(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記水硬性組成物として、前記水硬性成分100質量部に対して、前記炭酸カルシウム粉末を3質量部〜15質量部含む水硬性組成物を用いる、請求項1に記載のコンクリート床構造体の施工方法。
前記細骨材として、JIS A 1102に規定される篩い試験における212μmの残分が10質量%未満である細骨材を用いる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコンクリート床構造体の施工方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態のコンクリート床構造体の施工方法は、コンクリートを用いた建築物一般に適用されるが、なかでも、病院、駅、工場、倉庫などの高い耐久性が求められる建築物に対して特に好適に適用される。
【0015】
(プライマー層形成工程)
本実施形態では、まず、コンクリート構造体からなる床本体の上にプライマーを塗布してプライマー層を設けるプライマー層形成工程を行う。
【0016】
プライマーとしては、水系の樹脂エマルジョンが用いられる。水系樹脂エマルジョンを構成している樹脂の主成分としては、例えば、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、酢酸ビニル−ベオバ共重合樹脂等が挙げられる。
【0017】
プライマーの固形分濃度は、7質量%〜25質量%が好ましく、9質量%〜23質量%がより好ましく、10質量%〜20質量%がさらに好ましい。プライマーの塗布量は、30g/m
2〜100g/m
2が好ましく、33g/m
2〜90g/m
2がより好ましく、35g/m
2〜80g/m
2がさらに好ましい。
【0018】
プライマーの塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、刷毛やブラシを用いて塗布する方法等が挙げられる。
【0019】
プライマーの塗工厚みは、30μm〜100μmであることが好ましく、33μm〜90μmであることがより好ましく、35μm〜80μmであることがさらに好ましい。プライマーの塗工厚みを上記範囲とすることにより、コンクリート構造体からなる床と補修モルタル硬化体層との接着がより確実となる。
【0020】
(補修モルタル硬化体層形成工程)
次に、プライマー層の上に、水硬性組成物を含む補修モルタルを施工して補修モルタル硬化体層を設ける補修モルタル硬化体層形成工程を行う。補修モルタル硬化体層形成工程は、プライマーの塗布が完了してから1時間以上経過した後に実施することが好ましい。
【0021】
具体的には、補修モルタル硬化体層形成工程においては、まず、水硬性組成物と水とをハンドミキサー等を用いて混練することにより補修モルタルを調製する。水硬性組成物と水との混練時間は、水硬性組成物と水とが均質に混練される観点から、2分〜5分であることが好ましく、3分〜4分であることがより好ましい。
【0022】
次に、プライマー層の上に補修モルタルを施工し、乾燥させることにより、補修モルタル硬化体層を形成する。
【0023】
補修モルタルの施工厚みは、0.3mm〜10mmであり、好ましくは0.4mm〜7mmであり、より好ましくは0.5mm〜5mmである。塗工厚みを上記範囲とすることにより、表面の平滑性に優れた補修モルタル硬化体層を形成することができる。
【0024】
補修モルタルを調製する際に添加する水の量を調整することにより、補修モルタルの流動性状、コテ塗り作業性、すり合わせ施工性、保形性等を調整することができる。
【0025】
補修モルタルにおいて、水硬性組成物(S)と水(W)との質量比(W/S)は、好ましくは0.15〜0.26であり、より好ましくは0.16〜0.24であり、さらに好ましくは、0.17〜0.22であり、さらに好ましくは0.175〜0.21である。質量比(W/S)を、上記好ましい範囲とすることで、優れた鏝塗り作業性と、すり合わせ施工性とを得ることができ、さらに強度特性に優れたモルタルの硬化体表面を得ることができる。
【0026】
補修モルタルの鏝塗り作業性や保形成の指標としてフロー値がある。補修モルタルのフロー値とは、JIS A 1171に準拠したフロー試験で測定したフロー値である。補修モルタルのフロー値は、好ましくは150mm〜230mmであり、より好ましくは160mm〜220mmであり、さらに好ましくは170mm〜215mmである。補修モルタルのフロー値を上記範囲とすることにより、補修モルタルの施工の容易さ及び適正な鏝塗り作業性が得られ、良好な保形性を実現することができる。
