特許 6968558 除塵機

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】6968558

(24)【登録日】2021年10月29日

(45)【発行日】2021年11月17日

(54)【発明の名称】除塵機

(51)【国際特許分類】

   F16H 7/06 20060101AFI20211108BHJP

   F16G 13/06 20060101ALI20211108BHJP

   E02B 5/08 20060101ALI20211108BHJP

【ＦＩ】

   F16H7/06

   F16G13/06 B

   E02B5/08 104E

【請求項の数】5

【全頁数】14

(21)【出願番号】特願2017-56067(P2017-56067)

(22)【出願日】2017年3月22日

(65)【公開番号】特開2018-159412(P2018-159412A)

(43)【公開日】2018年10月11日

【審査請求日】2019年3月5日

(73)【特許権者】

【識別番号】591030651

【氏名又は名称】水ｉｎｇ株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100094226

【弁理士】

【氏名又は名称】高木 裕

(74)【代理人】

【識別番号】100087066

【弁理士】

【氏名又は名称】熊谷 隆

(72)【発明者】

【氏名】板山 倫也

(72)【発明者】

【氏名】二見 岳雄

(72)【発明者】

【氏名】加藤 大樹

(72)【発明者】

【氏名】四ノ宮 信明

【審査官】 増岡 亘

(56)【参考文献】

【文献】 特開２００３−１８４０５５（ＪＰ，Ａ）

【文献】 欧州特許出願公開第０４７９１２４（ＥＰ，Ａ２）

【文献】 米国特許第５４２５８７５（ＵＳ，Ａ）

【文献】 特開２０１５−２０５２７５（ＪＰ，Ａ）

【文献】 実開平３−１８２３１（ＪＰ，Ｕ）

(58)【調査した分野】（Int.Cl.，ＤＢ名）

Ｆ１６Ｈ ７／０６

Ｆ１６Ｇ １３／０６

Ｅ０２Ｂ ５／０８

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

多数本のバーを平行に配置して水路に設置されるスクリーンと、
前記スクリーンで捕捉された夾雑物を掻き上げるレーキと、
前記レーキを取り付けて循環移動させるチェーン駆動装置と、
を具備する除塵機において、
前記チェーン駆動装置は、複数のリンク部を連結ピンで無端状に連結して構成され、且つ搬送物を懸架する荷重が作用するように設置されるチェーンと、前記チェーンに巻き掛けられてこのチェーンを駆動する駆動ホイールと、を具備し、
前記各リンク部の内周側に設けたホイール当接部を、前記駆動ホイールに設けたチェーン当接部に、主として前記搬送物を懸架する荷重が作用する状態で当接させて各リンク部を支えると同時に、前記各リンク部に設けた係合部に、前記駆動ホイールに設けた駆動ピンを、主として当該チェーンの駆動力が印可される状態で係合させて各リンク部を駆動し、
前記リンク部のホイール当接部は円弧形状であり、
前記駆動ホイールのチェーン当接部は前記ホイール当接部に面接触する円形状であり、
前記連結ピンによって回動自在に連結された隣り合うリンク部間には、リンク部が前記駆動ホイールに巻き掛けられる際に回動する方向の反対方向への回動を規制する回動規制機構が設けられ、
さらに前記チェーンに、円板状で、前記スクリーンを構成する一対のバーの間に係合し且つ当該一対のバーに当接しながら回転移動することで前記チェーンとスクリーン間を所定の間隔に維持すると共に、前記チェーンが前記スクリーンから離れる方向に対しては移動する構成のガイドローラを設置することを特徴とする除塵機。

【請求項2】

請求項１に記載の除塵機であって、
前記ガイドローラは、その円形の外周面の中央からバー係合部を突出し、当該バー係合部を前記一対のバーの間の隙間に挿入して係合させることを特徴とする除塵機。

【請求項3】

請求項１又は２に記載の除塵機であって、
前記ガイドローラは、前記スクリーンの左右両側に、それぞれ設置されることを特徴とする除塵機。

【請求項4】

請求項１又は２又は３に記載の除塵機であって、
前記チェーンの内周側に、アイドラ装置を設置し、
前記各リンク部に設けたアイドラ係合部に、前記アイドラ装置に設けたリンク係合部を係合させて前記チェーンを支えることを特徴とする除塵機。

【請求項5】

請求項４に記載の除塵機であって、
前記各リンク部の内周側の面に、このリンク部の進行方向に向かう溝を設けることでこの溝の内部を前記アイドラ係合部とし、
且つ前記溝の両側を一対の前記ホイール当接部としたことを特徴とする除塵機。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、下水処理場、ポンプ場、浄水場等に設置される自動除塵機や汚泥掻き寄せ機等に用いて好適なチェーン駆動装置を用いた除塵機に関するものである。

【背景技術】

【0002】

従来の自動除塵機は、一般に、水路に設置したスクリーンの左右両側端に、チェーンの位置決めや横揺れを防止するガイドレールと、このガイドレールを支持するためのフレームを設置していた。

