(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比が1.5〜3.5の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載のオレフィン共重合体。
前記遷移金属触媒が、ニッケル又はパラジウム金属にキレート性ホスフィン化合物が配位した遷移金属触媒であることを特徴とする、請求項3に記載のオレフィン共重合体。
前記遷移金属触媒が、ニッケル又はパラジウム金属にキレート性ホスフィン化合物が配位した遷移金属触媒であることを特徴とする、請求項5に記載のオレフィン共重合体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のオレフィン共重合体、及びその製造方法について、項目毎に具体的かつ詳細に説明する。
【0019】
1.オレフィン共重合体について
(1)オレフィン共重合体
本発明のオレフィン共重合体は、エチレン及び炭素数3〜10のα−オレフィンから選ばれる1種の非極性モノマー(X1)単位と、一般式(1)で表される化合物から選ばれる1種の極性モノマー(Z1)単位からなることを特徴とする。
【化2】
[モノマーZ1は、一般式(1)からなる群より選ばれることを特徴とし、一般式(1)において、Qは、炭素数2〜10の二価の炭化水素基、水酸基で置換された炭素数2〜10の二価の炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基で置換された炭素数3〜20の二価の炭化水素基、炭素数2〜10のエステル基で置換された炭素数4〜20の二価の炭化水素基、炭素数3〜18の置換シリル基で置換された炭素数5〜20の二価の炭化水素基、エーテル基で置換された炭素数2〜10の二価の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数2〜10の二価の炭化水素基からなる群より選ばれた置換基を示す。Tは、メタクリロイルオキシ基を示す。]
【0020】
(2)非極性モノマー(X1)
本発明に用いられる非極性モノマー(X1)は、エチレン及び炭素数3〜10のα−オレフィンから選ばれる1種のモノマーである。
好ましい具体例として、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンが挙げられ、特に好ましい具体例として、エチレンが挙げられる。また、X1は、1種類であり、2種以上の併用でない。
【0021】
(3)極性モノマー(Z1)
本発明に用いられる極性モノマー(Z1)は、極性基含有モノマーである。極性モノマー(Z1)は、特定の置換基を有するアクリレート化合物であり、一般式(1)で表される化合物から選ばれる1種のモノマーである。
【化3】
[モノマーZ1は、一般式(1)からなる群より選ばれることを特徴とし、一般式(1)において、Qは、炭素数2〜10の二価の炭化水素基、水酸基で置換された炭素数2〜10の二価の炭化水素基、炭素数1〜10のアルコキシ基で置換された炭素数3〜20の二価の炭化水素基、炭素数2〜10のエステル基で置換された炭素数4〜20の二価の炭化水素基、炭素数3〜18の置換シリル基で置換された炭素数5〜20の二価の炭化水素基、エーテル基で置換された炭素数2〜10の二価の炭化水素基、ハロゲン原子で置換された炭素数2〜10の二価の炭化水素基からなる群より選ばれた置換基を示す。Tは、メタクリロイルオキシ基を示す。]
また、Z1は、1種類であり、2種以上の併用でない。
【0022】
(3−1)極性モノマー(Z1)の詳細
一般式(1)におけるQとしての炭素数2〜10の二価の炭化水素基は、好ましくは、炭素数2〜8の二価の炭化水素基、更に好ましくは、炭素数2〜8のアルキレン基、フェニレン基、アルキレン−フェニレン−アルキレン基である。
好ましい具体例は、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、1,4−シクロへキシレン基、{メチレン−(1,4−シクロへキシレン)}基、{メチレン−(1,4−シクロへキシレン)−メチレン}基、ビニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、3−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基、3−ペンテニレン基、4−ペンテニレン基、1−ヘキセニレン基、2−ヘキセニレン基、3−ヘキセニレン基、4−ヘキセニレン基、5−ヘキセニレン基、フェニレン基、メチレンフェニレン基、{メチレン−(1 ,4−フェニレン)−メチレン}基であり、更に好ましくは、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、4−ヘキセニレン基、{メチレン−(1,4−シクロへキシレン)−メチレン}基、フェニレン基であり、特に好ましくは、エチレン基、テトラメチレン基である。
【0023】
