(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2のセンサの前記ポジションを計算することが、少なくとも1つの電極を前記シース上に位置決めすることと、前記少なくとも1つの電極から複数の電流を生成することと、電流追跡装置における前記複数の電流に応じて前記ポジションを計算することと、を含む、請求項1に記載の方法。
前記第2のセンサの前記ポジションを計算することが、少なくとも1つの電極を前記シース上に位置決めすることと、前記少なくとも1つの電極から複数の電流を生成することと、電流追跡装置における前記複数の電流に応じて前記ポジションを計算することと、を含む、請求項11に記載の装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
概説
上で説明したように、侵襲性医療処置を実施している間、該処置を受けている患者に挿入された、カテーテル又はプローブなどの物品を追跡することは重要である。物品の画像のあらゆる位置ずれは、医療処置を実施している専門家にとって少なくとも不都合であり、更には、追跡対象物品の留置ミスにつながる場合がある。
【0015】
シースを介して挿入されるプローブの場合、プローブとシースは本来位置合わせされている。本発明の実施形態は、プローブ及びシースの画像のあらゆる位置ずれを修正するために、この本来の位置合わせを用いる。
【0016】
よって、本発明の一実施形態は、ヒトの患者に挿入されたプローブに取り付けられた第1のセンサ(典型的には磁気センサ及び/又は電極)の位置を計算する方法を提供する。中を通してプローブが挿入されるシースに取り付けられた第2のセンサ(典型的には電極)のポジションも計算される。
【0017】
プローブがシースを通過するのを制限しながら、計算されたプローブセンサの位置及びシースセンサのポジションに対する最適適合を達成するように、プローブ及びシースのそれぞれの形状を計算する。次に、プローブの計算された形状及びシースの計算された形状を使用して、プローブと整列しているシースの画像を提示する。
【0018】
以下の説明において、図面中の同様の要素は同様の数字により識別され、同様の要素は、必要に応じて識別数字に文字を添えることにより区別される。
【0019】
図1A、
図1B、及び
図1Cは、本発明の実施形態による、装置12を使用する侵襲性医療処置の概略図である。処置は、医療専門家14により行われ、一例として、本明細書の以下の説明における処置は、ヒトの患者18の心臓の心筋16の一部のアブレーションを含むと仮定される。ただし、当然のことながら、本発明の実施形態は、この特定の処置にだけ適用されるとは限らず、生物学的組織又は非生物学的材料に対する実質的に如何なる処置も包含し得る。
【0020】
アブレーションを実施するために、専門家14は、患者の管腔内に予め配置されているシース21に、プローブ20を挿入する。シース21は、プローブ20の遠位端22が、シースの遠位端23を出た後に、患者の心臓に入ることができるように位置付けられている。
図1B及び
図1Cは、プローブ20及びシース21の詳細をそれぞれ示している。
【0021】
プローブ20は、患者の心臓に挿入することができ、かつ磁気追跡装置及び/又はインピーダンス測定装置(これら装置については以下に詳細に記載する)を使用して追跡することができる、任意のタイプのカテーテルを含むことができる。例えば、プローブ20は、シャフト状カテーテル(shaft-like catheter)、ラッソーカテーテル、若しくはBiosense Webster(Diamond Bar,CA)製のPentaRayカテーテル、又はこれらのカテーテルと概ね同様のカテーテルを含むことができる。磁気追跡装置によって追跡するために、プローブは少なくとも1つの磁気センサを有し、インピーダンス測定装置によって追跡するために、プローブは少なくとも1つの電極を有する。
【0022】
明瞭化及び簡略化のために、以下の説明では、プローブ20は、
図1Bに示すように、略円筒形の構造を有し、その遠位先端22には磁気センサ24を有し、かつ、プローブの、遠位先端より近位側の要素上には、複数電極26を有していると仮定する。当業者であれば、この記述を、変更すべきところは変更して、ここで例示されているもの以外の、磁気センサのみを有するプローブ、電極のみを有するプローブ、及び磁気センサと電極の組み合わせを有するプローブに関して適応させることが可能であろう。全てのそのようなプローブは、本発明の範囲内に含まれると想定される。
【0023】
装置12は、装置の操作コンソール48内に位置するシステムプロセッサ46により制御される。コンソール48は制御装置49を含み、専門家14はこの制御装置49を使用してプロセッサと通信する。処置を実施している間、プロセッサ46は、プローブの要素の位置及び配向を追跡するために、モジュールバンク50内の磁気追跡モジュール52及び電流追跡モジュール54と通信する。