【0003】

しかしフレームを設置すると、設置した箇所については流路が塞がれるため、スクリーンに夾雑物が捕捉された際の水位上昇が起こり易くなり、その分スクリーンへの流水による負荷が高くなってしまうという問題があった。

【0004】

また、一般に、フレームの下部には、チェーン反転用の従動ホイールが設置されており、このため従動ホイールのメンテナンスを行う必要があった。さらには、前記フレームや従動ホイールを設置することで、コストも高くなっていた。

【0005】

また、チェーンの各リンクプレートを連結する連結ピンは、連結したリンクプレート間の屈曲する際の摺動と、駆動ホイールの歯と接触して駆動力を伝える際の荷重と、夾雑物等の搬送物やレーキやチェーン自重を懸垂する荷重とが作用するため、摩耗し易い構造であった。一方、駆動ホイールの前記連結ピンを駆動する歯も、前記連結ピンを駆動する際の荷重と、夾雑物等の搬送物やレーキやチェーン自重を懸垂する荷重とが作用するため、摩耗し易い構造であった。

【0006】

特許文献１には、チェーンを使用したスクリーンスクレーパが開示されている。このスクリーンスクレーパによれば、チェーンをガイドするフレームや従動ホイールを用いなくても良く、このため部品点数の削減とメンテナンスの削減化を図ることができる。またこのスクリーンスクレーパによれば、各リンク部（４０）に設けたノッチ（７８）が駆動ホイール（２８）のピン（８０）の駆動力を受けるので、その分、各リンク部（４０）間を連結するピン（４６）への力の負担が減少・分散し、ピン（４６）の摩耗を減少することができる。

【0007】

特許文献２には、チェーン及びチェーン駆動装置が開示されている。このチェーン（２０）は、一対のノッチ（１２１，１２２）を有する一対ずつのリンクプレート（２１）を、ピン（１２５）によって複数組無端状に連結して構成されている。一方、駆動スプロケット（３０）は、一対のリンクプレート（２１）の間の間隙に挿入されると共に、駆動スプロケット（３０）の外周に設けられたローラ（３４）を前記ノッチ（１２１，１２２）に係合することで、駆動スプロケット（３０）の動力をチェーン（２０）に伝達するように構成されている。さらにこのチェーン駆動装置は、従動スプロケット（４０）を有し、この従動スプロケット（４０）の外周面（４２ａ）にリンクプレート（２１）の円弧状の凹部（１２３）を当接し、摺動する構成となっている。このチェーン駆動装置においても、各リンクプレート（２１）に設けたノッチ（１２１，１２２）が駆動スプロケット（３０）のローラ（３４）の駆動力を受けるので、その分、各リンクプレート（２１）間を連結するピン（１２５）への力の負担が減少・分散し、ピン（１２５）の摩耗を減少することができる。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0008】

【特許文献1】米国特許第５４２５８７５号明細書

【特許文献2】特開２０１４−２３１８８３号公報

【特許文献3】特開２００２−０３１２１４号公報

【特許文献4】特開２００９−２４１０２３号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0009】

しかし、前記特許文献１においては、前記ピン（８０）とノッチ（７８）の係合部分には、駆動ホイール（２８）の駆動力、及び夾雑物やスクレーパブレード（６２）やチェーン自重等の懸架荷重全てがかかるので、やはり前記係合部分が摩耗し易いという問題があった。

【0010】

また、特許文献１の除塵機は、フレームを持たない除塵機であり、ガイドレールがないため、横揺れなどをチェーン自身の剛性で抑制させる必要があるので、チェーンに高い強度が必要となり、チェーン質量が重くなる。そのため、チェーンのピン（４６）や駆動ホイール（２８）のピン（８０）にかかる負荷が大きくなり、摩耗が促進されるという問題もあった。また、大きな夾雑物を移送する際にはチェーンが揺動し、揺動による荷重がチェーンのピン（４６）及び駆動ホイール（２８）のピン（８０）にかかり、この点からもピン（４６）やピン（８０）の摩耗を促進させるという問題もあった。

【0011】

更に、特許文献１の除塵機に用いているスクレーパブレード（６２）は、スクリーン（１４）と接触し、擦れながら移動するため、スクレーパブレード（６２）及びスクリーン（１４）が摩耗するという問題もあった。

【0012】

前記特許文献２においても、前記ローラ（３４）とノッチ（１２１，１２２）の係合部分に、駆動スプロケット（３０）の駆動力、及び夾雑物や掻き寄せ板（２０ａ）やチェーン自重等の懸架荷重全てがかかるため、これらローラ（３４）やノッチ（１２１，１２２）が摩耗し易いという問題があった。

【0013】

特許文献３と特許文献４には、何れも汚泥掻き寄せ機に用いられるチェーン駆動装置が開示されているが、これらについても、上記と同様の問題があった。

【0014】

本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、駆動ホイールの駆動ピンやチェーンの特定部分に過大な負荷がかからず、これによって耐久性の向上、軽量化、コストの低減化等を図ることができ、またチェーンの横揺れやたるみ等も抑制することができる除塵機を提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0015】

