特許第6968716号(P6968716)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6968716
(24)【登録日】2021年10月29日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】遊動輪および遊動輪の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 55/14 20060101AFI20211108BHJP
【FI】
   B62D55/14 A
【請求項の数】12
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-11453(P2018-11453)
(22)【出願日】2018年1月26日
(65)【公開番号】特開2019-127212(P2019-127212A)
(43)【公開日】2019年8月1日
【審査請求日】2020年12月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】汪 涛
(72)【発明者】
【氏名】久松 健一
(72)【発明者】
【氏名】片山 実
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭48−050432(JP,A)
【文献】 実開昭51−103243(JP,U)
【文献】 独国実用新案第29512636(DE,U1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0001825(US,A1)
【文献】 米国特許第9550536(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 55/00
F16H 55/36,55/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車軸が挿入される第1支持孔を有する第1支持部分と、前記第1支持部分の径方向の外側において前記第1支持孔を中心にして環状に形成された第1外周部分と、前記第1外周部分と前記第1支持部分とを繋ぐ第1側板と、を有する第1部材と、
前記車軸が挿入される第2支持孔を有する第2支持部分と、前記第2支持部分の径方向の外側において前記第2支持孔を中心にして環状に形成された第2外周部分と、前記第2外周部分と前記第2支持部分とを繋ぎ、前記第1側板に対向して配置される第2側板と、を有する第2部材と、
前記車軸が挿入される第3支持孔を有し、前記第1支持部分と前記第2支持部分との間に配置される第3支持部分を有する第3部材と、
前記第2支持部分と前記第3支持部分との間に形成され、前記第2支持部分と前記第3支持部分とを接続する第1溶接部と、
前記第1支持部分と前記第3支持部分との間に形成され、前記第1支持部分と前記第3支持部分とを接続する第2溶接部と、
前記第1外周部分と前記第2外周部分との間に形成され、前記第1外周部分と前記第2外周部分とを接続する第3溶接部と、を備えた、
遊動輪。
【請求項2】
前記車軸が挿入される支持孔を有する支持部と、前記支持部の径方向の外側において前記支持孔を中心にして環状に形成された外周部と、を備え、
前記第1支持孔、前記第2支持孔および前記第3支持孔の各々は、前記支持孔の一部であり、
前記第1支持部分、前記第2支持部分および前記第3支持部分の各々は、前記支持部の一部であり、
前記第1外周部分および前記第2外周部分の各々は、前記外周部の一部である、
請求項1に記載の遊動輪。
【請求項3】
前記支持部は、前記支持孔の内周面に凹状に形成された油溜まり部を更に有する、
請求項2に記載の遊動輪。
【請求項4】
前記油溜まり部は、少なくとも一部が前記第3支持部分に形成されている、
請求項3に記載の遊動輪。
【請求項5】
前記油溜まり部は、少なくとも一部が前記第1支持部分に形成されている、
請求項4に記載の遊動輪。
【請求項6】
前記油溜まり部は、
前記支持孔の中心軸方向において対向する第1内側面および第2内側面と、
前記中心軸方向に沿った底面と、を有し、
前記油溜まり部は、前記中心軸方向において前記第1側板と前記第2側板の間に設けられ、
前記第1内側面および前記底面は、前記第3支持部分に設けられ、
前記第2内側面は、前記第2支持部分に設けられている、
請求項5に記載の遊動輪。
【請求項7】
前記第1溶接部は、前記支持部の外周面側に形成され、
前記第2溶接部は、前記支持部の内周面側に形成され、
前記第3溶接部は、前記外周部の外周面側に形成されている、
請求項2に記載の遊動輪。
【請求項8】
前記第2溶接部は、前記支持孔の中心軸方向における中央位置より端に寄って設けられている、
請求項7に記載の遊動輪。
【請求項9】
車軸が挿入される支持孔を有する支持部に設けられた第1支持部分と、前記支持部の外側であって前記支持孔を中心とする円環状に形成された外周部に設けられた第1外周部分と、前記第1外周部分と前記第1支持部分とを繋ぐ第1側板と、を有する第1部材と、
前記支持部に設けられた第2支持部分と、前記外周部に設けられた第2外周部分と、前記第2外周部分と前記第2支持部分とを繋ぎ、前記支持孔の中心軸方向において前記第1側板に対向するように配置された第2側板と、を有する第2部材と、
前記支持部に設けられ、前記第1支持部分と前記第2支持部分の間に配置された第3支持部分を有する第3部材と、を備えた遊動輪の製造方法であって、
前記第2部材と前記第3部材を、前記第2支持部分と前記第3支持部分の間で溶接する第1溶接工程と、
前記第1部材と前記第3部材を、前記第1支持部分と前記第3支持部分の間で溶接する第2溶接工程と、
前記第1部材と前記第2部材を、前記第1外周部分と前記第2外周部分の間で溶接する第3溶接工程と、を備えた遊動輪の製造方法。
