特許第6968550号(P6968550)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6968550
(24)【登録日】2021年10月29日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】マスク製造装置及びマスク製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/04 20060101AFI20211108BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20211108BHJP
【FI】
   C23C14/04 A
   H05B33/14 A
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-39459(P2017-39459)
(22)【出願日】2017年3月2日
(65)【公開番号】特開2018-145464(P2018-145464A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2020年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】510281944
【氏名又は名称】新東エスプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112427
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 芳洋
(72)【発明者】
【氏名】寺本 亮
(72)【発明者】
【氏名】原 章宏
【審査官】 神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−037128(JP,A)
【文献】 特開2015−001012(JP,A)
【文献】 特開2006−169587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/04
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の帯状のメタルマスクシートをメタルマスクフレームに取り付けることによりメタルマスクを製造するマスク製造装置であって、
第1エアシリンダと、
前記第1エアシリンダに供給する圧縮空気の圧力を制御する第1電空レギュレータと、
第1固定グリップ部と第1可動グリップ部とを有し、前記第1エアシリンダの空気圧により前記第1可動グリップ部を前記第1固定グリップ部に対して移動させ、前記メタルマスクシートの一端部を前記第1固定グリップ部と前記第1可動グリップ部とで挟持する第1挟持部と、
第2エアシリンダと、
前記第2エアシリンダに供給する圧縮空気の圧力を制御する第2電空レギュレータと、
第2固定グリップ部と第2可動グリップ部とを有し、前記第2エアシリンダの空気圧により前記第2可動グリップ部を前記第2固定グリップ部に対して移動させ、前記メタルマスクシートの他端部を前記第2固定グリップ部と前記第2可動グリップ部とで挟持する第2挟持部と、
前記メタルマスクシートの形態を入力する入力部と、
前記メタルマスクフレームに対する前記メタルマスクシートの位置、前記メタルマスクシートの形態に基づく前記メタルマスクシートに付与する張力、並びに前記メタルマスクシートの形態及び前記張力に基づく前記第1挟持部及び前記第2挟持部の挟持力を記憶する記憶部と、
前記入力部により入力される前記メタルマスクシートの形態、前記記憶部に記憶されている前記位置、前記張力及び前記挟持力を取得する取得部と、
前記第1電空レギュレータ及び前記第2電空レギュレータを制御することにより、前記取得部において取得した前記第1挟持部及び前記第2挟持部の前記挟持力に変更する挟持力変更部と、
前記第1挟持部に挟持された前記メタルマスクシートの一端部と前記第2挟持部に挟持された前記メタルマスクシートの他端部とを互いに離間させる方向に移動させることにより、前記取得部において取得した前記張力を前記メタルマスクシートに付与する張力部と、
前記張力部により前記張力が付与された前記メタルマスクシートを前記メタルマスクフレームに取り付ける取付部と、
