特許第6968608号(P6968608)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6968608撮像装置、撮像システム、および、移動体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6968608
(24)【登録日】2021年10月29日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】撮像装置、撮像システム、および、移動体
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/374 20110101AFI20211108BHJP
   H04N 5/369 20110101ALI20211108BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20211108BHJP
【FI】
   H04N5/374
   H04N5/369 600
   H01L27/146 A
   H01L27/146 D
【請求項の数】34
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2017-145583(P2017-145583)
(22)【出願日】2017年7月27日
(65)【公開番号】特開2018-61235(P2018-61235A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2020年7月2日
(31)【優先権主張番号】特願2016-193123(P2016-193123)
(32)【優先日】2016年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100124442
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 創吾
(72)【発明者】
【氏名】識名 紀之
(72)【発明者】
【氏名】月田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】岩倉 靖
(72)【発明者】
【氏名】和田 洋一
【審査官】 西谷 憲人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−099003(JP,A)
【文献】 特開2007−248378(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/120815(WO,A1)
【文献】 特開2016−110539(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0044307(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101431619(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/374
H04N 5/369
H01L 27/146
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の行および第2の行を少なくとも含む行列を構成するように配された複数の画素を備え、
前記第1の行および前記第2の行の各々は、入射光に応じた画素信号を出力する受光画素と、属する行の位置を示すアドレス信号を成すための画素信号を出力する参照画素とを含み、
前記第1の行から出力される前記アドレス信号の信号値と、前記第2の行から出力される前記アドレス信号の信号値とが異なる、
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記参照画素の異常を検出する検出手段を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記第1の行および前記第2の行の各々は、複数の前記参照画素を含み、
前記アドレス信号は、互いに同じ信号値を持つ少なくとも3つのサブ信号を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記第1の行および前記第2の行の各々は、複数の前記参照画素を含み、
前記アドレス信号は、ハミング符号化演算に基づいて設定されたチェック信号を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記第1の行および前記第2の行の各々は、互いに異なる信号値を持つ複数の前記アドレス信号を出力する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項6】
フレームごとに前記アドレス信号の信号値が変化する、
ことを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記受光画素の画素信号を読み出す第1の期間と、前記第1の期間とは異なる第2の期間とにおいて、前記アドレス信号の信号値が異なる、
ことを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記参照画素は、互いに異なる電圧を持つ複数の画素信号を出力する、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記第1の行に含まれる前記受光画素と前記参照画素との両方に接続された制御線を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記参照画素を覆い、前記受光画素を露出する遮光膜を備える、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記第1の行から出力される前記アドレス信号は、前記第1の行から出力される前記アドレス信号の信号値である第1のデジタル値を示す複数ビットを有する第1のデジタル信号を含み、
前記第1の行の前記参照画素の各々から出力される前記画素信号は、前記第1のデジタル信号の各ビットを示し、前記第1の行の前記参照画素の画素信号の第1の組み合わせが前記第1のデジタル値に対応し、
前記第2の行から出力される前記アドレス信号は、前記第2の行から出力される前記アドレス信号の信号値である第2のデジタル値を示す複数ビットを有する第2のデジタル信号を含み、
前記第2の行の前記参照画素の各々から出力される前記画素信号は、前記第2のデジタル信号の各ビットを示し、前記第2の行の前記参照画素の画素信号の第2の組み合わせが前記第2のデジタル値に対応し、
前記第1の組み合わせと第2の組み合わせとは互いに異なることを特徴とする請求項3乃至請求項10のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項12】
第1の列および第2の列を少なくとも含む行列を構成するように配された複数の画素を備え、
前記第1の列および前記第2の列の各々は、入射光に応じた画素信号を出力する受光画素と、属する列の位置を示すアドレス信号を成すための画素信号を出力する参照画素とを含み、
前記第1の列から出力される前記アドレス信号の信号値と、前記第2の列から出力される前記アドレス信号の信号値とが異なる、
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項13】
前記参照画素の異常を検出する検出手段を備える、
ことを特徴とする請求項12に記載の撮像装置。
【請求項14】
前記第1の列および前記第2の列の各々は、互いに異なる信号値を持つ複数の前記アドレス信号を出力する、
ことを特徴とする請求項12または請求項13に記載の撮像装置。
【請求項15】
前記参照画素は、互いに異なる電圧を持つ複数の画素信号を出力する、
ことを特徴とする請求項12乃至請求項14のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項16】
前記第1のおよび前記第2のの各々は、複数の前記参照画素を含み、
前記第1の列から出力される前記アドレス信号は、前記第1の列から出力される前記アドレス信号の信号値である第1のデジタル値を示す複数ビットを有する第1のデジタル信号を含み、
前記第1の列の前記参照画素の各々から出力される前記画素信号は、前記第1のデジタル信号の各ビットを示し、前記第1の列の前記参照画素の画素信号の第1の組み合わせが前記第1のデジタル値に対応し、
前記第2の列から出力される前記アドレス信号は、前記第2の列から出力される前記アドレス信号の信号値である第2のデジタル値を示す複数ビットを有する第2のデジタル信号を含み、
前記第2の列の前記参照画素の各々から出力される前記画素信号は、前記第2のデジタル信号の各ビットを示し、前記第2の列の前記参照画素の画素信号の第2の組み合わせが前記第2のデジタル値に対応し、
前記第1の組み合わせと第2の組み合わせとは互いに異なることを特徴とする請求項12乃至請求項15のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項17】
入射光に応じた画素信号を出力する第1の受光画素および第2の受光画素と、前記第1の受光画素と並行して画素信号を出力する第1の参照画素と、前記第2の受光画素と並行して画素信号を出力する第2の参照画素とを少なくとも含む、複数の画素を備え、
前記第1の参照画素と、前記第2の参照画素とが、互いに異なるレベルの画素信号を出力するように、前記第1の参照画素および前記第2の参照画素の画素信号のレベルを制御する出力制御回路を備える、
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項18】
