(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6968765
(24)【登録日】2021年10月29日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 7/50 20060101AFI20211108BHJP
B08B 3/08 20060101ALI20211108BHJP
C07C 21/18 20060101ALI20211108BHJP
【FI】
C11D7/50
B08B3/08 A
C07C21/18
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-151836(P2018-151836)
(22)【出願日】2018年8月10日
(65)【公開番号】特開2020-26481(P2020-26481A)
(43)【公開日】2020年2月20日
【審査請求日】2019年8月5日
【審判番号】不服2020-7554(P2020-7554/J1)
【審判請求日】2020年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加留部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】筒井 裕子
【合議体】
【審判長】
亀ヶ谷 明久
【審判官】
川端 修
【審判官】
蔵野 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2019/078352(WO,A1)
【文献】
国際公開第2019/117100(WO,A1)
【文献】
国際公開第2016/125550(WO,A1)
【文献】
国際公開第2016/080133(WO,A1)
【文献】
国際公開第2005/044969(WO,A1)
【文献】
特開平2−221388(JP,A)
【文献】
特開2017−43742(JP,A)
【文献】
国際公開第2017/018010(WO,A1)
【文献】
特表2009−514251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00−19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
E体及びZ体の何れか又は双方の1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1223xd)並びにフッ素系オイルを含み、前記HCFO−1223xdと前記フッ素系オイルとの質量比が、HCFO−1223xdとフッ素系オイルの合計質量:フッ素系オイルの質量=100:1〜100:80である、組成物。
【請求項2】
溶剤用又は希釈剤用である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記フッ素系オイルは、パーフルオロポリエーテル、ヒドロフルオロポリエーテル及びクロロトリフルオロエチレンの低重合物からなる群より選択される1種以上である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
フッ素系オイルの40℃における動粘度が、15mm2/s以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(以下、単にHCFO−1223xdともいう。)を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
2020年にハイドロフルオロカーボン類に対する規制が強化されることに伴い、その代替品の開発が急がれている。特にハイドロフルオロカーボン類の使用において大きな課題となっている環境負荷を考慮し、地球温暖化係数及びオゾン層破壊係数が低く、生物毒性も低い代替品が望まれている。このような中、ヒドロクロロフルオロオレフィン類(以下、HCFO類ともいう。)が注目されている。
【0003】
特許文献1では、HCFO類の一種であるHCFO−1223zaを含有する潤滑剤用組成物が開示されている。
【0004】
また、特許文献2及び3では、その他のHCFO類であるHCFO−1223xdが洗浄剤として有用であることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−169256号公報
【特許文献2】特開平2−221388号公報
【特許文献3】特開2016−141730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような事情に鑑み、本開示の目的とするところは、HCFO−1223xdとオイルとの相溶性の高い組成物、又はHCFO−1223xdを含む溶剤用、希釈剤用又はフッ素系オイルを除去するための洗浄剤用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、HCFO−1223xdはフッ素系オイルと相溶性が高く、また、HCFO−1223xdを含む組成物を溶剤用、希釈剤用又はフッ素系オイルを除去するための洗浄剤用組成物として提供可能であることを見出した。本発明者らは、かかる知見に基づきさらに研究を重ね、本開示を完成するに至った。
【0008】
即ち、本開示は、以下の組成物を提供する。
項1.
1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1223xd)及びフッ素系オイルを含む、組成物。
項2a.
1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1223xd)を含有する、溶剤用、希釈剤用組成物。
項2b.
1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1223xd)を含有する、溶剤。希釈剤又はフッ素系オイルを除去するための洗浄剤。
項3.
オイルを含有する、項2aに記載の組成物。
項4.
前記オイルはフッ素系オイルである、項3に記載の組成物。
項5.
前記HCFO−1223xdと前記フッ素系オイルとの質量比が、HCFO−1223xdとフッ素系オイルの合計質量:フッ素系オイルの質量=100:0.1〜100:80である、項1又は4に記載の組成物。
項6.
前記フッ素系オイルは、パーフルオロポリエーテル、ヒドロフルオロポリエーテル及びクロロトリフルオロエチレンの低重合物からなる群より選択される1種以上である、項1、4及び6の何れかに記載の組成物。
項7.
フッ素系オイルの40℃における動粘度が、15mm
2/s以上である、項1及び項4〜9のいずれかに記載の組成物。
項8.
1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1223xd)を含有する、フッ素系オイルを除去するための洗浄剤用組成物。
項9.