【0027】
補修モルタル硬化体層のJIS R 5201に準拠した材齢7日の曲げ強度は、好ましくは6N/mm
2以上であり、より好ましくは7N/mm
2以上であり、さらに好ましくは8N/mm
2以上である。補修モルタル硬化体層のJIS R 5201に準拠した材齢28日の曲げ強度は、好ましくは8N/mm
2以上であり、より好ましくは9N/mm
2以上であり、さらに好ましくは10N/mm
2以上である。
【0028】
補修モルタル硬化体層のJIS R 5201に準拠した材齢7日の圧縮強度は、好ましくは30N/mm
2以上であり、より好ましくは35N/mm
2以上であり、さらに好ましくは40N/mm
2以上である。補修モルタル硬化体層のJIS R 5201に準拠した材齢28日の圧縮強度は、好ましくは35N/mm
2以上であり、より好ましくは40N/mm
2以上であり、さらに好ましくは45N/mm
2以上である。
【0029】
補修モルタル硬化体層の耐摩耗性(耐久性)の指標として、摩耗損厚がある。摩耗損厚(mm)とは、JIS K 7204『摩耗輪によるプラスチックの摩耗試験方法』に準拠し、デーバー式摩耗試験機を用いて測定し、摩耗輪はGC−150H、荷重250g、2000回転での摩耗損失の深さをミクロンゲージにて測定することができ、摩耗損失の深さを摩耗損厚(mm)という。
【0030】
補修モルタル硬化体層の材齢7日の摩耗損厚は、好ましくは0.25mm以下であり、より好ましくは0.20mm以下であり、さらに好ましくは0.15mm以下であり、さらに好ましくは0.13mm以下である。補修モルタル硬化体層の材齢7日の摩耗損厚を上記範囲とすることにより、補修モルタル硬化体層の耐久性をさらに向上することができる。
【0031】
(表面処理層形成工程)
次に、補修モルタル硬化体層の上に、表面処理剤を塗布して表面処理層を設ける表面処理層形成工程を行う。表面処理層形成工程は、補修モルタルの塗工が完了してから、0.8時間以上経過した後に行うことが好ましく、0.9時間以上経過した後に行うことがより好ましく、1.0時間以上経過した後に行うことがさらに好ましい。
【0032】
表面処理層形成工程おいて塗布する表面処理剤は、水系の樹脂エマルジョンである。表面処理剤として好適に用いられる水系の樹脂エマルジョンとしては、例えば、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、酢酸ビニル−ベオバ共重合樹脂等を主成分とする樹脂のエマルジョンが挙げられる。なかでも、スチレン−アクリル共重合樹脂を主成分とする水系樹脂エマルジョンがより好ましく用いられる。
【0033】
表面処理剤として用いられる水系樹脂エマルジョンの固形分濃度は、8質量%〜25質量%であり、好ましくは、10質量%〜25質量%であり、より好ましくは11質量%〜23質量%であり、さらに好ましくは12質量%〜20質量%である。
【0034】
表面処理剤として用いられる水系樹脂エマルジョンの塗布量は、50g/m
2〜75g/m
2であり、好ましくは、55g/m
2〜75g/m
2であり、より好ましくは、57g/m
2〜73g/m
2であり、さらに好ましくは、60g/m
2〜70g/m
2である。
【0035】
形成された表面処理層における固形成分量は、好ましくは4g/m
2〜18.75g/m
2であり、より好ましくは5.5g/m
2〜18.75g/m
2であり、さらに好ましくは6.27g/m
2〜16.79g/m
2であり、さらに好ましくは7.2g/m
2〜14g/m
2である。
【0036】
(水硬性組成物)
次に、補修モルタル硬化体層形成工程において用いる補修モルタルに含まれる水硬性組成物について説明する。
【0037】
水硬性組成物は、ポルトランドセメント、アルミナセメント、石膏、及び水酸化カルシウム粉末を含む水硬性成分と、炭酸カルシウム粉末と、細骨材と、再乳化形樹脂粉末と、混和剤とを含む。
【0038】
