(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
眼科診療において経時的に取得された検査画像を含む複数の検査情報を保存し、前記検査情報に基づいて選択された複数の検査画像を表示する眼科診療情報処理システムであって、
ユーザーの選択による前記検査画像を基本検査画像として特定し、又は、病変の発生及び所定以上の変化を解析して、前記病変の発生及び所定以上の変化を示す検査画像を前記基本検査画像として特定すると共に、ユーザーにより前記検査画像の中から選択され、前記基本検査画像と対比する比較検査画像を特定し、前記基本検査画像及び前記比較検査画像を表示させ、前記基本検査画像と前記比較検査画像を保存する眼科診療情報処理システムにおいて、
診療種別ごとのレポートテンプレートを格納するテンプレート格納部と、
過去に取得された検査データを患者ごとに格納する検査データ格納部と、
患者に対して新たに実施された診療行為の種別を表す新規診療種別と、当該診療行為により取得された新規検査データと、当該患者に付与された患者識別子とを受け付ける情報受付部と、
前記情報受付部により受け付けられた前記新規診療種別に対応するレポートテンプレートを前記テンプレート格納部から取得するテンプレート取得部と、
前記情報受付部により受け付けられた前記患者識別子に基づいて、前記検査データ格納部から過去の検査データを取得する検査データ取得部と、
前記テンプレート取得部により取得された前記レポートテンプレートと、前記検査データ取得部により取得された前記検査データ、前記情報受付部により受け付けられた前記新規検査データに基づいて当該患者の検査レポートを作成するレポート作成部と、
前記レポート作成部により作成された前記検査レポートを表示部に表示させる表示制御部とを備え、
前記情報受付部は、前記ユーザーによる前記基本検査画像の選択のための入力及び前記基本検査画像と対比するための複数の比較検査画像の選択のための入力を受け付け、
前記レポート作成部は、前記ユーザーによる入力情報に基づき、前記入力情報に対応する過去の検査データを取得し、取得された検査データに関連付けられた検査画像を抽出して選択された基本検査画像として特定すると共に、前記過去の検査画像の中から比較検査画像を特定し、前記基本検査画像及び前記比較検査画像を前記表示制御部を介して表示部に表示させ、
前記検査データ格納部は、前記基本検査画像と前記比較検査画像、及び関連情報を保存することを特徴とする眼科診療情報処理システム。
前記比較検査画像は、前記基本検査画像に対応する検査データよりも経時的に以前に取得された検査データ及び前記基本検査画像に対応する検査データよりも経時的に以後に取得された検査データに対応する検査画像からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の眼科診療情報処理システム。
前記検査データは網膜の断層画像に表示された網膜の厚さ寸法データであると共に、前記検査画像は、網膜の断層画像と、前記断層画像に基づき眼底断面を構成する各層に分割して抽出し、各層を斜視方向から平面的に示す複数層マップ表示画像とを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の眼科診療情報処理システム。
前記基本検査画像及び比較検査画像は、表示画面上において横方向に4つ経時的に連続して表示され、前記基本検査画像は左端に配置されると共に、前記比較検査画像は前記基本検査画像の右方に3つ連続して配置されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の眼科診療情報処理システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、このような従来の眼科診療情報処理システムにあっては、表示画面上においては、従来、
図8に示すように、一つの表示画面に表示される診断レポート内において、4つの検査画像が取得された時間的経過に基づき横方向に一列に表示されるように構成されている。
【0009】
この場合、この4枚の画像データは、基準となる基本画像160(例えば、患者の初診時の画像)を左端に1枚目として表示すると共に最新の診療時に撮影された最新画像163を右端に4枚目として表示し、その間に、2枚目の経過画像161及び3枚目の経過画像162を、初診時と最新診療時との間の時間間隔において等分になるように2枚の画像を抽出して表示されている。
【0010】
即ち、本例においては、1枚目の画像(基本画像)160は初診時のものであり、4枚目の画像163が直近の診療時のもので、初診時から例えば6ヶ月後である場合には、2枚目の経過画像161は初診時から2ケ月後に撮影された画像データが表示されると共に、3枚目の経過画像162は初診時から4か月後の画像のデータが表示されるように構成されている。
【0011】
しかしながら、このような従来の眼科診療情報処理システムにあっては、上記4枚の画像160、161、162、163により表示された検査画像は、病変が発生した時点と最新の検査画像が取得された時点との間の時間を単純に等間隔にして対応する各検査画像を抽出して表示されたものであることから、4枚の画像160、161、162、163が病変の変化の経緯を確実に捉えていない場合もあった。
即ち、表示された各検査画像に係る各画像データの夫々の取得時点の間において病変が急激に成長したような場合には、その病変の変化の過程を確実に表示することは不可能であった。
【0012】
その結果、ユーザーである眼科医等は、場合によっては必要に応じて、表示されている検査画像以外に、保存されている複数の検査画像の中から病変の発生及び変化の経緯を示す画像データを別途検索せざるをえず検索作業が煩雑である、という不具合があった。
【0013】
また、ユーザーである眼科医等が検査画像を複数表示させて対比して病変の発生や経過を観察する場合には、一般に、病変が発生した時点をとらえた検査画像、手術を実行した際の検査画像又は投薬を開始した時点の検査画像を基本の検査画像として特定し、その時間的に前後の病変の経過を示す検査画像を経時的に表示させ、これらの検査画像を比較検査画像として対比しながら診断を行う。