【0024】
モジュール52により、プロセッサは、患者18の体外にある磁気送信機がセンサ24で信号を発生させる、磁気追跡方法を使用すること可能となる。センサ24は、典型的には、1軸センサ(SAS)又は3軸センサ(TAS)であり、これらは共に当該技術分野において周知である。センサをトラバースした磁場に応じて、センサが信号を生成することにより、センサは、プローブの要素(この場合はセンサが配置されている遠位先端)のための位置及び配向トランスデューサの機能を果たすことができる。Biosense Webster(カリフォルニア州Diamond Bar)により製造されるCarto(登録商標)システムは、このような追跡方法を使用する。
【0025】
モジュール54により、プロセッサは、プローブの電極26と患者18の皮膚上の電極との間の電流を測定する電流追跡方法を使用することが可能となる。プロセッサ及びモジュール54は、測定された電流、又は対応するインピーダンスを使用して、プローブの、電極が配置されている要素の位置座標を生成する。Carto(登録商標)システムもまた、このような電流追跡方法を用いている。
【0026】
次に、プロセッサは、全てのプローブ要素の追跡されたポジション(位置及び配向)をプローブの機械的特性と共に適用し、力学モジュール56を使用して要素の修正座標を算出してよい。モジュールはまた、修正座標を使用して、プローブをグラフィカルに表示するためのデータを生成する。グラフィカル表示は、修正座標を結ぶ3次元(3D)ラインに従う。モジュール56は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,478,379号(Osadchyら)に記載されている、グラフィカル表示の算出方法を使用する。該方法は、プローブの機械的特性、並びにプローブ内のポジショントランスデューサの既知の位置及び配向を使用してコスト関数を算出し、プローブの修正形状を与える。かかる方法の説明は付録Aに提供されている。Carto(登録商標)システムもまた、そのようなグラフィカル表示方法を使用する。
【0027】
シース21(
図1C)は、患者の管腔に挿入することができ、かつ、シースによって形成された管内にプローブ20を通過させることができる、任意のタイプの管状構造物であってよい。プローブ20と同様に、1つ以上の磁気センサ及び/又は1つ以上の電極がシースに組み込まれてもよく、上記の磁気追跡装置及びインピーダンス測定装置によってそれぞれ追跡されてもよい。
【0028】
明瞭化及び簡略化のために、以下の説明では、シース21は、シースの遠位端23に複数電極28を有しており、磁気センサは有していないと仮定する。一実施形態では、4つの電極28が存在する。当業者であれば、この記述を、変更すべきところは変更して、磁気センサのみを有するシース、及び複数の磁気センサ及び複数電極を有するシースに関して適応させることが可能であろう。全てのそのようなシースは、本発明の範囲内に含まれると想定される。
【0029】
プロセッサ及びモジュール54は、電極28から測定された電流、又は電極の対応するインピーダンスを使用して、シース21の遠位端の位置及び配向の座標を生成する。
【0030】
プローブの座標と同様に、次に、プロセッサは、力学モジュール56及びシースの機械的特性を使用してシース遠位端の座標を修正し、シースの修正座標を生成することができる。修正座標は、シースのグラフィカル表示のデータを生成するために使用されてもよい。
【0031】
プロセッサ46及びバンク50のソフトウェアは、例えば、ネットワーク上で、電子的形態でプロセッサにダウンロードすることができる。あるいは又は更には、ソフトウェアは、例えば、光学的、磁気的、又は電子的記憶媒体のような非一時的有形媒体上で提供され得る。
【0032】
装置12を操作するために、バンク50は、典型的には、上記したモジュール以外のモジュール、例えば、遠位端22に対する力を測定するための力モジュール、及び遠位端に提供される潅注をプロセッサが制御できるようにする潅注モジュールなどを含む。簡潔化のために、
図1Aにはそのような他のモジュールは示されていない。全てのモジュールは、ハードウェア要素並びにソフトウェア要素を含み得る。
【0033】
2つの追跡方法、すなわち、モジュール52を使用する磁気追跡方法及びモジュール54を使用する電流追跡方法は、一方の装置によって生成された位置及び配向が、他方の装置によって生成された位置及び配向と対応するように、通常は一緒に登録される。付録Bは、プローブ20などのプローブが2つの追跡方法を登録して較正マップを生成する方法について説明する。
【0034】
