(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
帯鉄筋やせん断補強筋は、主鉄筋が配置された後に配置されるため、主鉄筋を配置する工程とは別に帯鉄筋やせん断補強筋を配置する工程が必要となり、労力や工期がかかるという問題がある。特に、鋼コンクリート複合構造において、要求される耐荷重が大きい場合では、より多くの帯鉄筋やせん断補強筋を配置する必要があるため、帯鉄筋やせん断補強筋を配置する工程により労力や工期がかかるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、帯鉄筋やせん断補強筋を配置した場合と同等の耐荷重を確保しつつ容易に施工できて工期短縮を図ることができる鋼コンクリート複合構造および鋼コンクリート複合構造の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る鋼コンクリート複合構造は、鋼材と、前記鋼材と対向して配置され
長さ方向全体にわたって前記鋼材の延在方向と直交する一方向に延びる配力筋と、前記配力筋の前記鋼材側に配置され前記配力筋と交差する主鉄筋と、前記鋼材に設けられ、前記配力筋を前記鋼材に拘束する拘束手段と、前記鋼材、前記主鉄筋、前記配力筋および前記拘束手段を埋設するコンクリートと、を有することを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る鋼コンクリート複合構造の施工方法は、鋼材を配置する鋼材配置工程と、主鉄筋を配置する主鉄筋配置工程と、
長さ方向全体にわたって前記鋼材の延在方向と直交するとともに前記主鉄筋と交差する一方向に延びる配力筋を前記鋼材と対向し、かつ前記主鉄筋が前記鋼材側となるよう
に配置する配力筋配置工程と、前記配力筋を前記鋼材に拘束手段で拘束する配力筋拘束工程と、前記鋼材、前記主鉄筋、前記配力筋および前記拘束手段をコンクリートに埋設するコンクリート埋設工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明では、配力筋を鋼材に拘束手段で拘束する構成であることにより、配力筋の鋼材側に配置された主鉄筋も配力筋によって鋼材に押し付けられるように固定される。このため、従来のような帯鉄筋やせん断補強筋を配置しなくても、主鉄筋がはらんで座屈することなく十分な耐荷重を確保することができる。その結果、従来のように帯鉄筋やせん断補強筋を配置する必要がなく、施工が容易であるとともに工期を短縮することができる。
また、配力筋を鋼材に拘束手段で拘束することで主鉄筋も固定される構成であることにより、主鉄筋および配力筋を容易に配置することができる。
また、拘束手段は、主鉄筋および配力筋を鋼材に押し付けるようにして拘束しているため、主鉄筋、配力筋および鋼材を一体化させることができて、鋼コンクリート複合構造の強度を高めることができる。
【0010】
また、本発明に係る鋼コンクリート複合構造では、前記拘束手段は、前記鋼材に接合されたネジスタッドと、前記ネジスタッドが挿通される孔部が形成されたプレートと、前記ネジスタッドに締結可能なナットと、を有し、前記孔部に前記ネジスタッドが挿通された前記プレートと前記鋼材との間に前記配力筋が配置されて、前記ネジスタッドにナットが締結されるように構成されていてもよい。
プレートの孔部にネジスタッドを挿通させて、プレートと鋼材との間に配力筋が配置された状態でネジスタッドにナットを締結することにより、配力筋を鋼材に容易に拘束することができるため、主鉄筋および配力筋を容易に配置することができる。
【0011】
また、配力筋に節部の凹凸が形成されている場合、この配力筋の凹凸をプレートの端部に引っ掛けるようにすれば、配力筋の節部の凹凸をプレートの端部に引っ掛けることと、配力筋を拘束手段で鋼材に押し付けるようにして拘束することの相乗効果によって、従来の鉄筋それぞれの端部をU字形に折り曲げて、互いを引っ掛ける鉄筋どうしの拘束と同等以上の拘束を実現することができる。
