特許第6968466号(P6968466)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6968466軽量導電性モルタル材料、その製造方法及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6968466
(24)【登録日】2021年10月29日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】軽量導電性モルタル材料、その製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/04 20060101AFI20211108BHJP
   C04B 14/04 20060101ALI20211108BHJP
   C04B 20/00 20060101ALI20211108BHJP
   C04B 22/02 20060101ALI20211108BHJP
   C04B 22/06 20060101ALI20211108BHJP
   B28C 7/04 20060101ALI20211108BHJP
   C04B 20/10 20060101ALI20211108BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20211108BHJP
   E04B 1/62 20060101ALI20211108BHJP
【FI】
   C04B28/04
   C04B14/04 A
   C04B20/00 B
   C04B22/02
   C04B22/06 Z
   B28C7/04
   C04B20/10
   E04G23/02 A
   E04B1/62 Z
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-511928(P2020-511928)
(86)(22)【出願日】2017年12月26日
(65)【公表番号】特表2020-531398(P2020-531398A)
(43)【公表日】2020年11月5日
(86)【国際出願番号】CN2017118425
(87)【国際公開番号】WO2019047426
(87)【国際公開日】20190314
【審査請求日】2020年2月27日
(31)【優先権主張番号】201710812074.9
(32)【優先日】2017年9月11日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512000569
【氏名又は名称】華南理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智司
(74)【代理人】
【識別番号】100184631
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 隆
(72)【発明者】
【氏名】フー ジエ
(72)【発明者】
【氏名】グゥオ ウェンハオ
(72)【発明者】
【氏名】ユー チジン
(72)【発明者】
【氏名】チュー ヤンヤン
(72)【発明者】
【氏名】チャン ジャオ
(72)【発明者】
【氏名】チャン シアンミン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ ヂャンション
(72)【発明者】
【氏名】リー ファンシェン
(72)【発明者】
【氏名】マー ユーウェイ
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第105130302(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第103469212(CN,A)
【文献】 特開2006−248792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00−32/02
C04B 40/00−40/06
B28C 1/00− 9/04
E04B 1/62− 1/99
E04G 23/00−23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽量導電性モルタル材料であって、
セメント100重量部、変性寒天ゲルが担持された導電性多孔質軽量骨材25〜55重量部、水30〜45重量部を成分として含む、
ことを特徴とする軽量導電性モルタル材料。
【請求項2】