プロセッサ46は、モジュールによって計算された位置及び配向の座標を使用して、プローブ20及びシース21の画像を、患者の心臓の3次元マップ60上に表示し、これがスクリーン62に提示される。しかしながら、上記の位置合わせ方法又は当該技術分野で既知の別の位置合わせ方法を適用するにもかかわらず、通常は、プローブの計算された位置及び/又は配向の座標と、シースの計算された位置及び/又は配向の座標との間に食い違いが生じる。通常、この食い違いが、プローブの画像とシースの画像の位置ずれの原因となる。本発明の実施形態は、後述するように、プローブ/シースの理論的なハイブリッドモデルを構築して使用することによって、また、該モデルを使用してプローブ曲線及びシース曲線を計算することによって、そのような画像の位置ずれを克服する。
【0035】
図2は、本発明の実施形態による、シース画像とプローブ画像の位置ずれの可能性を克服するためにプロセッサ46によって実行される工程のフローチャートであり、
図3は、これら工程の一部を示すブロック図である。
【0036】
フローチャートの工程を実施する前に、通常は、モジュール52及び54の2つの追跡装置が、例えば、付録Bに説明するように登録される。
【0037】
装置12を操作する前に、ハイブリッドモデル構築工程100において、プロセッサは、力学モジュール56において使用される、理論合成プローブ/シースの合成プローブ/シースモデル154を構築する。合成プローブ/シースのモデルは、シースの特性156、すなわち、シースの機械的特性及び電極28の位置と、プローブの特性158、すなわち、プローブの機械的特性及びトランスデューサ24及び26の位置と、を兼ね備えている。
【0038】
プローブ20はシース21内で摺動するので、これら2つの実体は、実際には本来整列されていることが理解されるであろう。プローブはシース21内で摺動するので、どちらの特性をモデルで使用するかの選択は、シース遠位端に対するプローブ遠位端のポジションに依存することも理解されるであろう。例えば、プローブ遠位端がシース内にある場合には、プローブの機械的特性は使用されないか、又は、シースの機械的特性に与えられる重みに比べて、与えられる重みは小さい。
【0039】
全ての場合において、プローブ遠位端の位置にかかわらず、プローブトランスデューサの位置及びシース電極の位置がモデルにおいて使用され得る。磁気センサは、電極の位置値に比べて有意により正確な位置値を与えるので、ここで考慮される例においては、モデルは、シース電極の位置に比べて、磁気センサ24によって得られるプローブの遠位位置に対して実質的により高い重みを与える。広くは、シースが磁気センサを有する場合を含め、モデルは、電極によって得られる位置よりも、磁気センサによって得られる位置に対してより大きな重みを与える。
【0040】
工程100において、プローブ及びシースは、単一シャフトとしてモデル化される。プローブセンサはこのシャフト上に固定されているが、シースセンサである電極28(これらは互いに対して固定されている)は、このシャフト上を自由に摺動する。プロセッサは、米国特許第8,478,379号及び付録Aに記載される方法を用いて、力学モジュール56により動作し、この場合には、更なる最適化パラメータである摺動変数sが、本明細書に記載されるコスト関数に組み込まれる。
【0041】
よって、付録Aの等式(8)は、次の等式(A)となり:
Cost(x
0,r
k,d,s)=λ
intE
int+λ
posE
pos+
λorEor (A)
式中、sは摺動変数であり、等式(A)の他の変数は、等式(8)で定義されたのと同様である。
【0042】
摺動変数sは、センサ24及び電極28の測定値から求められる、プローブ遠位端とシース遠位端との間の距離に関連する値を有する。工程100において、プロセッサは摺動変数の許容可能な値の範囲を格納する。
【0043】
一実施形態では、摺動変数sの最小値は、プローブの遠位先端がシース内部の、典型的にはシースの近位電極28と遠位電極28との中間に位置する状態に対応する。摺動変数sの最大値は、プローブがシースから出て、プローブの最近位電極26とシースの最遠位電極28との間が約50mm(標準値)以下である状態に対応する。これにより、電極を有さない約50mm以下のプローブシャフトが確実に補間される。
【0044】
例えば、プローブの最近位電極がその先端から40mmの位置にあり、シースの最遠位電極がその先端から12mmの位置にある場合には、摺動変数sの最大値は78mmに設定される。
【0045】
フローチャートのプローブ計算工程102において、プロセッサはモジュール52及び54を使用して、プローブ20の遠位端及び近位部分の位置値及び配向値150を計算する。
【0046】
シース計算工程104において、プロセッサはモジュール54を使用して、シース21の遠位端の位置値及び配向値152を計算する。(シースが磁気センサを有する場合、プロセッサはモジュール52を使用して、これらのセンサの位置値及び配向値を計算する。)
【0047】
