特許第6968669号(P6968669)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6968669ヘッドチップ、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6968669
(24)【登録日】2021年10月29日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】ヘッドチップ、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20211108BHJP
【FI】
   B41J2/14 303
   B41J2/14 611
【請求項の数】4
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-218102(P2017-218102)
(22)【出願日】2017年11月13日
(65)【公開番号】特開2019-89225(P2019-89225A)
(43)【公開日】2019年6月13日
【審査請求日】2020年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】501167725
【氏名又は名称】エスアイアイ・プリンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】特許業務法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 大地
(72)【発明者】
【氏名】小林 美咲
(72)【発明者】
【氏名】亀山 知季
【審査官】 上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−104585(JP,A)
【文献】 特開2016−055555(JP,A)
【文献】 特開平11−115195(JP,A)
【文献】 特開2015−033768(JP,A)
【文献】 米国特許第06254819(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/14
B41J 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を噴射するヘッドチップであって、
第1の方向に沿って交互に並設され、かつ前記第1の方向に交差する第2の方向に延在する複数の吐出溝および複数の非吐出溝を有するアクチュエータプレートと、
前記複数の吐出溝に個別に連通する複数のノズル孔を有し、前記アクチュエータプレートに接合されるノズルプレートと
を備え、
前記非吐出溝は、前記アクチュエータプレートの前記ノズルプレートとの接合面において部分的に開口していると共に、前記第2の方向における前記アクチュエータプレートの所定の端面において閉じた構造とされており、
前記アクチュエータプレートは、
前記複数の非吐出溝のそれぞれの内面に形成された複数の個別電極と、
前記複数の個別電極のそれぞれを、前記複数の非吐出溝のそれぞれにおける一方の側面側と他方の側面側とに電気的に分離するように、前記複数の非吐出溝のそれぞれの底面に形成された、前記第2の方向に沿って延びる電極分割溝と
をさらに有し、
前記電極分割溝は、前記第2の方向において前記アクチュエータプレートの前記所定の端面まで延在していると共に、前記所定の端面において部分的に開口している
ヘッドチップ。
【請求項2】
前記アクチュエータプレートは、前記第2の方向において、前記所定の端面として、第1の端面と、前記第1の端面とは逆側を向く第2の端面とを有し、
前記電極分割溝は、前記アクチュエータプレートの前記ノズルプレートとの接合面において、前記第1の端面から前記第2の端面に亘って露出するように形成されている
請求項に記載のヘッドチップ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のヘッドチップを備えた
液体噴射ヘッド。
【請求項4】
請求項に記載の液体噴射ヘッドと、
前記液体を収容する収容部と
を備えた液体噴射記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドチップ、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射記録装置の1つとして、記録紙等の被記録媒体にインク(液体)を吐出(噴射)して画像や文字等の記録を行う、インクジェット方式の記録装置が提供されている(例えば特許文献1参照)。この方式の液体噴射記録装置では、インクタンクからインクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)へインクを供給し、このインクジェットヘッドのノズル孔から被記録媒体に対してインクを吐出することで、画像や文字等の記録が行われるようになっている。また、このようなインクジェットヘッドには、インクを吐出するヘッドチップが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−109386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなヘッドチップ等では一般に、信頼性を向上させることが求められている。信頼性を向上させることが可能なヘッドチップ、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施の形態に係るヘッドチップは、液体を噴射するヘッドチップであって、第1の方向に沿って交互に並設され、かつ第1の方向に交差する第2の方向に延在する複数の吐出溝および複数の非吐出溝を有するアクチュエータプレートと、複数の吐出溝に個別に連通する複数のノズル孔を有し、アクチュエータプレートに接合されるノズルプレートとを備えたものである。非吐出溝は、アクチュエータプレートのノズルプレートとの接合面において部分的に開口していると共に、第2の方向におけるアクチュエータプレートの所定の端面において閉じた構造とされており、アクチュエータプレートは、複数の非吐出溝のそれぞれの内面に形成された複数の個別電極と、複数の個別電極のそれぞれを、複数の非吐出溝のそれぞれにおける一方の側面側と他方の側面側とに電気的に分離するように、複数の非吐出溝のそれぞれの底面に形成された、第2の方向に沿って延びる電極分割溝とをさらに有し、電極分割溝は、第2の方向においてアクチュエータプレートの所定の端面まで延在していると共に、所定の端面において部分的に開口している
【0006】
本開示の一実施の形態に係る液体噴射ヘッドは、上記本開示の一実施の形態に係るヘッドチップを備えたものである。
【0007】
本開示の一実施の形態に係る液体噴射記録装置は、上記本開示の一実施の形態に係る液体噴射ヘッドと、液体を収容する収容部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施の形態に係るヘッドチップ、液体噴射ヘッドおよび液体噴射記録装置によれば、信頼性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施の形態に係る液体噴射記録装置の概略構成例を表す模式斜視図である。
図2図1に示した液体噴射ヘッドの要部構成例を表す模式底面図である。
図3図2に示したヘッドチップにおけるIII−III線に沿った断面構成例を表す模式図である。
図4図2に示したIV−IV線に沿ったヘッドチップの断面構成例を表す模式図である。
図5図2に示したV−V線に沿ったヘッドチップの断面構成例を表す模式図である。
図6図2に示したヘッドチップにおけるアクチュエータプレートの要部構成例を表す上面図である。
図7図2に示したヘッドチップにおけるカバープレートの要部構成例を表す底面図である。
図8図2に示したヘッドチップにおけるカバープレートの要部構成例を表す上面図である。
図9】比較例に係るヘッドチップの断面構成例を表す模式図である。
図10】変形例1に係るヘッドチップの断面構成例を表す模式図である。
図11】変形例2に係るヘッドチップの断面構成例を表す模式図である。
図12】変形例3に係るヘッドチップの断面構成例を表す模式図である。
図13】変形例4に係るヘッドチップの断面構成例を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(アクチュエータプレートにおいて、非吐出溝がノズルプレートとの接合面において部分的に開口し、かつ端面において閉じた構造とされている例)
2.変形例
変形例1(アクチュエータプレートにおいて、電極分割溝が端面まで延在している例)
変形例2(アクチュエータプレートにおいて、非吐出溝が端面において開口し、電極分割溝が端面まで延在している例1)
変形例3(アクチュエータプレートにおいて、電極分割溝が第1の端面から第2の端面に亘って露出している例)
変形例4(アクチュエータプレートにおいて、非吐出溝が端面において開口し、電極分割溝が端面まで延在している例2)
3.その他の変形例
【0011】
<1.実施の形態>
[プリンタ1の全体構成]