前記セメントは、強度等級42.5以上の普通ポルトランドセメント又は複合ポルトランドセメントである、
ことを特徴とする請求項1に記載の軽量導電性モルタル材料。
【請求項3】
前記変性寒天ゲルが担持された導電性多孔質軽量骨材は、
(1)寒天粉を水に加えて、寒天粉が完全に溶解するまで加熱した後、無機塩類電解質を加え、溶液の温度を90℃以上に保持して30s以上撹拌し続け、蒸発損失分の質量の沸騰水を補充して、変性寒天水溶液を製造し、次に、黒鉛粉末を変性寒天水溶液に加えて、60r/min以上の回転数で強制的に撹拌し、黒鉛粉末を変性寒天水溶液に均一に分散させ、
(2)多孔質セラミック粒子を黒鉛粉末が分散された変性寒天水溶液に浸漬し、温度を80℃以上に保持して2min以上撹拌し続け、多孔質セラミック粒子を取り出して、多孔質セラミック粒子の表面における寒天がゲル状に凝固するまで風冷し、過剰な寒天ゲルを剥離して、前記変性寒天ゲルが担持された導電性多孔質軽量骨材を得ることを特徴とする請求項1に記載の軽量導電性モルタル材料の製造方法
【請求項4】
ステップ(1)では、前記無機塩類電解質は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化カルシウムを含む、
ことを特徴とする請求項3に記載の軽量導電性モルタル材料の製造方法
【請求項5】
ステップ(1)では、水100重量部、寒天粉4−10重量部、黒鉛粉末2−10重量部、水酸化ナトリウム1.8−0.1重量部、水酸化カリウム2.8−1.0重量部、水酸化カルシウム8.9−1.0重量部である、
ことを特徴とする請求項4に記載の軽量導電性モルタル材料の製造方法
【請求項6】
ステップ(2)では、前記多孔質セラミック粒子は、見掛け密度が1.19g/cm3以下であり、吸水率が6.48%以上に達し、平均粒子径が3.26mm以上であり且つシリンダー圧縮強度が2.0MPa以上である粘土質多孔質セラミック粒子である、
ことを特徴とする請求項3に記載の軽量導電性モルタル材料の製造方法
【請求項7】
前記変性寒天ゲルが担持された導電性多孔質軽量骨材の粒子径は3.5〜4.0mmであることを特徴とする請求項1に記載の軽量導電性モルタル材料。
【請求項8】
請求項1又は2記載の軽量導電性モルタル材料の製造方法であって、
前記重量部で、セメントと水を撹拌機に加えて予備撹拌し、次に変性寒天ゲルが担持された導電性多孔質軽量骨材を加えて十分に撹拌して均一に混合し、前記軽量導電性モルタル材料を得るステップを含む、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項9】
請求項1又は2記載の軽量導電性モルタル材料を使用した鉄筋コンクリート構造の構築方法であって
前記軽量導電性モルタル材料を鉄筋コンクリート構造の表面に被覆し、又は前記軽量導電性モルタル材料を、主陽極不活性金属電極を含むコンクリートの切り欠き溝に充填する、
ことを特徴とする鉄筋コンクリート構造の構築方法
【請求項10】
前記軽量導電性モルタルの覆は、人工塗布又は機械的スプレーにより行われるものであり、被覆により厚さ20〜40mmの導電性モルタル層形成る、
ことを特徴とする請求項9に記載の鉄筋コンクリート構造の構築方法

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート構造保護の分野に関し、具体的には、軽量導電性モルタル材料、その製造方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリートは、その優れた力学的特性のために土木工学で広く使用されているが、海岸構造物では、鉄筋の腐食による鉄筋コンクリート構造の劣化がその構造の安全性に重大な影響を与え、構造物の耐用年数を短縮させる。鉄筋コンクリートの腐食破壊を引き起こす要因は、コンクリートにおける鉄筋の不動態化層が、塩化物イオン侵食又はコンクリート層の炭化によって破壊されて、さらに酸素含有条件で腐食反応が起こることである。
【0003】
鉄筋コンクリート構造の腐食を防止するために、鉄筋コーティング、コンクリートコーティング、陰極防食又は防錆剤などを含む多くの防食方法が業界で開発されている。上記方法の中で、陰極防食技術は、権威のある多くの機関によって、塩化物塩による侵食環境における唯一の効果的な腐食制御技術として認められている。陰極防食技術は、外部陽極、電源及び鉄筋を組み合わせて電気回路システムを形成し、鉄筋を完全に保護することである。この技術では、外部陽極の材料は、通常、主陽極電極として不活性金属酸化物コーティングを含む不活性金属バー又はスクリーンを採用し、主陽極はモルタル又は導電性モルタルを使用して保護対象となる構造に埋め込まれ、固定される。