を備えることを特徴とするマスク製造装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記メタルマスクシートの形態として、前記メタルマスクシートの厚さ、前記メタルマスクシートの形状、前記メタルマスクシートの長さに対する幅、前記メタルマスクシートの材質、前記メタルマスクシートに形成される開口パターン及び前記メタルマスクシートの引張量の少なくとも1つを取得し、
前記挟持力変更部は、前記取得部において取得した前記メタルマスクシートの厚さ、前記メタルマスクシートの形状、前記メタルマスクシートの長さに対する幅、前記メタルマスクシートの材質、前記メタルマスクシートに形成される開口パターン及び前記メタルマスクシートの引張量の少なくとも1つ並びに前記張力に基づく前記挟持力に変更することを特徴とする請求項1記載のマスク製造装置。
【請求項3】
複数の帯状のメタルマスクシートをメタルマスクフレームに取り付けることによりメタルマスクを製造するマスク製造方法であって、
前記メタルマスクシートの形態を入力する入力工程と、
前記入力工程において入力された前記メタルマスクシートの形態、記憶部に記憶されている前記メタルマスクフレームに対する前記メタルマスクシートの位置、前記記憶部に記憶されている前記メタルマスクシートの形態に基づく前記メタルマスクシートに付与する張力、並びに前記記憶部に記憶されている前記メタルマスクシートの形態及び前記張力に基づく第1挟持部及び第2挟持部の挟持力を取得する取得工程と、
前記取得工程において取得した前記第1挟持部の前記挟持力に基づいて第1電空レギュレータによる第1エアシリンダに供給する圧縮空気の圧力を調整し、前記取得工程において取得した前記第2挟持部の前記挟持力に基づいて第2電空レギュレータによる第2エアシリンダに供給する圧縮空気の圧力を調整する調整工程と、
前記調整工程において調整された前記第1エアシリンダの空気圧により前記第1挟持部の第1可動グリップ部を前記第1挟持部の第1固定グリップ部に対して移動させ、前記メタルマスクシートの一端部を前記第1固定グリップ部と前記第1可動グリップとで挟持する第1挟持工程と、
前記調整工程において調整された前記第2エアシリンダの空気圧により前記第2挟持部の第2可動グリップ部を前記第2挟持部の第2固定グリップ部に対して移動させ、前記メタルマスクシートの他端部を前記第2固定グリップ部と前記第2可動グリップとで挟持する第2挟持工程と、
前記第1挟持工程において挟持された前記メタルマスクシートの一端部と前記第2挟持工程において挟持された前記メタルマスクシートの他端部とを互いに離間させる方向に移動させることにより、前記取得工程において取得した前記張力を前記メタルマスクシートに付与する張力付与工程と、
前記張力付与工程において前記張力が付与された前記メタルマスクシートを前記メタルマスクフレームに取り付ける取付工程と、
を含むことを特徴とするマスク製造方法。
【請求項4】
前記取得工程は、前記メタルマスクシートの形態として前記メタルマスクシートの厚さ、前記メタルマスクシートの形状、前記メタルマスクシートの長さに対する幅、前記メタルマスクシートの材質、前記メタルマスクシートに形成される開口パターン及び前記メタルマスクシートの引張量の少なくとも1つを取得することを特徴とする請求項3記載のマスク製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタルマスクを製造するマスク製造装置及び該マスク製造装置を用いたマスク製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、有機EL素子の製造工程において有機発光層を真空蒸着する際に使用されるメタルマスクを製造する際に、クランプ機構で金属薄板に一定の張力を付与することにより、歪みのない状態で金属薄板を枠(メタルマスクフレーム)に貼り付ける金属薄板の枠貼り装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−311335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1等に記載の枠貼り装置(マスク製造装置)においては、一方のクランプで金属薄板(メタルマスクシート)の一端部を挟持し、他方のクランプでメタルマスクシートの他端部を挟持し、これらを互いに離間する方向に引っ張ることによりメタルマスクシートに張力を付与している。ところで、メタルマスクシートの形態に基づいて最適な張力を付与する必要があるが、メタルマスクシートに対して最適な張力を付与するために、メタルマスクシートの形態、特にメタルマスクシートの厚さに基づいてクランプによりメタルマスクシートを挟持する挟持力を調整するとよいことが見出された。