図1は、本開示の一実施の形態に係る液体噴射記録装置としてのプリンタ1の概略構成例を、模式的に斜視図にて表したものである。このプリンタ1は、後述するインク9を利用して、被記録媒体としての記録紙Pに対して、画像や文字等の記録(印刷)を行うインクジェットプリンタである。
【0012】
プリンタ1は、図1に示したように、一対の搬送機構2a,2bと、インクタンク3と、インクジェットヘッド4と、循環機構5と、走査機構6とを備えている。これらの各部材は、所定形状を有する筺体10内に収容されている。なお、本明細書の説明に用いられる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0013】
ここで、プリンタ1は、本開示における「液体噴射記録装置」の一具体例に対応し、インクジェットヘッド4(後述するインクジェットヘッド4Y,4M,4C,4B)は、本開示における「液体噴射ヘッド」の一具体例に対応している。また、インク9は、本開示における「液体」の一具体例に対応している。
【0014】
搬送機構2a,2bはそれぞれ、図1に示したように、記録紙Pを搬送方向d(X軸方向)に沿って搬送する機構である。これらの搬送機構2a,2bはそれぞれ、グリッドローラ21、ピンチローラ22および駆動機構(不図示)を有している。グリッドローラ21およびピンチローラ22はそれぞれ、Y軸方向(記録紙Pの幅方向)に沿って延設されている。駆動機構は、グリッドローラ21を軸周りに回転させる(Z−X面内で回転させる)機構であり、例えばモータ等によって構成されている。
【0015】
(インクタンク3)
インクタンク3は、インク9を内部に収容するタンクである。このインクタンク3としては、この例では図1に示したように、イエロー(Y),マゼンダ(M),シアン(C),ブラック(B)の4色のインク9を個別に収容する、4種類のタンクが設けられている。すなわち、イエローのインク9を収容するインクタンク3Yと、マゼンダのインク9を収容するインクタンク3Mと、シアンのインク9を収容するインクタンク3Cと、ブラックのインク9を収容するインクタンク3Bとが設けられている。これらのインクタンク3Y,3M,3C,3Bは、筺体10内において、X軸方向に沿って並んで配置されている。
【0016】
なお、インクタンク3Y,3M,3C,3Bはそれぞれ、収容するインク9の色以外については同一の構成であるため、以下ではインクタンク3と総称して説明する。また、このインクタンク3(3Y,3M,3C,3B)は、本開示における「収容部」の一具体例に対応している。
【0017】
(インクジェットヘッド4)
インクジェットヘッド4は、後述する複数のノズル(ノズル孔H1,H2)から記録紙Pに対して液滴状のインク9を噴射(吐出)して、画像や文字等の記録を行うヘッドである。このインクジェットヘッド4としても、この例では図1に示したように、上記したインクタンク3Y,3M,3C,3Bにそれぞれ収容されている4色のインク9を個別に噴射する、4種類のヘッドが設けられている。すなわち、イエローのインク9を噴射するインクジェットヘッド4Yと、マゼンダのインク9を噴射するインクジェットヘッド4Mと、シアンのインク9を噴射するインクジェットヘッド4Cと、ブラックのインク9を噴射するインクジェットヘッド4Bとが設けられている。これらのインクジェットヘッド4Y,4M,4C,4Bは、筺体10内において、Y軸方向に沿って並んで配置されている。
【0018】
なお、インクジェットヘッド4Y,4M,4C,4Bはそれぞれ、利用するインク9の色以外については同一の構成であるため、以下ではインクジェットヘッド4と総称して説明する。また、このインクジェットヘッド4の詳細構成については、後述する(図2図8)。
【0019】
(循環機構5)
循環機構5は、インクタンク3内とインクジェットヘッド4内との間でインク9を循環させるための機構である。この循環機構5は、例えば、インク9を循環させるための流路である循環流路50と、一対の送液ポンプ52a,52bとを含んで構成されている。
【0020】
循環流路50は、図1に示したように、インクタンク3から送液ポンプ52aを介してインクジェットヘッド4へと至る部分である流路50aと、インクジェットヘッド4から送液ポンプ52bを介してインクタンク3へと至る部分である流路50bとを有している。言い換えると、流路50aは、インクタンク3からインクジェットヘッド4へと向かって、インク9が流れる流路である。また、流路50bは、インクジェットヘッド4からインクタンク3へと向かって、インク9が流れる流路である。なお、これらの流路50a,50b(インク9の供給チューブ)はそれぞれ、可撓性を有するフレキシブルホースにより構成されている。
【0021】
(走査機構6)
走査機構6は、記録紙Pの幅方向(Y軸方向)に沿って、インクジェットヘッド4を走査させる機構である。この走査機構6は、図1に示したように、Y軸方向に沿って延設された一対のガイドレール61a,61bと、これらのガイドレール61a,61bに移動可能に支持されたキャリッジ62と、このキャリッジ62をY軸方向に沿って移動させる駆動機構63と、を有している。また、駆動機構63は、ガイドレール61a,61bの間に配置された一対のプーリ631a,631bと、これらのプーリ631a,631b間に巻回された無端ベルト632と、プーリ631aを回転駆動させる駆動モータ633と、を有している。
【0022】
プーリ631a,631bはそれぞれ、Y軸方向に沿って、各ガイドレール61a,61bにおける両端付近に対応する領域に配置されている。無端ベルト632には、キャリッジ62が連結されている。このキャリッジ62上には、前述した4種類のインクジェットヘッド4Y,4M,4C,4Bが、Y軸方向に沿って並んで配置されている。
【0023】
なお、このような走査機構6と前述した搬送機構2a,2bとにより、インクジェットヘッド4と記録紙Pとを相対的に移動させる、移動機構が構成されるようになっている。
【0024】
[インクジェットヘッド4の詳細構成]
次に、図1に加えて図2図8を参照して、インクジェットヘッド4(ヘッドチップ41)の詳細構成例について説明する。
【0025】
図2は、ノズルプレート411(後出)を取り外した状態におけるインクジェットヘッド4の要部構成例を、模式的に底面図(X−Y底面図)で表したものである。図3は、図2に示したIII−III線に沿ったインクジェットヘッド4の断面構成例(Z−X断面構成例)を、模式的に表したものである。同様に、図4は、図2に示したIV−IV線に沿ったインクジェットヘッド4の断面構成例を模式的に表したものであり、後述するヘッドチップ41における吐出チャネルC1e,C2e(吐出溝)付近の断面構成例に対応している。また、図5は、図2に示したV−V線に沿ったインクジェットヘッド4の断面構成例を模式的に表したものであり、後述するヘッドチップ41におけるダミーチャネルC1d,C2d(非吐出溝)付近の断面構成例に対応している。図6は、後述するヘッドチップ41におけるアクチュエータプレート412の要部構成例を、模式的に上面図で表したものである。図7は、後述するヘッドチップ41におけるカバープレート413の要部構成例を、模式的に底面図で表したものである。図8は、後述するヘッドチップ41におけるカバープレート413の要部構成例を、模式的に上面図で表したものである。
【0026】
本実施の形態のインクジェットヘッド4は、後述するヘッドチップ41における複数のチャネル(複数のチャネルC1および複数のチャネルC2)のうち、吐出チャネルC1e,C2eの延在方向(後述する斜め方向)の中央部からインク9を吐出する、いわゆるサイドシュートタイプのインクジェットヘッドである。また、このインクジェットヘッド4は、前述した循環機構5(循環流路50)を用いることで、インクタンク3との間でインク9を循環させて利用する、循環式のインクジェットヘッドである。
【0027】
図3に示したように、インクジェットヘッド4は、ヘッドチップ41および流路プレート40を備えている。また、このインクジェットヘッド4には、制御機構(ヘッドチップ41の動作を制御する機構)として、回路基板(不図示)と、フレキシブルプリント基板(Flexible Printed Circuits:FPC)441,442(図4図5参照)とが設けられている。なお、制御機構(例えばドライバIC)がFPCに搭載されている構造(COF(Chip on FPC))であってもよい。
【0028】
回路基板は、ヘッドチップ41を駆動するための駆動回路(電気回路)を搭載する基板である。フレキシブルプリント基板441,442はそれぞれ、回路基板上の駆動回路と、ヘッドチップ41における後述する駆動電極Edとの間を、電気的に接続するための基板である。なお、このようなフレキシブルプリント基板441,442にはそれぞれ、後述する複数の引き出し電極がプリント配線されるようになっている。
【0029】
ヘッドチップ41は、図3に示したように、インク9をZ軸方向に沿って噴射する部材であり、各種のプレートを用いて構成されている。具体的には図3に示したように、ヘッドチップ41は、ノズルプレート(噴射孔プレート)411、アクチュエータプレート412およびカバープレート413を、主に備えている。これらのノズルプレート411、アクチュエータプレート412およびカバープレート413と、上記した流路プレート40とはそれぞれ、例えば接着剤等を用いて互いに貼り合わされており、Z軸方向に沿ってこの順に積層されている。なお、以下では、Z軸方向に沿って流路プレート40側(カバープレート413側)を上方と称すると共に、ノズルプレート411側を下方と称して説明する。