フッ素系オイルを除去するために、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1223xd)を含有する洗浄剤を用いることを特徴とする、洗浄方法。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、HCFO−1223xdとオイルとの相溶性の高い組成物、又はHCFO−1223xdを含む溶剤用又は希釈材用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の組成物は、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1223xd)及びフッ素系オイルを含む組成物である。
【0011】
フッ素系オイルとしては、公知のフッ素系オイルを広く採用することが可能であり、特に限定はない。但し、充分な潤滑性及び塗膜の強度を確保するために、40℃における動粘度が15mm
2/s以上のフッ素系オイルを使用することが好ましく、30mm
2/s以上のフッ素系オイルを使用することがより好ましい。具体的には、パーフルオロポリエーテル、ヒドロフルオロポリエーテル及びクロロトリフルオロエチレンの低重合物からなる群より選択される一種以上を使用することができる。本明細書において、低重合物とは、その平均分子量が1万程度以下の重合物であると定義される。
【0012】
本明細書において透明色とは、組成物が均一であり、濁りの生じていない状態であることと定義される。
【0013】
フッ素系オイルの含有量は溶解させるオイルの効果を発揮させ、かつ均一な組成物を得るという理由から、質量比でHCFO−1223xdとフッ素系オイルの合計質量:フッ素系オイルの質量=100:0.1〜100:80であることが好ましく、HCFO−1223xdとフッ素系オイルの合計質量:フッ素系オイルの質量=100:1〜100:80であることがより好ましく、HCFO−1223xdとフッ素系オイルの合計質量:フッ素系オイルの質量=100:4〜100:80であることがさらに好ましく、HCFO−1223xdとフッ素系オイルの合計質量:フッ素系オイルの質量=100:25〜100:80であることがことさら好ましく、HCFO−1223xdとフッ素系オイルの合計質量:フッ素系オイルの質量=100:50〜100:80であることが特に好ましい。
【0014】
これまで、HCFO−1223xdとフッ素系オイルとの相溶性が優れることは知られていなかったが、本開示の発明者らは、膨大数のHCFO類とオイルとの組み合わせを試行錯誤した結果、驚くべきことに、HCFO−1223xdとフッ素系オイルとの組み合わせであれば、たとえフッ素系オイルの含有量を上述の高濃度に設定しても、濁りが生じることなく、両者の高い相溶性により、透明色の組成物が得られることを見出した。
【0015】
また本開示の組成物は、地球温暖化係数及びオゾン層破壊係数が低いことにより環境負荷が極めて少ないだけでなく、生物毒性も低いという利点を有する。
【0016】
以上にしてなる本開示の組成物は、HCFO−1223xd及びフッ素系オイルの優れた相溶性により、溶剤及び希釈剤として使用可能である。特に、HCFO−1223xdとフッ素系オイルとの相溶性がよく、またこれらの混合液の沸点は適度に高いため、コーティング溶液用の溶剤として好適に使用可能である。また、かかる優れた相溶性を得るべく、本開示の組成物の沸点は、−10〜60℃であることが好ましく、0〜40℃であることがより好ましい。溶剤又は洗浄剤として用いる場合、組成物の沸点がこの温度範囲であれば、溶解性が良く、蒸発がより抑制される。
【0017】
本明細書において、溶剤とは、オイルなどの物質を溶解させる媒体と定義される。また、本明細書において、希釈剤とは、オイルなどそのままでは流動性が低く加工性が悪かったり、安定性が悪かったりする物質を溶解させて希釈することで課題を解決する溶剤と定義される。
【0018】
また、本開示は、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1223xd)を含有する溶剤用、希釈剤用又はフッ素系オイルを除去するための洗浄剤用組成物(或いは、溶剤、希釈剤又はフッ素系オイルを除去するための洗浄剤)を包含する。
【0019】
かかる溶剤用又は希釈剤用組成物は、オイルを含有することが好ましい。
【0020】
使用するオイルとしては、溶剤又は希釈剤に使用される公知のオイルを広く採用することが可能であり、特に限定はない。具体的には、フッ素系オイル、シリコーン系オイル、鉱物系オイル及びエステル系オイルからなる群より選択される一種以上を使用することができる。
【0021】
フッ素系オイルとしては、公知のフッ素系オイルを広く採用することが可能であり、特に限定はない。但し、充分な潤滑性及び塗膜の強度を確保するために、40℃における動粘度が15mm
2/s以上のフッ素系オイルを使用することが好ましく、30mm