本発明は、多数本のバーを平行に配置して水路に設置されるスクリーンと、前記スクリーンで捕捉された夾雑物を掻き上げるレーキと、前記レーキを取り付けて循環移動させるチェーン駆動装置と、を具備する除塵機において、前記チェーン駆動装置は、複数のリンク部を連結ピンで無端状に連結して構成され、且つ搬送物を懸架する荷重が作用するように設置されるチェーンと、前記チェーンに巻き掛けられてこのチェーンを駆動する駆動ホイールと、を具備し、前記各リンク部の内周側に設けたホイール当接部を、前記駆動ホイールに設けたチェーン当接部に、主として前記搬送物を懸架する荷重が作用する状態で当接させて各リンク部を支えると同時に、前記各リンク部に設けた係合部に、前記駆動ホイールに設けた駆動ピンを、主として当該チェーンの駆動力が印可される状態で係合させて各リンク部を駆動し、前記リンク部のホイール当接部は円弧形状であり、前記駆動ホイールのチェーン当接部は前記ホイール当接部に面接触する円形状であり、前記連結ピンによって回動自在に連結された隣り合うリンク部間には、リンク部が前記駆動ホイールに巻き掛けられる際に回動する方向の反対方向への回動を規制する回動規制機構が設けられ、さらに前記チェーンに、円板状で、前記スクリーンを構成する一対のバーの間に係合し且つ当該一対のバーに当接しながら回転移動することで前記チェーンとスクリーン間を所定の間隔に維持すると共に、前記チェーンが前記スクリーンから離れる方向に対しては移動する構成のガイドローラを設置することを特徴としている。
本発明によれば、このチェーンに取り付けた部材（例えばレーキ等）やこのチェーンによって搬送される物体（例えばレーキによって搬送される夾雑物等）やチェーン自体の荷重（揺動による荷重を含む）は、リンク部のホイール当接部が駆動ホイールのチェーン当接部に当接し、載置されることで支えられ、また横揺れの力も支えられる。従って、駆動ホイールの駆動ピンとリンク部の係合部の係合部分には、主として、チェーンの駆動力がかかることになり、駆動ホイールとリンク部に印可される力は複数箇所に分散される。このため特定部分の摩耗や劣化が減少し、耐久性が向上する。また部品強度を強くしなくても耐久性を向上できるので、装置の軽量化や、部品交換等のメンテナンス費用の低減化等を図ることができる。
また本発明は、上記特徴に加え、前記ガイドローラは、その円形の外周面の中央からバー係合部を突出し、当該バー係合部を前記一対のバーの間の隙間に挿入して係合させることを特徴としている。
また本発明は、上記特徴に加え、前記ガイドローラは、前記スクリーンの左右両側に、それぞれ設置されることを特徴としている。

【0016】

また本発明によれば、円形状のチェーン当接部に円弧形状のホイール当接部が面接触するので、駆動ホイール上への各リンク部の載置面積を大きく（長く）且つ隣接するリンク部を連続してスムーズに載置していくことができ、リンク部を安定して確実に支えることができる。

【0017】

また本発明は、上記特徴に加えて、前記チェーンの内周側に、アイドラ装置を設置し、前記各リンク部に設けたアイドラ係合部に、前記アイドラ装置に設けたリンク係合部を係合させて前記チェーンを支えることを特徴としている。
これによって、チェーンの弛みや横揺れ等を防止でき、スムーズなチェーンの駆動を行うことができる。アイドラ装置は、チェーンの下降側（リターン側）に設置するのが、下降側の弛みを防止する上で好ましい。アイドラ装置は、ローラで構成するか、低摩擦特性の樹脂製パッドで構成するのが好ましい。リンク部に設けるアイドラ係合部は、リンク部の内周側の面に設ける溝によって構成することが好ましく、またローラやパッドからなるアイドラ装置は、前記溝に係合するような凸部を有する構成とすることでチェーンの横揺れを抑制することが好ましい。

【0018】

また本発明は、上記特徴に加えて、前記各リンク部の内周側の面に、このリンク部の進行方向に向かう溝を設けることでこの溝の内部を前記アイドラ係合部とし、且つ前記溝の両側を一対の前記ホイール当接部としたことを特徴としている。
これによって、リンク部に、アイドラ係合部とホイール当接部を、簡単な構成で容易に設けることができる。またアイドラ係合部は、溝状なので、チェーンの弛みや横揺れ等を効果的に防止できる。またホイール当接部は、アイドラ係合部の両側に一対設けられるので、駆動ホイールのチェーン当接部に安定して当接させることができ、安定してリンク部を支えることができる。

【0019】

また本発明によれば、チェーンの弛みを防止することができ、スムーズなチェーンの駆動を行うことができる。特に、この回動規制機構と、前記アイドラ装置による各リンク部の支持構造とを併用すれば、より効果的にチェーンの弛み防止を図ることができる。この回動規制機構によって、片側のみ（内周側のみ）に屈曲するチェーンを構成できるので、チェーンの位置決めや横揺れを防止するガイドレールやこのガイドレールを支持するためのフレームが不要となり、コストダウンも可能になる。