補修モルタルの流動性や速硬性を向上するために、水硬性組成物は、水硬性成分として、ポルトランドセメント20質量%〜60質量%、アルミナセメント20質量%〜60質量%、石膏10質量%〜30質量%、及び水酸化カルシウム粉末1質量%〜8質量%を含み、好ましくは、ポルトランドセメント25質量%〜50質量%、アルミナセメント26質量%〜51質量%、石膏14質量%〜28質量%、及び水酸化カルシウム粉末2質量%〜7質量%を含み、より好ましくは、ポルトランドセメント30質量%〜40質量%、アルミナセメント32質量%〜42質量%、石膏17質量%〜27質量%、及び水酸化カルシウム粉末3質量%〜6質量%を含む。
【0039】
(ポルトランドセメント)
ポルトランドセメントとしては、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント及び耐硫酸塩ポルトランドセメント等を用いることができる。なかでも、速硬性の観点から、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント又は超早強ポルトランドセメントがより好ましく用いられる。
【0040】
ポルトランドセメントのブレーン比表面積は、好ましくは3000cm
2/g〜6000cm
2/gであり、より好ましくは4000cm
2/g〜5000cm
2/gであり、さらに好ましくは4200cm
2/g〜4800cm
2/gである。ポルトランドセメントのブレーン比表面積を上記範囲とすることにより、高強度なモルタル硬化体が得られやすくなり、また、モルタルの凝結時間を好適にすることができる。なお、ポルトランドセメントのブレーン比表面積は、JIS R 5201に準じて求められる。
【0041】
(アルミナセメント)
アルミナセメントの主成分は、モノカルシウムアルミネート(CA)である。本実施形態においては、どのようなアルミナセメントであっても好適に用いられる。なかでも、2000cm
2/g〜6000cm
2/gのブレーン比表面積を有するアルミナセメントがより好ましく用いられる。なお、アルミナセメントのブレーン比表面積は、JIS R 2521に準じて求められる。
【0042】
(石膏)
石膏としては、例えば、二水石膏、半水石膏及び無水石膏等が挙げられ、排煙脱硫やフッ酸製造工程等で副産される石膏、又は天然に産出される石膏のいずれも使用することができる。自己流動性モルタルの流動性やモルタル硬化体の強度を高める観点から、無水石膏がより好ましく用いられる。
【0043】
石膏のブレーン比表面積は、2000cm
2/g〜7000cm
2/gであることが好ましい。石膏のブレーン比表面積が上記範囲であることにより、水硬性組成物の原料コストを低減することができる。なお、石膏のブレーン比表面積は、JIS R 5201に準じて求められる。
【0044】
(水酸化カルシウム粉末)
水酸化カルシウム粉末としては、特に限定されず、例えば、市販の水酸化カルシウム粉末を用いることができる。
【0045】
水酸化カルシウム粉末のブレーン比表面積は、好ましくは、5000cm
2/g〜30000cm
2/g、より好ましくは、10000cm
2/g〜25000cm
2/gである。
【0046】
(炭酸カルシウム粉末)
炭酸カルシウム粉末としては、例えば、石灰石を粉砕したものが好適に用いられるが、炭酸カルシウムを主成分とするものであれば特に限定されず、例えば、寒水石や廃コンクリート等を粉砕したもの、化学的に精製した炭酸カルシウム等も好適に用いられる。
【0047】
炭酸カルシウム粉末の含有量は、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは3質量部〜15質量部であり、より好ましくは5質量部〜13質量部であり、さらに好ましくは6質量部〜10質量部である。
【0048】
(細骨材)
細骨材としては、例えば、珪砂、石灰石砂、川砂、海砂、山砂、砕砂等が好ましく用いられる。
【0049】
補修モルタルの塗工厚を薄くし、補修モルタル硬化体層の表面の平滑度を向上する観点からは、細骨材の最大粒子径(篩い残分が1%以下の篩いの径)が300μm以下であることが好ましく、JIS A 1102に規定される篩い試験における212μmの残分が10質量%未満であることがより好ましい。
【0050】
細骨材の含有量は、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは50質量部〜200質量部であり、より好ましくは80質量部〜150質量部であり、さらに好ましくは100質量部〜130質量部である。
【0051】
(再乳化形樹脂粉末)