2/s以上のフッ素系オイルを使用することがより好ましい。具体的には、パーフルオロポリエーテル、ヒドロフルオロポリエーテル及びクロロトリフルオロエチレンの低重合物からなる群より選択される一種以上を使用することができる。本明細書において、低重合物とは、その平均分子量が1万程度以下の重合物と定義される。また、フッ素系オイルとして、シリコーンの末端もしくは側鎖にフルオロアルキル基を導入したフルオロシリコーン系オイルも例示できる。
【0022】
シリコーン系オイルとしては、公知のシリコーン系オイルを広く採用することが可能であり、特に限定はない。具体的には、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン及び末端や側鎖に有機基を導入した変性シリコーンからなる群より選択される一種以上を使用することができる。
【0023】
鉱物系オイルとしては、公知の鉱物系オイルを広く採用することが可能であり、特に限定はない。具体的には、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル及びポリαオレフィン系オイルからなる群より選択される一種以上を使用することができる。
【0024】
エステル系オイルとしては、公知のエステル系オイルを広く採用することが可能であり、特に限定はない。具体的には、ポリオールエステル系オイル、ジエステル系オイル及びコンプレックスエステル系オイルからなる群より選択される一種以上を使用することができる。
【0025】
但し、上述したオイルの中でも、HCFO−1233xdとの相溶性に優れるという理由から、フッ素系オイルを使用することが好ましい。これらの相溶性に優れるHCFO−1223xdとフッ素系オイルとの組み合わせを採用することにより、広いオイル濃度、温度、その他条件において均一で濁りなどの生じない安定した組成物を得ることが可能となり、その結果、溶剤用又は希釈剤用組成物として優れた物性を得ることができる。
【0026】
本開示の溶剤用又は希釈剤用組成物は、上述の通り相溶性に優れるHCFO−1223xdとフッ素系オイルとの組み合わせを採用すれば、透明色の溶剤用組成物又は希釈剤用組成物とすることができる。また、かかる優れた相溶性を得るべく、本開示の溶剤用、希釈剤用又はフッ素系オイルを除去するための洗浄剤用組成物は、−10〜60℃であることが好ましく、0〜40℃であることがより好ましい。
【0027】
また、HCFO−1223xdとフッ素系オイルとを含有する溶剤用組成物は、沸点も適度に高いため、コーティング溶液用の溶剤に好適に使用可能である。
【0028】
フッ素系オイルの含有量は溶解させるオイルの効果を発揮させ、かつ均一な組成物を得るという理由から、質量比でHCFO−1223xdとフッ素系オイルの合計質量:フッ素系オイルの質量=100:0.1〜100:80であることが好ましく、HCFO−1223xdとフッ素系オイルの合計質量:フッ素系オイルの質量=100:1〜100:80であることがより好ましく、HCFO−1223xdとフッ素系オイルの合計質量:フッ素系オイルの質量=100:4〜100:80であることがさらに好ましく、HCFO−1223xdとフッ素系オイルの合計質量:フッ素系オイルの質量=100:25〜100:80であることがことさら好ましく、HCFO−1223xdとフッ素系オイルの合計質量:フッ素系オイルの質量=100:50〜100:80であることが特に好ましい。
【0029】
また、本開示のHCFO−1223xd及びフッ素系オイルを含有する組成物又は1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1223xd)を含有する、溶剤用、希釈剤用若しくはフッ素系オイルを除去するための洗浄剤用組成物は、さらに、その他の溶剤を含んでいてもよい。その他の溶剤は、対象物の溶解性をさらに向上させるため等の目的で配合される。
【0030】
その他の溶剤としては、特に限定されず、幅広く使用することができる。例えば、1,2−ジクロロエチレン及びイソプロパノール等が挙げられる。本開示の組成物は、その総量100質量%に対して、その他の溶剤を0.1〜50質量%、好ましくは1〜10質量%含有することが好ましい。
【0031】
本開示のHCFO−1223xd及びフッ素系オイルを含有する組成物又は1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1223xd)を含有する、溶剤用、希釈剤用若しくはフッ素系オイルを除去するための洗浄剤用組成物は、さらに、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分として、例えば、酸化防止剤、安定剤、防腐剤及び界面活性剤等からなる群より選択される一種以上が挙げられる。
【0032】