【0030】
(ノズルプレート411)
ノズルプレート411は、ステンレス鋼等の金属フィルム材から形成され、例えば50μm程度の厚みを有する。ただし、ノズルプレート411は、ポリイミド等のフィルム材で形成されていてもよい。また、ノズルプレート411の材料は、ガラスやシリコンであってもよい。ノズルプレート411は、図3図4に示したように、アクチュエータプレート412の下面(接合面471)に接着されている。また、図2に示したように、このノズルプレート411には、X軸方向に沿ってそれぞれ延在する、2列のノズル列(ノズル列An1,An2)が設けられている。これらのノズル列An1,An2同士は、Y軸方向に沿って所定の間隔をおいて配置されている。このように、本実施の形態のインクジェットヘッド4(ヘッドチップ41)は、2列タイプのインクジェットヘッド(ヘッドチップ)となっている。
【0031】
ノズル列An1は、X軸方向に沿って所定の間隔をおいて一直線上に並んで形成された、複数のノズル孔H1を有している。これらのノズル孔H1はそれぞれ、ノズルプレート411をその厚み方向(Z軸方向)に沿って貫通しており、例えば図3および図4に示したように、後述するアクチュエータプレート412における吐出チャネルC1e内に個別に連通している。具体的には図2に示したように、各ノズル孔H1は、吐出チャネルC1eの延在方向(後述する斜め方向)に沿った中央部に位置するように形成されている。また、ノズル孔H1におけるX軸方向に沿った形成ピッチは、吐出チャネルC1eにおけるX軸方向に沿った形成ピッチと同一(同一ピッチ)となっている。このようなノズル列An1内のノズル孔H1からは、詳細は後述するが、吐出チャネルC1e内から供給されるインク9が吐出(噴射)されるようになっている。
【0032】
ノズル列An2も同様に、X軸方向に沿って所定の間隔をおいて一直線上に並んで形成された、複数のノズル孔H2を有している。これらのノズル孔H2もそれぞれ、ノズルプレート411をその厚み方向に沿って貫通しており、後述するアクチュエータプレート412における吐出チャネルC2e内に個別に連通している。具体的には図2に示したように、各ノズル孔H2は、吐出チャネルC2eの延在方向(後述する斜め方向)に沿った中央部に位置するように形成されている。また、ノズル孔H2におけるX軸方向に沿った形成ピッチは、吐出チャネルC2eにおけるX軸方向に沿った形成ピッチと同一となっている。このようなノズル列An2内のノズル孔H2からも、詳細は後述するが、吐出チャネルC2e内から供給されるインク9が吐出されるようになっている。
【0033】
また、図2に示したように、ノズル列An1における各ノズル孔H1と、ノズル列An2における各ノズル孔H2とは、X軸方向に沿って互い違いとなるように配置されている。したがって、本実施の形態のインクジェットヘッド4では、ノズル列An1におけるノズル孔H1と、ノズル列An2におけるノズル孔H2とが、千鳥状に配置されている。なお、このようなノズル孔H1,H2はそれぞれ、下方に向かうに従って漸次縮径するテーパ状の貫通孔となっている。
【0034】
(アクチュエータプレート412)
アクチュエータプレート412は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電材料により構成されたプレートである。このアクチュエータプレート412は、図3に示したように、分極方向が互いに異なる2つの圧電基板を、厚み方向(Z軸方向)に沿って積層して構成されている(いわゆる、シェブロンタイプ)。ただし、アクチュエータプレート412の構成としては、このシェブロンタイプには限られない。すなわち、例えば、分極方向が厚み方向(Z軸方向)に沿って一方向に設定されている1つ(単一)の圧電基板によって、アクチュエータプレート412を構成するようにしてもよい(いわゆる、カンチレバータイプ)。
【0035】
また、図2に示したように、アクチュエータプレート412には、X軸方向に沿ってそれぞれ延在する、2列のチャネル列(チャネル列421,422)が設けられている。これらのチャネル列421,422同士は、Y軸方向に沿って所定の間隔をおいて配置されている。
【0036】
このようなアクチュエータプレート412では、図2に示したように、X軸方向に沿った中央部(チャネル列421,422の形成領域)に、インク9の吐出領域(噴射領域)が設けられている。一方、アクチュエータプレート412において、X軸方向に沿った両端部(チャネル列421,422の非形成領域)には、インク9の非吐出領域(非噴射領域)が設けられている。この非吐出領域は、上記した吐出領域に対して、X軸方向に沿った外側に位置している。なお、アクチュエータプレート412におけるY軸方向に沿った両端部はそれぞれ、図2に示したように、尾部420を構成している。
【0037】
上記したチャネル列421は、図2および図3に示したように、複数のチャネルC1を有している。これらのチャネルC1は、図2に示したように、アクチュエータプレート412内においてY軸方向から所定の角度(鋭角)を成す、斜め方向に沿って延在している。また、これらのチャネルC1は、図2に示したように、X軸方向に沿って所定の間隔をおいて互いに平行となるよう、並んで配置されている。各チャネルC1は、圧電体(アクチュエータプレート412)からなる駆動壁Wdによってそれぞれ画成されており、断面視にて凹状の溝部となっている(図3参照)。
【0038】
チャネル列422も同様に、図2に示したように、上記した斜め方向に沿って延在する複数のチャネルC2を有している。これらのチャネルC2は、図2に示したように、X軸方向に沿って所定の間隔をおいて互いに平行となるよう、並んで配置されている。各チャネルC2もまた、上記した駆動壁Wdによってそれぞれ画成されており、断面視にて凹状の溝部となっている。
【0039】
ここで、図2図6に示したように、チャネルC1には、インク9を吐出させるための吐出チャネルC1e(吐出溝)と、インク9を吐出させないダミーチャネルC1d(非吐出溝)とが存在している。図2および図3に示したように、チャネル列421において、これらの吐出チャネルC1eとダミーチャネルC1dとは、X軸方向に沿って交互に配置されている。各吐出チャネルC1eは、ノズルプレート411におけるノズル孔H1と連通している一方、各ダミーチャネルC1dはノズル孔H1には連通しておらず、ノズルプレート411の上面によって下方から覆われている(図3図5参照)。
【0040】
同様に、図2図4図5に示したように、チャネルC2には、インク9を吐出させるための吐出チャネルC2e(吐出溝)と、インク9を吐出させないダミーチャネルC2d(非吐出溝)とが存在している。図2に示したように、チャネル列422において、これらの吐出チャネルC2eとダミーチャネルC2dとは、X軸方向に沿って交互に配置されている。各吐出チャネルC2eは、ノズルプレート411におけるノズル孔H2と連通している一方、各ダミーチャネルC2dはノズル孔H2には連通しておらず、ノズルプレート411の上面によって下方から覆われている(図4図5参照)。
【0041】
なお、このような吐出チャネルC1e,C2eはそれぞれ、本開示における「吐出溝」の一具体例に対応している。また、ダミーチャネルC1d,C2dはそれぞれ、本開示における「非吐出溝」の一具体例に対応している。
【0042】
また、図2中のIV−IV線で示したように、チャネル列421における吐出チャネルC1eと、チャネル列422における吐出チャネルC2eとは、これら吐出チャネルC1e,C2eの延在方向(前述した斜め方向)に沿って、一直線上に配置されている(図4参照)。同様に、図2中のV−V線で示したように、チャネル列421におけるダミーチャネルC1dと、チャネル列422におけるダミーチャネルC2dとは、これらダミーチャネルC1d,C2dの延在方向(上記斜め方向)に沿って、一直線上に配置されている(図5参照)。
【0043】
ここで、図3に示したように、上記した駆動壁Wdにおける対向する内側面にはそれぞれ、上記した斜め方向に沿って延在する、駆動電極Edが設けられている。この駆動電極Edには、吐出チャネルC1e,C2eに面する内側面に設けられた共通電極(コモン電極)Edcと、ダミーチャネルC1d,C2dに面する内側面に設けられた個別電極(アクティブ電極)Edaとが存在している。なお、このような駆動電極Ed(共通電極Edcおよび個別電極Eda)は、図3に示したように、駆動壁Wdの内側面上において、深さ方向(Z軸方向)の全体に亘って形成されている。
【0044】
同一の吐出チャネルC1e(または吐出チャネルC2e)内で対向する一対の共通電極Edc同士は、互いに電気的に接続されている(図6参照)。また、同一のダミーチャネルC1d(またはダミーチャネルC2d)内で対向する一対の個別電極Eda同士は、後述するように電極分割溝460(図5参照)によって、互いに電気的に分離されている。一方、吐出チャネルC1e(または吐出チャネルC2e)を介して対向する一対の個別電極Eda同士は、後述するカバープレート413に形成された個別端子(個別配線Wda)において互いに電気的に接続されている(図7参照)。
