【0008】
[モルタル調製工程]
本工程は、セメント、細骨材、増粘剤および水を原料として用いて、モルタルを調製する工程である。
セメントの例としては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントや、高炉セメント、フライアッシュセメント等の混合セメントや、エコセメント等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
細骨材の例としては、川砂、山砂、陸砂、海砂、砕砂、珪砂、スラグ細骨材、及び軽量細骨材、またはこれらの混合物等が挙げられる。
細骨材の量は、特に限定されるものではなく、コンクリートにおける一般的な量であればよい。例えば、セメント100質量部に対して、好ましくは50〜500質量部、より好ましくは100〜400質量部、特に好ましくは150〜300質量部である。該配合量が上記範囲内であれば、コンクリートの硬化後の強度が向上し、収縮率が小さくなる。
細骨材率は、好ましくは5〜70%、より好ましくは20〜60%、特に好ましくは30〜55%である。細骨材率が上記範囲内であれば、硬化前のコンクリートの流動性や作業性(ワーカビリティ;材料分離抵抗性等)が向上する。
【実施例】
【0016】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
使用材料は、以下に示すとおりである。
[使用材料]
(1)セメント;普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
(2)細骨材;山砂
(3)増粘剤;セルロース系増粘剤、太平洋マテリアル社製、商品名「太平洋エルコン」
(4)粗骨材;太平洋セメント社製、商品名「アサノライト」、絶対乾燥状態のもの、絶乾密度:1.29g/cm
3、「JIS A 1134:2006(構造用軽量粗骨材の密度及び吸水率試験方法)」に準拠して測定した24時間吸水率:19.2%
(5)セメント分散剤;高性能AE減水剤、BASFジャパン社製、商品名「マスターグレニウムSP8SV」
(6)AE剤;BASFジャパン社製、商品名「マスターエア303A」
(7)水;水道水
【0017】
[実施例1〜3]
表1に示す配合に従って、セメント、細骨材、及び、増粘剤を強制2軸ミキサ(公称容量:60リットル)に投入した後、20秒間空練りした。次いで、水セメント比が55%となる量の水であって、予め、セメント分散剤0.7質量部(固形分換算:0.14質量部)およびAE剤を混合した水、並びに、補正水を、ミキサに投入して、60秒間混練した後、粗骨材(絶対乾燥状態のもの)を投入し、さらに60秒間混練して、コンクリートを調製した(表2中、「混練方法」の「I」と示す。)。
なお、補正水とは、混練中に粗骨材に吸収される水を考慮して追加される水である。該水は、粗骨材に吸収されることから、水セメント比の数値の算出において考慮しないものとする。また、該量は、粗骨材100質量部に対して2質量部となる量とした。
得られたコンクリートのスランプ(混練の終了の直後、30分後、60分後)を、「JIS A 1101(コンクリートのスランプ試験方法)」に準拠して測定した。
また、得られたコンクリートの材齢7日、及び、28日における圧縮強度を、「JIS A 1108(コンクリートの圧縮強度試験方法)」に準拠して測定した。
なお、コンクリートの調製や圧縮強度の測定における養生等は、20℃の条件下で行った。
【0018】
[比較例1]
粗骨材を、24時間水に浸漬して、プレウェッティングを行った。
表1に示す配合に従って、セメント、細骨材、及び、及び、プレウェッティングを行った粗骨材160質量部(絶対乾燥状態の粗骨材134質量部が、プレウェッティングによって26質量部の水を吸収したもの)を強制2軸ミキサ(公称容量:60リットル)に投入した後、20秒間空練りした。次いで、水セメント比が55%となる量の水であって、予め、セメント分散剤0.7質量部(固形分換算:0.14質量部)およびAE剤を混合した水を、ミキサに投入して、120秒間混練してコンクリートを調製した(表2中、「混練方法」の「II」と示す。)。
得られたコンクリートの、スランプ(混練の終了の直後、30分後、60分後)、並びに、材齢7日、及び、28日における圧縮強度を、実施例1と同様にして測定した。