【請求項10】
前記第1溶接工程は、前記支持部の外側から行われ、
前記第2溶接工程は、前記支持部の内側から行われ、
前記第3溶接工程は、前記外周部の外側から行われる、
請求項9に記載の遊動輪の製造方法。
【請求項11】
前記支持部は、前記支持孔の内周面に凹状に形成された油溜まり部を有する、
請求項9に記載の遊動輪の製造方法。
【請求項12】
前記油溜まり部は、
前記中心軸方向において対向する第1内側面および第2内側面と、
前記中心軸方向に沿った底面と、を有し、
前記油溜まり部は、前記中心軸方向において前記第1側板と前記第2側板の間に設けられており、
前記第1内側面および前記底面は、前記第3支持部分に設けられ、
前記第2内側面は、前記第2支持部分に設けられている、
請求項11に記載の遊動輪の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、履帯式走行装置に用いられる遊動輪および遊動輪の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、履帯式走行装置には、無端状の履帯チェーンの回動のために遊動輪と駆動輪が設けられている。大型ヘヴィーデューティー用の遊動輪は、別部材のリムと側板とボスを溶接によって接合して製造されている(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1に示す遊動輪では、側板の内周端とボスが溶接され、側板の外周端とリムが溶接されている。また、ボスが2つ分けられて形成されており、合計5箇所の溶接によって遊動輪が製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第9550536号明細書(例えば、図1および図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示す遊動輪の溶接部は遊動輪側板の端部に設けられているため、車軸方向に力がかかると側板の内周端側の溶接部に負荷が生じやすく、各部材の厚みや溶接脚長を大きくして強度を確保する必要があった。そのため、遊動輪の重量が重くなり、コストが高くなっていた。
本発明は、車軸方向の力に対して溶接部にかかる負荷を低減することが可能な遊動輪および遊動輪の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明にかかる遊動輪は、第1部材と、第2部材と、第3部材と、第1溶接部と、第2溶接部と、第3溶接部と、を備える。第1部材は、第1支持部分と、第1外周部分と、第1側板と、を有する。第1支持部分は、車軸が挿入される第1支持孔を有する。第1外周部分は、第1支持部分の径方向の外側において第1支持孔を中心にして環状に形成されている。第1側板は、第1外周部分と第1支持部分とを繋ぐ。第2部材は、第2支持部分と、第2外周部分と、第2側板と、を有する。第2支持部分は、車軸が挿入される第2支持孔を有する。第2外周部分は、第2支持部分の径方向の外側において第2支持孔を中心にして環状に形成されている。第2側板は、第2外周部分と第2支持部分とを繋ぎ、第1側板に対向して配置される。第3部材は、車軸が挿入される第3支持孔を有し、第1支持部分と第2支持部分との間に配置される第3支持部分を有する。第1溶接部は、第2支持部分と第3支持部分との間に形成され、第2支持部分と第3支持部分とを接続する。第2溶接部は、第1支持部分と第3支持部分との間に形成され、第1支持部分と第3支持部分とを接続する。第3溶接部は、第1外周部分と第2外周部分との間に形成され、第1外周部分と第2外周部分とを接続する。
【0006】
発明にかかる遊動輪の製造方法は、第1溶接工程と、第2溶接工程と、第3溶接工程と、を備える。遊動輪は、第1部材と、第2部材と、第3部材と、を有する。第1部材は、第1支持部分と、第1外周部分と、第1側板と、を有する。第1支持部分は、支持部に設けられている。支持部は、車軸が挿入される支持孔を有する。第1外周部分は、外周部に設けられている。外周部は、支持部の外側であって支持孔を中心とする円環状に形成されている。第1側板は、第1外周部分と第1支持部分とを繋ぐ。第2部材は、第2支持部分と、第2外周部分と、第2側板と、を有する。第2支持部分は、支持部に設けられている。第2外周部分は、外周部に設けられている。第2側板は、第2外周部分と第2支持部分とを繋ぎ、支持孔の中心軸に沿った方向において第1側板に対向するように配置されている。第3部材は、支持部に設けられ、第1支持部分と第2支持部分の間に配置された第3支持部分を有する。第1溶接工程は、第2部材と第3部材を、第2支持部分と第3支持部分の間で溶接する。第2溶接工程は、第1部材と第3部材を、第1支持部分と第3支持部分の間で溶接する。第3溶接工程は、第1部材と第2部材を、第1外周部分と第2外周部分の間で溶接する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車軸方向の力に対して溶接部にかかる負荷を低減することが可能な遊動輪および遊動輪の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明にかかる実施の形態1におけるアイドラを用いた油圧ショベルの構成を示す側面図。
図2図1のアイドラを示す斜視図。
図3図1のAA´間の矢示断面図。
図4図2のアイドラの分解斜視図。
図5図3のアイドラの分解断面図。
図6図2のアイドラの製造方法を示すフロー図。
図7図2のアイドラの製造方法を説明するための第1部材、第2部材および第3部材の断面図。
図8図2のアイドラの製造方法を説明するための第1部材、第2部材および第3部材の断面図。
図9図2のアイドラの製造方法を説明するための第1部材、第2部材および第3部材の断面図。