【0020】

また本発明によれば、上記チェーン駆動装置を用いて除塵機を構成することで、除塵機の耐久性が向上し、装置の軽量化や、部品交換等のメンテナンス費用の低減化等を図ることができる。

【0021】

また本発明によれば、チェーンとスクリーンの間を、確実に所定の間隔（少なくともそれよりも狭くならない間隔）に維持することができ、またチェーンのたるみを抑制することができる。

【発明の効果】

【0022】

本発明によれば、駆動ホイールの駆動ピンやチェーンの特定部分に過大な負荷がかからず、これによって耐久性の向上、軽量化、コストの低減化等を図ることができ、またチェーンの横揺れやたるみ等も抑制することができる。

【図面の簡単な説明】

【0023】

【図1】除塵機１００の一例を示す全体概略側面図（但し、駆動ホイール１２１の部分は断面としている）である。

【図2】図２（ａ）は図１に示す除塵機１００の駆動ホイール１２１近傍部分の部分拡大図、図２（ｂ）は図２（ａ）のＡ−Ａ概略断面図である。

【図3】リンク部１４３を示す図であり、図３（ａ）は平面図、図３（ｂ）は正面図、図３（ｃ）は図３（ａ）のＢ−Ｂ断面矢視図、図３（ｄ）は図３（ａ）のＣ−Ｃ断面矢視図である。

【図4】リンク部１４３を示す図であり、図４（ａ）は斜視図、図４（ｂ）は別の角度から見た斜視図である。

【図5】図５（ａ）はチェーン１４１に対するアイドラローラ１８１の設置状態を示す図、図５（ｂ）は図５（ａ）のＤ−Ｄ断面矢視図である。

【図6】チェーン１４１に対するガイドローラ２０１の設置状態を示す図である。

【発明を実施するための形態】

【0024】

以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図１は本発明の一実施形態にかかるチェーン駆動装置１を用いて構成された除塵機１００の一例を示す全体概略側面図である。同図に示すように、除塵機１００は、板状のバー１０３を水路Ｓの幅方向に等間隔に複数本配置して構成されるスクリーン１０１と、前記スクリーン１０１の前面（上流側の面）で捕捉された夾雑物をこのスクリーン１０１の前面に沿って上方に掻き上げる複数のレーキ１１１と、前記複数のレーキ１１１を所定間隔毎に取り付けた無端チェーン（以下「チェーン」という）１４１と、前記チェーン１４１を循環移動させる駆動ホイール１２１と、を具備して構成されている。

【0025】

ここで、前記チェーン１４１と駆動ホイール１２１によってチェーン駆動装置１が構成されている。なお、チェーン駆動装置１は、水路Ｓの幅方向の両側に一対設置され、前記各レーキ１１１は、その両端がそれぞれのチェーン１４１に取り付けられている。また各チェーン１４１の内周側の所定位置には、これら各チェーン１４１をその内周側から支えて支持しガイドする一対のアイドラ装置（以下「アイドラローラ」という）１８１が設置されている。また、各チェーン１４１のレーキ１１１を取り付けた部分には、ガイド部材（以下「ガイドローラ」という）２０１が取り付けられている。

【0026】

スクリーン１０１は、上下方向に向けて斜め（上部を後傾させる）に設置される多数本の板状のバー１０３を、夾雑物を含んだ水が流れる水路Ｓの幅方向（流れに直交する方向）に等間隔に平行に配置して構成されている。このスクリーン１０１を設置することで、水路Ｓの上流側から矢印ａ方向に、水と共に流れてきた夾雑物は、スクリーン１０１の前面側に滞留する。スクリーン１０１の材質としては、金属製であり、例えばアルミニウムやステンレス鋼、又は樹脂、又はステンレスと樹脂を規則的に配置したものがある。

【0027】

レーキ１１１は、板状であって、前記スクリーン１０１の幅方向の全長にわたる長さを有し、その先端辺に、スクリーン１０１を構成する各バー１０３の間の隙間に入り込む櫛歯状の爪部１０５を設けて構成されている。レーキ１１１の材質としては、ステンレス等が用いられる。

【0028】

図２は、駆動ホイール１２１及び駆動ホイール１２１に巻き掛けたチェーン１４１の部分を拡大して示す図であり、図２（ａ）は概略側面図、図２（ｂ）は図２（ａ）のＡ−Ａ概略断面図である。同図に示すように、駆動ホイール１２１は、一対の円板状の側板１２３を、所定間隔平行に離した状態で、筒状の連結部１２５によって連結すると共に、前記連結部１２５の外周側において、円周状に等間隔に複数本の円柱状の駆動ピン１２７によって連結して構成されている。

