(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ステータには、所定の前記端子同士を接続する複数の端子金具を有する端子ユニットが設けられて、前記端子ユニットの前記端子金具と前記端子との接続によって、各前記コイルが結線されることを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
前記ステータコアは、周方向に分割される複数の分割コアを接合して形成され、各前記分割コアに前記コイル及び前記端子が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の電動工具。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[ハンマドリルの説明]
図1は、電動工具の一例であるハンマドリルの縦断面図である。このハンマドリル1は、ブラシレスモータ3を収容する上下方向のモータハウジング2の上方に、出力部5を収容して前方へ延びる出力ハウジング4を備えている。モータハウジング2の下方には、コントローラ7を収容してその下方に2つのバッテリーパック8,8を装着可能なバッテリー装着部6が設けられている。9は、出力ハウジング4の後方からバッテリー装着部6に跨がって上下方向に設けられるハンドルである。
ブラシレスモータ3は、ステータ10と、ステータ10の内側にロータ11を備えたインナロータ型で、ロータ11の回転軸12を上向きにした姿勢でモータハウジング2内に収容されている。ステータ10は、ステータコア13と、ステータコア13の上下に設けられる上インシュレータ14及び下インシュレータ15と、上下インシュレータ14,15を介してステータコア13の内側に巻回される複数のコイル16,16・・(
図2等)とを有している。ステータコア13は、複数の部品からなる分割構造となっているが、この分割構造の詳細については後述する。
【0010】
ロータ11は、軸心に位置する回転軸12と、回転軸12の周囲に配置される筒状のロータコア17と、ロータコア17の内部に配置される複数の永久磁石18,18・・とを有している。下インシュレータ15の下端には、ロータコア17の永久磁石18の位置を検出して回転検出信号を出力する回転検出素子(図示略)を搭載したセンサ回路基板19と、コイル16の端末を結線するための端子ユニット20とが固定されている。回転軸12は、下端がモータハウジング2の底部に設けた軸受21に支持され、上端が出力ハウジング4に設けた軸受22に支持されて出力ハウジング4内に突出し、上端に形成したピニオン23が、前後の中間軸24及びクランク軸25に設けたギヤ26,27とそれぞれ噛合している。また、軸受22の下側で回転軸12には、遠心ファン28が設けられ、その下方でモータハウジング2内にはバッフルプレート29が設けられている。
【0011】
出力部5は、前後方向に延びて回転可能な筒状のツールホルダ30を有し、ツールホルダ30の後端に外装したベベルギヤ31が、中間軸24の上端に設けたベベルギヤ32と噛合している。ツールホルダ30内には、シリンダ33が差し込み装着されて、シリンダ33内に設けたピストン34が、コネクティングロッド35を介して、クランク軸25の上端で偏心位置に設けたクランクピン36と連結されている。
また、シリンダ33内でピストン34の前方には、空気室37を介してストライカ38が前後移動可能に収容されて、その前方でツールホルダ30内には、インパクトボルト39が前後移動可能に収容されている。ここではツールホルダ30の先端からドリルビット等の先端工具を差し込んだ際には、先端工具の後端がインパクトボルト39を、シリンダ33前方の受けリング40に当接する位置まで後退させて後端をシリンダ33内に突出させる。41は、ツールホルダ30の前端に外装されて先端工具の着脱操作を行う操作スリーブである。
【0012】
一方、バッテリー装着部6内には、バッテリーパック8,8を左右方向からスライド装着可能な2つの端子台42,42が、前後に配置されて、その上方にコントローラ7が収容されている。コントローラ7は、図示しないマイコンやスイッチング素子を搭載した制御回路基板を備えて、バッテリー装着部6の内面に立設された倒コ字状のリブ43,43によって前後方向に支持されている。コントローラ7の前方には、LEDを用いてツールホルダ30の前方を照射するライト44が設けられ、バッテリー装着部6の前後には、装着されたバッテリーパック8,8の前後を覆うガード板45,45が下向きに突出形成されている。