【0045】
ここで、前述した尾部420においては、駆動電極Edと前述した回路基板との間を電気的に接続するための、前述したフレキシブルプリント基板441,442(図4図5参照)が実装されている。これらのフレキシブルプリント基板441,442に形成された配線パターン(不図示)は、後述するカバープレート413に形成された共通配線Wdcおよび個別配線Wda(図7参照)に対して電気的に接続されている。これにより、これらのフレキシブルプリント基板441,442を介して、上記した回路基板上の駆動回路から各駆動電極Edに対して、駆動電圧が印加されるようになっている。
【0046】
アクチュエータプレート412は、X軸方向に延在する溝部S0を有している(図6参照)。溝部S0は、吐出チャネルC1eと吐出チャネルC2eとの間と、ダミーチャネルC1dとダミーチャネルC2dとの間とに形成されている(図4図6参照)。
【0047】
ヘッドチップ41では、複数の吐出チャネルC1e内の共通電極Edc同士が溝部S0付近(カバープレート413の底面上)や入口側共通インク室Rin1の側面において、互いに電気的に接続され、共通電極Edc2として引き出されている。この共通電極Edc2は、溝部S0付近から、入口側共通インク室Rin1内に引き出されている。
【0048】
同様に、このヘッドチップ41では、複数の吐出チャネルC2e内の共通電極Edc同士が、上記した溝部S0付近(カバープレート413の底面上)や入口側共通インク室Rin2の側面において、互いに電気的に接続され、共通電極Edc2として引き出されている。この共通電極Edc2は、溝部S0付近から、入口側共通インク室Rin2内に引き出されている。
【0049】
アクチュエータプレート412は、ノズルプレート411との接合面471と、カバープレート413との接合面472とを有している(図4図5参照)。
【0050】
ここで、X軸方向は、本開示における「第1の方向」の一具体例に対応している。また、吐出チャネルC1e,C2eとダミーチャネルC1d,C2dとが延在する方向(前述した斜め方向)は、本開示における「第2の方向(第1の方向と交差する方向)」の一具体例に対応している。
【0051】
吐出チャネルC1e,C2eは、アクチュエータプレート412のノズルプレート411との接合面471において、部分的に開口し、開口481が形成されている(図4参照)。吐出チャネルC1e,C2e内において、開口481は、第2の方向の略中央に形成されている。アクチュエータプレート412のノズルプレート411との接合面471では、吐出チャネルC1e,C2eの延在方向(第2の方向)において、吐出チャネルC1e,C2eの一部が、吐出チャネルC1e,C2eの底部によって遮蔽されているとともに、吐出チャネルC1e,C2eの他の部分が、部分的に開口している。
【0052】
ダミーチャネルC1d,C2dは、アクチュエータプレート412のノズルプレート411との接合面471において、部分的に開口し、開口482が形成されている(図5参照)。ダミーチャネルC1d,C2d内において、開口482は、第2の方向の略中央に形成されている。アクチュエータプレート412のノズルプレート411との接合面471では、ダミーチャネルC1d,C2dの延在方向(第2の方向)において、ダミーチャネルC1d,C2dの一部が、ダミーチャネルC1d,C2dの底部によって遮蔽されているとともに、ダミーチャネルC1d,C2dの他の部分が、部分的に開口している。
【0053】
なお、吐出チャネルC1e,C2eはそれぞれ、図4に示したように、カバープレート413側(上方)からノズルプレート411側(下方)へ向けて吐出チャネルC1e,C2eの断面積が徐々に小さくなる、円弧状の側面を有している。このような吐出チャネルC1e,C2eにおける円弧状の側面はそれぞれ、例えば、ダイサーによる切削加工によって形成されるようになっている。
【0054】
同様に、ダミーチャネルC1d,C2dはそれぞれ、図5に示したように、カバープレート413側(上方)からノズルプレート411側(下方)へ向けてダミーチャネルC1d,C2dの断面積が徐々に小さくなる、円弧状の側面を有している。これにより、第2の方向において、ダミーチャネルC1d,C2d内の溝深さhdは、中央では深く、側面方向に行くに従い浅くなっている。このようなダミーチャネルC1d,C2dにおける円弧状の側面はそれぞれ、例えば、ダイサーによる切削加工によって形成されるようになっている。
【0055】
アクチュエータプレート412は、前述の第2の方向において、所定の端面として、第1の端面451と、第1の端面451とは逆側を向く(第1の端面451に対向する)第2の端面452とを有している。ダミーチャネルC1d,C2dは、前述の第2の方向におけるアクチュエータプレート412の所定の端面において閉じた構造とされている(図5参照)。電極分割溝460は、前述の第2の方向においてアクチュエータプレート412の所定の端面よりも内側に形成されている(図5参照)。
【0056】
なお、アクチュエータプレート412において、駆動電極Ed(共通電極Edcおよび個別電極Eda)を形成する方法としては、例えばめっきによって形成する方法と蒸着によって形成する方法とスパッタリングによって形成する方法とがある。本実施の形態のインクジェットヘッド4では、前述したように、駆動電極Edが、図3に示したように、駆動壁Wdの内側面上において、深さ方向(Z軸方向)の全体に亘って形成されている。この場合、駆動電極Edは例えばめっきによって形成される。この場合、同一のダミーチャネルC1d(またはダミーチャネルC2d)内で対向する一対の個別電極Eda同士が、チャネル内の底面側にまで延在し、一対の個別電極Eda同士が、電気的に接続されるおそれがある。このため、同一のダミーチャネルC1d(またはダミーチャネルC2d)内で対向する一対の個別電極Eda同士を、電極分割溝460(図5参照)等の加工により、チャネル内の底面側において、互いに電気的に分離する必要があり得る。電極分割溝460は、第2の方向に沿って延在している。電極分割溝460は、一対の個別電極Edaのそれぞれを、ダミーチャネルC1d,C2dのそれぞれにおける一方の側面側と他方の側面側とに電気的に分離するように、ダミーチャネルC1d,C2dのそれぞれの底面に形成されている。
【0057】
一方、本実施の形態のインクジェットヘッド4に対する一変形例として、駆動壁Wdの内側面上において、駆動電極Edを、深さ方向の中間位置までしか形成しない構成であってもよい。この場合、駆動電極Edは例えば斜め蒸着によって形成される。この場合、アクチュエータプレート412は、単一の圧電基板によって構成されたカンチレバータイプであってもよい。この場合、構造によっては、同一のダミーチャネルC1d(またはダミーチャネルC2d)内で対向する一対の個別電極Eda同士が電気的に接続されずに済むことがあるため、追加工による電極分割は不要となる場合がある。このため、必ずしも、電極分割溝460は形成しなくてもよい。
【0058】
(カバープレート413)
カバープレート413は、図2図5に示したように、アクチュエータプレート412における各チャネルC1,C2(各チャネル列421,422)を閉塞するように配置されている。具体的には、このカバープレート413は、アクチュエータプレート412の上面(接合面472)に接着されており、板状構造となっている。
【0059】
カバープレート413には、図5に示したように、一対の入口側共通インク室Rin1,Rin2と、一対の出口側共通インク室Rout1,Rout2とが、それぞれ形成されている。これらの入口側共通インク室Rin1,Rin2および出口側共通インク室Rout1,Rout2はそれぞれ、X軸方向に沿って延在していると共に、所定の間隔をおいて互いに平行となるよう、並んで配置されている。また、入口側共通インク室Rin1および出口側共通インク室Rout1はそれぞれ、アクチュエータプレート412におけるチャネル列421(複数のチャネルC1)に対応する領域に形成されている。一方、入口側共通インク室Rin2および出口側共通インク室Rout2はそれぞれ、アクチュエータプレート412におけるチャネル列422(複数のチャネルC2)に対応する領域に形成されている。
【0060】
入口側共通インク室Rin1は、各チャネルC1におけるY軸方向に沿った内側の端部付近に形成されており、凹状の溝部となっている(図5参照)。この入口側共通インク室Rin1において、各吐出チャネルC1eに対応する領域には、カバープレート413をその厚み方向(Z軸方向)に沿って貫通する、供給スリットSin1が形成されている(図4参照)。同様に、入口側共通インク室Rin2は、各チャネルC2におけるY軸方向に沿った内側の端部付近に形成されており、凹状の溝部となっている(図5参照)。この入口側共通インク室Rin2において、各吐出チャネルC2eに対応する領域にも、カバープレート413をその厚み方向に沿って貫通する、供給スリットSin2が形成されている(図4参照)。
【0061】