しかしながら、従来にあっては、ユーザーである眼科医等が過去の検査画像の中から、上記の観点からの基本検査画像及び比較検査画像を抽出して表示装置に表示させて診療を行った場合であっても、当該患者の診療後システムを終了させた場合には、上記基本検査画像及び比較検査画像は保存されず、次回、同一の患者の診療を行う際にシステムを立ち上げた場合には、その都度、基本検査画像及び比較検査画像を自ら検索して表示させなければならず非常に煩雑である、という不具合が存していた。
【0014】
そこで、本発明の課題は、病変の発生及び変化を確実に表示させることが可能となり、ユーザーである眼科医等が容易に診断を行うこと支援する眼科診療情報処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項
1記載の発明にあっては、眼科診療において経時的に取得された検査画像を含む複数の検査情報を保存し、前記検査情報に基づいて選択された複数の検査画像を表示する眼科診療情報処理システムであって、
ユーザーの選択による前記検査画像を基本検査画像として特定し、又は、病変の発生及び所定以上の変化を解析して、前記病変の発生及び所定以上の変化を示す検査画像を前記基本検査画像として特定すると共に、ユーザーにより前記検査画像の中から選択され、前記基本検査画像と対比する比較検査画像を特定し、前記基本検査画像及び前記比較検査画像を表示させ、前記基本検査画像と前記比較検査画像
を保存する眼科診療情報処理システムにおいて、
診療種別ごとのレポートテンプレートを格納するテンプレート格納部と、
過去に取得された検査データを患者ごとに格納する検査データ格納部と、
患者に対して新たに実施された診療行為の種別を表す新規診療種別と、当該診療行為により取得された新規検査データと、当該患者に付与された患者識別子とを受け付ける情報受付部と、
前記情報受付部により受け付けられた前記新規診療種別に対応するレポートテンプレートを前記テンプレート格納部から取得するテンプレート取得部と、
前記情報受付部により受け付けられた前記患者識別子に基づいて、前記検査データ格納部から過去の検査データを取得する検査データ取得部と、
前記テンプレート取得部により取得された前記レポートテンプレートと、前記検査データ取得部により取得された前記検査データ、前記情報受付部により受け付けられた前記新規検査データに基づいて当該患者の検査レポートを作成するレポート作成部と、
前記レポート作成部により作成された前記検査レポートを表示部に表示させる表示制御部とを備え、
前記情報受付部は、前記ユーザーによる前記基本検査画像の選択のための入力及び前記基本検査画像と対比するための複数の比較検査画像の選択のための入力を受け付け、
前記レポート作成部は、前記ユーザーによる入力情報に基づき、前記入力情報に対応する過去の検査データを取得し、取得された検査データに関連付けられた検査画像を抽出して選択された基本検査画像として特定すると共に、前記過去の検査画像の中から比較検査画像を特定し、前記基本検査画像及び前記比較検査画像を前記表示制御部を介して表示部に表示させ、
前記検査データ格納部は、前記基本検査画像と前記比較検査画像、及び関連情報を保存することを特徴とする眼科診療情報処理システム。
【0016】
請求項
2記載の発明にあっては、
眼科診療において経時的に取得された検査画像を含む複数の検査情報を保存し、前記検査情報に基づいて選択された複数の検査画像を表示する眼科診療情報処理システムであって、
ユーザーの選択による前記検査画像を基本検査画像として特定し、又は、病変の発生及び所定以上の変化を解析して、前記病変の発生及び所定以上の変化を示す検査画像を前記基本検査画像として特定すると共に、ユーザーにより前記検査画像の中から選択され、前記基本検査画像と対比する比較検査画像を特定し、前記基本検査画像及び前記比較検査画像を表示させ、前記基本検査画像と前記比較検査画像を保存する眼科診療情報処理システムにおいて、
診療種別ごとのレポートテンプレートを格納するテンプレート格納部と、過去に取得された検査データを患者ごとに格納する検査データ格納部と、 患者に対して新たに実施された診療行為の種別を表す新規診療種別と、当該診療行為により取得された新規検査データと、当該患者に付与された患者識別子とを受け付ける情報受付部と、前記情報受付部により受け付けられた前記新規診療種別に対応するレポートテンプレートを前記テンプレート格納部から取得するテンプレート取得部と、前記情報受付部により受け付けられた前記患者識別子に基づいて、前記検査データ格納部から過去の検査データを取得する検査データ取得部と、前記検査データ取得部により取得された前記検査データ及び前記情報受付部により受け付けられた前記新規検査データを解析する解析部と、前記テンプレート取得部により取得された前記レポートテンプレートと、前記検査データ取得部により取得された前記検査データ、前記情報受付部により受け付けられた前記新規検査データ及び前記解析部による解析結果に基づいて、当該患者の検査レポートを作成するレポート作成部と、前記レポート作成部により作成された前記検査レポートを表示部に表示させる表示制御部とを備え、前記解析部は、前記検査データから病変の発生及び病変の変化の経過情報を検索して解析し、前記病変の発生又は病変に所定以上の変化が発生した時点の検査データを特定すると共に、前記病変の発生又は病変の所定以上の変化が発生した時点の検査データに対応する検査画像を抽出して基本検査画像として特定し、前記情報受付部は、前記ユーザーによる前記基本検査画像と対比するための複数の比較検査画像の選択のための入力を受け付け、前記レポート作成部は、前記過去の検査画像の中から比較検査画像を特定し、前記基本検査画像及び前記比較検査画像を前記表示制御部を介して表示部に表示させ、前記検査データ格納部は、前記基本検査画像と前記比較検査画像、及び関連情報を保存することを特徴とする。
【0017】
請求項
3記載の発明にあっては、前記比較検査画像は、経時的に前記基本検査画像に対応する検査データよりも以前に取得された検査データ及び、経時的に前記基本検査画像に対応する検査データよりも以後に取得された検査データに対応する検査画像であることを特徴とする。