ハンドル9内には、コントローラ7と電気的に接続されるスイッチ46とコンデンサ47とが設けられて、スイッチ46から前方へ突出するプランジャには、スイッチレバー48が設けられている。
【0013】
よって、このハンマドリル1においては、ハンドル9を把持した手でスイッチレバー48を押し込んでスイッチ46をON動作させると、バッテリーパック8からブラシレスモータ3への給電がなされて回転軸12が回転する。すなわち、コントローラ7のマイコンが、センサ回路基板19の回転検出素子から出力されるロータ11の永久磁石18の位置を示す回転検出信号を得てロータ11の回転状態を取得し、取得した回転状態に応じて各スイッチング素子のON/OFFを制御し、ステータ10の各コイル16に対し順番に電流を流すことでロータ11を回転させる。
こうして回転軸12が回転すると、ギヤ26を介して中間軸24が減速して回転し、ベベルギヤ32,31を介してツールホルダ30を先端工具と共に回転させる。同時に、ギヤ27を介してクランク軸25が減速して回転し、コネクティングロッド35を介してピストン34がシリンダ33内で往復動し、空気室37を介してストライカ38を前後動させる。よって、ストライカ38がインパクトボルト39を介して先端工具を打撃する。
【0014】
また、コントローラ7の左右両側となるバッテリー装着部6の左右の側面には、図示しない吸気口が形成され、遠心ファン28の左右両側となるモータハウジング2の左右の側面には、図示しない排気口が形成されて、吸気口とブラシレスモータ3との間にコントローラ7が配置されている。よって、回転軸12の回転に伴う遠心ファン28の回転により、吸気口から吸い込まれた空気が、まずコントローラ7に接触してコントローラ7を冷却した後、モータハウジング2内を通ってブラシレスモータ3を冷却する。そして、バッフルプレート29を介して排気口から排出される。
【0015】
[ステータの構造の説明]
次に、ステータ10の構造について詳述する。
図2は、センサ回路基板19及び端子ユニット20を取り付ける前のステータ10の斜視図で、
図1とは上下が逆となっている。ステータコア13は、内周に、中心へ向けて平面視T字状のティース52,52・・を複数(ここでは12個)突出させた筒状体となっているが、ここでは
図3に示すように、筒状体の一部をなす円弧部51と、その円弧部551の内面から内側へ突出するティース52とからなる分割コア50,50・・に12分割されて、周方向に隣接する分割コア50,50同士の接合によってステータコア13が形成されるようになっている。分割コア50,50同士の接合部となる円弧部51の両端には、一端が平面視三角形状に突出する凸部53、他端が平面視V字状に凹む凹部54が、それぞれ上下方向の全長に亘って形成されている。この凸部53と凹部54とは互いに嵌合可能な形状である。また、円弧部51の周方向の中央部には、上下に貫通する貫通孔55が形成されている。
【0016】
この分割コア50は、同形状に打ち抜いた電磁鋼板(例えば板厚t=0.25mm以下)を積層して、樹脂によって一体成形してなる。このように板厚の薄い電磁鋼板を使用すれば、渦電流による損失の低減に繋がる。
一体成形される樹脂成形部Rは、
図4(A)に示すように、円弧部51の両端の凸部53及び凹部54と、ティース52の突出端と、貫通孔55との部分を除いて分割コア50の外周を所定の肉厚で被覆している。但し、ティース52の周方向の左右両面で樹脂成形部Rの内側には、図示しない絶縁紙が介在されて、二重の絶縁が図られている。
この樹脂成形部Rのうち、円弧部51の上側に位置する部分は、上インシュレータ14を構成する上絶縁部56となり、円弧部51の下側に位置する部分は、下インシュレータ15を構成する下絶縁部57となっている。すなわち、上下インシュレータ14,15もステータコア13と同様に12分割される。
【0017】
上下絶縁部56,57において、ティース52側の内縁には、コイル16の外側を受ける上外リブ58と下外リブ59とがそれぞれ立設されて、下外リブ59の外側には、一対の端子板60,60が設けられている。この端子板60は、両端を下向きとした倒コ字状で、円弧部51の両端側の端部60aはその内側の端部60bよりも下方へ延びるように長く形成されている。さらに、下外リブ59の中央には、下方へ開放するスリット61が形成されて、スリット61の下側には、幅が広くなる拡開部62が形成されている。樹脂成形部Rにおけるティース52の突出端の上下には、コイル16の内側を受ける上内リブ63と下内リブ64とがそれぞれ立設されている。