【0004】
ただし、陰極防食技術が作用するとき、保護システムの陽極は、分極条件で4OH−→O+2HO+4e又は2HO→O+4H+4eを主とする陽極反応を起こし、導電性モルタルにおけるセメント系材料を酸性化して溶解し、これにより主陽極金属と導電性セメントモルタルとの接触抵抗が増加し、主陽極金属の腐食破壊、及び二次陽極モルタルの構造的破壊が生じ、最終的にシステム保護効率が低下し、該陽極酸性化効果は、鉄筋コンクリート構造における陰極防食システムの適用を厳しく制限する。
【0005】
現在、陽極導電性モルタル材料のほとんどは、外添炭素繊維、黒鉛粉末、金属又は金属酸化物(犠牲陽極)及びコークス粒子をセメントスラリーと混合することによって調製され、調製されたモルタルの抵抗率の範囲は1.0〜0.05Ω・mである。しかし、そのような陽極導電性モルタル材料には、高コストでプロセスが面倒であるなどの制限がある。また、該陽極導電性モルタルは、陽極金属電極を固定して埋め込むことができるが、陽極酸性化電極の反応による酸性化溶解効果には抑制効果はなく、添加された導電強化成分も陽極反応によって消費されるアルカリ性電解質を補充することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、既存の陰極防食技術の欠点に応じて、軽量導電性モルタル材料を提供することである。該軽量導電性モルタル材料は、モルタルの導電強化相として、従来の石英骨材の代わりに、低抵抗率で機能性変性寒天が担持された導電性多孔質軽量骨材を原料として使用する。
【0007】
本発明の目的は、前記軽量導電性モルタル材料の製造方法をさらに提供することである。
【0008】
本発明の目的は、鉄筋コンクリート構造の陰極防食技術における、前記軽量導電性モルタル材料の使用を提供することにもある。軽量導電性モルタル材料は、主陽極金属を固定するための二次陽極材料として鉄筋コンクリート構造の表面に被覆され、又は主陽極金属電極を含むコンクリートの切り欠き溝に充填され、主陽極金属と複合陽極を構成し、印加電流によって鉄筋コンクリート構造に対して陰極防食を行う。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、下記技術案によって実現される。
【0010】
軽量導電性モルタル材料であって、セメント100重量部、変性寒天ゲルが担持された導電性多孔質軽量骨材25〜60重量部、水30〜45重量部を成分として含む。
【0011】
さらに、前記セメントは、強度等級42.5(PII 42.5R)以上の普通ポルトランドセメント又は複合ポルトランドセメントである。
【0012】
さらに、前記変性寒天ゲルが担持された導電性多孔質軽量骨材は、
(1)寒天粉を水に加えて、寒天粉が完全に溶解するまで加熱した後、無機塩類電解質を加え、溶液の温度を90℃以上に保持して30s以上撹拌し続け、蒸発損失分の質量の沸騰水を補充して、変性寒天水溶液を製造し、次に、黒鉛粉末を変性寒天水溶液に加えて、60r/min以上の回転数で強制的に撹拌し、黒鉛粉末を変性寒天水溶液に均一に分散させ、
(2)多孔質セラミック粒子を黒鉛粉末が分散された変性寒天水溶液に浸漬し、温度を80℃以上に保持して2min以上撹拌し続け、多孔質セラミック粒子を取り出して、多孔質セラミック粒子の表面における寒天がゲル状に凝固するまで風冷し、過剰な寒天ゲルを剥離して、前記変性寒天ゲルが担持された導電性多孔質軽量骨材を得る方法によって製造される。
【0013】
またさらに、ステップ(1)では、前記無機塩類電解質は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化カルシウムを含む。
【0014】
無機塩である水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化カルシウムは、セメント系複合材料スラリーにおける主な電解質であり、ドープ量を制御することで、変性寒天材料とスラリーとのイオン交換又は平衡を実現することによって、変性寒天材料の配合比及び導電性多孔質軽量骨材の添加量を調整することでスラリー及び水和相を調整する。
【0015】
またさらに、ステップ(1)では、水100重量部、寒天粉4−10重量部、黒鉛粉末2−10重量部、水酸化ナトリウム1.8−0.1重量部、水酸化カリウム2.8−1.0重量部、水酸化カルシウム8.9−1.0重量部である。