モデル構築工程106において、プロセッサは、工程102及び104で得た値、及び工程100で生成されたハイブリッドモデルを使用して、理論合成プローブ/シースを公式化する。
【0048】
モジュール入力工程108において、合成プローブ/シースのパラメータが力学モジュール56に入力され、該モジュールは、工程100で生成された修正されたコスト関数を最小にすることによって、プローブ曲線に関する3次元座標及びシース曲線に関する3次元座標を計算する。コスト関数を最小にする一方で、摺動変数の最適値も計算される。計算された摺動変数値を使用して、計算されたシャフト形状をプローブ部分とシース部分に分割して表示する。
【0049】
工程102及び104で得た値も力学モジュールに入力する。
【0050】
判定工程110において、プロセッサは、摺動変数が工程100で定義された範囲内であるかどうかをチェックする。
【0051】
判定工程110が肯定応答を返した場合には、第1の提示工程112において、プロセッサは、工程108で計算されたプローブ曲線160及びシース曲線162をスクリーン62に提示する。
【0052】
判定工程が否定応答を返した場合には、すなわち、プローブがシースから遠過ぎるか、又はシースのかなり内部にある場合には、第2の提示工程114において、プロセッサは、(工程108においてモジュール56に入力された別個のプローブ値及びシース値から)別個の「単独の」プローブ曲線164及びシース曲線166を生成し、これらの曲線をスクリーン62に提示する。
【0053】
図4A及び
図4Bは、本発明の実施形態による、判定工程110が肯定応答を返した場合のスクリーン62上の表示を示す概略図である。
図4Aにおいて、プローブ遠位端22は、抜け出ているシース遠位端53を有する。この場合、プローブ曲線160Aは、シース曲線162Aから抜け出ているとして示されており、かつシース曲線162Aと整列している。
図4Bでは、プローブ遠位端22は、シース遠位端53から抜け出ていない。この場合、シース曲線162Bは少なくとも部分的に透明にされていてもよく、そうすることで、プローブ曲線160Bの、シース内にある部分が視認可能となる。代替的に又は追加的に、プロセッサは、プローブ20の遠位端の位置を示すマーカー170を、シース曲線162Bの上に重ね合わせてもよい。
【0054】
付録A
図5A及び
図5Bは、本発明の実施形態による、自由形状から逸脱したプローブ20を概略的に示す図である。
図5Aは、心筋16内でのプローブ20の実際の湾曲の表示を示しており、ここでプローブ20は、電極26A、26B、26C、26Dを含み、これら電極は、この実施形態では位置トランスデューサとして機能する。
図5Bは、プローブ20の計算された幾何モデル260の図である。コンソール48が受信した信号に基づいて測定された電極26A、26B、26C、26Dの位置は、それぞれ、ポイントm
0、m
1、m
2、及びm
3によって表わされる。代替的に又は追加的に、磁気位置検知システムでは、位置トランスデューサは、位置及び方向を与える1軸磁気センサ(SAS)、及び/又は位置及び完全配向行列を提供する3軸磁気センサ(TAS)を含んでもよい。
【0055】
モデル260では、ポイントe
0、e
1、e
2、及びe
3は、測定位置であるポイントm
0、m
1、m
2、及びm
3基づいて計算された、電極26A、26B、26C、26Dの位置を示す。本発明の実施形態によるコスト関数(以下に記載する)は、ポイントe
jとm
jとの間の最良の整合を探し出すために用いられる。モデル260は、回転(曲げ及びねじれ)を可能にする接合部268及び270で連結された直線状の剛体セクション262、264、及び266を含む。セクション262の位置は、位置ベクトルx
0で記述され、セクション262の配向は、行列o
0によって与えられる。配向行列o
0は、その
【数1】
軸がセクション262と垂直であり、
【数2】
軸がセクション262に沿って向いている、セクション262の局所的基準座標系である。セクション264は、セクション262の末端部から(すなわち、連結接合部268を介して)開始し、その配向は行列o
1によって与えられる。セクション266は、セクション264の末端部から(すなわち、連結接合部270を介して)開始し、その配向は行列o
2によって与えられる。行列o
0、o
1、及びo
2は、プローブの実際の状態(すなわち、形状)を記述し、外力により、プローブがその自由状態(すなわち、外力がプローブにかけられていない状態)からずれている。モデル形状260は3つのセクションを含むが、別のモデル形状は、3つ未満又は3つ超のセクションを備えてもよい。
【0056】
本発明の実施形態は、プローブモデルの制約内で、ポイントe
jと測定値m
jの間の最良の整合を決定する。ポイントe
0、e
1、e
2、及びe
