(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6968467
(24)【登録日】2021年10月29日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】豚流行性下痢ウイルス感染症の予防または治療のための医薬品の調製におけるラクトバチルスプランタラムZN−3の使用
(51)【国際特許分類】
A61K 35/747 20150101AFI20211108BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20211108BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20211108BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20211108BHJP
【FI】
A61K35/747
C12N1/20 E
A61P31/14
A61P43/00 171
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-546913(P2020-546913)
(86)(22)【出願日】2018年7月4日
(65)【公表番号】特表2021-509118(P2021-509118A)
(43)【公表日】2021年3月18日
(86)【国際出願番号】CN2018094559
(87)【国際公開番号】WO2019242046
(87)【国際公開日】20191226
【審査請求日】2020年9月7日
(31)【優先権主張番号】201810628781.7
(32)【優先日】2018年6月19日
(33)【優先権主張国】CN
【微生物の受託番号】CCTC CCTCC M 2017286
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516071929
【氏名又は名称】華中農業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】金 梅林
(72)【発明者】
【氏名】楊 麗
(72)【発明者】
【氏名】滑 亜鋒
(72)【発明者】
【氏名】康 超
【審査官】
横田 倫子
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第107312726(CN,A)
【文献】
韓国公開特許第2010−0058823(KR,A)
【文献】
国際公開第2017/200192(WO,A1)
【文献】
韓国公開特許第2011−0000854(KR,A)
【文献】
Probiotics and Antimicro Prot., 2017, Vol.10, p.383-390
【文献】
Viruses, 2018 Mar, Vol.10, Article 106(p.1-14)
【文献】
Vaccine, 2018 Mar, Vol.36, p.2760-2763
【文献】
Virus Res., 2018 Mar, Vol.249, p.45-51
【文献】
Microbial Pthogenesis, 2018 Feb, Vol.117, p.247-254
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00
A61P 31/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
豚流行性下痢ウイルスの細胞への侵入増殖を阻害するための豚流行性下痢ウイルス阻害剤の調製における、受託番号CCTCC M 2017286で寄託される、ラクトバチルスプランタラム(Lactobacillus plantarum)ZN−3の使用であって、
前記ラクトバチルスプランタラムZN−3は、ラクトバチルスプランタラムZN−3の発酵ブロスまたは発酵上清であり、
前記発酵上清のpHは7.0である、
使用。
【請求項2】
前記豚流行性下痢ウイルス阻害剤は、豚流行性下痢ウイルス感染症を予防または治療するための医薬品である、請求項1に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜および家禽用の抗ウイルス微小生態製剤技術分野に属し、特に、豚流行性下痢ウイルス感染症の予防または治療するための医薬品の調製におけるラクトバチルスプランタラムZN−3の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