【0018】
請求項
4記載の発明にあっては、前記比較検査画像は、経時的に前記基本検査画像に対応する検査データよりも以後に取得された検査データであることを特徴とする。
【0019】
請求項
5記載の発明にあっては、前記検査データは網膜の断層画像に表示された網膜の厚さ寸法データであると共に、前記検査画像は網膜の断層画像であることを特徴とする。
【0020】
請求項
6記載の発明にあっては、前記検査データは眼底画像上に表示された病変の面積データであると共に、前記検査画像は眼底画像であることを特徴とする。
【0021】
請求項
7記載の発明にあっては、前記検査データは網膜の断層画像に表示された網膜の厚さ寸法データであると共に、前記検査画像は、網膜の断層画像と、前記断層画像に基づき眼底断面を構成する各層に分割して抽出し、各層を斜視方向から平面的に示す複数層マップ表示画像とを含むことを特徴とする。
【0022】
請求項
8記載の発明にあっては、前記レポート作成部は、前記病変の数値的データ及び前記検査画像が取得された日時データを含めて表示制御部を介して表示することを特徴とする。
【0023】
請求項
9記載の発明にあっては、前記基本検査画像及び比較検査画像は、表示画面上において横方向に4つ経時的に連続して表示され、前記基本検査画像は左端に配置されると共に、前記比較検査画像は前記基本検査画像の右方に3つ連続して配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
従って、請求項1乃至
9記載の発明にあっては、従来の眼科診療情報処理システムにおけるように、病変が発生した時点と最新の検査画像との間の時間を単純に等間隔にして対応する各検査画像を抽出して表示されたものではなく、ユーザーの選択により所望の検査画像を基本検査画像として特定し、又は、システム側で病変の発生又は病変の変化を自動的に解析して、病変の発生又は病変の所定の変化を示す検査画像を基本検査画像として特定すると共に、ユーザーの選択に基づき前記検査画像の中から抽出され前記基本検査画像と対比する比較検査画像を特定し、前記基本検査画像及び前記比較検査画像を表示させるように構成されていることから、表示装置上において病変の発生又は変化を確実に表示させることが可能となり、ユーザーである眼科医等が容易かつ正確に診断を行うことができる眼科診療情報処理システ
ムを提供することができる。
【0025】
また、従来は、ユーザーである眼科医等が過去の検査画像の中から、上記の観点からの基本検査画像及び比較検査画像を抽出して表示装置に表示させて診療を行った場合であっても、当該患者の診療後システムを終了させた場合には、上記基本検査画像及び比較検査画像は保存されず、その後、同一の患者の診療を行う際にシステムを立ち上げた場合には、その都度、基本検査画像及び比較検査画像を自ら検索して表示させなければならず、非常に煩雑であったが、本発明にあっては、ある患者の診療時に使用した基本検査画像及び比較検査画像が保存されることから、次回の同一患者の診療時に即時に前回診療時における基本検査画像及び比較検査画像を呼び出して表示させることが可能となり、効率的かつ正確な診療を行うことが可能となる。
【0026】
請求項
5記載の発明にあっては、前記効果に加えて、さらに、病変の発生及び変化の経緯を確実に捉えた網膜の断層画像を表示させることができ、ユーザーである眼科医等が容易に診断を行うこと支援することができる。
【0027】
請求項
6記載の発明にあっては、前記効果に加えて、さらに、病変の発生及び変化の経緯を確実に捉えた眼底画像を表示させることができ、ユーザーである眼科医等が容易に診断を行うこと支援することができる。
【0028】
請求項
7記載の発明にあっては、前記効果に加えて、さらに、病変の発生及び変化の経緯を確実に捉えた網膜の断層画像と、前記断層画像に基づき眼底断面を構成する各層に分割して抽出し、各層を斜視方向から平面的に示す複数層マップ表示画像とを表示させることができ、ユーザーである眼科医等が容易に診断を行うこと支援することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づき本発明を詳細に説明する。
本実施形態に係る眼科診療情報処理システムは、たとえば、単一のコンピュータ、互いに通信可能な複数のコンピュータ、医療機関内に構築された情報システム、医療機関外に構築された情報システム、または、これらのうちの2以上の組み合わせにより実現される。
【0031】
図1は、本実施の形態に係る眼科診療情報処理システムの基本構成の一例を表す。眼科診療情報処理システム100は、眼科診療において取得された情報を処理するために利用される。眼科診療情報処理システム100は、テンプレート格納部10と、検査データ格納部20と、情報受付部30と、テンプレート取得部40と、検査データ取得部50と、レポート作成部60と、表示制御部70と、表示部80(表示手段)とを備えている。なお、表示手段は眼科診療情報処理システムの外部に設置されていてもよい。
【0032】
(テンプレート格納部10)
テンプレート格納部10は、診療種別ごとのレポートテンプレートを格納する。診療種別とは、診療行為(医療行為)の種別を表し、特に眼科における診療行為の種別を表す。診療種別は、疾患の種別であってもよい。また、診療種別は、階層的に構成されてもよい。
【0033】
たとえば、単一の疾患種別に対して複数の診療種別を設けることや、単一の診療形態に対して複数の疾患種別を設けることが可能である。診療種別は予め設定される。また、診療種別の追加や削除や編集を行うことも可能である。診療種別の例として、「加齢黄斑変性症(の経過観察)」、「緑内障(の経過観察)」、「手術」および「投薬」などがある。
【0034】
レポートテンプレートは、検査データやそれに基づく情報を提示するためのレイアウト(表示画面、印刷紙面等)を表す。レポートテンプレートは、たとえば、このようなレイアウトを表す画像データ、または、それぞれの情報の提示位置(ピクセル位置等)を表すデータである。テンプレート格納部10には、それぞれの診療種別に関連付けられたレポートテンプレートが予め格納される。