3の計算された位置は、モデルによりセクション262、264、及び266上に制約されるが、実際の位置のトランスデューサ(すなわち、電極26A、26B、26C、26D)は、正確にこれらのポイントにない場合があることに留意されたい。自由状態におけるプローブ12の物理的特性は、以下のパラメータ{N,L
k,G
k(d),P
k}により定義される。
・N−セクション数。
・L
k−セクション長(同一である必要はない)。0≦k<N
・G
k(d)−偏向可能なプローブ用の偏向パラメータdの関数としての回転行列(又は、前形状プローブ用の定数行列)であり、1≦k<N。この行列は、外力が加えられていないとき(すなわち、自由な形状のプローブ)のセクションkとセクション(k−1)との間の相対回転を表わす。
・P
k−0≦k<Nの場合のセクションk上の位置トランスデューサのリスト。各位置トランスデューサは、セクションの開始位置からの距離、その種類(例えば、電極又は磁気センサ)、及びその相対的重要度(コスト関数を算出する際の重みであり、
【数3】
で表され、以下で議論される)によって表される。各区間のリストには、ゼロ個を含めて任意の個数の位置トランスデューサが含まれ得る。
【0057】
プローブ20の物理的特性は、パラメータ{A
k,B
k}で表され、このパラメータは、セクションkとセクション(k−1)との間の接合部の、それぞれ曲げ及びねじれに対する抵抗力を示す。
【0058】
往々にして、
図5Bに示すように、プローブ20の実際位置(電極26A、26B、26C、26Dの位置によって規定される)は、ポイントm
0、m
1、m
2、及びm
3とは異なる。本発明の実施形態では、プローブ20の物理的特徴を表わすプローブモデルが定義され、プロセッサ46がプローブの機械的構造のアルゴリズムを適用し、プローブモデルと測定値との間の最良の整合を達成する。結果は、プローブ20の最小コスト状態であり、プローブ20の位置及び形状(すなわち、自由形状とは異なる実際形状)、並びにその偏向値(偏向可能なプローブについて)を表わす。偏向値は、偏向可能なプローブにおける一群のプローブの自由形状を表わすモデルパラメータである。典型的には、単一の偏向パラメータは、いくつかの接合部に影響を及ぼす。偏向パラメータによって定義された回転とは異なる任意の接合部の回転により、コスト関数が増加する。
【0059】
プローブ機械的構造のアルゴリズムは、固有エネルギー、位置誤差、及び配向誤差の重み付き組み合わせであるコスト関数を使用する。固有エネルギーは、プローブ20の自由形状からのずれを表わす。位置誤差は、プローブモデルとプローブ状態から得られる位置トランスデューサの位置と、実際位置の測定値との間の位置座標の誤差を表わす。最後に、配向誤差は、プローブモデル及びプローブ状態から得られる位置トランスデューサの配向と、実際配向の測定値との間の角度配向座標の誤差を表わす。
【0060】
図6は、本発明の実施形態による、プローブ位置検知中に経験するアーチファクトの検出と補償に使用される機能的要素を概略的に示すブロック
図280である。具体的には、この図は、プローブ20の位置決定の過程においてプロセッサ46で実行されるソフトウェアの機能要素を示す。これらの機能要素については、以下の図を参照してより詳細に説明する。
【0061】
図7は、本発明の実施形態による、患者18の体内に配置されるプローブ20の可視化方法を概略的に示すフローチャートである。まず、プローブモデルをプローブ定義モジュール284に予め読み込む(工程300)。上述のように、プローブモデルはプローブ20の構造と物理的特性を表わし、通常は、使用されるカテーテル又はその他プローブの種類専用に定義される。医療専門家14は、例えば、所定の選択項目のリストから、モデルを選択することができる。
【0062】
医療専門家14が患者18内のプローブ12を動かすと、データ入力モジュール282は、電極26A、26B、26C、26Dから一定間隔で出力位置信号を収集する(工程302)。プローブモデルで定義される各位置トランスデューサ26A、26B、26C、26Dについて、データ入力モジュール282は、対応する位置測定値を受信する。この測定値としては、位置ベクトル(全種類のトランスデューサ)、方向(SAS)、及び/又は全配向(TAS)を挙げることができる。更に、測定値の重みは、測定値の信頼水準に応じて各測定値と関連付けられる。重みは、高精度の測定値については高い値であり、期待誤差が大きい測定値については低い値である。欠測値については重みはゼロになる。測定値パラメータとしては以下のものが挙げられる。
・m
j−位置測定値
[数4]
mjor
−配向測定値(全配向又は方向のみが含まれる場合がある)
【数5】
−測定値の重み
【0063】