【0029】

連結部１２５の外周面は、下記するリンク部１４３のホイール当接部１４９を当接するチェーン当接部（チェーン当接面）１２９となっている。また各駆動ピン１２７は、前記チェーン当接部１２９から同一寸法ずつ径方向外方に離間して設置されている。駆動ホイール１２１の中央には、駆動軸１３１が固定されている。駆動軸１３１には、図示しない駆動モータが連結され、この駆動モータを駆動することによって回転駆動される。駆動ホイール１２１の材質としては、例えばステンレスが用いられるが金属製、又は荷重に十分耐え得る強度を有する硬質樹脂製でも良い。

【0030】

チェーン１４１は、複数の同一形状のリンク部１４３を連結ピン１４５によって無端状に連結して構成されている。図３、図４は、リンク部１４３を示す図であり、図３（ａ）は平面図、図３（ｂ）は正面図、図３（ｃ）は図３（ａ）のＢ−Ｂ断面矢視図、図３（ｄ）は図３（ａ）のＣ−Ｃ断面矢視図、図４（ａ）は斜視図、図４（ｂ）は別の角度から見た斜視図である。なお以下のリンク部１４３の説明において、チェーン１４１の外側を向く方向を「上側」又は「外周側」、内側を向く方向を「下側」又は「内周側」ということとする。またチェーン１４１が進行する方向、即ちこの例では下記する係合凸部１５７が突出している側を「前側」、その反対側を「後側」ということとする。

【0031】

これらの図に示すように、リンク部１４３は、このリンク部１４３の進行方向（即ちチェーン１４１の進行方向）に向かって長尺な略四角柱形状に形成されている。リンク部１４３の下面には、このリンク部１４３の進行方向に向かう１本の直線状の溝が設けられ、この溝の内部をアイドラ係合部１４７、この溝の両側の辺（内周辺）を一対のホイール当接部１４９とし、さらに一対のホイール当接部１４９の前後両端にそれぞれ略矩形状に切欠いてなる係合部（以下「係合切欠き部」という）１５１，１５２を形成している。

【0032】

ここで前記係合切欠き部１５１，１５２を第１の接触面、ホイール当接部１４９を第２の接触面ということとする。また、リンク部１４３の前後の端面は、それぞれ回動規制機構を構成するリンク部当接部１５３，１５５となっている。また、前方のリンク部当接部１５３の中央からは、平板状の係合凸部１５７が突出し、後方のリンク部当接部１５５の中央には、前記アイドラ係合部１４７の溝よりも深い溝からなる係合凹部１５９が設けられている。係合凸部１５７の上面は、係合凹部１５９の上側底面である被係止部１５９ａに当接する当接部１５７ａとなっており、この当接部１５７ａと被係止部１５９ａも前記回動規制機構を構成している。

【0033】

また、係合凸部１５７の先端面も、前記係合凹部１５９の被係止部１５９ａを当接する係止部１５７ｂであり、これら係止部１５７ｂと被係止部１５９ａによって、第２の回動規制機構が構成されている（即ち、被係止部１５９ａは回動規制機構と第２の回動規制機構を兼用する）。なお、このリンク部１４３は、鋳造による量産品であり、材質は腐食環境での使用を考慮してオーステナイト系ステンレスが望ましいが、樹脂やその他の材質のものを用いても良い。また、軽量化のために内部の一部に空洞を設けることもできる。

【0034】

アイドラ係合部１４７は、下記するアイドラローラ１８１のリンク係合部１８３の幅とほぼ同一の幅の溝であり、その底面をアイドラ当接面１６１としている。アイドラ当接面１６１は直線状の平面である。アイドラ当接面１６１は、係合凸部１５７の先端の下面から、アイドラ係合部１４７の後端まで延びている。

【0035】

係合凸部１５７は平板形状であり、その中央付近に円形に貫通するピン取付孔１６３を形成している。係合凸部１５７の厚み寸法は、係合凹部１５９の溝幅寸法（即ち前記アイドラ係合部１４７の溝幅寸法）とほぼ同一（それに挿入できる厚み寸法）に形成されている。係合凸部１５７の係止部１５７ｂの面は、上部よりも下部が突出する傾斜面となっている。また係合凸部１５７の係止部１５７ａは、その後方部分の上面よりも一段低くなっており、前記係合凹部１５９の被係止部１５９ａの面の高さとほぼ同一の高さとなっている。

【0036】

係合凹部１５９は、前述のように、前記アイドラ当接面１６１の深さをさらに深くする溝によって形成されており、その中央付近の両側に位置する側壁には、これらを貫通するピン取付孔１６５が形成されている。ピン取付孔１６５は、前記ピン取付孔１６３と、同一内径寸法に形成されている。

【0037】

ホイール当接部１４９は、左右何れも同一形状であり、凹状の円弧面状に形成されている。円弧の曲率半径は、前記駆動ホイール１２１のチェーン当接部１２９の曲率半径と同一になっている。リンク部１４３の前側の係合切欠き部１５１は、一対のホイール当接部１４９の前側の端部を何れも同一形状に切欠いた形状である。リンク部１４３の後側の係合切欠き部１５２は、一対のホイール当接部１４９の後側の端部を何れも同一形状に切欠いた形状である。