【0005】
なお、メタルマスクシートを挟持する挟持力をモータにより調整可能なマスク製造装置が存在するが、モータを搭載した場合、マスク製造装置が大型化するという問題があった。また、モータからの発熱により製造されるメタルマスクの精度が悪化するという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、製造されるメタルマスクの精度を悪化させることなく、メタルマスクシートの形態に基づいてメタルマスクシートを挟持する挟持力を変化させることができるマスク製造装置及び該マスク製造装置を用いたマスク製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のマスク製造装置は、メタルマスクシートをメタルマスクフレームに取り付けることによりメタルマスクを製造するマスク製造装置であって、第1エアシリンダと、前記第1エアシリンダに供給する圧縮空気の圧力を制御する第1電空レギュレータと、第1固定グリップ部と第1可動グリップ部とを有し、前記第1エアシリンダの空気圧により前記第1可動グリップ部を前記第1固定グリップ部に対して移動させ、前記メタルマスクシートの一端部を前記第1固定グリップ部と前記第1可動グリップ部とで挟持する第1挟持部と、第2エアシリンダと、前記第2エアシリンダに供給する圧縮空気の圧力を制御する第2電空レギュレータと、第2固定グリップ部と第2可動グリップ部とを有し、前記第2エアシリンダの空気圧により前記第2可動グリップ部を前記第2固定グリップ部に対して移動させ、前記メタルマスクシートの他端部を前記第2固定グリップ部と前記第2可動グリップ部とで挟持する第2挟持部と、前記メタルマスクシートの形態に基づいて前記第1電空レギュレータ及び前記第2電空レギュレータを制御することにより、前記第1挟持部及び前記第2挟持部による前記メタルマスクシートの挟持力を変更する挟持力変更部と、前記第1挟持部に挟持された前記メタルマスクシートの一端部と前記第2挟持部に挟持された前記メタルマスクシートの他端部とを互いに離間させる方向に移動させることにより、前記メタルマスクシートに所定の張力を付与する張力部と、前記張力部により前記所定の張力が付与された前記メタルマスクシートを前記メタルマスクフレームに取り付ける取付部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のマスク製造装置は、前記挟持力変更部が前記メタルマスクシートの厚さ、前記メタルマスクシートの形状、前記メタルマスクシートの長さに対する幅、前記メタルマスクシートの材質、前記メタルマスクシートに形成される開口パターン及び前記メタルマスクシートの引張量の少なくとも1つに基づいて前記挟持力を変更することを特徴とする。
【0009】
また、本発明のマスク製造方法は、メタルマスクを製造するマスク製造方法であって、メタルマスクシートの形態を取得する取得工程と、前記取得工程において取得した前記メタルマスクシートの形態に基づいて、第1電空レギュレータによる第1エアシリンダに供給する圧縮空気の圧力及び第2電空レギュレータによる第2エアシリンダに供給する圧縮空気の圧力を調整する調整工程と、前記調整工程において調整された前記第1エアシリンダの空気圧により第1可動グリップ部を第1固定グリップ部に対して移動させ、前記メタルマスクシートの一端部を前記第1固定グリップ部と前記第1可動グリップとで挟持する第1挟持工程と、前記圧力制御工程において制御された前記第2エアシリンダの空気圧により第2可動グリップ部を第2固定グリップ部に対して移動させ、前記メタルマスクシートの他端部を前記第2固定グリップ部と前記第2可動グリップとで挟持する第2挟持工程と、前記第1挟持工程において挟持された前記メタルマスクシートの一端部と前記第2挟持工程において挟持された前記メタルマスクシートの他端部とを互いに離間させる方向に移動させることにより、前記メタルマスクシートに所定の張力を付与する張力付与工程と、前記張力付与工