図10図2のアイドラの製造方法を説明するための第1部材、第2部材および第3部材の断面図。
図11】本発明にかかる実施の形態2におけるアイドラを示す斜視図。
図12図11のアイドラの分解斜視図。
図13図11のJJ´間の矢示断面図。
図14図13の分解断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の遊動輪の一例としてのアイドラについて図面を参照しながら以下に説明する。
(実施の形態1)
以下に、本発明にかかる実施の形態1におけるアイドラについて説明する。
<1.構成>
(1−1.油圧ショベル100の全体概要)
図1は、本実施の形態の油圧ショベル100の外観を示す図である。油圧ショベル100は、車両本体1と、作業機4とを有する。
【0010】
車両本体1は、走行体2と、旋回体3とを有する。走行体2は、一対の履帯式走行装置20を有しており、エンジンからの駆動力によって履帯式走行装置20が駆動されることによって油圧ショベル100が走行する。
旋回体3は、走行体2上に旋回可能に載置されている。旋回体3は、キャブ5と、収納室6と、カウンタウェイト7等を有する。運転室としてのキャブ5は、旋回体3の前部左側位置に設けられている。収納室6は、キャブ5の後側に設けられており、エンジン、ラジエータおよびラジエータファン等を収納する。カウンタウェイト7は、旋回体3の後方に配置されている。なお、本明細書の説明において、「上」「下」「前」「後」「左」「右」とは、キャブ5の運転席に着座したオペレータを基準とする用語である。
【0011】
作業機4は、ブーム8、アーム9、掘削バケット10等を有し、旋回体3の前部中央位置に取り付けられている。ブーム8の基端部は、旋回体3に回動可能に連結されている。ブーム8の先端部には、アーム9の基端部が回動可能に連結されている。アーム9の先端部には、掘削バケット10が回動可能に連結されている。また、ブーム8、アーム9、および掘削バケット10に対応するように油圧シリンダ11、12、13が設けられており、油圧シリンダ11、12、13が伸縮することによって作業機4が駆動される。
【0012】
(1−2.走行体2)
走行体2は、左右に一対の履帯式走行装置20を有する。各々の履帯式走行装置20は、トラックフレーム21、アイドラ22、スプロケット23、複数の上転輪24、と複数の下転輪25と、履帯26を有する。
トラックフレーム21は、車両前後方向に沿って配設されている。アイドラ22は、トラックフレーム21の前端に回転可能に支持されている。スプロケット23は、トラックフレーム21の後端に固定されている。上転輪24は、トラックフレーム21の上部に回転可能に複数設けられている。下転輪25は、トラックフレーム21の下部に回転可能に複数設けられている。履帯26は、アイドラ22、スプロケット23、上転輪24、および下転輪25に巻き掛けられている。
【0013】
(1−3.アイドラ22)
アイドラ22は、遊動輪であり、トラックフレーム21に設けられた車軸27に回転可能に配置されている。
図2は、アイドラ22の斜視図である。図3は、図2のAA´間の矢示断面図である。
アイドラ22は、概ね円盤形状であって、ボス31と、リム32と、一対の側板33、34と、を有する。
【0014】
(1−3−1.ボス31)
ボス31は、円筒状であって、車軸27を支持する。ボス31は、軸孔41と、油溜まり部42とを有する。軸孔41は、車軸27が挿入される。アイドラ22が履帯式走行装置20に取り付けられた状態では、軸孔41は左右方向に沿うように配置される。油溜まり部42には、潤滑油が貯留される。潤滑油は、車軸27に対してアイドラ22が回転する際の摩擦を低減する。
油溜まり部42は、軸孔41の内周面44に形成されている。油溜まり部42は、軸孔41の中心軸41oを中心する円周方向に沿って形成されている。油溜まり部42は、図3のS部拡大図に示すように、対向する内側面42a、42bと、底面42cを有する。図3では、内側面42aが左側に位置し、内側面42bが右側に位置する。底面42cは、中心軸41oに沿って形成されている。
【0015】
(1−3−2.リム32)
リム32は、アイドラ22の円盤形状の外周面を形成する。リム32は、ボス31の外側であって、軸孔41の中心軸41oを中心とする円筒状に形成されている。リム32の外周面54および内周面55は、概ね軸孔41の中心軸41oに沿って形成されているが、凸部51によって段差が形成されている。リム32は、凸部51と、接触部52と、接触部53とを有する。凸部51は、軸孔41を中心として外側に向かって形成されている。凸部51は、履帯式走行装置20に取り付けられた状態において、左右方向(矢印Y方向)の中央に形成されている。凸部51は、円周方向に沿って一周に亘って形成されている。
【0016】
接触部52と接触部53は、凸部51の左右方向Yの両側に配置されている。リム32の外周面54の接触部52に対応する外周面部分54bと接触部53に対応する外周面部分54cは、履帯26のトラックリンクの一対の踏面と接触する。外周面部分54b、54cは、凸部51の外側の先端面である外周面部分54aよりも軸孔41寄りに位置している。内周面55の凸部51に対応する内周面部分55aは、接触部52と接触部53に対応する内周面55の内周面部分55b、55cよりも外側に位置する。
【0017】
(1−3−3.側板33、34)
側板33、34は、履帯式走行装置20に取り付けた状態においてアイドラ22の左右の面を形成する。側板33、34は、ボス31とリム32の間を繋ぐ。側板33と側板34は、中心軸41o方向に対向して配置されている。側板33は、ボス31の左端近傍と、リム32の左端近傍を繋いでいる。側板34は、ボス31の右端近傍と、リム32の右端近傍を繋いでいる。側板33と側板34の間には空洞が形成されている。
【0018】
