特許第6968862号(P6968862)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6968862
(24)【登録日】2021年10月29日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/16 20060101AFI20211108BHJP
【FI】
   E06B5/16
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-224958(P2019-224958)
(22)【出願日】2019年12月13日
(62)【分割の表示】特願2019-24959(P2019-24959)の分割
【原出願日】2014年9月16日
(65)【公開番号】特開2020-37867(P2020-37867A)
(43)【公開日】2020年3月12日
【審査請求日】2019年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136331
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 陽一
(72)【発明者】
【氏名】山口 一儀
(72)【発明者】
【氏名】永田 孫史
(72)【発明者】
【氏名】須加野 充男
(72)【発明者】
【氏名】鎌仲 壮吉
(72)【発明者】
【氏名】間戸 隆行
【審査官】 砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−118714(JP,A)
【文献】 実開昭61−47397(JP,U)
【文献】 特開2014−109107(JP,A)
【文献】 特開2014−34861(JP,A)
【文献】 特開2013−127167(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第0590236(EP,A2)
【文献】 米国特許第4931339(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠と、障子とを備え、枠は、見込方向端部に内周側に向けて突出する枠側フィンを有し、障子は、枠側フィンと反対側の見込方向端部に外周側に向けて突出する障子側フィンを有し、枠または障子の一方の見込面に耐火材ホルダーを設け、耐火材ホルダーに保持して火災の熱で発泡する耐火材を設けてあると共に、耐火材ホルダーの見込み方向に隣接し且つ枠側フィン及び障子側フィンと見込方向に離間した位置に、枠または障子の他方の見込面に向けて突出して耐火材の発泡する方向を枠または障子の他方の見込面に規制するガイドとなる突壁を有することを特徴とする建具。
【請求項2】
枠と、障子とを備え、枠または障子の一方の見込面に耐火材ホルダーを設けてあり、耐火材ホルダーは、枠または障子の框と別体で形成した長尺材であり、耐火材ホルダーに保持して火災の熱で発泡する耐火材を設けてあると共に、耐火材の見込み方向に隣接する位置に、枠または障子の他方の見込面に向けて突出して耐火材の発泡する方向を枠または障子の他方の見込面に規制するガイドとなる突壁を有し、突壁は、耐火材ホルダーと一体成形されていることを特徴とする建具。
【請求項3】
枠と、障子とを備え、枠または障子の一方の見込面に、火災の熱で発泡する耐火材を設けてあると共に、耐火材の見込方向の両側に隣接する位置に、枠または障子の他方の見込面に向けて突出して耐火材の発泡する方向を枠または障子の他方の見込面に規制するガイドとなる突壁を有することを特徴とする建具。
【請求項4】
枠と、障子とを備え、枠または障子の一方の見込面に、火災の熱で発泡する耐火材を設けてあると共に、耐火材の見込み方向に隣接する位置に、枠または障子の他方の見込面に向けて突出して耐火材の発泡する方向を枠または障子の他方の見込面に規制するガイドとなる突壁を有し、突壁は、タイト材ホルダーを兼ねていることを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防火性に優れた建具に関する。
【背景技術】
【0002】
内倒し窓のように、障子が室内側又は室外側に開く窓では、枠と障子の間にアーム等が介在するため、枠と障子の間の隙間が大きくなっている。そのため、火災時にはその隙間を火炎や煙等が貫通し、延焼に繋がるおそれがある。