一般式(1)におけるQとしての水酸基で置換された炭素数2〜10の二価の炭化水素基は、好ましくは、前述の炭素数2〜10の二価の炭化水素基の水酸基置換体が挙げられる。
好ましい具体例は、(1−ヒドロキシ)エチレン基、(2−ヒドロキシ)エチレン基、(1−ヒドロキシ)トリメチレン基、(2−ヒドロキシ)トリメチレン基、(3−ヒドロキシ)トリメチレン基、(1−ヒドロキシ)テトラメチレン基、(2−ヒドロキシ)テトラメチレン基、(3−ヒドロキシ)テトラメチレン基、(4−ヒドロキシ)テトラメチレン基、(1−ヒドロキシ)ペンタメチレン基、(2−ヒドロキシ)ペンタメチレン基、(3−ヒドロキシ)ペンタメチレン基、(4−ヒドロキシ)ペンタメチレン基、(5−ヒドロキシ)ペンタメチレン基、(1−ヒドロキシ)ヘキサメチレン基、(2−ヒドロキシ)ヘキサメチレン基、(3−ヒドロキシ)ヘキサメチレン基、(4−ヒドロキシ)ヘキサメチレン基、(5−ヒドロキシ)ヘキサメチレン基、(6−ヒドロキシ)ヘキサメチレン基であり、更に好ましくは、(1−ヒドロキシ)エチレン基、(2−ヒドロキシ)エチレン基、(2−ヒドロキシ)トリメチレン基、(5−ヒドロキシ)ペンタメチレン基、(6−ヒドロキシ)ヘキサメチレン基であり、特に好ましくは、(1−ヒドロキシ)エチレン基、(2−ヒドロキシ)トリメチレン基である。
【0024】
一般式(1)におけるQとしての炭素数1〜10のアルコキシ基で置換された炭素数3〜20の二価の炭化水素基は、好ましくは、前述の炭素数2〜10の二価の炭化水素基を、炭素数1〜10のアルコキシ基で置換した構造体が挙げられる。
好ましい具体例は、(1−メトキシ)エチレン基、(2−メトキシ)エチレン基、(1−エトキシ)エチレン基、(2−エトキシ)エチレン基、(1−メトキシ)トリメチレン基、(2−メトキシ)トリメチレン基、(3−メトキシ)トリメチレン基、(1−メトキシ)テトラメチレン基、(2−メトキシ)テトラメチレン基、(3−メトキシ)テトラメチレン基、(4−メトキシ)テトラメチレン基、(1−メトキシ)ペンタメチレン基、(2−メトキシ)ペンタメチレン基、(3−メトキシ)ペンタメチレン基、(4−メトキシ)ペンタメチレン基、(5−メトキシ)ペンタメチレン基、(1−メトキシ)ヘキサメチレン基、(2−メトキシ)ヘキサメチレン基、(3−メトキシ)ヘキサメチレン基、(4−メトキシ)ヘキサメチレン基、(5−メトキシ)ヘキサメチレン基、(6−メトキシ)ヘキサメチレン基であり、 更に好ましくは、(1−メトキシ)エチレン基、(2−メトキシ)エチレン基、(1−エトキシ)エチレン基、(2−エトキシ)エチレン基であり、特に好ましくは、(1−メトキシ)エチレン基、(2−メトキシ)エチレン基である。
【0025】
一般式(1)におけるQとしての炭素数2〜10のエステル基で置換された炭素数4〜20の二価の炭化水素基は、好ましくは、前述の炭素数2〜10の二価の炭化水素基を、炭素数2〜10のエステル基で置換した構造体が挙げられる。
好ましい具体例は、(1−メトキシカルボニル)エチレン基、(2−メトキシカルボニル)エチレン基、(1−エトキシカルボニル)エチレン基、(2−エトキシカルボニル)エチレン基、(1−メトキシカルボニル)トリメチレン基、(2−メトキシカルボニル)トリメチレン基、(3−メトキシカルボニル)トリメチレン基、(1−メトキシカルボニル)テトラメチレン基、(2−メトキシカルボニル)テトラメチレン基、(3−メトキシカルボニル)テトラメチレン基、(4−メトキシカルボニル)テトラメチレン基、(1−メトキシカルボニル)ペンタメチレン基、(2−メトキシカルボニル)ペンタメチレン基、(3−メトキシカルボニル)ペンタメチレン基、(4−メトキシカルボニル)ペンタメチレン基、(5−メトキシカルボニル)ペンタメチレン基、(1−メトキシカルボニル)ヘキサメチレン基、(2−メトキシカルボニル)ヘキサメチレン基、(3−メトキシカルボニル)ヘキサメチレン基、(4−メトキシカルボニル)ヘキサメチレン基、(5−メトキシカルボニル)ヘキサメチレン基、(6−メトキシカルボニル)ヘキサメチレン基であり、更に好ましくは、(1−メトキシカルボニル)エチレン基、(2−メトキシカルボニル)エチレン基、(1−エトキシカルボニル)エチレン基、(2−エトキシカルボニル)エチレン基であり、特に好ましくは、(1−メトキシカルボニル)エチレン基、(2−メトキシカルボニル)エチレン基である。
【0026】
一般式(1)におけるQとしての炭素数3〜18の置換シリル基で置換された炭素数5〜20の二価の炭化水素基は、好ましくは、前述の炭素数2〜10の二価の炭化水素基を、炭素数3〜18のシリル基で置換した構造体が挙げられる。
