(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づき、本発明を詳細に説明する。
【0027】
<全体説明>
図1及び
図2に示すように、本実施の形態に係る眼科装置80は、被検眼Eの眼底Efに光を投影すると共に前記被検眼Eからの戻り光を検出する光学系を有する検査部100と、前記検査部100を被検眼Eに対して位置合わせを行うアライメント
系1、2と、検査情報を表示する表示部200、前記検査部100、前記
アライメント系1、2及び前記表示部200の作動を制御すると共に前記検査部100により得られた検出結果に基づき被検眼情報を取得する制御部300とを備えている。
【0028】
本実施形態に係る眼科装置80は、他覚検査と自覚検査とを実行することができる。他覚検査は、被検者からの応答を参照することなく主に物理的な手法を用いて被検眼に関する情報を取得する測定手法である。
【0029】
他覚検査には、被検眼の特性を取得するための測定と、被検眼の画像を取得するための撮影とが含まれる。他覚検査には、他覚屈折測定、角膜形状測定、眼圧測定、眼底撮影、光コヒーレンストモグラフィ(Optical Coherence Tomography:以下、OCTと称する)等がある。
【0030】
一方、自覚検査は、被検者からの応答を利用して情報を取得する測定手法である。自覚検査には、遠用検査、近用検査、コントラスト検査、グレア検査等の自覚屈折測定や、視野検査などがある。
【0031】
実施形態に係る眼科装置は、任意の自覚検査及び任意の他覚検査の少なくとも一方を実行することができる。
【0032】
光干渉計測を実行可能である場合、光干渉計測は、眼軸長、角膜厚、前房深度、水晶体厚など、被検眼の構造を表す眼球情報を取得するために用いられる。また、被検眼の画像や解析データを取得するために光干渉計測を利用することもできる。
【0033】
<構成>
図1及び
図2は、実施形態に係る眼科装置の構成例を示す。本実施の形態に係る眼科装置80に適用される検査部100は被検眼Eの検査を行うための光学系である。Zアライメント系1、XYアライメント系2、ケラト測定系3、
視標投影系4、観察系5、レフ測定投影系6、レフ測定受光系7、及び処理部9を備えている。
【0034】
(処理部9)
処理部9は制御部300の一部を構成し、眼科装置80の各部を制御する。また、処理部9は、各種演算処理を実行可能である。処理部9はプロセッサを含む。プロセッサの機能は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、プログラマブル論理デバイス(例えば、SPLD(Simple Programmable Logic Device)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))等の回路により実現される。処理部9は、例えば、記憶回路や記憶装置に格納されているプログラムを読み出し実行することにより本実施形態に係る機能を実現する。
【0035】
(観察系5)
観察系5は被検眼Eの前眼部を動画撮影する。被検眼Eの前眼部からの光(赤外光)は、対物レンズ51を通過し、ダイクロイックミラー52及び53を透過し、絞り54の開口を通過する。絞り54の開口を通過した光は、ハーフミラー55を透過し、リレーレンズ56及び57を通過し、結像レンズ58により撮像素子59(エリアセンサ)の撮像面に結像される。撮像素子59は、所定のレートで撮像及び信号出力を行う。
撮像素子59の出力(映像信号)は処理部9に入力される。処理部9は、この映像信号に基づく前眼部像E´を表示部10の表示画面10aに表示させる。前眼部像E´は、例えば赤外動画像である。観察系5は、前眼部を照明するための照明光源を含んでいてもよい。
【0036】
(Zアライメント系1)
Zアライメント系1は、観察系5の光軸方向(前後方向、Z方向)におけるアライメントを行うための光(赤外光)を被検眼Eに照射する。Zアライメント光源11から出力された光は、被検眼Eの角膜Kに照射され、角膜Kにより反射され、結像レンズ12によりラインセンサ13に結像される。
角膜頂点の位置が前後方向に変化すると、ラインセンサ13に対する光の投影位置が変化する。処理部9は、ラインセンサ13に対する光の投影位置に基づいて被検眼Eの角膜頂点の位置を求め、これに基づきZアライメントを実行する。
【0037】
(XYアライメント系2)