たとえば、診療種別「加齢黄斑変性症」に関連付けられたレポートテンプレートと、「緑内障(の経過観察)」に関連付けられたレポートテンプレートと、「手術」に関連付けられたレポートテンプレートと、「投薬」に関連付けられたレポートテンプレートとが少なくとも格納される。
【0035】
テンプレート格納部10は、たとえば、コンピュータ端末に設けられた記憶装置内、ローカルエリアネットワーク(LAN)上のデータベース内、または、ワイドエリアネットワーク(WAN)上のデータベース内に設けられる。
【0036】
(検査データ格納部20)
検査データ格納部20は、過去に取得された検査データを患者ごとに格納する。検査データ格納部20には、たとえば、患者ごとの記憶領域(ファイル)が設けられている。各ファイルは、予め設定された患者識別子によって識別される。また、各検査データには、その種別(検査種別)を表す識別子が付されている。典型的な例として、視力検査により取得された視力値には識別子「視力値」が付され、OCTにより取得された画像データには識別子「OCT画像」が付され、この画像データを所定の解析処理を施して得られたデータには「OCT(解析種別)」が付される。
【0037】
また、各検査データには、検査条件が付されていてもよい。検査条件の例として、検査日(および検査時刻)、検査場所(医療機関コード等)、検査装置の種別、検査者の識別子、検査において適用された条件などがある。
【0038】
各患者のファイルは階層構造を有していてよい。たとえば、各患者のファイルは、左眼の検査データが格納されるサブフォルダと、右眼の検査データが格納されるサブフォルダとを含んでいてよい。或いは、各患者のファイルは、検査日ごとのサブフォルダ、または検査種別ごとのサブフォルダを含んでいてよい。
【0039】
検査データは、眼科において実施された診療行為により取得されたデータを含む。検査データは、眼科診療により取得されたデータである。検査データの典型的な例として、被検眼を撮影して取得された画像データや、被検眼の特性を物理的手段により測定して取得された測定データや、画像データや測定データを解析して取得された解析データなどがある。
【0040】
画像データとしては、たとえば、OCTにより取得されたOCTデータ(断面像データ、3次元画像データ等)や、眼底カメラや走査型レーザ検眼鏡(SLO)により取得された眼底画像データや、顕微鏡(スリットランプ、眼科手術用顕微鏡、スペキュラーマイクロスコープ等)により撮影された画像データなどがある。
【0041】
測定データとしては、たとえば、視力値や、眼圧値や、視野検査で取得されたデータなどがある。
【0042】
解析データとしては、たとえば、OCTデータを解析して得られた網膜厚データや、眼底画像データを解析して得られたドルーゼン分布データや、OCTデータまたは眼底画像データを解析して得られた乳頭パラメータ(視神経乳頭のカップサイズ、ディスクサイズ、リムサイズ、それらの比など)や、OCTデータまたは眼底画像データを解析して得られた血管サイズ(血管径、動静脈径比など)などがある。
【0043】
なお、眼科以外の診療科や部門において取得された検査データが含まれていてもよい。たとえば、放射線科において取得された画像データ(X線画像データ、CT画像データ、MRI画像データ等)や、検体検査により取得された検査結果データなどがある。
【0044】
検査データ格納部20は、たとえば、コンピュータ端末に設けられた記憶装置内、LAN上のデータベース内、または、WAN上のデータベース内に設けられる。
【0045】
(情報受付部30)
情報受付部30は、次の情報を受け付ける:(1)患者に対して新たに実施された診療行為の種別(新規診療種別);(2)当該診療行為により取得された1以上の検査データ(新規検査データ);(3)当該患者に付与された患者識別子。
【0046】
情報受付部30は、各種の構成を有していてよい。情報受付部30の第1の例は、コンピュータ端末である。このコンピュータ端末は、たとえば、医師が使用するコンピュータ端末や、検査部で使用されるコンピュータ端末である。コンピュータ端末には、患者識別子と新規診療種別とが手入力または自動入力される。
さらに、コンピュータ端末には、検査装置から直接に新規検査データが入力される。或いは、検査装置により取得された新規検査データは、他の装置や記録媒体を介してコンピュータ端末に入力される。他の装置としては、たとえば、電子カルテシステムや医療用画像管理システム(PACS)などがある。
【0047】
情報受付部30の第2の例として、検査装置や電子カルテシステムやPACSなどがある。情報受付部30の第3の例として、上記のコンピュータ端末や検査装置や電子カルテシステムやPACSなどのクライアントから送信された情報を受信するサーバーの構成要素がある。このサーバーは、LAN上のサーバーでもよいし、WAN上のサーバー(クラウドサーバー等)でもよい。以上のように、眼科診療情報処理システム1は、検査装置や電子カルテシステムやPACSまたはその一部を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0048】
(テンプレート取得部40)
テンプレート取得部40は、情報受付部30により受け付けられた新規診療種別に対応するレポートテンプレートをテンプレート格納部10から取得する。上記のように、テンプレート格納部10には、診療種別ごとのレポートテンプレートが格納されている。すなわち、各診療種別に対してレポートテンプレートが関連付けられている。テンプレート取得部40は、情報受付部30から入力された新規診療種別に関連付けられたレポートテンプレートをテンプレート格納部10から選択的に読み出す。
【0049】
テンプレート取得部40は、たとえば、コンピュータ端末内、LAN上のサーバー内、または、WAN上のサーバー内に設けられる。
【0050】
(検査データ取得部50)