また、ネジスタッドに隣接するように少なくとも一部の主鉄筋が配筋され、この主鉄筋の節部の凹凸が形成されている場合、この主鉄筋の凹凸をネジスタッドに引っ掛けるようにすれば、主鉄筋の位置ずれを防止でき、主鉄筋を正位置に拘束することができる。
【0012】
また、本発明に係る鋼コンクリート複合構造では、前記ネジスタッドは、互いに間隔をあけて複数設けられ、前記プレートには、複数の前記ネジスタッドが個々に挿通可能となるように前記孔部が複数形成されていて、隣り合う前記ネジスタッドの間に配力筋が配置されていてもよい。
このような構成とすることにより、配力筋の両側においてプレートがネジスタッドおよびナットによって締結されるため、配力筋を鋼材に強固に拘束することができる。
【0013】
また、本発明に係る鋼コンクリート複合構造では、前記拘束手段は、前記鋼材から突出する第1突出部と、前記第1突出部から屈曲して延びる第2突出部と、を有し、前記第2突出部と前記鋼材との間に前記配力筋が配置されて前記配力筋が前記鋼材に拘束されてもよい。
このような構成とすることにより、第2突出部と鋼材との間に配力筋を配置すれば、配力筋を鋼材に拘束することができる。例えば、鋼コンクリート複合構造の壁体などで配力筋が水平方向に延びる向きに配置される場合において、拘束手段の第1突出部が水平方向に突出し、第2突出部が上方に突出している形態とすれば、配力筋を拘束手段に上側から引っ掛けることで容易に正位置に固定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、帯鉄筋やせん断補強筋を配置した場合と同等の耐荷重を確保しつつ容易に施工できて工期短縮を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態による鋼コンクリート複合構造について、
図1乃至
図5に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態による鋼コンクリート複合構造1Aは、水平方向に延びる長尺の梁材や頂版を構成する構造体11に採用されている。構造体11が延びる水平方向を長さ方向とし、長さ方向に直交する水平方向を幅方向とする。
図1乃至
図4に示すように、本実施形態による鋼コンクリート複合構造1Aは、鋼材2と、鋼材2の上側に配置されたスペーサ3(
図4参照)と、スペーサ3の上側に配置された主鉄筋4と、主鉄筋4の上側に配置された配力筋5と、配力筋5を鋼材2に拘束する拘束手段6と、これらの鋼材2、スペーサ3、主鉄筋4、配力筋5および拘束手段6を埋設するコンクリート部7と、を有している。
図1乃至
図3では、スペーサ3を省略している。
本実施形態では、コンクリート部7は、下部側に配置される平板状でプレキャストコンクリート製のコンクリート底版部71と、コンクリート底版部71の上側に現場打ちコンクリートで構築される上側コンクリート部72と、を有している。
図1では、上側コンクリート部72の図示を省略している。
【0017】
鋼材2は、I形鋼で、上下にフランジ23,24が配置され長さ方向に延びる向きに配置されている。鋼材2のウェブ25には、それぞれ板面を貫通する貫通孔251が長さ方向に間隔をあけて複数形成されている。貫通孔251の内部には上側コンクリート部72が入り込むように構成されている。
本実施形態では、2つの鋼材2,2が幅方向に間隔をあけて配置されている。2つの鋼材2,2は、それぞれ下側のフランジ23とウェブ25の下端部近傍がコンクリート底版部71に埋設されている。
2つの鋼材2,2のうちの幅方向の一方側に配置された鋼材2を第1鋼材21とし、幅方向の他方側に配置された鋼材2を第2鋼材22とする。
本実施形態では、第1鋼材21および第2鋼材22は、予め工場などでコンクリート底版部71に接合されている。コンクリート底版部71とコンクリート底版部71に接合された第1鋼材21および第2鋼材22は、ハーフプレキャスト部材12を構成している。
【0018】