【0038】

リンク部当接部１５３は、上側よりも下側（即ちチェーン１４１の内周側）が前方に突出する、直線状の傾斜面によって構成されている。リンク部当接部１５３は、係合凸部１５７の根元の左右両側に形成されている。一方、リンク部当接部１５５は、下側よりも上側（即ちチェーン１４１の外周側）が後方に突出する、直線状の傾斜面によって構成されている。リンク部当接部１５５の傾斜角度と、前記リンク部当接部１５３の傾斜角度は、同一に形成されている。

【0039】

そしてチェーン１４１は、リンク部１４３の係合凸部１５７を、その前に位置するリンク部１４３の係合凹部１５９に挿入して、両者のピン取付孔１６３とピン取付孔１６５の位置を合わせて連結ピン１４５を挿入して回動自在に取り付け、これを繰り返すことで複数のリンク部１４３を無端状に連結して構成される。このようにリンク部１４３は、凸部と凹部を嵌合した状態で連結されるので、連結されたリンク部１４３の回動方向以外の方向へのブレは生じにくい。

【0040】

図５は、チェーン１４１に対するアイドラローラ１８１の設置状態を示す図であり、図５（ａ）は要部拡大側面図、図５（ｂ）は図５（ａ）のＤ−Ｄ断面矢視図である。両図に示すように、アイドラローラ１８１は、円板状であって、その円形の外周面の中央からリング状のリンク係合部１８３を突出して構成されている。このアイドラローラ１８１は、回転自在に設置される。

【0041】

図６は、チェーン１４１に対するガイドローラ２０１の設置状態を示す図である。同図に示すように、ガイドローラ２０１は、円板状であって、その円形の外周面の中央からリング状のバー係合部２０３を突出して構成されている。このガイドローラ２０１は、取付部材２０５に回転自在に取り付けられ、さらに取付部材２０５は、レーキ１１１を取り付けたリンク部１４３に固定されている。バー係合部２０３の幅寸法は、隣接するバー１０３間の隙間寸法と略同一である。

【0042】

そして、このチェーン１４１は、図１に示すように、スクリーン１０１の前面側において、駆動ホイール１２１に巻き掛けられている。このとき、図２に示すように、チェーン１４１を構成するリンク部１４３のホイール当接部１４９は、駆動ホイール１２１のチェーン当接部１２９に面接触状態で当接して支持（載置）されており、同時に駆動ホイール１２１の駆動ピン１２７は、正回転時には、リンク部１４３の係合切欠き部１５２に係合している（なお、逆回転時には、係合切欠き部１５１に係合する）。

【0043】

また、チェーン１４１に取り付けたガイドローラ２０１は、図６に示すように、そのバー係合部２０３が、スクリーン１０１の左右両側（両端）に位置する一対のバー１０３間の間隙に挿入され、チェーン１４１をスクリーン１０１から所定寸法離間した状態に保持している。またこのとき、レーキ１１１の爪部１０５は、スクリーン１０１を構成する各バー１０３の間の隙間に所定寸法だけ入り込む。

【0044】

一方、アイドラローラ１８１は、チェーン１４１の上流側部分（スクリーン１０１に対向する反対側の部分、下降する側の部分）の内周側位置で水路Ｓよりも上部の位置に設置され、そのリンク係合部１８３がリンク部１４３のアイドラ係合部１４７に挿入され、リンク係合部１８３の先端面がアイドラ係合部１４７底面のアイドラ当接面１６１に当接してチェーン１４１を支えている。

【0045】

なお、図１に示すように、スクリーン１０１の上部後方には、掻き上げた夾雑物を排出するシュート２１１が設置されている。また、チェーン１４１がその下端部分において反転する際は、図３（ｃ）に点線で示すように、あるリンク部１４３の係合凸部１５７の係止部１５７ｂが、その前方のリンク部１４３の係合凹部１５９の被係止部１５９ａに係止してそれ以上回転しないので、従動ホイールを設置しなくても、所定の大きさの円を描いてスムーズに反転する形状を維持している。

【0046】

以上のように構成された除塵機１００において、水路Ｓの上流側から流れてきた夾雑物は、スクリーン１０１の前面に滞留する。そしてこのとき、駆動モータを駆動することで駆動ホイール１２１を回転すると、駆動ホイール１２１の駆動ピン１２７が、これを係合しているリンク部１４３の係合切欠き部１５２（逆転する場合は係合切欠き部１５１）を押圧してチェーン１４１を図１に示す矢印方向に駆動する。これによって、スクリーン１０１の前面に滞留した夾雑物は、レーキ１１１によってスクリーン１０１の上方に引き上げられ、シュート２１１から所望の場所に排出される。

【0047】

このチェーン１４１には、ガイドローラ２０１が設置されているので、スクリーン１０１に対してレーキ１１１の位置を、所定寸法離間した状態に維持できる。またこの除塵機１００においては、チェーン１４１の下部にチェーン１４１を反転させる従動ホイールを設置していないので、前記夾雑物が前記スクリーン１０１とチェーン１４１間の間隙よりも大きい寸法のものであった場合でも、チェーン１４１がスクリーン１０１から離れる方向に移動し、これに容易に対応できる。