【0016】
またさらに、ステップ(2)では、前記多孔質セラミック粒子は、見掛け密度が1.19g/cm以下であり、吸水率が6.48%以上に達し、平均粒子径が3.26mm以上であり且つシリンダー圧縮強度が2.0MPa以上である粘土質多孔質セラミック粒子である。
【0017】
製造された変性寒天ゲルが担持された導電性多孔質軽量骨材は、使用するまでにシールして保存される。
【0018】
さらに、前記変性寒天ゲルが担持された導電性多孔質軽量骨材の粒子径は3.5〜4.0mmである。
【0019】
【0020】
変性寒天ゲルが担持された導電性多孔質軽量骨材を導電性モルタル材料の導電強化相とすることで、導電性モルタル材料の内部の電流分布を繊維類強化成分の場合よりも均一にし、さらに、変性寒天ゲルが担持された導電性多孔質軽量骨材の内部の変性寒天ゲルに過剰に担持された電解質及びアルカリ性イオンによって、主陽極金属電極の反応により消費された水酸根イオンを補充し、さらに陽極反応による酸性化浸食作用を抑制し、陽極システムの作動効率を高めるとともに、陽極の耐用年数を延ばす。
【0021】
前記軽量導電性モルタル材料の製造方法であって、前記重量部で、セメントと水を撹拌機に加えて予備撹拌し、次に変性寒天ゲルが担持された導電性多孔質軽量骨材を加えて十分に撹拌して均一に混合し、前記軽量導電性モルタル材料を得るステップを含む。
【0022】
鉄筋コンクリート構造の陰極防食技術における、前記軽量導電性モルタル材料の使用であって、
前記軽量導電性モルタル材料を鉄筋コンクリート構造の表面に被覆し、又は前記軽量導電性モルタル材料を、主陽極不活性金属電極を含むコンクリートの切り欠き溝に充填する。
【0023】
さらに、前記被覆施工方法は、人工塗布又は機械的スプレーを含み、被覆により厚さ20〜40mmの導電性モルタル層が形成されている。
【発明の効果】
【0024】
従来技術に比べて、本発明は、下記利点及び有益な効果を有する。
(1)本発明の軽量導電性モルタル材料は、仕上げモルタルの基本的な力学的特性の要件を満たすことができ、耐圧縮性及び耐破断特性に優れており、変性寒天ゲルが担持された導電性多孔質軽量骨材は導電強化相として使用されるため、モルタル材料の単位体積重量低減に有利である。
(2)本発明の軽量導電性モルタル材料は、導電強化相として変性寒天ゲルが担持された導電性多孔質軽量骨材を添加することにより、導電性モルタル材料の抵抗率を効果的に低下させ、また、導電性モルタル材料の抵抗率は材齢及び変性寒天ゲルゲルが担持された導電性多孔質軽量骨材の含有量の変化に伴い変化し、各配合比及び各材齢に対応する抵抗率の変化法則は、有効媒体モデルである球状フィラー複合導電性材料の法則と一致している。
(3)本発明の軽量導電性モルタル材料は、高い導電性均一性を有し、モルタルの内部の高アルカリ性を維持することができ、陰極防食過程において陽極酸性化効果による陽極酸性化浸食及び主陽極とモルタルとの局所劣化による割れを効果的に抑制することができ、アルカリ環境で安定化する能力を有し、陰極防食システムの保護効率を高めるとともに、陽極の耐用年数を延ばす。
(4)本発明の軽量導電性モルタル材料は、製造方法がシンプルであり、原料価格が比較的低く、簡便に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施例1におけるコンクリート細孔溶液を模擬した陰極防食実験のテスト装置の構造模式図である。
図2】実施例1における導電性多孔質軽量骨材を含有する模擬陰極防食実験のテスト結果図である。
図3】実施例1における電極板が挿入された軽量導電性モルタル材料の成形試料の寸法図である。
図4】実施例1における軽量導電性モルタル材料の各配合比での抵抗率と齢材との関係図である。
図5】実施例2における普通骨材モルタルサンプルに通電した後の主陽極−モルタル界面の走査型電子顕微鏡像である。
図6】実施例2における軽量導電性モルタル材料に通電した後の主陽極−モルタル界面の走査型電子顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、特定実施例及び図面にて本発明の技術案をさらに詳細に説明するが、本発明はそれに制限されない。
【0027】
さまざまな施工方法及び使用環境に対応できるように、導電性モルタルの配合比を調整する。
【0028】
本発明の特定実施例では、変性寒天ゲルが担持された導電性多孔質軽量骨材は、下記方法によって製造される。