ボス31と側板33が接続する接続部35と、ボス31と側板34が接続する接続部36の間に油溜まり部42が設けられている。
(1−3−4.第1溶接部、第2溶接部、第3溶接部)
後述する製造方法において詳細に説明するが、アイドラ22を製造する際に形成される第1溶接部61、第2溶接部62および第3溶接部63について説明する。図3では、図を見易くするために、溶接部として開先のみが図示されている。
【0019】
アイドラ22は、第1部材71、第2部材72および第3部材73の3つの部材を溶接することによって形成される。
ボス31は、中心軸41o方向において3分割されており、第1溶接部61と第2溶接部62で溶接されることによって形成されている。第1溶接部61は、ボス31の外周面43側であって、油溜まり部42の内側面42b近傍に形成されている。第2溶接部62は、ボス31の内周面44側であって、油溜まり部42の内側面42aの近傍に形成されている。
【0020】
なお、第2溶接部62は、図3に示すように、軸孔41の中心軸41o方向における中央位置P1より端に寄って設けられている。
これにより、軸孔41の内側から第2溶接部62を溶接する際に、軸孔41の開口からの距離が短くなるために溶接を行い易くすることができる。
リム32は、凸部51の左右方向Yの概ね中央で分割されており、第1溶接部61は、凸部51の外周面部分54a側に形成されている。
【0021】
(1−3−5.第1部材、第2部材、第3部材)
次に、第1部材71、第2部材72および第3部材73について説明する。図4は、アイドラ22の分解斜視図である。図5は、アイドラ22の分解断面図である。
(a.第1部材)
第1部材71は、図3に示す左側の部材である。図4および図5に示すように、第1部材71は、ボス31の一部である第1ボス部分81と、リム32の一部である第1リム部分91と、側板33と、を含んでいる。
【0022】
第1ボス部分81には、軸孔41の一部を形成する第1軸孔部分811が設けられている。第1ボス部分81の中心軸41o方向における左右方向Yにおける内側(第2部材72側)の端面81aには、段差が形成されている。詳細には、端面81aの第1軸孔部分811の周縁における円環状の内周側部分812が、円環状の外周側部分813よりも突出している。また、内周側部分812は、内周側に向かうに従って左右方向Yの外側に向かうテーパー形状に形成されている。外周側部分813は、中心軸41oに対して垂直に形成されている。
【0023】
第1リム部分91の第2部材72側の端面93には、外周側に向かうに従って左右方向Yの外側に向かうテーパー形状が形成されている。
第1リム部分91は、左右方向Yの外側に配置された接触面形成部95と、接触面形成部95の内側に配置された凸部形成部96とを有する。接触面形成部95が、上述した接触部52を形成する。凸部形成部96は、凸部51の一部を形成する。
【0024】
側板33は、第1リム部分91と第1ボス部分81とを繋いでいる。詳しくは、側板33は、第1リム部分91の左右方向Yにおける外側の端近傍と、第1ボス部分81の左右方向Yにおける外側の端近傍とを繋ぐ。
(b.第2部材)
第2部材72は、図3に示す右側の部材である。図4および図5に示すように、第2部材72は、ボス31の一部である第2ボス部分82と、リム32の一部である第2リム部分92と、側板34と、を含んでいる。
【0025】
第2ボス部分82には、軸孔41の一部を形成する第2軸孔部分821が設けられている。第2ボス部分82の中心軸41o方向における内側(第1部材71側)の端面82aには、段差が形成されている。詳細には、端面82aの第2軸孔部分821の周縁における円環状の内周側部分822が、円環状の外周側部分823よりも突出している。また、外周側部分823は、外周側に向かうに従って左右方向Yの外側に向かうテーパー形状に形成されている。内周側部分822は、中心軸41oに対して垂直に形成されている。
【0026】
第2リム部分92の第1部材71側の端面94には、外周側に向かうに従って左右方向Yの外側に向かうテーパー形状が形成されている。
第2リム部分92は、左右方向Yの外側に配置された接触面形成部97と、接触面形成部97の内側に配置された凸部形成部98とを有する。接触面形成部97が、上述した接触部53を構成する。凸部形成部98は、凸部51の一部を構成する。凸部形成部98と凸部形成部96によって、凸部51が構成される。
【0027】
側板34は、第2リム部分92と第2ボス部分82とを繋いでいる。詳しくは、側板34は、第2リム部分92の左右方向Yにおける外側の端近傍と、第2ボス部分82の左右方向Yにおける外側の端近傍とを繋ぐ。
(c.第3部材)
第3部材73は、図3に示す中央の部材である。図4および図5に示すように、第3部材73は、ボス31の一部である第3ボス部分83を含んでいる。第3部材73には、軸孔41を形成する第3軸孔部分831が設けられている。第3部材73の第3軸孔部分831には、内側に突出した突出部835が形成されている。
【0028】
また、第3部材73の第1部材71側の端面83aには、段差が形成されている。詳細には、端面83aの第3軸孔部分831の周縁における円環状の内周側部分832が、円環状の外周側部分833よりも内側に位置している。外周側部分833が内周側部分832よりも外側(第1部材71側)に配置されている。また、内周側部分832の内側の角は、内周側に向かうに従って内側に向かうテーパー形状に形成されている。外周側部分833は、中心軸41oに対して垂直に形成されている。この内周側部分832は、突出部835の第1部材71側の面である。
【0029】