腸疾患は、現代の養豚業に普遍的に存在している問題であり、細菌性下痢、ウイルス性下痢、栄養性下痢、寄生虫による下痢を含む下痢性疾患が子豚に起きやすく、その内、ウイルス性下痢の発生率が高く、急速に感染が広がり、死亡率が高く、治療効果も明らかでないため、特に、2010年から現在まで継続して発生している豚流行性下痢ウイルス(PEDV)の予防に着眼した。流行性下痢は、下痢、嘔吐、脱水症などの臨床症状を主徴とする急性伝染病である。一部の大規模養豚場での死亡率は、80%以上に達し、新生豚の腸炎と死亡を起こす重要な原因であり、養豚業に深刻な経済的損失を与えてきた。
【0003】
病気にとって、一般的に予防効果は、治療効果よりも優れ、特にウイルス性疾患であるPEDVも例外ではない。PEDVには、厳密な細胞走性と宿主特異性がある。しかし、ウイルスの遺伝的変異により、有効なワクチンの保護が影響を受け;抗ウイルス薬にも通常重篤な副作用があり、その用量と効果が限られている。したがって、ウイルス性疾患を制御できる有効な方法を引き続き模索する必要があり、プロバイオティクスは、有害性がなく、非薬剤耐性、残留性もなく、抗菌、抗ウイルス性、成長促進、環境にやさしいという利点により、広く注目されている。
【0004】
プロバイオティクス乳酸菌は、ヒトおよび動物の胃腸障害を予防および治療するために広く使用されている。乳酸菌は、体の胃腸管のpH環境に耐えることができ、腸上皮細胞にコロニーを作ることができる嫌気性菌または通性嫌気性菌である。乳酸菌はまた、乳酸を産生し、腸内のpHを下げ、サルモネラ菌や大腸菌などの有害な細菌の侵入を阻害する。Giangら(2010)は、離乳子豚の食事にエンテロコッカス・フェカリス菌、ラクトバチルスアシドフィルス菌、ペディオコッカスペントサセウス、ラクトバチルスプランタラムの複合微小生態製剤を添加したものと、未添加のブランク対照群と比較したところ子豚下痢の発生率が減少した。乳酸菌ワクチンの経口投与による効果は、いくつかの研究結果から実証されており、既存のデータで乳酸菌が抗菌活性を持っただけでなく、抗ウイルス活性も持っていることを示した。粘膜は、多くの細菌やウイルスが体内に侵入して感染する最も主要な経路であるため、粘膜免疫が感染を防ぐ上で重要な役割を果たしている。粘膜経路を介した経口ワクチンは、体の潜在的な体液性免疫および粘膜免疫を効果的に誘導することができ、疾患に対処する効果的な戦略である。研究報告(Van Nielら2002;張ら2008)によると、ラクトバチルスアシドフィルスは、ロタウイルスワクチンの経口アジュバントとして使用することで、ワクチンの免疫力を高めることもできる。KritasおよびMorrison(2007)も経口乳酸菌がPRRSVウイルス感染に対するワクチンの防御効率を向上させ、PRRSV感染豚の体重を毎日増加させる可能性があることも報告した。Wang XNら(2017)は、抗PEDVの経口ワクチン担体としてラクトバチルスカゼイを使用した結果、ラクトバチルスカゼイが体の粘膜免疫、体液性免疫、Th2タイプの細胞性免疫を効果的に誘導し、体に対するPEDV感染および発症を防止できることを示した。また、経口ワクチンとしてのプロバイオティクスは、便利で安全かつ免疫ストレスがなく、経済的利益が高いという利点がある。これらのデータは、均しくプロバイオティクスが腸管粘膜免疫を促進し、腸管疾患を予防および治療する製剤として使用できることを証明している。しかし、プロバイオティクスの直接的な抗ウイルス活性に関する研究はまだ始まったばかりであり、特に非遺伝子組換え野生株の抗ウイルス活性に関する報告がほぼなく、現在PEDVに対するラクトバチルスプランタラムの抗ウイルス活性に関する研究はない。本発明は、研究を通じて豚流行性下痢ウイルス(PEDV)に対する抗ウイルス活性を有するプロバイオティクスを得ることを目的とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、豚流行性下痢ウイルス感染症の予防または治療するための医薬品の調製におけるラクトバチルスプランタラムZN−3の使用を提案することであり、ラクトバチルスプランタラムZN−3が消化管から腸に入り、エンテロウイルスPEDVの侵入増殖を阻害し、流行性下痢ウイルスによって起こる疾患を効果的に予防および治療できる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、上記目的を達成するために、次の技術的手段を講じた。
豚流行性下痢ウイルス感染症の予防または治療するための医薬品の調製におけるラクトバチルスプランタラムZN−3の使用は、ラクトバチルスプランタラムZN−3を利用して流行下痢ウイルス(PEDV)の阻害剤として調製、あるいは流行下痢ウイルス(PEDV)感染の治療薬または予防薬として調製することを含み、
上記ラクトバチルスプランタラムZN−3は、受託番号CCTCC M 2017286で寄託された。
【0007】