データ入力モジュール282が入力値を受信した後、コスト関数計算モジュール286はコスト関数を適用してプローブの状態コストを定義し、プローブ定義モジュール284で定義されるプローブモデルと、データ入力モジュール282から受信される位置データとの間の適合の質を計算する(工程304)。この適合は、モデルによる最小コストでプローブの形状を定義し、順に、位置トランスデューサの位置と対応するプローブの長さに沿ったポイントの修正座標を与える。プローブ状態は、プローブ20の位置及び形状、並びにその偏向値(偏向可能なプローブについて)を表わす。プロセッサ46は、工程304においてプローブ状態を決定する。この状態は、変数{x
0,r
k,d}で与えられる。
・x
0−第1のセクションの開始ポイントの位置(すなわち、
図5B中)。
・r
k−セクションkのセクションk−1に対する配向(0<k<Nのとき)、及び第1のセクションの全体的な配向(k=0のとき)
【数6】
・d−偏向パラメータの値(偏向可能なプローブについて)。これらの値は、プローブ20の位置及び形状に影響しないが、コスト関数の計算に影響し、したがってプローブ機械的構造のアルゴリズムの結果に影響する。
【0064】
工程304の一部として、コスト関数計算モジュール286は、プローブ状態のコストをコスト最小化モジュール294に送り、コスト関数の最小値を達成する最小コストのプローブ状態を検出する(すなわち、最良の整合)ため、コスト関数に最小化アルゴリズムを適用する。最後に、最小コストのプローブ状態を決定した後、スクリーン62(
図1)は、患者18内のプローブ20の位置を提示する(工程306)。典型的には、プローブ位置は、モデル260に対応する位置、配向、及び形状を有する、ディスプレイ上のアイコンの形態で示される。
【0065】
図8は、本発明の実施形態による、コスト関数計算モジュール286がデータ入力モジュール282により受信されるプローブ測定値にコスト関数を適用する方法を概略的に示すフローチャートである。コスト関数は、プローブモデル、位置測定値、及びプローブ状態によって決まる。プローブ状態{x
0,r
k,d}に対してコスト関数を最小化することで、プローブモデルと測定値と間の最良の整合を達成する。コスト関数の計算も、測定値に割り当てられる一連の適応重みによって決まる。適応重みは、コスト関数の最小化の過程で動的に変化し、アルゴリズムにプローブモデルに完全に一致しない測定値を無視させてよい(以下に記載)。適応重みは、
【数7】
で示される。
【0066】
コスト関数は、固有エネルギー、位置誤差、及び配向誤差の3つの部分を有する。第1に、固有エネルギー計算モジュール288は、固有エネルギースコアを計算し(工程310)、プローブ20の自由形状からのずれ(又は、偏向可能なプローブについては、偏向変数によりパラメータ化された一群の自由形状)を表わす。接合部268及び270については、実際の相対配向と現在の偏向との間の配向差は、以下の式で計算される。
【数8】
【0067】
固有エネルギー計算モジュール88は、この配向差を以下の曲げ及びねじれ角度に変換する。
【数9】
【0068】
以下は、関数角度(r)の定義であり、式中、rは回転を表わす3×3単位の行列である。
【数10】
【0069】
コスト関数に戻ると、固有エネルギー計算モジュール288は、プローブモデルパラメータ{A
k,B
k}を用いて固有エネルギースコアを計算する。
【数11】
【0070】
次に、位置誤差計算モジュール290は、プローブモデル及びプローブ状態により与えられる位置トランスデューサの位置と、実際の測定値との間の位置誤差を表わす位置誤差スコアを計算する(工程312)。位置誤差計算モジュール290は、プローブモデル及びプローブ状態e
j、並びに対応する測定値m
jにより、電極26A、26B、26C、26Dの位置を示す。位置誤差計算モジュール290は、以下に従って重み付き位置誤差を計算する。
【数12】
式中、Mは位置トランスデューサの数である。
【0071】
次に、配向誤差計算モジュール292は、プローブモデル及びプローブ状態により与えられる電極26A、26B、26C、26Dの位置と、データ入力モジュール282が受信する実際の測定値m
jとの間の配向誤差を表わす配向誤差スコアを計算する(工程314)。プローブモデルで表される、プローブ20に沿った様々なポイントの配向は、モデルの接合部(位置ではなく)で突然変化する不連続関数である。モデルに従い、関連する全ての位置トランスデューサの配向
[数13]
ejor
を計算した後、配向誤差計算モジュール292は、測定した配向
[数14]
mjor
に対する角度差:
[数15]
{aj, bj} = 角度 ((ejor)T・mjor) (6)
及び、総配向誤差:
【数16】
を計算する。
【0072】
次に、コスト関数計算モジュール286は、3つの部分(すなわち、固有エネルギー、位置誤差、及び配向誤差)の重み付き組み合わせとしてコスト関数を計算する(工程316)。
[数17]
Cost(x
0, r
k, d) = λ
intE
int + λ
posE
pos + λ
orE
or (8)
【0073】