程において前記所定の張力が付与された前記メタルマスクシートをメタルマスクフレームに取り付ける取付工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明のマスク製造方法は、前記調整工程が前記メタルマスクシートの厚さ、前記メタルマスクシートの形状、前記メタルマスクシートの長さに対する幅、前記メタルマスクシートの材質、前記メタルマスクシートに形成される開口パターン及び前記メタルマスクシートの引張量の少なくとも1つに基づいて前記圧力を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、製造されるメタルマスクの精度を悪化させることなく、メタルマスクシートの形態に基づいてメタルマスクシートを挟持する挟持力を変化させることができるマスク製造装置及び該マスク製造装置を用いたマスク製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態に係るメタルマスク製造装置の概略構成を示す正面図である。
図2】実施の形態に係るメタルマスク製造装置の概略構成を示す平面図である。
図3】実施の形態に係るメタルマスク製造装置により製造されるメタルマスクの一例を示す図である。
図4】実施の形態に係る第1挟持装置の構成を示す図である。
図5】実施の形態に係るメタルマスク製造装置のシステム構成を示すブロック図である。
図6】実施の形態に係るメタルマスク製造装置を用いたメタルマスク製造方法について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係るマスク製造装置について、有機EL素子の製造工程において有機発光層を真空蒸着する際に使用されるメタルマスクを製造するメタルマスク製造装置を例に挙げて説明する。図1はこの実施の形態に係るメタルマスク製造装置の概略構成を示す正面図、図2はこの実施の形態に係るメタルマスク製造装置の概略構成を示す平面図である。なお、以下の説明においては、図1に示すXYZ直交座標系を設定し、この直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係等について説明する。XY平面は、メタルマスク製造装置を載置する水平面に平行な面に設定されており、Z軸は、鉛直方向に設定されている。
【0014】
メタルマスク製造装置2は、帯状のメタルマスクシート18(図3参照)を枠状のメタルマスクフレーム20(図3参照)に取り付けることによりメタルマスク16(図3参照)を製造するための装置であって、テーブル部4、第1挟持装置6、ガイドレール8a,8b、第2挟持装置10、ガイドレール12a,12b及び基台14を備えている。
【0015】
テーブル部4は、矩形状の平板であり、メタルマスクフレーム20をXY平面に平行になるように載置する。第1挟持装置6は、帯状のメタルマスクシート18の一端部(+X方向側の端部)を挟持するための装置であり、ガイドレール8a,8bは、第1挟持装置6を±Y方向にスライド可能に支持する。第2挟持装置10は、メタルマスクシート18の他端部(−X方向側の端部)を挟持するための装置であり、ガイドレール12a,12bは、第2挟持装置10を±Y方向にスライド可能に支持する。また、第1挟持装置6はテーブル部4の+X方向側に、第2挟持装置10はテーブル部4の−X方向側に、互いに向き合うようにして配置されており、第1挟持装置6及び第2挟持装置10は、一対のセットとして、メタルマスクシート18に所定の張力を付与する張力装置を構成する。
【0016】
図3は、実施の形態に係るメタルマスク製造装置2により製造されるメタルマスクの一例を示す図である。図3に示すように、メタルマスク16は、メタルマスク製造装置2により複数のメタルマスクシート18の両端部を枠状のメタルマスクフレーム20を構成する対向する二辺に順次貼り付けることにより製造され、有機EL素子の製造工程において有機材の真空蒸着を行う際に使用される。なお、この実施の形態では、図3に示すように、複数の正方形状の開口がエッチングなどにより形成された開口パターンを有するメタルマスクシート18を例に挙げて説明したが、正方形状以外の開口、例えば複数の円形状や長方形状の開口がエッチングなどにより形成された開口パターンを有するメタルマスクシートについても本発明を適用することができる。