検査データ取得部50は、情報受付部30により受け付けられた患者識別子に基づいて、検査データ格納部20から過去の検査データを取得する。このとき、新規検査データを参照してもよい。また、異なる種別の疾患の診療が並行して行われている患者が対象である場合などには、新規診療種別を参照してもよい。
【0051】
上記のように、検査データ格納部20には、患者識別子に関連付けられたファイルが設けられており、患者ごとのファイルにはその患者について過去に取得された検査データが格納されている。検査データ取得部50は、まず、情報受付部30から入力された患者識別子に関連付けられたファイルを特定する。
さらに、検査データ取得部50は、特定されたファイルに格納されている検査データのうち、情報受付部30から入力された新規検査データに関連する検査データを読み出す。この処理は、たとえば、新規検査データの種別(検査種別)を特定する処理と、特定された検査種別と同種の検査データを検索する処理と、それにより検索された検査データを読み出す処理とを含む。
【0052】
ここで、検査種別は検査データに付帯されているものとする。具体的には、各検査データには、検査種別や検査条件を記録するための領域が設けられている。この領域に記録されている情報は、たとえば、検索や表示や管理に利用される。このような領域の具体例として、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)のタグ情報がある。検査データ取得部50は、たとえば、コンピュータ端末内、LAN上のサーバー内、または、WAN上のサーバー内に設けられる。
【0053】
(レポート作成部60)
レポート作成部60は、テンプレート取得部40により取得されたレポートテンプレートと、検査データ取得部50により取得された検査データと、情報受付部30により受け付けられた新規検査データ及び解析部90からの解析結果とに基づいて、この患者の検査レポートを作成する。レポートテンプレートには、情報の種別ごとに領域が設定されている。
【0054】
レポート作成部60は、過去の検査データと新規検査データと解析結果を、その検査種別に対応する領域に埋め込む。ここで、単一の検査種別の検査データが複数存在する場合には、これら検査データを所定の順序で領域に埋め込む。たとえば、被検眼の実質的に同じ部位を異なる検査日に撮影することで得られた時系列画像を、時系列順に領域に埋め込むことができる。
【0055】
また、単一の検査種別の検査データの個数に応じて、レポートテンプレート内の領域のサイズや位置を変更することや、埋め込まれる検査データの個数を限定することや、検査データの埋め込み態様を変更することが可能である。埋め込み態様の変更の例として、画像データをそのまま埋め込む場合と、画像データのサムネイルを作成してそれを埋め込む場合とを切り替えて実行するよう構成することが可能である。
【0056】
また、レポートテンプレートには、患者に関する情報(患者識別子、患者氏名、年齢、性別、医療機関名、医師名など)に対応する領域が設けられている。レポート作成部60は、検査データの付帯情報や、情報受付部30により受け付けられた情報から、レポートテンプレートに埋め込まれる情報を取得し、それらをレポートテンプレートの対応領域に埋め込む。
【0057】
なお、レポート作成部60は、検査レポートを完成させる必要はない。たとえば、レポート作成部60は、各種の情報をレポートテンプレートに埋め込む処理を実行しなくてもよい。その代わりに、レポート作成部60は、検査データや患者に関する情報のそれぞれと、レポートテンプレートの領域との対応付けを行うことができる。後段の処理において、この対応付けを参照することにより、検査レポートを表示したり印刷したりすることが可能である。
【0058】
レポート作成部60は、たとえば、コンピュータ端末内、LAN上のサーバー内、または、WAN上のサーバー内に設けられる。
【0059】
(表示制御部70、表示部80)
表示部80は、眼科診療報処理システム1の内部または外部に設けられた表示デバイスを含む。表示制御部70は、レポート作成部60により作成された検査レポートを表示部80に表示させる。
【0060】
表示制御部70は、たとえば、コンピュータ端末内、LAN上のサーバー内、または、WAN上のサーバー内に設けられる。
【0061】
そして、本実施の形態にあっては、
図1及び
図2に示すように、前記情報受付部30は、眼科医等のユーザーによる前記基本検査画像Aの選択のための入力、及び前記基本検査画像Aと対比するための複数の比較検査画像Bの選択のための入力を受け付ける。この場合、ユーザーは検査画像を自らの意思により所望のテーマに基づき、過去の検査画像Cの中から基本検査画像A及び比較検査画像Bを、相互に対比を行うために選択して表示部80に表示させることができる。
【0062】
図2は、本発明に係る眼科診療情報処理システム100の作用を示す概念図であり、
図2を参照しつつ説明する。
図2中、上段の画像群は、検査データ格納部20に格納されている過去に取得されて保存された検査画像及び最新の検査画像Cであり、下段の画像群は、表示部80上に表示される1つの基本検査画像A及び3つの比較検査画像B1、B2、B3である。
上記各種のテーマに基づく検査画像Cの例としては、例えば、眼底に疾患又は病変が発見された時点で撮影された検査画像、手術を行った後の直近の検査画像、投薬を開始した時点での検査画像c1が該当する。
従って、ユーザーがこれらの指示情報(例えば、「疾患病変発見」、「投薬開始」、「手術完了」等の文字データ)を、患者を特定する情報である患者識別子と共に情報受付部30に入力した場合には、レポート作成部60は検査データ取得部50を介して検査データ格納部20から当該入力情報に対応する検査データ、即ち、入力された患者識別子により特定された患者に関する「疾患病変発見」、「投薬開始」、「手術完了」の入力情報に対応する検査データを取得し、その検査データに含まれる検査画像c1を抽出して表示制御部70を介して表示部80に表示させる。
【0063】