【0048】

ここで、連結ピン１４５によって回動自在に連結されている隣り合うリンク部１４３の対向する面には、リンク部当接部１５３とリンク部当接部１５５が対向するが、両リンク部１４３が直線状になった際、両者は当接する。このため、両リンク部１４３は、直線状態よりも反る方向（リンク部１４３が駆動ホイール１２１に巻き掛けられる際に回動する方向の反対方向）への回動が規制され、反ることはできない。なお、両リンク部１４３が直線状になった際、同時に、係合凸部１５７の当接部１５７ａも、係合凹部１５９の被係止部１５９ａに当接し、直線状態よりも反る方向への回動を規制する。即ち、両リンク部当接部１５３，１５５と、当接部１５７ａ及び被係止部１５９ａとによって、回動規制機構が構成される。

【0049】

なお、両リンク部当接部１５３，１５５と、当接部１５７ａ及び被係止部１５９ａの何れかのみで回動規制機構を構成してもよいが、両者を用いることで規制時にかかる力を分散でき、より好適である。そしてこの回動規制機構によって、チェーン１４１が水路Ｓ内で反転して駆動ホイール１２１に向かって上昇する部分、及び駆動ホイール１２１で反転して水路Ｓ内に向かって下降する部分の何れにおいても、チェーン１４１は略直線状態を維持できる。

【0050】

この実施形態では、アイドラローラ１８１を、チェーン１４１の上流側部分（下降する側の部分）の内周側位置に設置してチェーン１４１を支えているので、さらに確実にチェーン１４１を正規の位置に維持できる。このため、スクリーン１０１の左右両側端に、チェーン１４１の位置決めや横揺れを防止するガイドレールや、このガイドレールを支持するためのフレームを設置する必要がなくなり、その分、流路Ｓが塞がれないので、スクリーン１０１に夾雑物が捕捉された際の水位上昇が起こりにくくなり、スクリーン１０１への負荷を小さくできる。また上述のように、従動ホイールを設置していないので、そのメンテナンスを省略でき、また軽量化できる。

【0051】

以上説明したように、この除塵機１００においては、各リンク部１４３の内周側に設けたホイール当接部１４９を、駆動ホイール１２１に設けたチェーン当接部１２９に当接（この例の場合は面接触）させて各リンク部１４３を支えると共に、各リンク部１４３に設けた係合切欠き部１５１，１５２に、駆動ホイール１２１に設けた駆動ピン１２７を係合させて各リンク部１４３を駆動する構成としたので、夾雑物やレーキ１１１やチェーン１４１自体の荷重（懸垂荷重）は、リンク部１４３のホイール当接部１４９が駆動ホイール１２１のチェーン当接部１２９に当接・支持（載置）することで支えられ、また横揺れの力も支えられる。従って、駆動ホイール１２１の駆動ピン１２７とリンク部１４３の係合切欠き部１５１，１５２の係合部分には、主として、チェーン１４１の駆動力がかかり、またチェーン１４１の連結ピン１４５には、主として、連結したリンク部１４３間の屈曲する際の摺動による力がかかることになり、駆動ホイール１２１とリンク部１４３に印可される力は複数箇所に分散される。このため特定部分の摩耗や劣化が減少し、耐久性が向上する。

【0052】

また部品強度を強くしなくても耐久性を向上できるので、チェーン駆動装置１の軽量化や、部品交換等のメンテナンス費用の低減化等を図ることができる。特にリンク部１４３のホイール当接部１４９を、駆動ホイール１２１のチェーン当接部１２９に面接触させたので、より安定して荷重を受けることができ、横揺れも抑制でき、好適である。そしてこのチェーン駆動装置１を用いて除塵機１００を構成することで、除塵機１００の耐久性が向上し、軽量化や、部品交換等のメンテナンス費用の低減化等を図ることができる。

【0053】

またこの除塵機１００においては、チェーン１４１の内周側に、アイドラローラ１８１を設置し、各リンク部１４３に設けたアイドラ係合部１４７を、アイドラローラ１８１に係合させて各リンク部１４３を支える構成としたので、チェーン１４１の自重によるたわみを抑えながら、チェーン１４１の横揺れも抑えることができ、スムーズなチェーン１４１の駆動を行うことができる。そのため、チェーン１４１の連結ピン１４５の部分が受ける横揺れによる負荷も軽減できる。

【0054】

またこの除塵機１００においては、各リンク部１４３の内周側の面に設けた溝の内部をアイドラ係合部１４７とし、且つ前記溝の両側を一対のホイール当接部１４９としたので、リンク部１４３に、アイドラ係合部１４７とホイール当接部１４９を、簡単な構成で容易に設けることができる。またアイドラ係合部１４７は溝状なので、チェーン１４１の弛みや横揺れ等を効果的に防止できる。またホイール当接部１４９は一対設けられるので、駆動ホイール１２１のチェーン当接部１２９に安定して当接させることができ、安定してリンク部１４３を支えることができ、横揺れも効果的に抑制することができる。