出口側共通インク室Rout1は、各チャネルC1におけるY軸方向に沿った外側の端部付近に形成されており、凹状の溝部となっている(図5参照)。この出口側共通インク室Rout1において、各吐出チャネルC1eに対応する領域には、カバープレート413をその厚み方向に沿って貫通する、排出スリットSout1が形成されている(図4参照)。同様に、出口側共通インク室Rout2は、各チャネルC2におけるY軸方向に沿った外側の端部付近に形成されており、凹状の溝部となっている(図5参照)。この出口側共通インク室Rout2において、各吐出チャネルC2eに対応する領域にも、カバープレート413をその厚み方向に沿って貫通する、排出スリットSout2が形成されている(図4参照)。
【0062】
このようにして、入口側共通インク室Rin1および出口側共通インク室Rout1はそれぞれ、供給スリットSin1および排出スリットSout1を介して各吐出チャネルC1eに連通する一方、各ダミーチャネルC1dには連通していない(図4図5参照)。すなわち、各ダミーチャネルC1dは、これら入口側共通インク室Rin1および出口側共通インク室Rout1における底部によって、閉塞されるようになっている(図5参照)。
【0063】
同様に、入口側共通インク室Rin2および出口側共通インク室Rout2はそれぞれ、供給スリットSin2および排出スリットSout2を介して各吐出チャネルC2eに連通する一方、各ダミーチャネルC2dには連通していない(図4図5参照)。すなわち、各ダミーチャネルC2dは、これら入口側共通インク室Rin2および出口側共通インク室Rout2における底部によって、閉塞されるようになっている(図5参照)。
【0064】
(流路プレート40)
流路プレート40は、図3に示したように、カバープレート413の上面に配置されており、インク9が流れる所定の流路(不図示)を有している。また、このような流路プレート40内の流路には、前述した循環機構5における流路50a,50bが接続されており、この流路に対するインク9の流入と、この流路からのインク9の流出とが、それぞれなされるようになっている。なお、上述したように、ダミーチャネルC1d,C2dはカバープレート413の底部によって閉塞されるようになっているので、インク9は、吐出チャネルC1e,C2eのみに供給され、ダミーチャネルC1d,C2dには流入しない。
【0065】
[吐出チャネルC1e,C2e付近の流路構造]
次に、前述した図4(吐出チャネルC1e,C2e付近の断面構成例)を参照して、前述した供給スリットSin1,Sin2および排出スリットSout1,Sout2と吐出チャネルC1e,C2eとを連通する部分のインク9の流路構造について、詳細に説明する。
【0066】
この図4に示したように、本実施の形態のヘッドチップ41では、カバープレート413に、供給スリットSin1,Sin2および排出スリットSout1,Sout2と、壁部W1,W2とが設けられている。具体的には、供給スリットSin1および排出スリットSout1はそれぞれ、吐出チャネルC1eとの間でインク9が流れる貫通孔であり、供給スリットSin2および排出スリットSout2はそれぞれ、吐出チャネルC2eとの間でインク9が流れる貫通孔である。詳細には図4中の破線の矢印で示したように、供給スリットSin1,Sin2はそれぞれ、吐出チャネルC1e,C2e内にインク9を流入させるための貫通孔であり、排出スリットSout1,Sout2はそれぞれ、吐出チャネルC1e,C2e内からインク9を流出させるための貫通孔である。
【0067】
また、上記した壁部W1は、吐出チャネルC1eの上方を覆うようにして、入口側共通インク室Rin1および出口側共通インク室Rout1の間に配置されている。同様に、上記した壁部W2は、吐出チャネルC2eの上方を覆うようにして、入口側共通インク室Rin2および出口側共通インク室Rout2の間に配置されている。
【0068】
[個別配線Wda、共通配線Wdc、共通電極Edc2の構成]
次に、図4図8を参照して、カバープレート413側の配線(個別配線Wda、共通配線Wdc、共通電極Edc2)について説明する。
【0069】
図4および図7に示したように、カバープレート413の底面における、アクチュエータプレート412の溝部S0の周囲に対応する領域には、アクチュエータプレート412側の、同一のチャネル列421(またはチャネル列422)にある複数の共通電極Edc同士を電気的に接続するための共通電極Edc2が、X軸方向に延在して形成されている。これにより、カバープレート413側において、複数の共通電極Edc同士がX軸方向で電気的に接続され、共通化される。
【0070】
共通電極Edc2は、図4および図7に示したように、供給スリットSin1,Sin2内にも形成されている。また、共通電極Edc2は、図5および図8に示したように、出口側共通インク室Rout1,Rout2内と、入口側共通インク室Rin1,Rin2内ととにも形成されている。
【0071】
また、図7に示したように、カバープレート413の底面のX方向の両端部には、共通配線Wdcが形成されている。また、図7に示したように、カバープレート413の底面のY方向の両端部には、個別配線Wdaが形成されている。なお、図7では、共通配線Wdcとして、X方向の1つの端部側の共通配線Wdcのみを図示している。共通配線Wdcは、2つのチャネル列421,422(図6参照)に対応するそれぞれの領域に形成されている。チャネル列421に対応する領域にある共通配線Wdcは、共通電極Edc2を介して、チャネル列421にある複数の共通電極Edcとチャネル列421側のFPC441とを電気的に接続する。同様に、チャネル列422に対応する領域にある共通配線Wdcは、共通電極Edc2を介して、チャネル列422にある複数の共通電極Edcとチャネル列422側のFPC442とを電気的に接続する。個別配線Wdaは、吐出チャネルC1e(または吐出チャネルC2e)を介して対向する一対の個別電極Eda同士を、FPC441(またはFPC442)に電気的に接続する。
【0072】
[動作および作用・効果]
(A.プリンタ1の基本動作)
このプリンタ1では、以下のようにして、記録紙Pに対する画像や文字等の記録動作(印刷動作)が行われる。なお、初期状態として、図1に示した4種類のインクタンク3(3Y,3M,3C,3B)にはそれぞれ、対応する色(4色)のインク9が十分に封入されているものとする。また、インクタンク3内のインク9は、循環機構5を介してインクジェットヘッド4内に充填された状態となっている。
【0073】
このような初期状態において、プリンタ1を作動させると、搬送機構2a,2bにおけるグリッドローラ21がそれぞれ回転することで、グリッドローラ21とピンチローラ22と間に、記録紙Pが搬送方向d(X軸方向)に沿って搬送される。また、このような搬送動作と同時に、駆動機構63における駆動モータ633が、プーリ631a,631bをそれぞれ回転させることで、無端ベルト632を動作させる。これにより、キャリッジ62がガイドレール61a,61bにガイドされながら、記録紙Pの幅方向(Y軸方向)に沿って往復移動する。そしてこの際に、各インクジェットヘッド4(4Y,4M,4C,4B)によって、4色のインク9を記録紙Pに適宜吐出させることで、この記録紙Pに対する画像や文字等の記録動作がなされる。
【0074】
(B.インクジェットヘッド4における詳細動作)
次いで、図1図5を参照して、インクジェットヘッド4における詳細動作(インク9の噴射動作)について説明する。すなわち、本実施の形態のインクジェットヘッド4(サイドシュートタイプ)では、以下のようにして、せん断(シェア)モードを用いたインク9の噴射動作が行われる。
【0075】
まず、上記したキャリッジ62(図1参照)の往復移動が開始されると、前述した回路基板上の駆動回路は、前述したフレキシブルプリント基板を介して、インクジェットヘッド4内の駆動電極Ed(共通電極Edcおよび個別電極Eda)に対し、駆動電圧を印加する。具体的には、この駆動回路は、吐出チャネルC1e,C2eを画成する一対の駆動壁Wdに配置された各個別電極Edaに対し、駆動電圧を印加する。これにより、これら一対の駆動壁Wdがそれぞれ、その吐出チャネルC1e,C2eに隣接するダミーチャネルC1d,C2d側へ、突出するように変形する(図3参照)。
【0076】
ここで、前述したように、アクチュエータプレート412では、分極方向が厚み方向に沿って異なっている(前述した2つの圧電基板が積層されている)と共に、駆動電極Edが、駆動壁Wdにおける内側面上の深さ方向の全体に亘って形成されている。このため、上記した駆動回路によって駆動電圧を印加することで、駆動壁Wdにおける深さ方向の中間位置を中心として、駆動壁WdがV字状に屈曲変形することになる。そして、このような駆動壁Wdの屈曲変形により、吐出チャネルC1e,C2eがあたかも膨らむように変形する。ちなみに、アクチュエータプレート412の構成が、このようなシェブロンタイプではなく、前述したカンチレバータイプである場合には、以下のようにして、駆動壁WdがV字状に屈曲変形する。すなわち、このカンチレバータイプの場合、駆動電極Edが深さ方向の上半分まで斜め蒸着によって取り付けられることになるため、この駆動電極Edが形成されている部分のみに駆動力が及ぶことによって、駆動壁Wdが(駆動電極Edの深さ方向端部において)屈曲変形する。その結果、この場合においても、駆動壁WdがV字状に屈曲変形するため、吐出チャネルC1e,C2eがあたかも膨らむように変形することになる。