好ましい具体例は、(1−トリメチルシリル)エチレン基、(2−トリメチルシリル)エチレン基、(1−トリエチルシリル)エチレン基、(2−トリエチルシリル)エチレン基、(1−トリメチルシリル)トリメチレン基、(2−トリメチルシリル)トリメチレン基、(3−トリメチルシリル)トリメチレン基、(1−トリメチルシリル)テトラメチレン基、(2−トリメチルシリル)テトラメチレン基、(3−トリメチルシリル)テトラメチレン基、(4−トリメチルシリル)テトラメチレン基、(1−トリメチルシリル)ペンタメチレン基、(2−トリメチルシリル)ペンタメチレン基、(3−トリメチルシリル)ペンタメチレン基、(4−トリメチルシリル)ペンタメチレン基、(5−トリメチルシリル)ペンタメチレン基、(1−トリメチルシリル)ヘキサメチレン基、(2−トリメチルシリル)ヘキサメチレン基、(3−トリメチルシリル)ヘキサメチレン基、(4−トリメチルシリル)ヘキサメチレン基、(5−トリメチルシリル)ヘキサメチレン基、(6−トリメチルシリル)ヘキサメチレン基であり、更に好ましくは、(1−トリメチルシリル)エチレン基、(2−トリメチルシリル)エチレン基、(1−トリエチルシリル)エチレン基、(2−トリエチルシリル)エチレン基であり、特に好ましくは、(1−トリメチルシリル)エチレン基、(2−トリメチルシリル)エチレン基である。
【0027】
一般式(1)におけるQとしてのエーテル基で置換された炭素数2〜10の二価の炭化水素基は、好ましくは、前述の炭素数2〜10の二価の炭化水素基の部分構造をエーテル基で置換した構造体が挙げられる。
好ましい具体例は、1−オキサプロピレン基、1,4−ジオキサヘキセン基、1,4,7−トリオキサノネン基、1,4,7,10−テトラオキサドデセン基であり、特に好ましくは、1−オキサプロピレン基、1,4−ジオキサヘキセン基である。
【0028】
一般式(1)におけるQとしてのハロゲン原子で置換された炭素数2〜10の二価の炭化水素基は、好ましくは、前述の炭素数2〜10の二価の炭化水素基を、ハロゲン原子で置換した構造体が挙げられる。
好ましい具体例は、(1−クロロ)エチレン基、(2−クロロ)エチレン基、(1−ブロモ)エチレン基、(2−ブロモ)エチレン基、(1−クロロ)トリメチレン基、(2−クロロ)トリメチレン基、(3−クロロ)トリメチレン基、(1−クロロ)テトラメチレン基、(2−クロロ)テトラメチレン基、(3−クロロ)テトラメチレン基、(4−クロロ)テトラメチレン基、(1−クロロ)ペンタメチレン基、(2−クロロ)ペンタメチレン基、(3−クロロ)ペンタメチレン基、(4−クロロ)ペンタメチレン基、(5−クロロ)ペンタメチレン基、(1−クロロ)ヘキサメチレン基、(2−クロロ)ヘキサメチレン基、(3−クロロ)ヘキサメチレン基、(4−クロロ)ヘキサメチレン基、(5−クロロ)ヘキサメチレン基、(6−クロロ)ヘキサメチレン基であり、更に好ましくは、(1−クロロ)エチレン基、(2−クロロ)エチレン基、(1−ブロモ)エチレン基、(2−ブロモ)エチレン基であり、特に好ましくは、(1−クロロ)エチレン基、(2−クロロ)エチレン基である。
【0029】
一般式(1)におけるTは、メタクリロイルオキシ基を示す。
【0030】
一般式(1)におけるQ及びTの好ましい組合せを以下に示す。
(A)Qとして水酸基で置換された炭素数2〜10の二価の炭化水素基、Tとしてメタクリロイルオキシ基。
(B)Qとして炭素数2〜10の二価の炭化水素基、Tとしてメタクリロイルオキシ基。
(C)Qとしてエーテル基で置換された炭素数2〜10の二価の炭化水素基、Tとしてメタクリロイルオキシ基。
【0031】
(3−2)極性モノマー(Z1)の具体例
極性モノマー(Z1)の例を以下に具体的に記載する。なお、(Z1−1)はQ及びTの組み合わせ(A)の一例であり、(Z1−2)はQ及びTの組み合わせ(B)の一例であり、(Z1−3)はQ及びTの組み合わせ(C)の一例である。
【0034】
【化6】
なお、(Z1−3)における[]の部分、すなわち、(−CH
2−CH
2−O−)の繰り返し数は、好ましくは1〜3である。
【0035】
(4)コポリマー組成(オレフィン共重合体組成)
本発明におけるオレフィン共重合体では、共重合体中の極性モノマー(Z1)に由来する構造単位量は、0.01〜10mol%である。これらのうちで0.1〜5mol%がより好ましく、0.2〜1.5mol%が特に好ましい。
この構造単位量は、重合時の遷移金属触媒の選択や、重合時に添加する極性モノマー量、重合時の圧力や温度で制御することが可能である。共重合体中の極性モノマーに由来する構造単位量を増加させる具体的手段として、重合時に添加する極性モノマー量の増加、重合時のオレフィン圧力の低減、重合温度の増加が有効である。例えば、これらの因子を調節して、目的とするコポリマー領域に制御することが求められる。
【0036】
本発明におけるオレフィン共重合体は、
13C−NMRにより算出されるメチル分岐度が、主鎖1,000炭素当たり5.0以下であることが好ましい。このうちで特に好ましくは、主鎖1,000炭素当たり3.0以下である。メチル分岐が、この数値を満たすと弾性率が高く、成形体の機械強度も高くなる。
このメチル分岐度は、重合に使用する遷移金属触媒の選択や、重合温度で制御することが可能である。オレフィン共重合体のメチル分岐度を低下させる具体的手段として、重合温度の低下が有効である。例えば、これらの因子を調節して、目的とするコポリマー領域に制御することができる。
【0037】