XYアライメント系2は、観察系5の光軸に直交する方向(左右方向(X方向)、上下方向(Y方向))のアライメントを行うための光(赤外光)を被検眼Eに照射する。XYアライメント系2は、ハーフミラー55により観察系5から分岐された光路に設けられたXYアライメント光源21を含む。XYアライメント光源21から出力された光は、ハーフミラー55により反射され、観察系5を通じて被検眼Eに照射される。その角膜Kによる反射光は、観察系5を通じて撮像素子59に導かれる。
【0038】
この反射光の像(輝点像)は前眼部像E´に含まれる。処理部9は、
図1に示すように、輝点像Brを含む前眼部像E´とアライメントマークALとを表示画面10aに表示させる。手動でXYアライメントを行う場合、検者は、アライメントマークAL内に輝点像Brを誘導するように光学系の移動操作を行う。自動でアライメントを行う場合、処理部9は、アライメントマークALに対する輝点像Brの変位がキャンセルされるように、光学系を移動させるための機構を制御する。
【0039】
(ケラト測定系3)
ケラト測定系3は、角膜Kの形状を測定するためのリング状光束(赤外光)を角膜Kに投影する。ケラト板31は、対物レンズ51と被検眼Eとの間に配置されている。ケラト板31の背面側(対物レンズ51側)にはケラトリング光源32が設けられている。
ケラトリング光源32からの光でケラト板31を照明することにより、角膜Kにリング状光束が投影される。その反射光(ケラトリング像)は撮像素子59により前眼部像E´と共に検出される。処理部9は、このケラトリング像を基に公知の演算を行うことで角膜形状パラメータを算出する。
【0040】
(視標投影系4)
視標投影系4は、固視標や自覚検査用視標等の各種視標を被検眼Eに呈示する。光源41から出力された光(可視光)は視標チャート42に照射される。視標チャート42は、例えば透過型の液晶パネルを含み、視標を表すパターンを表示する。
視標チャート42を透過した光は、合焦レンズ43及びVCCレンズ44を通過し、反射ミラー45により反射され、ダイクロイックミラー53により反射され、ダイクロイックミラー52を透過し、対物レンズ51を通過して眼底Efに投影される。光源41及び視標チャート42は、一体となって光軸方向に移動可能である。
【0041】
自覚検査を行う場合、処理部9は、他覚検査の結果に基づき視標チャート42、光源41及びVCCレンズ44を制御する。処理部9は、検者又は処理部9により選択された視標を視標チャート42に表示させる。それにより、当該視標が被検者に呈示される。被検者は視標に対する応答を行う。応答内容の入力を受けて、処理部9は、更なる制御や、自覚検査値の算出を行う。例えば、視力測定において、処理部9は、ランドルト環等に対する応答に基づいて、次の視標を選択して呈示し、これを繰り返し行うことで視力値を決定する。
【0042】
(レフ測定投影系6及びレフ測定受光系7)
レフ測定投影系6及びレフ測定受光系7は他覚屈折測定(レフ測定)に用いられる。レフ測定投影系6は、他覚屈折検査用のリング状光束(赤外光)を眼底Efに投影する。レフ測定受光系7は、このリング状光束の被検眼Eからの戻り光を受光する。
【0043】
レフ測定光源61は光軸方向に移動可能であり、眼底Efと光学的に共役な位置に配置される。レフ測定光源61から出力された光は、コンデンサレンズ62を通過し、反射ミラー63により反射され、円錐プリズム64A及びリレーレンズ64Bを透過し、リング絞り64Cのリング状透光部を通過してリング状光束となる。リング絞り64Cにより形成されたリング状光束は、穴開きプリズム65の反射面により反射され、ロータリープリズム66を通過し、クイックリターンミラー67に導かれる。
【0044】
ロータリープリズム66は、眼底Efの血管や疾患部位に対するリング状光束の光量分布を平均化させるために用いられる。また、クイックリターンミラー67は、他覚屈折測定と眼軸長測定との切り換えに用いられる。他覚屈折測定を行う場合、クイックリターンミラー67の反射面は、ダイクロイックミラー52により観察系5の光路から分岐された光路(分岐光路)に配置される。それにより、レフ測定投影系6の光路及びレフ測定受光系7の光路の双方が観察系5の光路に結合される。
【0045】
他覚屈折測定では、ロータリープリズム66を通過したリング状光束は、クイックリターンミラー67により反射され、ダイクロイックミラー52に反射され、対物レンズ51を通過して眼底Efに投影される。
【0046】
眼底Efに投影されたリング状光束の戻り光は、対物レンズ51を通過し、ダイクロイックミラー52及びクイックリターンミラー67により反射される。クイックリターンミラー67により反射された戻り光は、ロータリープリズム66を通過し、穴開きプリズム65の穴部を通過し、リレーレンズ71及び合焦レンズ72を透過し、結像レンズ73により撮像素子74の撮像面に結像される。撮像素子74の出力は処理部9に入力される。処理部9は、撮像素子74からの出力を基に公知の演算を行うことで被検眼Eの球面度数、乱視度数及び乱視軸角度を算出する。