特許文献1には、戸の外周に熱に反応して発泡する発泡材を設けておき、火災時にその発泡材が発泡して枠と戸の間を塞ぐことで、火炎や煙等が侵入するのを防ぐことが開示されている。しかし、前述の内倒し窓等のように、枠と障子の隙間が大きい場合には、発泡材が発泡する途中で室外側や室内側に曲がったり、脱落したりするため、枠と障子の間の隙間をきっちりと塞ぐことが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−303133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上に述べた実情に鑑み、枠と障子との間の隙間が大きい場合でも、火災時にその隙間を確実に塞ぐことのできる建具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明による建具は、枠と、障子とを備え、枠は、見込方向端部に内周側に向けて突出する枠側フィンを有し、障子は、枠側フィンと反対側の見込方向端部に外周側に向けて突出する障子側フィンを有し、枠または障子の一方の見込面に耐火材ホルダーを設け、耐火材ホルダーに保持して火災の熱で発泡する耐火材を設けてあると共に、耐火材ホルダーの見込み方向に隣接し且つ枠側フィン及び障子側フィンと見込方向に離間した位置に、枠または障子の他方の見込面に向けて突出して耐火材の発泡する方向を枠または障子の他方の見込面に規制するガイドとなる突壁を有することを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明による建具は、枠と、障子とを備え、枠または障子の一方の見込面に耐火材ホルダーを設けてあり、耐火材ホルダーは、枠または障子の框と別体で形成した長尺材であり、耐火材ホルダーに保持して火災の熱で発泡する耐火材を設けてあると共に、耐火材の見込み方向に隣接する位置に、枠または障子の他方の見込面に向けて突出して耐火材の発泡する方向を枠または障子の他方の見込面に規制するガイドとなる突壁を有し、突壁は、耐火材ホルダーと一体成形されていることを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明による建具は、枠と、障子とを備え、枠または障子の一方の見込面に、火災の熱で発泡する耐火材を設けてあると共に、耐火材の見込方向の両側に隣接する位置に、枠または障子の他方の見込面に向けて突出して耐火材の発泡する方向を枠または障子の他方の見込面に規制するガイドとなる突壁を有することを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明による建具は、枠と、障子とを備え、枠または障子の一方の見込面に、火災の熱で発泡する耐火材を設けてあると共に、耐火材の見込み方向に隣接する位置に、枠または障子の他方の見込面に向けて突出して耐火材の発泡する方向を枠または障子の他方の見込面に規制するガイドとなる突壁を有し、突壁は、タイト材ホルダーを兼ねていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明による建具は、枠は、見込方向端部に内周側に向けて突出する枠側フィンを有し、障子は、枠側フィンと反対側の見込方向端部に外周側に向けて突出する障子側フィンを有し、枠または障子の一方の見込面に耐火材ホルダーを設け、耐火材ホルダーに保持して火災の熱で発泡する耐火材を設けてあると共に、耐火材ホルダーの見込み方向に隣接し且つ枠側フィン及び障子側フィンと見込方向に離間した位置に、枠または障子の他方の見込面に向けて突出して耐火材の発泡する方向を枠または障子の他方の見込面に規制するガイドとなる突壁を有するため、枠と障子との間の隙間が大きい場合でも、火災時にその隙間を発泡した耐火材で確実に塞ぐことができる。また、突壁を有することで、耐火材を密に発泡させることができ、発泡した耐火材による耐火層を維持できる。
【0010】
請求項2記載の発明による建具は、枠または障子の一方の見込面に耐火材ホルダーを設けてあり、耐火材ホルダーは、枠または障子の框と別体で形成した長尺材であり、耐火材ホルダーに保持して火災の熱で発泡する耐火材を設けてあると共に、耐火材の見込み方向に隣接する位置に、枠または障子の他方の見込面に向けて突出して耐火材の発泡する方向を枠または障子の他方の見込面に規制するガイドとなる突壁を有するため、枠と障子との間の隙間が大きい場合でも、火災時にその隙間を発泡した耐火材で確実に塞ぐことができる。また、突壁を有することで、耐火材を密に発泡させることができ、発泡した耐火材による耐火層を維持できる。