上記の使用において、ラクトバチルスプランタラムZN−3は、ラクトバチルスプランタラムZN−3の発酵ブロスまたは発酵上清が挙げられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、プロバイオティクスラクトバチルスプランタラムZN−3を使用して豚流行性下痢ウイルス(PEDV)からの細胞感染を阻害し、ラクトバチルスプランタラムを潜在的な抗ウイルス微小生態製剤として、従来の抗ウイルス化学療法剤と比較すると次の利点を有する。
【0009】
1、有害な副作用がなく、残留性もなく、抗菌、抗ウイルスで、成長促進や環境に優しい。
【0010】
2、使用上において便利、安全、免疫ストレスがなく、経済的利益が高いという利点を有する。
【0011】
3、消化管から腸に入り、エンテロウイルスPEDVの細胞の侵入増殖を阻害し、流行性下痢ウイルスによって起こる疾患を効果的に予防および治療する。本発明において、ラクトバチルスプランタラムZN−3の菌体懸濁液の3つの処理方法は、いずれもウイルスに対する直接的な阻害作用があり、阻害率がそれぞれ28.30%、20.75%および22.64%であり;ラクトバチルスプランタラムZN−3発酵上清については、先に発酵上清を添加してからPEDV希釈液を添加することと、発酵ブロスとPEDV希釈液を同時に添加する2つの方法も、ウイルスに対する直接的な阻害作用があり、阻害率がそれぞれ32.08%、13.21%であった。
【0012】
4、本発明におけるラクトバチルスプランタラムの菌体またはpH7.0の発酵上清は、細胞に有害な副作用がなく、vero細胞に対するPEDVウイルスの感染活性を若干程度低下させ、PEDVウイルスの細胞侵入と感染を阻害し、豚流行性下痢を予防および治療することができた。
【0013】
5、プロバイオティクスの応用は、すでに10年以上あり、臨床上で消化管疾患への治療効果がある程度実証され、免疫機能の保護と増強作用および抗ウイルス作用も益々注目されているが、その作用機序はまだ明らかではない。本発明は、細胞レベルから流行性下痢ウイルス(PEDV)に対するプロバイオティックラクトバチルスプランタラムの阻害作用を描写する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】VERO細胞におけるPEDVウイルスの増殖および病変の概略図(左図:PEDVに感染していない細胞対照;右図:PEDV感染によって形成された病変)である。
【
図2】
PEDVウイルス増幅液のPCR検出の概略図(レーン1:陽性対照;レーン2、3、4:異なるパンクレアチン濃度(0、5、10μg/ml)によるPEDVウイルス増殖サンプル;レーン5:陰性対照;レーン6、7、8:レーン2、3、4サンプルの重複;レーン9:マーカー)である。
【
図3】
96ウェルプレートのTCID50測定におけるPEDVの病変細胞と対照細胞の概略図(左図:対照細胞;右図:病変細胞)である。
【
図4】PEDVウイルスに対するラクトバチルスプランタラムの阻害作用の概略図(左上図:正常対照細胞;右上図:先にZN−3を添加してからPEDV希釈液を添加した群;左下図:先にPEDV希釈液を添加してからZN−3を添加した群;右下図:ウイルス対照群)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
特に明示的に述べられていない限り、本発明の実施例における試験方法および条件は、常法である。これらの実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の保護範囲はこれらの実施例によって限定されない。本発明の技術的手段は、特に明示的に述べられていない限り、当該分野における従来の解決的手段であり、特に明示的に述べられていない限り、試薬または材料はすべて、商業的に入手可能なものとする。
【0016】
(実施例1)
(豚流行性下痢ウイルス感染症の予防または治療するための医薬品の調製におけるラクトバチルスプランタラムZN−3の使用)
(1)細胞培養
VERO細胞は、10%FBS含有DMEMで約48時間継代培養し、
細胞の継代:継代時0.25%のパンクレアチンで消化し、10分ほど消化できる。具体的ステップは、次の通りである。
スポイトまたはピペットで接着細胞の培養容器から古い培養液を取り除き、残った古い培地をPBS溶液で洗い流し;
1〜2mlの消化液(0.25%パンクレアチン)をフラスコに加え、培養フラスコを静かに振って、消化液をすべての細胞表面に流し;
倒立顕微鏡で観察し、細胞から突起を取り除かれて丸みを帯びている場合、または細胞の隙間が広がっている場合は、消化を直ちに終了する(消化液を吸引して捨て、血清を含む少量の新鮮な培養液を加えて消化を終了させる);