本開示のHCFO−1223xd及びフッ素系オイルを含有する組成物又は1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1223xd)を含有する、溶剤用、希釈剤用若しくはフッ素系オイルを除去するための洗浄剤用組成物は、上記とは異なるものとして、さらに、界面活性剤等を含んでいてもよい。
【0033】
本開示の組成物は、組成物総量100質量%中に、前記HCFO−1223xd及びフッ素系オイル総量で1〜100質量%含まれることが好ましく、50〜100質量%含まれることがより好ましく、80〜100質量%含まれることがさらに好ましい。
【0034】
また本開示の溶剤用、希釈剤用又はフッ素系オイルを除去するための洗浄剤用組成物は、地球温暖化係数及びオゾン層破壊係数が低いことにより環境負荷が極めて少ないだけでなく、生物毒性も低いという利点を有する。
【0035】
本明細書においてHCFO−1223xdは、E体及びZ体の何れか又は双方を含むものと定義される。HCFO−1223xdのE体及びZ体の双方を含む場合、その含有比は特に制限されず、本開示における組成物の課題解決に対する影響もない。また、E体及びZ体の何れか一方のみであっても特に問題はない。例えば、質量比でE体:Z体=0:100〜40:60にするとよい。
【0036】
また本開示は、フッ素系オイルを除去するために、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1223xd)を含有する洗浄剤を用いることを特徴とする、洗浄方法を包含する。
【0037】
除去対象のフッ素系オイルとしては、上述したものと同様のものを例示することが可能であり、特に限定はない。
【0038】
洗浄剤は、HCFO−1223xd以外にも、必要に応じて、溶剤、酸化防止剤、安定剤、防腐剤及び界面活性剤等からなる群より選択される一種以上を含んでもよい。これらの溶剤、酸化防止剤、安定剤、防腐剤及び界面活性剤としては、公知のものを広く採用することが可能であり、特に限定はない。
【0039】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示はこうした例に何ら限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【実施例】
【0040】
以下、実施例に基づき、本開示の実施形態をより具体的に説明するが、本開示がこれらに限定されるものではない。
【0041】
<相溶性>
(実施例1)
HCFO−1223xdに対する、フッ素系オイル(パーフロポリエーテル、ダイキン工業(株)製デムナムS-65)の溶解性を測定したところ、25℃でHCFO−1223xdと当該フッ素系オイルの合計質量に対して65質量%の当該フッ素系オイルが溶解した。なお当該フッ素系オイルの40℃における動粘度は65mm
2/sである。
【0042】
(実施例2)
HCFO−1223xdに対し、シリコーン系オイル(ジメチルシリコーンオイル、信越化学工業(株)製KF-96M)の溶解性を測定したところ、25℃でHCFO−1223xdと当該シリコーン系オイルの合計質量に対して80質量%の当該シリコーン系オイルが溶解した。
【0043】
(比較例1)
HCFO−1223zd(Z異性体)に対し、フッ素系オイル(ダイキン工業(株)製デムナムS-65)の溶解性を測定したところ、25℃で当該フッ素系オイルは溶解せず分離した。
【0044】
<コーティング性>
(実施例3)
HCFO−1223xdに対し潤滑剤として用いるフッ素系オイル(ダイキン工業(株)製デムナムS-65)を、HCFO−1223xd及びフッ素系オイルとの組成比がそれぞれ97質量%及び3質量%になるように添加して溶解させ、得られた溶液を、アルミニウムの基板に平均厚さ0.5mmとなるようにコーティングした。その後24〜27℃で風乾したところ、均一な潤滑剤塗膜を得ることができた。
【0045】
<安定性>
(実施例4)
HCFO−1223xdに対し潤滑剤として用いるフッ素系オイル(ダイキン工業(株)製デムナムS-65)を、HCFO−1223xd及びフッ素系オイルとの組成比がそれぞれ50質量%及び50質量%になるように添加して溶解させ、得られた溶液を25℃の環境下7日間放置した。色、沈殿生成などの変化は見られなかった。
【0046】
<洗浄性>
(実施例5)
50mm×5mm×2mmのガラス製テストピースをフッ素オイル(パーフロポリエーテル、ダイキン工業(株)製デムナム S-65)中に浸漬したものを、25℃において100mlのHCFO−1223xd中に1分間浸漬したあと引き上げると、テストピース上に残存するフッ素オイルは除去された。
【0047】
<生物毒性>
(実施例6)
OECDガイドラインNo.436に基づき、HCFO−1223xdのミストについて、ラットによる4時間単回吸入ばく露試験をおこなったところ、5mg/Lの濃度のミストをばく露させてもラットの死亡は見られず、HCFO−1223xdの急性毒性が低いことがわかった。