スペーサ3は、例えば断面形状が略C字形状に形成されて、直線状に延びるチャンネル材などで、幅方向に延びる向きで2つの鋼材21,22に跨るように配置されている。なお、
図4では、見やすくするためにスペーサ3の断面形状を矩形で示している。スペーサ3の延在方向(スペーサ3が延びる方向、本実施形態では幅方向)の一方の端部は第1鋼材21よりも幅方向の一方側に突出し、他方の端部は第2鋼材22よりも幅方向の他方側に突出している。
本実施形態では、複数のスペーサ3が長さ方向に間隔をあけて配置されている。複数のスペーサ3は、2つの鋼材21,22の直上における長さ方向の両端部近傍を除く領域全体に配置されている。
【0019】
主鉄筋4は、直線状に延びる例えば異形鉄筋などで、長さ方向に延びる向きに配置されている。
本実施形態では、複数の主鉄筋4が幅方向に間隔をあけて配置されている。複数の主鉄筋4は、複数のスペーサ3の直上における幅方向の略全体に配置されている。このため、幅方向の一方側に配置された主鉄筋4は、第1鋼材21よりも幅方向の一方側に配置され、幅方向の他方側に配置された主鉄筋4は、第2鋼材22よりも幅方向の他方側に配置されている。
【0020】
配力筋5は、直線状に延びる例えば異形鉄筋などで、幅方向に延びる向きに配置されている。配力筋5は、2つの鋼材21,22に跨る長さに形成され、延在方向(幅方向)の一方の端部は、幅方向の一方側に配置された主鉄筋4よりも幅方向の一方側に突出し、延在方向の他方の端部は、幅方向の他方側に配置された主鉄筋4よりも幅方向の他方側に突出している。
本実施形態では、複数の配力筋5が長さ方向に間隔をあけて配置されている。複数の配力筋5は、複数の主鉄筋4の直上の略全体に配置されている。
【0021】
図5に示すように、拘束手段6は、鋼材2に接合された2つのネジスタッド61,61と、2つのネジスタッド61,61がそれぞれ挿通される2つの孔部621,621が形成されたプレート62と、2つのネジスタッド61,61それぞれに締結可能なナット63,63と、を有している。
拘束手段6は、第1鋼材21および第2鋼材22それぞれに複数設けられている。第1鋼材21に設けられた複数の拘束手段6は、第1鋼材21の長さ方向全体にわたって設けられ、第2鋼材22に設けられた複数の拘束手段6は、第2鋼材22の長さ方向全体にわたって設けられている。第1鋼材21に設けられた複数の拘束手段6と第2鋼材22に設けられた複数の拘束手段6とは、幅方向に対向する位置に配置されている。
【0022】
2つのネジスタッド61,61は、それぞれ軸線が直線となる棒状に形成され、鋼材2の上側フランジ24の上面に長さ方向に間隔をあけて接合されている。2つのネジスタッド61,61は、同一の形状に形成されている。ネジスタッド61は、少なくとも軸線方向内の上側となる一方側の外周面にネジ山611が形成され、このネジ山611にナット63が螺合する様に構成されている。
【0023】
2つのネジスタッド61,61の間には、1つの配力筋5を配置可能に設定されている。第1鋼材21に接合された2つのネジスタッド61,61の間には、配力筋5の延在方向の一方側の端部近傍が配置され、第2鋼材22に接合された2つのネジスタッド61,61の間には、配力筋5の延在方向の他方側の端部近傍が配置されている。なお、スペーサ3は、拘束手段6の2つのネジスタッド61,61の間や、長さ方向に隣り合う拘束手段6,6の間に配置されている。
本実施形態では、ネジスタッド61は、予め工場などでハーフプレキャスト部材12を製作する際に鋼材2に接合されている。
2つのネジスタッド61,61のうちの長さ方向の一方側に配置されたネジスタッド61を第1ネジスタッド61aとし、長さ方向の他方側に配置されたネジスタッド61を第2ネジスタッド61bとする。2つのナット63,63の内の第1ネジスタッド61aに締結されるナット63を第1ナット63aとし、第2ネジスタッド61bに締結されるナット63を第2ナット63bとする。
【0024】