【0047】
処理部9は、算出された屈折値に基づいて、レフ測定光源61と眼底Efが共役となる位置に、レフ測定光源61と合焦レンズ72とをそれぞれ光軸方向に移動させる。処理部9は、レフ測定光源61、合焦レンズ72、光源41及び視標チャート42を一体的に移動させることも可能である。
【0048】
(情報処理系の構成)
本実施の形態に係る眼科装置80の情報処理系について説明する。眼科装置80の情報処理系の機能的構成の例を
図1に示す。情報処理系は、制御部300と、検査部100と、移動機構部500と、表示部200と、操作部400と、音声発生部600と、固
視標チャート表示部700とを備えている。
制御部300は、検査部100、移動機構部500、表示部200、音声発生部600、固
視標チャート表示部700を作動制御する。
【0049】
(検査部100)
検査部100は、複数の異なる種別の検査を行うことが可能である。
図1及び
図2に示す構成を有する眼科装置80においては、他覚屈折測定、自覚屈折測定(遠用検査、近用検査、コントラスト検査、グレア検査など)、角膜形状測定を含む、複数の検査を実行することができる。
【0050】
検査部100は、被検眼Eの眼底Efにリング状の測定パターン光(パターン光)を投影し、眼底Efからの戻り光に基づく測定パターン像(パターン像)を光学的に取得する。
【0051】
検査部100は、アライメント系1,2と、ケラト測定系3と、
視標投影系4と、観察系5と、レフ測定投影系6と、レフ測定受光系7とを備えている。レフ測定投影系6は、被検眼Eの眼底Efにリング状の測定パターン光を投影すると共に、レフ測定受光系7は、レフ測定投影系6により投影された測定パターン光の眼底Efからの戻り光を検出する。
【0052】
移動機構部500は、被検眼Eに対して検査部100を相対移動する。移動機構部500は検査部100を構成する光学部材を駆動する機構であり、制御部300により制御可能な駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を検査部100、及び検査部100を構成する光学部材に伝達する部材とを含む。
また、検査部100は、有する光学系によって取得されたデータを解析することにより検査結果を求める機能を含んでよい。その場合、検査部100は、
図2に示す処理部9の少なくとも一部を含む。
【0053】
(表示部200、操作部400)
表示部200は、制御部300による制御に基づき様々な情報を表示する。表示部200は、
図2に示す表示部10を含む。
【0054】
操作部400は、眼科装置80を操作するために使用される。操作部400は、眼科装置80に設けられた各種のハードウェアキー(コントロールレバー、ボタン、スイッチ等)を含む。
また、操作部400は、タッチパネル式の表示画面10aに表示される各種のソフトウェアキー(ボタン、アイコン、メニュー等)を含んでいる。なお、表示部200及び操作部400の少なくとも一部が一体的に構成されていてよく、その典型例としてタッチパネル式の表示画面10aがある。
図3及び
図4に示す本実施の形態に係る眼科装置80はこの例を示す。
【0055】
(制御部300)
情報処理系は制御部300を中心に構成される。制御部300は、演算処理や制御処理など、各種の情報処理を実行する。制御部300は、
図2に示す処理部9の一部を含んでおり、制御部300は、光学系制御部301と、表示制御部302と、アライメント制御部303と、記憶部304とを備えている。
【0056】
(光学系制御部301)
光学系制御部301は検査部100を制御する。具体的には、光学系制御部301は、光源41及び61、アライメント光源11及び21、ケラト板31のケラトリング光源32、レフ測定投影系6、合焦レンズ43、72、
視標チャート42、VCCレンズ44などの作動を制御する。
【0057】
光学系制御部301は、眼底Efからの戻り光に基づく測定パターン像のフォーカス状態を調整することができる。自動で調整する場合、光学系制御部301は、例えば、コントラスト差検出方式や位相差検出方式等の公知のフォーカス調整手法に従ってって移動機構部500を制御することにより、合焦レンズ43及び合焦レンズ72の光軸方向における位置を制御する。
【0058】
手動で調整する場合、例えば、