【0077】
このように、一対の駆動壁Wdでの圧電厚み滑り効果による屈曲変形によって、吐出チャネルC1e,C2eの容積が増大する。そして、吐出チャネルC1e,C2eの容積が増大することにより、入口側共通インク室Rin1,Rin2内に貯留されたインク9が、吐出チャネルC1e,C2e内へ誘導されることになる(図4参照)。
【0078】
次いで、このようにして吐出チャネルC1e,C2e内へ誘導されたインク9は、圧力波となって吐出チャネルC1e,C2eの内部に伝播する。そして、ノズルプレート411のノズル孔H1,H2にこの圧力波が到達したタイミングで、駆動電極Edに印加される駆動電圧が、0(ゼロ)Vとなる。これにより、上記した屈曲変形の状態から駆動壁Wdが復元する結果、一旦増大した吐出チャネルC1e,C2eの容積が、再び元に戻ることになる(図3参照)。
【0079】
このようにして、吐出チャネルC1e,C2eの容積が元に戻ると、吐出チャネルC1e,C2e内部の圧力が増加し、吐出チャネルC1e,C2e内のインク9が加圧される。その結果、液滴状のインク9が、ノズル孔H1,H2を通って外部へと(記録紙Pへ向けて)吐出される(図3図4参照)。このようにしてインクジェットヘッド4におけるインク9の噴射動作(吐出動作)がなされ、その結果、記録紙Pに対する画像や文字等の記録動作が行われることになる。
【0080】
特に、本実施の形態のノズル孔H1,H2はそれぞれ、前述したように、出口に向かうに従って漸次縮径するテーパ状の断面となっているため(図3図4参照)、インク9を高速度で真っ直ぐに(直進性良く)吐出することができる。よって、高画質な記録を行うことが可能となる。
【0081】
(C.インク9の循環動作)
続いて、図1図4を参照して、循環機構5によるインク9の循環動作について、詳細に説明する。
【0082】
図1に示したように、このプリンタ1では、送液ポンプ52aによって、インクタンク3内から流路50a内へと、インク9が送液される。また、送液ポンプ52bによって、流路50b内を流れるインク9が、インクタンク3内へと送液される。
【0083】
この際に、インクジェットヘッド4内では、インクタンク3内から流路50aを介して流れるインク9が、入口側共通インク室Rin1,Rin2へと流入する。これらの入口側共通インク室Rin1,Rin2へと供給されたインク9は、図4に示したように、供給スリットSin1,Sin2を介して、アクチュエータプレート412における各吐出チャネルC1e,C2e内へと供給される。
【0084】
また、各吐出チャネルC1e,C2e内のインク9は、図4に示したように、排出スリットSout1,Sout2を介して、各出口側共通インク室Rout1,Rout2内へと流入する。これらの出口側共通インク室Rout1,Rout2へ供給されたインク9は、流路50bへと排出されることで、インクジェットヘッド4内から流出される。そして、流路50bへと排出されたインク9は、インクタンク3内へと戻されることになる。このようにして、循環機構5によるインク9の循環動作がなされる。
【0085】
ここで、循環式ではないインクジェットヘッドでは、乾燥性の高いインクを使用した場合、ノズル孔の近傍でのインクの乾燥に起因して、インクの局所的な高粘度化や固化が生じる結果、インク不吐出の不良が発生するおそれがある。これに対して、本実施の形態のインクジェットヘッド4(循環式のインクジェットヘッド)では、ノズル孔H1,H2の近傍に常に新鮮なインク9が供給されることから、上記したようなインク不吐出の不良が回避されることになる。
【0086】
(D.作用・効果)
次に、本実施の形態のヘッドチップ41、インクジェットヘッド4およびプリンタ1における作用および効果について、比較例と比較しつつ詳細に説明する。
【0087】
(比較例)
図9は、比較例に係るヘッドチップ(ヘッドチップ104)の断面構成例を模式的に表したものであり、ダミーチャネルC1d,C2d付近の断面構成例に対応している。この比較例のヘッドチップ104は、図5に示した本実施の形態のヘッドチップ41におけるアクチュエータプレート412に代えて、アクチュエータプレート102を備えている。本実施の形態のヘッドチップ41におけるアクチュエータプレート412では、図5に示したように、ダミーチャネルC1d,C2dは、アクチュエータプレート412のノズルプレート411との接合面471において、部分的に開口し、開口482が形成されている。これに対して、比較例のヘッドチップ104におけるアクチュエータプレート102では、図9に示したように、ノズルプレート411との接合面471において、ダミーチャネルC1d,C2dが全体的に開口している。これにより、前述の第2の方向において、ダミーチャネルC1d,C2d内の溝深さhdは略一定となっている。また、ダミーチャネルC1dにおける開口は、前述の第2の方向において、第1の端面451にまで形成されている。また、ダミーチャネルC2dにおける開口は、前述の第2の方向において、第2の端面452にまで形成されている。これにより、ダミーチャネルC1d,C2dは、第2の方向において、第1の端面451と第2の端面452との間で全体的に開口し、ノズルプレート411との接合面471において露出している。
【0088】
このような比較例のヘッドチップ104では、ノズルプレート411との接合面471において、ダミーチャネルC1d,C2dの露出が多くなっているためアクチュエータプレート102の強度が弱く、軽い衝撃に対しても、駆動壁Wd等が欠けたり折れたりしやすく、不良となってしまうおそれがある。これにより、製造上の歩留まりも悪くなる場合がある。また、比較例のヘッドチップ104では、アクチュエータプレート102において、フレキシブルプリント基板441,442を接続後に尾部420(図2参照)を封止する段階で接着剤がダミーチャネルC1d,C2dに流れ込み、硬化収縮により駆動壁Wd等にクラックが入ったり、吐出時の駆動壁Wdの動きに影響を与え、吐出特性が悪化してしまうおそれがある。つまり、この比較例のヘッドチップ104では、吐出安定性が損なわれるおそれがある。これらのことから、この比較例のヘッドチップ104では、信頼性が損なわれてしまう場合がある。
【0089】
(本実施の形態)
これに対して本実施の形態のヘッドチップ41では、図5に示したように、ダミーチャネルC1d,C2dは、アクチュエータプレート412のノズルプレート411との接合面471において、全体的に開口しているわけではなく、部分的な開口482が形成された構造とされている。
【0090】
このように、本実施の形態のヘッドチップ41では、ダミーチャネルC1d,C2dの開口482を部分的な開口とすることにより、比較例のヘッドチップ104のようにダミーチャネルC1d,C2dが全体的に開口する場合に比べて、ノズルプレート411面側へのダミーチャネルC1d,C2dの露出を減らすことができる。これにより、アクチュエータプレート412の強度を高くすることができ、製造上の歩留まり向上が可能となる。また、ノズルプレート411が金属である場合、ダミーチャネルC1d,C2dの個別電極Edaとノズルプレート411とのショートが起きる可能性があるが、そのようなショートを起き難くすることができる。よって、本実施の形態では上記比較例と比べ、ヘッドチップ41、インクジェットヘッド4およびプリンタ1における吐出安定性を向上させることが可能となる。また、アクチュエータプレート412の強度を高くすることができるので、信頼性を向上させることが可能となる。
【0091】
なお、このような効果は、駆動電極Edが蒸着等によって、駆動壁Wdの内側面上において深さ方向の中間位置までしか形成されておらず、また、電極分割溝460が形成されていない構造である場合であっても同様である。
【0092】
加えて、本実施の形態のヘッドチップ41では、ダミーチャネルC1d,C2dが、前述の第2の方向におけるアクチュエータプレート412の所定の端面(第1の端面451、第2の端面452)において閉じた構造とされている。また、電極分割溝460が、前述の第2の方向においてアクチュエータプレート412の所定の端面よりも内側に形成されている。
【0093】
これにより、本実施の形態のヘッドチップ41では、アクチュエータプレート412の所定の端面における支持強度を高くすることができる。加えて、アクチュエータプレート412の所定の端面付近において、駆動電極Edを封止するため、または他の部材を接着するための接着剤を塗布する工程において、ダミーチャネルC1d,C2d内への接着剤の流れ込みを防ぐことができる。これにより、吐出チャネルC1e,C2eとダミーチャネルC1d,C2dとを画成する駆動壁Wdの動きが接着剤によって阻害されることを防ぐことができる。よって、本実施の形態では上記比較例と比べ、ヘッドチップ41、インクジェットヘッド4およびプリンタ1における吐出安定性をより向上させることが可能となる。また、アクチュエータプレート412の強度をより高くすることができ、信頼性をより向上させることが可能となる。
【0094】
<2.変形例>