【0018】
こうして樹脂で一体成形した分割コア50に、それぞれティース52に対してマグネットワイヤを巻回してコイル16を形成する。そして、コイル16の両端末16a,16aを下絶縁部57の両側から外に引き出してコイル16を加圧整形した後、両端末16a,16aを左右の端子板60,60にヒュージングやはんだ付け等で接続する。すると、
図4(B)に示すように、分割コア50に上下絶縁部56,57を介してコイル16が巻回され、端末16a,16aが端子板60,60に固定された分割体65が得られる。
このように、各分割コア50を、外面を被覆する樹脂成形部Rによって形状を固定するようにしているので、電磁鋼板の一体化と共に絶縁も同時になされる。また、各分割コア50にコイル16をそれぞれ形成しているので、マグネットワイヤの巻回が同じタイミングで容易に行える。
【0019】
この分割体65を、各分割コア50の円弧部51が周方向に繋がるように12個周方向に並べて、隣接する凸部53と凹部54同士を嵌合させて溶接等で接合する。すると、
図5に示すように、各分割体65,65・・が周方向に繋がった状態となる。この状態で、各コイル16の外周面と、分割コア50,50同士の接合部分(凸部53と凹部54との嵌合部分の上下両端)とにワニス66,67を塗布すれば、
図2に示すステータ10が得られる。このワニス66,67は、コイル16の絶縁及び保護を図るもので、接着剤であってもよく、特に分割コア50,50同士の接合部分に接着剤を塗布すれば、強度向上が期待できる。また、接着剤を高熱伝導性を有するもの(例えばエポキシ樹脂を主成分とする樹脂接着剤)とすれば、コイル16に発生する熱を放熱しやすくなり、耐熱性能も向上する。
【0020】
このステータ10の下インシュレータ15に、
図6に示すようにセンサ回路基板19が取り付けられる。センサ回路基板19は、下インシュレータ15の各下外リブ59で囲まれる内側空間に収容可能な外径を有し、中心にロータ11の貫通孔が形成されるリング状で、外周には、放射状に3つの取付片70,70・・が、周方向に等間隔で突設されている。この取付片70が、対応する位置の下外リブ59に対し、スリット61の拡開部62に係合して外側へ突出した状態となり、先端に設けた透孔71とその真下に位置する分割コア50の貫通孔55との間に固定用ピン72が圧入される。これにより、センサ回路基板19は、固定用ピン72,72・・を介して分割コア50に支持される。
【0021】
[固定用ピンによるセンサ回路基板の固定構造の効果]
このように、センサ回路基板19を、ステータコア13に直接固定される複数の固定用ピン72,72・・を介して固定するので、精度の低い樹脂製の下インシュレータ15を介さずにセンサ回路基板19をステータコア13に対して位置決めすることができる。よって、ロータ11の回転位置の検出が正確に行えて制御性が向上し、回転検出用の永久磁石が不要となる。
【0022】
端子ユニット20は、複数の端子金具を樹脂でインサート成形することで、
図7に示すように、センサ回路基板19と略同径で、中心にロータ11の貫通孔を有する絶縁リング74の外周に、端子金具75,75・・の二股端部76,76・・を、各分割体65の端子板60,60の位置に合わせて突出させた構造となっている。各二股端部76に、対応する端子板60の長い方の端部60aを挿入させてはんだ付け等で接続することで、ステータ10への取り付けがなされる。この端子金具75の形状や絶縁リング74内での配設形態を変えることで、コイル16の結線パターンが選択可能となる。また、隣接する分割体65,65間で逆巻きとなる接続も可能となる。
図8は、
図5において(1)〜(12)の数字で区別した12個のコイル16,16・・による結線パターンの例を示すもので、同図(A)はY結線4直列、(B)はY結線4並列、(C)はY結線2直列2並列、(D)はΔ結線4直列、(E)はΔ結線2直列2並列、(F)はΔ結線4並列となっている。
【0023】
なお、端子ユニット20には、