ユーザーは表示された当該検査画像c1を確認し、希望する検査画像である場合には、情報受付部30において、当該検査画像c1を基本検査画像Aとして特定する入力指示を行う。この「当該検査画像c1を基本検査画像Aとして表示させる」旨の入力指示が受けつけられた場合には、基本検査画像Aをレポート作成部60はテンプレート取得部40から提供されたレポートテンプレートに埋め込んで当該検査画像c1を基本検査画像Aとして表示制御部70を介して表示部80に表示させる。
【0064】
この場合、
図3に示すように、本実施の形態において使用される表示部80において表示される画面156上では、レポートテンプレート150の中の画像表示エリア151において、横方向に4つの検査画像を時系列に沿って表示するように構成されており、画面の上下方向に2段に亘り上段側151aに右眼に関する検査画像が表示されると共に下段側151bには左眼に関する検査画像が表示される。
なお、図中符号152はオーバーレイコントロールであり、符号153は眼底イメージコントロール、符号154はレジストレーション、符号157はデータ変更ボタンである。また、符号154は傾向解析結果グラフ、155はRNFL Thicknessグラフである。
本実施の形態にあっては、このような画面表示エリア151a、151bにおいて、左端の画面表示エリア158には基本検査画像Aが、夫々、表示される。
【0065】
次に、
図2に示すように、ユーザーは基本検査画像Aと対比する比較検査画像Bを過去の検査画像Cの中から、検査画像c2、c3、c4として3つ選択して特定する。この場合の選択の基準もユーザーが適宜自分の意思に基づき、疾病の種類、病変の状況、診療の事情に基づき、適宜、選択することができる。
例えば、患者の通院回数、頻度等を参考にして、最新の、例えば、本日の診療日との間で所定の日にち間隔を指定して適宜、3枚の検査画像c2、c3、c4を抽出して、
図2に示すように、比較検査画像B1、B2、B3として、
図3に示す表示部80の画面156上において、基本検査画像Aの右方に経時的順序に従って表示させることができる。
本実施の形態においては、比較検査画像B1、B2、B3は、基本検査画像Aよりも経時的に以後に取得された検査画像c2、c3、c4である場合を例に説明したが、本例に限定されず、前記基本検査画像B1、B2、B3に対応する検査データよりも経時的に以前に取得された検査データであってもよい。
【0066】
即ち、ユーザーが比較検査画像B1、B2、B3を表示させようとした場合には、ユーザーは情報受付部30において、例えば、患者の通院履歴を参照しつつ、基本検査画像Aの取得日時との関係で適切と判断される時間的間隔を置いて、基本検査画像Aの取得日時以前又は以後の検査データを指定する入力を行い、情報受付部30は当該入力に基づき検査データ取得部50に指示を出し検査データ取得部50は検査データ格納部20から当該入力に対応する検査データを取得してレポート作成部60に提供し、レポート作成部60は当該検査データに含まれる検査画像c2、c3、c4を特定して3つの比較検査画像B1、B2、B3として表示制御部70を介して表示部80に表示させる。
【0067】
ユーザーは表示された当該検査画像c2、c3、c4を確認し、希望する検査画像である場合には、情報受付部30において、当該検査画像c2、c3、c4を比較検査画像B1、B2、B3として特定する入力指示を行う。この「当該検査画像c2、c3、c4を比較検査画像B1、B2、B3として表示させる」旨の入力指示が受けつけられた場合には、レポート作成部60はテンプレート取得部40から提供されたレポートテンプレートに埋め込んで当該検査画像c2、c3、c4を比較検査画像B1、B2、B3として表示制御部70を介して表示部80に表示させる。
そして、情報受付部60は、表示部80に表示させた基本検査画像A及び比較検査画像B1、B2、B3の画像データを、画像の配列順情報を含め、検査データ格納部20に保存する。
【0068】
本実施の形態において、以上のような情報が準備されている状態において実行される処理の例について、
図4を参照しつつ説明する。
【0069】
(S1:検査の実施)
所定の患者に関する緑内障の経過観察のための検査が実施される。今回の検査では、眼圧計による眼圧測定と、OCTによる網膜厚測定と、眼底カメラによる眼底撮影が実施されたとする。これらにより取得された検査データ(新規検査データ:眼圧値、網膜厚および眼底画像)は、別途に入力された患者識別子(および新規診療種別)とともに管理される。
【0070】
(S2:患者識別子、新規検査種別、新規検査データの入力)
検査の終了後または医師による診察時に、ステップS1で患者識別子、新規検査種別および新規検査データが、患者識別子および新規検査種別とともに、情報受付部30からテンプレート取得部40と検査データ取得部50とレポート作成部60とに送られる。ここで、情報受付部30からレポート作成部60に直接にデータを送信する代わりに、テンプレート取得部40や検査データ取得部50を経由してレポート作成部60にデータを送信するように構成してもよい。
【0071】
なお、検査の終了後に情報入力が行われる場合、たとえば、眼科診療装置(眼圧計、眼底カメラ、OCT:光干渉断層計、視野計)から直接にまたは間接的に情報が入力される。
【0072】
医師による診察時に情報入力が行われる場合、たとえば、医師は、コンピュータ端末に患者識別子を入力する。新規検査種別は、たとえば、医師により入力されるか、或いは、別途に読み出された電子カルテから入力される。医師が、診察開始のトリガー操作を実行すると、たとえば医療機関内のデータベースにより管理されている新規検査データが読み出される。情報受付部30は、これら情報を関連付けてテンプレート取得部40および検査データ取得部50(並びにレポート作成部60)に送る。
【0073】
(S3:レポートテンプレートの取得)
テンプレート取得部40は、ステップS2において入力された新規診療種別に対応するレポートテンプレートをテンプレート格納部10から取得する。この処理において、テンプレート取得部40は、入力された新規診療種別に対応するレポートテンプレートを、適宜のレポートテンプレートリストを参照することにより特定し、特定されたレポートテンプレートをテンプレート格納部10から読み出す。レポートテンプレートリストは、テンプレート格納部10またはテンプレート取得部40に予め格納されている。