【0011】
請求項3記載の発明による建具は、枠または障子の一方の見込面に、火災の熱で発泡する耐火材を設けてあると共に、耐火材の見込方向の両側に隣接する位置に、枠または障子の他方の見込面に向けて突出して耐火材の発泡する方向を枠または障子の他方の見込面に規制するガイドとなる突壁を有するため、枠と障子との間の隙間が大きい場合でも、火災時にその隙間を発泡した耐火材で確実に塞ぐことができる。また、突壁を有することで、耐火材を密に発泡させることができ、発泡した耐火材による耐火層を維持できる。
【0012】
請求項4記載の発明による建具は、枠または障子の一方の見込面に、火災の熱で発泡する耐火材を設けてあると共に、耐火材の見込み方向に隣接する位置に、枠または障子の他方の見込面に向けて突出して耐火材の発泡する方向を枠または障子の他方の見込面に規制するガイドとなる突壁を有するため、枠と障子との間の隙間が大きい場合でも、火災時にその隙間を発泡した耐火材で確実に塞ぐことができる。また、突壁を有することで、耐火材を密に発泡させることができ、発泡した耐火材による耐火層を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る建具の横断面図である。
図2】同建具の縦断面図である。
図3】同建具の室内側正面図である。
図4】同建具の障子を開けた状態の縦断面図である。
図5】火災時における竪枠と竪框間の隙間部の状態を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1〜4は、本発明に係る建具の一実施形態を示している。この建具は、内倒しサッシであり、躯体開口部に取付けられる枠1と、枠1に内倒し式に開閉自在に取付けた障子2とを備えている。
枠1は、アルミニウム合金の押出形材よりなる上枠5、下枠6及び左右の竪枠7,7を枠組みして構成されている。
障子2は、アルミニウム合金の押出形材よりなる上框8、下框9及び左右の竪框10,10を框組みし、その内側に複層ガラス11を取付けて構成されている。複層ガラス11の室外側のガラス11aは、網入りの強化ガラスになっている。障子2は、図2に示すように、下框9の室内側下部に設けたヒンジ部12が下枠6に取付けたヒンジ金具13に回動自在に連結されている。また障子2の上框8の室内側面にはラッチ14が取付けてあり、ラッチ14が上枠5に取付けたラッチ受け15と係合することで、閉鎖した障子2がロックされる。
【0015】
図1,4に示すように、竪枠7の内周側見込み面7aと竪框10の外周側見込み面10a間には、アーム16が取付けてあり、該アーム16により障子2の開く範囲を規制している。このアーム16を取付けるために、竪枠7の内周側見込み面7aと竪框10の外周側見込み面10a間には27mmの幅の隙間17が設けられている。
竪枠7の内周側見込み面7aの室外側端部には、図1に示すように、タイト材ホルダー18が内周側に突出して設けられ、タイト材ホルダー18に取付けたタイト材19が、竪框10の外周側見込み面10aに当接している。また、竪枠7の内周側見込み面7aの室内外方向中間部やや室内側寄りの位置にもタイト材ホルダー20が内周側に突出して設けられ、このタイト材ホルダー20に取付けたタイト材21が、竪框10の室内側端部に外周側に張り出して設けたフィン22の室外側面に当接している。室内外方向中間部のタイト材ホルダー20の根元部には、後述する耐火材ホルダー23が係止する溝24が室外側に向けて形成してある。
【0016】
竪枠7の内周側見込み面7aには、図1,2,4に示すように、火災時に竪枠7と竪框10間の隙間を塞ぐ耐火材3を固定設置するための耐火材ホルダー23が、室内寄りのタイト材ホルダー20の室外側に沿うようにして取付けてある。耐火材ホルダー23は、アルミニウム合金の押出形材よりなる長尺材であり、図1に示すように、内周側が開口したリップ溝形の耐火材保持部25と、耐火材保持部25の室外側の壁より連続して内周側に向けて突出する突壁4とが一体に形成されている。突壁4は、竪枠7の内周側見込み面7aと竪框10の外周側見込み面10a間の27mmの隙間17の半分程度まで突出しており、アーム16と干渉しないように設けてある。耐火材ホルダー23は、図2,4に示すように、アーム16と干渉する部分に切り欠き26が設けてある。