視標等の手動フォーカス用情報を表示しつつ、光学系制御部301は、当該手動フォーカス用情報を参照した検者の操作部400における操作内容に基づいて移動機構部500を制御することにより、合焦レンズ43及び合焦レンズ72の光軸方向における位置を制御する。
【0059】
また、光学系制御部301は、操作部400に対する検者の操作内容に基づいて上記の各部を制御することが可能である。例えば、光学系制御部301は、操作部400に対する検者の操作内容に基づいて、眼底Efからの戻り光に基づく測定パターン像のフォーカス状態を調整することが可能である。
【0060】
(表示制御部302)
表示制御部302は、表示部200に対して各種情報を表示させる。本実施形態においては、表示制御部302はタッチパネル式の表示画面10aを有する表示部200(表示部10)に被検眼の画像を表示させる。
【0061】
被検眼Eの画像として、被検眼Eのリアルタイム画像、過去に取得された当該被検眼Eの画像、あらかじめ登録された被検眼Eの画像、被検眼Eを模式的に表す画像(模式図、シェーマ)等がある。
被検眼Eのリアルタイム画像は、撮像素子59の検出結果により得られる前眼部像E´であってよい。表示制御部302は、さらに、被検眼Eの画像に重畳してアライメントマークALを表示させてもよい。表示制御部302は、さらに、被検眼Eの画像に重畳して
視標像Brを表示させてもよい。
【0062】
また、表示制御部302は、タッチパネル式の表示画面10aを有する表示部130に操作画面を表示させることが可能である。操作画面には、眼底Efからの戻り光に基づく測定パターン像と、測定パターン像のフォーカス状態を変更するための指示入力部とが表示される。
測定パターン像は、リング状の測定パターン光が投影された被検眼Eの眼底Efからの戻り光により撮像素子59に結像された像である。検者は、指示入力部に対して合焦レンズ43及び合焦レンズ72を光軸方向に移動させるための指示操作を行うことが可能である。
【0063】
この操作画面には、さらに、雲霧視状態に移行させるための移行指示入力部や、操作画面に表示されている測定パターン像をキャプチャーするためのキャプチャー指示入力部などが表示されてもよい。
検者は、移行指示入力部に対して雲霧視状態に移行させるための指示操作を行うことが可能である。また、検者は、キャプチャー指示入力部に対して被検眼の画像や測定パターン像を静止画としてキャプチャーするための指示操作を行うことが可能である。
【0064】
また、表示制御部302は、前眼部像E´等の被検眼Eの画像に上記の操作画面を重畳して表示させるようにしてもよい。これにより、検者は、被検眼の状態を確認しながら操作画面に表示された各種の指示入力部に対して指示操作を行うことができるようになる。
【0065】
(瞬き報知手段)
本実施の形態に係る眼科装置80にあっては、前記制御部300が、検眼作業を行うに際し、被検者が瞬きをしていないと判断した場合であって瞬きの必要があると判断した場合には、制御部300の指示により被検者に瞬きを行う必要があることを報知する報知手段を備えている。
【0066】
光学系100は被検者の前眼部を撮像する撮像手段を有しており、本実施の形態にあっては、撮像手段は観察系5を構成する撮像素子59が該当する。その結果、前記制御部300は撮像素子59により撮像された前眼部像E´に基づき、処理部9を含む制御部300が、被検者が瞬きを行う必要性があると判断した場合には報知手段を介して被検者に瞬きを行うことを報知するように構成されている。
【0067】
図3に示すように、本実施の形態に係る眼科装置80は、ベース部81と、測定ヘッド82と、測定ヘッド82の前面部に設けられたコ字形枠状の顔受けフレーム83と、顔受けフレーム部83の内方に下方から突出配置されている顎受け部84と、UI(検者インターフェース)部85とを備えており、検眼時には、被検者は眼科装置80の前に着座し、顎を顎受け部84に乗せて待機する。
被検者は、顔受けフレーム部83の上端部に設けられた額当て部87に当て、顔を固定した状態で検査を行うと共に、検者はUI部85により装置の操作を行い、検査において被検者から取得した画像を確認しつつ検査、撮影、測定を行う。
【0068】
顔受けフレーム部83は、
図3及び
図4に示すように、測定ヘッド82の幅方向において一対に立設された側方フレーム部18、18と、側方フレーム部18、18の上端部において設けられた上方フレーム部19とを備えている。側方フレーム部18、18の下端部は側面略T字状のベース支持部20に固定されている。
本実施の形態に係る眼科装置80にあっては、側方フレーム部18、18には、夫々、内方へ指向するスピーカ601、601が内蔵されている。