前記複数の画素は、前記第1の受光画素と並行して画素信号を出力する複数の前記第1の参照画素と、前記第2の受光画素と並行して画素信号を出力する複数の前記第2の参照画素とを含む、
ことを特徴とする請求項17に記載の撮像装置。
【請求項19】
前記複数の第1の参照画素の各々は、ハイレベルまたはローレベルの画素信号を出力し、
前記複数の第1の参照画素の出力する複数の画素信号が、互いに同じハイレベルとローレベルとの組み合わせを持つ複数の信号を構成する、
ことを特徴とする請求項18に記載の撮像装置。
【請求項20】
前記第1の受光画素と前記第1の参照画素とは、第1の駆動制御線に接続され、
前記第2の受光画素と前記第2の参照画素とは、前記第1の駆動制御線とは電気的に分離された第2の駆動制御線に接続される、
ことを特徴とする請求項17乃至請求項19のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項21】
前記第1の参照画素および前記第2の参照画素の各々が、互いに異なるレベルの複数の画素信号を出力する、
ことを特徴とする請求項17乃至請求項19のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項22】
前記第1の参照画素および前記第2の参照画素の異常を検出する検出手段を備える、
ことを特徴とする請求項17乃至請求項21のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項23】
前記第1の参照画素および前記第2の参照画素を覆い、前記第1の受光画素および前記第2の受光画素を露出する遮光膜を備える、
ことを特徴とする請求項17乃至請求項22のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項24】
前記第1の参照画素から出力される前記画素信号は、第1のデジタル値を示す複数ビットを有する第1のデジタル信号を形成し、
前記第1の参照画素の各々から出力される前記画素信号は、前記第1のデジタル信号の各ビットを示し、
前記第1の参照画素の前記画素信号の第1の組み合わせが前記第1のデジタル値に対応し、
前記第2の参照画素から出力される前記画素信号は、第2のデジタル値を示す複数ビットを有する第2のデジタル信号を形成し、
前記第2の参照画素の各々から出力される前記画素信号は、前記第2のデジタル信号の各ビットを示し、
前記第2の参照画素の前記画素信号の第2の組み合わせが前記第2のデジタル値に対応し、
前記出力制御回路は、前記第1のデジタル値に対応する第1の組合せと、前記第2のデジタル値に対応する前記第2の組み合わせとが異なるように前記第1の参照画素および前記第2の参照画素の画素信号のレベルを制御することを特徴とする請求項18乃至請求項23のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項25】
請求項1乃至請求項16のいずれか一項に記載の撮像装置と、
前記撮像装置の前記受光画素から出力された前記画素信号を処理して画像信号を取得する処理装置と、を備えた撮像システム。
【請求項26】
移動体であって、
請求項1乃至請求項16のいずれか一項に記載の撮像装置と、
前記撮像装置の前記受光画素から出力された前記画素信号に対して処理を行う処理装置と、
前記処理の結果に基づいて前記移動体を制御する制御手段と、を有することを特徴とする移動体。
【請求項27】
請求項17乃至請求項24のいずれか一項に記載の撮像装置と、
前記撮像装置の前記第1の受光画素及び前記第2の受光画素から出力された前記画素信号を処理して画像信号を取得する処理装置と、を備えた撮像システム。
【請求項28】
移動体であって、
請求項17乃至請求項24のいずれか一項に記載の撮像装置と、
前記撮像装置の前記第1の受光画素及び前記第2の受光画素から出力された前記画素信号に対して処理を行う処理装置と、
前記処理の結果に基づいて前記移動体を制御する制御手段と、を有することを特徴とする移動体。
【請求項29】
撮像装置から出力される画素信号を処理して画像信号を取得する信号処理部を備え、
前記信号処理部は、前記撮像装置から出力された、互いに異なる信号値を持つ複数のアドレス信号を受けとり、
前記信号処理部は、前記複数のアドレス信号に基づいて、前記撮像装置から前記画素信号が正常に出力されているかを判断する、
ことを特徴とする撮像システム。
【請求項30】
前記複数のアドレス信号の各々は、同じ信号値を持つ少なくとも3つのサブ信号を含み、
前記信号処理部は、前記少なくとも3つのサブ信号の信号値を比較して、互いに信号値が一致する2つ以上のサブ信号に基づいて、前記判断を行う、
ことを特徴とする請求項29に記載の撮像システム。
【請求項31】
前記複数のアドレス信号の各々は、ハミング符号化演算を用いて設定されたチェック信号を含み、
前記信号処理部は、前記チェック信号を用いて前記アドレス信号を補正する、
ことを特徴とする請求項29に記載の撮像システム。
【請求項32】
前記信号処理部が、前記撮像装置から前記画素信号が正常に出力されていないと判断したときに、前記撮像装置の動作を停止する制御部を備える、
ことを特徴とする請求項29乃至請求項31のいずれか一項に記載の撮像システム。
【請求項33】
移動体であって、
請求項29乃至請求項32のいずれか一項に記載の撮像システムと、
前記撮像システムによって取得された前記画像信号に基づいて前記移動体を制御する制御手段と、を有する、
ことを特徴とする移動体。
【請求項34】
前記信号処理部が、前記撮像装置から前記画素信号が正常に出力されていないと判断したときに、前記撮像装置の動作に異常があることを示す警報を発する警報装置を備える、
ことを特徴とする請求項33に記載の移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撮像装置、撮像システム、および、移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の撮像装置は、有効画素領域と非有効画素領域とを含む。有効画素領域には外部から光が入射する。有効画素領域に配された画素は、光電変換により電気信号を生成するフォトダイオードを有している。一方、非有効画素領域の全面が遮光膜で覆われている。非有効画素領域は、リファレンス領域および故障検出用パターン領域を含む。リファレンス領域に配された画素は、画像信号レベルのリファレンスとなる信号を生成する。故障検出用パターン領域には、フォトダイオードを有する画素(PD具備画素)と、フォトダイオードを有していない画素(PD不具備画素)とが配列されている。故障検出用パターン領域からは、当該PD具備画素とPD不具備画素との配列パターンに応じた信号が得られる。この信号に基づいて故障の判断を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−118427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術によれば、故障検出用パターン領域から得られる信号が、所定のパターンに一致しているか否かを判断している。しかし、この方法では撮像装置の故障や誤動作を正確に検知することができないという課題がある。例えば、撮像装置の駆動回路が故障して、指定された有効画素領域の画素から正常に画素信号が読み出されない場合がある。一方で、故障検出用パターン領域の画素が正常である場合、故障検出用パターン領域から得られる信号は撮像装置が正常に動作していることを示す。つまり、撮像装置が故障しているにも関わらず、その故障を検知できない可能性がある。
【0005】
上記の課題に鑑み、本発明は、正確に故障を検知することが可能な撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面に係る実施例の撮像装置は、第1の行および第2の行を少なくとも含む行列を構成するように配された複数の画素を備え、前記第1の行および前記第2の行の各々は、入射光に応じた画素信号を出力する受光画素と、属する行の位置を示すアドレス信号を成すための画素信号を出力する参照画素とを含み、前記第1の行から出力される前記アドレス信号の信号値と、前記第2の行から出力される前記アドレス信号の信号値とが異なる。
【0007】
別の側面に係る実施例の撮像装置は、第1の列および第2の列を少なくとも含む行列を構成するように配された複数の画素を備え、前記第1の列および前記第2の列の各々は、入射光に応じた画素信号を出力する受光画素と、属する列の位置を示すアドレス信号を成すための画素信号を出力する参照画素とを含み、前記第1の列から出力される前記アドレス信号の信号値と、前記第2の列から出力される前記アドレス信号の信号値とが異なる。
【0008】
別の側面に係る実施例の撮像装置は、入射光に応じた画素信号を出力する第1の受光画素および第2の受光画素と、前記第1の受光画素と並行して画素信号を出力する第1の参照画素と、前記第2の受光画素と並行して画素信号を出力する第2の参照画素とを少なくとも含む、複数の画素を備え、前記第1の参照画素と、前記第2の参照画素とが、互いに異なるレベルの画素信号を出力するように、前記第1の参照画素および前記第2の参照画素の画素信号のレベルを制御する出力制御回路を備える。
【0009】
別の側面に係る実施例の撮像システムは、撮像装置から出力される画素信号を処理して画像信号を取得する信号処理部を備え、前記信号処理部は、前記撮像装置から出力された、互いに異なる信号値を持つ複数のアドレス信号を受けとり、前記信号処理部は、前記複数のアドレス信号に基づいて、前記撮像装置から前記画素信号が正常に出力されているかを判断する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、正確に故障を検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】撮像装置の全体構成を模式的に示す図。