耐火材保持部25には、火災の熱に反応して発泡・膨張する耐火材3が保持してある。この耐火材は、プラスチック技術を活用した有機系耐火材であり、通常の状態では薄いシート状で、200℃以上に加熱されると厚さ方向に5〜40倍に膨張し、断熱層を形成する。火災時に消失することがなく、有害ガスが発生することもない。かかる耐火材3としては、例えば積水化学工業株式会社製の商品名「フィブロック」を用いることができる。耐火材3は、耐火材保持部25に挿入した後、耐火材保持部25の内周側のリップ部25aをかしめることで、耐火材保持部25から抜け落ちたりしないように保持される。そうして耐火材3を装着した耐火材ホルダー23は、図1に示すように、竪枠7の内周側見込み面7aにネジ27で固定されている。
【0017】
上枠5は、図2に示すように、内周側見込み面5aの室外側端部に垂下片28を有し、その室内側に沿うようにして上枠5の内周側面5aに、火災の熱に反応して発泡・膨張する耐火材29が取付けてある。この耐火材29は、リップ溝形の耐火材ホルダー30に保持されており、耐火材ホルダー30は上枠5にネジ31で固定してある。また、上枠5の内周側見込み面5aには、ステンレス製の補強板35が耐火材ホルダー30とネジ31で共締めして取付けてある。
上框8の外周側見込み面8aには、ステンレス製の補強板32がネジ33で取付けてあり、その室内側の端部に火災の熱に反応して発泡・膨張する耐火材34が取付けてある。この耐火材34は、上枠5に設けられたタイト材ホルダー36に対向して配置されている。さらに、その上枠5のタイト材ホルダー36の室内側面にも火災の熱に反応して発泡・膨張する耐火材37が取付けてあり、この耐火材37はラッチ14とラッチ受け15との係合部に対向して配置されている。上框8の中空部内には、ステンレス製の補強材38が設けてある。
【0018】
下枠6は、図2に示すように、L字形に立ち上がるタイト材ホルダー39を有し、その室外側面に火災の熱に反応して発泡・膨張する耐火材40を保持した耐火材ホルダー41がネジ42で取付けてある。この耐火材40は、下框9の室外側に外周側に張り出して形成されたフィン43と対向して配置されている。前記タイト材ホルダー39の内周側面にも、火災の熱に反応して発泡・膨張する耐火材44が設けてある。さらに、下枠6の中空部内にも、火災の熱に反応して発泡・膨張する耐火材45が設けてある。
【0019】
障子2の框8,9,10は、図2に示すように、内周側が開口したパネル保持溝46を有し、パネル保持溝46内の室外側の壁に、火災の熱に反応して発泡・膨張する耐火材47が取付けてある。下框9のパネル保持溝46内には、セッティングブロック48が配置されており、このセッティングブロック48は火災の熱で溶けにくい金属製のものとなっている。
【0020】
図5は、火災時における竪枠7と竪框10の隙間部の状態を示している。同図に示すように、火災が発生すると竪枠7の内周側見込み面7aに設けた耐火材3が内周側に向けて発泡・膨張し、竪枠7の内周側見込み面7aと竪框10の外周側見込み面10a間の隙間17が発泡した耐火材3により塞がれる。これにより、竪枠7と竪框10の隙間17から火炎や煙等が貫通するのを阻止できる。耐火材3の室外側に隣接して突壁4が設けてあることで、突壁4が耐火材3の発泡する方向を規制するガイドとなり、広い隙間17であってもその隙間17を発泡した耐火材3で確実に塞ぐことができる。また、突壁4を有することで、耐火材3を密に発泡させることができ、発泡した耐火材3による耐火層を維持できる。また、突壁4自体が炎や煙等を遮る効果もある。突壁4は、図4に示すように、アーム16を竪枠7に取付けているアーム取付具52と干渉する部分が切欠かれているが、アーム取付具52は障子2側(内周側)に向けて突出するハット型断面になっており、このアーム取付金具52が発泡した耐火材3の脱落を防ぐので、突壁4が切欠かれた範囲も竪枠7と竪框10の間の隙間17が発泡した耐火材3により確実に塞がれる。
耐火材3を両面テープや接着剤等で竪枠7の内周側見込み面7aに直接取付けた場合には、長時間風雨にさらされるうちに剥がれ落ちたりするおそれがあるが、本実施形態では耐火材3を耐火材ホルダー23に保持した上で竪枠7にネジ27で固定したので、耐火材3が剥がれ落ちるおそれがない。