また、突出部835の第2部材72側の内周面836は、上述した油溜まり部42の内側面42aを構成する。第3軸孔部分831の突出部835よりも第2部材72側の孔部分831aは、油溜まり部42の底面42cを構成する。第2部材72の端面82aの内周側部分822は、油溜まり部42の内側面42bを構成する。このように、第3部材73には、油溜まり部42の一部が形成されており、他の部分は第2部材72に形成されている。
【0030】
第3部材の第2部材72側の端面84aは、円環状に形成されており、外周側に向かうに従って左右方向Yの内側に向かうテーパー形状に形成されている。
(d.組み合わせ)
図3および図5に示すように、第3部材73の端面84aが、第2部材72の端面82aの内周側部分822よりも外側に配置され、外周側部分823と対向するように、第3部材73と第2部材72は組み合わされる。
【0031】
また、第1部材71の端面81aの内周側部分812が、第3部材73の端面83aの外周側部分833の内側に入り込み、内周側部分832と対向するように、第1部材71と第3部材73は組み合わされる。
また、第1部材71の端面93と第2部材72の端面94が接触もしくは近傍に位置するように第1部材71と第2部材72が組み合わされる。
【0032】
図3に示すように、第3部材73の端面84aのテーパー形状と第2部材72の外周側部分823のテーパー形状の間に溶接が行われ、第1溶接部61が形成される。
また、第3部材73の内周側部分832のテーパー形状と、第1部材の内周側部分812のテーパー形状の間に溶接が行われ、第2溶接部62が形成される。
また、第1部材71の端面93のテーパー形状と、第2部材72の端面94のテーパー形状の間に溶接が行われ、第3溶接部63が形成される。
【0033】
<2.アイドラの製造方法>
次に、本実施の形態1のアイドラ22の製造方法について説明する。
図6は、アイドラ22の製造方法を示すフロー図である。図7図10は、アイドラ22の製造方法を説明するための各部材の模式断面図である。
はじめに、ステップS10において、鋳造または鍛造によって、図7に示すように、第1部材71を形成するための第1加工前部材71´と、第2部材72を形成するための第2加工前部材72´と、第3部材73を形成するための第3加工前部材73´が作成される。ここで、第1加工前部材71´と第2加工前部材72´は、同様の形状であるため、1つの金型で作成することができる。
【0034】
第1加工前部材71´では、第1部材71と比較して、第1ボス部分81´の端面81a´に段差が形成されず平面に形成されている。
第2加工前部材72´では、第2部材72と比較して、第2ボス部分82´の端面82a´に段差が形成されず平面に形成されている。
第3加工前部材73´では、第3部材73と比較して、第3ボス部分83´の端面83a´には、段差が形成されず、平面に形成されている。また、第3ボス部分83´の端面83b´には、端面83bと異なりテーパーが形成されていない。
【0035】
次に、ステップS20において、第1加工前部材71´を機械加工することによって、図8に示すように、第1部材71が作成される。主に、第1ボス部分81´の端面81a´に段差を形成し内周側部分にテーパーを形成することによって、内周側部分812および外周側部分813を有する端面81aが作成される。
また、第2加工前部材72´を機械加工することによって、第2部材72が作成される。主に、第2ボス部分82´の端面82a´に段差を形成し外周側部分にテーパーを形成することによって、内周側部分822および外周側部分823を有する端面82aが作成される。
【0036】
また、第3加工前部材73´を機械加工することによって、第3部材73が作成される。
主に、第3ボス部分83´の端面83a´に段差を形成して内周側部分の角をテーパー形状にすることによって内周側部分832および外周側部分833を有する端面83aが作成される。また、端面83b´にテーパーが形成され、端面83bが作成される。
【0037】
次に、ステップS30において、図9に示すように、第3部材73の端面83bが、第2部材72の端面82aの内周側部分822よりも外側に配置され、外周側部分823と対向するように、第3部材73と第2部材72は組み合わされて、溶接が行われる。第3部材73の端面83bのテーパー形状と第2部材72の外周側部分823のテーパー形状の間に外側から一周に亘って溶接が行われ、第1溶接部61が形成される。図9に示す矢印Cは、溶接トーチを第2部材72および第3部材73に近づける方向を示す。
【0038】
次に、ステップS40において、図10に示すように、第1部材71の端面81aの内周側部分812が、第3部材73の端面83aの外周側部分833の内側に入り込み、内周側部分832と対向するように、第1部材71と第3部材73は組み合わされる。また、第1部材71の端面93と第2部材72の端面94が接触もしくは近傍に位置するように第1部材71と第2部材72が組み合わされる。この状態において、第1部材71と第3部材73の間の溶接が行われる。
【0039】
第3部材73の内周側部分832のテーパー形状と、第1部材の内周側部分812のテーパー形状の間に内側から一周に亘って溶接が行われ、第2溶接部62が形成される。第2溶接部62の形成では、溶接トーチは、図10の矢印Dに示すように、第1軸孔部分811と第3軸孔部分831の内側から差し込まれる。
次に、ステップS50において、図10に示すように、第1部材71の端面93のテーパー形状と、第2部材72の端面94のテーパー形状の間に外側から一周に亘って溶接が行われ、第3溶接部63が形成される。図10に示す矢印Eは、溶接トーチを第2部材72および第3部材73に近づける方向を示す。
【0040】
以上のように、アイドラ22を製造することができる。
(実施の形態2)