図2】撮像装置の画素の等価回路を示す図。
図3】撮像装置の画素の動作を模式的に示すタイミングチャート図。
図4】撮像装置の出力するアドレス信号を模式的に示す図。
図5】撮像装置の動作を判定するための方法を示すフローチャート図。
図6】撮像装置の出力するアドレス信号を模式的に示す図。
図7】撮像装置の出力するアドレス信号を模式的に示す図。
図8】撮像装置の動作を判定するための方法を示すフローチャート図。
図9】撮像装置の出力するアドレス信号を模式的に示す図。
図10】撮像装置の出力するアドレス信号を模式的に示す図。
図11】撮像システムの実施例のブロック図。
図12】移動体の実施例のブロック図。
図13】撮像装置の画素の平面構造を模式的に示す図。
図14】撮像装置の画素の平面構造を模式的に示す図。
図15】撮像装置の画素の断面構造を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る1つの実施形態は撮像装置である。撮像装置は行列を構成するように配された複数の画素を備える。複数の画素は、受光画素と参照画素とを含む。受光画素には外部からの光が入射する。受光画素は入射した光に応じた画素信号を出力する。参照画素は、アドレス信号を構成するための画素信号を出力する。
【0013】
アドレス信号は、行または列の位置に関する情報を含む。少なくとも2つの行、あるいは、2つの列に対して、異なる信号値のアドレス信号が割り当てられる。1つのアドレス信号は、1つの参照画素からの画素信号、あるいは、複数の参照画素からの画素信号によって構成される。
【0014】
1つのアドレス信号が1つの参照画素からの画素信号によって構成される実施例では、各行に少なくとも1つの参照画素が配される。異なる行の参照画素は、互いに異なるレベルの複数の画素信号を出力する。レベルは、画素信号の電流値や電圧値を意味する。参照画素の画素信号のレベルが、アドレス信号の信号値を表す。例えば、各行に1つの参照画素が配され、奇数行の参照画素がハイレベルの画素信号を出力し、偶数行の参照画素がローレベルの画素信号を出力する。これにより、撮像装置が偶数行の信号を読み出しているのか、奇数行の信号を読み出しているのかを判断することができる。あるいは、行ごとの参照画素が、属する行に固有のレベルの画素信号を出力する。撮像装置が4000行の画素を含む場合、参照画素は4000段階のレベルの画素信号を出力する。これにより、撮像装置がどの行の信号を読み出しているのかを判断することができる。
【0015】
別の実施例では、1つの行に複数の参照画素が配される。この実施例では、1つのアドレス信号が複数の参照画素からの画素信号によって構成される。例えば、参照画素のそれぞれが、ハイレベルの画素信号またはローレベルの画素信号を出力する。N個の参照画素が配される場合、ハイレベルの画素信号とローレベルの画素信号との組み合わせにより、Nビットのデジタル信号として、アドレス信号が構成される。ハイレベルの画素信号が、各ビットの「1」に対応し、ローレベルの画素信号が、各ビットの「0」に対応する。この場合、デジタル信号の0と1との配列パターンが、アドレス信号の信号値を表す。12個の参照画素を配することにより、4096行のそれぞれに固有の信号値を持つアドレス信号を生成することができる。
【0016】
なお、全ての行に対して固有のアドレス信号を生成しなくてもよい。4096行の画素に対して、各行に含まれる参照画素が12個より少なくてもよい。この場合、同じ信号値のアドレス信号が複数の行に割り当てられる。例えば、4096行を4つの領域に分け、各領域に、1〜1024に対応するアドレス信号を割り当てることができる。これにより、各行に含まれる参照画素の数を10個にできる。4つの領域のうち、ある領域ではアップカウント、別の領域ではダウンカウントとしてもよい。各領域に含まれる行の数は、2のn乗でなくてもよい。各領域の開始行のアドレス信号の下位8ビットの値が互いに異なるように、複数の領域が設定されうる。
【0017】
なお、上述のそれぞれの実施例において、各参照画素が、異なるレベルの少なくとも2つの画素信号を出力してもよい。あるいは、各参照画素が、1つのレベルの画素信号のみを出力するように構成されてもよい。また、以上の説明では、各行が参照画素を含む撮像装置を例に挙げたが、各列が参照画素を含む撮像装置については、明細書中の「行」を「列」に読み替えればよい。
【0018】
本発明に係る1つの実施形態は撮像システムである。撮像システムは、撮像装置から出力された画素信号を処理して、画像信号を取得する信号処理部を備える。信号処理部は、さらに、撮像装置から出力されるアドレス信号を受けとり、撮像装置から画素信号が正常に出力されているかを判断する。アドレス信号は、前述の撮像装置の実施形態で説明したものと同じである。
【0019】
1つの実施例では、信号処理部は、複数の行の画素信号が所定の順番で出力されているかを判断する。複数の行の画素信号の読み出しに伴って、順次出力される複数のアドレス信号が、予期した通りに変化するかを判断する。例えば、奇数行と偶数行に異なる信号値のアドレス信号が割り当てられている場合、当該異なる信号値のアドレス信号が交互に出力されているかを判定する。これにより、複数の行の画素信号が所定の順番で出力されているかを判断することができる。
【0020】
あるいは、信号処理部は、指定した行の画素信号が適切に出力されているかを判断する。画素信号と共に出力されたアドレス信号の信号値が、指定した行に割り当てられた信号値に一致するかを判断する。これにより、所定の行の画素信号が正常に出力されているかを判断することができる。
【0021】
本実施形態において、アドレス信号が予期した信号値を出力している間は、撮像装置が正常に動作している、あるいは、正常に信号を出力していると判断される。アドレス信号の信号値が予期された信号値と異なる場合には、信号処理部は、撮像装置が正常に動作していない、あるいは、撮像装置が故障したと判断する。
【0022】
本実施形態では、撮像装置の外部の信号処理部が、撮像装置が正常に画素信号を出力しているか否かを判断している。これに対して、撮像装置の実施形態において、撮像装置の内部の回路が、正常に信号が出力されているか否かの判断を行ってもよい。
【0023】
上述の撮像装置や撮像システムは、カメラ、監視装置、ロボット等に用いられる。あるいは、上述の撮像装置や撮像システムは移動体に用いられる。特に、車、飛行機、船舶などの人を輸送するための移動体においては、装備された装置が高い信頼性を有することが望ましい。上述の実施形態の撮像装置や撮像システムによれば、撮像装置から正常に画素信号が出力されているかを判断することができる。そのため、撮像装置が故障した場合に、撮像動作を停止したり、故障が生じたことを警告したりすることができる。
【0024】
いくつかの実施例においては、撮像装置あるいは撮像システムが、参照画素の異常を検出する手段を備える。換言すると、参照画素から出力されたアドレス信号の信号値が予期された信号値と一致しなかった場合に、当該不一致が、参照画素の異常や故障に起因するものか、実際に意図していない受光画素から信号を読み出していることを示すのかを、判断する。このような手段により、撮像装置または撮像システム、あるいは、それらを用いた移動体の信頼性を更に向上させることができる。
【0025】
以下では、本発明の実施例について図面を用いて詳細に説明する。本発明は以下に説明される実施例のみに限定されない。本発明の趣旨を超えない範囲で以下に説明される実施例の一部の構成が変更された変形例も、本発明の実施例である。また、以下のいずれかの実施例の一部の構成を、他の実施例に追加した例、あるいは他の実施例の一部の構成と置換した例も本発明の実施例である。
【実施例1】
【0026】
実施例1について説明する。図1は、実施例1に係る撮像装置の構成を模式的に示している。撮像装置は、行列を構成するように配置された複数の画素305、306、307を備える。複数の画素は、受光画素305、オプティカルブラック画素(以下、OB画素)306、参照画素307を含む。撮像装置は、さらに、垂直走査回路301、列回路302、水平走査回路303、出力制御回路304、出力線308、駆動制御線309、出力制御線310を備える。
【0027】
1つの行に含まれる複数の画素305、306、307は、共通の駆動制御線309に接続される。垂直走査回路301は、駆動制御線309を介して、複数の画素305、306、307に駆動信号を供給する。駆動信号に基づいて、1つの行に含まれる複数の画素305、306、307から画素信号が出力線308に並行して出力される。1つの列に含まれる複数の画素305、306、307が、共通の出力線308に接続される。出力線308に出力された画素信号は、列回路302に入力される。出力線308のそれぞれに対して、1つの列回路302が配される。列回路302は、画素信号の増幅、画素信号に対するアナログデジタル変換、画素信号の保持、画素信号のノイズの除去などの動作を行う。水平走査回路303によって、列回路302から画素信号を順次読み出す。
【0028】
受光画素305は、外部からの光を受けるように構成される。受光画素305は、入射光に応じた画素信号を出力する。OB画素306は、不図示の遮光膜に覆われている。遮光膜は、受光画素305を露出するように配置される。OB画素306は、入射光がない状態に対応したレベル、つまり、ダークレベルの画素信号を出力する。OB画素306の出力する画素信号は、画素ごとに異なるノイズ成分を含みうる。そのため、OB画素306の出力する画素信号が、位置に応じて異なる可能性がある。しかし、ノイズ成分の量は、例えば製造ばらつきや熱雑音に起因するため、ランダムである。したがって、OB画素306からの画素信号は、行や列の位置を特定するための情報ではない。