本発明におけるオレフィン共重合体は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって求められる重量平均分子量(Mw)が20,000〜1,000,000である。このうちで好ましくは45,000〜500,000の範囲であり、特に好ましくは50,000〜300,000の範囲である。
本発明におけるオレフィン共重合体の重量平均分子量が上記の条件を満たすと、積層体の成形を始めとして各種加工性が十分となり、更に、前述の極性モノマー由来の構造単位量と両立することで接着強度により優れた材料を提供することができる。
【0038】
また、本発明におけるオレフィン共重合体は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって求められる重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比が1.5〜3.5の範囲であることが好ましい。このうちで更に好ましくは1.6〜3.3の範囲であり、特に好ましくは1.7〜3.0の範囲である。
本発明におけるオレフィン共重合体のMw/Mnが上記の条件を満たすと、積層体の成形を始めとして各種加工性が十分となり、接着強度が優れたものとなる。Mw/Mnは、使用する遷移金属触媒の選択で制御することが可能である。
【0039】
2.オレフィン共重合体の製造方法について
(1)遷移金属触媒
本発明のオレフィン共重合体の製造方法の一例として、第5〜10族の遷移金属化合物を触媒として用い、重合する方法がある。
好ましい遷移金属の具体例として、バナジウム原子、ニオビウム原子、タンタル原子、クロム原子、モリブデン原子、タングステン原子、マンガン原子、鉄原子、ルテニウム原子、コバルト原子、ロジウム原子、ニッケル原子、パラジウム原子などが挙げられる。これらの中で好ましくは、バナジウム原子、鉄原子、コバルト原子、ニッケル原子、パラジウム原子であり、特に好ましくは、ニッケル原子、パラジウム原子である。これらの金属は、単一であっても複数を併用してもよい。
遷移金属触媒として、キレート性配位子を有する第5〜10族の遷移金属化合物を触媒として用いることが好ましい。
【0040】
キレート性配位子は、P、N、O、及びSからなる群より選択される少なくとも2個の原子を有しており、二座配位(bidentate) 又は多座配位(m ultidentate) であるリガンドを含み、電子的に中性又は陰イオン性である。Brookhartらによる総説に、その構造が例示されている(Chem.Rev.,2000,100,1169)。好ましくは、二座アニオン性P、O配位子として例えば、リンスルホン酸、リンカルボン酸、リンフェノール、リンエノラートが挙げられ、他に、二座アニオン性N、O配位子として例えば、サリチルアルドイミナートやピリジンカルボン酸が挙げられ、他に、ジイミン配位子、ジフェノキサイド配位子、ジアミド配位子が挙げられる。
【0041】
キレート性配位子を有する第5〜10族の遷移金属化合物としては、代表的に、いわゆる、ホスフィンフェノラート系及びホスフィンスルホナート系と称される触媒が知られている。ホスフィンフェノラート系触媒は、置換基を有していても良いアリール基を有するリン系リガンドがニッケル金属に配位した触媒である(例えば、特開2010−260913号公報を参照)。ホスフィンスルホナート系触媒は、本発明の実施例においても使用され、置換基を有していても良いアリール基を有するリン系リガンドが、ニッケル又はパラジウム金属に配位した触媒であり(例えば、特開2010−202647号公報を参照)、特に、トリアリールホスフィン又はトリアリールアルシン化合物が、少なくとも一つは二級もしくは三級のアルキル基で置換されたフェニル基を有することが好ましい(例えば、特開2010−150246号公報を参照)。
【0042】
(2)重合触媒の使用態様
重合触媒は、単独で用いてもよく、また担体に担持して用いることもできる。使用可能な担体としては、本発明の主旨を損なわない限りにおいて、任意の担体を用いることができる。
一般に、担体として、無機酸化物やポリマー担体が好適に使用できる。具体的には、SiO
2、Al
2O
3、MgO、ZrO
2、TiO
2、B
2O
3、CaO、ZnO、BaO、ThO
2など又はこれらの混合物が挙げられ、SiO
2−Al
2O
3、SiO
2−V
2O
5、SiO
2−TiO
2、SiO
2−MgO、SiO
2−Cr
2O
3などの混合酸化物も使用することができ、無機ケイ酸塩、ポリエチレン担体、ポリプロピレン担体、ポリスチレン担体、ポリアクリル酸担体、ポリメタクリル酸担体、ポリアクリル酸エステル担体、ポリエステル担体、ポリアミド担体、ポリイミド担体などが使用可能である。
これらの担体については、粒径、粒径分布、細孔容積、比表面積などに特に制限はなく、任意のものが使用可能である。
【0043】