水硬性組成物は、補修モルタル硬化体層とプライマー層との接着性の向上や、補修モルタル硬化体層の表面強度の向上等を目的として、再乳化形樹脂粉末を含有する。
【0052】
再乳化形樹脂粉末としては、アクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、酢酸ビニル、バーサチック酸ビニルエステルなどの成分を一種単独又は二種以上含む樹脂を主成分として含むものが好ましく用いられる。なかでも、高い耐久性の長期持続性を実現する観点から、再乳化形樹脂粉末としては、酢酸ビニル−アクリル共重合体がより好ましく用いられる。
【0053】
再乳化形樹脂粉末の含有量は、水硬性成分100質量部に対して、5質量部〜20質量部であり、好ましくは7質量部〜17質量部であり、より好ましくは8質量部〜15質量部である。
【0054】
(混和剤)
水硬性組成物は、混和剤として、減水剤と、無機酸のリチウム塩及びカリウム塩の少なくとも一方である凝結促進剤と、有機酸及び無機酸の少なくとも一方のナトリウム塩である凝結遅延剤と、消泡剤とからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。
【0055】
混和剤の含有量は、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは0.005質量部〜3質量部であり、より好ましくは0.007質量部〜2質量部であり、さらに好ましくは0.01質量部〜1.5質量部である。
【0056】
減水剤としては、例えば、メラミンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物、カゼイン、カゼインカルシウム、ポリカルボン酸系減水剤、ポリエーテル系減水剤及びポリエーテルポリカルボン酸系減水剤等の減水剤を用いることができる。
【0057】
減水剤の含有量は、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは0.005質量部〜0.5質量部であり、より好ましくは0.007質量部〜0.3質量部であり、さらに好ましくは0.01質量部〜0.1質量部である。減水剤の含有量を上記範囲とすることにより、作業性に優れ、かつ、塗工厚みが薄く、表面の平滑性に優れた補修モルタル硬化体層を実現することができる。
【0058】
凝結促進剤としては、例えば、炭酸リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、亜硝酸リチウム、炭酸カリウム、硫酸カリウム、硝酸カリウム、亜硝酸カリウム等を用いることができる。なかでも、炭酸リチウム又は硫酸カリウムが好ましく、炭酸リチウム及び硫酸カリウムを併用することがより好ましい。
【0059】
凝結促進剤の含有量は、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは0.05質量部〜2質量部であり、より好ましくは0.07質量部〜1.5質量部であり、さらに好ましくは0.1質量部〜1質量部である。凝結促進剤の含有量を上記範囲とすることにより、補修モルタルの速硬性を向上させることができる。
【0060】
凝結遅延剤としては、例えば、リン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、オキシカルボン酸(グルコン酸、グルコヘプトン酸、クエン酸、酒石酸)ナトリウム、アミノカルボン酸(グルタミン酸)ナトリウム、重炭酸カルシウム、リグニンスルホン酸ナトリウム等を用いることができる。なかでも酒石酸ナトリウム及び重炭酸ナトリウムを併用することが好ましい。
【0061】
凝結遅延剤の含有量は、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは0.2質量部〜3質量部であり、より好ましくは0.4質量部〜2質量部であり、さらに好ましくは0.5質量部〜1.5質量部である。凝結遅延剤の含有量を上記範囲とすることにより、補修モルタルを塗工する際の作業時間を好適に確保することができる。
【0062】
消泡剤としては、シリコン系消泡剤、アルコール系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤などの合成物質又は植物由来の天然物質など、公知のものを用いることができる。
【0063】