【0074】
(S4:過去検査データの取得)
検査データ取得部50は、ステップS2において入力された患者識別子に基づいて、検査データ格納部20から過去の検査データを取得する。この処理において、検査データ取得部50は、入力された患者識別子が記録されているファイルを検索し、検索されたファイルに格納されている検査データの一部または全部み出す。取得された過去の検査データは、たとえば、患者識別子とともにレポート作成部60に送られる。
【0075】
(S5:基本検査画像の特定)
次に、眼科医等のユーザーが患者の病変に関する検査画像を対比して診断する場合には、ユーザーは情報受付部30に自分が意図する比較診断を行うことを目的とした検査画像を選択するために、適宜の指示情報(「病変発見」、「投薬開始」、「手術完了」等の文字データ又は、これら事象に関する識別子が存在する場合には当該識別子)を、患者を特定する情報である患者識別子と共に情報受付部30に入力する。
ユーザーがこれらの指示情報を、患者を特定する情報である患者識別子と共に情報受付部30に入力した場合には、レポート作成部60は検査データ取得部50を介して検査データ格納部20から当該入力情報に対応する検査データ、即ち、入力された患者識別子により特定された患者に関する「疾患病変発見」、「投薬開始」、「手術完了」等の入力情報に対応する検査データを取得し、その検査データに含まれる検査画像c1を抽出して表示部80表示にさせる。
【0076】
ユーザーは表示された当該検査画像c1を確認し、希望する検査画像である場合には、情報受付部30において、当該検査画像c1を基本検査画像Aとして特定する入力指示を行う。
【0077】
(S6:比較検査画像の特定)
次に、ユーザーは基本検査画像Aと対比する比較検査画像Bを過去の検査画像Cの中から、検査画像c2、c3、c4として3つ選択して特定する場合には、ユーザーは情報受付部30において、例えば、患者の通院履歴を参照しつつ、基本検査画像Aの取得日時との関係で適切と判断される時間的間隔を置いて検査データを指定する入力を行い、情報受付部30は当該入力に基づき検査データ取得部50に指示を出し検査データ取得部50は検査データ格納部20から当該入力に対応する検査データを取得してレポート作成部60に提供し、レポート作成部60は当該検査データに含まれる検査画像c2、c3、c4を抽出して3枚の比較検査画像B1、B2、B3を特定し、表示制御部70を介して表示部80に表示させる。
【0078】
次に、ユーザーは表示された当該検査画像c2、c3、c4を確認し、希望する比較検査画像である場合には、情報受付部30において、当該検査画像c2、c3、c4を比較検査画像B1、B2、B3として特定する入力指示を行う。
【0079】
(S7:検査レポートの作成)
レポート作成部60は、ステップS3で取得されたレポートテンプレートと、ステップS4で取得された過去の検査データと、ステップS2で入力された新規検査データと、ステップS5において特定された基本検査画像と、ステップS6において特定された比較検査画像とに基づいて、当該患者の検査レポートを作成する。
【0080】
この処理においてレポート作成部60は、患者識別子、患者氏名、年齢、性別、過去の検査データを、レポートテンプレートに形成された各項目へ適宜、埋め込む。レポート作成部60は、このようにして作成された検査レポート(およびその付帯情報)を表示制御部70に送る。
そして、本実施の形態にあっては、情報受付部30において、「検査画像c1を基本検査画像Aとして表示させる」旨の入力指示及び、「検査画像c2、c3、c4を比較検査画像B1、B2、B3として表示させる」旨の入力指示が受けつけられた場合には、レポート作成部60はテンプレート取得部40から提供されたレポートテンプレートに、基本検査画像A及び比較検査画像B1、B2、B3を埋め込んで表示制御部70に送る。
【0081】
(S8:検査レポートの表示)
表示制御部70は、ステップS5で作成された検査レポートを表示部80に表示させる。なお、検査レポートにサムネイルが提示されている場合、このサムネイルが指定されると(たとえばクリックされると)、表示制御部70は、指定されたサムネイルの元の画像(眼底画像、視野分布画像等)を付帯情報から読み出して表示部80に表示させる。
本実施の形態にあっては、表示制御部70はレポート作成部60の指示に基づき表示部80に基本検査画像A及び比較検査画像B1、B2、B3を、表示部の画面上、左端部から右方向にかけてこの順番で表示する。
【0082】
(S9:基本検査画像及び比較検査画像の保存)
情報受付部60は、表示部80に表示させた基本検査画像A及び比較検査画像B1、B2、B3の画像データを、画像の配列順情報を含め、検査データ格納部20に保存する。
この保存作業により、眼科医等のユーザーが当該患者に対する当該診療日における診療後、本実施の形態に係る眼科診療情報処理システム100を終了させて次の診療時に再度システムを立ち上げた際にも、患者識別子を入力することにより、同一の基本検査画像A及び比較検査画像B1、B2、B3を同一の配列順序で表示部80に表示させることができる。
【0083】
その結果、本実施の形態に係る眼科診療情報処理システム200にあっては、
図4に示すように、画面表示エリア151a、151bにおいては、左端には基本検査画像Aが表示されると共に、その右側には基本検査画像Aと診療上対比できる比較検査画像B1、B2、B3が3つ並列して経時的順序で配置表示されることから、ユーザーである眼科医等は、各患者個別の、疾病の事情、診療事情等に基づき、最も適切、必要な検査画像を基本検査画像Aとして表示すると共に、各患者個別の、通院頻度等の事情に基づき、基本検査画像Aと適切な対比を行いうると判断された検査画像を比較検査画像B1、B2、B3として並列的に表示させて診療を行うことが可能となるため、迅速に適切かつ効率的な診療を行うことができる。
【0084】
[第二実施形態]
図5〜
図7は本発明に係る眼科診断情報処理システムの第二の実施の形態を示す。前記実施の形態における場合と同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