従って、被検者22が検査に際して、顎受け部84に顎を載せると共に、頭部の額を額当て部87に当接させた状態で頭部を顔受けフレーム部83内に配置した場合には、
図4に示すように、スピーカ601、601は被検者22の両耳のほぼ側方に配置されるように構成されている。
【0069】
このような構成を前提として、制御部300は、撮像素子59により撮像された前眼部像E´に基づき被検者22が瞬きを行う必要性があると判断した場合には記憶部304に格納された音声データの中から必要な報知音声データを特定し、
図3に示すように、音声発生部600としてのスピーカ601、601を介して被検者22に対して、例えば、「まもなく測定(撮影)が始まります。一度、瞬きをしてください」等の音声を発し被検者に瞬きの必要性を促す。
【0070】
また報知手段は音声発生部600としてのスピーカ601に限定されず、
図5に示すように、被検者22が測定ヘッド部82の検査眼孔86を覗き込んだ際に見える風景チャートからなる固視標15に報知する表示を行ってもよい。
即ち、
図5は、被検者22が検査眼孔
86を覗いた際に視認できる固
視標15を示す。この固
視標15の背景図に、例えば、「まもなく測定(撮影)が始まります。一度、瞬きをしてください」等の報知文字16を表示し、被検者22に瞬きの必要性を促してもよい。
【0071】
この場合には、制御部300は記憶部304に格納された複数の報知文字データの中から必要な報知文字データを特定し、固
視標チャート表示部700に対して指示を行い、固視標15において風景チャートの図柄と抵触しない範囲で文字による表示を行い、固視標15上に報知文字16を表示させる。
【0072】
また、この場合、制御部300は、瞬きを行う必要がある旨の報知を行うか否かの判断に関しては、例えば、ケラトリング光源32からの光の照射により被検者22の検眼Eの角膜Kに投影されたリング状光束の欠損の如何により瞬きを行う必要性があるか否か、を判断するように構成してもよい。
【0073】
即ち、
図6に示すように、ケラトリング光源32からケラト板31を介して検眼Eの角膜Kに対して照射されて反射された光は撮像素子(エリアセンサ)59によりケラトリング像33として前眼部像E´と共に検出される。
制御部300を構成する処理部9はケラトリング像33の情報に基づき、ケラトリング像33が部分的に欠けていることを検知した場合には、処理部9を含む制御部300は、被検者22の瞼が下がっているか、又は瞼が半ば閉じている状態であると判断し、報知手段による瞬きの報知を報知手段としての音声発生部600又は個視標チャート表示部700に対して、音声を発生する、もしくは報知文字を表示する旨の指示を行い、スピーカ601により音声を発生するか、又は、固
視標文字を表示すること等により被検者に瞬きを行う必要があることを報知する。
【0074】
また、制御部300はアライメント用光源11、21からの光の照射により被検者22の検眼Eの角膜Kに投影されたアライメント光点の認識の有無により瞬きを行う必要性を判断するように構成してもよい。
【0075】
即ち、
図6に示すように、Zアライメント光源11及びXYアライメント光源21から検眼Eの角膜Kに対して照射されて反射された光は撮像素子(エリアセンサ)59により前眼部像E´と共に検出され、表示画面10aに示される輝点像Brとして認識される。
アライメント光点が輝点像Brとして撮像素子59により認識できない場合には、処理部9を含む制御部300は、前記同様に被検者22の瞼が下がっているか、又は瞼が半ば閉じている状態であると判断し、報知手段による瞬きの報知を報知手段としての音声発生部600又は個視標チャート表示部700に対して音声を発生、もしくは報知文字を表示する旨の指示を行い、スピーカ601により音声を発生するか、又は、固
視標15上に報知文字16を表示することにより被検者に瞬きを行う必要があることを報知する。
【0076】
さらに、制御部300は取得された被検眼情報に基づき虹彩像の欠損の有無により瞬きを行う必要性を判断するように構成してもよい。
即ち、
図6に示すように、被検眼Eの前眼部からの光は、観察系5を構成する対物レンズ51を介して撮像素子(エリアセンサ)59が検知し、処理部9は前眼部像E´として認識する。
この場合、処理部9を含む制御部300は、前眼部像E´において虹彩像17が部分的に欠損している、と認識した場合には、前記同様に瞼が下がっているか、又は瞼が半ば閉じている状態であると判断し、報知手段による瞬きの報知を報知手段としての音声発生部600又は個視標チャート表示部700に対して、音声を発生する、もしくは報知文字16を表示する旨の指示を行い、スピーカ601により音声を発生するか、又は、固