プレート62は、板面が長尺の略長方形となる平板状に形成されている。プレート62は、板面が上下方向を向き長手方向が長さ方向となる向きに配置されている。プレート62に形成された2つの孔部621,621は、プレート62の長手方向に2つのネジスタッド61,61の間隔と同じ間隔をあけて配置されている。2つの孔部621,621は、それぞれネジスタッド61が挿通可能で、ナット63が挿通不可能な形状に形成されている。
2つの孔部621,621のうちの長さ方向の一方側に配置された孔部621を第1孔部621aとし、長さ方向の他方側に配置された孔部621を第2孔部621bとする。
【0025】
拘束手段6は、第1ネジスタッド61aと第2ネジスタッド61bとの間に配力筋5が配置された状態で、プレート62の第1孔部621aに第1ネジスタッド61aを挿通し、第2孔部621bに第2ネジスタッド61bを挿通し、第1ネジスタッド61aに第1ナット63aを締結し、第2ネジスタッド61bに第2ナット63bを締結してプレート62で配力筋5を鋼材2側に押圧することで配力筋5を鋼材2に拘束するように構成されている。
本実施形態では、第1ネジスタッド61a、第2ネジスタッド61bおよびプレート62にC字形に囲まれた領域に配力筋5が配置されている。
【0026】
次に、上述した本実施形態の鋼コンクリート複合構造1Aの施工方法について説明する。
まず、コンクリート底版部71に第1鋼材21および第2鋼材22が接合され、第1鋼材21および第2鋼材22それぞれにネジスタッド61が接合されたハーフプレキャスト部材12を製作する。製作されたハーフプレキャスト部材12を構造体11を構築する現場に搬入して所定の場所に設置する(鋼材配置工程)。
【0027】
第1鋼材21および第2鋼材22に跨るように複数のスペーサ3を配置する(スペーサ配置工程)。スペーサ3を、拘束手段6の第1ネジスタッド61aと第2ネジスタッド61bとの間や、長さ方向に隣り合う拘束手段6,6の間に適宜配置する。必要に応じてスペーサ3を鋼材2に結束してもよい。
【0028】
複数のスペーサ3の上側に複数の主鉄筋4を幅方向に間隔をあけて配置する(主鉄筋配置工程)。必要に応じて主鉄筋4をスペーサ3に結束してもよい。
本実施形態では、ネジスタッド61に隣接する主鉄筋4の節部の凹凸を、ネジスタッド61に引っ掛けるようにしている。なお、ネジスタッド61に隣接する主鉄筋4の節部の凹凸を、ネジスタッド61に引っ掛けるかどうかは適宜設定されてよい。
【0029】
複数の主鉄筋4の上側に複数の配力筋5を長さ方向に間隔をあけて配置する(配力筋配置工程)。複数の配力筋5をそれぞれ拘束手段6の第1ネジスタッド61aと第2ネジスタッド61bとの間に配置する。
配力筋5の一方の端部側を第1鋼材21に接合された第1ネジスタッド61aと第2ネジスタッド61bとの間に配置し、他方の端部側を第2鋼材22に接合された第1ネジスタッド61aと第2ネジスタッド61bとの間に配置する。必要に応じて主鉄筋4と配力筋5と適宜結束してもよい。
【0030】
続いて、配力筋5を拘束手段6で鋼材2に拘束する(配力筋拘束工程)。
拘束手段6のプレート62の第1孔部621aに第1ネジスタッド61aを挿通し、第2孔部621bに第2ネジスタッド61bを挿通する。第1ネジスタッド61aに第1ナット63aを締結し、第2ネジスタッド61bに第2ナット63bを締結してプレート62で配力筋5を鋼材2側に押圧する。
これにより、配力筋5が鋼材2に固定されるとともに、鋼材2と配力筋5との間にスペーサ3および主鉄筋4が挟まれて、主鉄筋4が鋼材2に固定される。
本実施形態では、配力筋5の節部の凹凸を、プレート62の端部に引っ掛けるようにしている。なお、配力筋5の節部の凹凸を、プレート62の端部に引っ掛けるかどうかは適宜設定されてよい。
【0031】
続いて、コンクリート底版部71の上側に上側コンクリート部72の型枠を設置し、上側コンクリート部72のコンクリートを打設してコンクリート部7を構築する(コンクリート埋設工程)。