ピペットでフラスコ内の培養液を吸い取り、消化された細胞を繰り返しピペッティングして細胞壁を破壊させ、それらを分散させて細胞懸濁液を形成し;
カウントし、新しい培養フラスコに分注し、血清を含む一定量の新鮮な培地を追加で添加し;
フラスコにキャップをし、CO2ガスが入りやすいように適切に締めてから少し戻し、培養フラスコをCO2培養器に戻す。
【0017】
(2)PEDVウイルス増殖
消化されたVero細胞をT75細胞培養フラスコに接種し、37℃、5%CO2恒温培養器に入れて細胞の単層を形成するまで培養し;
−80℃で保存されたPEDVウイルス液(CV777)0.1mlをVero細胞の単層を形成した培養フラスコに接種し、37℃、%CO2恒温培養器で1時間インキュベートし;
ウイルスインキュベーション液をピペットで少量吸引し、2%FBSを含むDMEM細胞メンテナンス液10mlを加えると共に、最終濃度が0、5、10ug/mlとなる異なる量のパンクレアチンを添加し、37℃、5%CO2恒温培養器で48〜72時間培養し;
細胞の状態を毎日観察し、細胞の80%以上に病変がある場合は、ウイルス細胞増殖液を採取し;
ウイルス細胞増殖液を3回繰り返し凍結融解し、4000rpmで10分間遠心分離し、上清液を収集して−80℃で保存し、後日使用する。
【0018】
ウイルス増殖産物のRT−PCR検出:収集されたウイルス液は、PEDVのM遺伝子フラグメントを増幅して、ウイルス増殖産物を検証する。PEDVウイルスはRNAウイルスに属し、逆転写PCRの実施を必要とする。
【0019】
逆転写システム(20ul)は、次のとおりである。
システム体積(ul)
5×AMV buffer 5
AMV酵素 1
dNTP 2
ランダムプライマー 1.5
RNase阻害剤 0.5
RNAテンプレート 10
逆転写反応手順:42℃60分、94℃5分、4℃10分。
【0020】
遺伝子増幅反応システム(25ul)は、次のとおりである。
システム体積
P1 1
P2 1
10×Buffer 5
dNTP 1
Taq酵素 0.5
ddH
20 11.5
逆転写テンプレート 5
反応手順:94℃3分;94℃45秒、53℃45秒、72℃1分30秒を30サイクル;72℃10分;16℃10分。
【0021】
PDEVウイルス力価の測定:TCID50を使用して、増殖したPEDVウイルス液中のウイルスタイター(TCID50/0.1ml)を測定する。具体的なステップは、次のとおりである。
消化されたVero細胞を96ウェルプレートに接種し、37℃,5%CO2恒温培養器に入れて細胞の単層を形成するまで培養し;
2mlの滅菌遠心チューブ内でDMEMを使用してPEDVウイルス液を10
−6まで連続的に10倍希釈し;
希釈したウイルス溶液をVero細胞の単層が形成された96ウェルプレートに接種し、各希釈段階を縦列に合計8穴に接種し、各穴に100ulのウイルスを接種し、7番目と8番目の縦列はコントロールとしてウイルスを含まないDMEM培地を接種し、37℃で、5%のCO2恒温培養器で1時間インキュベートし;
ウイルスインキュベーション液とDMEM培養基をピペットで少量吸引し、2%FBSを含むDMEM細胞メンテナンス液100ulを加え、37℃、5%CO2恒温培養器で120時間培養し;
細胞変性効果(CPE)の状況を毎日観察して記録し、Reed−Muerch法に従ってPEDVウイルス液のTCID50を計算した。
【0023】
TCID50の測定結果から、パンクレアチンの濃度はVERO細胞でのPEDVの増殖に一定の影響を及ぼし、パンクレアチン濃度5ug/ml条件下で、ウイルスタイターの最高値が10
−4.43/0.1mlであることが分かる。
【0024】
(3)プロバイオティクス(ラクトバチルスプランタラムZN−3の受託番号CCTCC M 2017286)の菌液およびその代謝産物の調製
平板で賦活したラクトバチルスプランタラムZN−3を150mlのMRS液体培地に接種し、37℃で24時間培養し、2400rpmで10分間遠心分離し、上清を取り、上清液のpH値を検出し、後で使用するために4℃で保存した。遠心分離後の菌体ペレットを滅菌PBSに再懸濁し、細菌懸濁液の濃度を10
9CFU/mlに調整し、後で使用するために4℃で保存した。
【0025】
(4)プロバイオティクスおよび代謝産物の細胞毒性試験
96ウェルプレートに細胞懸濁液を接種し、細胞の単層が形成するまで培養し;
ラクトバチルスプランタラムZN−3の菌懸濁液および代謝産物を取り、菌懸濁液を10倍勾配で希釈し、10
7CFU/ml、10
8CFU/ml、10
9CFU/mlの3つの勾配を選択し、代謝産物は発酵上清原液から取り、滅菌NaOHで発酵上清液をpH7.0に調整し;
異なる処理の縦列を作成し、各穴に100ulの異なる処理液を加え、37℃で5%のCO
2培養器で90分間インキュベートし;