視標15上に報知文字16を表示することにより被検者22に瞬きを行う必要があることを報知する。
【0077】
さらに、制御部300は、前眼部表面の涙による滲みの程度に応じて瞬きを行う必要性を判断するように構成してもよい。
即ち、前記同様に、
図6に示すように、被検眼Eの前眼部からの光は、観察系5を構成する対物レンズ51を介して撮像素子(エリアセンサ)59が検知し、処理部9は前眼部像E´として認識するが、処理部9が、前眼部像E´において涙の流出により前眼部像E´が滲んでいると認識する場合がある。
このような場合では、処理部9を含む制御部300は、滲みの程度が大きいと判断した場合には、前記同様に被検者22の瞼が下がっているか、又は瞼が半ば閉じている状態であると判断し、報知手段による瞬きの報知を報知手段としての音声発生部600又は個視標チャート表示部700に対して、音声を発生する、もしくは報知文字を表示する旨の指示を行い、スピーカ601により音声を発生するか、又は、固
視標15上に報知文字16を表示することにより被検者22に瞬きを行う必要があることを報知する。
【0078】
また、本実施の形態に係る眼科装置80にあっては、制御部300は検査作業が終了する場合には、報知手段により検眼作業が終了する旨を被検者22に報知するように構成されている。
即ち、制御部300は、検査部100により被検眼Eの検査、測定、撮影が終了し、検査情報の取得が完了した場合には、検査の終了をスピーカ601による音声又は固視標15上に表示された報知文字を介して被検者に報知する。
【0079】
即ち、本実施の形態にあっては、測定、撮影作業が完了した場合には、制御部300はその旨を判断し、記憶部304に格納された音声情報の中か該当する音声情報を選択し、音声発生部600に対して特定した音声情報、例えば、「検査は終了します」という音声を、顔受けフレーム部83の側方フレーム部18、18に内蔵されたスピーカ601、601を介して被検者に対して発する。
【0080】
もしくは、制御部300は記憶部304に格納された報知文字16データの中から必要な報知文字16データを特定し、固
視標チャート表示部700に対して指示を行い、固視標15において風景チャートの図柄と抵触しない範囲で「検査は終了します」旨の報知文字による表示を行う。
【0081】
(フローチャート)
次に、本実施の形態に係る眼科装置80を使用して検眼作業を行う場合の手順について説明する。
図7に示すように、被検者22は、眼科装置80の前に着座して、頭部を、顎を顎受け部84に乗せると共に額を額当て部87に押し当てた状態で検査眼孔86を一方の眼で覗き込みつつ待機する。検者はこの状態を確認した上で眼科装置80のスタートボタンをオン操作することにより検眼作業が開始する。
【0082】
図7のフローチャートに示すように、検眼作業にあたり、まず、アライメントが行われ検査部100の被検眼Eに対する位置合わせが行われる(S1)。
次に、被検者22がこの段階で瞬きを行ったか否かを「瞬き検知」の有無により確認する(S2)。
即ち、
図2に示すように、検査部100を構成する撮像素子59は光源11、21、32から角膜Kに対して照射された光の戻り光により前眼部像を撮影しており、処理部9を含む制御部300はその前眼部像情報に基づき、被検者が瞬きを行ったか否か、を確認する。制御部300が被検者の瞬きを検知した場合には、検査、測定、撮影の条件は整っていることから被検眼Eの測定、撮影に進む(S3)。
【0083】
一方、制御部300が前眼部像情報において瞬きを検知しなかった場合には、制御部300は「瞬き誘導の要否判定」を行う(S5)。
この「瞬き誘導要否判定」は、上記のように、ケラトリング光源32からの光の照射により被検者の検眼Eの角膜Kに投影されたリング状光束はケラトリング像33として前眼部像E´と共に検出され、このケラトリング像33の欠損の如何により瞬きを行う必要性を判断するか、又はアライメント用光源11、21からの光の照射により被検者の検眼Eの角膜Kに投影されたアライメント光点は輝点像Brとして前眼部像E´と共に検出され、この輝点像Brの認識の有無により瞬きを行う必要性を判断するか、又は、被検眼情報に基づき虹彩像17の欠損の有無により瞬きを行う必要性を判断する。
【0084】
さらに、制御部は300、前眼部表面の涙による滲みの程度に応じて瞬きを行う必要性を判断してもよい。また、上記4つの判定基準を、適宜組み合わせ、総合して判断してもよい。