なお、プレキャストコンクリート製のコンクリート底版部71が設けられておらず、構造体11のコンクリート部7の全体を現場にて一体に打設してもよい。
【0032】
次に、上述した第1実施形態による鋼コンクリート複合構造および鋼コンクリート複合構造の施工方法の作用・効果について図面を用いて説明する。
上述した第1実施形態による鋼コンクリート複合構造および鋼コンクリート複合構造の施工方法では、配力筋5を鋼材2に拘束手段6で拘束する構成であることにより、配力筋5の内側(鋼材2側)に配置された主鉄筋4も鋼材2に押し付けられるように固定される。このため、従来のような帯鉄筋やせん断補強筋を配置しなくても、主鉄筋4がはらんで座屈することなく十分な耐荷重を確保することができる。その結果、従来のように帯鉄筋やせん断補強筋を配置する必要がなく、施工が容易であるとともに工期を短縮することができる。
また、配力筋5を鋼材2に拘束手段6で拘束することで主鉄筋4も固定される構成であることにより、主鉄筋4および配力筋5を容易に配置することができる。
【0033】
また、拘束手段6は、主鉄筋4および配力筋5を鋼材2に押し付けるようにして拘束しているため、主鉄筋4、配力筋5および鋼材2を一体化させることができて、鋼コンクリート複合構造1Aの強度を高めることができる。
【0034】
また、拘束手段6は、プレート62の2つの孔部621にネジスタッド61を挿通させて、プレート62と鋼材2との間に配力筋5が配置された状態でネジスタッド61にナット63を締結することにより、配力筋5を鋼材2に容易に拘束することができるため、主鉄筋4および配力筋5を容易に配置することができる。
また、拘束手段6は、2つのネジスタッド61,61に対してプレート62およびナット63,63を上側から取り付ける構成であるため、容易に取り付けることができる。
【0035】
また、本実施形態では、配力筋5の節部の凹凸をプレート62の端部に引っ掛けるようにしている。この配力筋5の節部の凹凸をプレート62の端部に引っ掛けることと、配力筋5を拘束手段6で鋼材2に押し付けるようにして拘束することの相乗効果によって、従来の鉄筋それぞれの端部をU字形に折り曲げて、互いを引っ掛ける鉄筋どうしの拘束と同等以上の拘束を実現することができる。
また、本実施形態では、ネジスタッド61に隣接する主鉄筋4の節部の凹凸を、ネジスタッド61に引っ掛けるようにしている。これにより、ネジスタッド61に隣接する主鉄筋4の位置ずれを防止でき、ネジスタッド61に隣接する主鉄筋4を正位置に拘束することができる。
【0036】
(第2実施形態)
次に、他の実施形態について、添付図面に基づいて説明するが、上述の第1実施形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、実施形態と異なる構成について説明する。
図6に示すように第2実施形態による鋼コンクリート複合構造1Bでは、拘束手段6Bのプレート62Bが、1つの鋼材2と略同じ長さに形成され、1つのプレート62Bに1つの鋼材2に接合されたすべてのネジスタッド61B,61B…がそれぞれ挿通される孔部621B,621B…が形成されている。
図6では、スペーサおよび主鉄筋を省略している。
第2実施形態では、隣り合うネジスタッド61B,61Bの間に配力筋5を配置した後に、すべての孔部621B,621B…のそれぞれにネジスタッド61Bを挿通させるようにしてプレート62Bを設置し、すべてのネジスタッド61B,61B…それぞれにナット63Bを締結して配力筋5を鋼材2に固定している。
第2実施形態では、第1鋼材21に対して1つのプレート62Bが設けられ、第2鋼材22に対して1つのプレート62Bが設けられている。
【0037】
第2実施形態による鋼コンクリート複合構造1Bでは、第1実施形態と同様の効果を奏するとともに、1つの鋼材2に対して1つのプレート62Bを設ける構成であるため、第1実施形態のように1つの鋼材2に対して複数のプレート62,62…を設ける場合と比べて、プレート62Bの設置を容易に行うことができる。