(1)寒天粉6gを水100mLに加えて、寒天粉が完全に溶解するまで加熱した後、無機塩類電解質(水酸化ナトリウム0.33g、水酸化カリウム1.40g及び水酸化カルシウム8.62g)を加え、溶液の温度を100℃に保持して120r/minの回転数で90s撹拌し、均一に強制的に撹拌した後、蒸発損失分の質量の沸騰水を添加して配合比に応じた成分の質量を維持し、変性寒天水溶液を得て、次に、黒鉛粉末5.0gを変性寒天水溶液に加えて、さらに60r/minで10s撹拌し、黒鉛粉末を変性寒天水溶液に均一に分散させ、
(2)多孔質セラミック粒子(見掛け密度0.73g/cm、吸水率(1h)11.0%、平均粒子径3.26mm未満、シリンダー圧縮強度2.2MPa)を黒鉛粉末が分散された変性寒天水溶液に浸漬し、温度を80℃に保持して2min撹拌し続け、多孔質セラミック粒子を取り出して、多孔質セラミック粒子の表面における寒天がゲル状に凝固するまで風冷し、過剰な寒天ゲルを剥離して、変性寒天ゲルが担持された粒子径3.5〜4.0mm、抵抗率0.5Ω・mの導電性多孔質軽量骨材を得る。
【0029】
実施例1
軽量導電性モルタル材料であって、
セメント(PII 42.5R)100重量部、変性寒天ゲルが担持された導電性多孔質軽量骨材5、10、20、30、35、40、45及び50重量部、水35重量部を成分として含む。
コンクリート細孔溶液を模擬した変性寒天ゲルが担持された導電性多孔質軽量骨材5、10、20、40部の陰極防食実験テストを用い、コンクリート細孔溶液実験は、セメント系複合材料スラリーの本物の代わりとして、コンクリートマイクロ孔構造における溶液イオンの種類及び濃度を行うことであり、実験結果は、セメント系複合材料を実際に使用する過程とは高相関性を有し、モルタルの酸性化効果に対する軽量導電性モルタル材料の抑制効果をテストし、
使用される装置の構造模式図は、図1に示されており、該装置は、定電流計1、陽極セル2、陰極セル3及び塩橋4を備え、陽極セル2の内部には、定電流計1の正極に接続されたTi−MMO金属主陽極5が設けられ、陽極セル2には、前記重量部で添加された変性寒天ゲルが担持された導電性多孔質軽量骨材6が収容されており、陰極セル3の内部には、定電流計1の負極に接続された鉄筋陰極7が設けられ、さらに、陽極セル2及び陰極セル3のいずれの内部には、前記重量部で添加されたセメントと水を混合したコンクリート細孔溶液8が収容されており、
さらに、同体積の基準陽極モルタル(基準陽極モルタルは、導電性多孔質軽量骨材を40部の導電性多孔質軽量骨材と等体積のISO標準砂に変更したものである)を対比とし、
実験測定結果は図2に示され、実験結果から明らかなように、通電電流密度が200mA/mの加速侵食条件で、変性寒天ゲルが担持された導電性多孔質軽量骨材を含有する陽極セル模擬細孔溶液のpHの低下が基準陽極モルタルを含有する陽極セル模擬細孔溶液のpHよりも緩やかになり、且つ、陽極セル模擬細孔溶液のpH値の低下速度が導電性多孔質軽量骨材の添加部数に反比例し、細孔溶液pHが9に低下したときの通電齢材と比較したところ、基準陽極モルタルの陽極セルは21日間であり、導電性多孔質軽量骨材5部、10部、20部を含有する陽極セルのいずれも40日間を超え、一方、導電性多孔質軽量骨材40部を含有する陽極セルは、同等通電時間では、12.6のアルカリ度を維持できる。
細孔溶液模擬酸性化実験から分かるように、導電性多孔質軽量骨材を含有するモルタル系は、陰極防食の通電作動状態で、内部の変性寒天成分による平衡調整作用により、陽極酸性化効果を抑制する機能を有し、すなわち、アルカリ環境で安定化する能力を有し、さらに、軽量導電性モルタル材料のアルカリ環境での安定化能力はモルタル系における導電性多孔質軽量骨材の質量部に比例し、それは、本発明の軽量導電性モルタルのアルカリ環境での安定性保持効果のメカニズムとして、導電性多孔質軽量骨材の内部に担持された変性寒天ゲル材料が細孔溶液に連通し、次に細孔溶液におけるイオンが移動して陽極電極反応により消費されるアルカリ性物質を中和し、それによって正常な細孔溶液のアルカリ度及びイオン濃度を維持して酸性化溶解を遅延させる効果を果たし、このため、モルタル系における導電性多孔質軽量骨材の質量部が高いほど、モルタルのアルカリ環境での安定性に優れているためである。
前記軽量導電性モルタル材料の製造には、
前記重量部で、セメントと水を撹拌機に加えて予備撹拌し、次に変性寒天ゲルが担持された導電性多孔質軽量骨材を加えて十分に撹拌して均一に混合し、前記軽量導電性モルタル材料を得るステップを含む。