触媒成分を用いて、重合槽内で、または重合槽外でオレフィンの存在下で予備重合を行ってもよい。オレフィンとは炭素間二重結合を少なくとも1個含む炭化水素をいい、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチルブテン−1、スチレン、ジビニルベンゼンなどが例示されるが、特に種類に制限はなく、これらと他のオレフィンとの混合物を用いてもよい。好ましくは炭素数2又は3のオレフィンである。オレフィンの供給方法は、オレフィンを反応槽に定速的にあるいは定圧状態になるように維持する供給方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせるなど、任意の方法が可能である。
【0044】
(3)共重合反応
本発明における共重合反応は、溶媒の存在下、又は非存在下に行われる。溶媒としては、例えば、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素溶媒、液化α−オレフィンなどの液体、ジエチルエ−テル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、安息香酸メチル、アセトン、メチルエチルケトン、ホルミルアミド、アセトニトリル、メタノ−ル、イソプロピルアルコ−ル、エチレングリコ−ルなどの極性溶媒が挙げられる。また、ここで記載した溶媒の混合物を混合溶媒として使用してもよい。なお、高い重合活性や高い分子量を得るうえでは、上記の炭化水素溶媒がより好ましい。
【0045】
本発明における共重合に際して、公知の添加剤の存在下又は非存在下で共重合を行うことができる。添加剤としては、ラジカル重合禁止剤や、生成共重合体を安定化する作用を有する添加剤が好ましい。例えば、キノン誘導体やヒンダードフェノール誘導体などが好ましい添加剤の例として挙げられる。
具体的には、モノメチルエ−テルハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル4−メチルフェノ−ル(BHT)、トリメチルアルミニウムとBHTとの反応生成物、4価チタンのアルコキサイドとBHTとの反応生成物などが使用可能である。
また、添加剤として、無機及び又は有機フィラーを使用し、これらのフィラーの存在下で重合を行ってもよい。
【0046】
本発明において、重合形式に特に制限はない。媒体中で少なくとも一部の生成重合体がスラリーとなるスラリー重合、液化したモノマー自身を媒体とするバルク重合、気化したモノマー中で行う気相重合、又は、高温高圧で液化したモノマーに生成重合体の少なくとも一部が溶解する高圧イオン重合などが好ましく用いられる。
また、重合様式としては、バッチ重合、セミバッチ重合、連続重合のいずれの様式を採用してもよい。
【0047】
未反応モノマーや媒体は、生成したオレフィン共重合体から分離し、リサイクルして使用してもよい。リサイクルの際、これらのモノマーや媒体は、精製して再使用してもよいし、精製せずに再使用してもよい。生成共重合体と未反応モノマー及び媒体との分離には、従来の公知の方法が使用できる。例えば、濾過、遠心分離、溶媒抽出、貧溶媒を使用した再沈などの方法が使用できる。
【0048】
共重合温度、共重合圧力及び共重合時間に特に制限はないが、通常は、以下の範囲から生産性やプロセスの能力を考慮して、最適な設定を行うことができる。
即ち、共重合温度は、通常−20℃から290℃、好ましくは0℃から250℃、共重合圧力は、0.1MPaから100MPa、好ましくは、0.3MPaから90MPa、共重合時間は、0.1分から10時間、好ましくは、0.5分から7時間、更に好ましくは1分から6時間の範囲から選ぶことができる。
本発明において、共重合は、一般に不活性ガス雰囲気下で行われる。例えば、窒素、アルゴン雰囲気が使用でき、窒素雰囲気が好ましく使用される。なお、少量の酸素や空気の混入があってもよい。
【0049】
共重合反応器への触媒とモノマーの供給に関しても特に制限はなく、目的に応じて様々の供給法をとることができる。例えばバッチ重合の場合、予め所定量のモノマーを共重合反応器に供給しておき、そこに触媒を供給する手法をとることが可能である。この場合、追加のモノマーや追加の触媒を共重合反応器に供給してもよい。また、連続重合の場合、所定量のモノマーと触媒を共重合反応器に連続的に、又は間歇的に供給し、共重合反応を連続的に行う手法をとることができる。
【0050】
オレフィン共重合体の組成の制御に関しては、複数のモノマーを反応器に供給し、その供給比率を変えることによって制御する方法を一般に用いることができる。その他、触媒の構造の違いによるモノマー反応性比の違いを利用して共重合組成を制御する方法や、モノマー反応性比の重合温度依存性を利用して共重合組成を制御する方法が挙げられる。
オレフィン共重合体の分子量制御には、従来公知の方法を使用することができる。即ち、重合温度を制御して分子量を制御する方法、モノマー濃度を制御して分子量を制御する方法、連鎖移動剤を使用して分子量を制御する方法、遷移金属錯体中の配位子構造の制御により分子量を制御するなどが挙げられる。