【0029】
参照画素307は、アドレス信号を構成するための画素信号を出力する。本実施例には、上述の説明したアドレス信号のいずれかが用いられる。本実施例では、出力制御回路304が、参照画素307の出力する画素信号のレベルを制御する。具体的には、出力制御回路304が、所定の電圧を出力制御線310に供給する。参照画素307は、出力制御線310の電圧に応じたレベルの画素信号を出力する。参照画素307は、不図示の遮光膜に覆われていてもよい。あるいは、参照画素307はフォトダイオードを持たないので、参照画素307は露出していてもよい。
【0030】
続いて、受光画素305、OB画素306、および、参照画素307の構成を説明する。図2(a)は、受光画素305およびOB画素306の等価回路を示す。図2(b)は、参照画素307の等価回路を示す。
【0031】
図2(a)が示す通り、受光画素305およびOB画素306は、フォトダイオード(以下、PDと表記する)401を含む。PD401は、光電変換により入射光を電荷に変換する。つまり、PD401は光電変換部の1つの例である。受光画素305のPD401には外部からの光が入射するため、受光画素305のPD401には光電変換により生じた電荷が蓄積される。一方、OB画素306のPD401は遮光されている。そのため、OB画素306のPD401には、暗電流などのノイズとなりうる電荷が蓄積される。なおOB画素306のPD401は省略されてもよい。
【0032】
図2(b)が示す通り、参照画素307は、PD401を含まない。代わりに、参照画素307は、出力制御線310に接続される。本実施例では、電圧Vaを供給する出力制御線310と、電圧Vaとは異なる電圧Vbを供給する出力制御線310とが、参照画素307に接続される。出力制御回路304が、2つの出力制御線310のどちらに電圧を供給するかを選択する。このような構成により、参照画素307は、電圧Vaに対応したレベルの画素信号と、電圧Vbに対応したレベルの画素信号とを選択的に出力できる。なお、参照画素307が異なるレベルの複数の画素信号を出力しない場合は、参照画素307は、電圧Vaを供給する出力制御線310または電圧Vbを供給する出力制御線310のいずれか一方のみに接続されていればよい。
【0033】
受光画素305、OB画素306、および、参照画素307は、転送トランジスタ402を含む。受光画素305およびOB画素306の転送トランジスタ402は、PD401の電荷をフローティングディフュージョン(FD)ノードに転送する。一方、参照画素307の転送トランジスタ402は、電圧Vaまたは電圧VbをFDノードに伝達する。転送トランジスタ402のゲートは、駆動信号TXを供給する駆動制御線309に接続される。駆動信号TXによって転送トランジスタ402が制御される。
【0034】
受光画素305、OB画素306、および、参照画素307は、増幅トランジスタ404を含む。FDノードが、増幅トランジスタ404のゲートに接続される。増幅トランジスタ404は、FDノードの電圧に基づく画素信号を出力線308へ出力する。例えば、増幅トランジスタ404と、出力線308に接続された不図示の電流源とが、ソースフォロア回路を構成する。
【0035】
受光画素305、OB画素306、および、参照画素307は、リセットトランジスタ403を含む。リセットトランジスタ403は、FDノードの電圧をリセットする。リセットトランジスタ403のドレインはリセット電圧Vresを供給するノードに接続される。本実施例では、リセット電圧Vresとして電源電圧Vddが用いられている。リセットトランジスタ403のゲートは、駆動信号RESを供給する駆動制御線309に接続されている。駆動信号RESにより、リセットトランジスタ403はオンとオフとに制御される。
【0036】
受光画素305、OB画素306、および、参照画素307は、選択トランジスタ405を含む。増幅トランジスタ404と出力線308との間の電気経路に、選択トランジスタ405が配される。選択トランジスタ405のゲートは、駆動信号SELを供給する駆動制御線309に電気的に接続されている。駆動信号SELに応じて、選択トランジスタ405はオンとオフとに制御される。選択トランジスタ405がオンのときに、対応する増幅トランジスタ404から出力線308に画素信号が出力される。1つの出力線308に接続された複数の画素のうち、一部の画素の選択トランジスタ405がオンし、他の画素の選択トランジスタ405がオフすることにより、画素信号を出力する画素が選択される。1つの出力線308に接続された2つ以上の画素が同時に選択されてもよい。
【0037】
このような構成により、受光画素305は、入射光に応じた画素信号を出力することができる。OB画素306は、ダークレベルの画素信号を出力することができる。また、参照画素307は、電圧Vaに対応したレベルの画素信号、および、電圧Vbに対応したレベルの画素信号を選択的に出力する。
【0038】
受光画素305、および、参照画素307の構造を詳細に説明する。図13は、撮像装置の受光画素305、および、参照画素307の平面構造を模式的に示す図である。図2で示した部材と同じ機能を有する部材については、図2で付した符号と同じ符号が図13においても付されている。
【0039】
電源配線201は、画像取得用の画素に電源電圧VDDを伝送する配線である。受光画素305は、PD401の一部である半導体領域203を有する。半導体領域203は、光電変換によって生じた電荷を蓄積する電荷蓄積部である。ここでは、半導体領域203の導電型はN型であるとする。また、半導体領域203が蓄積する電荷が電子であるとする。
【0040】
受光画素305は、転送トランジスタ402のゲート204、FDノードの一部である浮遊拡散領域205を有する。なお、図13は、2つの受光画素305が1つの増幅トランジスタ404を共有する構成を示す。そのため、第1の受光画素305Aに含まれる半導体領域203および浮遊拡散領域205の組と、第2の受光画素305Bに含まれる半導体領域203および浮遊拡散領域205の組とが示されている。
【0041】
受光画素305は、選択トランジスタ405のゲート206(選択ゲート)、増幅トランジスタ404のゲート207(増幅ゲート)、リセットトランジスタ403のゲート208(リセットゲート)を有する。さらに受光画素305は、FD接続コンタクト209、第1のFD接続配線210、および、第2のFD接続配線211を含む。以下、コンタクトをCNTと表す。
【0042】
半導体領域203は転送ゲート204を介して浮遊拡散領域205に接続されている。半導体領域203に蓄積された電荷は、転送ゲート204を介して浮遊拡散領域205へ転送される。浮遊拡散領域205はFD接続CNT209とFD接続配線210、211とを介して増幅ゲート207に接続される。
【0043】
浮遊拡散領域205はFD接続CNT209とFD接続配線210、211を介してリセットトランジスタ403に接続される。
【0044】
参照画素307の一部の構成は、受光画素305と同じである。受光画素305と同じ構造の部分には、受光画素305と同じ符号が付してある。重複する説明は省略する。なお、図13は、2つの参照画素307が1つの増幅トランジスタ404を共有する構成を示す。そのため、第1の参照画素307Aに含まれる半導体領域203および浮遊拡散領域205の組と、第2の参照画素307Bに含まれる半導体領域203および浮遊拡散領域205の組とが示されている。
【0045】
参照画素307のPD401を構成する半導体領域203は、第1の電圧供給線212または第2の電圧供給線113に接続される。第1の電圧供給線212または第2の電圧供給線113は、出力制御線310を構成する配線である。半導体領域203と電圧供給線212、213との接続は、CNT215、配線214、および、ビア213を介してなされる。ビア213は、電圧供給線212、213と配線214とを接続する。
【0046】
電圧供給線212と電圧供給線213は、参照画素307のPD401の上部に配されている。換言すれば、受光面に対する平面視において、電圧供給線212とPD401とが重なっており、電圧供給線113とPD401とが重なっている。
【0047】
参照画素307においては、半導体領域203に電圧供給線212または電圧供給線213より印加された電位が、転送トランジスタ402を介して浮遊拡散領域205へ出力される。
【0048】
図13で説明した受光画素305、および、参照画素307の構造について、PD401を中心に図14を用いてさらに説明する。図14は、受光画素305と、参照画素307のPD401と、転送トランジスタ402とを示した図である。図13で示した部材と同じ部材については、図13で付された符号と同じ符号が図14でも付されている。
【0049】
まず、受光画素305について説明する。平面視において、電荷を蓄積する半導体領域203は、P型の半導体領域220と重なっている。図15を用いて後述するが、半導体領域220は、半導体領域203の表面を保護する表面保護層として機能する。以降、半導体領域220を表面保護層として表記することがある。
【0050】
次に、参照画素307について説明する。平面視において、半導体領域203においてCNT315が接続された部分と、転送ゲート204との間に、P型の半導体領域221が設けられている。
【0051】
図15(a)は、図14において、線C−Dにおける画素の断面構造を模式的に示す図である。図15(b)は、図14において、線A−Bにおける画素の断面構造を模式的に示す図である。