図9に示すように、回転軸12の軸受21を保持する軸受保持部77を一体に設けるようにしてもよい。モータハウジング2に軸受21の保持部を設けると、累積公差が出やすくなり、分割コア50を採用すれば、ステータ10とロータ11との同軸度が出にくくなるが、端子ユニット20を利用した軸受保持部77で軸受21を介して回転軸12を支持させれば、ステータ10とロータ11との同軸度を出しやすくなる。
【0024】
[ワニス又は接着剤による効果]
上記ステータ10によれば、ステータコア13を、周方向に分割される複数の分割コア50,50・・を接合して形成する一方、各コイル16及び分割コア50,50同士の接合部にワニス又は接着剤を塗布することで、一体性や密着性が増すことになる。よって、ステータコア13を分割構造として高占積率化や低コスト化を達成しつつ、耐久性や防塵性を確保することができる。
また、接着剤を塗布する場合、高熱伝導性を有する接着剤を採用すれば、コイル16の熱をステータ10に放熱しやすくなり、耐熱性が向上する。
一方、分割コア50を採用すると、励磁切替時に分割コア50,50間に発生する電磁力でびびり音が生じることがある。しかし、各コイル16及び分割コア50,50同士の接合部にワニス又は接着剤を塗布することで一体性や密着性が増すため、びびり音の低減効果が期待できる。
【0025】
[コイル毎に2つずつ設けられる端子による効果]
上記ステータ10によれば、コイル16を形成するマグネットワイヤと接続された端子板60,60が、各コイル16毎に2つ設けられているので、コイル16にテンションを掛けた状態でマグネットワイヤを端子板60,60に接続できる。よって、コイル16に緩みや撓みが発生するおそれがなく、断線やレアショートが防止される。
従って、この発明は、ステータコアが分割されないステータにおいても採用できる。
【0026】
[端子ユニットの効果]
ここでは、ステータ10に、所定の端子板60,60同士を接続する複数の端子金具75,75・・を有する端子ユニット20を設けて、端子ユニット20の端子金具75と端子板60との接続によって各コイル16が結線されるようにしている。すなわち、端子金具75の形状や配設形態が異なる複数の端子ユニット20を用意して、ステータコア13に各コイル16を巻回してマグネットワイヤを端子板60にそれぞれ接続した後、何れかの端子ユニット20を選択してステータ10に固定し、端子ユニット20の端子金具75と端子板60とを接続して、端子ユニット20を介して各コイル16を結線することができる。よって、端子ユニット20の使い分けによって、
図8のように直列、並列、Y結線、Δ結線を容易に選択することができる。このように端子ユニット20のみの変更で結線方法を変更できるため、同じ巻線設備を用いて、それぞれの製品仕様に応じて、製造時間(巻数)や製造性(線径)から最適な巻線仕様を選定可能となる。
従って、端子ユニットに係る発明は、ステータコアが分割されないステータにおいても採用できる。
また、端子ユニット20により、隣り合う同位相となる一方のコイル16のマグネットワイヤの始端と、他方のコイル16のマグネットワイヤの終端とを接続すれば、分数スロットが採用される場合でも、同じ巻線設備を用いて分割体65を作成できる。
【0027】
[分割コアの変更例(接合部の互い違い形状)]
分割コアは、
図10(A)に示す分割コア50Aのように、円弧部51の周方向の両端形状を、隣接する分割コア50A,50A同士で互い違いに噛み合うように、凸部53と凹部54との2種類の異なる形状が交互に表れる凹凸形状としてもよい。
この凹凸形状は、円弧部51となる一方の端部を凸、他方の端部を凹として両端形状が異なる電磁鋼板を、所定枚数毎に向きを変えて重ね合わせることで形成できる。
この分割コア50Aに対して同様に樹脂で、上絶縁部56及び下絶縁部57、上下外リブ58,59等を含む樹脂成形部Rを形成してコイル16を巻回し、両端末16a,16aを端子板60,60へ電気的に接続すれば、
図10(B)に示すように、分割コア50Aの円弧部51の周方向の両端が凹凸形状として露出する分割体65Aが得られる。
【0028】
この分割体65A,65A・・を、各分割コア
50Aの円弧部51が周方向に繋がるように12個周方向に並べて、凸部53と凹部54とを互い違いに嵌合させて溶接等で接合する。すると、
図5と同様に各分割体65A,65A・・が周方向に繋がった状態となる。この状態で、各コイル16の外周面と、分割コア50A,50A同士の接合部分とにワニス66,67を塗布すれば、
図2と同様のステータ10が得られる。センサ回路基板19や端子ユニット20も同様に固定すればよい。