連鎖移動剤を使用する場合には、従来公知の連鎖移動剤を用いることができる。例えば、水素、メタルアルキルなどを使用することができる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。本発明において製造されるオレフィン共重合体の各種の評価方法は、以下の通りである。
なお、実施例で用いた配位子構造を以下に示した。
【0052】
【化7】
【0053】
【化8】
【0054】
1.評価方法
(1)分子量及び分子量分布(Mw、Mn、Q値)
(測定条件)
使用機種:ウォーターズ社製150C
検出器:FOXBORO社製MIRAN1A・IR検出器(測定波長:3.42μm)
測定温度:140℃
溶媒:オルトジクロロベンゼン(ODCB)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
流速:1.0mL/分 注入量:0.2mL
(試料の調製)試料はODCB(0.5mg/mLのBHT(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノ−ル)を含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させた。
(分子量の算出)標準ポリスチレン法により行い、保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行った。使用する標準ポリスチレンはいずれも東ソ−社製の銘柄であり、F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000、である。各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成した。較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いた。分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×M
αは以下の数値を用いた。
PS:K=1.38×10
−4、α=0.7
PE:K=3.92×10
−4、α=0.733
PP:K=1.03×10
−4、α=0.78
【0055】
(2)融点(Tm)
セイコ−インスツルメンツ社製DSC6200示差走査熱量測定装置を使用して、シ−ト状にしたサンプル片を5mgアルミパンに詰め、室温から一旦200℃まで昇温速度100℃/分で昇温し、5分間保持した。その後に、10℃/分で20℃まで降温して結晶化させた後に、10℃/分で200℃まで昇温することにより融解曲線を得た。融解曲線を得るために行った最後の昇温段階における主吸熱ピークのピークトップ温度を融点Tmとし、該ピークのピーク面積をΔHmとした。
【0056】
(3)NMR分析
(3−1−1)エチレンと極性モノマー(Z1−1)のオレフィン共重合体の測定条件
試料100mgをo−ジクロロベンゼン/重水素化臭化ベンゼン(C
6D
5Br)=4/1(体積比)2.5mlおよび化学シフトの基準物質であるヘキサメチルジシロキサンと共に内径10mmφのNMR試料管に入れ、窒素置換した後封管し、加熱溶解して均一な溶液としてNMR測定に供した。NMR測定は10mmφのクライオプローブを装着したブルカー・バイオスピン(株)のNMR装置AVANCEIII400を用いた。
13C−NMR測定条件は試料の温度120℃、パルス角を90°、パルス間隔を51.5秒、積算回数を1024回、逆ゲートデカップリング法で測定を実施した。
化学シフトはヘキサメチルジシロキサンのメチル
13Cシグナルを1.98ppmとして設定し、他の
13Cによるシグナルの化学シフトはこれを基準とした。
【0057】
(3−1−2)エチレンと極性モノマー(Z1−2)のオレフィン共重合体の測定条件
試料150mgを重化テトラクロロエタンと共に内径10mmφのNMR試料管に入れて窒素置換した後封管し、加熱溶解して均一な溶液としてNMR測定に供した。NMR測定は10mmφのクライオプローブを装着したブルカー・バイオスピン(株)のNMR装置AVANCEIII400を用いた。
1H−NMRの測定条件は試料の温度120℃、パルス角4.5°、パルス間隔2秒、積算回数512回とした。化学シフトはテトラクロロエタンのプロトンのピークを5.96ppmとして設定し、他のプロトンによるシグナルの化学シフトはこれを基準とした。
【0058】
(3−2)メチル分岐量の測定方法
メチル分岐量は
13C−NMRスペクトルのシグナル強度を用い、以下の式から主鎖1000カーボン当りのメチル分岐量を求めた。
メチル分岐量(個/主鎖1000C)=I
Me-branch×1000/{2×(I
MA+I
MAEA+I
E)}
ここで、I
Me-branch、I
MAEA、I
Eはそれぞれ、以下の式で示される量である。
I
Me-branch=(I
20.1〜19.9+I
33.2〜33.1+I
37.6〜37.4)/4、
I
MAEA=(I
62.2〜61.9+I
63.0〜62.7)/2
I
E =〔I