なお、コンクリートの調製や圧縮強度の測定における養生等は、20℃の条件下で行った。
[比較例2]
プレウェッティングを行った粗骨材の代わりに、プレウェッティングを行っていない粗骨材(絶対乾燥状態のもの)を使用し、かつ、水セメント比が55%となる量の水に加えて、さらに、補正水をミキサに投入する以外は、比較例1と同様にしてコンクリートを調製した。
得られたコンクリートのスランプ(混練の終了の直後、30分後、60分後)を、実施例1と同様にして測定した。なお、比較例2では、コンクリートの流動性の低下の程度が大きく、圧縮強度の測定は不可能であった。
【0019】
[比較例3]
増粘剤を使用しない以外は、実施例1と同様にしてコンクリートを調製した。
得られたコンクリートの、スランプ(混練の終了の直後、30分後、60分後)、並びに、材齢7日、及び、28日における圧縮強度を、実施例1と同様にして測定した。
[比較例4]
表1に示す配合に従って、セメント、細骨材、粗骨材(絶対乾燥状態のもの)、及び、増粘剤を強制2軸ミキサ(公称容量:60リットル)に投入した後、20秒間空練りした。次いで、水セメント比が55%となる量の水であって、予め、セメント分散剤0.7質量部(固形分換算:0.14質量部)およびAE剤を混合した水、並びに、補正水をミキサに投入して、120秒間混練してコンクリートを調製した。
得られたコンクリートの、スランプ(混練の終了の直後、30分後、60分後)、並びに、材齢7日、及び、28日における圧縮強度を、実施例1と同様にして測定した。
結果を表2に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
【表2】
【0022】
表2から、本発明の製造方法によって得られた実施例1〜3のコンクリートにおける、スランプの低下の程度(混練直後のスランプの数値から60分後のスランプの数値を減算したもの;以下、同様)は、3.5〜7.0cmであることがわかる。
これに対して、比較例1(プレウェッティングを行った粗骨材を使用し、通常の混練方法でコンクリートを調製したもの)のコンクリートにおける、スランプの低下の程度は、10.5cmであることがわかる。
また、比較例2(プレウェッティングを行っていない粗骨材を用いた以外は、比較例1と同様にしてコンクリートを調製したもの)における、スランプの低下の程度は、7.5cmであることがわかる。また、スランプの値(直後:9.0cm、30分後:4.5cm、60分後:1.5cm)は、非常に小さく、圧縮強度の測定ができないことがわかる。
また、比較例3(増粘剤を使用しない以外は、実施例1〜3と同様にしてコンクリートを調製したもの)における、スランプの低下の程度は、7.6cmであることがわかる。
さらに、比較例4(コンクリートの混練方法を、セメント、細骨材、粗骨材、及び、増粘剤を混練した後、水とセメント分散剤を投入して混練する以外は、実施例2と同様にコンクリートを調製したもの)における、スランプの低下の程度は、7.5cmであることがわかる。
【0023】
上述したとおり、実施例1〜3における、スランプの低下の程度(3.5〜7.0cm)は、比較例1〜4における、スランプの低下の程度(7.5〜10.5cm)よりも小さいことから、本発明のコンクリートの製造方法によれば、スランプロスを小さくしうることがわかる。
また、実施例1〜3における、混練直後のスランプ(18.5〜20.0cm)は、比較例1〜4における、混練直後のスランプ(9.0〜18.0cm)と同等以上であることがわかる。また、実施例1〜3における、混練30分後および混練60分後のスランプ(30分後:15.0〜19.0cm、60分後:11.5〜16.5cm)は、比較例1〜4における、混練30分後および混練60分後のスランプ(30分後:4.5〜12.0cm、60分後:1.5〜9.0cm)よりも大きいことがわかる。
さらに、実施例1〜3におけるコンクリートの圧縮強度(材齢7日:27.2〜32.1N/mm
2)、材齢28日:43.8〜44.7N/mm
2)は、比較例1〜4におけるコンクリートの圧縮強度(材齢7日:21.4〜26.8N/mm
2)、材齢28日:34.1〜36.7N/mm
2)よりも大きいことがわかる。