制御部300が上記判定基準に基づき判断し、「瞬き報知の必要がない」と判断した場合には、検眼Eの検査、測定、撮影作業を行える、と判断し、検査、測定、撮影を行う(S3)。
一方、制御部300が上記判定基準に基づき判断し、「瞬きの報知の必要がある」と判断した場合には、記憶部304に格納された音声情報の中か該当する音声情報を選択し、音声発生部600に対して特定した音声情報、例えば、「まもなく測定(撮影)が始まります。一度、瞬きをしてください」という音声を、顔受けフレーム部83の側方フレーム部18、18に内蔵されたスピーカ601、601を介して被検者に対して発して「瞬き報知」を行う。
【0085】
もしくは、制御部300は記憶部304に格納された報知文字16データの中から必要な報知文字16データを特定し、固
視標チャート表示部700に対して指示を行い、固視標15において風景チャートの図柄と抵触しない範囲で文字による表示を行い、固視標15上に報知文字16を表示させて「瞬き報知」を行う。
【0086】
このような瞬き誘導の報知により被検者は瞬きの必要性を認識して瞬きを行い、処理部9を含む制御部300が被検者の瞬きを撮像素子59により取得された前眼部画像情報に基づき検知した場合には、制御部300は「瞬きを行った」ものと判断し(S7)、検眼Eの測定、撮影作業を開始する。
一方、処理部9を含む制御部300が被検者の瞬きを撮像素子59により取得された前眼部画像情報に基づき検知しなかった場合には(S7)、制御部300は再度、「瞬き報知」を行い、被検者に瞬きを行うことを誘導する(S6)。
この作業は被検者が瞬きを行ったことを検知するまで繰り返される。
【0087】
さらに、本実施の形態にあっては、測定、撮影作業が完了した場合には、制御部300はその旨を判断し、記憶部304に格納された音声情報の中か該当する音声情報を選択し、音声発生部600に対して特定した音声情報、例えば、「検査は終了します」という音声を、顔受けフレーム部83の側方フレーム部18、18に内蔵されたスピーカ601、601を介して被検者に対して発する(S4)。
【0088】
もしくは、制御部300は記憶部304に格納された報知文字16データの中から必要な報知文字16データを特定し、固
視標チャート表示部700に対して指示を行い、固視標15において風景チャートの図柄と抵触しない範囲で「検査は終了します」旨の文字による表示を行い、固視標15上に報知文字16を表示させる。この報知により被検者は検査、測定、撮影作業の終了を認識することができる。
【0089】
図8及び
図9は、本考案に係る眼科装置の第二の実施の形態を示す。第一の実施の形態と同一構成、部材に関しては同一符号を付してその説明を省略する。
【0090】
本実施の形態に係る眼科装置30にあっては、被検者22自ら操作して検眼作業を開始することができる検眼開始手段を備えている。他の構成は前記第一実施の形態に係る眼科装置80と同一である。
【0091】
検眼開始手段401は操作部400の一部を構成し、
図8に示すように、被検者22が把持しうる検眼開始スイッチ部23からなる。
検眼開始スイッチ部23は、ベース部81及び測定ヘッド部82とは別個に構成されたリモートスイッチとして形成され、ベース部81及び測定ヘッド部82に接続された電気ケーブル24及びスイッチ本体25とを備えており、眼科装置30の前に着座した被検者22が把持しやすい位置に配置されている。
【0092】
従って、本実施の形態における操作手順は、
図9のフローチャートに示すように、被検者22は、眼科装置30により検眼作業を行う場合には、被検者22自ら検眼開始スイッチ部23のスイッチ本体25を把持してスイッチ本体25をON動作させて検眼作業を開始させる(S10)。その後の作動の流れは、
図7に示す前記第一の実施の形態の場合と全く同一である。
【0093】
このように検眼開始スイッチ23を設け、被検者22自らが検眼開始スイッチ23を操作した眼科装置30により検眼作業を開始させることにより、制御部300によるスピーカ601又は固
視標15を利用した被検者22への、瞬きを行うべき旨の報知と相俟って、従来、検者が行っていた眼科装置30の始動操作及び、有効な検査、測定、撮影を行うために行われていた検者による瞬きの必要性の判断と必要と判断された場合の被検者22への瞬きを行う必要がある旨の報知を省略することが可能となり、検者が眼科装置30が設置された場所に不在であっても検眼作業を有効に行うことが可能となる。
【0094】
図10〜
図13は本発明に係る眼科装置の第三の実施の形態を示す。本実施の形態に係る眼科装置40にあっては、
図12及び