32.1〜27.8+3×(I
MAEA+I
Me-branch)〕/2
【0059】
(3−3−1)コモノマー(Z1−1)含有量の測定方法
コモノマー(Z1−1)の含有量は
13C−NMRスペクトルで30ppm付近のポリエチレン骨格主鎖炭素によるシグナルの積分強度I
Eと、各コモノマーの特性シグナルの積分強度を用いて求めた。
13C−NMRスペクトルのシグナル強度を用い、以下の式からコモノマー総量、鎖内コモノマー量、残存コモノマー量を求めた。
コモノマー総量(mol%)=I
(total)×100/〔I
(total)+I
(E)〕
鎖内コモノマー量(mol%)=I
(main)×100/〔I
(total)+I
(E)〕
残存コモノマー量(mol%)=I
(monomer)×100/〔I
(total)+I
(E)〕
ここで、I
(total)、I
(main)、I
(monomer)はそれぞれ、以下の式で示される量である。
I
(total)=(I
69.3〜68.8+I
66.0〜65.5+I
65.3〜65.1)/3
I
(main)=I
46.2〜45.8
I
(monomer)=(I
69.0〜68.8+I
65.8〜65.7+I
65.7〜65.5)/3
I
(E)=(I
32.0〜28.0+I
(main)×3)/3
Iは積分強度を、Iの下つき添字の数値は化学シフトの範囲を示す。例えばI
32.0〜28.0は32.0ppmと28.0ppmの間に検出した
13Cシグナルの積分強度を示す。
【0060】
(3−3−2)コモノマー(Z1−2)含有量の測定方法
コモノマー(Z1−2)の含有量は
1H−NMRスペクトルで1.3ppm付近のポリエチレン骨格主鎖炭素に結合したプロトンによるシグナルの積分強度I
Eと、各コモノマーの特性シグナルの積分強度を用いて求めた。
1H−NMRスペクトルのシグナル強度を用い、以下の式からコモノマー総量、鎖内コモノマー量、ビニレン末端コモノマー量を求めた。
コモノマー総量(mol%)=I
(total)×100/〔I
(total)+I
(E)〕
鎖内コモノマー量(mol%)=I
(main)×100/〔I
(total)+I
(E)〕
ビニレン末端コモノマー量(mol%)
=I
(vncomonomer)×100/〔I
(total)+I
(E)〕
ここで、I
(total)、I
(main)、I
(vncomonomer)、I
(E)はそれぞれ、以下の式で示される量である。
I
(total)=I
4.77〜4.00/4
I
(main)=I
2.48〜2.29
I
(vncomonomer)=I
7.04〜6.91
I
(E)=(I
3.40〜0−I
(main)×6−I
(vncomonomer)×3)/4
Iは積分強度を、Iの下つき添字の数値は化学シフトの範囲を示す。例えばI
4.77〜4.00は4.77ppmと4.00ppmの間に検出した
1Hシグナルの積分強度を示す。
【0061】
2.金属錯体配位子の合成
リンスルホン酸配位子(I)は、国際公開第2010/058849号記載(合成例1)の方法に従って合成した。リンフェノール配位子(II)は、国際公開第2010/050256号記載(合成例4)の方法に従って合成した。
【0062】
3.重合
(1)実施例1(エチレンと3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートの共重合)
充分に窒素置換した30mLフラスコに、50μmolのビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムとリンスルホン酸配位子(I)をそれぞれ秤量し、脱水トルエン(10mL)を加えた後、これを超音波振動機にて20分間処理することで、触媒スラリーを調製した。次に、内容積2.4Lの誘導撹拌機付ステンレス製オートクレーブ内を精製窒素で置換し、精製トルエン、及び3−アクリロイロキシ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(コモノマー濃度0.2mol/L)をオートクレーブ内に導入した(全量600mL)。先に調製した触媒溶液を添加し、重合温度100℃、エチレン圧1.0MPaで重合を開始した。反応中は温度を一定に保ち、圧力が保持されるように連続的にエチレンを供給した。
重合終了後、エチレンをパージ、オートクレーブを室温まで冷却し、得られたポリマーを、アセトン(1L)を用いてポリマーを再沈させ、沈殿したポリマーを濾過した。濾過により得られた固形ポリマーをアセトンで洗浄後、60℃で3時間減圧乾燥することで、最終的に共重合体を26.4g回収した。触媒活性は5.3E+05g/mol/h/MPaであった。得られた共重合体の分子量Mwは72,000、Mw/Mnは1.8、融点は145.2℃、コモノマー含量は0.5mol%であった。
【0063】
(2)実施例2(エチレンと2−アクリロイロキシエチルメタクリレートの共重合)