続いて、上記実施の形態の変形例(変形例1〜4)について説明する。なお、実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0095】
[変形例1]
図10は、変形例1に係るヘッドチップ(ヘッドチップ41A)の断面構成例を模式的に表したものであり、ダミーチャネルC1d,C2d付近の断面構成例に対応している。この変形例1のヘッドチップ41A(アクチュエータプレート412A)は、図5に示した実施の形態のヘッドチップ41(アクチュエータプレート412)において、ダミーチャネルC1d,C2d付近の構造を変更したものに対応しており、他の構成は基本的に同様となっている。
【0096】
具体的には、実施の形態のヘッドチップ41(図5)では、電極分割溝460が、前述の第2の方向においてアクチュエータプレート412の所定の端面(第1の端面451、第2の端面452)よりも内側に形成されている。これに対し、変形例1のヘッドチップ41A(図10)では、電極分割溝460が、第2の方向においてアクチュエータプレート412Aの所定の端面(第1の端面451、第2の端面452)まで延在し、露出している。
【0097】
このような構成の変形例1のヘッドチップ41Aにおいても、基本的には実施の形態のヘッドチップ41と同様の作用により、略同様の効果を得ることが可能である。
【0098】
さらに、変形例1のヘッドチップ41Aでは、電極分割溝460がアクチュエータプレート412Aの所定の端面まで延在し、所定の端面において露出していることで、ダミーチャネルC1d,C2dにおける不純物(ゴミ)の詰まりを抑制することができる。不純物が導電性である場合、ダミーチャネルC1d,C2d内において対向する個別電極Edaがショートするおそれがあるが、変形例1のヘッドチップ41Aでは、そのようなショートを抑制することができる。
【0099】
[変形例2]
図11は、変形例2に係るヘッドチップ(ヘッドチップ41B)の断面構成例を模式的に表したものであり、ダミーチャネルC1d,C2d付近の断面構成例に対応している。
【0100】
この変形例2のヘッドチップ41B(アクチュエータプレート412B)は、図5に示した実施の形態のヘッドチップ41(アクチュエータプレート412)において、ダミーチャネルC1d,C2d付近の構造を変更したものに対応しており、他の構成は基本的に同様となっている。
【0101】
具体的には、実施の形態のヘッドチップ41(図5)では、ダミーチャネルC1d,C2dが、前述の第2の方向におけるアクチュエータプレート412の所定の端面(第1の端面451、第2の端面452)において閉じた構造とされている。また、実施の形態のヘッドチップ41(図5)では、電極分割溝460が、前述の第2の方向においてアクチュエータプレート412の所定の端面よりも内側に形成されている。これに対し、変形例2のヘッドチップ41B(図11)では、ダミーチャネルC1d,C2dは、第2の方向におけるアクチュエータプレート412Bの所定の端面において部分的に開口している。また、変形例1のヘッドチップ41A(図10)と同様に、電極分割溝460が、第2の方向においてアクチュエータプレート412Aの所定の端面まで延在し、露出している。また、変形例2のヘッドチップ41Bでは、アクチュエータプレート412Bのノズルプレート411との接合面471において、ダミーチャネルC1d,C2dにおけるそれぞれの開口482が、溝部S0にまで延在している。これにより、ダミーチャネルC1dとダミーチャネルC2dとの間(溝部S0付近)の領域が、全体的に連通し、全体的に遮蔽されていない構造となっている。
【0102】
なお、ダミーチャネルC1d,C2dが、第2の方向におけるアクチュエータプレート412Bの所定の端面において「部分的に開口している」とは、所定の端面において、ダミーチャネルC1d,C2dが、図5のように閉じた構造(遮蔽された構造)とはなっておらず、Z方向において部分的に遮蔽されていない状態となっていることをいう。
【0103】
このような構成の変形例2のヘッドチップ41Bにおいても、基本的には実施の形態のヘッドチップ41と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能である。
【0104】
さらに、変形例2のヘッドチップ41Bでは、ダミーチャネルC1d,C2dがアクチュエータプレート412Bの所定の端面において部分的に開口し、また、電極分割溝460が所定の端面において露出していることで、ダミーチャネルC1d,C2dにおける不純物(ゴミ)の詰まりをより抑制することができる。不純物が導電性である場合、個別電極Edaがショートするおそれがあるが、変形例2のヘッドチップ41Bでは、そのようなショートを抑制することができる。また、ダミーチャネルC1dとダミーチャネルC2dとの間(溝部S0付近)の領域が、全体的に遮蔽されていない構造となっているため、ダミーチャネルC1dとダミーチャネルC2dとの間におけるゴミの詰まりを抑制し、その間において個別電極Edaがショートすることを抑制することができる。
【0105】
[変形例3]
図12は、変形例3に係るヘッドチップ(ヘッドチップ41C)の断面構成例を模式的に表したものであり、ダミーチャネルC1d,C2d付近の断面構成例に対応している。
【0106】
この変形例3のヘッドチップ41C(アクチュエータプレート412C)は、図5に示した実施の形態のヘッドチップ41(アクチュエータプレート412)において、ダミーチャネルC1d,C2d付近の構造を変更したものに対応しており、他の構成は基本的に同様となっている。
【0107】
具体的には、実施の形態のヘッドチップ41(図5)では、ダミーチャネルC1d,C2dが、前述の第2の方向におけるアクチュエータプレート412の所定の端面(第1の端面451、第2の端面452)において閉じた構造とされている。また、実施の形態のヘッドチップ41(図5)では、電極分割溝460が、前述の第2の方向においてアクチュエータプレート412の所定の端面よりも内側に形成されている。これに対し、変形例3のヘッドチップ41C(図12)では、変形例2のヘッドチップ41B(図11)と同様に、ダミーチャネルC1d,C2dは、第2の方向におけるアクチュエータプレート412Bの所定の端面において部分的に開口している。また、変形例3のヘッドチップ41Cでは、電極分割溝460が、アクチュエータプレート412Cのノズルプレート411との接合面471において、第1の端面451から第2の端面452に亘って全体的に露出するように形成されている。また、変形例3のヘッドチップ41Cでは、アクチュエータプレート412Cのノズルプレート411との接合面471において、ダミーチャネルC1d,C2dにおけるそれぞれの開口482が、溝部S0にまで延在している。
【0108】
このような構成の変形例3のヘッドチップ41Cにおいても、基本的には実施の形態のヘッドチップ41と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能である。
【0109】
さらに、変形例3のヘッドチップ41Cでは、電極分割溝460がアクチュエータプレート412Cの第1の端面451から第2の端面452に亘ってノズルプレート411面側に全体的に露出するように形成されていることで、変形例2のヘッドチップ41Bに比べてさらに、不純物によるショートの発生を抑制することができる。また、ダミーチャネルC1d,C2d内の構造物が最低限しかないので、変形例2のヘッドチップ41Bに比べてさらに、吐出動作時における駆動壁Wdの動きへの悪影響を抑制し、吐出特性を安定化することができる。
【0110】
[変形例4]
図13は、変形例4に係るヘッドチップ(ヘッドチップ41D)の断面構成例を模式的に表したものであり、ダミーチャネルC1d,C2d付近の断面構成例に対応している。この変形例4のヘッドチップ41D(アクチュエータプレート412D)は、図5に示した実施の形態のヘッドチップ41(アクチュエータプレート412)において、ダミーチャネルC1d,C2d付近の構造を変更したものに対応しており、他の構成は基本的に同様となっている。
【0111】
具体的には、実施の形態のヘッドチップ41(図5)では、ダミーチャネルC1d,C2dが、前述の第2の方向におけるアクチュエータプレート412の所定の端面(第1の端面451、第2の端面452)において閉じた構造とされている。また、実施の形態のヘッドチップ41(図5)では、電極分割溝460が、前述の第2の方向においてアクチュエータプレート412の所定の端面よりも内側に形成されている。これに対し、変形例4のヘッドチップ41D(図13)では、変形例2のヘッドチップ41B(図11)と同様に、ダミーチャネルC1d,C2dは、第2の方向におけるアクチュエータプレート412Bの所定の端面において部分的に開口している。変形例4のヘッドチップ41Dでは、変形例2のヘッドチップ41Bと同様に、電極分割溝460が、第2の方向においてアクチュエータプレート412Aの所定の端面まで延在し、露出している。また、ダミーチャネルC1dとダミーチャネルC2dとの間(溝部S0付近)の領域が、部分的に連通し、部分的に遮蔽されていない構造となっている。
【0112】