【0055】

また上記除塵機１００においては、連結ピン１４５によって回動自在に連結された隣り合うリンク部１４３間に、リンク部１４３が駆動ホイール１２１に巻き掛けられる際に回動する方向の反対方向への回動を規制する、リンク部当接部１５３とリンク部当接部１５５からなる回動規制機構、又は当接部１５７ａと被係止部１５９ａからなる回動規制機構、又は前記２組の回動規制機構を設けているので、チェーン１４１の弛みを防止することができ、スムーズなチェーン１４１の駆動を行うことができる。特に、この回動規制機構と、アイドラローラ１８１による各リンク部１４３の支持構造とを併用すれば、より効果的にチェーン１４１の弛み防止を図ることができる。

【0056】

また上記除塵機１００においては、チェーン１４１とスクリーン１０１間を所定の間隔に維持するガイドローラ２０１を設置したので、チェーン１４１とスクリーン１０１の間を、確実に所定の間隙（少なくともそれよりも狭くならない間隔）に維持することができ、チェーン１４１のたるみを抑制することができ、またレーキ１１１がスクリーン１０１に当接して摩耗することを回避できる。また例えば、流路Ｓの幅方向で偏った位置にある大きな夾雑物を掻き上げる場合、チェーン１４１は横方向（幅方向）に偏ろうとする。その場合も、ガイドローラ２０１によってチェーン１４１の横方向への移動を規制するようにガイドすることで、スクリーン１０１とレーキ１１１の噛み合い不良や干渉による過負荷等を回避することができる。

【0057】

以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、上記実施形態では、リンク部１４３のホイール当接部１４９を円弧状に形成し、駆動ホイール１２１の円形のチェーン当接部１２９と面接触させる場合を示したが、ホイール当接部１４９やチェーン当接部１２９の形状はこれに限られず、種々の変形が可能であり、例えばチェーン当接部１２９とホイール当接部１４９の形状は、所定の領域、範囲で面接触する形状であればどのような形状であっても良く、さらに面接触でなく、点接触や線接触であっても良い。

【0058】

また上記実施形態では、アイドラ装置１８１やガイド部材２０１を、ローラで構成したが、ローラの代わりに、回転しないで摺動しながらガイドするような部材、例えば低摩擦特性の樹脂製パッド等によって構成しても良い。

【0059】

また上記実施形態では、ガイドローラ２０１を、レーキ１１１を取り付けたリンク部１４３に固定したが、レーキ１１１を取り付けていないリンク部１４３に固定しても良く、またチェーン１４１自体ではなく、チェーン１４１と一体に移動するその他の部材に取り付けてもよい。またガイドローラ２０１が当接するのは、必ずしもスクリーン１０１自体ではなく、スクリーン１０１側の別の静止側部材であってもよい。また上記実施形態では、ガイドローラ２０１をチェーン１４１に取り付けることでスクリーン１０１の両端位置に、即ち流路Ｓの幅方向の両端にガイドローラ２０１を設置した例を示したが、チェーン１４１の横揺れをより効果的に防止するために、ガイドローラ２０１を、流路Ｓの両端と中央位置等、所望の複数箇所に設置しても良い。中央位置等に設置する場合は、レーキ１１１やアタッチメントを介して取り付ければよい。

【0060】

また上記回動規制機構を構成するリンク部１４３のリンク部当接部１５３，１５５は、傾斜面で構成したが、垂直面で構成しても良く、また直線状以外の各種形状で構成しても良い。また上記回動規制機構によるリンク部間の反る方向への回動規制角度は、上記実施形態の回動規制角度（１８０°）に限定されず、他の各種の回動規制角度に規制しても良い。また上記実施形態では、駆動ホイール１２１の駆動ピン１２７に係合させる係合部として、切欠きからなる係合切欠き部１５１，１５２を用いたが、切り欠かない形状の係合部や、突部からなる係合部等であっても良い。

【0061】

また上記実施形態では、除塵機（自動除塵機）１００を一例として説明したが、本発明に係るチェーン駆動装置１は、沈澱池等に用いる汚泥掻き寄せ機やコンベア等、チェーン及び駆動ホイールを用いるその他の各種水処理設備にも使用することができる。

【符号の説明】

【0062】

１ チェーン駆動装置
１００ 除塵機
１０１ スクリーン
１１１ レーキ
１２１ 駆動ホイール
１２７ 駆動ピン
１２９ チェーン当接部
１４１ チェーン
１４３ リンク部
１４５ 連結ピン
１４７ アイドラ係合部
１４９ ホイール当接部
１５１，１５２ 係合切欠き部（係合部）
１５３，１５５ リンク部当接部（回動規制機構）
１５７ａ 当接部（回動規制機構）
１５９ａ 被係止部（回動規制機構）
１８１ アイドラローラ（アイドラ装置）
１８３ リンク係合部
２０１ ガイドローラ（ガイド部材）
Ｓ 水路

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】