次に、本発明にかかる実施の形態2におけるアイドラ122について説明する。本実施の形態2のアイドラ122は、実施の形態1のアイドラ22と基本的な構成は同じであるが、溶接して接合される第2部材、および第3部材の形状が異なっている。そのため、本相違点を中心に説明する。また、同様の構成については同じ符号を付す。
【0041】
図11は、本実施の形態2のアイドラ122の斜視図であり、図12は、図11の分解斜視図である。図13は、図11のJJ´間の矢示断面図である。図14は、図13の分解断面図である。
図11に示すように、本実施の形態2のアイドラ122は、実施の形態1のアイドラ22と外観は同様である。
【0042】
アイドラ122は、図12および図13に示すように、実施の形態1のアイドラ22と同様に、ボス31と、リム32と、一対の側板33、34と、を有する。本実施の形態2のアイドラ122は、図12および図13に示すように、第1部材71と第2部材172と第3部材173の3つの部材によって作成される。
第1部材71は、実施の形態1の第1部材71と同様の構成である。
【0043】
第2部材172は、第1部材71と同様の構成である。第2部材172は、実施の形態1の第2部材72と異なり、図14に示すように、第2ボス部分182の第1部材71側の端面182aの第2軸孔部分1821の周縁における円環状の内周側部分1822が、円環状の外周側部分1823よりも突出している。また、内周側部分1822は、内周側に向かうに従って左右方向Yの外側に向かうテーパー形状に形成されている。外周側部分1823は、中心軸41oに対して垂直に形成されている。
【0044】
第3部材173は、実施の形態1の第3部材73と異なり左右対称に形成されている。第3部材73は、ボス31の一部である第3ボス部分183を含んでいる。第3部材173には、軸孔41を形成する第3軸孔部分1831が設けられている。第3部材73の第3軸孔部分1831には、内側に突出した突出部835および突出部1835が所定の間隔を空けて周方向に形成されている。
【0045】
また、第3部材173の第1部材71側の端面83aには、段差が形成されている。詳細には、端面83aの第3軸孔部分831の周縁における円環状の内周側部分832が、円環状の外周側部分833よりも内側に位置している。外周側部分833が内周側部分832よりも外側(第1部材71側)に配置されている。また、内周側部分832の内側の角は、テーパー形状に形成されている。外周側部分833は、中心軸41oに対して垂直に形成されている。この内周側部分832は、突出部835の第1部材71側の面である。また、突出部835の第2部材72側の内周面836は、上述した油溜まり部42の内側面42aを構成する。
【0046】
第3部材173の第2部材172側の端面184aには、段差が形成されている。詳細には、端面184aの第3軸孔部分831の周縁における円環状の内周側部分1832が、円環状の外周側部分1833よりも内側に位置している。外周側部分1833が内周側部分1832よりも外側(第1部材71側)に配置されている。また、内周側部分1832の内側の角は、内周側に向かうに従って内側に向かうテーパー形状に形成されている。外周側部分1833は、中心軸41oに対して垂直に形成されている。この内周側部分1832は、突出部1835の第1部材71側の面である。
【0047】
また、突出部1835の第1部材71側の内周面1836は、上述した油溜まり部42の内側面42bを構成する。
第3軸孔部分831の内周面のうち2つの突出部835と突出部1835の間の部分831bは、油溜まり部42の底面42cを構成する。このように、本実施の形態2では、第3部材173に油溜まり部42が形成されている。
【0048】
上記構成のアイドラ122を作成する場合、図12および図13に示すように、第1部材71の内周側部分812が、第3部材73の外周側部分833の内側に入り込み、内周側部分832と対向するように、第1部材71と第3部材73は組み合わされる。
また、第2部材172の内周側部分1822が、第3部材73の外周側部分1833の内側に入り込み、内周側部分1832と対向するように、第2部材172と第3部材173は組み合わされる。
【0049】
そして、図3に示すように、第3部材73の内周側部分1832のテーパー形状と第2部材172の内周側部分1822のテーパー形状の間に溶接が行われ、第1溶接部61が形成される。
また、第3部材73の内周側部分832のテーパー形状と、第1部材の内周側部分812のテーパー形状の間に溶接が行われ、第2溶接部162が形成される。
【0050】
また、第1部材71の端面93のテーパー形状と、第2部材72の端面94のテーパー形状の間に溶接が行われ、第3溶接部63が形成される。
第1溶接部61および第2溶接部162は、図13の矢印Fおよび矢印Gに示すように、軸孔41側から溶接が行われる。また、第3溶接部63は、矢印Hに示すように、実施の形態1と同様に外側から溶接が行われる。
【0051】
<特徴>
(1)
本実施の形態にかかるアイドラ22、122(遊動輪の一例)は、第1部材71と、第2部材72、172と、第3部材73、173と、第1溶接部61、161と、第2溶接部62と、第3溶接部63と、を備える。第1部材71は、第1ボス部分81(第1支持部分の一例)と、第1リム部分91(第1外周部分の一例)と、側板33(第1側板の一例)と、を有する。第1ボス部分81は、車軸27が挿入される第1軸孔部分811(第1支持孔の一例)を有する。第1リム部分91は、第1ボス部分81の径方向の外側において第1軸孔部分811を中心にして環状に形成されている。側板33は、第1リム部分91と第1ボス部分81とを繋ぐ。第2部材72、172は、第2ボス部分82、182(第2支持部分の一例)と、第2リム部分92(第2外周部分の一例)と、側板34(第2側板の一例)と、を有する。第2ボス部分82、182は、車軸27が挿入される第2軸孔部分821、1821(第2支持孔の一例)を有する。