充分に窒素置換した30mLフラスコに、60μmolのビス(シクロオクタジエン)ニッケルとリンフェノール配位子(II)をそれぞれ秤量し、脱水トルエン(10mL)を加えた後、これを10分間撹拌することで、触媒溶液を調製した。次に、内容積2.4Lの誘導撹拌機付ステンレス製オートクレーブ内を精製窒素で置換し、精製トルエン、トリノルマルオクチルアルミニウムヘプタン溶液(200μmol)及び2−アクリロイロキシエチルメタクリレート(コモノマー濃度12mmol/L)をオートクレーブ内に導入した(全量1000mL)。先に調製した触媒溶液を添加し、重合温度90℃、エチレン圧2.5MPaで重合を開始した。反応中は温度を一定に保ち、圧力が保持されるように連続的にエチレンを供給した。
重合終了後、エチレンをパージ、オートクレーブを室温まで冷却し、得られたポリマーを、アセトン(1L)を用いてポリマーを再沈させ、沈殿したポリマーを濾過した。濾過により得られた固形ポリマーをアセトンで洗浄後、60℃で3時間減圧乾燥することで、最終的に共重合体を12.9g回収した。触媒活性は2.2E+05g/mol/h/MPaであった。得られた共重合体の分子量Mwは69,000、Mw/Mnは2.4、融点は115.5℃、コモノマー含量は1.2mol%であった。
【0064】
(3)実施例3(エチレンと2−アクリロイロキシエチルメタクリレートの共重合)
充分に窒素置換した30mLフラスコに、40μmolのビス(シクロオクタジエン)ニッケルとリンフェノール配位子(II)をそれぞれ秤量し、脱水トルエン(10mL)を加えた後、これを10分間撹拌することで、触媒溶液を調製した。次に、内容積2.4Lの誘導撹拌機付ステンレス製オートクレーブ内を精製窒素で置換し、精製トルエン、トリノルマルオクチルアルミニウムヘプタン溶液(200μmol)及び2−アクリロイロキシエチルメタクリレート(コモノマー濃度6mmol/L)をオートクレーブ内に導入した(全量1000mL)。先に調製した触媒溶液を添加し、重合温度90℃、エチレン圧2.5MPaで重合を開始した。反応中は温度を一定に保ち、圧力が保持されるように連続的にエチレンを供給した。
重合終了後、エチレンをパージ、オートクレーブを室温まで冷却し、得られたポリマーを、アセトン(1L)を用いてポリマーを再沈させ、沈殿したポリマーを濾過した。濾過により得られた固形ポリマーをアセトンで洗浄後、60℃で3時間減圧乾燥することで、最終的に共重合体を23.5g回収した。触媒活性は7.8E+05g/mol/h/MPaであった。得られた共重合体の分子量Mwは90,000、Mw/Mnは2.3、融点は124.2℃、コモノマー含量は0.5mol%であった。
【0065】
(4)実施例4(エチレンと2−アクリロイロキシエチルメタクリレートの共重合)
充分に窒素置換した30mLフラスコに、30μmolのビス(シクロオクタジエン)ニッケルとリンフェノール配位子(II)をそれぞれ秤量し、脱水トルエン(10mL)を加えた後、これを10分間撹拌することで、触媒溶液を調製した。次に、内容積2.4Lの誘導撹拌機付ステンレス製オートクレーブ内を精製窒素で置換し、精製トルエン、トリノルマルオクチルアルミニウムヘプタン溶液(200μmol)及び2−アクリロイロキシエチルメタクリレート(コモノマー濃度10mmol/L)をオートクレーブ内に導入した(全量1000mL)。先に調製した触媒溶液を添加し、重合温度70℃、エチレン圧2.5MPaで重合を開始した。反応中は温度を一定に保ち、圧力が保持されるように連続的にエチレンを供給した。
重合終了後、エチレンをパージ、オートクレーブを室温まで冷却し、得られたポリマーを、アセトン(1L)を用いてポリマーを再沈させ、沈殿したポリマーを濾過した。濾過により得られた固形ポリマーをアセトンで洗浄後、60℃で3時間減圧乾燥することで、最終的に共重合体を8.0g回収した。触媒活性は4.3E+05g/mol/h/MPaであった。得られた共重合体の分子量Mwは151,000、Mw/Mnは2.3、融点は115.2℃、コモノマー含量は1.2mol%であった。
(5)比較例1
比較例は、以下の文献より引用した。
Thomas Rnzi, Damien Guironnet, Inigo Gttker-Schnetmann, and Stefan Mecking J. Am. Chem. Soc., 2010, 132 (46), pp 16623-16630.
【0066】
4.結果及び考察
実施例1〜4、比較例1の重合条件、及び、オレフィン共重合体(生成コポリマー)の分析結果を表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
表1に示すように、実施例1〜4のオレフィン共重合体は、分子量が高く、メチル分岐度が小さい。よって、実施例1〜4のオレフィン共重合体は、直線状のポリマー一次構造を有し、高分子量であることが分かった。これに対して、比較例1は、分子量が実施例1〜4よりも低い。
【0069】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形又は変更が可能である。