【0029】
[接合部の互い違い形状による効果]
このように、各分割コア50Aにおける分割コア50A,50A同士の接合部となる端部を、凸部53と凹部54との2つの異なる形状が交互に表れる形態としたことで、分割コア50A,50Aの接合状態で端部同士が噛み合い、スラスト方向での強度や密着性を確保することができる。よって、ステータコア13を分割構造として高占積率化や低コスト化を達成しつつ、耐久性や防塵性を確保することができる。
なお、端部形状は三角形状の凸部53とV字状の凹部54とに限らず、半円状の凸部と凹部と、文字通りの凸部と凹部との嵌合とする等、2つの異なる形状で噛み合いが可能であれば、適宜変更できる。これは、
図3に示す分割コア50でも同様で、凸部53と凹部54とに限らず適宜変更できる。
【0030】
[分割コアの変更例(絶縁部の互い違い形状)]
このような互い違いの構造は、上下絶縁部56,57においても適用することができる。例えば
図11(A)に示すように、一方の分割コア50(50A)における上絶縁部56を、下側が隣接する分割コア50(50A)側へ伸び、上側が自身側へ後退する凹凸部78aとし、他方の分割コア50(50A)における上絶縁部56を、上側が隣接する分割コア側へ伸び、下側が自身側へ後退する逆の凹凸部78bとする。この場合も接合状態で凹凸部78a,78b同士が互い違いに噛み合うことになる。これは下絶縁部57においても同様である。
【0031】
[絶縁部の互い違い形状による効果]
このように、上下絶縁部56,57を分割コア50(50A)と同様に分割して各分割コア50(50A)にそれぞれ配置すると共に、上絶縁部56,56同士及び下絶縁部57,57同士の当接部を、互い違いに噛み合う凹凸形状とすれば、絶縁距離を長く確保することができる。また、ステータコア13を分割構造として高占積率化や低コスト化を達成しつつ、上下絶縁部56,57同士の一体化により、スラスト方向の強度を高めて耐久性や防塵性を確保することができる。
なお、凹凸形状はこれに限らず、凹部や凸部の数を増やしてもよいし、凹凸形状に限らず、
図11(B)に示すように、傾斜面79,79同士の当接とすることも可能である。
【0032】
[分割コアの変更例(固定用ピンの兼用)]
図12(A)に示す分割コア50Bのように、円弧部51の両端に、筒状のヒンジ部80と、ヒンジ部80が嵌合する凹面部81とを交互に形成して、隣接する分割コア50B,50Bの円弧部51の端部同士で、ヒンジ部80,80が交互に同軸上で重なるようにする。
このヒンジ部80及び凹面部81も、分割コア50Aと同様に、一方の端部をヒンジ部80の一部となるリング状、他方の端部を凹面部81の一部となる凹状として両端形状が異なる電磁鋼板を、所定枚数毎に向きを変えて重ね合わせることで形成できる。
そして、同図(B)に示すように、センサ回路基板19の固定用ピン72を、隣接する分割コア50B,50B間で同軸上に位置するヒンジ部80,80に跨がって貫通させることで、分割コア50B,50B同士を接合することができる。
【0033】
この場合、固定用ピン72,72を下方へ長く延ばして、センサ回路基板19の各取付片70を、
図13に示すように、下外リブ59のスリット61の拡開部62ではなく、分割コア50B,50B間に位置させて、各取付片70の透孔71に固定用ピン72をそれぞれ差し込んでセンサ回路基板19を取り付ければよい。
なお、
図13では、各分割コア50Bを樹脂成形部Rで固定してなる分割体65Bにおいて、下絶縁部57に設けられる一方の端子板60は、長い方の端部60aを有しないL字状となって、他方の端子板60の長い方の端部60aのみに端子ユニット20の端子金具75の二股端部76が電気的に接続されている。また、隣接する分割体65B,65Bのコイル16,16は、固定用ピン72の外側を回り込む渡り線16bによって繋がった状態で、固定用ピン72を挟んで隣り合うコ字状の端子板60とL字状の端子板60とにそれぞれ電気的に接続されて結線されている。
【0034】
[固定用ピンの兼用による効果]
このように、固定用ピン72を、隣接する2つの分割コア50B,50Bに跨がって固定すれば、固定用ピン72を分割コア50B,50B同士の連結とセンサ回路基板19の取付とに兼用できる。
特に、