消泡剤の添加量は、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは0.05質量部〜2質量部であり、より好ましくは0.07質量部〜1.5質量部であり、さらに好ましくは0.1質量部〜1質量部である。消泡剤を用いることにより、より好ましい消泡効果を得ることができる。
【0064】
(コンクリート床構造体)
本実施形態においては、上記施工方法でコンクリート床構造体が施工される。コンクリート床構造体は、コンクリート構造体からなる床本体と、床本体の上に設けられたプライマー層と、プライマー層の上に設けられた補修モルタル硬化体層と、補修モルタル硬化体層の上に設けられた表面処理層とを備える。本実施形態におけるコンクリート床構造体は、上記施工方法で施工されるため、優れた耐久性を有している。具体的には、補修モルタル硬化体層が高強度を有しており、表面処理層が補修モルタル硬化体層から剥離しにくい。
【0065】
コンクリート床構造体における補修モルタル硬化体層の材齢7日における表面接着強度は、好ましくは3.5N/mm
2以上であり、より好ましくは3.6N/mm
2以上であり、さらに好ましくは3.7N/mm
2以上である。
【0066】
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0067】
(実験例)
下記の表2及び表3に示す配合割合で原料をアイリッヒミキサーを用いて4分間混合し、水硬性組成物を得た。水硬性組成物の調製に用いた各原料は、以下の通りである。なお、表2及び表3に示す配合割合は、水硬性成分を100質量部としたときの各成分の質量部を示している。
【0068】
次に、上記の水硬性組成物1.5kgに水300gを加え、ケミスターラーを用いて3分間混練することにより補修モルタルを得た。モルタルの調製は、20℃、湿度65%RHの雰囲気下において行った。
1.水硬性成分
(1)ポルトランドセメント[PC](早強ポルトランドセメント、ブレーン比表面積4440cm
2/g)
(2)アルミナセメント[AC](ブレーン比表面積3110cm
2/g)
(3)石膏[G](フッ酸無水石膏、ブレーン比表面積4000cm
2/g)
(4)水酸化カルシウム微粉末[CH](ブレーン比表面積16000cm
2/g、平均粒子径7μm)
2.炭酸カルシウム粉末[CO](ブレーン比表面積4480cm
2/g)
3.細骨材[S7](7号珪砂、粒子径0.212mm超の粗粒分=2.7質量%)、表1に細骨材[S7]の粒度を示す。)
【0070】
4.再乳化形樹脂粉末[RP](酢酸ビニル/アクリルの共重合体、MFT=0℃,Tg=10℃)
5.混和剤
(1)減水剤[FL](ポリカルボン酸系流動化剤)
(2)消泡剤[DF](ポリエーテル系消泡剤)
(3)凝結促進剤[AL](炭酸リチウム「平均粒子径12μm」:硫酸カリウム=1:3.3)
(4)凝結遅延剤[RD](酒石酸ナトリウム:重炭酸ナトリウム=1:1)
【0073】
(評価)
上記調製の補修モルタルに対し、以下の評価を行った。
1.補修モルタルのフロー値
上述のように調整した補修モルタルについて、JIS A 1171に準拠したフロー試験で測定した。結果を表4に示す。
2.補修モルタル硬化体の曲げ強度及び圧縮強度
JIS R 5201に示される4cm×4cm×16cmの型枠に調製した補修モルタルを型詰めして、温度20℃、湿度65%で24時間気中養生した後、脱型し、さらに気中で所定期間(7日、28日)追加養生して成型体を得た。成型体の曲げ強度及び圧縮強度を、JIS R 5201記載の方法に従い測定した。結果を表4に示す。
3.補修モルタル硬化体の摩耗損厚
JIS K 7204『摩耗輪によるプラスチックの摩耗試験方法』に準拠し、デーバー式摩耗試験機を用いて材齢7日の硬化体表面の摩耗損厚を測定した。摩耗輪はGC−150H、荷重250g、2000回転での摩耗損失の深さをミクロンゲージにて測定したものを摩耗損厚(mm)とした。試験体は、110mm×110mmのサイズとし、下地用の10mm厚スレート板(ノザワ社製)の上にプライマー(固形分濃度15%のスチレン−アクリル系共重合体樹脂エマルジョン)を90g/m
2塗布して1日乾燥させてプライマー層を形成した後、補修モルタルを1mm厚で施工した。結果を表4に示す。
【0075】
表4に示す結果から、本発明に従う組成の補修モルタル硬化体の摩耗損厚が小さいことが分かる。
【0076】
(実施例1〜4及び比較例1〜5)