【0052】
まず、図15(a)に示した、受光画素305(線C−Dに対応する断面)について説明する。電荷を蓄積する半導体領域203は、P型の半導体領域220の下部に形成されている。これにより、半導体領域220は、半導体領域203の表面を保護する表面保護層として機能する。半導体領域220は、半導体基板の主面250と、半導体領域203との間に形成されている。
【0053】
次に、図15(b)に示した、参照画素307(線A−Bに対応する断面)について説明する。電荷を蓄積する半導体領域203の一部の領域に、CNT215が接続されている。このCNT215下部には、半導体領域221は形成されていない。また、半導体領域203においてCNT215が接続された部分と、転送ゲート204との間には、半導体領域221が設けられている。また、半導体領域221と半導体領域203が平面視において重なる部分については、半導体領域221の下部に半導体領域203が設けられている。半導体領域221は、半導体基板の主面250と、半導体領域203との間に形成されている。
【0054】
半導体領域203の導電型がN型であるとすると、半導体領域221の導電型はP型である。このため、半導体領域221は半導体領域203Aに比べて低い電位となっている。つまり、半導体領域221の電位は、転送ゲート204のオフ時の電位と、半導体領域203の電位との間の電位となっている。半導体領域221が形成されていない場合には、転送ゲート204には、転送ゲート204と半導体領域203との間の電位差に対応する電界が印加されている。一方、本実施例では半導体領域221を備えることにより、転送ゲート204には、転送ゲート204と半導体領域221との間の電位差に対応する電界に緩和される。これにより、参照画素307の転送トランジスタ4022の故障を生じにくくさせることができる。つまり、本実施例の画素構成によれば、参照画素307の故障を生じにくくすることができる。
【0055】
なお、半導体領域203とCNT215との間に、半導体領域203と同じ導電型であって、半導体領域203よりも不純物濃度が高い半導体領域が配されてもよい。このような構成によれば、接続抵抗を下げることができる。
【0056】
次に、受光画素305、OB画素306、および、参照画素307の動作を説明する。図3は、駆動信号SEL、駆動信号RES、および、駆動信号TXのタイミングチャート図である。駆動信号がハイレベルのときに、対応するトランジスタがオンする。駆動信号がローレベルのときに、対応するトランジスタがオフする。図3は、さらに、FDノードの電圧を示している。
【0057】
時刻T1に選択トランジスタ405がオンする。この時、リセットトランジスタ403はオンしている。そのため、FDノードの電圧はリセット電圧Vresである。選択トランジスタ405がオンした後、リセットトランジスタ403がオフする。増幅トランジスタ404が、リセット電圧Vresに応じたレベルの画素信号(ノイズ信号)を出力線308に出力する。
【0058】
時刻T2に転送トランジスタ402がオンする。受光画素305およびOB画素306においては、PD401の電荷がFDノードに転送される。FDノードの電圧が、リセット電圧Vresから信号電圧Vsigに変化する。増幅トランジスタ404が、電圧Vsigに応じたレベルの画素信号を出力線308に出力する。
【0059】
参照画素307では、転送トランジスタ402がオンすると、出力制御回路304が出力している電圧Vaまたは電圧Vbが、FDノードに供給される。電圧Vaが供給されている場合は、FDノードの電圧が、リセット電圧Vresから電圧Vaに変化する。電圧Vbが供給されている場合は、FDノードの電圧が、リセット電圧Vresから電圧Vbに変化する。増幅トランジスタ404が、電圧Vaまたは電圧Vbに応じたレベルの画素信号を出力線308に出力する。参照画素307から出力された画素信号は、アドレス信号を構成する。
【0060】
時刻T3に、リセットトランジスタ403がオンし、続いて、選択トランジスタ405がオフする。これにより、1行に含まれる複数の画素305、306、307からの画素信号の読み出し動作が終了する。
【0061】
列回路302は、リセット時に出力されたノイズ信号を用いて、画素信号の差分処理を行う。これにより、ノイズを低減した画素信号を得ることができる。列回路302は、さらに、必要に応じて、画素信号の保持、AD変換などの処理を行う。
【0062】
本実施例では、同じ行に含まれる受光画素305、OB画素306、および、参照画素307が、共通の駆動制御線309に接続されている。そのため、受光画素305やOB画素306から画素信号が読み出されるのと並行して、参照画素307から画素信号が読み出される。前述の通り、参照画素307から画素信号は、その属する行を示すアドレス信号を構成する。そのため、このような構成により、指定された行から正常に画素信号が出力されたか否かを判断することができる。なお、同じ行に含まれる受光画素305、OB画素306、および、参照画素307は、それぞれ、電気的に分離された個別の駆動制御線に接続されてもよい。同じ行の受光画素305、OB画素306、および、参照画素307が、共通の駆動制御線309に接続されることは、これらの画素信号を並行して読み出す構成の1つの例である。
【0063】
参照画素307の出力する画素信号が構成するアドレス信号を詳細に説明する。本実施例のアドレス信号には、デジタル信号が用いられる。すなわち、参照画素307の画素信号は、デジタル信号の各ビットの信号値に相当する。図3が示す通り、電圧Vaに対応したレベルの画素信号が「0」を表し、電圧Vbに対応したレベルの画素信号が「1」を表す。画素信号を互いに区別するため、画素信号に符号D(m、n)を付している。mは行番号を表し、nは列番号を表す。
【0064】
図4は、本実施例のアドレス信号の信号値を模式的に示している。図4には、16行×12列の参照画素307の画素信号が例示されている。しかし、参照画素307の数はこれに限定されるものではない。
【0065】
1つの行に、12個の参照画素307が含まれている。つまり、本実施例では、アドレス信号は、12ビットのデジタル信号として表される。1つの行の参照画素307からの画素信号が成すアドレス信号は、同じ信号値を持つ3組のサブ信号を含む。例えば1行目の列番号0〜3の参照画素307は、信号値「0001」を持つサブ信号を出力する。1行目の列番号4〜7の参照画素307は、同じ信号値「0001」を持つサブ信号を出力する。そして、1行目の列番号8〜11の参照画素307は、同じ信号値「0001」を持つサブ信号を出力する。
【0066】
また、アドレス信号は行ごとに異なる信号値を持つ。例えば、1行目のアドレス信号のサブ信号は、信号値「0001」を持つ。2行目のアドレス信号のサブ信号は、信号値「0010」を持つ。「0001」と「0010」とは異なる信号値である。
【0067】
続いて、アドレス信号に基づいて、撮像装置が正常に画素信号を出力しているか否かを判断する方法を説明する。図5は、撮像装置の動作を判断するためのフローチャートである。この判断処理は、例えば、撮像装置の外部の信号処理部によって行われる。あるいは、撮像装置の内部の信号処理回路によって行われる。
【0068】
ステップS200で、N行目のアドレス信号を取得する。前述の通り、アドレス信号は3組のサブ信号を含んでいる。
【0069】
ステップS201で、3組のサブ信号の信号値が互いに一致しているかを判定する。3組のサブ信号の信号値が全て一致した場合、参照画素307に異常はないと判断する。この場合、次のステップS203に進む。もし、3組のサブ信号のいずれか1つの信号値が、他の信号値と異なる場合には、参照画素307の一部に異常があると判断する。この場合ステップS202に進む。
【0070】
ステップS202では、多数派のサブ信号の信号値を、当該行を表すアドレス信号として採用する。換言すると、ステップS202では、3つのサブ信号を用いた多数決を行う。例えば、3つのサブ信号の信号値が、それぞれ、「0001」、「0001」、「0101」である場合、N行目を示すアドレス信号の信号値として、「0001」を採用する。
【0071】
ステップS203では、前のステップで得られた信号値を持つアドレス信号を、N行目を示すアドレス信号として生成する。3組のサブ信号の信号値が全て一致している場合は、その一致した信号値を持つアドレス信号が生成される。いずれか1つのサブ信号の信号値が他の信号値と異なる場合は、ステップS202の多数決によって選ばれた信号値を持つアドレス信号が生成される。
【0072】
ステップS204では、生成されたアドレス信号を、N行目のアドレス信号の期待値と比較する。アドレス信号の信号値が期待値に一致した場合は、ステップS205で撮像装置が正常に動作していると判定する。そして、N+1行目の読み出し動作に移行する。
【0073】
ステップS204においてアドレス信号の信号値が期待値に一致しない場合は、ステップS207で撮像装置の動作に異常があると判定する。つまり、撮像装置に故障が生じたと判断する。この場合は、ステップS208で、撮像装置の動作を停止する、あるいは、撮像装置が故障したことを示す警告を行う。
【0074】
以上に説明した通り、本実施例では、参照画素307の出力する画素信号が、属する行の位置を示すアドレス信号を構成する。このような構成により、指定された行から正常に画素信号が出力されたか否かを判断することができる。結果として、撮像装置の故障を正確に検知することができる。
【0075】
また、本実施例では、1つのアドレス信号が、互いに同じ信号値を持つ3つのサブ信号を含む。このような構成により、一部の参照画素307に異常が生じていても、撮像装置の故障の有無を正確に判断することができる。つまり、1つの行に含まれる複数の参照画素307が、全体として、参照画素の異常を検出する検出手段として機能している。