このような構成の変形例4のヘッドチップ41Dにおいても、基本的には実施の形態のヘッドチップ41と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能である。
【0113】
さらに、変形例4のヘッドチップ41Dでは、ダミーチャネルC1d,C2dがアクチュエータプレート412Bの所定の端面において部分的に開口し、また、電極分割溝460が所定の端面において露出していることで、ダミーチャネルC1d,C2dにおける不純物(ゴミ)の詰まりをより抑制することができる。不純物が導電性である場合、個別電極Edaがショートするおそれがあるが、変形例4のヘッドチップ41Dでは、そのようなショートを抑制することができる。また、ダミーチャネルC1dとダミーチャネルC2dとの間(溝部S0付近)の領域が、部分的に遮蔽されていない構造となっているため、ダミーチャネルC1dとダミーチャネルC2dとの間におけるゴミの詰まりを抑制し、その間において個別電極Edaがショートすることを抑制することができる。
【0114】
<3.その他の変形例>
以上、実施の形態および変形例をいくつか挙げて本開示を説明したが、本開示はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0115】
例えば、上記実施の形態等では、プリンタ、インクジェットヘッドおよびヘッドチップにおける各部材の構成例(形状、配置、個数等)を具体的に挙げて説明したが、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の形状や配置、個数等であってもよい。また、上記実施の形態等で説明した各種パラメータの値や範囲、大小関係等についても、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の値や範囲、大小関係等であってもよい。
【0116】
具体的には、例えば、上記実施の形態等では、2列タイプの(2列のノズル列An1,An2を有する)インクジェットヘッド4を挙げて説明したが、この例には限られない。すなわち、例えば、1列タイプ(1列のノズル列を有する)のインクジェットヘッドや、3列以上(例えば3列や4列など)の複数例タイプ(3列以上のノズル列を有する)インクジェットヘッドであってもよい。
【0117】
また、例えば、上記実施の形態等では、各吐出チャネル(吐出溝)および各ダミーチャネル(非吐出溝)がそれぞれ、アクチュエータプレート412内で斜め方向に沿って延在している場合について説明したが、この例には限られない。すなわち、例えば、各吐出チャネルおよび各ダミーチャネルがそれぞれ、アクチュエータプレート412内でY軸方向に沿って延在するようにしてもよい。
【0118】
さらに、例えば、ノズル孔H1,H2の断面形状については、上記実施の形態等で説明したような円形状には限られず、例えば、楕円形状や、三角形状等の多角形状、星型形状などであってもよい。
【0119】
また、上記実施の形態等では、主に、インクタンクとインクジェットヘッドとの間でインク9を循環させて利用する、循環式のインクジェットヘッドを例に挙げて説明したが、この例には限られない。すなわち、インク9を循環させずに利用する、非循環式のインクジェットヘッドにおいて、本開示を適用するようにしてもよい。
【0120】
さらに、上記実施の形態等で説明した一連の処理は、ハードウェア(回路)で行われるようにしてもよいし、ソフトウェア(プログラム)で行われるようにしてもよい。ソフトウェアで行われるようにした場合、そのソフトウェアは、各機能をコンピュータにより実行させるためのプログラム群で構成される。各プログラムは、例えば、上記コンピュータに予め組み込まれて用いられてもよいし、ネットワークや記録媒体から上記コンピュータにインストールして用いられてもよい。
【0121】
加えて、上記実施の形態等では、本開示における「液体噴射記録装置」の一具体例として、プリンタ1(インクジェットプリンタ)を挙げて説明したが、この例には限られず、インクジェットプリンタ以外の他の装置にも、本開示を適用することが可能である。換言すると、本開示の「ヘッドチップ」および「液体噴射ヘッド」(インクジェットヘッド)を、インクジェットプリンタ以外の他の装置に適用するようにしてもよい。具体的には、例えば、ファクシミリやオンデマンド印刷機などの装置に、本開示の「ヘッドチップ」および「液体噴射ヘッド」を適用するようにしてもよい。
【0122】
加えて、これまでに説明した各種の例を、任意の組み合わせで適用させるようにしてもよい。
【0123】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0124】
また、本開示は、以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
液体を噴射するヘッドチップであって、
第1の方向に沿って交互に並設され、かつ前記第1の方向に交差する第2の方向に延在する複数の吐出溝および複数の非吐出溝を有するアクチュエータプレートと、
前記複数の吐出溝に個別に連通する複数のノズル孔を有し、前記アクチュエータプレートに接合されるノズルプレートと
を備え、
前記非吐出溝は、前記アクチュエータプレートの前記ノズルプレートとの接合面において、部分的に開口している
ヘッドチップ。
(2)
前記非吐出溝は、前記第2の方向における前記アクチュエータプレートの所定の端面において閉じた構造とされている
上記(1)に記載のヘッドチップ。
(3)
前記アクチュエータプレートは、
前記複数の非吐出溝のそれぞれの内面に形成された複数の個別電極と、
前記複数の個別電極のそれぞれを、前記複数の非吐出溝のそれぞれにおける一方の側面側と他方の側面側とに電気的に分離するように、前記複数の非吐出溝のそれぞれの底面に形成された、前記第2の方向に沿って延びる電極分割溝と
をさらに有し、
前記電極分割溝は、前記第2の方向において前記アクチュエータプレートの所定の端面よりも内側に形成されている
上記(1)または(2)に記載のヘッドチップ。
(4)
前記アクチュエータプレートは、
前記複数の非吐出溝のそれぞれの内面に形成された複数の個別電極と、
前記複数の個別電極のそれぞれを、前記複数の非吐出溝のそれぞれにおける一方の側面側と他方の側面側とに電気的に分離するように、前記複数の非吐出溝のそれぞれの底面に形成された、前記第2の方向に沿って延びる電極分割溝と
をさらに有し、
前記電極分割溝は、前記第2の方向において前記アクチュエータプレートの所定の端面まで延在している
上記(1)または(2)に記載のヘッドチップ。
(5)
前記アクチュエータプレートは、前記第2の方向において、前記所定の端面として、第1の端面と、前記第1の端面とは逆側を向く第2の端面とを有し、
前記電極分割溝は、前記アクチュエータプレートの前記ノズルプレートとの接合面において、前記第1の端面から前記第2の端面に亘って露出するように形成されている
上記(4)に記載のヘッドチップ。
(6)
前記非吐出溝は、前記第2の方向における前記アクチュエータプレートの所定の端面において部分的に開口している
上記(1)、(4)および(5)のいずれか1つに記載のヘッドチップ。
(7)
上記(1)ないし(6)のいずれか1つに記載のヘッドチップを備えた
液体噴射ヘッド。
(8)
請求項(7)に記載の液体噴射ヘッドと、
前記液体を収容する収容部と
を備えた液体噴射記録装置。
【符号の説明】
【0125】
1…プリンタ、10…筺体、2a,2b…搬送機構、21…グリッドローラ、22…ピンチローラ、3(3Y,3M,3C,3B)…インクタンク、4(4Y,4M,4C,4B)…インクジェットヘッド、40…流路プレート、41…ヘッドチップ、41A,41B,41C,41D…ヘッドチップ、102…アクチュエータプレート、104…ヘッドチップ、411…ノズルプレート、412…アクチュエータプレート、412A,412B,412C,412D…アクチュエータプレート、413…カバープレート、420…尾部、421,422…チャネル列、441,442…フレキシブルプリント基板、451…第1の端面、452…第2の端面、460…電極分割溝、471…接合面、472…接合面、481…開口、482…開口、5…循環機構、50…循環流路、50a,50b…流路(供給チューブ)、52a,52b…送液ポンプ、6…走査機構、61a,61b…ガイドレール、62…キャリッジ、63…駆動機構、631a,631b…プーリ、632…無端ベルト、633…駆動モータ、9…インク、P…記録紙、d…搬送方向、H1,H2…ノズル孔、An1,An2…ノズル列、C1,C2…チャネル、C1e,C2e…吐出チャネル(吐出溝)、C1d,C2d…ダミーチャネル(非吐出溝)、Wd…駆動壁、Ed…駆動電極、Edc…共通電極(コモン電極)、Edc2…共通電極(コモン電極)、Eda…個別電極(アクティブ電極)、Wda…個別配線、Wdc…共通配線、Rin1,Rin2…入口側共通インク室、Rout1,Rout2…出口側共通インク室、Sin1,Sin2…供給スリット、Sout1,Sout2…排出スリット、W1,W2…壁部、hd…溝深さ、S0…溝部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13