まず、300×300mm×厚み60mmのコンクリート舗道板上にプライマー(固形分濃度15%のスチレン−アクリル系共重合体樹脂エマルジョン)5.5gを均一に塗布して1日乾燥させてプライマー層を形成した。その後、セルフレベリング材モルタルを10mm厚になるように流し込み、1日養生してセルフレベリング材モルタル硬化体層を形成した。このセルフレベリング材モルタル硬化体層を試験体の下地として用いた。なお、実施例及び比較例で用いたセルフレベリング材モルタルとしては、後述のモルタルを用いた。
【0077】
次に、上記試験体下地の上に補修モルタル用プライマー(固形分濃度15%のスチレン−アクリル系共重合体樹脂エマルジョン)5gを均一に塗布して1h(1時間)乾燥させてプライマー層を形成した。次に、上記実験例において調製した補修モルタルを1mm厚になるように鏝を用いて施工し、補修モルタル硬化体層を形成した。次に、上記補修モルタル硬化体層の上に、表5に示す固形分濃度の表面処理剤を表5に示す塗布量となるように均一に塗布して養生させ表面処理層を形成し、試験体を完成させた。但し、比較例2、3においては、表面処理剤として水を塗布した。なお、表面処理剤は表5に示すように、補修モルタル塗布後1時間又は2時間のタイミングで塗布した。試験体の養生は、補修モルタル塗布後7日間とした。
【0078】
(表面接着強度の測定)
上記の方法により作製した試験体の表面にエポキシ樹脂を用いて40mm×40mm角のアタッチメントを接着させ、1日間養生後、建研式引張試験機を用いてアタッチメントを上方向へ引っ張り、表面接着強度(補修モルタル硬化体表面の接着強度)を測定した。測定点数は6点とし、その平均値を算出した。結果を表5に示す。
【0080】
表5に示すように、表面処理剤として、固形分濃度が8質量%〜25質量%である水系の樹脂エマルジョンを用い、表面処理剤の塗布量を50g/m
2〜75g/m
2とした実施例1〜4では、いずれも、3.5N/mm
2以上という高い表面接着強度が得られた。それに対して、表面処理層を形成しなかった比較例1、水を塗布した比較例2、3では、それぞれ表面接着強度が低かった。また、固形分濃度が8質量%以下の表面処理剤を用いた比較例4、5も、表面強度が3.5N/mm
2未満と低かった。
【0081】
(セルフレベリング材モルタル)
上記実施例及び比較例で用いたセルフレベリング材モルタルの組成を、下記の表6に示す。なお、表6に示す値は、水硬性成分100質量部に対する質量部である。
1.水硬性成分
(1)早強ポルトランドセメント[HC](ブレーン比表面積4440cm
2/g)
(2)アルミナセメント[AC](ブレーン比表面積3110cm
2/g)
(3)石膏[NG](天然無水石膏、ブレーン比表面積4050cm
2/g)
2.高炉スラグ微粉末[BFS](ブレーン比表面積4400cm
2/g)
3.細骨材[S6](6号珪砂、粒子径0.6mm超の粗粒分0.1質量%、粗粒率1.08)
4.再乳化形樹脂粉末[RP](酢酸ビニル/アクリルの共重合体)
5.混和剤[AD]
(1)減水剤(ポリカルボン酸系流動化剤)
(2)増粘剤(ヒドロキシエチルメチルセルロース系増粘剤、20℃における2%水溶液の粘度28000mPa・s)
(3)消泡剤(ポリエーテル系消泡剤)
(4)凝結促進剤(炭酸リチウム)
(5)凝結遅延剤(酒石酸ナトリウム及び重炭酸ナトリウム)
【0083】
上記材料(総量15kg)を表6に示す割合配合で混合し、水硬性組成物を得た。なお、材料の混合は、アイリッヒミキサーを用いて4分間行った。得られた水硬性組成物1.5kgに対して水330gを加え、ケミスターラーを用いて3分間混練することによりセルフレベリング材モルタルを得た。なお、混練は、20℃、湿度65%に設定した恒温恒湿室内で行った。
【0084】
上記調製のセルフレベリング材モルタルについて、JASS 15M−103に準拠したフロー試験を行った。その結果、フロー値は、225mmであり、良好な流動性を示した。
【0085】
周囲に堰を設けた300mm×300mm×厚み60mmのコンクリート舗道板上に、上述のように調製したセルフレベリング材モルタルを10mm厚になるように流し込み、24時間後のセルフレベリング材モルタル硬化体の表面硬度を測定した。表面硬度はスプリング式硬度計タイプD型を用いて測定した。24時間後の表面硬度は、78であり、床下地材として良好な表面硬度を示した。
【0086】
これにより、試験体の下地として問題ないことが確認された。