【0017】
図4は、実施の形態に係る第1挟持装置6の構成を示す図である。第1挟持装置6は、図4に示すように、挟持部22、エアシリンダ28、電空レギュレータ30、直動カム32、従節ローラ34、ボールねじ36、ボールナット37、モータ38、及びリニアガイドレール58を備えている。
【0018】
挟持部22は、固定グリップ部24及び可動グリップ部26を有している。固定グリップ部24は、XY平面に平行且つ+Z方向に露出する挟持面を有している。可動グリップ部26は、XY平面に平行且つ−Z方向に露出する挟持面を有し、固定グリップ部24に対して±Z方向に移動可能に構成されている。挟持部22は、可動グリップ部26を固定グリップ部24に対して−Z方向に移動させ、固定グリップ部24の挟持面に載置されたメタルマスクシート18の一端部(+X方向側の端部)を、固定グリップ部24の挟持面と可動グリップ部26の挟持面とで挟持する。
【0019】
電空レギュレータ30は、エアシリンダ28に供給する圧縮空気の圧力を制御する。電空レギュレータ30により制御された圧縮空気がエアシリンダ28に供給されると、直動カム32は、エアシリンダ28の空気圧に基づいて−X方向に所定量移動し、可動グリップ部26は、従節ローラ34を介して、直動カム32の移動量に基づき−Z方向に所定量移動する。エアシリンダ28内の圧縮空気が排出されると、直動カム32は、+X方向に移動して元の位置に戻り、可動グリップ部26は、従節ローラ34を介して+Z方向に移動して元の位置に戻る。即ち、可動グリップ部26は、エアシリンダ28の空気圧により固定グリップ部24に対して移動する。
【0020】
モータ38は、ボールねじ36を回転させる。ボールねじ36の−X方向側の端部には、ボールナット37が取り付けられている。リニアガイドレール58は、挟持部22、エアシリンダ28、電空レギュレータ30、直動カム32、従節ローラ34、及びボールナット37を±X方向にスライド可能に支持する。したがって、ボールねじ36が回転することにより、挟持部22、エアシリンダ28、電空レギュレータ30、直動カム32、従節ローラ34、及びボールナット37(以下、挟持部22等という。)が一体となってリニアガイドレール58に沿って±X方向に移動する。
【0021】
第2挟持装置10は、図1に示すように、挟持部42、エアシリンダ44、電空レギュレータ56(図5参照)、直動カム46、従節ローラ48、ボールねじ50、ボールナット52、モータ54、及びリニアガイドレール64を備えている。第2挟持装置10の挟持部42、エアシリンダ44、電空レギュレータ56、直動カム46、従節ローラ48、ボールねじ50、ボールナット52、モータ54、及びリニアガイドレール64それぞれの構成は、テーブル部4の長手方向(Y方向)の中心線を線対称として、図4に示す第1挟持装置6の挟持部22、エアシリンダ28、電空レギュレータ30、直動カム32、従節ローラ34、ボールねじ36、ボールナット37、モータ38、及びリニアガイドレール58それぞれの構成と同一である。なお、第2挟持装置10の挟持部42は、固定グリップ部の挟持面に載置されたメタルマスクシート18の他端部(−X方向側の端部)を固定グリップ部の挟持面と可動グリップ部の挟持面とで挟持する。
【0022】
図5は、メタルマスク製造装置2のシステム構成を示すブロック図である。メタルマスク製造装置2は、図5に示すように、メタルマスク製造装置2の各部、特に第1挟持装置6の各部及び第2挟持装置10の各部を統括的に制御する制御部40を備えている。制御部40には、第1挟持装置6のモータ38、第1挟持装置6の電空レギュレータ30、第2挟持装置10のモータ54、第2挟持装置10の電空レギュレータ56、記憶部60、及び入力部62が接続されている。
【0023】