【0076】
以上の説明では、各行のアドレス信号を例に挙げたが、各列のアドレス信号を用いて撮像装置の動作の判定を行ってもよい。この場合、明細書中の「行」を「列」に読み替えればよい。
【実施例2】
【0077】
実施例2について説明する。実施例1の撮像装置と実施例2の撮像装置との間で、アドレス信号の構成が異なる。そこで、以下では主として実施例1と異なる部分を説明し、実施例1と同様の部分についての説明を省略する。
【0078】
図6は、本実施例のアドレス信号の信号値を模式的に示している。図6(a)に示された撮像装置では、各行が1つの参照画素307を含む。参照画素307は、属する行が偶数行であるか奇数行であるかを示す画素信号を出力する。例えば、偶数行の参照画素307は、「0」を示すレベルの画素信号を出力する。奇数行の参照画素307は、「1」を示すレベルの画素信号を出力する。その他の構成は、実施例1と同じであるため、説明を省略する。
【0079】
このような構成により、撮像装置から正しい順序で信号が出力されているかを判定することができる。例えば、全ての行から順番に画素信号を出力する動作を行う場合、出力されるアドレス信号の信号値は、「0」と「1」とで交互に変化する。このアドレス信号の変化を検出することで、撮像装置が正しく画素信号を出力していることを判断できる。
【0080】
図6(b)は、別の実施例を示している。図6(b)に示された撮像装置では、参照画素307が、属する行に固有のレベルの画素信号を出力する。そして、参照画素307の出力する画素信号のレベルが、アドレス信号の信号値を表す。つまり、本実施例のアドレス信号はアナログ信号である。具体的に、0行目の参照画素307は、電圧V0に対応するレベルの画素信号を出力する。同様に、n行目の参照画素307は、電圧Vnに対応するレベルの画素信号を出力する。電圧V0から電圧Vnのそれぞれは、他の電圧と異なる値である。
【0081】
このような構成により、指定した行の画素信号が適切に出力されているかを判断することができる。例えば、2行目の受光画素305およびOB画素306から画素信号を読み出す時に、参照画素307から出力された画素信号の信号値が、2行目に割り当てられた信号値、この例では電圧V2に一致するかを判断する。両者が一致していない場合には、2行目の受光画素305およびOB画素306から画素信号が読み出されていない可能性があるため、撮像装置が故障したと判断することができる。
【0082】
図6(c)は、さらに別の実施例を示している。図6(c)に示された撮像装置では、1つの列に1つの参照画素307が配されている。参照画素307は、属する列が偶数列であるか奇数列であるかを示す画素信号を出力する。他の構成は図6(a)で説明した内容と同じである。また、各列の参照画素307が、図6(b)のように、互いに異なるレベルの画素信号を出力するように構成されてもよい。
【0083】
以上に説明した通り、本実施例では、参照画素307の出力する画素信号が、属する行または列の位置を示すアドレス信号を構成する。このような構成により、指定された行または列から正常に画素信号が出力されたか否かを判断することができる。結果として、撮像装置の故障を正確に検知することができる。
【0084】
さらに、本実施例では、1つの行が1つの参照画素307のみを含むか、あるいは、1つの列が1つの参照画素307のみを含む。したがって、参照画素307の数を低減することができるため、撮像装置を小型化することができる。
【0085】
なお、本実施例は、参照画素307の異常を検出する検出手段を備えていない。そのため、図5のフローチャートのステップS201とステップS202を行わない。参照画素307から出力された画素信号をそのままアドレス信号として用いる。本実施例の変形例として、実施例1のように、参照画素307の異常を検出する検出手段を追加してもよい。
【実施例3】
【0086】
実施例3について説明する。実施例1の撮像装置と実施例3の撮像装置との間で、アドレス信号の構成が互いに異なる。そこで、以下では主として、実施例1と異なる部分を説明し、実施例1と同様の部分についての説明を省略する。
【0087】
本実施例の撮像装置の構成は、実施例1と同じである。すなわち、図1は、実施例3に係る撮像装置の構成を模式的に示している。詳細な説明は省略する。
【0088】
本実施例の受光画素305、OB画素306、および、参照画素307の構成および動作は、実施例1と同じである。すなわち、図2は、本実施例の本実施例の受光画素305、OB画素306、および、参照画素307の等価回路を示している。受光画素305、および、参照画素307の構造は図13乃至図15に示されている。また、図3は、本実施例の撮像装置に用いられる駆動信号のタイミングチャート図である。詳細な説明は省略する。
【0089】
本実施例では、同じ行に含まれる受光画素305、OB画素306、および、参照画素307が、共通の駆動制御線309に接続されている。そのため、受光画素305やOB画素306から画素信号が読み出されるのと並行して、参照画素307から画素信号が読み出される。参照画素307から画素信号は、その属する行を示すアドレス信号を構成する。そのため、このような構成により、指定された行から正常に画素信号が出力されたか否かを判断することができる。なお、同じ行に含まれる受光画素305、OB画素306、および、参照画素307は、それぞれ、電気的に分離された個別の駆動制御線に接続されてもよい。同じ行の受光画素305、OB画素306、および、参照画素307が、共通の駆動制御線309に接続されることは、これらの画素信号を並行して読み出す構成の1つの例である。
【0090】
参照画素307の出力する画素信号が構成するアドレス信号を詳細に説明する。本実施例のアドレス信号には、デジタル信号が用いられる。すなわち、参照画素307の画素信号は、デジタル信号の各ビットの信号値に相当する。図3が示す通り、電圧Vaに対応したレベルの画素信号が「0」を表し、電圧Vbに対応したレベルの画素信号が「1」を表す。画素信号を互いに区別するため、画素信号に符号D(m、n)を付している。mは行番号を表し、nは列番号を表す。
【0091】
図7は、本実施例のアドレス信号の信号値を模式的に示している。図7には、16行×7列の参照画素307の画素信号が例示されている。しかし、参照画素307の数はこれに限定されるものではない。
【0092】
1つの行に、7個の参照画素307が含まれている。つまり、本実施例では、アドレス信号は、7ビットのデジタル信号として表される。1つの行の参照画素307からの画素信号が成すアドレス信号は、属する行の位置を示すサブアドレス信号と、チェック信号とを含む。各行の列番号0〜3の参照画素307の出力する画素信号が、サブアドレス信号を構成する。各行の列番号4〜6の参照画素307の出力する画素信号が、チェック信号を構成する。チェック信号は、アドレス信号の誤りを訂正するための情報を含む。本実施例のチェック信号は、サブアドレス信号に対してハミング符号化演算を行うことで設定される。つまり、本実施例のアドレス信号には、ハミング符号が用いられている。なお、この他の例として、チェック信号がパリティビットとして生成されてもよい。
【0093】
ハミング符号化演算について説明する。本実施例では、サブアドレス信号は4ビットのデジタル信号である。サブアドレス信号を構成する4ビットをD0〜D3で表す。チェック信号は3ビットのデジタル信号である。チェック信号を構成する3ビットをP0〜P2で表す。下記の式(1)〜式(3)の演算を行うことで、チェック信号の各ビットの信号値が得られる。
P2=D3+D2+D1 (1)
P1=D3+D1+D0 (2)
P0=D2+D1+D0 (3)
各式において、「+」は排他的論理和(EXOR)の論理演算を行うことを意味する。2つの論理値が異なる場合は、演算結果は「1」である。2つの論理値が等しい場合は、演算結果は「0」である。
【0094】
0行目のサブアドレス信号は、信号値「0000」を持つ。そのため、0行目のチェック信号は、信号値「000」を持つ。1行目のサブアドレス信号は、信号値「0001」を持つ。そのため、1行目のチェック信号は、信号値「011」を持つ。2行目のサブアドレス信号は、信号値「0010」を持つ。そのため、2行目のチェック信号は、信号値「111」を持つ。他の行についても、同様にして、チェック信号の信号値が設定される。本実施例では、アドレス信号が行ごとに異なる信号値を持つ。
【0095】
続いて、アドレス信号に基づいて、撮像装置が正常に画素信号を出力しているか否かを判断する方法を説明する。図8は、撮像装置の動作を判断するためのフローチャートである。図5と同じ動作を行うステップには、図5と同じ符号を付してある。この判断処理は、例えば、撮像装置の外部の信号処理部によって行われる。あるいは、撮像装置の内部の信号処理回路によって行われる。
【0096】
ステップS200で、N行目のアドレス信号を取得する。前述の通り、アドレス信号はサブアドレス信号とチェック信号とを含んでいる。
【0097】
ステップS801で、ハミング符号化されたアドレス信号を用いて参照画素307に異常が生じているかを判定する。具体的には、アドレス信号に対して復号処理を行う。これにより、アドレス信号のどのビットに異常が生じているかを判定することができる。復号処理については、公知のハミング符号の復号技術が用いられる。
【0098】
ステップS801で、参照画素307の異常が検知された場合は、ステップS802においてアドレス信号の信号値を訂正する。具体的には、異常であると判断された参照画素307に対応するビットの信号値を反転する。その後、ステップS803に進む。ステップS801で、参照画素307の異常が検知されなかった場合は、そのまま、ステップS803に進む。