【0021】
また火災時には、上枠5の内周側見込み面5aに取付けた耐火材29が内周側に向けて、上框8の外周側見込み面8aに取付けた耐火材34が外周側に向けてそれぞれ発泡・膨張して、上枠5の内周側見込み面5aと上框8の外周側見込み面8a間の隙間が塞がれる。両耐火材29,34は、上枠5の垂下片28と上框8の立上げ片49の見込み方向に隣接して配置されているため、先に述べた突壁4と同様に耐火材29,34の発泡する方向を規制し、耐火材29,34が曲がったり脱落したりするのを防ぐことができる。また、上枠5のタイト材ホルダー36の室内側面に取付けた耐火材37が室内側に向けて発泡し、障子2の周囲と上枠5間の隙間を塞ぐ。室外側で火災が起きたときには、障子2は室外側に膨らむように変形し、それに伴って上框8の立上げ片49が上枠5のタイト材50から離れようとする。本建具は上記のように耐火材29,34,37が設けてあることで、室外側から室内側への火の侵入がまず耐火材29により防がれ、耐火材29を突破され且つタイト材50が上框8から離れたとしても、耐火材34により火の侵入を防ぐことができる。耐火材34は、タイト材50を保護する働きもある。さらに、耐火材34が突破され且つ上框8が室内側に変位したとしても、室内側に向けて発泡する耐火材37により火の侵入が防がれる。以上の作用により、上枠5と上框8の間を火が貫通するのを確実に防ぐことができる。
さらに、下枠6のタイト材ホルダー39の室外側面に取付けた耐火材40が室外側に向けて発泡し、発泡した耐火材40が下框9にパネル保持溝46内の水を抜くために下框9の長手方向両端部に形成された水抜き孔を塞ぎ、水抜き孔から火炎や煙等が入るのを阻止する。下框9はヒンジ部12で下枠6と連結されているが、ヒンジ部12は長手方向の両端部が竪框10と干渉しないように切欠かれており、また下枠のタイト材51は長手方向の両端部が竪枠7と干渉しないように切欠かれているので、そのままでは下枠6の両端部における下框9との隙間から火が貫通するおそれがある。本建具では、下枠6のタイト材ホルダー39の内周側面に取付けた耐火材44が内周側に向けて発泡し、発泡した耐火材44が下枠6と下框9間の隙間を塞ぐことで、下枠6の両端部における下框9との隙間から火が貫通するのを防ぐことができる。耐火材44は、タイト材51を保護する働きもある。耐火材40,44は、下枠6の長手方向の全長に設けてもよいが、下枠6の長手方向の両端部だけに設けてあってもよい。
さらに、下枠6の中空部内に設けた耐火材45が発泡して下枠6の排水孔を塞ぎ、排水孔から火炎や煙等が入るのを阻止する。また、框8,9,10のパネル保持溝46内に設けた耐火材47が発泡してパネル保持溝46内の隙間を塞ぐことで、框8,9,10と複層ガラス11との間から火炎や煙等が貫通するのを阻止できる。
【0022】
以上に述べたように本建具は、火災時に枠1と障子2の隙間、障子2の框8,9,10と複層ガラス11との隙間、排水孔等が発泡した耐火材3,29,34,37,40,44,45,47により塞がれるため、火炎や煙等が室内外を貫通するのを阻止し、延焼を防止することができる。特に、耐火材3の見込み方向に隣接する位置に内周側に向けて突出する突壁4を設けたことで、耐火材3の発泡する方向を突壁4が規制するため、アーム16が介在する竪枠7と竪框10間の広い隙間17であっても、発泡した耐火材3でその隙間17をきっちり塞ぐことができる。
【0023】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。耐火材に隣接して設けられる突壁は、耐火材ホルダーと別体で形成することもできる。耐火材は、障子の外周側見込み面に設けることもでき、その場合には突壁は外周側に向けて突出して設ける。また耐火材は、枠の内周側見込み面又は障子の外周側見込み面に両面テープ等で直接取付けることもできる。突壁は、耐火材の室内側に隣接して設けることもできる。障子の開き方は任意であり、例えば開き窓、すべり出し窓等、あらゆる窓種に適用することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 枠
2 障子
3 耐火材
4 突壁
7a 竪枠の内周側見込み面(枠の内周側見込み面)
10a 竪框の外周側見込み面(障子の外周側見込み面)
図1
図2
図3
図4
図5