図12(B)のように固定用ピン72によって連結した状態で分割コア50B,50B間の間隔を広げてティース52,52間の間隔を広く取れば、樹脂成形部Rを形成した後のコイル16,16の巻回がしやすくなり、マグネットワイヤを切断せずに巻回することができ、端子板の数を減らすことができる。また、
図13の結線構造では、固定用ピン72をコイル16,16間の渡り線16bの位置決めにも使用できる。
【0035】
そして、上インシュレータ15の端面における上外リブ58の外側には、金属製で円盤状の結合リング82が設けられて、各固定用ピン72の上端を結合リング82に圧入等で結合している。この場合、固定用ピン72が結合リング82によって一体化されるので、分割コア50B,50B・・の一体性が高まる。
なお、
図12のように固定用ピン72を分割コア50B,50Bの連結に用いる場合、ヒンジ部80と凹面部81との内側には、円弧部51,51同士が周方向に連続状となる位置よりも回り過ぎないように、互いに当接して回り過ぎを規制するストッパ面80a,81aを設けることが望ましい。
【0036】
[分割コアの変更例(固定及び放熱構造)]
分割コア50(50A,50B)の固定は、樹脂による一体成形に限らず、
図14に示すように、外周を圧粉磁心(鉄等の磁性体と樹脂との混合材)83で被覆したり、
図15に示すように、焼き嵌め又は冷やし嵌めされる筒状で金属製の固定部材84で固定したりすることによっても可能である。このような圧粉磁心83や固定部材84を採用すれば、分割コア50(50A,50B)の固定が容易に行える。
特に、固定部材84の外周に、突起部として、上下に延びる複数の突条85,85・・を、周方向に等間隔で設けるようにすれば、コイル16の発熱を固定部材84を介して効果的に放熱できる。また、各分割コア50(50A,50B)の外周と固定部材84との間にワニス又は接着剤を介在させて一体性を向上させるようにしてもよい。固定部材も円筒状に限らず、角筒状としたり、外周面の一部に凹みがあったりしてもよい。
【0037】
この突条85は、
図16に示すように、ステータコアの軸方向に対して傾斜させることもできる。このようにすれば突条85を含む固定部材84の表面積(冷却面積)が大きくなって放熱効果の向上に繋がる。なお,突条に代えて、複数の突起としてもよい。
また、突条85や突起を、遠心ファン28による冷却風を整流するように配置すれば、冷却風による騒音を低減することができる。
なお、下側の軸受21を保持する軸受保持部77は、端子ユニット20でなく固定部材84に設けることもできる。
【0038】
さらに、
図17に示すように、分割コア50(50A,50B)の円弧部51の両端は、ステータ10の軸方向に沿った直線状に形成する構造でなく、軸方向に対して傾斜させて、傾斜端縁51a,51a同士が凹凸嵌合で接合される構造であっても差し支えない。このように接合部を傾斜させれば、スラスト方向での一体性が高まる。
【0039】
[分割コアの変更例(放熱構造)]
図18に示すように、各分割コア50(50A,50B)の円弧部51の外周面に、複数の突起部86,86・・を設けることができる。この突起部86は、上下方向(電磁鋼板の積み方向)に等間隔で配置される列が、周方向に等間隔をおいて複数設けられるが、周方向に隣接する列同士では、突起部86,86が交互に上下方向へ位相がずれるように配置されている。但し、円弧部51の両端では、突起部86a,86a・・が上下方向へ連続状に並ぶように形成されて、各円弧部51の端部同士で突起部86a,86aの列が隣接している。この隣接する突起部86a,86aの列同士を、溶接や別体の挟持部材等で接合することで、分割コア50(50A,50B)同士の接合が可能となっている。
各突起部86は、分割コア50(50A,50B)を形成する電磁鋼板にそれぞれ突起部86,86aの一部を形成することで積層状態で形成されるようにしてもよいし、別体の突起部86,86aを円弧部51へ接合するようにしてもよい。
【0040】
[突起部による放熱構造の効果]
このように、各分割コア50(50A,50B)の外周面に、複数の突起部86,86aを設けたことで、コイル16の発熱を効果的に放熱できる。
特にここでは、突起部86,86aを電磁鋼板の積み方向に沿って等間隔で配置しているので、放熱効果を均等に得ることができる。
また、突起部86aは、分割コア50(50A,50B)同士が接合される両端では直線状に並設されて、隣接する分割コア50(50A,50B)間の突起部86aの列同士を溶接等することで分割コア50(50A,50B)同士を接合しているので、放熱用の突起部86aを利用して分割コア50(50A,50B)同士が接合できる合理的な構造となる。