【0099】
ステップS803では、前のステップで得られた信号値を持つアドレス信号を、N行目を示すアドレス信号として生成する。参照画素307に異常がない場合は、サブアドレス信号の信号値を持つアドレス信号が生成される。参照画素307に異常がある場合は、ステップS802で訂正されたサブアドレス信号の信号値を持つアドレス信号が生成される。
【0100】
以降の動作は、実施例1と同じである。ステップS204では、生成されたアドレス信号を、N行目のアドレス信号の期待値と比較する。アドレス信号の信号値が期待値に一致した場合は、ステップS205で撮像装置が正常に動作していると判定する。そして、N+1行目の読み出し動作に移行する。
【0101】
ステップS204においてアドレス信号の信号値が期待値に一致しない場合は、ステップS207で撮像装置の動作に異常があると判定する。つまり、撮像装置に故障が生じたと判断する。この場合は、ステップS208で、撮像装置の動作を停止する、あるいは、撮像装置が故障したことを示す警告を行う。
【0102】
以上に説明した通り、本実施例では、参照画素307の出力する画素信号が、属する行の位置を示すアドレス信号を構成する。このような構成により、指定された行から正常に画素信号が出力されたか否かを判断することができる。結果として、撮像装置の故障を正確に検知することができる。
【0103】
また、本実施例では、アドレス信号がハミング符号化演算に基づいて演算されたチェック信号を含む。このような構成により、一部の参照画素307に異常が生じていても、撮像装置の故障の有無を正確に判断することができる。つまり、チェック信号を構成する画素信号を出力する参照画素307が、参照画素の異常を検出する検出手段として機能している。
【0104】
以上の説明では、各行のアドレス信号を例に挙げたが、各列のアドレス信号を用いて撮像装置の動作の判定を行ってもよい。この場合、明細書中の「行」を「列」に読み替えればよい。
【実施例4】
【0105】
実施例4について説明する。本実施例の撮像装置は、1つの参照画素が互いに異なるレベルの複数の画素信号を出力する点において、実施例1と異なる。また、参照画素307の異常を検出する方法が、実施例1と異なる。そこで、以下では主として、実施例1と異なる部分を説明し、実施例1と同様の部分についての説明を適宜省略する。
【0106】
本実施例の撮像装置の構成は、実施例1と同じである。すなわち、図1は、実施例4に係る撮像装置の構成を模式的に示している。詳細な説明は省略する。
【0107】
本実施例の受光画素305、OB画素306、および、参照画素307の構成および動作は、実施例1と同じである。すなわち、図2は、本実施例の本実施例の受光画素305、OB画素306、および、参照画素307の等価回路を示している。受光画素305、および、参照画素307の構造は図13乃至図15に示されている。また、図3は、本実施例の撮像装置に用いられる駆動信号のタイミングチャート図である。詳細な説明は省略する。
【0108】
なお、実施例1の参照画素307は、出力制御回路304の制御に基づいて、電圧Vaに対応するレベルの画素信号と、電圧Vbに対応するレベルの画素信号とを、選択的に出力するように構成されている。しかし、実施例1においては、必ずしも、1つの参照画素307が、レベルの異なる2つの画素信号を出力しなくてもよい。これに対して、本実施例の参照画素307は、出力制御回路304の制御に基づいて、電圧Vaに対応するレベルの画素信号と、電圧Vbに対応するレベルの画素信号との両方を出力する。参照画素307の出力する画素信号のレベルが予期した通りに変化するかを判定することにより、参照画素307の異常の有無を判定することができる。
【0109】
本実施例では、同じ行に含まれる受光画素305、OB画素306、および、参照画素307が、共通の駆動制御線309に接続されている。そのため、受光画素305やOB画素306から画素信号が読み出されるのと並行して、参照画素307から画素信号が読み出される。前述の通り、参照画素307から画素信号は、その属する行を示すアドレス信号を構成する。そのため、このような構成により、指定された行から正常に画素信号が出力されたか否かを判断することができる。なお、同じ行に含まれる受光画素305、OB画素306、および、参照画素307は、それぞれ、電気的に分離された個別の駆動制御線に接続されてもよい。同じ行の受光画素305、OB画素306、および、参照画素307が、共通の駆動制御線309に接続されることは、これらの画素信号を並行して読み出す構成の1つの例である。
【0110】
参照画素307の出力する画素信号が構成するアドレス信号を詳細に説明する。本実施例のアドレス信号には、デジタル信号が用いられる。すなわち、参照画素307の画素信号は、デジタル信号の各ビットの信号値に相当する。図3が示す通り、電圧Vaに対応したレベルの画素信号が「0」を表し、電圧Vbに対応したレベルの画素信号が「1」を表す。画素信号を互いに区別するため、画素信号に符号D(m、n)を付している。mは行番号を表し、nは列番号を表す。
【0111】
図9は、本実施例のアドレス信号の信号値を模式的に示している。図9には、16行×4列の参照画素307の画素信号が例示されている。しかし、参照画素307の数はこれに限定されるものではない。1つの行に、4個の参照画素307が含まれている。つまり、本実施例では、アドレス信号は、4ビットのデジタル信号として表される。
【0112】
図9は、各行のアドレス信号が、撮像装置の動作状態に応じて、異なる信号値を持つ例を示す。具体的には、奇数フレームにおけるアドレス信号と、偶数フレームにおけるアドレス信号とが、互いに反転した信号値を持つ。例えば、2行目のアドレス信号は、奇数フレームにおいては、信号値「0010」を持つ。一方、2行目のアドレス信号は、偶数フレームにおいては、信号値「1101」を持つ。同様に、図9が示す通り、奇数フレームと偶数フレームとにおいて、アドレス信号の各ビットの信号値が反転する。出力制御回路304が、参照画素307に供給する電圧を、フレームごとに電圧Vaと電圧Vbとの間で切り替えることで、アドレス信号の各ビットの信号値を反転させることができる。
【0113】
ここで、参照画素307に異常がある場合、当該参照画素307の出力する画素信号のレベルが変化しない。図9は、2行目の列番号2の参照画素307に異常がある例を示している。奇数フレームでは、2行目のアドレス信号は、信号値「0000」を持つ。一方、偶数フレームでは、2行目のアドレス信号は、信号値「1101」を持つ。このように、信号値D(2、2)が反転しないため、2行目の列番号2の参照画素307に異常があることを検知することができる。
【0114】
アドレス信号の信号値を変化の仕方について、別の例を説明する。図10は、本実施例のアドレス信号の信号値を模式的に示している。図10には、16行×4列の参照画素307の画素信号が例示されている。しかし、参照画素307の数はこれに限定されるものではない。1つの行に、4個の参照画素307が含まれている。つまり、本実施例では、アドレス信号は、4ビットのデジタル信号として表される。
【0115】
図10に示された例では、撮像を行っている期間と、それ以外の期間とにおいて、同じ参照画素307から出力される画素信号によって構成されるアドレス信号の信号値が異なる。そして、受光画素305およびOB画素306から画素信号を出力する前、あるいは、1フレームの撮像を行う前に、参照画素307の画素信号を読み出す動作を行う。まず、出力制御回路304が、全ての参照画素307に、信号値「0」に対応する電圧Vaを供給する。この状態で、参照画素307の画素信号を読み出す。この読み出し動作を、撮像前フレーム1の読み出し動作と呼ぶ。次に、出力制御回路304が、全ての参照画素307に、信号値「1」に対応する電圧Vbを供給する。この状態で、参照画素307の画素信号を読み出す。この読み出し動作を、撮像前フレーム2の読み出し動作と呼び。参照画素307に異常がなければ、各参照画素307の出力する画素信号は、いずれも、「0」と「1」とを交互に示す。
【0116】
ここで、参照画素307に異常がある場合、当該参照画素307の出力する画素信号のレベルが変化しない。図10は、2行目の列番号2の参照画素307に異常がある例を示している。上述の撮像前フレーム1の読み出し動作と撮像前フレーム2の読み出し動作とを行うと、図10が示す通り、信号値D(2、2)が反転しないことがわかる。つまり、2行目の列番号2の参照画素307に異常があることを検知することができる。
【0117】
その後、撮像を行う時には、各行のアドレス信号が属する行に固有の信号値を持つように、出力制御回路304が電圧Vaおよび電圧Vbのいずれかを選択して参照画素307に供給する。
【0118】
このように、本実施例の撮像装置によれば、図9図10に示した方法により、参照画素307の異常を検知することができる。そこで、異常のある参照画素307の画素信号を含むアドレス信号に対しては、図5および図8に示されたアドレス信号と期待値との比較(ステップS204)を行わないなどの処理を行うことができる。これにより、誤って撮像装置が故障していると判断する可能性を低減することができる。すなわち、本実施例では、出力制御回路304が、参照画素の異常を検出する検出手段として機能している。
【実施例5】
【0119】
撮像システムの実施例について説明する。撮像システムとして、デジタルスチルカメラ、デジタルカムコーダ、カメラヘッド、複写機、ファックス、携帯電話、車載カメラ、観測衛星などがあげられる。図11に、撮像システムの例としてデジタルスチルカメラのブロック図を示す。
【0120】