第2リム部分92は、第2ボス部分82、182の径方向の外側において第2軸孔部分821、1821(第2支持孔の一例)を中心にして環状に形成されている。側板34は、第2リム部分92と第2ボス部分82、182とを繋ぎ、側板33に対向して配置される。第3部材73、173は、車軸27が挿入される第3軸孔部分831、1831(第3支持孔の一例)を有し、第1ボス部分81と第2ボス部分82、182との間に配置される第3ボス部分83、183(第3支持部分の一例)を有する。第1溶接部61、161は、第2ボス部分82、182と第3ボス部分83、183との間に形成され、第2ボス部分82、182(第2支持部分の一例)と第3ボス部分83、183(第3支持部分の一例)とを接続する。第2溶接部62は、第1ボス部分81と第3ボス部分83、183との間に形成され、第1ボス部分81と第3ボス部分83、183とを接続する。第3溶接部63は、第1リム部分91と第2リム部分92との間に形成され、第1リム部分91と第2リム部分92とを接続する。
【0052】
このように、第1溶接部61、161、第2溶接部62および第3溶接部63のいずれも中心軸41o方向に沿った面に形成されているため、車軸27に沿った方向に力がかかると、溶接部61、161、62、63が圧縮される方向に力が加わることになる。したがって、車軸27に沿った方向の力に対して溶接部61、161、62、63にかかる負荷を低減することができる。
【0053】
(2)
本実施の形態にかかるアイドラ22、122(遊動輪の一例)は、ボス31(支持部の一例)と、リム32(外周部の一例)と、を備える。ボス31は、車軸27が挿入される軸孔41(支持孔の一例)を有する。第1軸孔部分811(第1支持孔の一例)、第2軸孔部分821、1821(第2支持孔の一例)および第3軸孔部分831、1831(第3支持孔の一例)の各々は、軸孔41(支持孔の一例)の一部である。第1ボス部分81(第1支持部分の一例)、第2ボス部分82、182(第2支持部分の一例)および第3ボス部分83、183(第3支持部分の一例)の各々は、ボス31(支持部の一例)の一部である。第1リム部分91(第1外周部分の一例)および第2リム部分92(第2外周部分の一例)の各々は、リム32(外周部の一例)の一部である。
【0054】
このように、3つの部材を3つの溶接部で溶接することによってアイドラ22、122の各構成を形成することができる。
(3)
本実施の形態にかかるアイドラ22、122(遊動輪の一例)では、ボス31(支持部の一例)は、軸孔41(支持孔の一例)の内周面44に凹状に形成された油溜まり部42を更に有する。
【0055】
これにより、潤滑油によって車軸27に対してアイドラ22、122(遊動輪の一例)をスムーズに回転させることができる。
(4)
本実施の形態にかかるアイドラ22、122(遊動輪の一例)では、油溜まり部42は、少なくとも一部が第3ボス部分83、183(第3支持部分の一例)に形成されている。
【0056】
これにより、3つの部材を3つの溶接部で溶接することによって、油溜まり部42を形成することができる。
(5)
本実施の形態にかかるアイドラ22(遊動輪の一例)では、油溜まり部42は、少なくとも一部が第1ボス部分81(第1支持部分の一例)に形成されている。
【0057】
これにより、第1ボス部分81と第3ボス部分83によって油溜まり部42が形成される。
(6)
本実施の形態にかかるアイドラ22(遊動輪の一例)では、油溜まり部42は、内側面42a(第1内側面の一例)および内側面42b(第2内側面の一例)と、底面42cと、を有する。内側面42aおよび内側面42bは、軸孔41(支持孔の一例)の中心軸41o方向において対向する。底面42cは、中心軸41o方向に沿っている。油溜まり部42は、中心軸41o方向において側板33(第1側板の一例)と側板34(第2側板の一例)の間に設けられている。内側面42a(第1内側面)および底面42cは、第3ボス部分83(第3支持部分の一例)に設けられている。内側面42b(第2内側面の一例)は、第2ボス部分82(第2支持部分の一例)に設けられている。
【0058】
このような第3ボス部分83の形状により、第3ボス部分83を鋳造に限らず鍛造でも製造することができ、第3ボス部分の大きさが比較的小さいため製造にかかるコストを安くすることができる。
(7)
本実施の形態にかかるアイドラ22(遊動輪の一例)では、第1溶接部61は、ボス31(支持部の一例)の外周面43側に形成されている。第2溶接部62は、ボス31(支持部の一例)の内周面44側に形成されている。第3溶接部63は、リム32(外周部の一例)の外周面54側に形成されている。
【0059】
このように溶接を行うことにより、アイドラ22を形成することができる。また、軸孔41の内側から溶接を行う箇所が一つになるため、製造にかかる時間を短くすることができる。
(8)
本実施の形態にかかるアイドラ22、122(遊動輪の一例)では、図3に示すように、第2溶接部62は、軸孔41(支持孔の一例)の中心軸41o方向における中央位置P1より端に寄って設けられている。
【0060】
これにより、軸孔41の内側から第2溶接部62を溶接する際に、軸孔41の開口からの距離が短くなるために溶接を行い易くすることができる。
(9)