なお、突起部86を遠心ファン28による冷却風を整流するように配置すれば、冷却風による騒音を低減することができる。
【0041】
[分割形態の変更例]
上記形態や変更例における分割コア50(50A,50B)は、ステータコア13を周方向に分割する円弧部51とティース52とからなる構造であるが、分割形態はこれに限らない。例えば
ステータコア13を、
図19に示す円筒状の外周部90と、
図20に示す複数のティース91,91・・とに分割することも可能である。ここでは外周部90の内面でティース91の配置位置に、上下に貫通するアリ溝92,92・・を形成し、各ティース91の外端に、アリ溝92に嵌合するアリほぞ93を形成して、アリほぞ93に、固定用ピン72の貫通孔55を形成している。
一方、上下絶縁部56,57を含む樹脂成形部Rは、
図21(A)に示すように、ティース91がアリほぞ93側から挿入される開口R1を有してティース91を覆い、上下外リブ58,59からは下絶縁部57のみが外側へ突出する筒状で一体成形されている。この樹脂成形部Rにコイル16が巻回されて両端末16a,16aが端子板60,60に接続された状態で形成されている。
【0042】
よって、同図(B)に示すように、この樹脂成形部Rに内側からティース91を、アリほぞ93を先に差し込んで接合させれば、
図22に示すように、アリほぞ93が外側に突出した分割体94,94・・が得られる。この各分割体94のアリほぞ93を、外周部90のアリ溝92にそれぞれ下方から嵌合させれば、
図23に示すように、外周部90に各分割体94が接合されてステータコア13となるステータ10が得られる。
【0043】
[外周部とティースとの分割形態の効果]
このように、ステータコア13を、円筒状の外周部90と、その外周部90から内側に突出して各コイル16が巻回される複数のティース91とに分割して、外周部90とティース91との接合によって形成したことで、連続した外周部90を用いる分、強度を維持することができる。
特にここでは、予めコイル16を巻回した樹脂成形部Rにティース91を挿入して外周部90に接合するので、組み付けが容易に行える。
【0044】
なお、アリ溝とアリほぞとの関係は、上記形態と逆にして、外周部にアリほぞを、ティースにアリ溝を形成することもできる。
また、上記分割形態では、ティース91をそれぞれ独立して形成しているが、
図24に示すように、隣接するティース91,91の突出端95,95の間に、両突出端を繋ぐ繋ぎ部96,96・・を設けて、全てのティース91,91・・を突出端95,95同士で固定して一体化してもよい。この場合、繋ぎ部96も含めた形状で電磁鋼板を形成すればよい。
さらに、
図25に示すように、各樹脂成形部Rにおいて、隣接するティース91,91の突出端95,95間に、上下内リブ63,64間を接続する接続部97,97を一体に設けて、一体成形樹脂である接続部97を介して全ての樹脂成形部Rを一体化することもできる。
このようにティース91や樹脂成形部Rを一体化すれば、外周部90への組み付けがしやすくなり、管理も容易となる。
【0045】
一方、このような分割形態では、別個に形成することで外周部90とティース91との軸方向の長さを異ならせることができる。
図26は、外周部90をティース91よりも一端側へ長く形成した例を示すもので、このように外周部90をティース91よりも軸方向に長くすれば、3次元磁気回路が形成できて設計の自由度が増し、小型軽量化に繋がる。
また、これらの外周部は円筒状に限らず、外周面や内周面が非円形(多角形や一部に凹凸)であってもよい。
【0046】
その他、各発明において、コントローラに設けたスイッチング素子を、熱結合部材を介してステータコアの突起部や固定部材の突条に熱結合させたり、センサ回路基板にスイッチング素子を設けて同様に熱結合部材を介してステータコアの突起部や固定部材の突条に熱結合させたりして放熱を図ってもよい。
また、コイルを形成するマグネットワイヤは、平角線を用いてもよい。
さらに、コイル(スロット)の数は12に限らず、これ以外の数であっても差し支えない。勿論ハンマドリルに限らず、ブラシレスモータを駆動源として用いるものであれば、インパクトドライバやマルノコ等の他の電動工具であっても上記各発明は適用可能である。