図11において、1001はレンズの保護のためのバリアである。1002は被写体の光学像を撮像装置1004に結像させるレンズである。1003はレンズ1002を通った光量を可変するための絞りである。撮像装置1004には、上述の各実施例で説明した撮像装置が用いられる。
【0121】
1007は撮像装置1004より出力された画素信号に対して、補正やデータ圧縮などの処理を行い、画像信号を取得する信号処理部である。そして、図11において、1008は撮像装置1004および信号処理部1007に、各種タイミング信号を出力するタイミング発生部、1009はデジタルスチルカメラ全体を制御する全体制御部である。1010は画像データを一時的に記憶する為のフレームメモリ部である。1011は記録媒体に記録または読み出しを行うためのインターフェース部である。1012は撮像データの記録または読み出しを行う為の半導体メモリ等の着脱可能な記録媒体である。1013は外部コンピュータ等と通信する為のインターフェース部である。
【0122】
なお、撮像システムは少なくとも撮像装置1004と、撮像装置1004から出力された画素信号を処理する信号処理部1007とを有すればよい。その場合、他の構成は撮像システムの外部に配される。
【0123】
本実施例において、信号処理部1007は、撮像装置1004から画素信号が正常に出力されているかを判断する。そのため、信号処理部1007は、撮像装置1004から出力される複数のアドレス信号を受け取る。撮像装置1004の出力するアドレス信号は、上述の各実施例で説明したものと同じである。また、信号処理部1007が撮像装置1004の動作を判断する方法は、図5または図8およびその説明箇所に示された方法と同じである。すなわち、実施例1〜4の全ての説明が、本実施例に援用される。
【0124】
また、信号処理部1007は、アドレス信号に基づいて、撮像装置1004に含まれる参照画素307に異常があるか否かを判断してもよい。具体的には、図5に示されるように、信号処理部1007が、各アドレス信号に含まれる3つのサブ信号の信号値を比較して、そして、互いに信号値が一致する2つ以上のサブ信号に基づいて撮像装置の動作の判断を行う。
【0125】
あるいは、図8に示されるように、信号処理部1007は各アドレス信号に含まれるチェック信号を用いてアドレス信号を補正する。そして、信号処理部1007は、補正後のアドレス信号に含まれるサブアドレス信号に基づいて、撮像装置の動作の判断を行う。なお、サブアドレス信号およびチェック信号は、実施例3で説明したものと同じである。
【0126】
なお、信号処理部1007による画素の異常の有無の検知は、必ずしも行われなくてもよい。例えば、実施例2の撮像装置が用いられた場合、信号処理部1007は画素の異常の有無の検知を行わない。
【0127】
以上に説明した通り、撮像システムの実施例において、撮像装置1004には、実施例1乃至実施例4のいずれかの撮像装置が用いられる。このような構成によれば、撮像装置の故障を正確に検知することができる。
【実施例6】
【0128】
移動体の実施例について説明する。本実施例の移動体は、車載カメラを備えた自動車である。図12(a)は、自動車100の外観と主な内部構造を模式的に示している。自動車100は、撮像装置102、撮像システム用集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)103、警報装置112、主制御部113を備える。
【0129】
撮像装置102は、上述の実施例1〜4で説明したいずれかの撮像装置が用いられる。警報装置112は、撮像システム、車両センサ、制御ユニットなどから異常を示す信号を受けたときに、運転手へ向けて警告を行う。主制御部113は、撮像システム、車両センサ、制御ユニットなどの動作を統括的に制御する。なお、自動車100が主制御部113を備えていなくてもよい。この場合、撮像システム、車両センサ、制御ユニットが個別に通信インターフェースを有して、それぞれが通信ネットワークを介して制御信号の送受を行う(例えばCAN規格)。
【0130】
図12(b)は、自動車100のシステム構成を示すブロック図である。自動車100は、第1の撮像装置102と第2の撮像装置102を含む。つまり、本実施例の車載カメラはステレオカメラである。撮像装置102には、光学部114により被写体像が結像される。撮像装置102から出力された画素信号は、画像前処理部115によって処理され、そして、撮像システム用集積回路103に伝達される。画像前処理部115は、S−N演算や、同期信号付加などの処理を行う。
【0131】
撮像システム用集積回路103は、画像処理部104、メモリ105、光学測距部106、視差演算部107、物体認知部108、異常検出部109、および、外部インターフェース(I/F)部116を備える。画像処理部104は、画素信号を処理して画像信号を生成する。また、画像処理部104は、画像信号の補正や異常画素の補完を行う。メモリ105は、画像信号を一時的に保持する。また、メモリ105は、既知の撮像装置102の異常画素の位置を記憶していてもよい。光学測距部106は、画像信号を用いて被写体の合焦または測距を行う。視差演算部107は、視差画像の被写体照合(ステレオマッチング)を行う。物体認知部108は、画像信号を解析して、自動車、人物、標識、道路などの被写体の認知を行う。異常検出部109は、撮像装置102の故障、あるいは、誤動作を検知する。異常検出部109は、故障や誤動作を検知した場合には、主制御部113へ異常を検知したことを示す信号を送る。外部I/F部116は、撮像システム用集積回路103の各部と、主制御部113あるいは種々の制御ユニット等との間での情報の授受を仲介する。
【0132】
自動車100は、車両情報取得部110および運転支援部111を含む。車両情報取得部110は、速度・加速度センサ、角速度センサ、舵角センサ、測距レーダ、圧力センサなどの車両センサを含む。
【0133】
運転支援部111は、衝突判定部を含む。衝突判定部は、光学測距部106、視差演算部107、物体認知部108からの情報に基づいて、物体との衝突可能性があるか否かを判定する。光学測距部106や視差演算部107は、対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段の一例である。すなわち、距離情報とは、視差、デフォーカス量、対象物までの距離等に関する情報である。衝突判定部はこれらの距離情報のいずれかを用いて、衝突可能性を判定してもよい。距離情報取得手段は、専用に設計されたハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアモジュールによって実現されてもよい。
【0134】
運転支援部111が他の物体と衝突しないように自動車100を制御する例を説明したが、他の車両に追従して自動運転する制御や、車線からはみ出さないように自動運転する制御などにも適用可能である。
【0135】
自動車100は、さらに、エアバッグ、アクセル、ブレーキ、ステアリング、トランスミッション等の走行に用いられる駆動部を具備する。また、自動車100は、それらの制御ユニットを含む。制御ユニットは、主制御部113の制御信号に基づいて、対応する駆動部を制御する。
【0136】
本実施例において、撮像システム用集積回路103の異常検出部109は、撮像装置102から画素信号が正常に出力されているかを判断する。そのため、異常検出部109は、撮像装置102から出力される複数のアドレス信号を受け取る。撮像装置102の出力するアドレス信号は、上述の各実施例で説明したものと同じである。また、異常検出部109が撮像装置102の動作を判断する方法は、図5または図8およびその説明箇所に示された方法と同じである。すなわち、実施例1〜4の全ての説明が、本実施例に援用される。
【0137】
また、異常検出部109は、アドレス信号に基づいて、撮像装置102に含まれる参照画素307に異常があるか否かを判断してもよい。具体的には、図5に示されるように、異常検出部109が、各アドレス信号に含まれる3つのサブ信号の信号値を比較して、そして、互いに信号値が一致する2つ以上のサブ信号に基づいて撮像装置の動作の判断を行う。
【0138】
あるいは、図8に示されるように、異常検出部109は各アドレス信号に含まれるチェック信号を用いてアドレス信号を補正する。そして、異常検出部109は、補正後のアドレス信号に含まれるサブアドレス信号に基づいて、撮像装置の動作の判断を行う。なお、サブアドレス信号およびチェック信号は、実施例3で説明したものと同じである。
【0139】
なお、異常検出部109による画素の異常の有無の検知は、必ずしも行われなくてもよい。例えば、実施例2の撮像装置が用いられた場合、異常検出部109は画素の異常の有無の検知を行わない。また、故障の検知および異常のある参照画素307の検知を、画像前処理部115、画像処理部104が行ってもよい。
【0140】
本実施例に用いられた撮像システムは、自動車に限らず、例えば、船舶、航空機あるいは産業用ロボットなどの移動体(移動装置)に適用することができる。加えて、移動体に限らず、高度道路交通システム(ITS)等、広く物体認識を利用する機器に適用することができる。
【0141】
以上に説明した通り、自動車の実施例において、撮像装置102には、実施例1乃至実施例4のいずれかの撮像装置が用いられる。このような構成によれば、撮像装置の故障を正確に検知することができる。
【符号の説明】
【0142】
305 受光画素
306 オプティカルブラック画素
307 参照画素
1004 撮像装置
1007 信号処理部
102 撮像装置
103 撮像システム用集積回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15