金回収剤により金を回収する工程を備え、金回収剤が、シアニディウム目(Cyanidiales)に属する微生物の細胞及び細胞由来物、及びこれらの加工物、並びにこれらを模した人工物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、金の回収方法。