製造された軽量導電性モルタル材料を標準モルタル撹拌機で60s撹拌した後、40*40*160mm標準モルタル金型に注入して成膜した後、図3に示される寸法の間隔に従ってメッシュの直径が2mmのTi金属電極板を挿入し、モルタルの抵抗率の数値を測定するサンプルを製造し、
20±2℃、相対湿度95%の条件で、特定齢材まで養生した後、直流4点法(ASTM G57−06(2012))を用いて、各軽量導電性モルタル材料の抵抗率を得て、製造された各軽量導電性モルタル材料の各齢材での抵抗率の測定結果を図4に示し、図4から分かるように、製造された軽量導電性モルタル材料の抵抗率は、齢材及び変性寒天ゲルが担持された導電性多孔質軽量骨材の添加量の変化に伴い変化し、軽量導電性モルタル材料の抵抗率は、ドープされる導電性多孔質軽量骨材の質量部の向上に伴い低下し、且ついずれもモルタルの抵抗率を効果的に低下させ、さらに、各配合比及び各齢材での抵抗率の変化法則は、有効媒体モデル(General Effective Media)である球状フィラー複合導電性材料の電気学的特性の法則と一致し、計算結果から明らかなように、各配合比のモルタルにおける導電強化相(導電性多孔質軽量骨材)は、各監視齢材で0.5Ω・mのレベルに保持され、導電性多孔質軽量骨材の抵抗率は、セメントスラリーが水合してコンパクト化するに伴い影響を受けることがなく、セメント系複合材料における導電性多孔質軽量骨材のパーコレーション閾値は45質量部であり、モルタルの抵抗率を効果的に低下させる変性効果を有し、且つ、変性寒天ゲルが担持された導電性多孔質軽量骨材のドープ量が40部になると、明らかなパーコレーション効果が発生し、ドープ量が50部である条件で、28日間の齢材のモルタルの抵抗率は2Ω・m未満である。
変性寒天ゲルが担持された導電性多孔質軽量骨材を20、30、40、45部として製造された軽量導電性モルタル材料を人工塗布により厚さ40mmの導電性モルタル層にし、28日間の齢材の標準養生条件(20±2℃、相対湿度95%)では、各モルタル配合比での特性は、表1に示される。
表1 各質量部の導電性多孔質軽量骨材を有するモルタルの28d標準養生後の特性のデータ
変性寒天ゲルが担持された導電性多孔質軽量骨材を20、30、40、45部として製造される軽量導電性モルタル材料は、仕上げモルタルの基本的な力学的特性の要求を満たすことができ、且つ、表1から分かるように、変性寒天ゲルが担持された導電性多孔質軽量骨材を20、30、40、45部として製造される軽量導電性モルタル材料は、耐圧縮特性及び耐破断特性に優れている。
【0030】
実施例2
軽量導電性モルタル材料の製造であって、該軽量導電性モルタル材料は、
セメント(PII 42.5R)100重量部、変性寒天ゲルが担持された導電性多孔質軽量骨材40重量部(体積百分率35vol.%に相当)、水40重量部を含む。
上記軽量導電性モルタル材料の製造には、具体的には、
前記重量部で、セメントと水を撹拌機に加えて予備撹拌し、次に変性寒天ゲルが担持された導電性多孔質軽量骨材を加えて十分に撹拌して均一に混合し、前記軽量導電性モルタル材料を得るステップを含む。
製造された軽量導電性モルタル材料は、流動特性が良好であり、振動締固めをすることなく40*40*40mm金型に充填することができ、モルタル試料ごとに側面から20mm離れたところに陽極チタンメッシュ(主陽極金属)を挿入し、20±2℃、相対湿度95%で7日間標準養生した後、66mA/mの電流密度で主陽極に通電し、主陽極界面とモルタル界面との間の酸性化腐食プロセスを加速し、
該サンプルと同体積の普通骨材モルタル(セメントPII 42.5 R 100質量部、ISO標準砂100質量部)に通電して酸性化した後(56d通電)、この2つの試料をサンプリングしてSEM後方散乱モードの観測サンプルを製造し、走査型電子顕微鏡の観測結果から分かるように、普通骨材を用いたモルタルでは、主陽極界面付近に明らかな溶解現象があり(図5参照)、同じ通電条件で導電性多孔質軽量骨材を用いたモルタルの陽極金属界面には、顕著な酸性化溶食が認められず(図6参照)、このことから、製造された軽量導電性モルタル材料は、陰極防食通電時に生じた陽極酸性化効果を抑制できることを示している。
【0031】
以上の実施例は、本発明の好適実施例に過ぎず、本発明の特許範囲はそれに制限されず、当業者であれば、本発明の趣旨から逸脱せずに行われるすべての修正、置換又は改良などは、本発明の特許範囲に属する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6