制御部40は、メタルマスクシート18の形態、特にメタルマスクシート18の厚さに基づいて電空レギュレータ30の駆動を制御することにより、第1挟持装置6の挟持部22によるメタルマスクシート18の一端部の挟持力を変更する。同様に、制御部40は、メタルマスクシート18の形態、特にメタルマスクシート18の厚さに基づいて電空レギュレータ56の駆動を制御することにより、第2挟持装置10の挟持部42によるメタルマスクシート18の他端部の挟持力を変更する。なお、メタルマスクフレーム20に対するメタルマスクシート18の位置、メタルマスクシート18の厚さ、メタルマスクシート18の厚さに基づく最適な張力(メタルマスクシート18に付与する張力)、及びメタルマスクシート18の厚さや最適な張力に基づく最適な挟持力等を含むメタルマスクシート18に関する情報は、記憶部60に予め記憶されている。制御部40は、入力部62を介して入力されたメタルマスク18の厚さに関する情報を取得し、取得した情報に基づいて記憶部60に記憶されているメタルマスクシート18に関する情報を読み込む。また、制御部40は、第1挟持装置6及び第2挟持装置10にメタルマスクシート18が挟持されている状態で、第1挟持装置6のモータ38及び第2挟持装置10のモータ54の駆動を制御することにより、第1挟持装置6の挟持部22を+X方向に、且つ第2挟持装置10の挟持部42を−X方向に移動させ、メタルマスクシート18に所定の張力を付与する。
【0024】
次に、図面を参照して、この実施の形態に係るメタルマスク製造装置2において、メタルマスクを製造するメタルマスク製造方法について説明する。図6は、メタルマスク製造装置2においてメタルマスクシート18をメタルマスクフレーム20に取り付ける際の処理について説明するためのフローチャートである。
【0025】
まず、制御部40は、メタルマスクシート18に関する情報、例えばメタルマスクフレーム20に対する位置・付与する張力を取得する(ステップS1)。具体的には、制御部40は、入力部62を介して入力されたメタルマスク18の形態、例えばメタルマスク18の厚さに関する情報を取得し、取得したメタルマスク18の厚さに関する情報に基づいて、記憶部60に記憶されているメタルマスクシート18に関する情報を読み込む。メタルマスクシート18に関する情報には、上述したように、メタルマスクフレーム20に対するメタルマスクシート18の位置、メタルマスクシート18の厚さ、メタルマスクシート18の厚さに基づく最適な張力(メタルマスクシート18に付与する張力)、及びメタルマスクシート18の厚さや最適な張力に基づく最適な挟持力等が含まれる。
【0026】
次に、制御部40は、ステップS1において取得したメタルマスクシート18に関する情報に基づいて、メタルマスクシート18に付与する張力に対してエアシリンダ28,44に供給する圧縮空気の圧力を調整する(ステップS2)。具体的には、制御部40は、第1挟持装置6の挟持部22によるメタルマスクシート18の一端部の挟持力がステップS1において取得したメタルマスクシート18の厚さや最適な張力に基づく最適な挟持力となるように、電空レギュレータ30の駆動を制御する。同様に、制御部40は、第2挟持装置10の挟持部42によるメタルマスクシート18の他端部の挟持力がステップS1において取得したメタルマスクシート18の厚さや最適な張力に基づく最適な挟持力となるように、電空レギュレータ56の駆動を制御する。電空レギュレータ30により調整された圧縮空気がエアシリンダ28に供給され、エアシリンダ28の空気圧により可動グリップ部26が固定グリップ部24に対して−Z方向に所定量移動し、メタルマスクシート18の一端部は、挟持部22により挟持される。同様に、電空レギュレータ56により調整された圧縮空気がエアシリンダ44に供給され、エアシリンダ44の空気圧により挟持部42の可動グリップ部が挟持部42の固定グリップ部に対して−Z方向に所定量移動し、メタルマスクシート18の他端部は、挟持部42により挟持される。
【0027】
挟持部22,42がメタルマスクシート18の両端部を挟持すると(ステップS3)、制御部40は、第1挟持装置6及び第2挟持装置10をY方向に移動させる(ステップS4)。即ち、制御部40は、第1挟持装置6をガイドレール8a,8bに沿って移動させ、第2挟持装置10をガイドレール12a,12bに沿って移動させることにより、メタルマスクシート18をメタルマスクフレーム20上の所定の位置(メタルマスクフレーム20に貼り付ける位置)まで移動させる。
【0028】