値{λ
int,λ
pos,λ
又は}は、位置誤差及び配向誤差に対する、プローブ20の自由形状からのずれの相対重要度を表わす。
【0074】
上述のように、コスト関数計算モジュール286は、計算したコスト関数(すなわち、プローブ状態のコスト)を最小化モジュール294に送り、プローブモデルとデータ入力モジュール282により受信された実際の測定値との間の最良の整合を達成するように、プローブ状態変数に対して関数Cost(x
0,r
k,d)を最小化する(工程318)。最小化は、任意の好適な数値的方法により行うことができる。本発明の一実施形態では、例えば、コスト関数計算モジュール286は、ブロイデン−フレッチャー−ゴルトファルプ−シャノ(Broyden-Fletcher-Goldfarb-Shanno)(BFGS)の最小化アルゴリズムを利用する。
【0075】
工程318におけるコスト関数最小化に反復アルゴリズムを使用し(すなわち、各アルゴリズムの繰り返しにより解の推測値が改善する)、プローブ20のポジション及び形状が測定値間でゆっくりと変化するため、各一連の測定に対し、通常は、コスト関数最小化アルゴリズムの繰り返し適用回数が1回のみで十分であることを、発明者らは見出した。各最小化反復後、コスト最小化モジュール294は、プローブ状態をコスト関数計算モジュール286に送り、個々のトランスデューサの位置誤差に照らして測定値の適応重みを変更できる。典型的には、インピーダンス検知電極に対応する重みが適応されるが、磁気位置センサなどのより精密なセンサでは重みを1のままとする。
【0076】
コスト関数計算モジュール286は、以下の手順で重み適応を行う。
1.初期の新規重みを計算する
【数18】
(9)
式中、値σは、期待誤差が大きいセンサについてより大きく、そのため、対応する適応重みが減少する前により大きい誤差をもたらす。
2.初期重みを正規化する
【数19】
3.上記よりの各重みを1まで制限する
【数20】
4.適応重みを更新する
【数21】
【0077】
この適応手順は、最小化プロセスが、一貫して大きい誤差を与える位置トランスデューサを無視できるようにするが、余分な位置トランスデューサを無視できるようにはしない。
【0078】
付録B
図9は、発明の実施形態による、較正マップを生成するための方法を示すフローチャートである。最初の工程366において、心室に対する医療処置の実施に先立ち、心筋16の心室(又は、必要に応じて別の体腔)にハイブリッドプローブ(本明細書ではプローブ20(
図1A、
図1B)であると仮定する)を挿入する。磁気測定工程368では、磁場センサ24を使用してプローブの位置座標を決定し、そうしてプローブ電極26の特定位置を探し出す。次に、インピーダンス測定工程370において、これら電極から一連の体表電極に流れる電流を測定することによって、これらの電極におけるインピーダンス測定値を得る。次に、相関工程372において、インピーダンス測定値を、工程368において決定された電極位置と相関させる。相関させることにより、磁気計測システムがインピーダンス計測システムと共に登録される。
【0079】
判定工程374において、医療処置の必要性に基づいて、較正マップに対して十分なデータが収集されたかどうかについての決定が行われる。より多くのデータが必要な場合、ハイブリッドプローブは、位置決め工程376において心室内の新たな位置に移動し、工程368〜374が繰り返される。実際には、工程368及び370は、マッピングされる空洞の異なる部分を通じてプローブを徐々に移動させながら、工程366〜376も同様に連続プロセスで実行され得るように、連続して行われる。
【0080】
一旦十分なデータが収集されると、マッピング工程378において較正マップが生成される。典型的には、較正マップは、磁気検知によって決定された座標のグリッドを含み、これら座標は、グリッド内の各ポイントにおいて記録された一連のインピーダンス測定値(体表面電極に対する)と共に登録される。あるいは、インピーダンス測定値の各組に対して、マップが実際の較正された位置座標を示すように、グリッドは反転され得る。
【0081】
上に述べた実施形態は例として挙げたものであり、本発明は上記に具体的に示し、説明したものに限定されない点は理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記されている種々の特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせと、前述の説明を読むことに基づいて当業者が想起するであろう、先行技術に開示されていない変形例及び修飾との両方を含む。
【0082】
〔実施の態様〕
(1) 方法であって、
ヒトの患者に挿入されたプローブに取り付けられた第1のセンサの位置を計算することと、
中を通して前記プローブが挿入されるシースに取り付けられた第2のセンサのポジションを計算することと、