図13に示すように、測定ヘッド部82の前方に配置された顎受け部84には、被検者22が顎を載せたことを検知する圧力センサからなる顎乗せ検知手段26が設けられている。
また、顔受けフレーム部83には、制御部300の指示に基づき、報知手段による報知がされた場合であってもなお被検者22の瞬きがされない場合に被検者22の瞼を開かせる開瞼機構27を備えている。その他の構成については、第一実施の形態に係る眼科装置80と同一である。
【0095】
従って、本実施の形態に係る眼科装置40の操作手順としては、
図12及び
図11のフローチャートに示すように、被検者22が眼科装置40の前に着座し顎を顎受け部84に乗せた場合には、被検者22の頭部の重量を顎乗せ検知手段26が検知し、所定の検知信号を制御部300へ送る。
制御部300が顎乗せ検知手段26が被検者22が顎受け部84に顎を乗せたことを検知した旨の信号を受信した場合には、眼科装置40へ主電源を供給させて眼科装置40を起動させる(S11)。
次に、制御部300は検査部100へ制御信号を送信し、移動機構部500を起動させて自動的にアライメント(オートアライメント)を開始する(S1)。
【0096】
図12及び
図13に示すように、開瞼機構27は顔受けフレーム部83を構成する上方フレーム部19の外側面部のほぼ中央部に設けられている。開瞼機構27は被検者22の瞼に係止するアーム部29と、アーム部29を眼科装置40のZ軸方向(装置前後方向)及びY軸方向(装置上下方向)へ作動させうる駆動部34とを備えている。
駆動部34は適宜の電動アクチュエータからなりアーム部29を前後動及び上下動させうるように構成されている。また、アーム部29は逆L字状に形成されており先端部には係止部35が設けられ、必要時には係止部35が瞼28に係止して瞼28を強制的に上方へ引き上げうるように構成されている。
【0097】
即ち、本実施の形態に係る眼科装置40にあっては、アライメントが終了した場合には、各種光学系を起動させて観察系5を構成する撮像素子59が撮影した前眼部画像の情報から処理部9を含む制御部300は被検者22が瞬きを行ったか否かを確認する(S2)。
【0098】
制御部300が被検者22による瞬きを検知した場合には眼科装置40は測定、撮影作業を開始する(S3)。制御部300が被検者22による瞬きを検知しなかった場合には、第一の実施の形態の場合と同様の判定条件に基づき瞬き誘導要否の判定を行う。
即ち、制御部300は、ケラトリング像の欠落の有無、アライメント光点の認識の有無、虹彩像の欠損の有無、又は前眼部の滲みの程度に基づき瞬き行うことを被検者22に報知するか否か、を判断する(S5)。
【0099】
制御部300が瞬き報知は不要と判断した場合には、被検眼Eの測定、撮影作業を開始する(S3)。一方、瞬き報知、誘導が必要と判断した場合には、瞬き報知を、顔受けフレーム部83の側方フレーム部18、18に内蔵されたスピーカ601、601を介して音声発生部600により音声により報知するか、又は、固
視標15を介して固
視標チャート表示部700により報知文字16により報知する(S6)。
【0100】
その後、制御部300が被検者22による瞬きを検知した場合には被検眼Eの測定、撮影を行う(S3)。一方、制御部300が被検者22による瞬きを検知しなかった場合には、制御部300は開瞼機構27を作動させて被検者22の瞼28を強制的に開かせる(S8)。
即ち、
図12及び
図13に示すように、開瞼機構27が作動した場合には、駆動部34はアーム部29を、まずZ軸方向(装置前後方向)において被検者22方向に移動させ、被検者22の瞼28に接近させて係止部35を被検者22の瞼28に係止させる。
その後、駆動部34はアーム部29をY軸方向(装置上下方向)において上方に移動させて瞼28を引き上げる。これにより被検者22の瞼28は強制的に開かされ、測定、撮影作業を行う前提条件が確保される。その後、制御部300は開瞼機構27の作動完了を確認した後、検査部100による測定、撮影作業を行う(S3)。
【0101】
従って、本実施の形態に係る眼科装置40にあっては、顎乗せ検知手段26が設けられており、被検者22が顎乗せ部84へ顎を乗せていることを確認した場合には制御部300は眼科装置40を作動させて自動的にアライメントを行い、瞬きを検知しなかった場合には、瞬きを行う必要があることを報知し、なお瞬きを検知しなかった場合には、開
瞼機構27により強制的に瞼28を開かせるように構成されていることから、眼科装置40が設置された場所に検者が不在であっても、検者の作業を全く要することなく、かつ、より確実に検眼作業を行うことが可能となる。