次に、制御部40は、メタルマスクシート18に所定の張力を付与する(ステップS5)。具体的には、制御部40は、ステップS1において取得したメタルマスクシート18に付与される最適な張力に基づいてモータ38を駆動させ、ボールねじ36を回転させる。ボールねじ36が回転することにより、挟持部22等が一体となってリニアガイドレール58に沿って+X方向に移動する。同様に、制御部40は、ステップS1において取得したメタルマスクシート18に付与される最適な張力に基づいてモータ54を駆動させ、ボールねじ50を回転させる。ボールねじ50が回転することにより、挟持部42、エアシリンダ44、電空レギュレータ56、直動カム46、従節ローラ48、及びボールナット52(以下、挟持部42等という。)が一体となってリニアガイドレール64に沿って−X方向に移動する。挟持部22等が+X方向に、挟持部42等が−X方向に移動することにより、挟持部22に挟持されたメタルマスクシート18の一端部と挟持部42に挟持されたメタルマスクシート18の他端部とが互いに離間する方向に移動し、メタルマスクシート18に所定の張力(最適な張力)が付与される。なお、制御部40は、メタルマスクシート18に所定の張力を付与すると共に、メタルマスクフレーム20に対するメタルマスクシート18の位置を調整する(ステップS5)。
【0029】
次に、ステップS5において所定の張力が付与されたメタルマスクシート18をメタルマスクフレーム20に取り付ける(ステップS6)。例えば、メタルマスクシート18の両端部を枠状のメタルマスクフレーム20を構成する対向する二辺に溶接等して貼り付ける。制御部40は、メタルマスクフレーム20に所定枚数のメタルマスクシート18を取り付け終えるまで、ステップS2〜S6の処理を繰り返す。所定枚数のメタルマスクシート18がメタルマスクフレーム20に取り付けられることにより、図3に示すようなメタルマスク16が製造される。
【0030】
この実施の形態に係るメタルマスク製造装置2及びメタルマスク16の製造方法によれば、メタルマスクシート18に張力を付与する際に、電空レギュレータ30,56を用いてメタルマスクシート18の両端部を挟持する挟持力を適宜変更することができる。即ち、メタルマスクシート18の厚さ及びメタルマスクシート18に付与される最適な張力に基づく最適な挟持力でメタルマスクシート18の両端部を挟持することができる。また、モータ等を用いずに挟持力を変更することができるため、モータ等の発熱を要因とするメタルマスク16の精度悪化を防止することができ、良好なメタルマスク16を製造することができる。また、挟持力を調整するためのモータ等を搭載する必要がないため、メタルマスク製造装置2のコンパクト化を図ることができる。
【0031】
なお、上述の実施の形態においては、メタルマスクシートの厚さに基づいてメタルマスクシートの両端部の挟持力を変化させているが、メタルマスクシートの厚さ以外のメタルマスクシートの形態、例えばメタルマスクシートの形状、メタルマスクシートの長さに対する幅、メタルマスクシートの材質、メタルマスクシートに形成される開口パターンまたはメタルマスクシートの引張量等に基づいてメタルマスクシートの両端部の挟持力を変化させるようにしてもよい。また、メタルマスクシートの厚さ、メタルマスクシートの形状、メタルマスクシートの長さに対する幅、メタルマスクシートの材質、メタルマスクシートに形成される開口パターン及びメタルマスクシートの引張量の少なくとも2つ以上の組み合わせに基づいてメタルマスクシートの両端部の挟持力を変化させるようにしてもよい。メタルマスクシートは、メタルマスクシートの両端部を引っ張った状態でメタルマスクシートの長さが設計値となるように、その長さを縮小して作成されており、その縮小率はメタルマスクシートにより異なる。また、メタルマスクシートの引張量は、メタルマスクシートの縮小率により異なる。したがって、メタルマスクシートの引張量に対する最適な張力に基づく最適な挟持力でメタルマスクシートの両端部を挟持することができる。
【符号の説明】
【0032】
2…メタルマスク製造装置、4…テーブル部、6…第1挟持装置、8a,8b…ガイドレール、10…第2挟持装置、12a,12b…ガイドレール、14…基台、16…メタルマスク、18…メタルマスクシート、20…メタルマスクフレーム、22,42…挟持部、24…固定グリップ部、26…可動グリップ部、28,44…エアシリンダ、30,56…電空レギュレータ、32,46…直動カム、34,48…従節ローラ、36,50…ボールねじ、37,52…ボールナット、38,54…モータ、40…制御部、58,64…リニアガイドレール、60…記憶部、62…入力部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6