【0038】
(第3実施形態)
図7に示すように、第3実施形態による鋼コンクリート複合構造1Cでは、拘束手段6Cは、第1鋼材21および第2鋼材22に対して複数設けられている。拘束手段6Cは、1つのネジスタッド61Cと、1つの孔部621Cが形成されたプレート62Cと、ネジスタッド61Cに締結されるナット63Cと、を有している。
図7では、スペーサおよび主鉄筋を省略している。
第3実施形態では、ネジスタッド61Cの長さ方向の一方側または他方側に配力筋5が配置され、孔部621Cにネジスタッド61Cを挿通させて配力筋5の上にプレート62Cを配置し、ネジスタッド61Cにナット63Cを締結する。
第3実施形態では、1つのネジスタッド61およびプレート62にL字形に囲まれた領域に配力筋5が配置されている。
【0039】
第3実施形態による鋼コンクリート複合構造1Cでは、第1実施形態と同様の効果を奏するとともに、ネジスタッド61Cの数が第1実施形態よりも少ないため、鋼材2へのネジスタッド61Cの接合工程、およびネジスタッド61Cへのナット63Cの締結工程を軽減することができる。
【0040】
(第4実施形態)
図8に示すように、第4実施形態による鋼コンクリート複合構造1Dでは、拘束手段6Dが、鋼材2に接合された略J字形の鉤状の部材で構成されている。
図8では、スペーサおよび主鉄筋を省略している。
拘束手段6Dは、鉄筋や鋼棒をその軸線が略J字形状となるように曲げられて形成されている。拘束手段6Dは、鋼材2に接合され鋼材2から上側に直線状に延びる第1直線部(第1突出部)66aと、第1直線部66aの上端部に接続され半円状に湾曲する湾曲部(第2突出部)66bと、湾曲部66bの第1直線部66a側と反対側の端部から下側に直線状に延びる第2直線部66cと、を有している。
湾曲部66bは、幅方向に延びる軸線を中心に半円を描くように湾曲している。
第2直線部66cは、第1直線部66aよりも短く形成されていて、下端部が鋼材2よりも上側に配置され鋼材2と離間している。
拘束手段6Dは、第1鋼材21および第2鋼材22それぞれの上側フランジ24の上面に長さ方向全体にわたって複数接合されている。
【0041】
第4実施形態では、拘束手段6Dの湾曲部66bの内側に配力筋5が配置されることで、配力筋5が拘束されるように構成されている。配力筋5は、拘束手段6Dの第2直線部66cと鋼材2との間から湾曲部66bの内側に配置される。
【0042】
第4実施形態による鋼コンクリート複合構造1Dでは、拘束手段6Dの湾曲部66bの内側に配力筋5を配置することにより、配力筋5を鋼材2に容易に固定することができる。このため、第1実施形態と同様に、従来のような帯鉄筋やせん断補強筋を配置しなくても、主鉄筋4が孕んで座屈することなく十分な耐荷重を確保することができる。その結果、従来のように帯鉄筋やせん断補強筋を配置する必要がなく、施工が容易であるとともに工期を短縮することができる。
【0043】
また、第4実施形態では、鋼コンクリート複合構造1Dは、幅方向に延びる構造体11に採用されているが、壁体や柱体などの構造体に採用され、配力筋5が水平方向に延びる向きに配置される場合は、拘束手段6Dの第2直線部66cが第1直線部66aよりも上側に配置される形態とすることにより、配力筋5を拘束手段6Dに上側から引っ掛けるようにすれば配力筋5を容易に正位置に固定することができる。
【0044】
(第5実施形態)
図9に示すように、第5実施形態による鋼コンクリート複合構造1Eでは、拘束手段6Eが、鋼材2に接合された略L字形の鉤状の部材で構成されている。
図9では、スペーサおよび主鉄筋を省略している。
拘束手段6Eは、鋼材2に接合され鋼材2から上側に直線状に延びる第1板部(第1突出部)67aと、第1板部67aの上端部に接続され長さ方向の一方側に延びる第2板部(第2突出部)67bと、を有している。
第2板部67bは、鋼材2と離間している。