本実施の形態にかかるアイドラ22、122(遊動輪の一例)の製造方法は、ステップS30(第1溶接工程の一例)と、ステップS40(第2溶接工程の一例)と、ステップS50(第3溶接工程の一例)と、を備える。アイドラ22、122(遊動輪の一例)は、第1部材71と、第2部材72、172と、第3部材73、173と、を有する。第1部材71は、第1ボス部分81(第1支持部分の一例)と、第1リム部分91(第1外周部分の一例)と、側板33(第1側板の一例)とを有する。第1ボス部分81は、ボス31(支持部の一例)に設けられている。ボス31は、軸孔41(支持孔の一例)を有する。第1リム部分91は、リム32(外周部の一例)に設けられている。リム32は、ボス31の外側であって軸孔41を中心とする円環状に形成されている。側板33は、第1リム部分91と第1ボス部分81とを繋ぐ。第2部材72、172は、第2ボス部分82、182(第2支持部分の一例)と、第2リム部分92(第2外周部分の一例)と、側板34(第2側板の一例)と、を有する。第2ボス部分82、182は、ボス31に設けられている。第2リム部分92は、リム32に設けられている。側板34は、第2リム部分92と第2ボス部分82、182とを繋ぎ、軸孔41の中心軸41o方向において側板33に対向するように配置されている。第3部材73、173は、ボス31に設けられ、第1ボス部分81と第2ボス部分82、182の間に配置された第3ボス部分83、183を有する。ステップS30は、第2部材72、172と第3部材73、173を、第2ボス部分82、182と第3ボス部分83、183の間で溶接する。ステップS40は、第1部材71と第3部材73、173を、第1ボス部分81と第3ボス部分83、183の間で溶接する。ステップS50は、第1部材71と第2部材72、172を、第1リム部分91と第2リム部分92の間で溶接する。
【0061】
このように、第1溶接部61、161、第2溶接部62および第3溶接部63のいずれも中心軸41o方向に沿った面に形成されているため、車軸27に沿った方向に力がかかると、溶接部61、161、62、63が圧縮される方向に力が加わることになる。したがって、車軸27に沿った方向の力に対して溶接部61、161、62、63にかかる負荷を低減することができる。
【0062】
(10)
本実施の形態にかかるアイドラ22、122(遊動輪の一例)の製造方法では、ステップS30(第1溶接工程の一例)は、ボス31(支持部の一例)の外側から行われる。ステップS40(第2溶接工程の一例)は、ボス31(支持部の一例)の内側から行われる。ステップS50(第3溶接工程の一例)は、リム32(外周部の一例)の外側から行われる。
【0063】
このように溶接を行うことにより、アイドラ22を形成することができる。また、ボス31の軸孔41の内側から溶接を行う箇所が一つになるため、製造にかかる時間を短くすることができる。
(11)
本実施の形態にかかるアイドラ22(遊動輪の一例)の製造方法では、ボス31(支持部の一例)は、軸孔41(支持孔の一例)の内周面44に凹状に形成された油溜まり部42を有する。
【0064】
これにより、潤滑油によって車軸27に対してアイドラ22、122(遊動輪の一例)をスムーズに回転させることができる。
(12)
本実施の形態にかかるアイドラ22(遊動輪の一例)の製造方法では、油溜まり部42は、内側面42a(第1内側面の一例)および内側面42b(第2内側面の一例)と、底面42cと、を有する。内側面42aおよび内側面42bは、中心軸41o方向において対向する。底面42cは、中心軸41o方向に沿っている。油溜まり部42は、中心軸41o方向において側板33と側板34の間に設けられている。内側面42aおよび底面42cは、第3ボス部分83に設けられている。内側面42bは、第2ボス部分82に設けられている。
【0065】
このような第3ボス部分83の形状により、第3部材73を鋳造に限らず鍛造でも製造することができ、第3部材73の大きさが比較的小さいため製造にかかるコストを安くすることができる。
<他の実施の形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0066】
(A)
上記実施の形態1では、ステップS40において第2溶接部62を溶接した後、ステップS50において第3溶接部63を溶接しているが、この順番に限らず逆であってもよい。
(B)
上記実施の形態2では、第1溶接部161、第2溶接部62および第3溶接部63のいずれから溶接が行われてもよい。
【0067】
(C)
上記実施の形態ではアイドラ22、122を備えた作業車両の一例として油圧ショベルを例に挙げて説明したが、油圧ショベルに限らなくても良く、ブルドーザ、ホイールローダなどであってもよい。要するに、アイドラを有する履帯式走行装置が設けられた作業車両であれば、本発明を適用できる。
【0068】
(D)
上記実施の形態では、リム32の凸部51において第1部材71と第2部材72(実施の形態2では第2部材172)の2つの部材に分割されているが、これに限らなくても良い。例えば、接触部52、53において2つの部材に分割されていてもよい。
(E)
上記実施の形態では、第3部材73と第3ボス部分83は同じ形状であるが、第3部材73が第3ボス部分83以外の部分を有していても良い。また、第3部材173と第3ボス部分183は同じ形状であるが、第3部材173が第3ボス部分183以外の部分を有していても良い。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の遊動輪および遊動輪の製造方法は、車軸方向の力に対して溶接部にかかる負荷を低減することが可能な効果を有し、油圧ショベル等に用いられる履帯式走行装置等として有用である。
【符号の説明】
【0070】
22 :アイドラ(遊動輪の一例)
27 :車軸
31 :ボス(支持部の一例)
32 :リム(外周部の一例)
33 :側板(第1側板の一例)
34 :側板(第2側板の一例)
41 :軸孔(支持孔の一例)
41o :中心軸
42 :油溜まり部
44 :内周面
61 :第1溶接部
62 :第2溶接部
63 :第3溶接部
122 :アイドラ(遊動輪の一例)
162 :第2溶接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14