前記プローブが前記シースを通過するのを制限しながら、前記計算されたプローブセンサの位置及びシースセンサのポジションに対する最適適合を達成するように、前記プローブ及び前記シースのそれぞれの形状を計算することと、
前記プローブ及び前記シースの前記計算されたそれぞれの形状を使用して、前記プローブと整列している前記シースの画像を提示することと、を含む、方法。
(2) 前記プローブに取り付けられた前記第1のセンサの前記位置を計算することが、少なくとも1つの磁気センサを前記プローブ上に位置決めすることと、磁気追跡装置を使用して前記位置を計算することと、を含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記第2のセンサの前記ポジションを計算することが、少なくとも1つの電極を前記シース上に位置決めすることと、前記少なくとも1つの電極から複数の電流を生成することと、電流追跡装置における前記複数の電流に応じて前記ポジションを計算することと、を含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記プローブ及び前記シースの前記それぞれの形状を計算することが、前記プローブ及び前記シースを単一シャフトとしてモデル化することを含む、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記第1のセンサが前記シャフト上に固定される、実施態様4に記載の方法。
【0083】
(6) 前記第2のセンサが、前記シャフト上を自由に摺動する、実施態様4に記載の方法。
(7) 前記プローブ及び前記シースの前記それぞれの形状を計算することが、コスト関数を使用して前記それぞれの形状を計算することを含む、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記プローブの遠位端と前記シースの遠位端との間の距離に関する値を有する摺動変数を、前記コスト関数に組み込むことを含む、実施態様7に記載の方法。
(9) 前記摺動変数の最小値が、前記シース内部にある前記プローブの遠位先端に対応している、実施態様8に記載の方法。
(10) 前記摺動変数の最大値が、事前設定された距離以下の距離だけ分離された前記第1のセンサ及び前記第2のセンサに対応している、実施態様8に記載の方法。
【0084】
(11) 装置であって、
ヒトの患者に挿入されるように構成されているプローブと、
前記プローブに取り付けられた第1のセンサと、
中を通して前記プローブが挿入されるシースと、
前記シースに取り付けられた第2のセンサと、
プロセッサと、を含み、前記プロセッサが、
前記プローブに取り付けられた前記第1のセンサの位置を計算し、
前記シースに取り付けられた前記第2のセンサのポジションを計算し、
前記プローブが前記シースを通過するのを制限しながら、前記計算されたプローブセンサの位置及びシースセンサのポジションに対する最適適合を達成するように、前記プローブ及び前記シースのそれぞれの形状を計算し、かつ
前記プローブ及び前記シースの前記計算されたそれぞれの形状を使用して、前記プローブと整列している前記シースの画像を提示する、ように構成されている、装置。
(12) 前記プローブに取り付けられた前記第1のセンサの前記位置を計算することが、少なくとも1つの磁気センサを前記プローブ上に位置決めすることと、磁気追跡装置を使用して前記位置を計算することと、を含む、実施態様11に記載の装置。
(13) 前記第2のセンサの前記ポジションを計算することが、少なくとも1つの電極を前記シース上に位置決めすることと、前記少なくとも1つの電極から複数の電流を生成することと、電流追跡装置における前記複数の電流に応じて前記ポジションを計算することと、を含む、実施態様11に記載の装置。
(14) 前記プローブ及び前記シースの前記それぞれの形状を計算することが、前記プローブ及び前記シースを単一シャフトとしてモデル化することを含む、実施態様11に記載の装置。
(15) 前記第1のセンサが前記シャフト上に固定されている、実施態様14に記載の装置。
【0085】
(16) 前記第2のセンサが、前記シャフト上を自由に摺動する、実施態様14に記載の装置。
(17) 前記プローブ及び前記シースの前記それぞれの形状を計算することが、コスト関数を使用して前記それぞれの形状を計算することを含む、実施態様11に記載の装置。
(18) 前記プローブの遠位端と前記シースの遠位端との間の距離に関する値を有する摺動変数を、前記コスト関数に組み込むことを含む、実施態様17に記載の装置。
(19) 前記摺動変数の最小値が、前記シース内部にある前記プローブの遠位先端に対応している、実施態様18に記載の装置。
(20) 前記摺動変数の最大値が、事前設定された距離以下の距離だけ分離された前記第1のセンサ及び前記第2のセンサに対応している、実施態様18に記載の装置。