拘束手段6Eは、第1鋼材21および第2鋼材22それぞれの上側フランジ24の上面に長さ方向全体にわたって複数接合されている。
【0045】
第5実施形態では、拘束手段6Eの第2板部67bの下側に配力筋5が配置されることで、配力筋5が拘束されるように構成されている。配力筋5は、拘束手段6Eの第2板部67bと鋼材2との間から第2板部67bの下側に配置される。
【0046】
第5実施形態による鋼コンクリート複合構造1Eでは、拘束手段6Eの第2板部67bの下側に配力筋5を配置することにより、配力筋5を鋼材2に容易に固定することができる。このため、第1実施形態と同様に、従来のような帯鉄筋やせん断補強筋を配置しなくても、主鉄筋4が孕んで座屈することなく十分な耐荷重を確保することができる。その結果、従来のように帯鉄筋やせん断補強筋を配置する必要がなく、施工が容易であるとともに工期を短縮することができる。
【0047】
また、第5実施形態では、鋼コンクリート複合構造1Eは、幅方向に延びる構造体11に採用されているが、壁体や柱体などの構造体に採用され、配力筋5が水平方向に延びる向きに配置される場合は、拘束手段6Eの第2板部67bが第1板部67aよりも上側に配置される形態とすることにより、配力筋5を拘束手段6Eに上側から引っ掛けるようにすれば配力筋5を容易に正位置に固定することができる。
【0048】
以上、本発明による鋼コンクリート複合構造および鋼コンクリート複合構造の施工方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記の実施形態では、水平方向に延びる長尺の梁材や頂版を構成する構造体11に本発明による鋼コンクリート複合構造1A〜1Eを採用しているが、壁部や側壁、柱、また底版や床スラブなどに本発明による鋼コンクリート複合構造1A〜1Eを採用してもよい。
また、上記の実施形態では、鋼材2はI形鋼であるが、I形鋼以外の形鋼や鋼板などであってもよい。また、鋼材2に対して拘束手段6が取り付けられる部位は適宜設定されてよい。
また、上記の実施形態では、構造体11は、2つの鋼材21,22を有しているが、1つまたは3つ以上の鋼材2を有していてもよい。また、スペーサ3は2つの鋼材21,22に跨るように設けられているが、1つの鋼材2に対して設けられたり、3つ以上の鋼材2に跨るように設けられたりしていてもよい。さらに、スペーサ3は、鋼材21、22上ではなく、鋼材21,22間のコンクリート底版部71の上に設けられていてもよく、要は主鉄筋4が配置できる支えになるものであればどのような形状でもよい。また、スペーサを設けずに主鉄筋4が鋼材21,22に沿って設けられていてもよい。
【0049】
また、上記の第1実施形態および第2実施形態では、2つのネジスタッド61,61(61B,61B)の間に1つの配力筋5が配置されているが、2つのネジスタッド61,61(61B,61B)の間に2つ以上の配力筋5が配置されていてもよい。また、上記の第3実施形態では、1つのネジスタッド61Cの側方に1つの配力筋5が配置されているが、1つのネジスタッド61Cの側方に2つ以上の配力筋5が配置されていてもよい。
【0050】
また、第1〜第3実施形態の拘束手段6,6B,6Cのネジスタッド61,61B,61Cや、第4、第5実施形態の拘束手段6D,6Eは、鋼材2に予め接合されているが、現場にて接合されてもよい。また、配力筋5を鋼材2に拘束するための拘束手段は、上記以外の形態であってもよい。例えば、U字形状で両端部にネジ山が形成されたU字形部材と、U字形部材の両端部に螺合可能な一対のナットとを有し、鋼材2に形成された孔部にU字形部材の両端部を挿通し、U字形部材と鋼材2との間に配力筋5を挟んだ状態でU字形部材の両端部にナットを締結して配力筋5を拘束するように構成されていてもよい。
【0051】
また、上記の実施形態では、主鉄筋配置工程の後に配力筋配置工程を行っているが、主鉄筋4と配力筋5とをメッシュ状に組んで結束した後に、鋼材2に配置するようにして、主鉄筋配置工程および配力筋配置工程を同時に行うようにしてもよい。