インキュベーション後、2つの処理方法に分け、
1つは、インキュベーション液を廃棄した後、細胞メンテナンス液を直接加えて培養を続ける方法であり;
もう1つは、インキュベーション液を廃棄してPBSで1回洗浄した後、細胞メンテナンス液を加えて培養を続けると共に、ブランク細胞対照とウイルス対象を設ける方法であり;
細胞変性の状態を毎日観察し、ウイルス対照群細胞のCPEが80%以上に達したら、MTT法で細胞活性を測定する。
細胞毒性=(対照群OD
490−処理群OD
490)/対照群OD
490×100%
【0026】
プロバイオティクスZN−3またはその代謝産物のVERO細胞に対する毒性効果をMTT法で間接的に測定した結果、10
7CFU/ml、10
8CFU/ml、10
9CFU/mlの3つの勾配の菌懸濁液はVERO細胞に対し毒性効果がなく、90分間インキュベートした後、インキュベーション液を廃棄してPBSで洗浄せずに直接メンテナンス液を加えると、ある程度(12%〜14%)の細胞成長を促進でき、90分間インキュベートした後、インキュベーション液を廃棄すると共にPBSで洗浄した後、10
7CFU/ml、10
8CFU/ml、10
9CFU/mlの3つの勾配にもある程度の成長促進効果(2%−4%)があり;発酵上清について、pHを調整していない処理群は、洗浄の有無に関わらず、細胞の活性が極端に低下(93%程度低下)し、pHを7.0に調整した発酵上清の場合、未洗浄群の活性は影響を受けず、洗浄群の活性が4.37%増加したことを示している。これに基づいて、後続の試験において、10
8CFU/mlとpHが7.0に調整された発酵上清をそれぞれ選択してプロバイオティクスおよびその代謝産物のウイルス阻害作用を測定した。
【0028】
(5)PEDVウイルスに対するプロバイオティクスの阻害率をMTT法で間接的に検出:試験は8グループに分けられる。
グループ1〜2は、プロバイオティクスまたはその代謝産物で前処理してからウイルスに接種:プロバイオティクスまたは代謝産物を先に細胞に接種して90分間共培養し、洗浄した後、細胞に100TCID50/0.1ml PEDVを感染させ、培養器に入れて90分間吸着させ、洗浄後、細胞メンテナンス液を添加して培養を続けた。
【0029】
グループ3〜4は、プロバイオティクスまたはその代謝産物を細胞に同時に接種:プロバイオティクスまたはその代謝産物を等量の100TCID50/0.1ml PEDVと混合し、単層を形成した96ウェル培養プレートに加えて90分間共培養し、混合液を廃棄してPBSで洗浄し、細胞メンテナンス液を加えて培養を続けた。
【0030】
グループ5〜6は、それぞれ先にウイルス感染細胞を加えてから、プロバイオティクスまたはその代謝産物に接種:細胞に100TCIC50/0.1ml PEDVを感染させ、培養器中で90分間吸着した後で洗浄してから、プロバイオティクスまたはその代謝産物を加え、恒温培養器に入れて90分培養した後PBSで洗浄し、細胞メンテナンス液を加えて培養を続けた。
【0031】
グループ7はウイルス対照である:VERO細胞に100TCID50/0.1ml PEDVを感染させ、恒温培養器に入れて90分吸着した後PBSで洗浄し、細胞メンテナンス液を加えて培養を続けた。
【0032】
グループ8は、正常細胞対照であった。
【0033】
ウイルス阻害率=(プロバイオティクス処理群OD
490−ウイルス対照群OD
490)/(細胞対照群OD
490−ウイルス対照群OD
490)×100%
【0034】
(細胞レベルでのPEDVウイルスに対するプロバイオティクスおよびその代謝産物阻害作用の結果。)
PEDVウイルスに対するプロバイオティクスおよびその代謝産物の阻害作用を異なる処理方法でそれぞれ測定し、実験結果から、ZN−3菌懸濁液の場合、3つの処理方法すべてがウイルスに対して阻害作用があることを示し、阻害率はそれぞれ28.30%、20.75%、22.64%であったことがわかる。発酵上清の場合、先に発酵上清を加えてからPEDV希釈液を添加すること、発酵ブロスとPEDV希釈液を同時に添加するという2つの方法はウイルスに対して阻害作用があり、阻害率がそれぞれ32.08%と13.21%であり;先にPEDV希釈液を添加してから発酵上清を添加したものは、阻害作用がなかった。
【0036】
(付記)
(付記1)
豚流行性下痢ウイルス感染症の予防または治療するための医薬品の調製における、受託番号CCTCC M 2017286で寄託されるラクトバチルスプランタラムZN−3の使用。
【0037】
(付記2)
豚流行性下痢ウイルス阻害剤の調製におけるラクトバチルスプランタラムZN−3の使用。
【0038】
(付記3)
前記ラクトバチルスプランタラムZN−3は、ラクトバチルスプランタラムZN−3の発酵ブロスまたは発酵上清である、付記1に記載の使用。