本実施の形態に係る眼科診療情報処理システム200にあっては、ユーザーの手を介することなく、解析部90が検査データに基づき患者の病変の発生又は病変の変化を解析して、病変の発生又は病変の所定の変化を示す検査画像を基本検査画像として特定するように構成されている。比較検査画像をユーザーがユーザー自身の意図により選択できる点は前記実施の形態と同様である。
【0085】
即ち、本実施の形態にあっては、
図5に示すように、眼科診療情報処理システム200は、前記実施の形態における構成に加えて、解析部90を有しており、解析部90は検査データ取得部20により取得された検査データ及び情報受付部30により受け付けられた前記新規検査データを解析するように構成されており、前記解析部90は、前記検査データから病変の変化の経過情報を検索して解析し、前記病変に所定以上の変化が発生した時点の検査データを特定する検査画像を抽出して基本検査画像として特定する機能を有する。
【0086】
解析部90は、たとえば、各種の解析アプリケーションが搭載された1以上のコンピュータを含んで構成される。解析アプリケーションは、眼科診療において使用される任意の解析処理を実行するためのソフトウェアである。
【0087】
解析アプリケーションの典型例として、OCTデータを解析して評価値やデータ分布を生成するアプリケーション、眼底画像を解析して評価値やデータ分布を生成するアプリケーション、評価値やデータ分布の時系列変化を解析してトレンドや診療支援情報を生成するアプリケーションなどがある。
【0088】
図6は、本実施の形態に係る眼科診療情報処理システムの概念図であって、例えば、検査データの中に、OCTを使用して取得した網膜の厚さ寸法データ及び網膜の断層画像が格納されていた場合であって網膜の厚さ寸法が急激に減少する事象Xが発生したような場合を示す。
【0089】
図6の上段には、縦軸が網膜の厚さ寸法を示すと共に横軸が時間軸を示すグラフが示されていると共に、下段には上記グラフの時間軸の時間の経過に対応して、初診から1ヶ月毎に患者が受診した際に撮影されて取得されてシステムに取得された検査画像群Cが一列に表示されている。
【0090】
本例においては、上記グラフに示すように、診療が開始され、検査画像を含む検査データの取得開始後、時間経過に伴い所定の時点で急激に網膜の厚さ寸法が減少する事象Xが発生している。この事象Xに対応する検査画像は下段の検査画像群Cの中で、初診から3か月後の診療時に撮影された検査画像c5が該当する。
【0091】
従って、情報受付部30においてユーザーによる「基本検査画像選択」等の入力指示がなされた際には、解析部90は画像解析により当該事象Xが反映されている検査画像c5を抽出し、基本検査画像Dとして特定する。
【0092】
その後、ユーザーは基本検査画像Dと対比する比較検査画像を、前記実施の形態と同様の手法で検査画像c6、c7、c8を抽出し、比較検査画像B4、B5、B6として特定し、表示部80において確認して特定した場合には、レポート作成部60は表示部80に、基本検査画像D及び比較検査画像B4、B5、B6を表示させ、また、情報受付部30は基本検査画像D及び比較検査画像B4、B5、B6を、基本検査画像D及び比較検査画像B4、B5、B6の表示順序と共に検査データ格納部20に保存するように構成されている。
【0093】
図7は、本実施の形態に係るフローチャートを示す。
「スタート」からステップS4までの手順は第一の実施の形態の場合と同様であり、ステップS4において過去の検査データの取得が行われた後、ユーザーによる情報受付部30への入力指示に基づきステップS5において「解析処理による基本検査画像の特定」が行われる。ステップ5においては、上記のように、解析部90による画像解析により、病変の発生または病状の変化が大きく表れた事象Xが発生したような場合には、当該事象Xを最もよく反映する検査画像を抽出し、基本検査画像Dとして特定する。
【0094】
その後、ステップS6において上述の手法によるユーザーによる比較検査画像B4、B5、B6の特定が行われた後にステップS7においてレポート作成部60において検査レポートが作成され、ステップS8において表示制御部70により表示部80において基本検査画像D及び比較検査画像B4、B5、B6が表示部において表示される。
その後、ステップS9において、表示部80において表示された基本検査画像D及び比較検査画像B4、B5、B6の画像データが、その表示順のデータと共に検査データ格納部20において格納保存される。
【0095】
従って、本実施の形態にあっては、前記実施の形態とは異なり、ユーザーの指示入力に基づき、基本検査画像がシステム側で解析部90により自動的に決定されることから、前記実施の形態におけるようにユーザー自ら基本検査画像の検索作業を行う必要がなく、病変の発生又は病変の大きな変化を示す検査画像を解析し、基本検査画像として特定して表示するように構成されていることから、眼科医等のユーザーは基本検査画像の決定に要する負担を軽減して、迅速かつ正確に診療行為を行うことが可能となる。
【0096】
なお、本実施の形態にあっては、解析部90が網膜の厚さ寸法の急激な変化を解析して基本検査画像を決定する場合を例に説明したが、本実施の形態に限定されず、手術を行った状態を表示する検査画像、又は投薬を開始した後の検査画像等を解析部90が解析して基本検査画像Dとして抽出して表示させるようにしてもよい。
【0097】
さらに、本実施の形態にあっては、網膜の断層画像及び厚さ寸法を解析して病変の発生又は病変の変化を示す検査画像を抽出する場合を例に説明したが、検査データは眼底画像上に表示された病変の面積データの変化を解析して基本検査画像を特定するように構成してもよい。
【0098】
さらに、検査データは網膜の断層画像に表示された網膜の厚さ寸法データであると共に、前記検査画像は、網膜の断層画像と、前記断層画像に基づき眼底断面を構成する各層に分割して抽出し、各層を斜視方向から平面的に示す複数層マップ表示画像を含んでもよく、本実施の形態に限定されない。